(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】遮蔽されたケーブルを保持するための保持装置
(51)【国際特許分類】
H02G 15/02 20060101AFI20220301BHJP
H02G 15/013 20060101ALI20220301BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20220301BHJP
H05K 9/00 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
H02G15/02
H02G15/013
H02G3/22
H05K9/00 L
(21)【出願番号】P 2019548073
(86)(22)【出願日】2017-12-21
(86)【国際出願番号】 EP2017084048
(87)【国際公開番号】W WO2018157962
(87)【国際公開日】2018-09-07
【審査請求日】2019-10-16
(32)【優先日】2017-03-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】519314456
【氏名又は名称】アグロ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】AGRO AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】特許業務法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オーミラー,マルクス
【審査官】須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第04493522(US,A)
【文献】実開平07-009038(JP,U)
【文献】実開昭52-128985(JP,U)
【文献】実開昭59-077278(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/02
H02G 15/013
H02G 3/22
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの導体(3)および該導体(3)を包囲する遮蔽編組(4)を備えたケーブル(2)のためのケーブルグランド(1)において、
前記ケーブルグランド(1)は、
a.ベースエレメント(5)であって、
i.前記ベースエレメント(5)をケーシングに取り付けるためのベース部(6)を有し、
ii.少なくとも部分的に導電性の材料から構成されており、
iii.前記ケーブル(2)を案内するための、前記ケーブル(2)の軸線方向(x)に延在する貫通開口(7)を有し、
iv.前記貫通開口(7)周りに延びる第1のねじ山(8)、ならびに、
v.前記貫通開口(7)周りに延びる接触面(9)、を有する、ベースエレメント(5)と、
b.第1の締め付けナット(10)であって、前記ベースエレメント(5)の前記第1のねじ山(8)に前記第1の締め付けナット(10)を作用結合させるための第2のねじ山(11)を備えた第1の締め付けナット(10)と、
c.組み付けられた状態では、軸線方向(x)において、前記ベースエレメント(5)の前記接触面(9)と前記第1の締め付けナット(10)との間に配置されている、第1のクランプ面(13)を備えた第1のクランプエレメント(12)と、を含み、
d.前記第1のクランプエレメント(12)は、前記組み付けられた状態において、前記第1のクランプ面(13)と前記接触面(9)との間に配置されている前記遮蔽編組(4)を前記接触面(9)に押圧するために使用され
るとともに、前記第1のクランプエレメント(12)は、半径方向外側において第1の収容空間(16)によって包囲されており、
e.前記接触面(9)は、前記ベースエレメント(5)の、軸線方向に延在する溝(14)に配置されていることを特徴とする、
ケーブルグランド(1)。
【請求項2】
前記接触面(9)および/または前記溝(14)の外壁は、前記ベースエレメント(5)に対して前記第1のクランプエレメント(12)をセンタリングするために使用されることを特徴とする、
請求項1記載のケーブルグランド(1)。
【請求項3】
前記第1のねじ山(8)は、半径方向において、前記接触面(9)よりも外側に配置されていることを特徴とする、
請求項1または2記載のケーブルグランド(1)。
【請求項4】
前記第1のねじ山(8)の軸線方向の位置および前記接触面(9)の軸線方向の位置がオーバーラップすることを特徴とする、
請求項1から3までのいずれか1項記載のケーブルグランド(1)。
【請求項5】
前記接触面(9)は、円錐形に外側に向けられていることを特徴とする、
請求項1から4までのいずれか1項記載のケーブルグランド(1)。
【請求項6】
前記第1のクランプエレメント(12)は、導電性の材料または非導電性の材料から構成されていることを特徴とする、
請求項1から5までのいずれか1項記載のケーブルグランド(1)。
【請求項7】
前記第1のクランプエレメント(12)は、ゴムおよび/または金属および/またはプラスチックから構成されていることを特徴とする、
請求項6記載のケーブルグランド(1)。
【請求項8】
前記第1のクランプエレメント(12)は、環状であることを特徴とする、
請求項1から7までのいずれか1項記載のケーブルグランド(1)。
【請求項9】
前記第1のクランプエレメント(12)は、スリット(15)を有することを特徴とする、
請求項1から8までのいずれか1項記載のケーブルグランド(1)。
【請求項10】
前記第1のクランプエレメント(12)は、複数の部品から構成されていることを特徴とする、
請求項1から9までのいずれか1項記載のケーブルグランド(1)。
【請求項11】
前記第1のクランプエレメント(12)は、半径方向に変形可能であることを特徴とする、
請求項1から10までのいずれか1項記載のケーブルグランド(1)。
【請求項12】
前記第1のクランプエレメント(12)は、半径方向において弾性であることを特徴とする、
請求項1から11までのいずれか1項記載のケーブルグランド(1)。
【請求項13】
前記第1の収容空間(16)は、余剰の遮蔽編組(4)を収容するために使用されることを特徴とする、
請求項
1から12までのいずれか1項記載のケーブルグランド(1)。
【請求項14】
前記第1の締め付けナット(10)は、前記ケーブル(2)を半径方向においてクランプすることに適している第2のクランプエレメント(18)を収容するための第2の収容空間(17)を有することを特徴とする、
請求項
1から13までのいずれか1項記載のケーブルグランド(1)。
【請求項15】
前記第1の収容空間(16)および前記第2の収容空間(17)は、軸線方向において、前記第1の締め付けナット(10)に形成された肩(20)によって隔てられていることを特徴とする、
請求項
14記載のケーブルグランド(1)。
【請求項16】
前記第2のクランプエレメント(18)は、第2の締め付けナット(19)を用いて、前記第1の締め付けナット(10)と前記第2の締め付けナット(19)との間に固定されていることを特徴とする、
請求項
14または
15記載のケーブルグランド(1)。
【請求項17】
ケーブルグランド(1)の組み付け方法において、
前記組み付け方法は、以下の方法ステップ、すなわち、
a.請求項1から
16までのいずれか1項記載のケーブルグランド(1)を準備するステップと、
b.導体(3)と、該導体(3)を包囲する、露出された遮蔽編組(4)とを備えたケーブル(2)を準備するステップと、
c.第1の締め付けナット(10)を前記ケーブル(2)に通すステップと、
d.第1のクランプエレメント(12)を前記ケーブル(2)に通すステップと、
e.前記遮蔽編組(4)を拡げるステップと、
f.拡げられた前記遮蔽編組(4)を、ベースエレメント(5)の接触面(9)にわたり押し進めるステップと、
g.前記ケーブル(2)にスライドされた前記第1のクランプエレメント(12)の第1のクランプ面(13)を前記遮蔽編組(4)に当接させるステップと、
h.前記ケーブル(2)にスライドされた前記第1の締め付けナット(10)を前記ベースエレメント(5)に螺合させるステップと、を有する、
組み付け方法。
【請求項18】
前記第1の締め付けナット(10)および前記第1のクランプエレメント(12)をスライドさせる前に、先ず第2の締め付けナット(19)を、それに続き第2のクランプエレメント(18)を前記ケーブル(2)に通すことを特徴とする、
請求項
17記載の組み付け方法。
【請求項19】
前記第1の締め付けナット(10)を前記ベースエレメント(5)に螺合させた後に、以下の仕上げ方法ステップ、すなわち、
a.前記ケーブル(2)に通された第2のクランプエレメント(18)を前記第1の締め付けナット(10)に接触するようスライドさせるステップと、
b.第2の締め付けナット(19)を前記第1の締め付けナット(10)に螺合させることによって、前記第2のクランプエレメント(18)を取り付けるステップと、を実施することを特徴とする、
請求項
18記載の組み付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、典型的には、機器のケーシングまたはスイッチキャビネットにおけるケーブルフィードスルーまたはケーブル導入部において使用されるような、ケーブル、特に接地ケーブルまたは遮蔽ケーブルを保持するための保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
その種の保持装置は、一方では、ケーブルのシール機能を備えたストレインリリーフに使用することができ、他方では、電磁シールドのために、また線路電流の排出に使用することができる。このために、ケーブルが保持装置内で軸線方向において止められ、またケーブルシールドとの電気的なコンタクトが確立される。ケーブルシールドは、多くの場合、ケーブルの外側絶縁部(ケーブルシース)の下に配置されている遮蔽編組から成る。一般的な保持装置は、通常の場合、ケーブルの上に配置されるスリーブ状のベースエレメントと、ケーブルを固定し、また必要に応じてケーブルシールドとのコンタクトを確立することができるコンタクトエレメントおよび/またはクランプエレメントと、ベースエレメントに結合することができ、またベース部分においてコンタクトエレメント/クランプエレメントを位置決めする第1の締め付けナットと、を含んでいる。ベースエレメントは、ねじスリーブとして形成することができ、また例えばケーシングに螺入させることができ、それによってケーブルはケーシングに固定される。
【0003】
ケーブルグランドは、損傷を受けやすい結合箇所における遮蔽の品質を維持し続け、また遮蔽が損なわれないことを保証しなければならない。その限りにおいて、最大限に遮蔽された線路を使用するだけではなく、良好な電磁両立性を有するケーブルグランドを使用することも必要になる。従来技術からは、種々の保持装置が公知である。
【0004】
同一出願人によって2011年10月7日に公開された国際公開第2012/072318号には、スリーブ状のベース部分と、ベース部分に結合可能である接続部分と、ベース部分と接続部分との間に配置されている弾性締め付け可能なクランプ部分とを含んでいる、ケーブルを保持するための保持装置が開示されている。クランプ部分は、ケーブルを留めることに適している、弾性締め付け可能なクランプ留め具と、弧状にクランプ留め具から突出しており、またクランプ部分をベース部分の内周面に弾性に締め付けるように支持する、少なくとも1つの締め付け翼部と、を有している。
【0005】
Lapp KGによって1971年4月1日に公開された独国特許出願公開第1949189号明細書には、金属編組シースを有するケーブル用の接地装置を備えたケーブルフィードスルーが開示されており、このケーブルフィードスルーでは、シーリングリングを介在させて、ケーブルが締め付けねじによって、下位部分に押し込まれる。締め付けねじは、円錐形の内面を用いて、金属編組を取り囲み、また複数の部品から成る円錐形のリングを押し出す。これによって、リングは編組に、また編組の拡開部に押し付けられ、これによってリングは金属編組をクランプする。
【0006】
PFLITSCH GmbH & Co. KGによって1989年5月24日に公開された独国特許出願公開第3737345号明細書は、包囲する編組線の形態の外側シールドを有する弾性の線路をシールして設置するための装置に関する。装置は、端部側のねじ山支持部を備えたダブルニップルから構成されており、ニップルは、シール体および圧潰体のための挿入孔を有する。ニップル上には、さらに、シール体を付勢する締め付けねじをねじ込み可能である。シール体端面とストッパカラーとの間には、導電性の材料から構成されているリング部材が配置されており、このリング部材は、ニップルの挿入開口に向かって、半径方向外側から内側に向かって円錐形にテーパされており、またリング部材の、挿入開口とは反対に向けられた側には、接地ケーブルが取り付けられている。
【0007】
Associated Electrical Industriesによって1962年4月12日に公開された独国特許出願公開第1127426号明細書には、相互にねじ止め可能な少なくとも3つの部品と、2つの部品間に配置されている外装線を捕捉するための、円錐形に外側にテーパされたクランプ部品と、可撓性の材料から成るシーリングディスクと、から構成された補強電気ケーブル用のパッキンググランドが開示されている。
【0008】
Anton Hummel Verwaltungs GmBHによって1995年7月11日に公開された米国特許第543230号明細書は、接地ケーブルまたは遮蔽ケーブル用のケーブルグランドに関する。このケーブルグランドは、導電性の原材料、特に金属から成るねじスリーブと、このねじスリーブに結合可能であり、圧力受け部またはユニオンナットとして形成することができる対応スリーブと、を有する。ケーブル内部を接地または遮蔽するための金属編組を固定するために、ねじスリーブおよび対応スリーブを螺合させることによってケーブルに押し付け可能である、絶縁性の原材料から成るクランプインサートが使用される。ねじを締める際に、クランプフィンガと、クランプインサートのスリット間の領域とが、半径方向にケーブルに向かって変形される。この場合、クランプインサートは、クランプフィンガとは反対側の領域に拡張部を有し、この拡張部から、金属編組の剥き出し線が、電気的な接続を確立するために、軸線方向に突出している。突出した線を、拡張部の端面の周りに外側に向かって折り曲げることができ、それによって、線は導電性のねじスリーブの内面に押し当てられて固定される。
【0009】
住友電装株式会社によって1998年1月7日に公開されたEP公開第0817316号明細書には、シールド線のシールド層を接続するための接続構造が開示されている。この線は、シールド層の露出された部分に挿入可能である内筒状の構成部材を有する。さらに、シールド層の外側に押圧することができる、導電性の外筒状の構成部材が設けられている。この外筒状の構成部材を、内筒状の構成部材に係合させることができる。シールド層は、それらの間に配置され、これによりシールド層との電気的なコンタクトが確立される。
【0010】
従来技術から公知のグランドは、特に、発生した電流をケーブルシールドからケーシングに効率的に排出させることができないという欠点を有している。
【発明の概要】
【0011】
本発明の課題は、従来技術に付随する問題のうちの少なくとも1つを解決することである。本発明によるケーブルグランドは、通常の場合、ベースエレメント、第1の締め付けナットおよび第1のクランプエレメントを含む。ベースエレメントは、さらに、ケーシングにベースエレメントを接触させて取り付けるために使用されるベース部を含むことができる。有利には、ベース部の載置面は、この載置面がケーシングに少なくとも部分的に当接するように形成されている。ベースエレメントは、さらに、少なくとも部分的に導電性の材料から構成されている。ベースエレメントの中心には、軸線方向において、ケーブルを案内するための貫通開口を延在させることができる。この開口周りに延びるように第1のねじ山が配置されている。さらにベースエレメントは、ベース部側ないしケーシング側とは反対側において、貫通開口周りに延びる接触面を有することができる。接触面は、電気的なコンタクトを形成するために使用される。つまり、遮蔽編組に発生した電流は、効率的に、ベースエレメントの導電領域を介して、またとりわけこの場合に同様に導電性である載置面を介して、ケーシングに直接的に流すことができる。したがって、ベースエレメントの導電性領域の配置に応じて、ケーシングとの電気的な接触は、もっぱら、載置面を介して行うことができ、これによって、ベースエレメントをケーシングに取り付けるための取付け手段は損傷から保護される。
【0012】
第1の締め付けナットは、この第1の締め付けナットを、ベースエレメントの少なくとも1つの第1のねじ山に作用結合させるための、少なくとも1つの第2のねじ山を含むことができる。第1のクランプエレメントは、組み付けられた状態では、ベースエレメントの接触面と第1の締め付けナットとの間に配置されており、また少なくとも1つの第1のクランプ面を有する。遮蔽編組の周囲にわたり分散されている、複数の第1のクランプ面を備えた変形形態も同様に考えられる。ここで、第1のクランプエレメントは通常の場合、組み付けられた状態において、第1のクランプ面と接触面との間に配置されている遮蔽編組を接触面に押圧し、遮蔽部とベースエレメントとの確実な電気的なコンタクトを確立するために使用される。このコンタクトは、特に、振動に対する耐性も有していることを特徴とする。さらに有利には、この種の接触においては、接触の力によって導体も一緒に押されることがなく、したがって導体が損傷する危険が最小化される。
【0013】
有利には、この場合、接触面は軸線方向において、ケーブルの表面の可能な限り近くに配置されている。本発明においては、遮蔽編組が、ケーブル被覆部からの露出後に接触面に当接する前では、従来技術の他のグランドに比べて僅かにしか変形しない。つまり、この変形時に生じる可能性があり、さらには接触面における電流の伝達を不十分なものにすると考えられる破損個所を回避することができる。
【0014】
それに代替的にまたは付加的に、接触面を円錐形に外側に向けることができる。この場合、ベースエレメントに対する第1のクランプエレメントのセンタリング手段として接触面を利用することも同様に考えられる。
【0015】
ベースエレメントの接触面は、例えば、ベースエレメントの、軸線方向に延在する溝に配置することができる。上述のように、接触面を備えた溝を、半径方向において内側に、すなわちケーブルの表面の近くに配置することは有利である。ここで、溝は種々の形状を取ることができる。さらに、溝は中心軸周りに同心円状、多角形または環状に構成することができる。さらに、溝の外壁は、ベースエレメントに対して第1のクランプエレメントをセンタリングするための手段として使用することができる。
【0016】
有利には、第1のねじ山は、半径方向において、接触面または溝よりも外側に配置することができる。第1のねじ山の軸線方向の位置および接触面の軸線方向の位置がオーバーラップするケーブルグランドもやはり有利であって、また省スペースである。
【0017】
第1のクランプエレメントは、金属などの導電性の材料からも、ゴムまたはプラスチックなどの非導電性の材料からも構成することができる。したがって、電気的なコンタクトを、遮蔽編組から、接触面を介して、少なくとも部分的に導電性のベースエレメントまで提供することができる。第1のクランプエレメントに対して可撓性の材料が使用される場合、変形によって初めて第1のクランプ面を形成することができる。ゴム状の弾性変形可能な第1のクランプエレメントは、例えば押し付けによって変形させることができ、その変形によって第1のクランプエレメントは、接触面の形状に合わせてこれに密着するので、遮蔽編組は効率的かつ平面状に第1のクランプエレメントに押圧される。
【0018】
有利には、第1のクランプエレメントはさらに、半径方向に変形可能に、および/または半径方向に弾性に構成されている。これは、材料の特性によって実現することが考えられる、および/または第1のクランプエレメントの成形によって達成することができる:つまり、第1のクランプエレメントは、例えば少なくとも1つのスリットを有することができる。少なくとも1つのスリットを、半径方向または軸線方向に方向付けることができる。同様に、少なくとも1つのスリットを、半径方向および/または軸線方向において一貫するように構成することができ、その結果、例えば、環状の第1のクランプエレメントはC字形状になる。また、複数の部品から構成されている第1のクランプエレメントも考えられる。
【0019】
第1のクランプエレメントは、有利には、半径方向外側において第1の収容空間によって包囲されている。この第1の収容空間は、溝によって、または代替的には、ベースエレメントおよび/または第1の締め付けナットの成形によって形成することができる。収容空間は、軸線方向において少なくとも部分的に、第1の締め付けナットに形成されている肩によって画定することができ、この肩は、第1のクランプエレメントを軸線方向において接触面に押し付ける。第1の収容空間は、余剰の遮蔽編組を収容するため、および/または第1のクランプエレメントを外側に向かって半径方向に変形できるようにするためのスペースを提供するために使用することができる。ここで、余剰の遮蔽編組とは、接触面と第1のクランプ面との間のクランプ箇所の後方でケーブル端部の方向に突出した遮蔽編組である。この余剰の遮蔽編組を、第1のクランプエレメントの周りに配置することができ、また第1のクランプエレメントを半径方向外側で包囲している収容空間によって収容することができる。すなわち、この場合、接触面との電気的なコンタクトが提供された後に、遮蔽編組は折り返される。このことは有利である。何故ならば、遮蔽編組の偏向または折り曲げによって場合によっては発生する遮蔽編組の損傷が、電気的な経路に影響を及ぼさないからである。
【0020】
本発明によるケーブルグランドは、これに加えて、半径方向におけるケーブルのクランプまたは保持に適している第2のクランプエレメントを有することができる。したがって、第2のクランプエレメントの第2のクランプ面を、少なくとも部分的にケーブルのアウタシースに当接させることができる。この場合、第2のクランプエレメントを、少なくとも部分的に、第1の締め付けナットにおける第2の収容空間によって収容することができる。第1の収容空間および第2の収容空間は、有利には、軸線方向において第1の締め付けナットに形成されている肩によって隔てられている。同様に、第2の収容空間は、とりわけ、第1の締め付けナットおよび第2の締め付けナットに区分されており、第2の締め付けナットは、第2のクランプエレメントを第1の締め付けナットと第2の締め付けナットとの間に固定する。このために、第2の締め付けナットは、第4のねじ山を介して第1の締め付けナットの第3のねじ山に螺合可能であるように形成することができる。有利には、第2のクランプエレメントは、ケーブルのケーブルシースの端部のための軸線方向のストッパを有することができ、したがってケーブルを軸線方向において位置決めすることができる。
【0021】
これに代替的にまたは付加的に、第2のクランプエレメントを複数の部品で構成することができる。この場合、複数の第2のクランプエレメントを、半径方向において上下に重ねて、また軸線方向において相互に並べて配置することができる。ここで、半径方向において上下に重ねる配置は、複数の第2のクランプエレメントによって、各ケーブル直径についての最適な適合を実現することができ、したがって可能な限り良好なクランプ作用ないし保持作用が達成される、という利点を有することができる。
【0022】
ケーブルに対してケーブルグランドをシールするために、シーリングを意図して第2のクランプエレメントを付加的に利用することも同様に考えられる。別のシールエレメントの使用は、ケーブルグランド全体のより広範囲のシーリングを達成するために有用である。
【0023】
ケーブルグランドを組み付けるために、先ず、ケーブルの遮蔽編組を、取り付けるべきケーブル端部において露出させることができる。さらに続けて、ケーブルグランドの個々の構成要素が、露出されたケーブルに組み立てられる順序で通されることによって、グランドを準備することができる。つまり、第2の締め付けナットおよび第2のクランプエレメントが設けられている場合には、先ず、第2の締め付けナットならびに第2のクランプエレメントがケーブルにスライドされ、その後に初めて、第1の締め付けナットおよび第1のクランプエレメントがケーブルにスライドされる。続いて、遮蔽編組は、接触の準備のために拡げることができる。続いて、接触面がケーブル端部の拡げられた遮蔽編組に当たるまで、貫通開口を備えたベースエレメントをケーブル端部にスライドさせることができる。続いて遮蔽編組は、ケーブルに既にスライドされた第1のクランプエレメントの第1のクランプ面を遮蔽編組に当接させることによって止められ、またケーブルにスライドされた第1の締め付けナットの螺合によってベースエレメントに固定され、遮蔽編組は相応に第1のクランプエレメントとベースエレメントとの間にクランプされる。第2のクランプエレメントおよび第2の締め付けナットが通されている場合、それらを同様に、ケーブルグランドの既にねじ込まれた部分に順次スライドさせることができ、また第2のクランプエレメントを、第2の締め付けナットによって、第1の締め付けナットにねじ込むことができる。完全に組み付けられたケーブルグランドを、対応するケーシングにねじ込むことができ、したがって、ベースエレメントを介して遮蔽編組をケーシングに電気的に接続することができる。
【0024】
添付の図面に図示した実施例およびそれらに関連する記述に基づいて、本発明の種々の態様を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明によるケーブルグランドの第1の実施形態を斜視部分断面図で示す。
【
図2】
図1によるケーブルグランドを断面図で示す。
【
図3A】
図1によるケーブルグランドを斜視分解図で示す。
【
図4】本発明によるケーブルグランドの第2の実施形態を斜視部分断面図で示す。
【
図5】本発明による第1のクランプエレメントの複数の変形形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1は、本発明によるケーブルグランド1の第1の変形形態を斜視部分断面図で示す。
図2は、同一の変形形態を断面図で示し、
図3Aは、この同一の変形形態を斜視分解図で示す。
図3Bは、より良い理解のために一部を断面で図示した、
図3Aの一部を示す。
【0027】
ケーブルグランド1の第1の変形形態は、詳細には図示していない導体が内部に位置するケーブル2を含み、導体は、遮蔽編組4によって包囲されている。ケーブルグランド1は、さらに、ベースエレメント5、第1の締め付けナット10、第1のクランプエレメント12、第2の締め付けナット19および第2のクランプエレメント18を含む。ベースエレメント5は、詳細には図示していないケーシングにベースエレメント5を接触させて取り付けるためのベース部6を有する。ベース部6には、ケーシングにベース部6を取り付けるための取付け手段30が設けられている。さらに、ベース部6の載置面31は、この載置面31がケーシングに少なくとも部分的に当接するように形成されている。接触を改善するために、接触面は必要に応じて、突出した複数の要素、例えば複数の先端部などを有することができる。これによって、載置面31を介して、ベースエレメント5とケーシングとの主たる電気的な接触を生じさせることができる。ベースエレメント5は、このために、少なくとも部分的に導電性の材料から構成されており、これによって、接触面9と載置面3またはケーシングとの間の電気的な接続を確立することができる。ベースエレメント5は、さらに、ケーブル2を案内するための、ケーブル2の軸線方向(x方向)に延在する貫通開口7を有し、この貫通開口7周りには、第1のねじ山8が設けられている。ベースエレメント5の、ベース部6側またはケーシング側とは反対側において、貫通開口7周りには、円錐形の接触面9が設けられている。第1の締め付けナット10を、第2のねじ山11を介して、ベースエレメント5の第1のねじ山8に作用結合させることができる。さらに、第1のクランプエレメント12が設けられており、この第1のクランプエレメント12は、組み付けられた状態では、軸線方向(x方向)において、ベースエレメント5の接触面9と、第1の締め付けナット10との間に配置されており、また第1のクランプ面13を有している。ケーブルグランド1が組み付けられた状態では、第1のクランプエレメント12は、第1のクランプ面13と接触面9との間に配置されている遮蔽編組4を接触面9に押圧するために使用される。図示した変形形態では、この接触面9は、外側に向かって円錐形に形成されており、ベースエレメント5の、軸線方向に延在する溝14に配置されている。接触面9は、ベース部から離れる方向(負のx方向)においてテーパされている。溝14は、図示した変形形態では、少なくとも部分的に第1のクランプエレメント12を収容する。
図2からは、第1のねじ山8の軸線方向の位置および接触面9の軸線方向の位置がオーバーラップできることが見てとれる。この変形実施形態は、とりわけ、非常に省スペースである。第1のクランプエレメント12は、図示したこの第1の変形形態では、環状に構成されており、また(軸線方向および半径方向に)一貫したスリット15を有している。このスリット15は、とりわけ、半径方向における第1のクランプエレメント12の変形を可能にする。しかしながら、この変形は有利には弾性であるので、第1のクランプエレメント12は、変形後に、再びその本来の(変形していない)形状に戻る。第1のクランプエレメント12の代替的な実施形態は、
図5に示されている。
【0028】
第1のクランプエレメント12の半径方向外側には、第1の収容空間16を設けることができる。この第1の収容空間16は、溝14によって、または代替的にはベースエレメント5および/または第1の締め付けナット10の成形によって形成することができる。第1の収容空間16は、一方では、第1のクランプエレメント12が半径方向外側に変形できるようにするために使用される。収容空間は、軸線方向において少なくとも部分的に、第1の締め付けナット10に形成されている肩20によって画定することができ、この肩20は、第1のクランプエレメント12を軸線方向において接触面9に押し付ける。さらに、第1の収容空間16は、余剰の遮蔽編組4を収容するためにも使用される。この場合、その余剰の遮蔽編組を、第1のクランプエレメント12の周囲に配置することができ、また第1の収容空間16によって収容することができる(図示せず)。
【0029】
図示した変形形態では、第1の締め付けナット10に、第2の締め付けナット19を結合可能である。このために、第1の締め付けナット10は、付加的な第3のねじ山25を有することができ、この第3のねじ山25は、第2の締め付けナット19の第4のねじ山26との作用結合のために使用される。第2の締め付けナット19と共に、第1の締め付けナット10は、第2のクランプエレメント18を収容するための第2の収容空間17を形成する。軸線方向において、肩20によって、第1の収容空間16および第2の収容空間17を隔てることができる。ここで、第2のクランプエレメント18は、半径方向内側に向けられた自身の第2のクランプ面27でもって、アウタシース21をクランプし、したがってその相応の固定を達成する。第2のクランプエレメント18は、さらに、自身の内面に半径方向の段部28を有することができ、この段部28は、第2のクランプ面27に接しており、またケーブル2のアウタシース21の縁部に対する軸線方向のストッパを提供する。さらにそれと同時に、第2のクランプエレメント18は、ケーブル2に対してケーブルグランド1をシールするためにも利用することができる。これに加えて、ケーシングに対して貫通開口7をシールするための別の第1のシールエレメント22、ならびに第1の締め付けナット10に対してベースエレメント5をシールするための第2のシールエレメント23を設けることができる。図示した変形形態においては、いずれのシールエレメント22、23も、シールリングとして形成されている。
【0030】
図4は、本発明によるケーブルグランド1の第2の変形形態を示す。この変形形態は、第2のクランプエレメント18が、複数の部品から構成されており、半径方向において上下に重なって配置されている複数の第2のクランプエレメント18a、18bが設けられている点において、先行して図示した第1の変形形態とは異なっている。この構造は、ケーブル直径に応じて第2のクランプエレメント18bを交換可能であり、したがって最適なクランプ作用または付加的なシール作用を生じさせることができるという利点を有している。
【0031】
図5は、第1のクランプエレメント12の別の考えられる変形形態の選択を示す。
図5Aにおいては、円錐形の第1のクランプ面13を備えた、スリットが入れられた環状の第1のクランプエレメント12が図示されているが、
図5Bにおいては、第1のクランプエレメントに二重にスリットが入れられている、または第1のクランプエレメントは複数の部品から構成されている。
図5Cは、スリット15および周縁部29を備えた第1のクランプエレメント12を示す。
図5Dおよび5Eには、上記のクランプエレメントに代わる、第1のクランプエレメントの変形形態が図示されており、これらの変形形態は、軸線方向において一貫していない複数のスリットを有している。それらのスリットは、1つの軸線方向に延在することができるか(
図5D)、または例えば交互に異なる方向から第1のクランプエレメント12に延在することができる(
図5E)。
図5Fから
図5Hは、それぞれが変形可能な材料から形成されている変形形態を示す。図示したそれらの変形形態は、1つのスリット15を有している。しかしながら、変形可能な材料の使用によって、スリット15を完全に省略することもできる。何故ならば、変形は基本的には、そのようにスリット15を成形しなくても実現できるからである。さらに、クランプエレメント12の図示した変形形態は、円錐形に内側に向けられた第1のクランプ面13を有していない。変形可能な材料を使用することによって、クランプエレメントは、第1の締め付けナット10によってもたらされるクランプ作用によって、変形した状態において初めて第1のクランプ面13が形成されるように変形される。
【符号の説明】
【0032】
1 ケーブルグランド
2 ケーブル
3 導体
4 遮蔽編組
5 ベースエレメント
6 ベース部
7 貫通開口
8 第1のねじ山
9 接触面
10 第1の締め付けナット
11 第2のねじ山
12 第1のクランプエレメント
13 第1のクランプ面
14 溝
15 スリット
16 第1の収容空間
17 第2の収容空間
18 第2のクランプエレメント
19 第2の締め付けナット
20 肩
21 アウタシース
22 第1のシールエレメント
23 第2のシールエレメント
24 中心軸線
25 第3のねじ山
26 第4のねじ山
27 第2のクランプ面
28 段部
29 縁部
30 取付け手段
31 載置面