(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】液状有機減摩剤、その製造方法、及びその用途
(51)【国際特許分類】
C10M 129/78 20060101AFI20220301BHJP
C10N 20/02 20060101ALN20220301BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20220301BHJP
C10N 30/06 20060101ALN20220301BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20220301BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20220301BHJP
【FI】
C10M129/78
C10N20:02
C10N20:04
C10N30:06
C10N40:04
C10N40:25
(21)【出願番号】P 2020117617
(22)【出願日】2020-07-08
【審査請求日】2020-07-08
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】515102242
【氏名又は名称】百達精密化學股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】梁 幃捷
(72)【発明者】
【氏名】洪 榮宗
(72)【発明者】
【氏名】唐 旭華
(72)【発明者】
【氏名】呉 峻▲韋▼
(72)【発明者】
【氏名】蔡 禎祥
【審査官】厚田 一拓
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-265324(JP,A)
【文献】特開昭49-000302(JP,A)
【文献】国際公開第2018/042848(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0011645(US,A1)
【文献】特表2013-517338(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0113864(US,A1)
【文献】特開昭53-108917(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M 101/00 - 177/00
C10N 10/00 - 80/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジグリセリンと少なくとも1種のC
14~C
24分岐脂肪酸を含む一塩基酸組成成分と二塩基酸組成成分とを含む組成物がエステル化反応してなった、数平均分子量が3800g/molを超えるエステル生成物を含
み、
前記一塩基酸組成成分は、少なくとも1種のC
14
~C
24
直鎖脂肪酸を更に含むことを特徴とする液状有機減摩剤。
【請求項2】
前記一塩基酸組成成分は、少なくとも1種のC
18脂肪酸を含み、
前記一塩基酸組成成分の総重量を100wt%として、前記C
18脂肪酸の重量は、70wt%以上の範囲内にあることを特徴とする請求項
1に記載の液状有機減摩剤。
【請求項3】
前記一塩基酸組成成分は、少なくとも1種のC
16脂肪酸を更に含むことを特徴とする請求項
2に記載の液状有機減摩剤。
【請求項4】
前記二塩基酸組成成分は、少なくとも1種のC
6~C
10二塩基酸を含むことを特徴とする請求項1~請求項
3のいずれか一項に記載の液状有機減摩剤。
【請求項5】
前記C
6~C
10二塩基酸は、アジピン酸であることを特徴とする請求項
4に記載の液状有機減摩剤。
【請求項6】
前記組成物の総重量を100wt%として、前記一塩基酸組成成分の重量は、60wt%~85wt%の範囲内にあることを特徴とする請求項1~請求項
3のいずれか一項に記載の液状有機減摩剤。
【請求項7】
前記組成物の総重量を100wt%として、前記二塩基酸組成物の重量は、10wt%~20wt%の範囲内にあることを特徴とする請求項1、請求項
4、請求項
5のいずれか一項に記載の液状有機減摩剤。
【請求項8】
前記エステル生成物のエステル化度は、80%以上にあることを特徴とする請求項1~請求項
7のいずれか一項に記載の液状有機減摩剤。
【請求項9】
前記エステル生成物の100℃における動粘度は、500cStを超えることを特徴とする請求項1~請求項
8のいずれか一項に記載の液状有機減摩剤。
【請求項10】
自動車の原動機または動力伝達システムにおける減摩剤として使用される、請求項1~請求項
9のいずれか一項に記載の液状有機減摩剤。
【請求項11】
ジグリセリンと一塩基酸組成成分と二塩基酸組成成分とを含む組成物とをエステル化反応させて、数平均分子量が3800g/molを超えるエステル生成物を得る工程を含
み、
前記一塩基酸組成成分は、少なくとも1種のC
14
~C
24
直鎖脂肪酸を更に含むことを特徴とする液状有機減摩剤の製造方法。
【請求項12】
請求項1~請求項
10のいずれか一項に記載の液状有機減摩剤を、自動車の原動機または動力伝達システムにおける減摩剤として使用する、減摩方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦作用を減少できる有機減摩剤に関し、特にエステル生成物を含む液状有機減摩剤に関し、且つ、該エステル生成物は、ジグリセリンを含む組成物によりなった。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリグリセロール部分エステル(polyglycerol partial ester)である有機減摩剤が開示されている。該ポリグリセロール部分エステルは、多官能性カルボン酸と、脂肪酸及びポリ(ヒドロキシステアリン酸)のうちの少なくとも一者とを含むポリグリセロール混合物(polyglycerol mixture)でエステル化することによって得られる。該ポリグリセロール混合物のエステル化度は、ヒドロキシル基(-OH)の30%~75%にある。ポリグリセロールが3~6の平均縮合度を有する。該多官能性カルボン酸は、脂肪族ジカルボン酸である。該脂肪酸は、8~22個の炭素原子を有する脂肪酸である。該ポリグリセロール部分エステルが、50~180mgKOH/gの範囲の水酸基価(OH価)を有する。
【0003】
該減摩剤は、摩擦を減少する作用を有することにより、原動機または動力伝達システムに適用すると、摩擦によるエネルギー消費を減少させ、省エネの効果を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、該減摩剤の摩擦を減少する作用は業界の要求に十分に達しておらず、省エネの効果を改善する余地がある。
【0006】
上記問題点に鑑みて、本発明は、摩擦を減少する作用が従来より高い液状有機減摩剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成すべく、本発明は、ジグリセリン(diglycerol)と少なくとも1種のC14~C24分岐脂肪酸を含む一塩基酸(monobasic acid)組成成分と二塩基酸(dibasic acid)組成成分とを含む組成物がエステル化反応してなった、数平均分子量が3800g/molを超えるエステル生成物を含むことを特徴とする液状有機減摩剤を提供する。
【0008】
また、本発明は、ジグリセリンと一塩基酸組成成分と二塩基酸組成成分とを含む組成物とをエステル化反応させて、数平均分子量が3800g/molを超えるエステル生成物を得る工程を含むことを特徴とする液状有機減摩剤の製造方法を提供する。
【0009】
また、本発明は、上記の液状有機減摩剤を、自動車の原動機または動力伝達システムにおける減摩剤として使用することを特徴とする液状有機減摩剤の用途を提供する。
【発明の効果】
【0010】
上記構成により、本発明の液状有機減摩剤は、摩擦を減少する作用に優れ、オイル(機油)と合わせて使用すると、オイルの潤滑性が向上し、原動機または動力伝達システムの摩擦によるエネルギー消費を減少でき、優れた省エネの効果を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の液状有機減摩剤は、数平均分子量が3800g/molを超えるエステル生成物を含むものであり、該エステル生成物は、ジグリセリンと少なくとも1種のC14~C24分岐脂肪酸を含む一塩基酸組成成分と二塩基酸組成成分とを含む組成物がエステル化反応してなった。
【0012】
<エステル生成物>
本発明の液状有機減摩剤に更に優れた摩耗抵抗効果(摩擦を減少する作用または潤滑性)を持たせるため、エステル生成物の数平均分子量が4200g/mol~6000g/molの範囲内にあることが好ましい。
【0013】
また、該エステル生成物の100℃における動粘度が500cStを超えることが好ましい。
【0014】
また、該エステル生成物のエステル化度は、80%以上であることにより、本発明の液状有機減摩剤に更に優れた摩耗抵抗効果を持たせることができる。
【0015】
<ジグリセリン>
ジグリセリンとして、例えば、Solvay社の製品、Spiga社の製品、Lonza社の製品またはSakamoto orient社の製品などが挙げられる。
【0016】
<一塩基酸組成成分>
本発明のエステル生成物の数平均分子量が3800g/molを超え、且つ、ゲル状または流動性がない架橋(cross link)体になることを避けるために、前記組成物の総重量を100wt%として、一塩基酸組成成分の重量を、60wt%~85wt%の範囲内とする。
【0017】
一塩基酸組成成分は、少なくとも1種のC14~C24分岐脂肪酸を含む。一部の実施例において、少なくとも1種のC14~C24直鎖脂肪酸を更に含む。
【0018】
C14~C24分岐脂肪酸は、C14~C24飽和脂肪酸またはC14~C24不飽和脂肪酸でありえる。
【0019】
C14~C24直鎖脂肪酸は、C14~C24飽和脂肪酸またはC14~C24不飽和脂肪酸でありえる。
【0020】
1種類のC14~C24飽和脂肪酸を使用することまたは多種類のC14~C24飽和脂肪酸を混合使用することができ、飽和脂肪酸としては、例えばミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ドコサン酸(docosanoic acid、即ち、ベヘン酸(behenic acid))などが挙げられるが、それらに限らない。
【0021】
1種類のC14~C24不飽和脂肪酸を使用することまたは多種類のC14~C24不飽和脂肪酸を混合使用することができ、不飽和脂肪酸としては、例えばオレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、リノレン酸(linolenic acid)、エルカ酸などが挙げられるが、それらに限らない。
【0022】
一部の実施例において、脂肪酸は、C18脂肪酸またはC18脂肪酸及びC16脂肪酸の組み合わせである。
【0023】
一部の実施例において、一塩基酸組成成分は、少なくとも1種のC18脂肪酸を含む。
【0024】
一部の実施例において、一塩基酸組成成分は、少なくとも1種のC18脂肪酸及び少なくとも1種のC16脂肪酸を含む。例えば、一塩基酸組成成分は、数種類のC18脂肪酸と数種類のC16脂肪酸を含むことができる。
【0025】
液状有機減摩剤とオイル内の鉱油との間に、より優れた相溶性を持たせるため、一塩基酸組成成分の総重量を100wt%として、C18脂肪酸の重量は、70wt%以上の範囲内にあることが好ましい。
【0026】
<二塩基酸組成成分>
【0027】
本発明のエステル生成物の数平均分子量が3800g/molを超え、且つ、ゲル状または流動性がない架橋体になることを避けるために、前記組成物の総重量を100wt%として、二塩基酸組成物の重量は、10wt%~20wt%の範囲内にある。
【0028】
二塩基酸組成成分は、少なくとも1種のC6~C10二塩基酸を含む。
【0029】
C6~C10二塩基酸としては、例えばアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸などが挙げられるが、それらに限らない。
【0030】
<エステル化反応>
一部の実施例において、160℃~240℃でエステル化反応を行う。
【0031】
更に、エステル化反応は、触媒が存在する環境で行うことができる。
【0032】
触媒は、1種類の触媒を使用することまたは多種類の触媒を混合使用することができ、該触媒としては、例えばシュウ酸スズ(II)(SnC2O4)、酸化スズ(II)(SnO)、チタン酸テトラブチル(tetrabutyl titanate)、オルトチタン酸テトライソプロピル(titanium tetraisopropanolate)、メタンスルホン酸(methanesulfonic acid)などが挙げられる。
【実施例】
【0033】
以下、本開示の実施例について説明する。これらの実施例は、例示的かつ説明的なものであり、且つ、本開示を限定するものと解釈されるべきではないことを理解されたい。
【0034】
有機減摩剤の製造
<実施例1>
218gのジグリセリン(Sakamoto Orient Chemicals Corporation社製品)と167gのアジピン酸と696gの一塩基酸組成成分とを混合して、220±5℃でエステル化反応して液状のエステル生成物を得た。そのうち、一塩基酸組成成分は、数種類のC18脂肪酸と数種類のC16脂肪酸を含み、且つ、一塩基酸組成成分の総重量を100wt%として、C18脂肪酸の重量は、80±5wt%の範囲内にある。また、上記の脂肪酸の少なくとも1つは、分岐鎖脂肪酸である。
【0035】
<比較例1>
225gのジグリセリンと116gのアジピン酸と728gの一塩基酸組成成分とを混合して、220±5℃でエステル化反応してエステル生成物を得た。そのうち、一塩基酸組成成分は、実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0036】
<比較例2>
272gのテトラグリセリン(tetraglycerol)と110gのアジピン酸と684gの一塩基酸組成成分とを混合して、220±5℃でエステル化反応してエステル生成物を得た。そのうち、一塩基酸組成成分は、実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0037】
<比較例3>
209gのペンタエリトリトール (pentaerythritol)と187gのアジピン酸と691gの一塩基酸組成成分とを混合して、220±5℃でエステル化反応してエステル生成物を得た。そのうち、一塩基酸組成成分は、実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0038】
<比較例4>
229gのペンタエリトリトールと164gのアジピン酸と688gの一塩基酸組成成分とを混合して、220±5℃でエステル化反応してエステル生成物を得た。そのうち、一塩基酸組成成分は、実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0039】
<比較例5>
Croda社販売のPerfad(登録商標)3057の有機減摩剤である。
【0040】
<比較例6>
275gのジグリセリンと220gのアジピン酸と600gの一塩基酸組成成分とを混合して、220±5℃でエステル化反応してエステル生成物を得た。そのうち、一塩基酸組成成分は、実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0041】
<比較例7>
190gのジグリセリンと85gのアジピン酸と790gの一塩基酸組成成分とを混合して、220±5℃でエステル化反応してエステル生成物を得た。そのうち、一塩基酸組成成分は、実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0042】
<比較例8>
235gのジグリセリンと200gのアジピン酸と650gの一塩基酸組成成分とを混合して、220±5℃でエステル化反応してエステル生成物を得た。そのうち、一塩基酸組成成分は、実施例1と同じなので、説明を省略する。
【0043】
<評価方法>
動粘度(単位:cSt)及び粘度指数測定:
ASTM D445に準拠して、粘度計(Anton Paar Co. Ltd.社、型番:SVM 3000)を使用して、実施例1及び比較例1~5の有機減摩剤の100℃における動粘度を測定し、その100℃における動粘度に基づいて、粘度指数を計算した。
【0044】
数平均分子量測定:
1gの実施例1及び比較例1~4、比較例6~8の有機減摩剤をそれぞれ1Lのテトラヒドロフランに添加し、液体クロマトグラフを使用して測定した。測定に使用した標準試料はポリスチレンであり、該液体クロマトグラフはカラム(Waters社、型番:ACQUITY APC(登録商標))を含む。分析条件は、移動相:テトラヒドロフラン、流速:0.5mL/min、温度:40℃。
【0045】
エステル化度測定:
[(ジグリセリンの水酸基価-各実施例または各比較例の有機減摩剤の水酸基価)÷ジグリセリンの水酸基価]×100%で計算した。更に、水酸基価(mgKOH/g)の測定は、ASTM E222の無水酢酸のアセチル化で水酸基価を測定する標準測定方法に準拠して行った。
【0046】
鉱油相溶性:
1gの実施例1及び比較例1~4、比較例7の有機減摩剤をそれぞれ99gの鉱油(SK Corporation Co., Ltd社、型番:Yubase 4)に添加し、80℃で混合した後、室温に24時間放置し、目視で層分離、析出、混濁の有無を確認する。○:層分離、析出及び混濁なし、X:層分離、析出または混濁あり。
【0047】
摩耗試験:
ASTM D4172(2016)の潤滑油の耐摩耗性試験方法に準拠して、四ボール摩耗試験機を用いて試験サンプルに対して試験を行い、摩耗跡直径(scar diameter、単位:mm)を得た。測定条件は、温度:75℃、回転毎分:1200rpm、負荷(load):40±0.2kg、試験時間:1時間とした。試験サンプルの配置過程を明確に説明するために、実施例1の液状有機減摩剤を例として説明し、各比較例も同じ過程で配置した。実施例1の有機減摩剤が1wt%且つ鉱油(SK Corporation Co., Ltd社、型番:Yubase 4)が99wt%の混合物になるように、実施例1の有機減摩剤と鉱油とを混合することにより試験サンプル得た。
【0048】
酸化安定度試験:
ASTM E2009(2014)の示差走査熱量測定法による炭化水素の酸化開始温度の標準試験方法に準拠して、示差走査熱量測定装置(TA instruments社、型番:Q20)を用いて、実施例1、比較例3及び比較例5の有機減摩剤を測定し、測定条件は、酸素圧力が500psi以上、酸素流量50mL/min、5℃/minの速度で室温から250℃まで上げる。
【0049】
【0050】
【0051】
表1に記載されている実施例1及び比較例2の評価結果によると、実施例1及び比較例2の有機減摩剤のエステル生成物の数平均分子量は3800g/molを超えるが、比較例2のエステル生成物はテトラグリセリンを使用して生成されたことに対して、実施例1のエステル生成物はジグリセリンを使用して生成されたので、比較例2のエステル生成物による摩耗跡直径に比べて、実施例1のエステル生成物による摩耗跡直径が小さい。
【0052】
更に、比較例6及び比較例8の有機減摩剤のエステル生成物は、3800g/molを超える数平均分子量を有し且つジグリセリンを使用して生成されたが、得られる有機減摩剤は、液体状態ではない。
【0053】
そして、表1に記載されている実施例1、比較例3及び比較例4の評価結果によると、比較例3及び比較例4の有機減摩剤のエステル生成物はペンタエリトリトールを使用して生成された上、数平均分子量が3800g/mol以下にあるので、それによる摩耗跡直径が大きい。それに対して、実施例1のエステル生成物はジグリセリンを使用して生成された上、数平均分子量が3800g/molを超えるので、それによる摩耗跡直径が小さい。
【0054】
更に、市販の比較例5の有機減摩剤に比べて、実施例1の有機減摩剤による摩耗跡直径が小さく、酸化安定度が向上している。
【0055】
上記の内容により、本発明の液状有機減摩剤は、前記組成物の総重量を100wt%として、重量が60wt%以上の一塩基酸組成成分及びジグリセリンを使用して生成された上、数平均分子量が3800g/molを超えることにより、液状になって、優れた摩耗抵抗効果(摩擦を減少する作用)及び優れた酸化安定度を持っている。
【0056】
<応用例1>
実施例1の有機減摩剤が1wt%且つSAE0W16エンジンオイルが99wt%の混合物になるように、実施例1の有機減摩剤とSAE0W16エンジンオイルとを混合することにより得た。
【0057】
<応用例2>
実施例1の有機減摩剤が1wt%且つSAE0W40エンジンオイルが99wt%の混合物になるように、実施例1の有機減摩剤とSAE0W40エンジンオイルとを混合することにより得た。
【0058】
<比較応用例1>
比較例1の有機減摩剤が1wt%且つSAE0W16エンジンオイルが99wt%の混合物になるように、比較例1の有機減摩剤とSAE0W16エンジンオイルとを混合することにより得た。
【0059】
<比較応用例2>
比較例2の有機減摩剤が1wt%且つSAE0W16エンジンオイルが99wt%の混合物になるように、比較例2の有機減摩剤とSAE0W16エンジンオイルとを混合することにより得た。
【0060】
<比較応用例3>
比較例5の有機減摩剤が1wt%且つSAE0W16エンジンオイルが99wt%の混合物になるように、比較例5の有機減摩剤とSAE0W16エンジンオイルとを混合することにより得た。
【0061】
<比較応用例4>
比較例5の有機減摩剤が1wt%且つSAE0W40エンジンオイルが99wt%の混合物になるように、比較例5の有機減摩剤とSAE0W40エンジンオイルとを混合することにより得た。
【0062】
<比較応用例5>
SAE0W16エンジンオイルのみである。
【0063】
<比較応用例6>
SAE0W40エンジンオイルのみである。
【0064】
<評価方法>
エネルギー消費測定(J)及び改良効率(%):
ブロックオンリング(block-on-ring)表面摩耗試験機(Reichert社)を用いて、応用例1、比較応用例1~3、比較応用例5の摩擦係数を測定して、ストライベック曲線(Stribeck curve)を得た。測定条件は、温度:120℃、負荷:20±0.2kg、200rpm/minの加速度で0rpmから400rpmまで加速しながら測定を行った。得られたストライベック曲線に対して積分し、エネルギー消費(J)を算出した。改良効率は、[(比較応用例5のエネルギー消費値-応用例または他の比較応用例のエネルギー消費値)÷比較応用例5のエネルギー消費値]×100%。
【0065】
摩耗試験:
ブロックオンリング表面摩耗試験機を用いて、応用例2、比較応用例4及び比較応用例6に対して試験を行い、摩耗面積(単位:mm2)を得た。測定条件は、温度:120℃、負荷:20±0.2kg、回転毎分:400rpm。
【0066】
【0067】
表3に記載されている応用例1、比較応用例1~3、比較応用例5の評価結果によると、SAE0W16エンジンオイルである比較応用例5のエネルギー消費値は101.3Jである。そして、比較例1、比較例2、比較例5の有機減摩剤をSAE0W16エンジンオイル(比較応用例5)に添加すると、エネルギー消費値が101.3Jから99.1J~100.4Jに減少し、実施例1の有機減摩剤をSAE0W16エンジンオイル(比較応用例5)に添加すると、エネルギー消費値が101.3Jから95.4Jに減少した。従って、比較例1、比較例2、比較例5のエステル生成物の省エネ効果と比べて、実施例1の有機減摩剤は、更に優れた省エネ効果を持っている。
【0068】
また、表3に記載されている応用例2、比較応用例4、比較応用例6の評価結果によると、SAE0W40エンジンオイルである比較応用例6の摩耗面積は0.52mm2である。そして、比較例5の有機減摩剤をSAE0W40エンジンオイル(比較応用例6)に添加すると、摩耗面積が0.52mm2から0.50mm2に減少し、実施例1の有機減摩剤をSAE0W40エンジンオイル(比較応用例6)に添加すると、摩耗面積が0.52mm2から0.48mm2に減少した。従って、比較例5の有機減摩剤の摩耗抵抗効果と比べて、実施例1の有機減摩剤は、更に優れた摩耗抵抗効果を持っている。上記の内容により、、本発明の液状有機減摩剤は、優れた摩耗抵抗効果を持っているので、オイルの潤滑性をより高めることができる。
【0069】
更に、本発明の液状有機減摩剤は、原動機または動力伝達システムに用いる減摩剤として使用いると、原動機または動力伝達システムのエネルギー消費を減少でき、優れた省エネの効果を得ることができる。
【0070】
上記においては、説明のため、本発明の全体的な理解を促すべく多くの具体的な詳細が示された。しかしながら、当業者であれば、一またはそれ以上の他の実施形態が具体的な詳細を示さなくとも実施され得ることが明らかである。また、本明細書における「一つの実施形態」「一実施形態」を示す説明において、序数などの表示を伴う説明は全て、特定の態様、構造、特徴を有する本発明の具体的な実施に含まれ得るものであることと理解されたい。更に、本説明において、時には複数の変化例が一つの実施形態、図面、またはこれらの説明に組み込まれているが、これは本説明を合理化させるためのもので、また、本発明の多面性が理解されることを目的としたものであり、また、一実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例は、適切な場合には、本開示の実施において、他の実施形態における一またはそれ以上の特徴あるいは特定の具体例と共に実施され得る。
【0071】
以上、本発明の好ましい実施形態及び変化例を説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、最も広い解釈の精神および範囲内に含まれる様々な構成として、全ての修飾および均等な構成を包含するものとする。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の液状有機減摩剤は、例えばターボチャージャーを有する原動機または動力伝達システムに適用でき、特にオイルと合わせて使用して、原動機または動力伝達システムのエネルギー消費を減少することに好適である。