(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】乗客コンベアの耐震化方法及び耐震化部品
(51)【国際特許分類】
B66B 23/00 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
B66B23/00 B
(21)【出願番号】P 2020132674
(22)【出願日】2020-08-04
【審査請求日】2020-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 聡太郎
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-245084(JP,A)
【文献】特開2017-065822(JP,A)
【文献】特開2013-189298(JP,A)
【文献】特表2017-510526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラスと、
前記トラスに沿って循環可能に無端状に連結された複数の踏段と、
前記複数の踏段の進行方向における前記トラスの端部に設けられ、建造物に設けられるとともに上方に向く第1の受面に、当該第1の受面に沿う摺動方向に摺動可能に支持された支持部材と、
前記建造物に取り付けられ、上方に向く第2の受面を有する第1の支持台と、
前記トラスから下方に突出し、下方に向くとともに前記第2の受面に支持される底面を有する、第1の中間支持体と、
を備える乗客コンベアの耐震化方法であって、
前記第1の支持台を撤去することと、
前記トラスを支持する第1の支持面を有する第2の中間支持体を前記トラスに取り付けることと、
上方に向く第3の受面を有する第2の支持台を前記建造物に取り付けることと、
下方に向き、前記摺動方向において前記底面よりも長く、前記摺動方向に摺動可能に前記第3の受面に支持される摺動面、を有する摺動部材を前記第2の中間支持体に取り付けることと、
を具備する乗客コンベアの耐震化方法。
【請求項2】
前記第2の中間支持体と前記摺動部材との間に、少なくとも一つの第1の調整部材を介在させること、をさらに具備する請求項1の乗客コンベアの耐震化方法。
【請求項3】
前記底面を支持する第2の支持面を有する前記第2の中間支持体を前記第1の中間支持体に取り付けること、をさらに具備する請求項1又は請求項2の乗客コンベアの耐震化方法。
【請求項4】
前記第2の中間支持体と前記トラスとの間、及び前記第2の中間支持体と前記第1の中間支持体との間、のうち少なくとも一方に少なくとも一つの第2の調整部材を介在させること、をさらに具備する請求項3の乗客コンベアの耐震化方法。
【請求項5】
トラスを支持するよう構成された第1の支持面と、
前記トラスから突出する既設中間支持体の底面を支持するよう構成された第2の支持面と、
前記第2の支持面の反対側に位置するとともに、前記第2の支持面に沿う一方向において前記第2の支持面よりも長く、前記一方向に摺動可能に支持台に支持されるよう構成された摺動面と、
前記第2の支持面と前記摺動面との間の距離を調整可能な調整部と、
を具備
し、
前記第1の支持面は、前記第2の支持面が向く方向に対して斜めに傾き、当該第1の支持面の前記摺動面に近い方の端部と前記摺動面から遠い方の端部とが前記一方向において互いに離間している、
耐震化部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、乗客コンベアの耐震化方法及び耐震化部品に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータのような乗客コンベアは、二つの乗降地点の間に設けられたトラスと、無端状に連結されるとともに当該トラスに沿って循環する複数の踏段とを備える。トラスの両端部に設けられた支持部材が建造物に支持されることで、乗客コンベアが建造物に支持される。
【0003】
耐震化のため、支持部材は、踏段の進行方向に摺動可能に建造物に支持される。例えば、踏段の進行方向において、トラスの端部と建造物との間に所定の隙間が設けられる。支持部材は、上記隙間が広がるように摺動した場合にも建造物に支持される長さ(かかり代)を十分確保でき、建造物から脱落することを抑制できるように設計される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば建造物の増改築工事において、乗客コンベアが未だ耐震化されていない場合、乗客コンベアが耐震化される。乗客コンベアには、二つの乗降地点の間でトラスに取り付けられ、建造物に支持される中間支持体が設けられる場合がある。この場合、中間支持体も、支持部材の摺動に追従して摺動可能なように耐震化される。しかし、既設の中間支持体では、摺動時に十分なかかり代を確保することが難しい場合がある。
【0006】
本発明が解決する課題の一例は、十分なかかり代を確保することが可能な乗客コンベアの耐震化方法及び耐震化部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの実施形態に係る乗客コンベアの耐震化方法は、トラスと、前記トラスに沿って循環可能に無端状に連結された複数の踏段と、前記複数の踏段の進行方向における前記トラスの端部に設けられ、建造物に設けられるとともに上方に向く第1の受面に、当該第1の受面に沿う摺動方向に摺動可能に支持された支持部材と、前記建造物に取り付けられ、上方に向く第2の受面を有する第1の支持台と、前記トラスから下方に突出し、下方に向くとともに前記第2の受面に支持される底面を有する、第1の中間支持体と、を備える乗客コンベアの耐震化方法であって、前記第1の支持台を撤去することと、前記トラスを支持する第1の支持面を有する第2の中間支持体を前記トラスに取り付けることと、上方に向く第3の受面を有する第2の支持台を前記建造物に取り付けることと、下方に向き、前記摺動方向において前記底面よりも長く、前記摺動方向に摺動可能に前記第3の受面に支持される摺動面、を有する摺動部材を前記第2の中間支持体に取り付けることと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る乗客コンベアを概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態の既設の中間支持構造を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、第1の実施形態の耐震化された中間支持構造を示す斜視図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態の既設の中間支持構造を示す断面図である。
【
図5】
図5は、第1の実施形態の既設の中間支持構造を示す正面図である。
【
図6】
図6は、第1の実施形態の耐震化された中間支持構造を示す断面図である。
【
図7】
図7は、第1の実施形態の耐震化された中間支持構造を示す正面図である。
【
図8】
図8は、第1の実施形態の耐震化部品を示す斜視図である。
【
図9】
図9は、第1の実施形態の耐震化部品を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
以下に、第1の実施形態について、
図1乃至
図9を参照して説明する。なお、本明細書においては基本的に、鉛直上方を上方向、鉛直下方を下方向と定義する。また、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0010】
図1は、第1の実施形態に係る乗客コンベア1を概略的に示す断面図である。
図1に示すように、本実施形態における乗客コンベア1は、エスカレータである。なお、乗客コンベア1は、エスカレータに限らず、動く歩道(moving walkway)であっても良い。
【0011】
乗客コンベア1は、建造物2の上階3と下階4との間に亘って設けられる。建造物2は、屋根のある建物であっても良いし、野外に設けられた他の工作物であっても良い。上階3は、下階4よりも上方に位置する。
【0012】
乗客コンベア1は、トラス11と、複数の踏段12と、乗降板13,14と、支持部材15,16と、中間支持構造17とを有する。トラス11は、フレームとも称され得る。踏段12は、ステップ、パレット、足場、又は踏台とも称され得る。支持部材15,16は、支持アングルとも称され得る。
【0013】
トラス11の内部に、複数の踏段12が配置される。踏段12は、乗客を乗せる部材である。複数の踏段12は、駆動輪と従動輪との間に掛け渡された踏段チェーンを介して無端状に連結される。モータのような動力源が上記駆動輪を回転駆動することで、複数の踏段12がトラス11に沿って循環(周回)する。
【0014】
トラス11の内部には、上階3又は上階3の近傍において上階機械室3aが設けられ、下階4又は下階4の近傍において下階機械室4aが設けられる。例えば、上階機械室3aに上記駆動輪が配置され、下階機械室4aに上記従動輪が配置される。このため、複数の踏段12は、上階機械室3aと下階機械室4aとの間で循環する。なお、上階機械室3a及び下階機械室4aに配置される部品及び装置はこの例に限られない。
【0015】
乗降板13は、上階機械室3aを覆い、上階3における乗降口に設けられる。乗降板13は、上階3の床面3bと略同一平面上に配置される。乗降板14は、下階機械室4aを覆い、下階4における乗降口に設けられる。乗降板14は、下階4の床面4bと略同一平面上に配置される。
【0016】
エスカレータとしての乗客コンベア1が下降方向に稼動する場合、複数の踏段12は、上階3の乗降口において進行方向に向けて隣接する踏段12同士が水平状でトラス11内から進出され、上部遷移カーブにおいて隣接する踏段12の間の段差を拡大しながら階段状に遷移され、中間傾倒部において階段状で下降され、下部遷移カーブにおいて隣接する踏段12の間の段差を縮小しながら水平状に遷移され、下階4の乗降口において再び水平状となってトラス11内に進入する。そして、複数の踏段12は、トラス11内に進入された後に上方に反転され、帰路側を水平状で上昇され、再度反転されて上階3の乗降口においてトラス11内から進出される。上昇方向に稼動する乗客コンベア1では上記の逆の動作となる。
【0017】
踏段12の進行方向は、踏段12の移動に応じて変化する。すなわち、踏段12の進行方向は、上階3及び下階4の乗降口の近傍においては略水平方向であり、上部遷移カーブ、中間傾斜部、及び下部遷移カーブにおいては斜め上方向又は斜め下方向となる。一般的に水平方向における踏段12の進行方向は所定の一方向又はその反対方向(
図1における左右方向)であるが、乗客コンベア1がカーブする場合、水平方向における踏段12の進行方向も当該乗客コンベア1の移動に応じて変化する。水平方向における踏段12の進行方向は、前後方向とも称され得る。
【0018】
支持部材15は、踏段12の進行方向におけるトラス11の一方の端部11aに設けられる。端部11aは、前後方向におけるトラス11の一方の端部でもある。端部11aは、略水平方向に所定の間隔を介して上階3に向く。
【0019】
支持部材15は、例えば、略L字に曲がった板状に形成された、いわゆるL型アングル材である。支持部材15は、取付部15aと、支持部15bとを有する。取付部15aは、トラス11の端部11aに、例えばボルトにより取り付けられる。支持部15bは、取付部15aの上方向の端から、踏段12の進行方向に延びている。
【0020】
支持部15bは、上階3に設けられた第1の受面3cに支持される。第1の受面3cは、上方に向く略水平な平面である。第1の受面3cは、上階3の床面3bから窪んでいる。支持部15bは、第1の受面3cに、当該第1の受面3cに沿う摺動方向Dsに摺動可能に支持される。本実施形態において、摺動方向Dsは、前後方向である。摺動方向Dsは、略水平な一方向Ds1と、当該一方向の反対方向Ds2とを含む。方向Ds1,Ds2が摺動方向と称されても良い。
【0021】
支持部材16は、踏段12の進行方向におけるトラス11の他方の端部11bに設けられる。端部11bは、前後方向におけるトラス11の他方の端部でもある。端部11bは、略水平方向に所定の間隔を介して下階4に向く。
【0022】
支持部材16は、例えば、略L字に曲がった板状に形成された、いわゆるL型アングル材である。支持部材16は、取付部16aと、支持部16bとを有する。取付部16aは、トラス11の端部11bに、例えばボルトにより取り付けられる。支持部16bは、取付部16aの上方向の端から、踏段12の進行方向に延びている。
【0023】
支持部16bは、下階4に設けられた第1の受面4cに支持される。第1の受面4cは、上方に向く略水平な平面である。第1の受面4cは、下階4の床面4bから窪んでいる。支持部16bは、第1の受面4cに、摺動方向Dsに摺動可能に支持される。このため、支持部材15,16とトラス11とは、例えば地震が発生したときに、建造物2に対して一体的に摺動方向Dsに移動することができる。
【0024】
図2は、第1の実施形態の既設の中間支持構造17Aを示す斜視図である。
図3は、第1の実施形態の耐震化された中間支持構造17Bを示す斜視図である。本実施形態では、既設の中間支持構造17Aが、耐震化された中間支持構造17Bに改修される。なお、以下の説明において、中間支持構造17は、既設の中間支持構造17Aと、耐震化された中間支持構造17Bと、耐震化作業中の中間支持構造17とを含む。
【0025】
図1に示すように、中間支持構造17は、乗客コンベア1における上階3と下階4との間に設けられる。中間支持構造17は、例えば、トラス11に設けられる下弦材21と、建造物2に設けられる受梁22と、の間に介在し、上階3と下階4との間においてトラス11を支持する。なお、中間支持構造17は、例えば、トラス11と、下階4の床面4bとの間に介在しても良い。
【0026】
下弦材21は、トラス11の下部を形成する。
図2に示すように、トラス11において、二つの下弦材21が、幅方向Dwに間隔を介して並べられる。幅方向Dwは、進行方向と直交し且つ水平な方向である。別の表現によれば、幅方向Dwは、第1の受面3c,4cに沿う方向であって、摺動方向Dsと直交する方向である。トラス11は、例えば、下弦材21に連結される上弦材及び他の骨組みをさらに有し、下弦材21を含むフレーム状に形成される。
【0027】
下弦材21はそれぞれ、傾斜壁25を有する。傾斜壁25は、乗客コンベア1の中間傾倒部に設けられ、上階3と下階4との間で斜め方向に延びている。別の表現によれば、傾斜壁25は、上階3から下階4に斜めに近づくように延びている。
【0028】
傾斜壁25は、下面25aを有する。下面25aは、斜め下方に向く略平坦な面である。下弦材21は、幅方向Dwにおける傾斜壁25の端から上方向に延びる立壁26をさらに有し、略L字の板状に形成される。
【0029】
受梁22は、例えば、幅方向Dwに延びる梁である。受梁22は、鉛直方向において上階3と下階4との間に位置する。なお、受梁22は、下階4と略同一平面上に配置されても良い。受梁22は、上面22aを有する。上面22aは、上方に向く略水平な平面である。上面22aは、間隔を介して傾斜壁25の下面25aに向く。
【0030】
中間支持構造17Aは、二つの第1の支持台41と、二つの第1の中間支持体42と、二つの第1の振れ止め部材43と、第1の連結梁44と、を有する。第1の中間支持体42は、既設中間支持体とも称される。なお、中間支持構造17Aは、他の部品を有しても良いし、第1の振れ止め部材43及び第1の連結梁44が省略されても良い。
【0031】
図4は、第1の実施形態の既設の中間支持構造17Aを示す断面図である。
図5は、第1の実施形態の既設の中間支持構造17Aを示す正面図である。
図5に示すように、二つの第1の支持台41は、幅方向Dwに間隔を介して建造物2の受梁22に取り付けられる。第1の支持台41はそれぞれ、既設支持台51と、少なくとも一つの調整部材52とを有する。なお、第1の支持台41は、この例に限られず、例えば単一の部材であっても良い。
【0032】
既設支持台51は、受梁22の上面22aから上方向に突出するように、上面22aに取り付けられる。既設支持台51は、例えば、複数のボルト53によって受梁22に取り付けられる。なお、既設支持台51は、溶接のような他の手段によって受梁22に取り付けられても良い。既設支持台51は、上面51aを有する。上面51aは、上方に向く略水平な平面である。上面51aは、間隔を介して傾斜壁25の下面25aに向く。
【0033】
調整部材52は、例えば、略平坦な板状に形成される。なお、調整部材52は、他の形状に形成されても良い。調整部材52は、既設支持台51の上面51a上に配置される。第1の支持台41が複数の調整部材52を有する場合、複数の調整部材52が上面51a上に積載される。
【0034】
少なくとも一つの調整部材52は、第2の受面52aを有する。第2の受面52aは、上方に向く略水平な平面である。第2の受面52aは、間隔を介して傾斜壁25の下面25aに向く。
【0035】
第1の支持台41が一つの調整部材52を有する場合、第2の受面52aは当該調整部材52の上面である。第1の支持台41が複数の調整部材52を有する場合、第2の受面52aは、複数の調整部材52のうち最も上方に位置する調整部材52の上面である。このため、調整部材52の数によって、鉛直方向における第2の受面52aの位置が調整される。
【0036】
図4に示すように、二つの第1の中間支持体42はそれぞれ、トラス11の下弦材21から下方に突出するように、二つの下弦材21に取り付けられる。例えば、第1の中間支持体42は、傾斜壁25の下面25aに溶接によって取り付けられる。なお、第1の中間支持体42は、例えばボルトのような他の手段により傾斜壁25に取り付けられても良い。
【0037】
第1の中間支持体42は、下壁55と、立壁56とを有する。下壁55は、傾斜壁25の下面25aのうち、第1の中間支持体42が取り付けられた部分の下方に離間している。立壁56は、例えば幅方向Dwの内側に開放された略U字型に形成され、下壁55から上方に延びている。幅方向Dwの内側は、幅方向Dwにおいて、トラス11の中央に向かう方向である。立壁56の上方の端が傾斜壁25の下面25aに溶接されている。
【0038】
下壁55は、底面55aを有する。底面55aは、下方に向く略水平な平面である。底面55aは、調整部材52の第2の受面52aに略鉛直方向に支持される。本実施形態において、底面55aは第2の受面52aに当接する。しかし、底面55aは、他の部品を介して第2の受面52aに支持されても良い。
【0039】
図5に示すように、二つの第1の振れ止め部材43はそれぞれ、対応する第1の支持台41に取り付けられる。例えば、第1の振れ止め部材43は、上面51aから上方に突出するように、既設支持台51に取り付けられる。
【0040】
第1の振れ止め部材43は、幅方向Dwの内側における下壁55の縁55bに当接し、又は縁55bの近傍に位置する。第1の振れ止め部材43は、縁55bに当接することで、トラス11が建造物2に対して幅方向Dwに移動することを制限する。
【0041】
第1の連結梁44は、幅方向Dwに延びている。第1の連結梁44の一方の端部は、一方の第1の中間支持体42の立壁56に取り付けられる。第1の連結梁44の他方の端部は、他方の第1の中間支持体42の立壁56に取り付けられる。これにより、第1の連結梁44は、二つの第1の中間支持体42を連結する。
【0042】
図3に示すように、耐震化された中間支持構造17Bは、二つの第1の中間支持体42と、二つの第2の支持台61と、二つの耐震化部品62と、第2の振れ止め部材63と、第2の連結梁64とを有する。なお、
図3は、二つの第1の中間支持体42のうち一つを示す。第2の支持台61は、支持台とも称され得る。なお、中間支持構造17Bは、他の部品を有しても良いし、第2の振れ止め部材63及び第2の連結梁64が省略されても良い。
【0043】
図6は、第1の実施形態の耐震化された中間支持構造17Bを示す断面図である。
図7は、第1の実施形態の耐震化された中間支持構造17Bを示す正面図である。
図7に示すように、二つの第2の支持台61は、第1の支持台41の代わりに、幅方向Dwに間隔を介して建造物2の受梁22に取り付けられる。
【0044】
第2の支持台61は、受梁22の上面22aから上方向に突出するように、上面22aに取り付けられる。第2の支持台61は、例えば、アンカーボルト又はスプリングピンによって受梁22に取り付けられる。なお、第2の支持台61は、溶接のような他の手段によって受梁22に取り付けられても良い。
【0045】
第2の支持台61はそれぞれ、第3の受面61aを有する。第3の受面61aは、上方に向く略水平な平面である。第3の受面61aは、間隔を介して傾斜壁25の下面25aに向く。本実施形態において、第2の支持台61の第3の受面61aは、第1の支持台41の第2の受面52aよりも下方に位置する。なお、第3の受面61a及び第2の受面52aの位置はこの例に限られない。
【0046】
図6に示すように、二つの耐震化部品62はそれぞれ、第2の中間支持体71と、摺動部材72と、少なくとも一つの第1の調整部材73と、少なくとも一つの第2の調整部材74と、ジャッキボルト75とを有する。なお、耐震化部品62はこの例に限られない。
【0047】
第2の中間支持体71は、トラス11の下弦材21から下方に突出するように、二つの下弦材21に取り付けられる。第2の中間支持体71は、傾斜支持壁81と、下壁82と、外立壁83と、支持壁84と、内立壁85とを有する。なお、第2の中間支持体71は、この例に限られない。
【0048】
傾斜支持壁81は、傾斜壁25の下面25aに沿って斜めに延びている。傾斜支持壁81は、第1の支持面81aを有する。第1の支持面81aは、斜め上方に向く略平坦な面である。第1の支持面81aは、傾斜壁25の下面25aと略平行に配置され、下面25aに向く。第1の支持面81aは、トラス11の傾斜壁25を斜め方向に支持する。
【0049】
図8は、第1の実施形態の耐震化部品62を示す斜視図である。
図9は、第1の実施形態の耐震化部品62を示す側面図である。
図8に示すように、傾斜支持壁81に、開口81bが設けられる。開口81bは、第1の支持面81aに開口するように、傾斜支持壁81を貫通する。開口81bが設けられることで、第1の支持面81aに、第1の領域81aaと、第2の領域81abとが設けられる。
【0050】
第1の領域81aaと第2の領域81abとは、摺動方向Dsにおいて互いに離間している。開口81bは、第1の領域81aaと第2の領域81abとの間に設けられる。
図8における開口81bは、傾斜支持壁81を二つの部分に分離させる空隙である。このため、傾斜支持壁81は、第1の領域81aaを有する一つの部材と、第2の領域81abを有する他の部材と、を含む。なお、開口81bは、幅方向Dwの内側に開放された切り欠きであっても良いし、孔であっても良い。
【0051】
図6に示すように、第1の中間支持体42が、開口81bを通る。言い換えると、傾斜支持壁81に、第1の中間支持体42を避けるように開口81bが設けられる。摺動方向Dsにおいて、第1の中間支持体42は、第1の領域81aaと第2の領域81abとの間に位置する。
【0052】
傾斜支持壁81は、例えば、複数のボルト87によって傾斜壁25に取り付けられる。ボルト87は、例えば、第1の領域81aaと第2の領域81abとに開口する複数の孔81cを通り、傾斜壁25に設けられたネジ穴25bに挿入される。このため、第1の中間支持体42は、摺動方向Dsにおいて二つのボルト87の間に位置する。なお、傾斜支持壁81は、例えば、溶接のような他の手段によって傾斜壁25の下面25aに取り付けられても良い。
【0053】
下壁82は、傾斜支持壁81から下方に離間している。下壁82は、下面82aを有する。下面82aは、下方に向く略水平な平面である。下面82aは、摺動方向Dsにおいて第1の中間支持体42の底面55aよりも長い。下面82aは、第2の支持台61から上方に離間し、間隔を介して第2の支持台61の第3の受面61aに向く。
【0054】
外立壁83は、例えば幅方向Dwの内側に開放された略U字型に形成され、下壁82から上方に延びている。外立壁83の上方の端が傾斜支持壁81に溶接されている。外立壁83は、傾斜支持壁81の孔81cを囲む。
【0055】
支持壁84は、傾斜壁25の下面25aのうち、第1の中間支持体42が取り付けられた部分から下方に離間している。本実施形態において、支持壁84は、第1の中間支持体42の底面55aと、下壁82との間に位置する。鉛直方向において、支持壁84は、傾斜支持壁81と下壁82との間に位置する。
【0056】
支持壁84は、第2の支持面84aを有する。第2の支持面84aは、上方に向く略水平な平面である。第2の支持面84aは、第1の中間支持体42の底面55aと略平行に配置され、底面55aに向く。第2の支持面84aは、第1の中間支持体42の底面55aを略鉛直方向に支持する。
【0057】
第2の支持面84aは、摺動方向Dsにおいて底面55aと略同じ長さを有する。なお、第2の支持面84aは、摺動方向Dsにおいて底面55aより長くても短くても良い。第2の支持面84aは、摺動方向Dsにおいて、下壁82の下面82aよりも短い。
【0058】
支持壁84は、例えば、複数のボルト88によって第1の中間支持体42の下壁55に取り付けられる。ボルト88は、例えば、下壁55に設けられた複数の孔55cを通り、支持壁84に設けられたネジ穴84bに挿入される。なお、支持壁84は、例えば、溶接のような他の手段によって下壁55の底面55aに取り付けられても良い。
【0059】
内立壁85は、例えば幅方向Dwの内側に開放された略U字型に形成され、下壁82から上方に延びている。内立壁85の上方の端が支持壁84に溶接されている。内立壁85は、外立壁83に囲まれる。
【0060】
摺動部材72は、第2の中間支持体71の下壁82の下面82aと、第2の支持台61の第3の受面61aとの間に位置する。摺動部材72は、摺動面72aと上面72bとを有する。
【0061】
摺動面72aは、下方に向く略水平な平面である。摺動面72aは、摺動方向Dsにおいて第1の中間支持体42の底面55aよりも長い。また、摺動面72aは、摺動方向Ds(一方向Ds1)において第2の中間支持体71の第2の支持面84aよりも長い。さらに、摺動面72aは、摺動方向Dsにおいて、第2の支持台61の第3の受面61aよりも長い。
【0062】
摺動面72aは、第2の支持台61の第3の受面61aと略平行に配置され、第3の受面61aに向く。摺動面72aは、摺動方向Ds(一方向Ds1及び反対方向Ds2)に摺動可能に第3の受面61aに略鉛直方向に支持される。本実施形態において、摺動面72aは第3の受面61aに当接する。しかし、摺動面72aは、他の部品を介して第3の受面61aに支持されても良い。
【0063】
上面72bは、摺動面72aの反対側に位置し、上方に向く略水平な面である。上面72bは、第2の中間支持体71の下面82aと略平行に配置され、間隔を介して下面82aに向く。
【0064】
第1の調整部材73は、例えば、略平坦な板状に形成される。なお、第1の調整部材73は、他の形状に形成されても良い。少なくとも一つの第1の調整部材73は、第2の中間支持体71の下面82aと摺動部材72の上面72bとの間に介在する。耐震化部品62が複数の第1の調整部材73を有する場合、複数の第1の調整部材73が第2の中間支持体71と摺動部材72との間で積層する。
【0065】
摺動部材72は、少なくとも一つの第1の調整部材73を介して、第2の中間支持体71を支持する。第1の調整部材73の数によって、第2の中間支持体71の下面82aと摺動部材72の上面72bとの間の距離が調整される。
【0066】
図9に示すように、耐震化部品62において、第2の中間支持体71の第2の支持面84aと、摺動部材72の摺動面72aとは、支持壁84、内立壁85、下壁82、少なくとも一つの第1の調整部材73、及び摺動部材72を介して、互いに反対側に位置する。このため、第1の調整部材73の数によって、第2の中間支持体71の第2の支持面84aと摺動部材72の摺動面72aとの間の距離も調整される。
【0067】
耐震化部品62は、第2の中間支持体71の第2の支持面84aと摺動部材72の摺動面72aとの間の距離を調整可能な調整部62aを有する。本実施形態における調整部62aは、少なくとも一つの第1の調整部材73である。なお、調整部62aはこの例に限られず、例えば、ジャッキボルト、ジャッキ、楔、充填材、又は第2の支持面84aと摺動面72aとの間の距離を調整可能な他の手段を有しても良い。
【0068】
第1の調整部材73の数は、鉛直方向における摺動部材72の摺動面72aの位置を、当該摺動面72aが第2の支持台61の第3の受面61aに当接する位置に配置するために設定される。これにより、トラス11と受梁22との間で中間支持構造17が圧縮されたり、トラス11が歪んだりすることが抑制される。
【0069】
第2の中間支持体71、摺動部材72、及び少なくとも一つの第1の調整部材73は、例えば、複数のボルト89によって互いに取り付けられる。ボルト89は、例えば、下壁82に設けられた孔82bと、第1の調整部材73に設けられた切欠き73aとを通り、摺動部材72の上面72bに開口するネジ穴72cに挿入される。なお、第2の中間支持体71、摺動部材72、及び少なくとも一つの第1の調整部材73は、例えば、溶接のような他の手段によって互いに取り付けられても良い。
【0070】
図6に示すように、第2の調整部材74は、例えば、シムであり、切欠きが設けられた略平坦な板状に形成される。なお、第2の調整部材74は、他の形状に形成されても良い。また、第2の調整部材74は、スペーサとも称され得る。
【0071】
少なくとも一つの第2の調整部材74は、第2の中間支持体71の第1の支持面81aとトラス11の下面25aとの間、及び第2の中間支持体71の第2の支持面84aと第1の中間支持体42の底面55aとの間、のうち少なくとも一方に介在する。耐震化部品62が複数の第2の調整部材74を有する場合、複数の第2の調整部材74が第2の中間支持体71とトラス11との間、及び第2の中間支持体71と第1の中間支持体42との間、のうち少なくとも一方で積層する。
【0072】
第2の調整部材74の数及び位置は、第2の中間支持体71の下面82a及び摺動部材72の摺動面72aを略水平にするために設定される。このため、第2の中間支持体71の第1の支持面81aとトラス11の下面25aとは、第2の調整部材74を介さずに互いに直接接触する部分を有しても良い。また、第2の中間支持体71の第2の支持面84aと第1の中間支持体42の底面55aとは、第2の調整部材74を介さずに互いに直接接触する部分を有しても良い。
【0073】
第1の調整部材73と第2の調整部材74とのうち少なくとも一方は、省略されても良い。例えば、第1の調整部材73を設けること無しに、摺動部材72の摺動面72aが第2の支持台61の第3の受面61aに当接する場合、第1の調整部材73が省略されても良い。また、第2の調整部材74を設けること無しに、第2の中間支持体71の下面82a及び摺動部材72の摺動面72aが略水平に配置される場合、第2の調整部材74が省略されても良い。
【0074】
ジャッキボルト75は、第2の中間支持体71の下壁82に設けられたネジ穴82cに取り付けられる。ジャッキボルト75は、下壁82の下面82aから突出し、摺動部材72及び第1の調整部材73に設けられた切欠き72d,73bを通り、第2の支持台61の第3の受面61aに当接する。なお、ジャッキボルト75は省略されても良い。
【0075】
図7に示すように、第2の振れ止め部材63は二つの第2の支持台61に取り付けられる。例えば、第2の振れ止め部材63は、第3の受面61aから上方に突出するように、第2の支持台61に取り付けられる。
図6に示すように、第2の振れ止め部材63と第2の支持台61とは、例えばスプリングピンに91より互いに取り付けられる。
【0076】
図7に示すように、第2の振れ止め部材63は、幅方向Dwの内側における摺動部材72の縁72eに当接し、又は縁72eの近傍に位置する。第2の振れ止め部材63は、縁72eに当接することで、トラス11が建造物2に対して幅方向Dwに移動することを制限する。
【0077】
第2の連結梁64は、幅方向Dwに延びている。第2の連結梁64の一方の端部は、一方の第2の中間支持体71の外立壁83に、例えばボルト92により取り付けられる。第2の連結梁64の他方の端部は、他方の第2の中間支持体71の外立壁83に、例えばボルト92により取り付けられる。これにより、第2の連結梁64は、二つの第2の中間支持体71を連結する。
【0078】
以下、乗客コンベア1の耐震化方法の一部について例示する。なお、乗客コンベア1の耐震化方法は以下の方法に限らず、他の方法を用いても良い。乗客コンベア1は、例えば、建造物2が増改築される際に、耐震化される。以下の耐震化方法では、例えば、既設の中間支持構造17Aが、日本国における平成25年国土交通省告示 第1046号に定められたいわゆる「14耐震」の基準に適合する中間支持構造17Bに改修される。なお、中間支持構造17Bが適合する耐震基準は「14耐震」に限られない。
【0079】
まず、
図2の第1の支持台41、第1の振れ止め部材43、及び第1の連結梁44が撤去される。第1の支持台41、第1の振れ止め部材43、及び第1の連結梁44のうち少なくとも一つが溶接されていた場合、溶接痕が平坦に均される。
【0080】
次に、トラス11の傾斜壁25に、例えばタップにより複数のネジ穴25bが形成される。さらに、第1の中間支持体42の下壁55に、例えばキリ又はドリルにより複数の孔55cが形成される。
【0081】
次に、
図6の第2の中間支持体71が、第1の中間支持体42に取り付けられる。例えば、第2の中間支持体71の支持壁84と第1の中間支持体42の下壁55とが、ボルト88によって互いに取り付けられる。
【0082】
次に、第2の中間支持体71が、トラス11に取り付けられる。例えば、第2の中間支持体71の傾斜支持壁81とトラス11の傾斜壁25とが、ボルト87によって互いに取り付けられる。
【0083】
次に、少なくとも一つの第2の調整部材74が、第2の中間支持体71とトラス11との間、及び第2の中間支持体71と第1の中間支持体42との間、のうち少なくとも一方に介在させられる。例えば、少なくとも一つの第2の調整部材74が、第2の中間支持体71とトラス11との間の隙間、及び第2の中間支持体71と第1の中間支持体42との間の隙間に挿入される。
【0084】
第2の調整部材74は、当該第2の調整部材74に設けられた切り欠きにボルト87,88が入るように、上記隙間に挿入される。これにより、第2の調整部材74がボルト87,88を避けることができ、第2の調整部材74がボルト87,88に干渉することを抑制される。
【0085】
第2の中間支持体71とトラス11との間、及び第2の中間支持体71と第1の中間支持体42との間における第2の調整部材74の数及び位置が調整されることで、第2の中間支持体71の下面82aが略水平に調整される。下面82aが略水平に調整された後、ボルト87,88により、第2の中間支持体71が、トラス11及び第1の中間支持体42に固定される。
【0086】
次に、第2の支持台61が建造物2の受梁22に取り付けられる。例えば、第2の支持台61と受梁22とが、アンカーボルト又はスプリングピンによって互いに取り付けられる。なお、第2の支持台61は、第2の中間支持体71がトラス11及び第1の中間支持体42に取り付けられる前に、受梁22に取り付けられても良い。
【0087】
次に、摺動部材72が第2の中間支持体71に取り付けられる。例えば、ジャッキボルト75が第2の中間支持体71の下壁82と第2の支持台61との間の間隔を保持した状態で、摺動部材72が第2の支持台61の第3の受面61aに載置される。さらに、少なくとも一つの第1の調整部材73が、下壁82と摺動部材72との間に介在させられる。
【0088】
例えば、摺動部材72及び少なくとも一つの第1の調整部材73が、下壁82と第2の支持台61との間の隙間に挿入される。摺動部材72及び第1の調整部材73は、切り欠き72d,73bにジャッキボルト75が入るように、上記隙間に挿入される。これにより、摺動部材72及び第1の調整部材73がジャッキボルト75を避けることができ、摺動部材72及び第1の調整部材73がジャッキボルト75に干渉することを抑制される。
【0089】
第2の中間支持体71と摺動部材72との間における第1の調整部材73の数が調整されることで、鉛直方向における摺動部材72の摺動面72aの位置が、摺動部材72が適切に第2の支持台61の第3の受面61a上で摺動可能なように調整される。摺動面72aの位置が調整された後、ボルト89により、第2の中間支持体71、摺動部材72、及び第1の調整部材73が互いに固定される。
【0090】
次に、第2の振れ止め部材63が、第2の支持台61に取り付けられる。例えば、第2の振れ止め部材63と第2の支持台61とが、スプリングピン91により互いに取り付けられる。
【0091】
次に、第2の連結梁64が、二つの第2の中間支持体71を連結する。例えば、第2の連結梁64の両端部が、二つの第2の中間支持体71に、ボルト92によって取り付けられる。なお、第2の連結梁64は、第2の振れ止め部材63が第2の支持台61に取り付けられる前に、第2の中間支持体71に取り付けられても良い。
【0092】
以上により、既設の中間支持構造17Aが耐震化された中間支持構造17Bに改修される。以上の乗客コンベア1の耐震化方法は、溶接を行うことなく実施可能であり、建造物2で溶接による火花、熱、及び騒音が生じることが抑制される。
【0093】
例えば、地震が発生した場合、摺動部材72は、第2の支持台61の第3の受面61a上を、摺動方向Dsに摺動することができる。摺動方向Dsにおいて、摺動部材72の摺動面72aは、例えば、第1の中間支持体42の底面55aよりも長い。このため、摺動部材72が第3の受面61a上で摺動しても、摺動部材72が第3の受面61aに支持される摺動方向Dsにおける長さ(かかり代)が十分確保され、摺動部材72が第2の支持台61から脱落することが抑制される。
【0094】
以上説明された第1の実施形態に係る乗客コンベア1の耐震化方法において、既設の第1の支持台41が撤去され、第2の中間支持体71がトラス11に取り付けられ、さらに第3の受面61aを有する第2の支持台61が建造物2に取り付けられる。そして、下方に向き、摺動方向Dsにおいて第1の中間支持体42の底面55aよりも長く、摺動方向Dsに摺動可能に第3の受面61aに支持される摺動面72a、を有する摺動部材72が、第2の中間支持体71に取り付けられる。これにより、例えば地震が発生した場合、トラス11、第2の中間支持体71、及び摺動部材72が、摺動面72aと第3の受面61aとの摺動を伴いながら、摺動方向Dsに移動することができる。摺動部材72の摺動面72aは、既設の第1の中間支持体42の底面55aよりも摺動方向Dsにおいて長いため、摺動方向Dsにおいて十分なかかり代を確保することができ、第3の受面61aから脱落することが抑制される。
【0095】
第2の中間支持体71と摺動部材72との間に、少なくとも一つの第1の調整部材73が介在する。これにより、乗客コンベア1の耐震化作業が行われる現場において、第1の調整部材73の数を調整することで、摺動面72aの位置が調整可能となる。従って、摺動面72aと第3の受面61aとが互いに適切な位置で接触することができる。
【0096】
第2の中間支持体71は、底面55aを支持する第2の支持面84aを有する。当該第2の中間支持体71が、第1の中間支持体42に取り付けられる。これにより、トラス11から第1の中間支持体42を撤去する必要が無くなり、現場における作業時間やコストが低減され得る。さらに、第2の中間支持体71が第1の中間支持体42に取り付けられることで、乗客コンベア1の中間支持構造17の強度が向上する。
【0097】
第2の中間支持体71とトラス11との間、及び第2の中間支持体71と第1の中間支持体42との間、のうち少なくとも一方に少なくとも一つの第2の調整部材74が介在する。これにより、現場において、第2の調整部材74の数及び位置を調整することで、摺動面72aの位置及び水平度が調整可能となる。従って、摺動面72aと第3の受面61aとが互いに平行且つ略水平に接触することができる。
【0098】
耐震化部品62において、第1の支持面81aはトラス11を支持し、第2の支持面84aはトラス11から突出する第1の中間支持体42の底面55aを支持する。さらに、摺動面72aは、第2の支持面84aの反対側に位置するとともに、第2の支持面84aに沿う一方向Ds1(摺動方向Ds)において第2の支持面84aよりも長く、一方向Ds1に摺動可能に第2の支持台61に支持される。すなわち、耐震化部品62は、第2の支持台61に摺動可能に支持されることが可能な底面55aを、当該底面55aよりも一方向Ds1において長く形成可能な摺動面72aに代替する。従って、摺動面72aは、底面55aの代わりに一方向Ds1において十分なかかり代を確保することができ、第2の支持台61から脱落することが抑制される。耐震化部品62は、このかかり代を長くする耐震化工事を、第1の中間支持体42を撤去することなく行うことを可能にし、現場における作業時間やコストが低減することができる。さらに、調整部62aは、第2の支持面84aと摺動面72aとの間の距離を調整可能である。これにより、現場で摺動面72aの位置が調整可能となり、摺動面72aと第2の支持台61とが互いに適切な位置で接触することができる。
【0099】
(第2の実施形態)
以下に、第2の実施形態における乗客コンベア1の耐震化方法の一部について説明する。なお、以下の実施形態の説明において、既に説明された構成要素と同様の機能を持つ構成要素は、当該既述の構成要素と同じ符号が付され、さらに説明が省略される場合がある。また、同じ符号が付された複数の構成要素は、全ての機能及び性質が共通するとは限らず、各実施形態に応じた異なる機能及び性質を有していても良い。
【0100】
第2の実施形態では、既設の中間支持構造17Aが溶接を伴って耐震化された中間支持構造17Bに改修される。さらに、第2の実施形態の中間支持構造17Bは、二つの第2の支持台61と、二つの耐震化部品62と、第2の振れ止め部材63と、第2の連結梁64とを有し、第1の中間支持体42を有さない。
【0101】
まず、第1の支持台41、第1の中間支持体42、第1の振れ止め部材43、及び第1の連結梁44が撤去される。第1の支持台41、第1の中間支持体42、第1の振れ止め部材43、及び第1の連結梁44のうち少なくとも一つが溶接されていた場合、溶接痕が平坦に均される。
【0102】
次に、第2の中間支持体71が、トラス11に取り付けられる。例えば、第2の中間支持体71の傾斜支持壁81とトラス11の傾斜壁25とが、溶接によって互いに取り付けられる。
【0103】
次に、第2の支持台61が建造物2の受梁22に取り付けられる。例えば、第2の支持台61と受梁22とが、溶接によって互いに取り付けられる。なお、第2の支持台61は、第2の中間支持体71がトラス11に取り付けられる前に、受梁22に取り付けられても良い。
【0104】
次に、摺動部材72が第2の中間支持体71に取り付けられる。例えば、ジャッキボルト75が第2の中間支持体71の下壁82と第2の支持台61との間の間隔を保持した状態で、摺動部材72が第2の支持台61の第3の受面61aに載置される。さらに、少なくとも一つの第1の調整部材73が、下壁82と摺動部材72との間に介在させられる。そして、ボルト89により、第2の中間支持体71、摺動部材72、及び第1の調整部材73が互いに固定される。
【0105】
次に、第2の振れ止め部材63が、第2の支持台61に取り付けられる。例えば、第2の振れ止め部材63と第2の支持台61とが、溶接により互いに取り付けられる。
【0106】
次に、第2の連結梁64が、二つの第3の受面61aを連結する。例えば、第2の連結梁64の両端部が、二つの第3の受面61aに、溶接によって取り付けられる。なお、第2の連結梁64は、第2の振れ止め部材63が第2の支持台61に取り付けられる前に、第3の受面61aに取り付けられても良い。
【0107】
以上により、既設の中間支持構造17Aが耐震化された中間支持構造17Bに改修される。以上の乗客コンベア1の耐震化方法は、溶接を用いることで、中間支持構造17の強度をより高くすることができる。
【0108】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0109】
1…乗客コンベア、2…建造物、3c,4c…第1の受面、11…トラス、11a,11b…端部、12…踏段、15,16…支持部材、41…第1の支持台、42…第1の中間支持体(既設中間支持体)、52a…第2の受面、55a…底面、61…第2の支持台(支持台)、61a…第3の受面、62…耐震化部品、62a…調整部、71…第2の中間支持体、72…摺動部材、72a…摺動面、73…第1の調整部材、74…第2の調整部材、81a…第1の支持面、84a…第2の支持面、Ds…摺動方向、Ds1…一方向。