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  • 特許-グリス固化軽減装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】グリス固化軽減装置
(51)【国際特許分類】
   B66B 11/04 20060101AFI20220301BHJP
   B66B 5/04 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
B66B11/04 Z
B66B5/04 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020135847
(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公開番号】P2022032251
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2020-08-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勇輝
【審査官】加藤 三慶
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-180148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 5/04
B66B 7/12
B66B 11/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロープを巻き掛けたシーブを加温するシーブ加温手段を備え、エレベータ建屋内で前記シーブを加温することで、前記ロープに付着したグリスの固化を軽減するグリス固化軽減装置であって、
前記シーブ加温手段は、前記エレベータ建屋内に設けて発熱する熱源機器と、前記熱源機器の熱を前記シーブに案内する熱案内部材を備え
前記熱源機器は、乗りかごを昇降する巻き上げ機であり、前記シーブはガバナシーブであるグリス固化軽減装置。
【請求項2】
前記熱案内部材は、前記巻き上げ機に設けたヒートシンクと、前記ヒートシンクに送風する送風機と、送風された風を前記シーブに案内するダクトとを備える請求項に記載のグリス固化軽減装置。
【請求項3】
前記ダクトの吹き出し口は、前記シーブにのみ向けており、前記ロープに向けていない請求項に記載のグリス固化軽減装置。
【請求項4】
前記ダクトの吹き出し口は、前記シーブにおいて、回転軸に直交する面であって、回転軸よりも上方に向けている請求項に記載のグリス固化軽減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータ建屋において、ロープに付着したグリスの固化を軽減するグリス固化軽減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ建屋内には、乗りかごやカウンタウエイト(C/W)等の昇降体をシーブに巻き掛けたロープで連結する構成が公知である。
例えば、ガバナ装置では、乗りかごに連動するガバナロープをガバナシーブに巻き掛けおり、乗りかごの下降速度が定格速度を超過すると安全装置が作動して、乗りかごを非常停止している。
かかるガバナシーブでは、ロープの駆動を円滑するために、ロープにグリスを浸み込ませ又は塗布しているが、浸み出したグリスや塗布したグリスは気温が低くなると固着する場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2016/092592号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ロープやシーブにグリスが固着すると、ガバナシーブに設けてあるガバナスイッチを切る等の誤作動の原因となる不都合がある。
そこで、ロープやシーブにおけるグリスの固化を軽減できるグリス固化軽減装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態は、ロープを巻き掛けたシーブを加温するシーブ加温手段を備え、エレベータ建屋内で前記シーブを加温することで、前記ロープに付着したグリスの固化を軽減するグリス固化軽減装置である。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】エレベータ建屋内の概略的構成を示す側面図である。
図2】巻き上げ機及びその周囲を示す斜視図である。
図3】ガバナシーブ及びその周囲を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、実施形態に係るグリス固化軽減装置について、添付図面を参照して説明する。
図1に示すように、エレベータ建屋内には、昇降路1が設けてあり、昇降路1内には、乗りかご3、カウンターウエイト5と、巻き上げ機7が設けてあり、乗りかご3とカウンターウエイト5とは、巻き上げ機7のメインシーブ7aに巻き掛けられたメインロープ9により連結されている。
また、昇降路1内には、乗りかご3が予め規定された定格速度を超過した速度で下降したときに乗りかご3を緊急停止する安全装置11が設けられている。
安全装置11は、ガバナ装置13と、非常止め装置15と、非常止め装置15の作動機構17とを備えている。
【0008】
ガバナ装置13は、乗りかご3の昇降に連動するガバナロープ(ロープ)19と、ガバナシーブ(シーブ)21と、リミットスイッチ23を備え、ガバナロープ19は無端状のロープであり、テンショナーシーブ25とガバナシーブ21とに巻き掛けられている。
【0009】
ガバナロープ19には、グリスが浸み込ませてあり、グリスが染み出ることでガバナロープ19とガバナシーブ21との円滑な駆動を図っている。
ガバナシーブ21は回転速度が過速状態になると、フライングウエイト(図示せず)が遠心力により外方に作動して、リミットスイッチ23の動作片に当接係合して、作動するものである。
【0010】
巻き上げ機3とガバナ装置13との間には、グリス固化軽減装置31が設けてある。
また、巻き上げ機3の近傍には制御盤(熱源機器)25が設けてあり、制御盤25は巻き上げ機7等の昇降路内の各種機器を制御している。
図2に示すように、巻き上げ機7は、メインロープ9を巻き掛けたメインシーブ7aと、メインシーブ7aを駆動するモータ7bとを備えており、モータ7bにはカバーが被せてある。このモータ7bは、駆動により発熱する熱源機器でもある。
尚、図2では、メインロープ9は省略して示している。
【0011】
図2及び図3に示すように、グリス固化軽減装置31は、ガバナシーブ21を加温するシーブ加温手段33を備えており、シーブ加温手段33でガバナシーブ21を加温することで、ガバナロープ19やガバナシーブ21にグリスが固着するのを軽減している。
このシーブ加温手段33は、巻き上げ機7のモータ7bに設けたヒートシンク35と、送風機37a、37bと、ダクト39とを備えている。
【0012】
ヒートシンク35は、モータ7bの熱を伝達する複数のフィン35aを並べて構成してあり、フィン35a、35a間に風を送ることでフィン35aの熱を取り出して、フィン35a、35a間を通る風に熱を伝達している。
送風機37a、37bは、合計2つ設けてあり、それぞれモータ7bの上に設置してあり、2つの送風機37a、37b間に上述したヒートシンク35が配置されている。各送風機37a、37bは図2に矢印Aで示すように、同じ方向Aに送風している。
一方の送風機37aは、モータ7bの周囲の雰囲気を取り込んだ風を、ヒートシンク35に向けて送風する。
【0013】
図1に示すように、ダクト39は、巻き上げ機7からガバナシーブ21に亘って設けてあり、一端が風を取り込む取り込み口39a(図2参照)としてあり、他端が加温風を吹き出す吹き出し口39b(図3参照)としてある。
図2に示すように、取り込み口39aは、他方の送風機37bが送風する風の下流側で他方の送風機37から少し離れた位置に開口している。
【0014】
図3に示すように、吹き出し口39bは、ガバナシーブ21の正面に対向する位置に開口している。
図1に示すように、ガバナシーブ21の正面は、回転軸21aに直交する面であって、回転軸21aを片持ちで支持する支持部材21bと反対側の面である。
さらに、吹き出し口39bは、ガバナシーブ21の正面において、回転軸21aよりも上側に位置している。
【0015】
次に、実施形態に係るグリス固化軽減装置31の作用について説明する。
図1に示すように、エレベータの稼働時、昇降路1内では、巻き上げ機7の駆動により、モータ7b(熱源機器)が発熱すると共に、制御盤25や乗りかご3に設置された空調機等の各種の機器(熱源機器)が作動して、これらの熱は昇降路1の上方に溜まる。
【0016】
一方、巻き上げ機7のモータ7bは、エレベータ建屋内の機器の内でも、最も大きな熱を排出する。このモータ7bの熱は、ヒートシンク35に伝達される。
図2に示すように、送風機37a、37bが駆動すると、送風機37a、37bは、巻き上げ機7の周囲の雰囲気を取り込んで、ヒートシンク35に吹き付け、ヒートシンク35を通過して加温された風は、ダクト39の取り込み口39aに取り込まれる。
【0017】
図3に示すように、ダクト39で案内された加温風はダクト39の吹き出し口39bからガバナシーブ21の回転軸21aよりも上側で、ガバナシーブ21の正面(図1参照)に向けて吹き出し、ガバナシーブ21を加温する。
【0018】
次に、グリス固化軽減装置31の効果について説明する。
実施形態によれば、ガバナシーブ(シーブ)21は、シーブ加温手段33により加温されるので、ガバナロープ19に付着したグリスが冷えて固化するのを軽減することができる。
シーブ加温手段33は、エレベータ建屋内の熱源機器である巻き上げ機7のモータ7bの排熱を利用してガバナシーブを加温しているで、エネルギー効率が良い。
巻き上げ機7のモータ7bの熱を利用することで、モータ7bの冷却を図ることができるからモータ7bの出力を上げることができ、モータ7bを小型にすることができる。
また、シーブ加温手段33は、昇降路1の上方に溜まった雰囲気(温度の高い雰囲気)を、更にモータ7bの排熱で加温しているので、この点においてもエネルギー効率が良い。
【0019】
巻き上げ機7のモータ7b(熱源機器)の熱を熱案内部材であるダクト39で、ガバナシーブ(シーブ)21に案内しているので、熱が拡散することなく集中してガバナシーブに供給できるから、この点においてもエネルギー効率が良い。
ガバナシーブ21を加温することで、ガバナロープ19に付着したグリスの固化を軽減しているから、固化したグリスによるリミットスイッチ23の誤動作を防止できるから、安全装置11の性能を高めることができる。
【0020】
ダクト39の吹き出し口39bは、ガバナシーブ21の正面に向けて温風を吹き出しているので、ガバナロープ19に直接当たらないから、ガバナロープ19から染み出るグリスの飛散等によるグリスの渇きを防止できる。
ダクト39の吹き出し口39bは、ガバナシーブ21において回転軸21aよりも上側に温風を吹き出しているので、ガバナシーブ21の上半分に巻き掛けられたガバナロープを効率的に加温することができる。
【0021】
上述した実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
例えば、シーブ加温手段33は、ダクト39による温風の送風に限らず、ヒータやペルチェ素子等の発熱部材をガバナシーブ21に直接設けたり、ガバナシーブ21に近接した位置に設けて、ガバナシーブ21を加温しても良い。
シーブ加温手段33は、巻き上げ機7のモータ7bとし、モータ7bの発熱を受ける位置にガバナシーブ21を配置することで、ガバナシーブ21を加温しても良い。
【0022】
また、上述した実施形態では、熱源機器として、巻き上げ機7のモータ7bを例に用いて説明したが、エレベータ建屋内にある他のモータや制御盤25等を熱源機器として用いても良い。例えば、制御盤25の熱を上述した送風機37とダクト39でガバナシーブ21に送風しても良い。
上述した実施形態では、ロープを巻き掛けるシーブとして、ガバナシーブ21を例に用いて説明したが、これに限らず、巻き上げ機7のメインシーブ7aや、エレベータ建屋内でロープを巻き掛けている他のシーブであっても良い。
【符号の説明】
【0023】
1…昇降路、7…巻き上げ機、7b…モータ(熱源機器)、19…ガバナロープ(ロープ)、21…ガバナシーブ(シーブ)、21a…回転軸、25…制御盤(熱源機器)、31…グリス固化軽減装置、33…シーブ加温手段、35…ヒートシンク、37…送風機、39…ダクト、39b…吹き出し口。
図1
図2
図3