(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】接着剤組成物、これを含む接着剤及びこの製造方法
(51)【国際特許分類】
C09J 129/04 20060101AFI20220301BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20220301BHJP
A61L 24/04 20060101ALI20220301BHJP
A61L 24/06 20060101ALI20220301BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20220301BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220301BHJP
A61K 38/04 20060101ALI20220301BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20220301BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220301BHJP
A61L 31/14 20060101ALN20220301BHJP
A61L 31/10 20060101ALN20220301BHJP
【FI】
C09J129/04
C09J11/06
A61L24/04 200
A61L24/06
A61L24/04 100
A61K47/32
A61K47/10
A61K38/04
A61K38/16
A61K39/395 A
A61K39/395 H
A61L31/14
A61L31/10
(21)【出願番号】P 2020511270
(86)(22)【出願日】2018-08-22
(86)【国際出願番号】 KR2018009654
(87)【国際公開番号】W WO2019039858
(87)【国際公開日】2019-02-28
【審査請求日】2020-02-21
(31)【優先権主張番号】10-2017-0106364
(32)【優先日】2017-08-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0097589
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(73)【特許権者】
【識別番号】514291196
【氏名又は名称】コリア アドバンスト インスティチュート オブ サイエンス アンド テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】ファン,ホン グ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,イク キョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドゥ ファン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジョン ソク
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヘ シン
(72)【発明者】
【氏名】イ,デ ホン
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-062573(JP,A)
【文献】特開2001-303459(JP,A)
【文献】特表2013-538280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
A61L 24/00-24/12
31/00-31/18
A61K 38/00-39/44
47/00-47/69
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール化合物、水溶性ポリフェノール化合物及び水を含み、
水溶性ポリフェノール化合物/ポリビニルアルコール化合物の含量比(固形分
重量基準)が0.5~2.0の配合比である接着性組成物。
【請求項2】
前記ポリビニルアルコール化合物はランダム共重合体の形態である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコール化合物は下記化学式1である、請求項1に記載の接着剤組成物。
[化学式1]
(前記化学式1で表された、nとmはポリビニルアルコール化合物の単量体構成比であり、nは0.7以上1.0以下で、mは0以上0.3以下で、n+m=1である。)
【請求項4】
前記ポリビニルアルコール化合物は、水酸基(OH)、アミン基(NH
2)、スクシンイミジルスクシナート(Succinimidyl succinate)、コハク酸(Succinic acid)、チオール基(SH)、アクリレート(Acrylate)、エポキシド(Epoxide)、マレイミド(Maleimide)、ニトロフェニルカーボネート(Nitrophenyl carbonate)、オルトピリジルジスルフィド(orthopyridyl disulfide)トシル基(Tosylate)、アジド(Azide)、リン酸基、オリゴアミン基([-CH
2-CH
2-NH-]n)、カテコール及びカテコールアミンからなる群から選択した作用基を含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記水溶性ポリフェノール化合物は、ヒドロキシ安息香酸(Hydroxybenzoic acid)系化合物、ヒドロキシケイ皮酸(Hydroxycinnamic acids)系化合物、フラボノイド(Flavonoids)系化合物、スチルベン(Stilbenes)系化合物、コーヒー酸(Caffeic acid)、クロロゲン酸(Chlorogenic acid)、アントシアン(Anthocyan)、ピロガロール(Pyrogallol)、エラグ酸(Ellagic acid)、没食子酸(Gallic acid)、カテキン(Catechin)、加水分解性タンニン(Hydrolyzable Tannin)、縮合型タンニン(Condensed Tannin)及び3-没食子酸テアフラビン(Theaflavin‐3‐gallate)からなる群から選択された1種以上である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記加水分解性タンニン(Hydrolyzable Tannin)は、タンニン酸(Tannic acid)、ガロタンニン(Gallotannins)及びエラジタンニン(Ellagitannins)からなる群から選択された1種以上である、請求項
5に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
前記ポリビニルアルコール化合物と水溶性ポリフェノール化合物とは、互いに水素結合されている、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記組成物は、水中で引張接着強度が30kPa以上である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
前記ポリビニルアルコール化合物の含量は、組成物の全体の重量を基準にして5ないし60重量%である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記水溶性ポリフェノール化合物の含量は、組成物の全体の重量を基準にして20ないし70重量%である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
前記水の含量は、組成物の全体の重量を基準にして10ないし60重量%である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項12】
前記組成物はアルコール及び有機溶媒からなる群から選択された1種以上をさらに含む、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項13】
前記組成物は、水の外と水中の引張接着強度比(水中引張接着強度/水の外での引張接着強度)が0.8ないし1.2である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項14】
前記組成物は、水中での10回の付着・脱着の後における、初期(1回目)に対する10回目の付着・脱着引張接着強度の割合(10回脱着引張接着強度/初期引張接着強度)が0.8ないし1.2である、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項15】
前記組成物は、水中でコーティングした後、1時間以内の初期水中引張接着強度と、24時間後の水中引張接着強度との割合(24時間後の水中引張接着強度/1時間以内の初期水中引張接着強度)が0.8ないし1.2である、請求項1に記載の接着組成物。
【請求項16】
前記組成物は、産業用接着剤、医療用接着剤、水中用接着剤、水中用シーラント、接着性パテ、接着性テープ、湿潤ドレッシング(Moist wound healing dressing)、医療用癒着防止剤に使用される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項17】
前記組成物は、木、または木の素材から製造された被着材の接着に使用される、請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の組成物を含む徐放性薬物伝達体(controlled drug delivery adhesive)。
【請求項19】
前記徐放性薬物伝達体は、難溶性薬物、治療用ペプチド、タンパク質及び抗体からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含む、請求項
18に記載の徐放性薬物伝達体。
【請求項20】
(a)ポリビニルアルコール化合物、水溶性ポリフェノール化合物及び水を混合する段階;及び
(b)前記(a)段階で混合されて形成された接着剤組成物を収得する段階;を含む
、請求項1に記載の接着剤組成物の製造方法。
【請求項21】
(a)ポリビニルアルコール化合物を水に溶解する段階;
(b)水溶性ポリフェノール化合物を水に溶解する段階;
(c)前記(a)段階及び(b)段階で得られたそれぞれの溶解物を混合して接着剤組成物が形成されるようにする段階;及び
(d)前記(c)段階で得られた接着剤組成物を収得する段階を含む
、請求項1に記載の接着剤組成物の製造方法。
【請求項22】
前記水にアルコール及び有機溶媒のいずれか一つの溶媒をさらに添加する、請求項
20または請求項
21に記載の接着剤組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物、これを含む接着剤及びこの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤とは、物体と別の物体との表面を付着させる(くっつける)ために使う物質であり、国際標準化機構(ISO)では、「接着(adhesion)は、二つの面が化学的または物理的な力、またはその両者によって一体化される状態であり、接着剤(adhesive)は、接着剤によって2つ以上の物体を一体化することを可能とする物質」と定義している。
【0003】
接着剤は、その便利さのため、日常生活、産業活動の様々な分野で幅広く使われ、主成分によって無機接着剤及び有機接着剤に分類される。有機接着剤は、さらに、合成有機接着剤と天然系有機接着剤に分類されるのであり、合成有機接着剤は、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂を含む樹脂系、ゴム系、及びフェノール、エポキシを含む混合系に分類される。しかし、有機合成接着剤の場合、最近、有害物質が放出されるなどの問題が発生している。これは、特には、有機溶剤中での揮発性有機溶剤の使用及び未反応モノマーの揮発によるものである。
【0004】
このように、様々な接着剤が開発されているが、水中で接着可能な組成物を開発するには多くの困難があり、一般的な水中接着剤の場合、毒性を有する場合が多い。よって、無害な原料を利用して水中でも接着性を失わない接着性組成物を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】韓国公開特許第10-2012-0028175号(2012年03月22日)、タンニン、ポリエチレングリコール及び水、低級アルコール、またはこれらの混合物を含む接着剤組成物
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者らは、毒性がなく、人体に無害で、水分抵抗性を有し、硬化時に熱を要しない接着剤を研究していた中で、ポリビニルアルコールとポリフェノール化合物を混合した接着剤が、水にほとんど溶けず、硬化工程がなくても水中の環境または水の外の環境でも接着可能であることを確認して本発明を完成した。
【0007】
したがって、本発明の目的は、ポリビニルアルコール化合物、水溶性ポリフェノール化合物及び水を含む接着剤組成物を提供することである。
【0008】
本発明の別の目的は、前記組成物を含む産業用接着剤、医療用接着剤、水中用接着剤、水中用シーラント、接着性パテ(adhesive putty)、接着性テープ、湿潤ドレッシング(創傷被覆材)、医療用癒着防止剤または徐放性薬物伝達体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、ポリビニルアルコール化合物、水溶性ポリフェノール化合物、及び水を含む接着剤組成物を提供する。
【0010】
ここで、前記ポリビニルアルコール化合物は、ランダム共重合体の形態であってもよい。
【0011】
ここで、前記ポリビニルアルコール化合物は、下記化学式1であってもよい。
【0012】
【0013】
(前記化学式1で表された、nとmはポリビニルアルコール化合物の単量体の構成比であり、nは0.7以上1.0以下で、mは0以上0.3以下で、n+m=1である。)
【0014】
ここで、前記ポリビニルアルコール化合物は、水酸基(OH)、アミン基(NH2)、スクシンイミジルスクシナート(Succinimidyl succinate)、コハク酸(Succinic acid)、チオール基(SH)、アクリレート(Acrylate)、エポキシド(Epoxide)、マレイミド(Maleimide)、ニトロフェニルカーボネート(Nitrophenyl carbonate)、オルトピリジルジスルフィド(orthopyridyl disulfide)、トシル基(Tosylate)、アジド(Azide)、リン酸基、オリゴアミン基([-CH2-CH2-NH-]n)、カテコール及びカテコールアミンからなる群から選択した作用基を含むことができる。
【0015】
前記水溶性ポリフェノール化合物は、ヒドロキシ安息香酸(Hydroxybenzoic acid)系化合物、ヒドロキシケイ皮酸(Hydroxycinnamic acids)系化合物、フラボノイド(Flavonoids)系化合物、リグナン(Lignans)系化合物、スチルベン(Stilbenes)系化合物、コーヒー酸(Caffeic acid)、クロロゲン酸(Chlorogenic acid)、アントシアン(Anthocyan)、ピロガロール(Pyrogallol)、エラグ酸(Ellagic acid)、没食子酸(Gallic acid)、カテキン(Catechin)、加水分解性タンニン(Hydrolyzable Tannin)、縮合型タンニン(Condensed Tannin)及び3-没食子酸テアフラビン(Theaflavin‐3‐gallate)からなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0016】
ここで、前記加水分解性タンニン(Hydrolyzable Tannin)は、タンニン酸(Tannic acid)、ガロタンニン(Gallotannins)及びエラジタンニン(Ellagitannins)からなる群から選択されるいずれか一つであってもよい。
【0017】
ここで、前記ポリビニルアルコール化合物と水溶性ポリフェノール化合物とは、互いに水素結合されていてもよい。
【0018】
この時、前記組成物は、水中で引張接着強度が10kPa以上であってもよい。
【0019】
ここで、前記ポリビニルアルコール化合物の含量は、組成物全体重量を基準にして5ないし60重量%であってもよい。
【0020】
ここで、前記水溶性ポリフェノール化合物の含量は、組成物全体重量を基準にして20ないし70重量%であってもよい。
【0021】
ここで、前記水の含量は組成物全体重量を基準にして10ないし60重量%であってもよい。
【0022】
ここで、前記組成物は、アルコール及び有機溶媒からなる群から選択された1種以上をさらに含むことができる。
【0023】
ここで、前記組成物は、水中で10回脱着後の、初期(1回)対比10回脱着引張接着強度の割合(10回脱着引張接着強度/初期引張接着強度)が0.7ないし2.0であってもよく、好ましくは0.8ないし1.2であってもよい。
【0024】
ここで、前記組成物は、水の外と水中の引張接着強度比(水中引張接着強度/水の外での引張接着強度)が0.7ないし1.3であってもよく、好ましくは0.8ないし1.2であってもよい。
【0025】
ここで、前記組成物は、産業用接着剤、医療用接着剤、水中用接着剤、水中用シーラント、接着性パテ、接着性テープ、湿潤ドレッシング(Moist wound healing dressing)、医療用癒着防止剤に使用されてもよい。
【0026】
また、本発明は、前記組成物を含む徐放性薬物伝達体(controlled drug delivery adhesive)を提供する。
【0027】
ここで、前記徐放性薬物伝達体は、難溶性薬物、治療用ペプチド、タンパク質及び抗体からなる群から選択されるいずれか一つ以上を含むことができる。
【0028】
また、本発明は(a)ポリビニルアルコール化合物、水溶性ポリフェノール化合物及び水を混合する段階;及び、(b)前記(a)段階で混合されて形成された接着剤組成物を収得する(取り入れる)段階;を含む、接着剤組成物の製造方法を提供する。
【0029】
また、本発明は(a)ポリビニルアルコール化合物を水に溶解する段階;(b)水溶性ポリフェノール化合物を水に溶解する段階;(c)前記(a)段階及び(b)段階で得られたそれぞれの溶解物を混合して接着剤組成物が形成されるようにする段階;及び、(d)前記(c)段階で得られた接着剤組成物を収得する段階を含む接着剤組成物の製造方法を提供する。
【0030】
この際、前記水にアルコール及び有機溶媒のいずれか一つの溶媒をさらに添加することができる。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、ポリビニルアルコール化合物及び水溶性ポリフェノール化合物を含む接着剤組成物に係り、毒性がほとんどなく、既存の接着剤とは違って硬化工程がなくても接着可能であり、ポリビニルアルコール化合物及び水溶性ポリフェノール化合物間の水素結合の特徴によってゲルを製造することができ、水中で接着性特徴を維持することができる。
【0032】
前記接着剤組成物は、医療用接着剤、接着性パッチ、接着性テープ、湿潤ドレッシング、薬物伝達体または医療用癒着防止剤など、様々な分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の接着剤組成物の接着力を測定する方法を示す写真である。
【
図2】実施例1ないし5で製造された接着剤組成物の水中引張接着強度を測定したグラフである。
【
図3】実施例6ないし10で製造された接着剤組成物の水中引張接着強度を測定したグラフである。
【
図4】実施例8で製造された接着剤組成物を水中でコーティングした後、保管時間を変えながら測定した引張接着強度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明では、ポリビニルアルコール化合物、水溶性ポリフェノール化合物及び水を含む接着剤組成物として、毒性がほとんどなく、既存の接着剤とは違って硬化工程がなくても接着可能であり、ポリビニルアルコール化合物と水溶性ポリフェノール化合物との間の水素結合の特徴によってゲルを製造することができ、水中で接着性特徴を維持することができる接着剤組成物を提示する。
【0035】
以下、より詳しく説明する。
【0036】
<接着剤組成物>
本明細書で言う接着剤組成物は、ポリビニルアルコール化合物、水溶性ポリフェノール化合物及び水を含む。一般的な水中接着剤の場合、毒性を有する場合が多いが、本発明では無害である原料を利用して水中でも耐水性を有する接着性組成物を提供する。
【0037】
本発明の接着剤組成物は、ポリビニルアルコールを含む。
【0038】
前記ポリビニルアルコール化合物(poly(vinyl alcohol);PVA)は、1924年、HerrmannとHaehnelがポリビニルアセテート(poly(vinyl acetate)、PVAc)のけん化(鹸化;saponification)の途中で初めて合成したのであり、第2次世界大戦以後、日本で、ビニロン繊維用樹脂として商業化され始めた。
【0039】
一般に、単量体のビニルアルコールは不安定であるため、ビニルアルコールを重合して得ることができないのであり、主に、ビニルアセテートからのエマルジョン重合を通じてポリビニルアセテート(PVAc)を製造した後、これをアルカリや酸によって加水分解してポリビニルアルコール(PVA)を製造する。
【0040】
PVAcが加水分解される程度によって、生成されたPVAの成分が決まるようになるが(後述する化学式1のnとm)、これを一般的にけん化度(鹸化度)と言う。一例として、化学式1でn=0.88で、m=0.12の場合、化学式1のPVAの鹸化度は88%だと言う。
【0041】
PVAcのせっけん化から製造されるPVAは、白の粉末状高分子で、フィルム及び繊維の形成が容易であり、表面活性度が高く、機械的強度と接着強度が高く、溶解度と化学的反応性に優れる。また、PVAは生分解が可能で、水に対して水溶性であり、土壌で発見されるバクテリアによって分解されるので、環境保護に敏感な用途の材料として脚光を浴びている。このようなPVAは、応用範囲がとても広いので、家庭用製品から高機能性産業用材料に至るまで、幅広く使われている。
【0042】
PVAの用途は、板紙(cardboard)、ベニア板、事務用接着剤、フェライト(ferrite)やセラミックスのバインダー、固体駆虫剤、醗酵土壌、繊維のたて糸の糊剤、カラープリンティングの増粘剤、洗濯用糊、紙のコーティングや強化剤、乳化重合や懸濁重合の乳化剤、安定剤及びスポンジなどで使われており、最近まで、分子量及び立体規則性に応じて、石綿繊維及びコンクリート鉄筋の代替用の高性能繊維、及び、環境にやさしい水溶性繊維、並びに、偏光フィルムを含む各種光学用フィルム、及び分離膜に使われており、人体臓器代替用ハイドロゲル、薬物伝達システム(drug delivery system)、バイオリアクター(bioreactor)、バイオセンサー(biosensor)、癌疾患及び血管奇形の治療用の塞栓材料などの最先端素材としても使われている。
【0043】
本発明のポリビニルアルコール化合物は、ランダム共重合体形態のものを使用することができ、具体的に下記化学式1のものを使うことができる。
【0044】
【0045】
(前記化学式1で表された、nとmはポリビニルアルコール化合物の構成比で、nは0.7以上1.0以下で、mは0以上0.3以下で、n+m=1である。)
【0046】
前記化学式1において、nが0.7未満であるか、mが0.3を超えるようになればPVAの含量が低くなって、水に溶ける特性(溶解度)が低下され、ポリビニルアルコール化合物の溶液を製造することが難しくなる。
【0047】
また、ポリビニルアルコール化合物は、水酸基(OH)、アミン基(NH2)、スクシンイミジルスクシナート(Succinimidyl succinate)、コハク酸(Succinic acid)、チオール基(SH)、アクリレート(Acrylate)、エポキシド(Epoxide)、マレイミド(Maleimide)、ニトロフェニルカーボネート(Nitrophenyl carbonate)、オルトピリジルジスルフィド(orthopyridyl disulfide)トシル基(Tosylate)、アジド(Azide)、リン酸基、オリゴアミン基([-CH2-CH2-NH-]n)、カテコール及びカテコールアミンからなる群から選択した作用基を含むことができる。例えば、前記エポキシ作用基は、前記化学式1の各単量体と結合して存在することができ、これはポリフェノール化合物のヒドロキシ基(-OH)と反応して化学的に結合することができる。
【0048】
本発明のポリビニルアルコール化合物は、接着組成物が適用される分野によって様々な分子量のポリビニルアルコール化合物が適用されうるので、ポリビニルアルコール化合物の分子量を特定しないが、好ましくは重量平均分子量(Mw)が5,000ないし2,000,000であってもよく、重量平均分子量が小さくなるほど、製造された接着組成物の柔軟性が増加し、表面の接着性(Tack性_粘着く度合い)が増加するのであり、重量平均分子量が大きくなるほど柔軟性が減少して表面接着性は低くなるが、組成物の内部凝集力が増加するという特徴を示す。
【0049】
前記ポリビニルアルコール化合物は、本発明で製造された接着性組成物の全体を基準にして5ないし60重量%で含まれてもよく、より好ましくは15ないし40重量%で含まれてもよい。前記ポリビニルアルコール化合物の含量が5重量%より低いと、接着組成物の柔軟性が低下するという問題があり、60重量%を超えると耐水性が減少して容易に水に溶けるという問題がある。
【0050】
本発明の接着剤組成物は、水溶性ポリフェノール化合物を含む。
【0051】
前記水溶性ポリフェノール化合物と係って、ベンゼン環(C6H6)の水素の一つがヒドロキシ基(-OH)に置換された物質をフェノールと言うが、ヒドロキシ基を2つ以上持っている物質を水溶性ポリフェノール、つまり「多価フェノール」と総じて言う。このような構造を有する化合物は自然界に多く存在する。緑茶に入っているカテキン類(catechins)、コーヒーに含まれているクロロゲン酸、イチゴや茄子、葡萄、黒豆、小豆などの赤色や紫色のアントシアニン系色素などは、いずれもポリフェノール化合物である。これ以外もポリフェノール化合物は、野菜や果物、カカオ、赤ワインなど、色々なものに含まれている。
【0052】
ポリフェノール類は、酸化を防止する作用、つまり抗酸化機能を持っている。最近、ポリフェノール類が注目されている理由は、この機能が生体内でも抗酸化剤として作用することで、健康維持と疾病予防などに寄与すると期待されるためである。また、ポリフェノール類は、コレステロールが消化管に吸収されることを防ぐので、血中コレステロールの数値を低下させる作用もする。
【0053】
本発明の水溶性ポリフェノール化合物は、Hydroxybenzoic acid系化合物、Hydroxycinnamic acids系化合物、Flavonoids系化合物、Lignans系化合物、Stilbenes系化合物、コーヒー酸(Caffeic acid)、クロロゲン酸(Chlorogenic acid)、アントシアン(Anthocyan)、ピロガロール(Pyrogallol)、エラグ酸(Ellagic acid)、没食子酸(Gallic acid)、カテキン(Catechin)、加水分解性タンニン(Hydrolyzable Tannin)、縮合型タンニン(Condensed Tannin)及び3‐没食子酸テアフラビン(Theaflavin-3-gallate)からなる群から選択された1種以上を使うことができ、具体的に、前記加水分解性タンニン(Hydrolyzable Tannin)は、タンニン酸(Tannic acid)、ガロタンニン(Gallotannins)及びエラジタンニン(Ellagitannins)からなる群から選択された1種以上を使うことができるが、必ずこれに限定されることではない。
【0054】
また、本発明の水溶性ポリフェノール化合物は、具体的に、下記化学式2のタンニン酸(tannin acid)、化学式3の没食子酸(Gallic acid)、化学式4のエラグ酸(ellagic acid)、化学式5のカテキン(catechin)及びこれらの重合体からなる群から選択されるものを使用することができる。前記水溶性ポリフェノール化合物の重量平均分子量は、特に制限しないが、好ましくは100ないし10,000であってもよい。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
【0059】
前記水溶性ポリフェノール化合物は、本発明で製造された接着性組成物の全体を基準にして20ないし70重量%で含まれてもよく、より好ましくは30ないし55重量%で含まれてもよい。前記水溶性ポリフェノール化合物の含量が20重量%より低ければ接着性組成物の水分抵抗接着性(water-resistant adhesion)に問題があり、70重量%を超えると柔軟性が減少するという問題がある。
【0060】
本発明の接着剤組成物の中でポリビニルアルコール化合物と水溶性ポリフェノール化合物は、下記図式1のように、互いに水素結合されてもよい。
【0061】
【0062】
前記図式1は、水溶性ポリフェノール化合物であるタンニン酸とポリビニルアルコール化合物との間の水素結合を図示した図である。本発明の接着剤組成物は、前記化学式6のように、ポリビニルアルコール化合物と水溶性ポリフェノール化合物との間に水素結合が形成されるので、ゲルの形態で製造することができるのであり、水に対するPVAの溶解性を改善させ、水中雰囲気で使用可能な接着性組成の特徴が可能である。
【0063】
したがって、本発明の接着剤組成物は水中接着力に優れ、具体的には、水中で引張接着強度が10kPa以上であってもよく、好ましくは水中で引張接着強度が30kPaないし300kPaであってもよく、より好ましくは水中で引張接着強度が50kPaないし100kPaであってもよい。
【0064】
特に、水溶性ポリフェノール化合物/ポリビニルアルコール化合物の含量比(固形分基準)が0.5以上の配合比である場合、水中で引張接着強度が30kPaないし300kPaであってもよく、より好ましくは水中で引張接着強度が50kPaないし100kPaであってもよい。
【0065】
水中で接着強度が30kPa以下である場合、付着力が弱すぎて水中接着剤として適用するのに不適切であり、300kPa以上の接着力の場合、本発明で請求する組成でもって達成しにくいのでありうるが、付着の工程における印加圧力、印加時間、付着時間、水または溶媒の種類、付着工程での温度によって接着力の上限を克服することができるのであり、これによって得られる水中引張接着強度の上限は、必ずしも制限するものでない。
【0066】
また、本発明の接着剤組成物は、水の外と水中での引張接着強度の比(水中引張接着強度/水の外での引張接着強度)が0.7ないし1.3であってもよく、好ましくは0.8ないし1.2であっても良いので、水中での接着力が水の外での接着力に比べて低下しないことが知られる。
【0067】
また、本発明の接着剤組成物は、水中における10回の付着・脱着の後に、初期(1回)に対する10回付着・脱着の引張接着強度の割合(10回付着・脱着引張接着強度/初期引張接着強度)が0.7ないし2.0であってもよく、好ましくは0.8ないし1.2であってもよく、水中で長期間使用しても接着力が維持される。
【0068】
本発明の接着剤組成物に含まれる水は、前記ポリビニルアルコール化合物及び水溶性ポリフェノール化合物の残量で含まれうるのであり、好ましくは組成物の全体の重量を基準にして10ないし60重量%で含まれてもよい。
【0069】
本発明の接着剤組成物は、アルコール及び有機溶媒からなる群から選択された1種以上をさらに含むことができる。
【0070】
本発明で使用するアルコールは、特に制限しないが、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ブタノール、アミルアルコール、ノルマルアミルアルコール、イソアミルアルコール、ノルマルヘキシルアルコールなどといった低級アルコールを使用してもよく、好ましくはエタノールが使用されてもよい。
【0071】
本発明で使用する有機溶媒は特に制限しない。
【0072】
また、本発明の接着剤組成物には、接着剤自体が破壊される界面破壊(interface failure)または凝集破壊(cohesive failure)の特性を改善するために、凝集力向上のための添加剤が使用されてもよく、前記添加剤は、前記ポリビニルアルコール化合物または前記水溶性ポリフェノール化合物と、水素結合、キレート結合、疎水性相互作用(Hydrophobic interaction)共有結合、イオン結合が可能な添加剤であってもよく、具体的に、無機粒子、金属粒子、DNA、金属酸化物または金属イオン、BSA及びタンパク質(Protein)からなる群から選択される1種以上を使用することができる。
【0073】
また、本発明の接着剤組成物には、その物性を改善するための添加剤などがさらに使用されてもよく、粘度を向上するための増粘剤、粘度を低めるための可塑剤、色を出すための染料及び顔料、光安定性のための紫外線吸収剤及び紫外線安定剤、静電気を防止するための帯電防止剤をさらに含むことができる。
【0074】
本発明の接着剤組成物は、産業用接着剤、医療用接着剤、水中用接着剤、水中用シーラント、接着性パテ(adhesive putty)、接着性テープ、湿潤ドレッシング(Moist wound healing dressing)、医療用癒着防止剤に使用されてもよい。
【0075】
また、本発明の接着剤組成物は、木、または、木の素材から製造された被着材の接着に使用されてもよい。
【0076】
本発明において、「接着」とは、通常の意味であって、時間が経過するにつれ、初期時間に固化されて弾性がない状態となり、また引き離された場合は再付着が難しいのであるが、本発明における「接着」は「粘着」を含む意味であり、「粘着」とは、粘弾性の特性が維持された状態で、圧力によって容易にくっ付くことができ、引き離された後でも何回も再接着ができることを言う。本発明の接着剤組成物は、粘着剤としての特性を持っている。
【0077】
本発明の接着剤は非毒性である。よって、本発明の接着剤組成物は、医療用接着剤として使用可能であり、皮膚に直接接触可能であって、生体内で使用されて接着剤が体液と血液の中に流れ込んで生体内に直接関与する場合でも、毒性と危害性がないことが特徴である。
【0078】
したがって、医療用接着剤、湿潤ドレッシング、癒着防止剤などに使用することができる。
【0079】
前記医療用接着剤(medical adhesive)は、広い意味では、医療用具の包装から、外科用の粘着、接着及び止血に至るまで幅広い分野に適用されるものであって、生体適合性があって皮膚に直接使用可能であり、通常生体内で使用できるように、生体に直接関与する際にも毒性と危害性が全くない接着剤を言う。医療用接着剤で使用されるためには、生体適合性の他にも生分解性、水分抵抗性、滅菌性、非毒性及び止血の効果を持たなければならず、生体の治癒を妨害してはならない。本発明の接着剤は、医療用接着剤としての用途を有し、前記用途には粘着剤としての用途を含む。より詳しくは、手術用接着性止血剤及び大腸切開後の縫合用医療接着剤として生体に使用可能である。
【0080】
前記癒着防止剤(Anti-adhesive agent)は、癒着が予想される部位に、一定期間物理的な障壁として残って、隣接した組職の間に癒着が形成されることを防いでくれる役目をする物質を言う。よって、癒着防止剤は、一定期間後には、分解或いは生体内に吸収されて、異物として残ることがないのでなければならない。本発明の接着用組成物は、外科的手術後に誘発されることがある癒着を防止する癒着防止剤を製造する際に含まれうる。
【0081】
前記湿潤ドレッシング(Moist wound healing dressing)は、創傷部位の悪化及び治療遅延、合併症誘発などの原因となる、深刻な各種病原性細菌による感染を、効果的に治療または予防することができる十分な抗菌作用とともに、滲出物の吸収による湿潤環境を提供して、皮膚を再生するための上皮細胞の成長速度を迅速に増大させて、痛み緩和、治療期間短縮、治療後の瘢痕(はんこん)の最小化などを行うことができる。よって、湿潤ドレッシングに使用するためには、非毒性物質でなければならない。本発明の接着用組成物は非毒性なので、湿潤ドレッシングとして使用することができる。
【0082】
同時に、本発明の接着剤は、水性環境でも使用可能な水分抵抗性を有することを特徴とする。本発明において「水分抵抗性」は、水が存在する環境、例えば、水分がある環境でも接着力を維持できる性質を言う。水分抵抗性を持つためには、湿度が高いときや、水を含む水溶液に、溶解されてはならず、流体の流れがある所でも安定的に接着を維持しなければならない。本発明の接着剤は、水に溶けがたい特性を有するのであり、水分抵抗性を持つ水中用接着剤、水中用シーラントなどとして活用することができる。
【0083】
また、本発明の接着剤組成物は、徐放性薬物伝達体(controlled drug delivery adhesive)として使用されてもよく、このために治療用薬物を含むことができるが、徐放性薬物伝達体によって伝達される難溶性薬物、治療用ペプチド、タンパク質及び抗体を含むことができる。これに制限されないが、前記難溶性物質に該当するものとして、分子量が小さいパクリタキセル(Paclitaxel)、ドキソルビシン(Doxorubicin)などがあるし、前記治療用ペプチドに属するものとして、ソマトスタチン(Somatostatin)、カルシトニン(Calicitonin)、バソプレッシン(Vasopressions)、血小板凝固抑制ペプチド(Platelet aggregate inhibitors)、ゴナドトロピン分泌促進ホルモン(Gornadotropin-releasing hormone)などがあり、前記タンパク質及び抗体に属するものとして、インターロイキンファミリー(Interleukin family)、赤血球生成促進因子(EPO、erythropoietin)、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF、Granulocyte colony‐stimulating factor)、成長ホルモン(Human growth hormone)などがある。本発明では、薬物の種類は特定しない。
【0084】
また、本発明は(a)ポリビニルアルコール化合物、水溶性ポリフェノール化合物及び水を混合する段階;及び(b)前記(a)段階で混合されて形成された接着剤組成物を収得する段階;を含む接着剤組成物の製造方法に関する。前記本発明の接着剤組成物の製造方法を各段階別に見ると、次のとおりである。
【0085】
(a)段階は、ポリビニルアルコール化合物、水溶性ポリフェノール化合物及び水を混合する段階である。
【0086】
本発明の接着剤組成物は、前記ポリビニルアルコール化合物、水溶性ポリフェノール化合物及び水を混合して製造される。前記水の他に、アルコール及び有機溶媒のいずれか一つの溶媒を、さらに添加することもできる。前記物質を混合する際、混合の順は前記に記載したことに制限されない。
【0087】
(b)段階は、前記(a)段階で混合されて形成された接着剤組成物を収得する段階である。
【0088】
前記(a)段階の混合物は、混合時に追加の反応を起こさないのであり、別途の過程がなくても接着剤組成物を収得することができる。二つの混合物を混合する際にゲル化が速く進行し、水、アルコール、有機溶媒、未反応ポリビニルアルコール化合物及び未反応ポリフェノール化合物からなる液体と、ゲル状態の接着性物質とが分離される。
【0089】
また、本発明は(a)ポリビニルアルコール化合物を水に溶解する段階;(b)水溶性ポリフェノール化合物を水に溶解する段階;(c)前記(a)段階及び(b)段階で得られたそれぞれの溶解物を混合して接着剤組成物が形成されるようにする段階;及び(d)前記(c)段階で得られた接着剤組成物を収得する段階を含む接着剤組成物を製造する方法に関する。前記製造方法を各段階別に見ると、次のとおりである。
【0090】
(a)段階はポリビニルアルコール化合物を水に溶解する段階であり、(b)段階は水溶性ポリフェノール化合物を水に溶解する段階である。前記(a)及び(b)段階において、水の他にアルコール及び有機溶媒のいずれか一つの溶媒をさらに添加することもできる。
【0091】
これは、前記検討した本発明の組成物である水溶性ポリフェノール化合物とポリビニルアルコール化合物をそれぞれ水に溶解して、これらを混合しやすい状態に作る過程であり、前記過程はそれぞれ独立した段階である。また、溶解物を製造する際に、pH調節のための緩衝液を使用することができる。
【0092】
(c)段階は、前記(a)及び(b)で得られたそれぞれの溶解物を混合して接着剤組成物が形成されるようにする段階である。
【0093】
本段階は、本発明の前記ポリビニルアルコール化合物及び水溶性ポリフェノール化合物の溶解物を混合して接着剤組成物が形成されるようにする段階であり、混合の順は、記載された手順に制限されず、混合体積比は、前記に検討したものと同一である。
【0094】
(d)段階は、前記(c)段階の接着剤組成物を収得する段階である。
【0095】
本発明の混合物は、混合時に追加反応を起こさないし、別途の過程がなくても前記混合物から接着剤組成物を収得することができ、褐色物質が、本発明の接着剤組成物に該当する。
[実施形態]
【0096】
以下、本発明の実施例を通じて、本発明の接着剤組成物の製造方法をより詳しく説明する。本発明がこれらの実施例に限定されないのは当然のことと言える。
【0097】
実施例
<接着剤組成物の製造>
【0098】
[実施例1~実施例5]
水80gに化学式aのポリビニルアルコール化合物(PVA、重量平均分子量13,000~23,000、鹸化度87~89%)20gを入れて、85℃のオーブンにて5時間撹拌し、20重量%のPVA水溶液を製造した。前記のような方法で40重量%のPVA水溶液をそれぞれ製造した。
【0099】
水50gにタンニン酸(tannic acid、化学式b)50gを入れて常温で24時間撹拌し、50重量%のTA水溶液を製造した。前記のような方法で10、20、30、40重量%のTA水溶液をそれぞれ製造した。
【0100】
前記の製造されたポリビニルアルコール水溶液とタンニン酸水溶液とを、下記表1及び表2のように、同一の含量となるように(重量比1:1)定量し、これを10分間スパチュラを利用して撹拌し、接着性組成物を製造した。
【0101】
【0102】
【0103】
この後、遠心分離機を使用して10kRPMで10分間処理し、底の部分に沈んだ接着剤組成物を収得した(取り入れた)。
【0104】
【0105】
【0106】
[比較例1]
韓国登録特許第10-1307367号の実施例1に記載された方法で、1g/mL濃度の線形PEG(Poly Ethylene Glycol、重量平均分子量2kDa)38μlと1g/mL濃度のタンニン酸(化学式b)162μlを混合して接着剤組成物を製造した。
【0107】
実験例
<実験例1: 水中接着力測定>
実施例1ないし10及び比較例1で製造された接着剤組成物の水中接着力を測定するために、装置を
図1のように考案して水中引張接着強度を測定した。
【0108】
SUS材質で直径10mmの円柱試片を製作して水槽に付着させ、水を満たした後、水中にて円柱試片の上に40mgの接着剤組成物をコーティングした。SUS材質で直径10mmの円柱試片を利用して、接着組成物を5Nの力で30秒間押した後、1mm/minの速度で脱着させて、この水中引張接着強度を測定したのであり、この過程を
図1に示す。
【0109】
また、実施例1ないし10で製造された接着剤組成物の水中引張接着強度を
図2と
図3に示す。実施例1ないし実施例10の水中引張接着強度を分析した結果、接着性組成物を製造するために採用されたTA/PVA含量比(TA固形分/PVA固形分)が0.5以上で、水中での引張接着強度は30kPa以上が発現されることを確認することができたのであり、TA/PVA含量比(TA固形分/PVA固形分)が1.0以上では、接着力が最大値を示す特性を確認することができた。このように製造された接着性組成物は、比較例1より高い接着性を示すことを確認した。したがって、接着性組成物の製造において、初期配合に採用されたTA/PVA含量比(TA固形分/PVA固形分)が0.5以上で製造された接着性組成物が接着剤として好ましいようであり、より好ましくは1.0以上と判断される。
【0110】
初期配合に採用されたTA/PVA含量比(TA固形分/PVA固形分)が0.5以上4.0以下で製造された接着性組成物が接着剤として好ましいようであり、より好ましくは2.0以下と判断される。初期配合に採用されたTA/PVA含量比が2.0または4.0以上では、配合した後で、二つの物質が水素結合または相互作用によって形成される組成物に、TAが全ては参加することができず、上層液に存在するようになる。このような現象によって、これから生成された組成物の収率が低くなるという短所がある。もちろん、上層液に存在する溶液を再処理する方法でTA溶液を再度使用できたので、本発明にて、初期配合に採用されるTA/PVA含量比(TA固形分/PVA固形分)について、必ずしも上限を限るるのではない。
【0111】
<実験例2: 水中保管による接着力測定>
水中で一定時間コーティング及び保管した後、時間が経つにつれて、接着力が変化する度合いを確認した。実施例8で製造された接着剤組成物に対し、水中でのコーティング後、保管時間を変えながら、前記実験例1と同様の方法で引張接着強度を測定したのであり、これを
図4にグラフで示す。
【0112】
図4でのように、水中でコーティングした後、1時間以内の初期水中引張接着強度と、24時間後の水中引張接着強度との割合(24時間以後の水中引張接着強度/1時間以内の初期水中引張接着強度)が0.8ないし1.2であり、時間による接着力変化の幅が非常に低いことが知られた。
【0113】
<実験例3: 水中の付着・脱着による接着力測定>
実施例3で製造された接着剤組成物に対し、水中での付着・脱着の回数による引張接着強度を測定し、表3に示す。
【0114】
表3でのように、水中で10回付着・脱着しても、接着力が減少しないことを確認することができたのであり、初期(1回)と10回付着・脱着引張接着強度の比の変化の幅が0.8ないし1.2以下であることが知られた。
【0115】
したがって、本発明の接着剤組成物は、水中で複数回の付着・脱着が可能であることを確認することができた。
【0116】
【0117】
<実験例4: 水中と水の外での水中引張接着強度測定>
実施例3で製造された接着剤組成物を利用して、水中と水の外での引張接着強度を測定し、この印加圧力を、5Nと10Nと、異なるようにして測定した。この結果を表4に示す。
【0118】
【0119】
前記表4のように、本発明の接着剤組成物は、水中でも水の外でも、優れた引張接着強度を示し、水の外と水中の引張接着強度の比が一定割合(0.8ないし1.2)に維持されることを確認することができた。