(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】勾配構造特徴を持つRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 51/44 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
H01L31/04 112Z
(21)【出願番号】P 2020529303
(86)(22)【出願日】2019-07-26
(86)【国際出願番号】 CN2019098047
(87)【国際公開番号】W WO2020206872
(87)【国際公開日】2020-10-15
【審査請求日】2020-05-28
(31)【優先権主張番号】201910289614.9
(32)【優先日】2019-04-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】505072650
【氏名又は名称】浙江大学
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG UNIVERSITY
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】呉 剛
(72)【発明者】
【氏名】連 小梅
(72)【発明者】
【氏名】陳 傑煥
(72)【発明者】
【氏名】陳 紅征
【審査官】佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106816532(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106803538(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109560204(CN,A)
【文献】Yani Chen et al.,"2D Ruddlesden-Popper Perovskites for Optoelectronics",ADVANCED MATERIALS,2018年,Vol.30, Article Number 1703487,pp.1-15
【文献】Chao Liang et al.,"Ruddlesden-Popper Perovskite for Stable Solar Cells",Energy & Environmental Materials,2018年,Vol.1,pp.221-231
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42-51/48
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
Wiley Online Library
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類のスペーサーカチオンを含む前駆体溶液から堆積を行って得られた勾配構造特徴を持つRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムであって、前記の2種類のスペーサーカチオンのうち第1種がn-ブチルアンモニウムであり、第2種がフェネチルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、t-ブチルアンモニウム、イミダゾールアンモニウム、エチルピリジンアンモニウムまたはイソブチルアンモニウムであり、第2種のスペーサーカチオンがフィルム表面に濃化し、フィルムの厚さ方向に沿って下向きに漸減する濃度勾配を形成することを特徴とする、勾配構造特徴を持つRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルム。
【請求項2】
前記前駆体溶液中、n-ブチルアンモニウムと第2種のスペーサーカチオンとのモル比が1:0.01~0.3であることを特徴とする、請求項1に記載の勾配構造特徴を持つRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルム。
【請求項3】
前記前駆体溶液がメタンアミンヨウ化水素酸塩、2種類のスペーサーカチオンのヨウ化水素酸塩、ヨウ化鉛及び有機溶媒の混合物であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の勾配構造特徴を持つRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルム。
【請求項4】
前記前駆体溶液中、モル比で、2種類のスペーサーカチオンのヨウ化水素酸塩:メタンアミンヨウ化水素酸塩:ヨウ化鉛が2:2:3、2:3:4、又は2:4:5であることを特徴とする、請求項3に記載の勾配構造特徴を持つRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルム。
【請求項5】
まず、表面にPEDOT:PSS層をスピンコートしたITO付きガラス基板を用意し、
そして、2種類のスペーサーカチオンのヨウ化水素酸塩、メタンアミンヨウ化水素酸塩、ヨウ化鉛及び有機溶媒を混合して前駆体溶液を得、
最後に、基板上に前駆体溶液をスピンコートして成膜し、焼鈍し、
前記前駆体溶液中に、2種類のスペーサーカチオンのうち第1種がn-ブチルアンモニウムであり、第2種がフェネチルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、t-ブチルアンモニウムまたはイソブチルアンモニウムであり、n-ブチルアンモニウムと第2種のスペーサーカチオンとのモル比が1:0.01~0.3であり、ヨウ化鉛と有機溶媒との配合比が50~800mg:1mLであり、前記有機溶媒がホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミドの中の1種または複数種の混合物であり、モル比で、2種類のスペーサーカチオンのヨウ化水素酸塩:メタンアミンヨウ化水素酸塩:ヨウ化鉛が2:2:3、2:3:4、又は2:4:5であり、
スピンコートする時に基板の温度が25℃~70℃であり、スピンコート用の前駆体溶液の温度が基板の温度と同じであり、焼鈍温度の範囲が70℃~150℃であり、焼鈍時間の範囲が5分間~20分間である
ことを特徴とする、勾配構造特徴を持つRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は有機-無機ハイブリッドペロブスカイト材料の分野に属し、具体的には勾配構造特徴を持つRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年三次元有機-無機ハイブリッドペロブスカイト材料の発展が急速に進んでおり、三次元有機-無機ハイブリッドペロブスカイト材料から製造される太陽電池の最大効率が23%を超えており、現在、研究においてペロブスカイト電池の安定性にますます注目している。2次元ペロブスカイトは、疎水性の良いスペーサーカチオンを含むため、3次元ペロブスカイト材料よりも優れた耐湿安定性を有する。
【0003】
しかしながら、スペーサーカチオンは、2次元ペロブスカイト中に絶縁層を形成してキャリアの輸送を阻害する。しかも、スペーサーカチオンの存在は、結晶粒の成長も制限し、2次元ペロブスカイトフィルム中の結晶粒界の増加を招いて激しいキャリアの再結合をもたらし、ひいては光電気デバイスの性能を劣化させる。現在、スペーサーカチオン絶縁層によるキャリア輸送への阻害を回避する方法は、主に2次元ペロブスカイトフィルム中の結晶を基板に垂直する方向に配向して成長させることである。該方法の実現手段は主に高温(>100℃)ホットスピンコート、混合溶媒(例えばDMFとDMSOを混合したもの)の使用、及び揮発性添加剤(例えばチオシアン酸アンモニウム)の添加などが有る。上記の方法によって得られた2次元ペロブスカイトフィルムは、いずれも、スペーサーカチオンの分布が厚さ方向に沿って漸減するという特徴を有している。スペーサーカチオンの疎水性特性を考慮すると、該スペーサーカチオンがペロブスカイト表面における濃化がフィルムの耐湿安定性の向上に一層有利である。したがって、高い電荷輸送能を有するとともに、高い耐湿性を有する2次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムは、1. フィルムは、基板に垂直する方向に配向して成長した大きな結晶粒から構成される;2.スペーサーカチオンはその上面に濃化しており、濃度分布がフィルムの厚み方向に沿って下向きに漸減するという特徴を持つ必要がある。これまでに、依然として、上記構造の2次元ペロブスカイトフィルムを製造することができる方法がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、従来技術に存在する上記問題を解決し、勾配構造を有するRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムを提供することである。このフィルムは、配向して成長した大きな結晶粒から構成され、良好なキャリア輸送性を有し、かつその中に1種のスペーサーカチオンがフィルム表面に濃化する勾配構造特徴を有し、良好な耐湿安定性を得るのに有利である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は具体的に以下の技術案を提供する。
2種類のスペーサーカチオンを含む前駆体溶液から堆積して得られた勾配構造特徴を持つRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムであって、前記の2種類のスペーサーカチオンは、第1種がn-ブチルアンモニウムであり、第2種がフェネチルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、t-ブチルアンモニウム、イミダゾールアンモニウム、エチルピリジンアンモニウムまたはイソブチルアンモニウムであり、第2種のスペーサーカチオンがフィルム表面に濃化し、フィルムの厚さ方向に沿って下向きに漸減する濃度勾配を形成することを特徴とする、勾配構造特徴を持つRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルム。
【0006】
なお、本発明において、ここで、前記n-ブチルアンモニウム、フェネチルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、t-ブチルアンモニウム、イミダゾールアンモニウム、エチルピリジンアンモニウムまたはイソブチルアンモニウムは、いずれも対応する化合物のカチオンを意味する。
【0007】
該技術案に基づいて、本発明はさらに以下の1種又は複数種の好ましい実施形態を提供することができる。なお、本発明における好ましい各実施形態の技術的特徴は、相互に矛盾しない限り、適宜組み合わせを行うことができる。
【0008】
前記前駆体溶液において、n-ブチルアンモニウムと第2種のスペーサーカチオンとのモル比は、1:0.01~0.3であることが好ましい。
【0009】
前記前駆体溶液がメタンアミンヨウ化水素酸塩、2種類のスペーサーカチオンのヨウ化水素酸塩、ヨウ化鉛及び有機溶媒の混合物であり、前記有機溶媒がホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミドの中の1種または複数種の混合物であることが好ましい。
【0010】
さらに、前記前駆体溶液中に、ヨウ化鉛と有機溶媒との配合比率が50~800mg:1mLである。
【0011】
さらに、前記前駆体溶液中に、モル比で、2種類のスペーサーカチオンのヨウ化水素酸塩:メタンアミンヨウ化水素酸塩:ヨウ化鉛が2:2:3、2:3:4、又は2:4:5である。
【0012】
好ましくは、前記堆積の具体的な工程は、基板上に前駆体溶液をスピンコートして成膜し、焼鈍する工程である。
【0013】
さらに、基板の温度が25℃~70℃であり、前駆体溶液の温度が基板の温度と同一である。
【0014】
さらに、焼鈍温度の範囲が70℃~150℃であり、焼鈍時間の範囲が5分間~20分間である。
【0015】
さらに、前記基板は、PEDOT:PSS層がスピンコートされたITO付きガラス基板である。
【0016】
本発明の他の目的は、勾配構造特徴を持つRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムの製造方法を提供することである。該製造方法の工程は以下のとおりである。
【0017】
まず、表面にPEDOT:PSS層をスピンコートしたITO付きガラス基板を用意する。
【0018】
そして、2種類のスペーサーカチオンのヨウ化水素酸塩、メタンアミンヨウ化水素酸塩、ヨウ化鉛及び有機溶媒を混合して前駆体溶液を得る。前記前駆体溶液中に、2種類のスペーサーカチオンのうち、第1種がn-ブチルアンモニウムであり、第2種がフェネチルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、t-ブチルアンモニウムまたはイソブチルアンモニウムであり、n-ブチルアンモニウムと第2種のスペーサーカチオンとのモル比が1:0.01~0.3であり、ヨウ化鉛と有機溶媒との配合比が50~800mg:1mLであり、前記有機溶媒がホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミドの中の1種または複数種の混合物であり、モル比で、2種類のスペーサーカチオンのヨウ化水素酸塩:メタンアミンヨウ化水素酸塩:ヨウ化鉛が2:2:3、2:3:4、又は2:4:5である。
【0019】
最後に、基板上に前駆体溶液をスピンコートして成膜し、焼鈍する。スピンコートする時に基板の温度が25℃~70℃であり、スピンコート用の前駆体溶液の温度が基板の温度と同じであり、焼鈍温度の範囲が70℃~150℃であり、焼鈍時間の範囲が5分間~20分間である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、2種類のスペーサカチオンを含むペロブスカイト前駆体溶液を用い、堆積により、配向して成長した大きな結晶粒から構成されるRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムが得られ、良好なキャリア輸送能が得られる一方、2種類のスペーサカチオンのうち1種がフィルム表面に濃化して、厚み方向に沿って下向きに漸減する濃度勾配を形成でき、良好な耐湿安定性を得るのに有利である。これは溶液法で高性能のハイブリッドペロブスカイト光電気デバイスを製造することに非常に重要な意味を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】勾配構造を持つRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムの横断面のSEM画像である。
【
図2】フィルムにおけるフェネチルアンモニウムカチオンの分布の飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるデータを示すグラフであり、左側がフィルムの上面であり、右側がフィルムの下面である。
【
図3】Ruddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムが湿度50±5%の空気中に貯蔵され、フィルムのX線回折(XRD)スペクトルの貯蔵時間(0日~120日)による変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
勾配構造特徴を有するRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムの製造過程は以下のとおりである。まず、ITO付きガラス基板を順に洗浄剤、アセトン、イソプロパノール、エタノールでそれぞれに5分間超音波洗浄した後、脱イオン水で濯いで乾燥する。紫外線-オゾン処理を行った後、スピンコート法で厚さ約25nmのPEDOT:PSS層を調製して、140℃で15分間ベークした後に取り出した。2種類のスペーサーカチオンヨウ化水素酸塩、メタンアミンヨウ化水素酸塩、ヨウ化鉛及び有機溶媒を混合した。2種類のスペーサーカチオンのうち第1種がn-ブチルアンモニウムであり、第2種がフェネチルアンモニウム、ベンジルアンモニウム、t-ブチルアンモニウムまたはイソブチルアンモニウムであり、n-ブチルアンモニウムと第2種のスペーサーカチオンとのモル比が1:0.01~0.3であり、ヨウ化鉛と有機溶媒との配合比が50~800mg:1mLであり、有機溶媒がホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、またはその混合物であり、スペーサーカチオンのヨウ化水素酸塩:メタンアミンヨウ化水素酸塩:ヨウ化鉛の比例(モル比)が2:2:3、2:3:4、又は2:4:5である。そして、基板上に前駆体溶液をスピンコートして成膜し、焼鈍した。基板の温度が25℃~70℃であり、スピンコート用の前駆体溶液の温度が基板の温度と同じであり、焼鈍温度の範囲が70℃~150℃であり、焼鈍時間の範囲が5分間~20分間である。
【0023】
以下に上記製造方法に基づき、以下の実施例により本発明をさらに詳細に説明する。
【0024】
[実施例1]
ITO付きガラス基板を順に洗浄剤、アセトン、イソプロパノール、エタノールでそれぞれに5分間超音波洗浄した後、脱イオン水で濯いで乾燥する。乾燥されたITO付きガラス基板を紫外線-オゾン処理した後、スピンコート法で厚さ約25nmのPEDOT:PSS層を調製して、140℃で15分間ベークした後に取り出した。ヨウ化鉛とN,N-ジメチルホルムアミドとの配合比が50mg:1mL、(n-ブチルアミンヨウ化水素酸塩+フェネチルアミンヨウ化水素酸塩):メタンアミンヨウ化水素酸塩:ヨウ化鉛(モル比)が2:2:3、n-ブチルアンモニウム:フェネチルアミン(イオンのモル比として)が1:0.01になるように、フェネチルアミンヨウ化水素酸塩、n-ブチルアミンヨウ化水素酸塩、メタンアミンヨウ化水素酸塩、及びヨウ化鉛を混合してN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、一晩攪拌して前駆体溶液を得た。溶液スピンコート法により、25℃の前駆体溶液を採用して25℃のPEDOT:PSS被覆ITO付きガラス基板上にスピンコートして成膜し、70℃で5分間焼鈍して、高品質で勾配構造を有するRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムを得た。フィルムの横断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を
図1に示し、これは、このフィルムが厚さ方向に沿って配向して成長した大きな結晶粒から構成されることを示している。
図2における飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)によるデータにより、ペロブスカイトフィルムにおける2種類のスペーサーカチオンの濃度分布が異なり、そのうちフェネチルアンモニウムカチオン即ちPEA
+が表面に濃化し、すなわちフィルム表面にPEA
+濃度が最大となり、厚さ方向に沿って下向きに漸減する濃度勾配を形成することを示している。
図3における安定性試験からわかるように、このフィルムは、湿度50±5%の空気中に120日間保管した場合、フィルムのX線回折(XRD)のスペクトルがほとんど変化せず、良好な耐湿安定性を示した。
【0025】
[実施例2]
ITO付きガラス基板を順に洗浄剤、アセトン、イソプロパノール、エタノールでそれぞれに5分間超音波洗浄した後、脱イオン水で濯いで乾燥する。乾燥されたITO付きガラス基板を紫外線-オゾン処理した後、スピンコート法で厚さ約25nmのPEDOT:PSS層を調製して、140℃で15分間ベークした後に取り出した。ヨウ化鉛とホルムアミドとの配合比が800mg:1mL、(n-ブチルアミンヨウ化水素酸塩+ベンジルアミンヨウ化水素酸塩):メタンアミンヨウ化水素酸塩:ヨウ化鉛(モル比)が2:4:5、n-ブチルアンモニウム:ベンジルアンモニウム(イオンのモル比として)が1:0.3になるように、ベンジルアミンヨウ化水素酸塩、n-ブチルアミンヨウ化水素酸塩、メタンアミンヨウ化水素酸塩、及びヨウ化鉛を混合してホルムアミドに溶解し、一晩攪拌して前駆体溶液を得た。溶液スピンコート法により、30℃の前駆体溶液を採用して30℃のPEDOT:PSS被覆ITO付きガラス基板上にスピンコートして成膜し、150℃で20分間焼鈍して、高品質で勾配構造を有するRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムを得た。フィルムの横断面の形態を考察したところ、得られた走査型電子顕微鏡(SEM)写真は
図1と類似しており、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)を考察したところ、得られたベンジルアンモニウムの分布のデータは
図2と類似している。
図1及び
図2により、高品質で勾配構造を有するRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムが形成されることを示している。フィルムの湿度50±5%の空気における120日間保管した安定性を考察したところ、フィルムのX線回折(XRD)スペクトルは
図3と類似しており、良好な耐湿安定性を示した。
【0026】
[実施例3]
ITO付きガラス基板を順に洗浄剤、アセトン、イソプロパノール、エタノールでそれぞれに5分間超音波洗浄した後、脱イオン水で濯いで乾燥する。乾燥されたITO付きガラス基板を紫外線-オゾン処理した後、スピンコート法で厚さ約25nmのPEDOT:PSS層を調製して、140℃で15分間ベークした後に取り出した。ヨウ化鉛とジメチルスルホキシドとの配合比が400mg:1mL、(n-ブチルアミンヨウ化水素酸塩+t-ブチルアミンヨウ化水素酸塩):メタンアミンヨウ化水素酸塩:ヨウ化鉛(モル比)が2:3:4、n-ブチルアンモニウム:t-ブチルアンモニウム(イオンのモル比として)が1:0.2になるように、t-ブチルアミンヨウ化水素酸塩、n-ブチルアミンヨウ化水素酸塩、メタンアミンヨウ化水素酸塩、及びヨウ化鉛を混合してジメチルスルホキシドに溶解し、一晩攪拌して前駆体溶液を得た。溶液スピンコート法により、70℃の前駆体溶液を採用して70℃のPEDOT:PSS被覆ITO付きガラス基板上にスピンコートして成膜し、100℃で15分間焼鈍して、高品質で勾配構造を有するRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムを得た。フィルムの横断面の形態を考察したところ、得られた走査型電子顕微鏡(SEM)写真は
図1と類似しており、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS) を考察したところ、得られたt-ブチルアンモニウムの分布のデータは
図2と類似している。
図1及び
図2により、高品質で勾配構造を有するRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムが形成されることを示している。フィルムの湿度50±5%の空気における120日間保管した安定性を考察したところ、フィルムのX線回折(XRD)スペクトルは
図3と類似しており、良好な耐湿安定性を示した。
【0027】
[実施例4]
ITO付きガラス基板を順に洗浄剤、アセトン、イソプロパノール、エタノールでそれぞれに5分間超音波洗浄した後、脱イオン水で濯いで乾燥する。乾燥されたITO付きガラス基板を紫外線-オゾン処理した後、スピンコート法で厚さ約25nmのPEDOT:PSS層を調製して、140℃で15分間ベークした後に取り出した。ヨウ化鉛とN,N-ジメチルホルムアミド/ジメチルスルホキシドとの配合比が600mg:1mL、(n-ブチルアミンヨウ化水素酸塩+イソブチルアミンヨウ化水素酸塩):メタンアミンヨウ化水素酸塩:ヨウ化鉛(モル比)が2:4:5、n-ブチルアンモニウム:イソブチルアンモニウム(イオンのモル比として)が1:0.1になるように、イソブチルアミンヨウ化水素酸塩、n-ブチルアミンヨウ化水素酸塩、メタンアミンヨウ化水素酸塩、及びヨウ化鉛を混合してN,N-ジメチルホルムアミド/ジメチルスルホキシドに溶解し、一晩攪拌して前駆体溶液を得た。溶液スピンコート法により、60℃の前駆体溶液を採用して60℃のPEDOT:PSS被覆ITO付きガラス基板上にスピンコートして成膜し、90℃で10分間焼鈍して、高品質で勾配構造を有するRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムを得た。フィルムの横断面の形態を考察したところ、得られた走査型電子顕微鏡(SEM)写真は
図1と類似しており、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS) を考察したところ、得られたイソブチルアンモニウムの分布のデータは
図2と類似している。
図1及び
図2により、高品質で勾配構造を有するRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムが形成されることを示している。フィルムの湿度50±5%の空気における120日間保管した安定性を考察したところ、フィルムのX線回折(XRD)スペクトルは
図3と類似しており、良好な耐湿安定性を示した。
【0028】
[実施例5]
ITO付きガラス基板を順に洗浄剤、アセトン、イソプロパノール、エタノールでそれぞれに5分間超音波洗浄した後、脱イオン水で濯いで乾燥する。乾燥されたITO付きガラス基板を紫外線-オゾン処理した後、スピンコート法で厚さ約25nmのPEDOT:PSS層を調製して、140℃で15分間ベークした後に取り出した。ヨウ化鉛とN,N-ジメチルホルムアミド/ホルムアミドとの配合比が300mg:1mL、(n-ブチルアミンヨウ化水素酸塩+イミダゾールヨウ化水素酸塩):メタンアミンヨウ化水素酸塩:ヨウ化鉛(モル比)が2:3:4、n-ブチルアンモニウム:イミダゾールアンモニウム(イオンのモル比として)が1:0.05になるように、イミダゾールヨウ化水素酸塩、n-ブチルアミンヨウ化水素酸塩、メタンアミンヨウ化水素酸塩、及びヨウ化鉛を混合してN,N-ジメチルホルムアミド/ホルムアミドに溶解し、一晩攪拌して前駆体溶液を得た。溶液スピンコート法により、50℃の前駆体溶液を採用して50℃のPEDOT:PSS被覆ITO付きガラス基板上にスピンコートして成膜し、120℃で12分間焼鈍して、高品質で勾配構造を有するRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムを得た。フィルムの横断面の形態を考察したところ、得られた走査型電子顕微鏡(SEM)写真は
図1と類似しており、二次イオン質量分析(SIMS)を考察したところ、得られたイミダゾールアンモニウムの分布のデータは
図2と類似している。
図1及び
図2により、高品質で勾配構造を有するRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムが形成されることを示している。
【0029】
[実施例6]
ITO付きガラス基板を順に洗浄剤、アセトン、イソプロパノール、エタノールでそれぞれに5分間超音波洗浄した後、脱イオン水で濯いで乾燥する。乾燥されたITO付きガラス基板を紫外線-オゾン処理した後、スピンコート法で厚さ約25nmのPEDOT:PSS層を調製して、140℃で15分間ベークした後に取り出した。ヨウ化鉛とジメチルスルホキシド/ホルムアミドとの配合比が600mg:1mL、(n-ブチルアミンヨウ化水素酸塩+ベンジルアミンヨウ化水素酸塩):メタンアミンヨウ化水素酸塩:ヨウ化鉛(モル比)が2:2:3、n-ブチルアンモニウム:エチルピリジンアンモニウム(イオンのモル比として)が1:0.25になるように、エチルピリジンヨウ化水素酸塩、n-ブチルアミンヨウ化水素酸塩、メタンアミンヨウ化水素酸塩、及びヨウ化鉛を混合してジメチルスルホキシド/ホルムアミドに溶解し、一晩攪拌して前駆体溶液を得た。溶液スピンコート法により、65℃の前駆体溶液を採用して65℃のPEDOT:PSS被覆ITO付きガラス基板上にスピンコートして成膜し、130℃で10分間焼鈍して、高品質で勾配構造を有するRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムを得た。フィルムの横断面の形態を考察したところ、得られた走査型電子顕微鏡(SEM)写真は
図1と類似しており、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)を考察したところ、得られたエチルピリジンアンモニウムの分布のデータは
図2と類似している。
図1及び
図2により、高品質で勾配構造を有するRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムが形成されることを示している。フィルムの湿度50±5%の空気における120日間保管した安定性を考察したところ、フィルムのX線回折(XRD)スペクトルは
図3と類似しており、良好な耐湿安定性を示した。
【0030】
[実施例7]
ITO付きガラス基板を順に洗浄剤、アセトン、イソプロパノール、エタノールでそれぞれに5分間超音波洗浄した後、脱イオン水で濯いで乾燥する。乾燥されたITO付きガラス基板を紫外線-オゾン処理した後、スピンコート法で厚さ約25nmのPEDOT:PSS層を調製して、140℃で15分間ベークした後に取り出した。ヨウ化鉛とN,N-ジメチルホルムアミド/ジメチルスルホキシド/ホルムアミドとの配合比が700mg:1mL、(n-ブチルアミンヨウ化水素酸塩+t-ブチルアミンヨウ化水素酸塩):メタンアミンヨウ化水素酸塩:ヨウ化鉛(モル比)が2:4:5、n-ブチルアンモニウム:フェネチルアンモニウム(イオンのモル比として)が1:0.2になるように、t-ブチルアミンヨウ化水素酸塩、n-ブチルアミンヨウ化水素酸塩、メタンアミンヨウ化水素酸塩、及びヨウ化鉛を混合してN,N-ジメチルホルムアミド/ジメチルスルホキシド/ホルムアミドに溶解し、一晩攪拌して前駆体溶液を得た。溶液スピンコート法により、55℃の前駆体溶液を採用して55℃のPEDOT:PSS被覆ITO付きガラス基板上にスピンコートして成膜し、140℃で20分間焼鈍して、高品質で勾配構造を有するRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムを得た。フィルムの横断面の形態を考察したところ、得られた走査型電子顕微鏡(SEM)写真は
図1と類似しており、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)を考察したところ、得られたt-ブチルアンモニウムの分布のデータは
図2と類似している。
図1及び
図2により、高品質で勾配構造を有するRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムが形成されることを示している。フィルムの湿度50±5%の空気における120日間保管した安定性を考察したところ、フィルムのX線回折(XRD)スペクトルは
図3と類似しており、良好な耐湿安定性を示した。
【0031】
[実施例8]
ITO付きガラス基板を順に洗浄剤、アセトン、イソプロパノール、エタノールでそれぞれに5分間超音波洗浄した後、脱イオン水で濯いで乾燥する。乾燥されたITO付きガラス基板を紫外線-オゾン処理した後、スピンコート法で厚さ約25nmのPEDOT:PSS層を調製して、140℃で15分間ベークした後に取り出した。ヨウ化鉛とN,N-ジメチルホルムアミドとの配合比が200mg:1mL、(n-ブチルアミンヨウ化水素酸塩+フェネチルアミンヨウ化水素酸塩):メタンアミンヨウ化水素酸塩:ヨウ化鉛(モル比)が2:3:4、n-ブチルアンモニウム:フェネチルアンモニウム(イオンのモル比として)が1:0.15になるように、フェネチルアミンヨウ化水素酸塩、n-ブチルアミンヨウ化水素酸塩、メタンアミンヨウ化水素酸塩、及びヨウ化鉛を混合してN,N-ジメチルホルムアミドに溶解し、一晩攪拌して前駆体溶液を得た。溶液スピンコート法により、45℃の前駆体溶液を採用して45℃のPEDOT:PSS被覆ITO付きガラス基板上にスピンコートして成膜し、150℃で15分間焼鈍して、高品質で勾配構造を有するRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムを得た。フィルムの横断面の形態を考察したところ、得られた走査型電子顕微鏡(SEM)写真は
図1と類似しており、飛行時間型二次イオン質量分析(TOF-SIMS)を考察したところ、得られたフェネチルアンモニウムの分布のデータは
図2と類似している。
図1及び
図2により、高品質で勾配構造を有するRuddlesden-Popper型二次元ハイブリッドペロブスカイトフィルムが形成されることを示している。フィルムの湿度50±5%の空気における120日間保管した安定性を考察したところ、フィルムのX線回折(XRD)スペクトルは
図3と類似しており、良好な耐湿安定性を示した。