(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体、その製造方法および治療薬
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220301BHJP
C07K 16/24 20060101ALI20220301BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20220301BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20220301BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220301BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220301BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220301BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220301BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20220301BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20220301BHJP
A61P 9/14 20060101ALI20220301BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220301BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220301BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20220301BHJP
A61P 7/00 20060101ALI20220301BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/24 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61P11/06
A61P9/14
A61P35/00
A61P17/00
A61P37/08
A61P7/00
A61K39/395 N
(21)【出願番号】P 2020531654
(86)(22)【出願日】2018-11-30
(86)【国際出願番号】 CN2018118534
(87)【国際公開番号】W WO2019120060
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-06-09
(31)【優先権主張番号】201711393147.1
(32)【優先日】2017-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】510277073
【氏名又は名称】三生国健薬業(上海)股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】SUNSHINE GUOJIAN PHARMACEUT ICAL(SHANGHAI)CO.,LTD
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】趙▲ジエ▼
(72)【発明者】
【氏名】黄浩旻
(72)【発明者】
【氏名】朱禎平
(72)【発明者】
【氏名】蒋良豊
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-503209(JP,A)
【文献】特表平10-501697(JP,A)
【文献】米国特許第06056957(US,A)
【文献】特開2000-210097(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0029594(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体であって、
該モノクローナル抗体は、重鎖および軽鎖を含み、
前記重鎖は、重鎖相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3を含み、前記H-CDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:6で表され、前記H-CDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:7で表され、前記H-CDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:8で表され、
前記軽鎖は、軽鎖相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3を含み、前記L-CDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:9で表され、前記L-CDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:10で表され、前記L-CDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:11で表され、
前記モノクローナル抗体の重鎖は、SEQ ID NO:3で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含み、前記モノクローナル抗体の軽鎖は、SEQ ID NO:5で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含み、又は
前記モノクローナル抗体の重鎖は、SEQ ID NO:13で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含み、前記モノクローナル抗体の軽鎖は、SEQ ID NO:15で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む、ことを特徴とする、ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体。
【請求項2】
前記ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体は、マウス由来の抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である、請求項1に記載のヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体。
【請求項3】
前記モノクローナル抗体の重鎖は、アミノ酸配列がSEQ ID NO:16で表され、前記モノクローナル抗体の軽鎖は、アミノ酸配列がSEQ ID NO:17で表される、請求項1に記載のヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体。
【請求項4】
単離したヌクレオチド分子であって、
請求項1~3の何れか1項に記載のヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体をコードすることを特徴とする、ヌクレオチド分子。
【請求項5】
前記ヌクレオチド分子は、
重鎖可変領域をコードし且つSEQ ID NO:2で表されるヌクレオチド配列、および軽鎖可変領域をコードし且つSEQ ID NO:4で表されるヌクレオチド配列を含み、又は
重鎖可変領域をコードし且つSEQ ID NO:12で表されるヌクレオチド配列、および軽鎖可変領域をコードし且つSEQ ID NO:14で表されるヌクレオチド配列を含む、請求項4に記載のヌクレオチド分子。
【請求項6】
請求項4又は5に記載のヌクレオチド分子を含んでなる、発現ベクター。
【請求項7】
請求項6に記載の発現ベクターを含んでなる、ホスト細胞。
【請求項8】
請求項1~3の何れか1項に記載のヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体を製造する方法であって、
a)発現条件下で請求項
7に記載のホスト細胞を培養することにより、前記ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体を発現させ、
b)前記a)のヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体を単離、精製することを含むことを特徴とする、製造方法。
【請求項9】
請求項1~3の何れか1項に記載のヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体と、薬学的に許容可能な担体とを含んでなる、薬物組成物。
【請求項10】
請求項1~3の何れか1項に記載のヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体又は請求項9に記載の薬物組成物
を含む、好酸球増加に起因する疾患の治療薬。
【請求項11】
前記好酸球増加に起因する疾患は、喘息、多発血管炎を伴う肉芽腫症、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープ、アレルギー性皮膚炎又は好酸球増加症候群である、請求項10に記載の治療薬。
【請求項12】
前記好酸球増加に起因する疾患は、喘息である、請求項11に記載の治療薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗体技術に関し、より具体的には、ヒトIL-5に結合するモノクローナル
抗体、その製造方法及び治療薬に関する。
【背景技術】
【0002】
気管支喘息(Bronchial Asthma、以下で「喘息」と称する)は、肥満細胞や、好酸球(EO)などの各種の炎症細胞、及びTリンパ球などの免疫細胞が共同で関与することにより起こり、慢性の気道炎症を主な特徴とする呼吸系疾患である。喘息の主な表現として、気管支分泌物の凝集やリンパ球、マクロファージ及び好酸球浸潤などの炎症反応が挙げられる。喘息患者には、例えば再発性喘息、胸内苦悶又や咳など、気道の高反応性と可逆性の気流制限がよく見られ、重篤者は呼吸困難症状を伴うことがあり、気道閉塞(可逆性でありながらも)によって非特異性の気管支アレルギーが引き起こされる。
【0003】
近年、喘息の罹患率と病死率が増えつつある。データ統計によれば全世界で約3億の人が喘息に罹患し、我が国でも推計約3000万の喘息患者があると見られる。喘息の臨床治療にとって糖質コルチコイド、β2受容体刺激薬、ロイコトリエン拮抗薬、抗コリン薬、ホスホジエステラーゼ阻害薬、テオフィリン系製剤、抗ヒスタミン剤及び他の抗アレルギー薬などの抗炎治療を吸入するのが基本的であるが、重篤喘息患者については症状制御が困難であり、治療に糖質コルチコイドの全身投与が必要とされる場合があるため、骨粗鬆症、感染症や成長遅延などの全身性副作用を起こす恐れがある。したがって、喘息治療の新規標的を見つけ、ホルモン非感受性喘息患者の急性発作を低減することにより喘息症状を改善し、肺機能を回復させ、並びに喘息患者の生活品質を高めることが喘息治療の新たなストラテジーになっている。
【0004】
好酸球は、炎症反応によって誘発される様々な疾患において重要な役割を果たし、中には喘息も含まれる。さらに、好酸球は分泌物の凝集において重要な役割を果たし、活性化好酸球の数が疾患の重篤度に比例して慢性喘息患者の血液、気管支分泌物や肺腺組織において大きく増加する。また、ステロイド剤を用いる治療では症状の緩和と好酸球数の低下が緊密に関わっていることが確認できた。
【0005】
インターロイキン-5(IL-5)は、ホモダイマーを形成しうるグリコシル化タンパク質系サイトカインであり、活性化CD4+Tリンパ球で作られる。人体において、好酸球の成長と分化は主にIL-5と細胞表面のIL-5受容体との相互作用によって遂行される。IL-5は、2つの受容体サブユニットalpha(RA)とbeta(RB)のうちまずIL-5RAに結合するが、この相互作用のみでは信号伝達に十分でなく、IL-5RAに結合してからIL-5RBに結合することによりIL-5と受容体複合体との親合性を高めて信号伝達を開始させ、このような信号伝達にとって2つのサブユニットIL-5RAとIL-5RBは何れも必須である。IL-5トランスジェニックマウスの動物モデルにおいて、抗原による刺激がなくてもマウス末梢血および組織中における好酸球数がいずれも大幅に増加する。また、マウスやサルのアレルギー性喘息モデルを利用して検討を行ったところ、抗IL-5モノクローナル抗体を動物に注射することで気道への好酸球浸潤を効果的に抑止することができ、かつ気管支アレルギー反応の進行を阻止することのできることが確認できた(非特許文献1)。臨床において、好酸球増加型の喘息患者の薬物使用に対する反応と治療効果はその末梢血における好酸球数に比例し、患者の好酸球数が多ければ多いほど治療効果が顕著である。海外で行われた同類薬物の臨床治験データから、喘息悪化率を主要指標とした場合、対照組に比べて抗IL-5モノクローナル抗体による悪化率低下が50%以上に達し、並びに肺機能を改善し、糖質コルチコイドの使用量を減らすと同時に喘息患者の生活品質を高めることのできることが確認できた(非特許文献2)。
【0006】
現在、重症好酸球性喘息患者向けの治療薬として、GSK社のMepolizumab及びTEVA社のReslizumabがFDAの認可を得て販売されている。しかしながら、市場では特異性と治療効果が高く且つIL-5を標的とする新規薬物に対する期待が依然として高いことから、このような新規薬物の開発は、喘息患者の症状改善と生活品質を高めるのに重要であると考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】Hart T K, Cook RM, Zia-Amirhosseini P, et al. Preclinical efficacy and safety of mepolizumab (SB-240563), a humanized monoclonal antibody to IL-5, in cynomolgus monkeys[J]. The Journal of Allergy and Clinical Immunology, 2001, 108(2): 250-257; Egan R W, Athwal D, Bodmer M W, et al. Effect of Sch 55700, a humanized monoclonal antibody to human interleukin-5, on eosinophilic responses and bronchial hyperreactivity[J]. Arzneimittelforschung, 1999, 49(09): 779-790
【文献】Ortega H, Liu M C, Pavord I D, et al. Mepolizumab Treatment in Patients with Severe Eosinophilic Asthma[J]. The New England Journal of Medicine, 2014, 371(13): 1198-1207;Bjermer L, Lemiere C, Maspero J F, et al. Reslizumab for Inadequately Controlled Asthma With Elevated Blood Eosinophil Levels: A Randomized Phase 3 Study[J]. Chest, 2016, 150(4): 789-798
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者は、上記の技術課題を解決するために鋭意検討を重ね、抗原免疫からハイブリドーマの選択、抗体の発現と精製、並びに生物活性の同定を経た結果、斬新なCDR配列を有する抗ヒトIL-5抗体を得ることに至った。本発明の抗体は、既知の抗ヒトIL-5抗体に比べてIL-5依存性の細胞増殖や、IL-5とその受容体IL-5RAとの結合に対して優れた阻害活性を示し、抗原結合エピトープの解析から本発明の抗ヒトIL-5抗体が既知の抗ヒトIL-5抗体と異なる結合エピトープを有することが実証されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成すべく、本発明は、以下の技術案で構成される。
【0010】
本発明の第1側面において、ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体を提供する。ヒトIL-5に結合するとき、前記モノクローナル抗体は、SEQ ID NO:1で表される配列における86C、91R、96F及び104Lのうち少なくとも1個の残基に結合し、かつ前記モノクローナル抗体は、IL-5とIL-5RAとの結合を阻害することができる。
【0011】
好ましくは、ヒトIL-5に結合するとき、前記モノクローナル抗体は、SEQ ID NO:1で表される配列における86C、91R、96F及び104Lのうち少なくとも2個の残基に結合する。
【0012】
より好ましくは、ヒトIL-5に結合するとき、前記モノクローナル抗体は、SEQ ID NO:1で表される配列における86C、91R、96F及び104Lのうち少なくとも3個の残基に結合する。。
【0013】
より好ましくは、ヒトIL-5に結合するとき、前記モノクローナル抗体は、SEQ ID NO:1で表される配列における86C、91R、96F及び104Lの4個の残基のみに結合する。
【0014】
本発明の第2側面において、ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体を提供し、前記ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体は、重鎖および軽鎖を含み、前記重鎖は、重鎖相補性決定領域H-CDR1、H-CDR2、H-CDR3を含み、前記H-CDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:6で表され、前記H-CDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:7で表され、前記H-CDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:8で表され、前記軽鎖は、軽鎖相補性決定領域L-CDR1、L-CDR2、L-CDR3を含み、前記L-CDR1のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:9で表され、前記L-CDR2のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:10で表され、前記L-CDR3のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:11で表される。
【0015】
好ましくは、前記ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体は、マウス由来の抗体、キメラ抗体又はヒト化抗体である。
【0016】
より好ましくは、前記ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体は、重鎖にSEQ ID NO:3で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域を含み、軽鎖にSEQ ID NO:5で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域を含む。
【0017】
より好ましくは、前記的ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体は、重鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:13で表され、軽鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:15で表される。
【0018】
好ましくは、前記ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体は、重鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:16で表され、軽鎖のアミノ酸配列がSEQ ID NO:17で表される。
【0019】
本発明の第3側面において、単離したヌクレオチド分子を提供し、前記ヌクレオチド分子は、前記ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体をコードする。
【0020】
好ましくは、前記ヌクレオチド分子において、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:2で表され、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:4で表される。
【0021】
好ましくは、前記ヌクレオチド分子において、重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:12で表され、軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列は、SEQ ID NO:14で表される。
【0022】
本発明の第4側面において、前記ヌクレオチド分子を含んでなる発現ベクターを提供する。
【0023】
本発明の第5側面において、前記発現ベクターを含んでなるホスト細胞を提供する。
【0024】
本発明の第6側面において、前記ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体の製造方法を提供し、前記製造方法、a)発現条件下で前記ホスト細胞を培養することにより、前記ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体を発現し、b)前記ホスト細胞から前記ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体を分離精製することを含む。
【0025】
本発明の第7側面において、前記ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体と、薬学的に許容可能な担体とを含んでなる薬物組成物を提供する。
【0026】
本発明の第8側面において、前記ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体又は前記薬物組成物の、好酸球増加に起因する疾患を治療するための薬物の製造における用途を提供する。
【0027】
好ましくは、前記好酸球増加に起因する疾患は、喘息、多発血管炎を伴う肉芽腫症、慢性閉塞性肺疾患、鼻ポリープ、アレルギー性皮膚炎、好酸球増加症候群などであり、より好ましくは、前記好酸球増加に起因する疾患は、喘息である。
【発明の効果】
【0028】
本発明に係る抗ヒトIL-5モノクローナル抗体は、ヒトIL-5に特異的に結合し、既知の抗ヒトIL-5抗体に比べて、IL-5で誘発されるTF-1細胞増殖、及びIL-5とIL-5RAとの相互作用に対してより優れた阻害活性を示す。また、本発明に係る抗ヒトIL-5モノクローナル抗体は、既知の抗ヒトIL-5抗体と異なる抗原エピトープを認識し、好酸球増加に起因する疾患(例えば、喘息)を治療するための薬物製造に有用であり、臨床応用に有望である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】IL-5抗原に対する、マウス由来の抗ヒトIL-5モノクローナル抗体の相対結合力を測定した結果を示す図である。
【
図2】IL-5で誘発されるTF-1細胞増殖に対する、マウス由来の抗ヒトIL-5モノクローナル抗体の阻害活性を測定した結果を示す図である。
【
図3】IL-5で誘発されるTF-1細胞増殖に対する4-6-ヒト化及び4-6-キメラの阻害活性を示す図であり、そのうちブランク対照群に、細胞増殖の下限値を確定するため、IL-5でなく関連性のない同類対照用抗体を加え、陽性対照群に、細胞増殖の上限値を確定するため、IL-5と共に関連性のない同類対照用抗体を加え、前記関連性のない同類対照用抗体とは、IL-5を認識しないが、測定用抗体と同じ定常領域がを持つ抗体を指す。
【
図4】IL-5と受容体との相互作用に対する4-6-ヒト化及び4-6-キメラの阻害活性を示す図であり、そのうち対照抗体である4-4-ヒト化とは、IL-5に結合可能だが、IL-5と受容体との相互作用を阻害しない抗体を指す。
【
図5】4-6-ヒト化の抗原エピトープを解析するELISA図であり、そのうちOD
450<0.5とは抗体抗原の結合が有意に低下することを意味し、各測定値は、4個の平行ウェールを設けて得られる平均値である。
【
図6】4-6-ヒト化の抗原エピトープを解析するウエスタンブロット図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明において、「モノクローナル抗体」とは、基本的に均一である群から得られる抗体を指し、すなわち極一部が自然に変異を形成する以外、該群に含まれる単一抗体が同じであることを意味する。モノクローナル抗体は、1つの抗原サイトを高い特異性で認識して結合する。そして、通常のポリクローナル抗体製剤(通常、異なる決定基を認識する複数種類の抗体を含む)と異なり、各モノクローナル抗体は、抗原の単一決定基を認識して結合する。こうした特異性以外でも、モノクローナル抗体の利点としてはハイブリドーマを培養することにより得られ、他の免疫グロブリンによって汚染されることはない。また、「モノクローナル」とは抗体の特性を指し、すなわち基本的に均一である抗体群から得られる抗体であり、何らの特別な方法で製造される抗体と解釈してはいけない。
【0031】
本発明において、「抗体」および「免疫グロブリン」とは、構造上同じ特徴を有する約150000ドルトン(Da)のヘテロ四量体糖タンパク質であり、2つの同じ軽鎖(L)と2つの同じ重鎖(H)とにより構成される。各軽鎖は、共有ジスルフィド結合を介して重鎖と結合し、異なる免疫グロブリンにとって重鎖同士のジスルフィド結合数が異なる。重鎖および軽鎖は、規則的な間隔で鎖内ジスルフィド結合を有し、重鎖の一端に可変領域(VH)を備え、それに続いて複数の定常領域を備える。軽鎖の一端に可変領域(VL)を備え、他端に定常領域を備え、かつ軽鎖の定常領域と重鎖の第1定常領域が対向し、軽鎖の可変領域と重鎖の可変領域が対向する構成である。
【0032】
本発明において、「可変」とは抗体可変領域の一部が配列上差異があり、各抗体のその特定抗原に対する結合性や特異性を決定する構成である。しかしながら、可変度は、抗体の可変領域全体に渡って均一に分布する訳でなく、軽鎖および重鎖の可変領域において相補性決定領域(CDR)又は超可変領域と称される3つのフラグメントに集中して存在する。可変領域で保存性が比較的高い部分は、フレームワーク領域(FR領域)と称される。天然由来の重鎖および軽鎖の可変領域にそれぞれ4つのFR領域を含み、これらのFR領域はp折り畳み構造を形成し、さらに接続リングを形成する3つのCDRによって互いに連結され、ある状況では部分的なp折り畳み構造を形成する。各鎖のCDRは、FR領域が緊密に隣接し、さらに他の鎖のCDRと共同で抗体の抗原結合サイトを形成する[Kabat等、NIH Publ.No.91-3242、第I巻647-669頁(1991)]。定常領域は抗体と抗原の結合に直接に関与せず、例えば、抗体依存性の細胞毒性など、他の生体作用機序を示す。
【0033】
本発明において、「抗ヒトIL-5抗体」、「抗ヒトIL-5モノクローナル抗体」、「抗ヒトIL-5モノクローナル抗体」又は「ヒトIL-5に結合するモノクローナル抗体」とは、ヒトIL-5抗原に結合しうるモノクローナル抗体を指す。ヒトIL-5抗原としては、SEQ ID NO:1で表されるアミノ酸配列を有することが好ましく、本発明の抗ヒトIL-5モノクローナル抗体としては、IL-5とIL-5RAの結合に対して阻害活性を示すことが好ましい。
【0034】
本発明において、「キメラ抗体」とは、ある種に由来の重鎖および軽鎖の可変領域配列と、別の種に由来の定常領域配列とを含む抗体を指し、例えば、ヒト定常領域と連結したマウス重鎖および軽鎖の可変領域を備える抗体が挙げられる。
【0035】
本発明において、「ヒト化抗体」とは、CDRがヒト以外の動物(例えば、マウス)の抗体から得られ、抗体分子においてCDR以外の部分(フレームワーク領域および定常領域を含む)がヒト抗体から得られるものを指す。なお、フレームワーク領域のアミノ酸残基については、結合性が維持できる限り種々の変更を加えることができる。
【0036】
本発明において、発現ベクターについては特に制限がなく、例えばpTT5、pSECtag系、pCDNA系ベクター及び他の哺乳動物発現系に用いるベクターなどが挙げられ、発現ベクターには、適切な転写および翻訳調節配列が連結された融合DNA配列が含まれる。
【0037】
本発明に適用可能なホスト細胞として、上記発現ベクターを含む真核細胞が挙げられ、例えば、哺乳類動物や昆虫ホスト細胞培養系を利用して本発明の融合タンパク質を発現してもよく、CHO(Chinese Hamster Ovary)、HEK293、COS、BHK、SP2/0、NIH3T3なども本発明に利用可能である。また、上記発現ベクターを含む原核細胞を利用してもよく、例えばE.coliなどを利用可能である。
【0038】
本発明に係る抗ヒトIL-5モノクローナル抗体は、薬学的に許容可能な担体と共に薬物製剤や薬物組成物を構成し、薬物製剤又は薬物組成物の形態で安定に薬効を発揮することができる。これらの製剤は、本発明に係る抗ヒトIL-5モノクローナル抗体のアミノ酸コア配列の構造完全性を確保し、同時にタンパク質の多官能基を保護して分解(例えば、凝集、脱アミノ化又は酸化)から免れるようにすることができる。液体製剤の場合、通常、2℃~8℃の温度範囲で少なくとも1年安定して保存することができ、凍結乾燥剤の場合、30℃で少なくとも6ヶ月安定して保存することができる。前記抗ヒトIL-5モノクローナル抗体製剤は、製薬分野で一般に使われる懸濁剤、注射液、凍結乾燥剤であってもよいが、注射液又は凍結乾燥剤であることが好ましい。本発明に係る抗ヒトIL-5モノクローナル抗体を注射液又は凍結乾燥剤とした場合、薬学的に許容可能な賦形剤として界面活性剤、溶液安定剤、等張化剤および緩衝液からなる群より選ばれる1種以上を使用することができる。そのうち界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、Tween-20又はTween-80)、ポロキサマー(例えば、poloxamer-188)、Triton等の非イオン界面活性剤、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、ラウリル硫酸ナトリウムや、ミリスチル、リノレイル又はオクタデシルサルコシン、Pluronics、MONAQUATTM等が挙げられ、これらの界面活性剤は、抗ヒトIL-5モノクローナル抗体の粒子化傾向を最小限に抑える程度で添加する。溶液安定剤としては、還元糖、非還元糖等の糖類、グルタミン酸ナトリウム、ヒスチジン等のアミノ酸類、トリオール、高級糖アルコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のアルコール類等が挙げられ、これらの溶液安定剤を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができ、最終的に得られた製剤が一定時間内で安定な状態を維持できるよう添加する。等張化剤としては、塩化ナトリウム、マンニトール等が挙げられ、これらの等張化剤を単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。緩衝液については特に制限がなく、例えばTris、ヒスチジン緩衝液、リン酸塩緩衝液等が挙げられ、これらの緩衝液を単独又は2種以上を併用することができる。
【0039】
本発明で言う好酸球増加に起因する疾患としては、喘息、多発血管炎を伴う肉芽腫症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、鼻ポリープ、アレルギー性皮膚炎、好酸球増加症候群(HES)などが挙げられる。
【0040】
以下、実施例、実験例を挙げて本発明を詳述するが、本発明はこれらの実施例、実験例に制限されない。以下において、従来より周知の方法、例えばベクターとプラスミドの構築方法、タンパク質をコードする遺伝子を前記ベクターやプラスミドに導入する方法や、プラスミドをホスト細胞に導入する方法等については説明を省略する。これらの方法としては、当業者が熟知しており、Sambrook,J.,Fritsch,E.F.and Maniais,T.(1989)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd edition,Cold spring Harbor Laboratory Pressなどの出版物に詳細な説明がある。
【0041】
実施例1:IL-5抗原及び陽性対照抗体の調製
ヒトIL-5抗原配列は、http://www.uniprot.orgより入手し、アミノ酸配列はSEQ ID NO:1で表される。上記アミノ酸配列は、コドンを最適化したものであり、ヒトIL-5遺伝子の末端に1つの6×ヒスチジンタグを付け、遺伝子をpTT5に導入して一過性発現ベクター(NRC biotechnology Research Institute社製)を構築した。上記発現ベクターを、標準手順に従ってHEK293細胞(NRC biotechnology Research Institute社製)に導入し、Freestyle 293発現培地(Gibco社製)で培養した。5日後、上澄液を回収してヒトIL-5-ヒスチジンタグ抗原を精製し、ニッケルカラムで1回目精製を行い、イオン交換クロマトグラフィーで更に精製した。そして、得られたヒトIL-5-ヒスチジンタグをSDS-PAGEで純度を確定し、さらにTF-1細胞を用いてヒトIL-5-ヒスチジンタグの活性を測定した。精製済みのヒトIL-5-ヒスチジンタグは、純度が95%以上であり、活性が市販の同類製品並みであった。陽性対照抗体Nucala(登録商標)(商品名:Mepolizumab)は、GSK社より購入した100mg規格のものであった。別の陽性対照抗体hu39D10としては、US9505826B2に記載の配列に基づいて調製し、そのうち重鎖がUS9505826B2のSEQ ID NO:2で表され、軽鎖がUS9505826B2のSEQ ID NO:8で表され、重鎖の定常領域はヒトIgG4(S228P)のものを使い、遺伝子を構築した後にpTT5ベクターに導入し、HEK293E発現系(NRC biotechnology Research Institute社製)で発現してからProtein Aカラムで精製した。
【0042】
ヒトIL-5-ヒスチジンタグの活性は、下記方法によりTF-1細胞を用いて測定した。37℃に予め加温したRPMI1640培地(Gibco社製)で対数増殖期のTF1細胞(ATCC(登録商標)CRL-2003TM社製)を洗い、300g×5分間遠心し、この処理を2回繰り返した。TF1細胞数を計測し、10%FBSを含むRPMI1640培地で細胞を適切な密度に調整した後、細胞を1ウェル当たり104個/150μlの量で96ウェルプレートに播種した。ヒトIL-5を10%FBSのRPMI1640培地で段階的に希釈した後、1ウェル当たり50μlの量で上記96ウェルプレートに入れ、各濃度ごとに平行して3つのウェルを設けた。200μl/ウェルの蒸留水で96ウェルプレートの周りを満たし、37℃、5%CO2のインキュベータで3日間培養し、3日後に各ウェルに20μlのCCK-8溶液(Dojindo社製)を加え、37℃のインキュベータで引き続き8時間培養した。十分混ぜ合わせてからプレートリーダーでOD450値を測定し、測定データをGraphPad Prism6で解析してEC50を算出した。
【0043】
実験例2:IL-5抗原によるマウス免疫及びハイブリドーマの調製とスクリーニング
実施例1のヒトIL-5-ヒスチジンタグ抗原を生理食塩水で適切な濃度に希釈し、同量のフロイント完全アジュバントと混ぜ合わせ、超音波で完全に乳化した後に4~5週齢のBalb/cマウス(上海霊暢バイオテック社製、動物製造許可証番号:SCXK(上海)2013-0018)1匹ごとに50g抗原/100l、数箇所で皮下注射を行った。3週間後、同量のタンパク質とフロイント不完全アジュバントを混ぜ合わせて超音波で完全に乳化したものをマウスに対して数箇所で皮下注射を行い、2週間後には同様の免疫を再び1回繰り返した。こうして免疫を3回繰り返し、3回目免疫が終わってから7日目にマウスから採血し、血清を分離してELISA法で血清抗体価を測定した。血清抗体価が100000を越えるマウスについては、抗体価を測定してから1週間後に、抗原タンパク質10μgを生理食塩水100μLに溶かしたものを尾静脈注射で補足免疫を行った。
【0044】
血清抗体価は、ELISA法を利用して測定した。具体的には、炭酸ナトリウム緩衝液(1.59gのNa2CO3、2.93gのNaHCO3を純水1Lに溶かしたもの)を用いてIL-5-ヒスチジンタグを1000ng/mlに希釈し、ELISAプレートの各ウェルに100μずつ分注した。室温で4時間インキュベートし、0.05%Tween-20を含むPBS緩衝液(0.2gのKH2PO4、2.9gのNa2HPO4・12H2O、8.0gのNaCl、0.2gのKClおよび0.5mlのTween-20を純水1000mlに調製したもの)でプレートを洗い流した。ウェルを1%のウシ血清アルブミン(BSA)を含むPBSTでブロッキングし、PBSTで洗い流してから段階的に希釈したマウス血清を入れて一定時間かけてインキュベートした。プレートをPBSTで洗い、適宜希釈したHRP標識のヒツジ抗マウス二次抗体を加えて一定時間かけてインキュベートした。プレートを洗い流し、着色液[基質着色液A:酢酸ナトリウム3水和物13.6g、クエン酸1水和物1.6g、30%の過酸化水素水0.3mlを純水500mlで調製したもの、基質着色液B:エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.2g、クエン酸1水和物0.95g、グリセリン50ml、TMB0.15gを純水500mlで調製したもの、使用に先立って基質着色液Aと基質着色液Bを1:1の体積比で混合]を入れて着色させた後、終止液(2Mの硫酸溶液)を加えて反応を中止させた。プレートリーダーでOD450値を測定し、測定データをGraphPad Prism6で解析して血清抗体価を算出した。
【0045】
マウスに対して補足免疫を行ってから3日後に脾細胞を採取して融合を行った。具体的には、成長状態が良好なハイブリドーマsp2/0細胞(中国科学院典型培養物保存委員会の細胞バンクより入手)を37℃、5%CO2のインキュベータで培養し、融合前日に培養液を1回変えた。融合およびスクリーニングは、以下のように行われた。マウス脾臓を採取して研磨、洗浄して細胞数を計測し、脾細胞とsp2/0細胞を2:1の割合で混ぜ合わせて1500rpm、7分間遠心した。上澄液を取り除き、細胞を20mlの融合緩衝液(BTX社製)で洗い、1000rpm、5分間遠心し、こうした洗浄処理を3回繰り返した。細胞を細胞融合緩衝液2mlに分散して密度が1×107個/mlになるようにし、電気細胞融合装置ECM2001を利用して30秒内、指定の条件で(AC60V,30S;DC1700V,40μS,3X;POST AC60V,3S)細胞融合を行った。融合が終わると、ゆっくりと細胞を37℃に予め加温した10%血清(Gibco社製)を含むRPMI1640培地に移し、室温で引き続き60分間放置した。細胞を104個/100μl/ウェルで96ウェルプレートに播種し、翌日に各ウェルに2×HAT(Gibco社製)及び10%血清を含むRPMI1640培地を100μl追加補充した。融合から4日目に1×HAT及び10%血清を含むRPMI1640培地を半分変え、7日目に1×HAT及び10%血清を含むRPMI1640培地を全部新しく変えた。融合から9日目にサンプルを取ってELISAで測定し、陽性ハイブリドーマを24ウェルプレートで拡大培養し、さらに有限希釈法によってサブクローン化することで目的抗体を安定に発現するハイブリドーマ株を選出して保存ライブラリを構築した。ハイブリドーマ細胞株を用無血清培地HybriGRO SF(Corning社製)7日間培養し、Protein A/Gカラムで上澄液からマウス由来の抗ヒトIL-5モノクローナル抗体を精製した。
【0046】
実施例3:IL-5抗原に対するマウス由来の抗ヒトIL-5モノクローナル抗体結合力の評価
本実施例では、ELISA法を用いて実施例2で得られた40個のマウス由来の抗ヒトIL-5モノクローナル抗体を評価した。評価は、炭酸ナトリウム緩衝液でIL-5-ヒスチジンタグを100ng/mlに希釈した以外、実施例2の方法と同様であった。
【0047】
図1に示すように、EC
50データ(EC
50が小さいほど結合力が高い)から高い結合力を示す抗体10個(4-6、10、13、22、26、32、41、45、46、47号)を選んで評価に用いた。
【0048】
実施例4:IL-5で誘発されるTF-1細胞増殖に対する、マウス由来の抗ヒトIL-5モノクローナル抗体の阻害効果
本実施例では、実施例3で得られたマウス由来の抗ヒトIL-5モノクローナル抗体を用い、以下の手順に従って細胞レベルでの評価を行った。対数増殖期のTF1細胞を37℃に予め加温したRPMI1640培地で2回洗い、1000rpm、5分間遠心した。TF1細胞数を計測し、10%FBSを含むRPMI1640培地で適切な密度に懸濁してから96ウェルプレートに104個/150μl/ウェルの量で播種した。ヒトIL-5タンパク質(北京Sino Biological社製)を10%FBSのRPMI1640培地で濃度40ng/mlとなるように調製し、この培地でマウス由来の抗ヒトIL-5モノクローナル抗体を適切な濃度に希釈した後、さらに一定倍率に従って9段階の濃度勾配になるように希釈し、同時にNucala(登録商標)(Mepolizumab)群を設けて陽性対照群とし、IL-5に結合しないヒトIgG1アイソタイプ抗体を陰性対照とした。希釈済みの抗体を上記TF1細胞を含む96ウェルプレートに50μl/ウェルずつ加え、されに96ウェルの周りを200μl/ウェルの蒸留水で満たした。37℃、5%CO2のインキュベーで3日間培養し、3日後に96ウェルプレートの各ウェルにCCK-8溶液20μlを加え、37℃、インキュベータで引き続き8時間培養した。十分混ぜ合わせてからプレートリーダーでOD450値を測定し、測定データをGraphPad Prism6で解析してIC50を算出した。マウス由来の抗ヒトIL-5モノクローナル抗体に対して細胞レベルでの評価を行った後、評価結果と活性の高い抗体を用いて次の実験を実施した。
【0049】
実施例5:マウス由来の抗ヒトIL-5モノクローナル抗体の配列測定
ELISA測定や細胞レベルの評価結果に基づき、クローン番号4-6、13、22、26、32、41、45、46、47を候補抗体と選出した。Trizol(Life technologies社製)を用いて上記モノクローナル抗体に対応するハイブリドーマ細胞株から全RNAを抽出し、逆転写キット(Takara社製)を用いてmRNAからcDNAを合成し、PCR法で文献記載のプライマーペア(Antibody Engineering,Volume 1,Edited by Roland Kontermann and Stefan Duebel,p323)を用いてマウス由来の抗ヒトIL-5モノクローナル抗体の軽鎖可変領域及び重鎖可変領域の遺伝子を増幅し、得られたPCR産物をpMD18-Tベクターに導入して配列解析を行い、可変領域の遺伝子配列を確定した。各クローンの可変領域配列を対比解析した結果、4-6号抗体の配列がヒト化に適することが分かり、4-6号クローンを最終の候補抗体とした。該4-6号クローンの配列としては、重鎖可変領域の遺伝子配列が全長357bpであり、119個アミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:2で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:3で表され、かつ軽鎖可変領域の遺伝子配列が全長321bpであり、107個アミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:4で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:5で表され、GenBankでアミノ酸配列について被対比解析を行った結果、何れもマウスIgGの可変領域遺伝子に合致するのが確認できた。
【0050】
実施例6:マウス由来の抗ヒトIL-5モノクローナル抗体のヒト化
マウス由来の4-6号抗体の重鎖可変領域および軽鎖可変領域を、overlapping PCR法を利用してそれぞれヒトIgG1の軽鎖および重鎖定常領域と繋ぎ、4-6号キメラ抗体(4-6-キメラ)を構築した。
【0051】
軽鎖可変領域および重鎖可変領域のアミノ酸配列を解析し、KABAT法則に従って4-6号抗体の3つの抗原相補性決定領域(CDR)および4つのフレームワーク領域(FR)を確定した。そのうち重鎖相補性決定領域のアミノ酸配列H-CDR1がNHHIN(SEQ ID NO:6)であり、H-CDR2がYINPYNDYSRYNQKFKG(SEQ ID NO:7)であり、H-CDR3がDYGNFWYFDV(SEQ ID NO:8)であり、かつ軽鎖相補性決定領域のアミノ酸配列L-CDR1がKASQDINSYLS(SEQ ID NO:9)であり、L-CDR2がRADRLID(SEQ ID NO:10)であり、L-CDR3がLQYDDFPYT(SEQ ID NO:11)であった。
【0052】
NCBI IgBlastを利用してヒトIgG生殖系配列(Germline)と相同性対比を行い、IGHV1-46*01を選んで重鎖CDR移植テンプレートとし、マウス由来の4-6号抗体の重鎖CDRをIGHV1-46*01のフレームワーク領域に導入することで重鎖CDR移植抗体を構築し、同時にヒトIgG生殖系配列と相同性対比を行い、IGKV1-39*01を選んで軽鎖CDR移植テンプレートとし、マウス由来の4-6号抗体の軽鎖CDRをIGKV1-39*01のフレームワーク領域に導入することで軽鎖CDR移植抗体を構築し、得られた抗体を4-6-Graftedと定義した。また、フレームワーク領域の一部アミノ酸サイトに復帰変異を導入した。ここで、復帰変異とは、ヒト由来フレームワーク領域の一部アミノ酸残基をマウス由来フレームワーク領域の同一サイトのアミノ酸残基に変えることを意味すする。復帰変異に際して、アミノ酸配列に対してKABAT編集を行い、サイトの位置をKABATナンバリングに変更した。重鎖可変領域配列については、KABATナンバリングの第48位Mをマウス由来のI、第67位VをA、第69位MをL、第71位RをV、第78位VをAにそれぞれ変更することが好ましく、軽鎖可変領域配列については、KABATナンバリングの第36位YをI、第46位LをT、第49位YをH、第69位TをQにそれぞれ変更することが好ましい。上記可変領域遺伝子配列は、蘇州GENEWIZ社がCricetulus griseusのコドン使用選択を参考にしてコドンを最適化して合成したものであった。得られたヒト化可変領域配列とヒトIgG1定常領域を繋ぎ、該抗体を4-6号ヒト化抗体(4-6-ヒト化)と定義した。
【0053】
4-6号ヒト化抗体の軽鎖および重鎖遺伝子をpTT5発現ベクターに導入し、上記軽鎖および重鎖発現ベクターを組み合せてHEK293E系に一過的に導入して抗体を発現させた。HEK293細胞は、Free Style 293発現培地で培養し、PEI法によってプラスミドを細胞に導入し、5日後に上澄液を回収してProtein Aカラムで抗体を精製した。
【0054】
以上のようにして得られた4-6-ヒト化抗体の重鎖可変領域遺伝子は、配列全長が357bpであり、119個アミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:12で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:13で表され、かつ4-6-ヒト化抗体の軽鎖可変領域遺伝子は、配列全長が321bpであり、107個アミノ酸残基をコードし、ヌクレオチド配列がSEQ ID NO:14で表され、アミノ酸配列がSEQ ID NO:15で表される。そして、ヒトIgG1定常領域と繋ぎ、449個アミノ酸残基からなる4-6-ヒト化の重鎖(SEQ ID NO:16)および214個アミノ酸からなる4-6-ヒト化の軽鎖(SEQ ID NO:17)が得られた。
【0055】
実施例7:IL-5で誘発されるTF-1細胞増殖に対する抗ヒトIL-5モノクローナル抗体の阻害効果
本実施例では、実施例4と同様にTF-1細胞増殖に対する阻害効果に基づいて4-6号ヒト化抗体(4-6-ヒト化)及び4-6号キメラ抗体(4-6-キメラ)を対比評価した。
図3に示すように、IL-5で誘発されるTF-1細胞増殖に対するNucala(登録商標)、hu39D10、4-6-キメラ、4-6-ヒト化(293)及び4-6-ヒト化(CHO)(Thermo Scientific社のExpiCHO発現系を用いて調製、操作はメーカー提供のマニュアルに従う)のIC
50がそれぞれ70.85ng/ml、47.62ng/ml、28.93ng/ml、34.12ng/ml及び29.37ng/mlであった。そのうち、4-6号ヒト化抗体(4-6-ヒト化)及び4-6号キメラ抗体(4-6-キメラ)は、IL-5で誘発されるTF-1細胞増殖に対してほぼ同様の阻害活性を示し、ヒト化が成功であることが実証された。また、本発明の4-6-ヒト化及び4-6-キメラは、生体活性において陽性対照抗体Nucala(登録商標)及びhu39D10を遥かに越えることも確認できた。
【0056】
実施例8:IL-5とIL-5RAの相互作用に対する本発明の抗ヒトIL-5モノクローナル抗体の阻害効果
本実施例では、ELISA法を利用してIL-5とIL-5RAの相互作用に対する4-6号ヒト化抗体(4-6-ヒト化)及び4-6号キメラ抗体(4-6-キメラ)の阻害活性を評価した。まず、遺伝子レベルでIL-5、IL-5RA細胞外領域の遺伝子(アミノ酸配はhttp://www.uniprot.org/uniprot/Q01344を参考し、蘇州GENEWIZ社に依頼して遺伝子合成を行った)を、組み換えPCR法を利用してそれぞれヒトIgG1のFc断片に繋ぎ、pTT5を用いてIL-5-hFc及びIL-5RA-ECD-hFcの発現ベクターを構築し、HEK293E細胞に一過的に導入して発現させ、Protein Aカラムで精製した。そして、自ら作ったヒトIL-5-hFcでELISAプレートをコーティングし、ブロッキングしてからビオチン化IL-5RA-ECD-hFcと段階的に希釈した測定用抗体の混合物を加え、一定時間かけてインキュベートした後、プレートを洗い流してStreptavidin-HRPを加えて着色させた。そのうち対照抗体として4-4-ヒト化抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:18で表され、軽鎖可変領域のアミノ酸配列がSEQ ID NO:19で表され、定常領域配列は本発明の4-6-ヒト化と一致した。
【0057】
図4に示すように、IL-5と受容体との相互作用に対するNucala(登録商標)、4-6-キメラ及び4-6-ヒト化抗体のIC
50は、それぞれ3172ng/ml、979.9ng/ml及び1097ng/mlであり、IL-5と受容体の相互作用に対する本発明の4-6-キメラ及び4-6-ヒト化の阻害活性が陽性対照抗体Nucala(登録商標)の場合を遥かに上回ることが実証された。
【0058】
実施例9:抗ヒトIL-5モノクローナル抗体の抗原結合力評価
4-6号ヒト化抗体(4-6-ヒト化)および4-6号キメラ抗体(4-6-キメラ)とIL-5の結合力について、Biacore T200(GE healthcare社製)を用いて測定した。具体的には、Amine Coupling Kit(GE healthcare社製)を用いてCM5感知チップ(GE healthcare社製)を活性化させ、さらにチップにProtein A/G融合タンパク質(ThermoPierce社製)を固定量が2000RUとなるように固定した。FC3(Flow cell 3)を参考セルとし、FC4(Flow cell 4)を試料セルとした。FC4セルを用いて4-6号ヒト化抗体(4-6-ヒト化)、4-6号キメラ抗体(4-6-キメラ)又は対照抗体(Nucala(登録商標)及びhu39D10)をそれぞれ捕捉し、濃度が異なるヒトIL-5タンパク質(北京Sino Biological社製)を注入した。サイクリング条件として、FC全セルに解析物を流速50l/分間、4分間注入し、解離時間を20分間とし、さらに6Mの塩酸グアニジニウム(国薬グループ化学試薬有限会社製)を流速10l/分間、30秒間注入して表面再生化を行い、そしてBiacore T200 Evaluation Software Ver 1.0を利用して捕捉抗体シグナルと非捕捉抗体シグナルの差、相互結合性を算出した。
【0059】
下記表1に示すように、本発明の4-6-ヒト化及び4-6-キメラは、既知の陽性抗体Nucala(登録商標)(Mepolizumab)に比べてより迅速にIL-5に結合するため、IL-5への結合性がより優れるものであった。また、別の陽性対照抗体hu39D10に比べると、両者とも10pMの程度であり高い結合性を示した。
【0060】
【0061】
実施例10:抗ヒトIL-5モノクローナル抗体のエピトープ解析
IL-5のアミノ酸配列は、IPTEIPTSALVKETLALLSTHRTLLIANETLRIPVPVHKNHQLCTEEIFQGIGTLESQTVQGGTVERLFKNLSLIKKYIDGQKK
KCGEERRRVNQFLDYLQEFLGVMN
TEWIIES(SEQ ID NO:1)であった。下線を引いたアミノ酸配列は、IL-5と受容体の相互作用に重要であると文献で報じられ、これらのサイトに部位特異的変異を導入してそれぞれアラニン残基に変え、ヒスチジンタグが付いたIL-5変異体23個をHEK293E細胞に一過的に導入して発現させた。マウス由来のanti-His抗体で上澄液のIL-5変異体(IL-5変異体全てがヒスチジンタグを有する)を捕捉し、捕捉したIL-5変異体に測定用抗体であるNucala(登録商標)、hu39D10及び4-6-ヒト化を結合させ、HRP標識のヒツジ抗ヒトFcを用いて測定用抗体が捕捉したIL-5変異体に結合したか否かを測定し、測定用抗体が変異体に結合しない場合、該変異サイトが抗体結合に重要であると判断することができる。
図5に示すように、23個変異体のうち86C、90R、91R、96F、104Lの変異が測定用抗体の結合に対して影響が大きく、しかもこれら5つの変異が抗体結合に与える影響がそれぞれ異なるのが確認でき、この結果を表2に示す。表2に示すように、本発明に係る4-6号ヒト化抗体(4-6-ヒト化)は、Nucala(登録商標)やhu39D10と異なるエピトープを使用するのが確認できる。
【0062】
【0063】
上記ELISA法によるエピトープ解析結果を検証するため、ウエスタンブロットを利用して上記結果を確認した。ウエスタンブロットの操作は、Cell Signalling Technologies社推薦の方法(https://www.cellsignal.com/contents/resources-protocols/western-blotting-protocol/western)に従って実施した。電気泳動、転写システムや化学発光現像システムは、何れもBio-Rad社製のものであった。85~94位の10個変異体に対してウエスタンブロット解析を行い、それぞれhu39D10及び4-6-ヒト化抗体を一次抗体とし、HRP標識のヒツジ抗ヒトFc抗体を二次抗体とし、化学発光と現像システムで解析画像を形成した。
図6に示すように、86C、90R及び91Rのうち何れか1つのアミノ酸残基に変異を導入した場合、hu39D10がIL-5に結合できなくなり、86C及び91Rのうち何れか1つのアミノ酸残基に変異を導入した場合、4-6-ヒト化がIL-5に結合できなくなるのが確認できた。
【0064】
実施例11:抗ヒトIL-5モノクローナル抗体の種交差性に対する評価
後の薬理学的及び毒物学的研究に備え、本実施例では4-6-ヒト化抗体の種交差性について検証を行った。ラット、マウス、モルモット及びウサギのIL-5遺伝子(遺伝子配列はhttp://www.uniprot.orgから取得し,マウスの登録番号P04401、ラットの登録番号Q08125、モルモットの登録番号O08987、ウサギの登録番号G1SL79)を合成してpTT5ベクターに導入し、HEK293Eで一過的に発現させた。マウス由来anti-His抗体で上澄液からIL-5(上記IL-5は何れもヒスチジンタグを有する)を捕捉し、捕捉したIL-5に測定用抗体Nucala(登録商標)、hu39D10又は4-6-ヒト化を結合させ、HRP標識のヒツジ抗ヒトFcで測定用抗体とIL-5の結合を測定した。表3に示すように、本発明の4-6-ヒト化及びhu30D10は、モルモットとマウスのIL-5を効果的に認識できるが、ラットIL-5への結合が比較的弱いのが確認できた。なお、4-6-ヒト化及びhu30D10は何れもウサギIL-5を認識せず、Nucala(登録商標)はラット、マウス、モルモット及びウサギのIL-5を認識しないため、これらの結果については記載を省略した。
【0065】
【0066】
実施例12:抗ヒトIL-5モノクローナル抗体の薬物動態学
本実施例では、ラットを動物モデルとし、本発明に係る4-6-ヒト化抗体を静脈注射で(IV.)投与する場合の薬物動態学を検討した。
【0067】
体重約200gのラット4匹を1組とし、各ラットに抗ヒトIL-5モノクローナル抗体又はヒトIgG1アイソタイプ抗体1mgを静脈注射で投与した。投与を行ってから一定時間で眼窩採血を行い、血液が自然に凝固した後に遠心して血清を回収した。血清中の抗体薬物濃度は、以下の通りにして測定した。つまり、ヒツジ抗ヒトFcフラグメント抗体(Sigma社製、該抗体は種交差性を考慮して吸着処理を行い、ラット内由来の抗体に結合しないものであった)を濃度1000ng/ml、100μl/ウェルの条件でELISAプレートにコーティングした後、PBST+1%BSAでブロッキングし、適宜希釈したラット血清を加えた。一定時間インキュベートした後、プレートを洗い流してHRP標識のヒツジ抗ヒト抗体(Sigma社製、該抗体は種交差性を考慮して吸着処理を行い、ラット内由来の抗体に結合しないものであった)を加え、さらに一定時間インキュベートした。プレートを洗い流して着色液を加えて反応させ、終止液を加えて反応を終止させてOD450を測定した。標準検量線を用いてOD450を抗体濃度に変換し、データをGraphPad Prism6でまとめて処理し、Phoenixソフトでラット体内における抗体薬物の半衰期を算出した。
【0068】
図7に示すように、静脈注射で投与する場合の薬物動態学として、4-6-ヒト化抗体のラット体内における半衰期がヒトIgG1アイソタイプ抗体の場合とほぼ同じく、それぞれ13.90日および12.65日であった。
【0069】
実施例13 本発明の抗ヒトIL-5モノクローナル抗体の体内薬効学研究
本実施例では、オボアルブミン(Ovalbumin)で誘発されるマウス喘息モデルを用いて体内薬効学を検討した。
【0070】
具体的には、Balb/cマウスをランダムに非モデル対照組、モデル対照組、4-6-ヒト化抗体組(低投与量組および高投与量組)および陽性対照抗体組と6組に分け、各組は10匹ずつであった。オボアルブミン(Sigma社製)及び免疫アジュバントとしてInject Alum(Thermo Fisher社製)を混合して懸濁液とし、1日目及び14日目にマウス腹腔から注射して感作させた(陰性対照組は、腹腔からPBSを注射した)。1%のオボアルブミンを含むPBS溶液を霧化して噴霧剤とし、28日目、29日目および30日目に噴霧剤でマウスを刺激することにより喘息を誘発した(対照組は、PBSを霧化してマウスを刺激する)。20日目および28日目(オボアルブミン溶液を噴霧剤にしてマウスを刺激する前の2時間)に、皮下注射によってマウスに投与を行い、具体的には、非モデル対照組に抗体を含まない賦形剤溶液、モデル対照組注射に抗体を含まない賦形剤溶液、4-6-ヒト化抗体の低投与量組および高投与量組にはそれぞれ0.4mg/kgおよび2mg/kgの抗ヒトIL-5モノクローナル抗体、並びに陽性対照抗体組には2mg/kgのReslizumab(商品名:Cinqair、Teva Pharmaceutical Industries社製)を投与した。32日目に動物から採血し、フローサイトメータを用いて血液サンプルにおける好酸球数を計測し、具体的には、蛍光色素APC-eFluor780で標識した抗Ly-6G抗体、PE標識の抗CD193抗体およびeFluor 506標識の抗CD45抗体を用いて血液細胞を染色し、これら3種類の抗体染色で全部陽性である細胞を好酸球と判定した。上記蛍光色素標識の抗Ly-6G抗体および抗CD193抗体は、eBioscience社製であり、抗CD45抗体は、BioLegend社製であった。
【0071】
得られたデータについては、各組の好酸球数などをGraphPad Prism 6で解析し、T検定で各組の差を確定し、p<0.05の場合を有意差があるとし、p<0.01の場合を有意差が特に顕著であるとした。
【0072】
図8に示すように、非モデル組に比べて、モデル組の血液サンプルにおける好酸球数が顕著に上昇し、動物モデル構築が成功であることが確認できた。また、モデル対照組に比べて、4-6-ヒト化抗体の低投与量組、高投与量組及び陽性対照抗体組の好酸球数が何れも顕著に低下し、かつ4-6-ヒト化抗体の低投与量組、高投与量組は、陽性対照抗体組に比してp値がそれぞれ0.0069、0.0004と有意差があり、体内活性からして4-6-ヒト化抗体が陽性対照抗体Reslizumabを上回ることが確認できた。
【配列表】