(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】ガドテリドール中間体及びこれを利用したガドテリドール製造方法
(51)【国際特許分類】
C07D 257/02 20060101AFI20220301BHJP
【FI】
C07D257/02 CSP
(21)【出願番号】P 2020539756
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(86)【国際出願番号】 KR2019000483
(87)【国際公開番号】W WO2019143073
(87)【国際公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-08-07
(31)【優先権主張番号】10-2018-0007310
(32)【優先日】2018-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518161905
【氏名又は名称】エンジーケム ライフサイエンシーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100090251
【氏名又は名称】森田 憲一
(72)【発明者】
【氏名】イ ジェヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ ジョンス
(72)【発明者】
【氏名】カン ビョンギュ
(72)【発明者】
【氏名】イ ビョンウ
(72)【発明者】
【氏名】イ サンオ
(72)【発明者】
【氏名】ユン テミョン
(72)【発明者】
【氏名】バン ジェフン
(72)【発明者】
【氏名】ソン キヨン
【審査官】松澤 優子
(56)【参考文献】
【文献】特表平07-507067(JP,A)
【文献】特開平06-228115(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106543094(CN,A)
【文献】特表2002-508755(JP,A)
【文献】特許第3471836(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 257/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,4,7,10-テトラアザシクロドデカンとリチウム-ハロゲン塩を反応させサイクレン-リチウムハロゲン錯体を製造して、これを酸化プロピレンと反応させ下記化学式2で表される10-(2-ヒドロキシルプロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-リチウムハロゲン錯体を得る段階;
[化学式2]
(前記化学式2で、Xはフッ素、塩素、ブロム、ヨードである。)
前記化学式2で表されるリチウムハロゲン錯体と塩酸を反応させ、下記化学式3で表されるガドテリドール中間体(10-(2-ヒドロキシルプロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン4塩酸塩)を得る段階;
[化学式3]
前記化学式2で表されるリチウムハロゲン錯体と塩酸の反応物を濾過して化学式3で表されるガドテリドール中間体を結晶形態で得る段階;
前記化学式3で表されるガドテリドール中間体を2-クロロ酢酸でアルキル化して、下記化学式4で表されるテリドールを得る段階;及び
[化学式4]
前記化学式4で表されるテリドールとガドリニウムオキサイドを反応させ、下記化学式5で表されるガドテリドールを合成した後、有機溶媒を追加して固体に析出させる段階;を含むガドテリドール製造方法
であって、
[化学式5]
前記ガドテリドール中間体と2-クロロ酢酸の反応物をナノフィルターを使用して精製する、ガドテリドールの製造方法。
【請求項2】
前記有機溶媒はアセトンである、請求項
1に記載の、ガドテリドールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はガドテリドールの中間体及びこれを利用したガドテリドールの製造方法に関するもので、更に詳細にはMRI造影剤で使用されるガドテリドールの中間体及びこれを利用したガドテリドールの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
非対称の巨大環を持ってガドリニウムを含有したMRI造影剤の一種類であるガドテリドールはプロハンス(ProHance(登録商標))という商品名で全世界に市販されている。ガドテリドールの造影作用はガドリニウム陽イオンと巨大環形リガンドである10-(2-ヒドロキシルプロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリ酢酸(以下テリドール)で構成される非イオン性錯体に基づいている。このようなガドテリドールの巨大環非イオン性構造は既存に市販されるイオン性ガドリニウム含有MRI造影剤であるガドペンテト酸モノメグルミン、ガドペンテト酸ジメグルミン等と比べて相対的に優れた物性と高い体内安全性を持たせる。
【0003】
非イオン性であるガドテリドールはイオン性ガドリニウム含有MRI造影剤たちに比べて低い浸透圧と粘度を持っていて造影剤の血管外流出時局所反応等の副作用を減らすことができるし、ガドテリドールのサイクレン構造を基盤とした巨大環形リガンド構造はケージ(Cage)形態でガドリニウム陽イオンと強く結合して線形リガンド構造を持つガドペンテト酸モノメグルミン、ガドペンテト酸ジメグルミン等に比べてガドリニウム陽イオンが容易に遊離されないので注射時体内遊離ガドリニウム陽イオンの毒性による腎性全身性線維症(NSF)に対する安全性も又さらに高い。
【0004】
現在ガドテリドールの核心前駆体であるテリドールは全て1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリ酢酸(以下DO3A)を通じて合成される。DO3Aの合成方法は大きく二つに分かれるが一番目は出発物質であるサイクレンにDMF Acetal等の試薬を使用縮合反応を通じて保護基を導入してN-アルキル化反応を進行、トリ酢酸基を導入した後脱保護基過程を経る方法(EP9803408、US005962679A)である。
[化学式6]
【0005】
二番目方法はサイクレンの前駆体から合成可能なBicyclic形態の中間体を使用、N-アルキル化反応を通じてトリ酢酸基を導入した後加水分解をしてDO3Aを合成する方法(国際公開公報WO1999-005145)がある。
[化学式7]
【0006】
しかしこのようなそれぞれの方法の場合保護基導入に胎児奇形物質と知られているし比較的費用が多くかかるDMF Acetalのような物質を使用したり(EP9803408、US005962679A)サイクレンではないサイクレンの誘導体として合成が難しく人体、環境有害性が大きいGlyoxal等を使用しなければならないBicyclic中間体を使用(WO9905145)する等の問題がある。又、二つの方法全て反応中間体がトリ酢酸基導入のためのN-アルキル化反応条件である強塩基性水溶液状態で保護基が容易に離れて行って精製し難い関連物質の生成が酷くて純度と収率が低下される現状がある。又、ガドテリドールだけではなくガドブトロール、DOTAREM等注射剤の形態で使用されるMRI造影剤たちの特性上、有機溶媒に対する溶解度が低いし、親水性が大きくて製品合成中に生ずる無機塩種類の副生成物が単純な抽出、洗浄又は結晶化の方式で除去が難しい共通的難しさがあって高純度のガドテリドールを生産するための工程の改善が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は塩化物形態の中間体を単離して、高純度のガドテリドール中間体製造方法を提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は前記ガドテリドール中間体を利用して、経済的で高純度のガドテリドールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って、本発明の目的は塩化物形態の中間体を単離して、高純度のガドテリドール中間体製造方法を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は前記ガドテリドール中間体を利用して、経済的で高純度のガドテリドールを提供することである。
【発明の効果】
【0011】
以上上述のとおり、本発明に従うガドテリドール中間体及びこれを利用したガドテリドール製造方法は塩化物形態の中間体を単離して高純度の中間体を使用して高純度のガドテリドールを製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明は下記化学式1又は下記化学式3で表されるガドテリドール中間体を含む。
[化学式1]
[化学式3]
【0013】
本発明は前記ガドテリドール中間体の製造方法を含むし、前記ガドテリドール中間体を製造するためには先に、出発物質として1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン(以下、“サイクレン”という)とリチウム-ハロゲン塩を反応させサイクレン-リチウムハロゲン錯体を製造する。前記反応はイソプロピルアルコール、エタノール、メタノール等のアルコール溶媒中で行われることができるし、反応温度は一般的に20ないし30℃である。前記リチウム-ハロゲン塩としてはフッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨード化リチウム等を含んで、前記リチウム-ハロゲン塩の使用量はサイクレン1当量に対して、0.1ないし5当量、好ましくは1ないし2当量である。ここで、前記リチウム-ハロゲン塩の使用量が少なすぎると、次の反応の選択性が減少して収率が落ちる問題があって、多すぎると経済的に利得がない。このように得られたサイクレン-リチウムハロゲン錯体と酸化プロピレン(Propylene oxide)を反応させると、下記化学式2で表される10-(2-ヒドロキシルプロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-リチウムハロゲン錯体を得る。
[化学式2]
【0014】
前記化学式で、Xはフッ素、塩素、ブロム、ヨードである。
【0015】
前記反応にあって、酸化プロピレンは前記サイクレン-リチウムハロゲン錯体に添加して過剰反応による副産物を減らして、選択的に反応させることができる。前記酸化プロピレンの含量はサイクレン-リチウムハロゲン錯体に対して、1.5ないし5当量、好ましくは1.5ないし3当量である。ここで、前記酸化プロピレンの含量が少なすぎると出発物質であるサイクレンの未反応物が残って純度及び収率が減少する問題があって、多すぎると過剰反応物の生成で収率が落ちる問題がある。前記反応温度は一般的に0ないし40℃、好ましくは20ないし30℃で行われるし、反応時間は通常的に36時間ないし60時間である。
【0016】
次に、前記化学式2で表されるリチウムハロゲン錯体と塩酸を反応させ、下記化学式3で表されるガドテリドール中間体(10-(2-ヒドロキシルプロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン4塩酸塩)を得る。
[化学式3]
【0017】
前記反応にあって、塩酸の含量は化学式2で表されるリチウムハロゲン錯体に対して、1ないし20当量、好ましく3ないし8当量である。ここで、前記塩酸の含量が少なすぎると、塩酸塩の生成が低調して収率が落ちる問題があって、多すぎると、経済的に利得がない。前記反応温度は0ないし50℃であり、反応時間は1時間ないし3時間である。
【0018】
前記塩酸塩を合成する反応は化学式2の化合物を別に分離しないで、化学式1の化合物が合成された反応液に塩酸を投入して、そのまま行われることができる。前記反応物から濾過等の方法で前記化学式3で表される塩酸塩を分離及び精製すると、前記化学式3で表されるガドテリドール中間体を高純度の結晶形態で得ることができる。
【0019】
次に、前記化学式3で表されるガドテリドール中間体を利用してガドテリドールを製造する方法である。先に、化学式3で表されるガドテリドール中間体を2-クロロ酢酸でアルキル化して、下記化学式4で表される化合物(10-(2-ヒドロキシルプロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリ酢酸、(以下テリドール)を得る。
[化学式4]
【0020】
前記反応はアルカリ性水溶媒中で行われることができる。例えば、前記反応の溶媒として、水に水酸化ナトリウム(NaOH)を滴加して、一般的にpH9ないし12を形成できる。前記反応は一般的に10℃ないし100℃で行われることができる。前記反応にあって2-クロロ酢酸の含量は前記化学式3で表されるガドテリドール中間体に対して、3ないし10当量、好ましくは4ないし6当量である。ここで前記2-クロロ酢酸の含量が少なすぎると反応進行度が落ちて収率と純度が落ちる問題があって、多すぎると経済的に利得がない。
【0021】
前記反応物をpH0.5ないし1.5に調節した後、ナノフィルターを利用して無機塩及び他の水溶性低分子物質たちを逆浸透濾過、除去した後濃縮し、有機溶媒を追加して、再結晶すると不純物が除去された前記化学式4で表される化合物を得ることができる。前記ナノフィルターシステムは有機膜の螺旋形態(Spiral type)で200ないし300dalton以上のモル質量を持つ物質たちを濾過又は濃縮するために設計された逆浸透圧装置で、塩及び他の低分子量を持つ水溶性有機/無機物質たちを有機膜を通じて分離及び精製して望む物質だけを回収できる。
【0022】
次に、前記化学式4で表されるテリドールとガドリニウムオキサイドを反応させ、下記化学式5で表される10-(2-ヒドロキシプロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリ酢酸ガドリニウム錯体(以下、ガドテリドール)を得る。
[化学式5]
【0023】
前記反応にあって、ガドリニウムオキサイドの含量は前記化学式4で表されるテリドール1当量に対して、0.1ないし1当量、好ましく0.4ないし0.6当量である。ここで、前記ガドリニウムオキサイド含量が少なすぎると、反応が終了されない問題があって、多すぎると関連物質が増加して製品の純度が落ちて精製が難しい問題がある。前記反応温度は一般的に60ないし90℃であり、反応時間は6時間ないし12時間である。
【0024】
前記反応物をイオン交換樹脂等の方法で精製及び分離すると、純度99.9%以上のガドテリドールを得ることができる。前記イオン交換樹脂としては陽イオンと陰イオンレジンを順次通過させて使用できる。このように精製した濾液を濃縮した後、精製水に溶解して、プロトン性又は非プロトン性極性有機溶媒で結晶化及び単離できる。具体的に、前記濾液を一般的に20ないし25℃で水-アセトン条件で結晶化できる。前記結晶化溶媒としてはアセトン、エタノール、イソプロパノール等の有機溶媒を使用できるし、好ましくはアセトンである。このように得られたガドテリドールの結晶を乾燥して、99.7%以上の高純度ガドテリドールを追加的な再結晶や除塩(desalting)過程なく経済的に得ることができる。
【実施例】
【0025】
以下、実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明が下記実施例によって限定されるのではない。
【0026】
[実施例1]化学式3で表されるガドテリドール中間体製造
1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン25Kg、塩化リチウム8Kg、イソプロピルアルコール100Lを反応器に投入して30℃以下を維持して酸化プロピレン11Kgを滴加する。滴加完了後20ないし30℃を維持して60時間攪拌、反応進行した後14w%塩酸水溶液200Kgに滴加して反応を終結する。10ないし20℃を維持して1時間追加攪拌した後60ないし70℃で減圧濃縮する。濃縮物に無水エタノール250Lを加えて0ないし5℃に冷却、12時間追加攪拌する。生成された固体を濾過無水エタノール50Lで洗浄して10-(2-ヒドロキシプロピル)-1,4.7,10-テトラアザシクロドデカン4塩酸塩20.82Kg(収率:38.1%、純度99.7%(HPLC))を収得した。
【0027】
[実施例2]化学式4で表されるテリドール製造
前記10-(2-ヒドロキシプロピル)-1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン4塩酸塩20Kg、2-クロロ酢酸18.1Kgと精製水100Lを反応器に投入した後40w%水酸化ナトリウム水溶液を滴加してpHを9~12で維持して80~90℃に加熱攪拌して反応を終結させる。反応物を5~10℃に冷却した後35w%塩酸を滴加pH0.5~1.5に調節してナノフィルターを進行、無機塩と低分子水溶性有機物たちを除去する。ナノフィルターで得られた反応物は60~80℃で減圧濃縮、水分を除去して50~60℃でメタノール20Lを加えて溶かした後温度を0~10℃に冷却、攪拌して固体化する。生成された固体は0~10℃に12時間追加攪拌後濾過して0~10℃に冷却したメタノール20Lで洗浄、乾燥してテリドール9Kg(収率:42%、純度:99%(HPLC))を収得した。
【0028】
[実施例3]化学式5で表されるガドテリドール製造
前記テリドール9Kgと精製水36Lを反応器に投入した後、ガドリニウムオキサイド4.87Kgを投入して80~90℃に昇温する。12時間の間温度を維持して加熱攪拌して反応を進行した後、反応液を陽イオンと陰イオンレジンを順次通過させて精製する。精製された濾液を反応器に移送、60~80℃で減圧濃縮する。濃縮物を20~25℃で精製水9Lに溶かした後アセトン36Lを投入して固体化させた後反応物を5時間追加攪拌する。生成された固体を濾過、アセトン9Lで洗浄した後乾燥してガドテリドール8.8Kg(収率:71%、純度:99.9%(HPLC))を収得した。