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特許7032564冷却装置及びこの冷却装置を作動するための方法
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  • 特許-冷却装置及びこの冷却装置を作動するための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】冷却装置及びこの冷却装置を作動するための方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 45/02 20060101AFI20220301BHJP
   C21D 1/00 20060101ALI20220301BHJP
   C21D 9/573 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
B21B45/02 320C
B21B45/02 320F
B21B45/02 320T
C21D1/00 123A
C21D9/573 101Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020555880
(86)(22)【出願日】2019-04-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-12
(86)【国際出願番号】 EP2019058451
(87)【国際公開番号】W WO2019197254
(87)【国際公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-11-25
(31)【優先権主張番号】102018205684.6
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】390035426
【氏名又は名称】エス・エム・エス・グループ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】グローセ・ローデマン・フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー・フランク
【審査官】中西 哲也
(56)【参考文献】
【文献】特開昭58-090313(JP,A)
【文献】特開昭59-041426(JP,A)
【文献】特表2010-527797(JP,A)
【文献】特開平09-122734(JP,A)
【文献】実開平05-018713(JP,U)
【文献】実開昭60-052010(JP,U)
【文献】実開昭60-046904(JP,U)
【文献】特開平07-314028(JP,A)
【文献】特表2016-515474(JP,A)
【文献】実開昭59-001414(JP,U)
【文献】特表2012-520769(JP,A)
【文献】特表2012-520770(JP,A)
【文献】米国特許第04466574(US,A)
【文献】韓国登録特許第10-1694448(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21B 45/02
C21D 1/00
C21D 9/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属材料(200)を冷却するための冷却装置(100)であって、この冷却装置(100)が、
金属材料上に冷却剤を噴射するために、それぞれ少なくとも一つの噴射ノズル(130)を有する、二つ一組で隣接した噴射領域I,II,IIIを複数でN個持つ少なくとも一つの冷却ビーム(110)と、
各々の噴射領域(I,II,III)内における冷却剤(300)の体積流を又は圧力を個別に調整するためのバルブ(120)と、
バルブ(120)を個別に制御するための制御装置(150)と、及び
冷却装置に金属材料が進入する前の、金属材料の幅にわたる金属材料の温度分布を決定するための温度決定装置と、
を有し、
冷却ビーム(110)の内部を少なくとも二つのチャンバに分割するための少なくとも一つの隔壁(140)が設けられ、それぞれの噴射領域(I,II,III)が異なるチャンバの一つに割り当てられていて、
隔壁は、金属材料のあらかじめ決定されている幅の部分の、冷却装置に進入する前の、温度分布の推移に応じて形成されていて、及び
隔壁が、この幅の部分上に冷却ビームに配置されている当該冷却装置(100)において、
冷却ビーム(110)内部の隔壁(140)を可変に位置決めするために、又は冷却ビームの長手方向(L)に隔壁(140)を移動するために、したがって、冷却ビーム(110)のチャンバを及びスプレー領域(I,II,III)を変更するために、同様の制御装置(150)によって制御可能な、少なくとも一つの調整要素(144)が設けられていることを特徴とする冷却装置(100)。
【請求項2】
少なくとも一つの噴射領域(I,II,III)は、冷却ビーム(110)の長手方向(L)に並んで配置されている複数個の噴射ノズル(130)を有すること、を特徴とする請求項1に記載の冷却装置(100)。
【請求項3】
冷却ビームの噴射領域における噴射ノズル(130)の配置及び/又は数は、金属材料の中央(M)に関して、幅方向で対称又は非対称であること、を特徴とする請求項1又は2のいずれか一項に記載の冷却装置(100)。
【請求項4】
隔壁(140)は噴射ノズル(130)の間に延在すること、を特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の冷却装置(100)。
【請求項5】
隔壁(140)は、直線状に、階段形状に曲線に、又は放物線形状に形成されていること、を特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の冷却装置(100)。
【請求項6】
冷却ビーム内のチャンバの整数の数Nは、N≧3であること、を特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の冷却装置(100)。
【請求項7】
N=3の場合には、それぞれが台形に形成されている、左、中央及び右の噴射領域(I,II,III)があること、を特徴とする請求項6に記載の冷却装置(100)。
【請求項8】
それぞれ複数個の平行に配置されている冷却ビームが、グループにまとめられていること、を特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載されている冷却装置(100)。
【請求項9】
制御装置(150)は、金属材料(200)上の冷却剤(300)の目標値、又は計算されている目標分布に関して、バルブ(120)及び/又は隔壁(140)を位置決めするためのアクチュエータ(144)を適切に設定するために、形成されていること、を特徴とした請求項1から8のいずれか一項に記載の冷却装置(100)。
【請求項10】
制御装置(150)は、バルブ(120)の及び/又は隔壁(140)の位置調整の為の調節要素(144)の適切で可変な制御を介して、冷却剤(300)の圧力又は体積流の実際分布を金属材料上の冷却剤の圧力又は体積流の所定の目標分布に制御するために、制御装置の形態で形成されていて、バルブ及び/又は調節要素が制御回路のアクチュエータを表すこと、を特徴とした請求項1から8のいずれか一項に記載の冷却装置(100)。
【請求項11】
属材料(200)上の、又は金属材料の幅にわたる、冷却剤の目標分布、又は体積流若しくは圧力の目標分布を計算するための冷却モデル(400)を備えること、を特徴とする請求項9又は10に記載の冷却装置(100)。
【請求項12】
冷却モデル(400)は、冷却モデルに供給される以下の測定値、即ち、
料(200)の温度又は温度推移、及
金属材料(200)上で噴射される際の冷却剤の温度、
に依存して、金属材料(200)上の冷却剤の目標分布を計算するように形成されていること、を特徴とする請求項11に記載の冷却装置(100)。
【請求項13】
個別の冷却剤供給を伴う噴射領域(I,II,III)の数及び/又は噴射領域の単位面積当たりの噴射ノズル(130)の数は、所望の冷却剤作用密度に依存して選択されていること、を特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の冷却装置(100)。
【請求項14】
2つの隣接した調整領域(I,II,III)の間の隔壁(140)は、冷却装置に進入する前の金属材料の幅にわたる金属材料の温度分布の推移に隔壁の位置を適合するために、又は金属材料(200)の幅にわたる冷却剤(300)の体積流若しくは圧力を所望の目標分布を設定するために、冷却ビーム(110)の長手方向(L)に沿って適切に移動されること、を特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の冷却装置(100)を作動するための方法。
【請求項15】
冷却ビーム(110)の中央(M)の両側の隔壁(140)は、冷却ビーム(110)の中央(M)に関して対象に又は非対称に移動されること、を特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
壁の移動が、冷却作動中にも行われ得ること、を特徴とする請求項14又は15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料を、特に金属ストリップを冷却するための冷却装置に関する。さらに、本発明は対応する冷却装置を作動するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の冷却装置は、先行技術において、例えば、欧州特許第2155411号明細書及び欧州特許第2986400号明細書から周知である。
【0003】
欧州特許第2155411号明細書は、金属材料、特に圧延材料の幅にわたり温度分布の影響に対する冷却装置が開示されている。冷却装置は、金属材料に冷却剤を塗布するためのノズルを有する。その際、このノズルは、幅にわたって分布して配置されている。少なくとも一つのノズルは、金属材料の幅に関して、そのノズルの位置に調整可能である。これに関して、金属ストリップの幅にわたるの不均一な温度分布の影響は、限られた範囲で起こり得る。冷却ビーム(独語:Kuehlbalkens)を個々の噴射領域に分割することは、この欧州特許第2155411号明細書からは知られていない。
【0004】
しかし、冷却ビームを個々の噴射領域に細分化することは、例えば、欧州特許第2986400号明細書から周知である。具体的には、開示された冷却装置が、冷却装置を通過する際の金属材料の搬送方向に対して横に延びる少なくとも一つの冷却ビームを有する。少なくとも一つの冷却ビームは、その長手方向に、即ち金属材料の搬送方向に対して横に見て、二つの外側の噴射領域及びこの二つの噴射領域の間に配置されている一つの中央の噴射領域を有する。各々の噴射領域には、特に個別に割り当てられている個別に制御可能なバルブを介して、冷却剤を供給することができる。その後、この冷却媒体は、各々噴射領域に割り当てられている噴射ノズルを介して、冷却されるべき金属材料に適応される。
【0005】
特開昭59-041426号公報は、請求項1の前提部の特徴を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許第2155411号明細書
【文献】欧州特許第2986400号明細書
【文献】特開昭59-041426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、金属材料への冷却剤の塗布が改善されることと、冷却ビームの長手方向に沿った冷却剤の体積流の減少又はプラスの増加の開始点が、可変に決定可能であることを、公知の冷却装置及びその作動の為の公知の方法でさらに構成することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の主旨によって解決される。それゆえ、本発明による冷却装置の少なくとも一つの冷却ビームの場合には、冷却ビームの内部を少なくとも二つのチャンバに分割するための少なくとも一つの隔壁が設けられていて、それぞれの噴射領域が異なるチャンバの一つに割り当てられている。隔壁は、冷却装置に進入する前に、金属材料のあらかじめ決定されている幅の部分の温度分布の推移に、少なくともほぼ応じて形成されていて、及び隔壁が、幅の部分上に冷却ビームに配置されている。更に、冷却装置は、冷却ビーム内の隔壁を可変に位置決めするために、特に冷却ビームの長手方向に隔壁を移動するために、したがってそれぞれの冷却ビームのチャンバ及びスプレー領域を変更するために、少なくとも一つの(同様の制御装置を制御可能な)制御要素を含む。
【0009】
本願の請求項に記載の、隔壁による冷却ビーム内部の複数のチャンバへの分割、及び特に本願の請求項に記載の、冷却されるべき材料の幅にわたる温度分布の推移に対応する隔壁の特別な形状は、有利に、材料の特に効率的なかつ適切な冷却を可能とする。特に、本願の請求項に記載の隔壁の形状により、好ましくは隔壁によって分離するチャンバ内への異なる冷却剤の供給と関連し、冷却を、材料の幅にわたる実際の冷却要求に特に良く適合することができる。そのように、有利には、冷却されるべき材料の幅にわたる、一定の、漸減する又は漸進的な冷却ストラテジーを実現することができる。
【0010】
特に、本願の請求項に記載の仕切り要素のこの可動性により、冷却ビームの長手方向に沿った冷却剤の体積流の減少又は増加の開始点を可変的に決定することができ、及び個々の場合で冷却要件に適合することができる。冷却装置に進入する金属材料の温度プロフィルに応じて、冷却されるべき材料の幅に関して、両側で対称的に、又は代替的に、冷却されるべき材料の片側のみの非対称的でも、開始時点の位置を調整することができる。
【0011】
第一の実施例によると、少なくとも一つの噴射領域が、噴射領域の面上で分布して配置されている、好ましくは平行な列に、冷却ビームの長手方向に並んで配置されている、複数個に噴射ノズルを有する際には、冷却するべき材料の幅にわたって、冷却剤塗布が、円弧状又は曲線状の分布も可能であるという利点を提供する。この冷却剤塗布は、相対的になめらかに延びる、即ち、個々の分布のセクションの間の移行領域にはあまり大きな変化若しくは不安定不均一な箇所がない。
【0012】
冷却されるべき金属材料の中央に関して、冷却装置に進入する材料の温度プロフィルに応じて、噴射領域における噴射ノズルの配置及び又は数を対称的又は非対称的に選択することが有利である。その際、温度プロフィルはそれぞれ適切な方法で修正される。
【0013】
有利には、一つの冷却ビームの場合に、少なくとも三つのチャンバが形成されている、即ち、左、中央及び右の噴射領域が形成されている。なぜなら、冷却されるべき材料の端部領域は、通常、冷却されるべき材料の中央領域ほど強い冷却は不要であるからである。
【0014】
冷却装置は、平行に配置されている冷却ビームを複数個有し得る。これらの冷却ビームは、それぞれ、冷却されるべき材料の上に又は下に配置されている。いくつかの冷却ビームのこのようなグループ毎の組み合わせは、材料の幅にわたる冷却剤の分布が、より滑らかに、即ち、冷却剤の体積流に変化又は顕著な屈曲がないように、実現することができるという利点を提供する。
【0015】
制御装置は、予制御の形態で形成され得るか、調節装置の形態で形成され得る。いずれの場合も、金属材料の幅にわたって、冷却剤のあらかじめ計算された目標分布を実現するために使用される。いずれの場合も、冷却されるべき材料の上で冷却剤のそれぞれ所望の目標分布を生成するために、バルブの適切な設定による冷却剤の体積流又は圧力、及び/又は隔壁を位置決めするためのアクチュエータを使用することができる。好ましくは、冷却されるべき材料の幅にわたる冷却剤の圧力又は体積流の目標分布が、冷却モデルで計算される。これは、予制御の形態での制御装置の設計の場合と、調整装置の形態でのその設計の場合の両方の場合で適用する。
【0016】
さらに、本発明の上述の課題は、請求項15に記載の本発明の方法によって解決される。この方法の利点は、本願の請求項に記載の装置に関し、上述した利点と対応する。
【0017】
隔壁の移動は、冷却作動中に、又は冷却作動が行われていない時に行われ得る。
【0018】
本発明による冷却装置の及びその作動のための本発明による方法のさらなる有利な構成は、従属請求項の主旨である。
【0019】
この明細書は、合計5つの図が添付されている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】隔壁の形成のための本発明による冷却装置を第1の実施形態で示す。
図2】隔壁の形成及び配置のための本発明による冷却装置を第2の実施形態で示す。
図3】本発明による冷却モデルの一例を示す。
図4】冷却装置に進入する材料の温度分布に応じて、冷却される材料の幅にわたる冷却剤の体積流のための様々な実施例を示す。
図5】隔壁を可変に位置調整する冷却ビーム及び金属材料の幅にわたる冷却剤の体積分布に対する隔壁の移動の影響を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、本発明は上述の図面を参照し、実施例の形態で詳細に説明される。全ての図において、同一の技術的要素には同一の参照記号が付されている。
【0022】
図1は、金属材料200を冷却するための本発明による冷却装置100を示す。金属材料200は、材料流方向xで、又は材料の搬送方向Tで冷却装置100を通過する。例えば図1によれば、冷却装置100は、二つ一組で隣接する噴射領域I,II,IIIを複数(ここでは例えばN=3)有する冷却ビーム110を含む。これらの噴射領域は、金属材料200上に冷却剤を噴射するための、それぞれ少なくとも一つの噴射ノズル130を有する。図1には、それぞれの噴射領域I,II,IIIが、X方向及びY方向に分布して配置されている噴射ノズルを複数個有する。一例として、そして好ましくは、噴射ノズル130はそれぞれ、平行な列に、冷却ビーム110の長手方向Lに並んで配置されている。本発明によれば、冷却ビーム110の内部は、隔壁140によってチャンバを複数個に分割されている。隔壁は、冷却ビーム内に固定して又は可動に配置され得る。これらのチャンバの各々は、それぞれに噴射領域I,II,IIIの一つに割り当てられている。
【0023】
更に、図1には、一例として、各々の噴射領域I,II,III内に冷却剤の体積流を又は圧力を個別に調整するための三つのバルブ120を見て取ることができる。冷却剤300は、ポンプ160によって冷却剤タンクからバルブ120を通って個々の噴射領域I,II,IIIに個別に供給される。最後に、ポンプ160を、及びバルブ120を個別に制御するための制御装置150が、設けられている。
【0024】
一例として、図1には、冷却ビーム110を三つのチャンバに、又は三つの噴射領域I,II,IIIに分割するための二つの隔壁140が設けられている。金属材料の中央Mに関して、三つの領域は対象的に形成されている。これは、特に、中央の噴射領域IIに、噴射ノズルをそれぞれ同じ数で中央の左右に割り当てられていることを意味する。
【0025】
更に、図1は、冷却装置へ進入する前、又は冷却ビーム110の下に進入する前の、材料の幅にわたる、典型的には温度決定装置によって測定される材料の温度分布を示す。本発明に従い、幅の部分ΔY,ΔYの隔壁は、同じ幅の部分ΔY,ΔYにわたる温度推移に対応して形成されている。
【0026】
これとは異なり、図2は、個々のチャンバ及び噴射領域(ここでは5つの噴射領域I,II,III,IV及びV)に、冷却ビーム110を分割するための第二の実施例を示す。従って、個々のチャンバ又は噴射領域に冷却剤300を個別に供給するための五つのバルブ120が設けられている。図1による第一の実施例とは異なり、図2に示されている第二の実施例の場合には、噴射ノズル130の配置又は数は、金属材料の中央Mに関して非対称である。これは、特に、より多くの噴射ノズル130が、その左部分よりも中央の噴射領域IIIの右半分に配置されていることを見取ることができる。
【0027】
図1及び図2に示されている実施例の場合には、隔壁140が、それぞれ噴射ノズル130の間に延在する。二つの実施例では、隔壁は階段状に形成されている。しかしながら、代替的には、その隔壁は、まっすぐに延在しても、又は曲線形状でも、特に放物線形状でも形成され得る。前記したように、理想的には、隔壁が、対応する幅の部分での温度分布に応じて正確に形成されている。実際には、例えば、階段関数によって、又はステップ関数によって、又は直線によって、温度分布へ隔壁の形状を近似するのは十分である。冷却ビームごとのチャンバ又は噴射領域の数は、基本的に任意である。多くのチャンバ又は噴射領域が実現されればされるほど、材料の幅にわたる冷却剤のための所望の分布を、正確に調整することができる。
【0028】
一つの変形例によると、金属材料上で冷却剤300の目標値特に計算されている又はあらかじめ決定されている目標分布に関して、バルブ120及び/又は隔壁を位置決めするためのアクチュエータ144を適切に設定するために、予調整装置の形態で制御装置が形成され得る。
【0029】
代替的に、制御装置150は、バルブ120の及び/又は隔壁140の位置調整用の調節要素144の可変の制御によって、金属材料上の所定の目標分布になるように、冷却剤の体積流の実際分布を制御するために、調整装置の形態でも形成され得る。更にその上、バルブ120及び/又は調節要素144は、制御回路のアクチュエータを表す。
【0030】
金属材料上の、特に金属材料の幅にわたる冷却剤の分布を予制御装置の為の又は制御装置の為の目標値として計算するために、例えば図3に示されているような、冷却モデルの使用が望ましい。
【0031】
この冷却モデルの場合には、図3で言及されている、図3でそれぞれ例として言及した、一次データに基づいて、冷却モデルのデータベースにあるデータに基づいて、及び測定に基づいていくつかの測定値を、特に、冷却されるべき金属材料の幅にわたる冷却剤の実際分布を計算する、コンピュータプログラムである。図3に記載された個々のデータ又はパラメータ又は目標値の全ては、単に例示的である。つまり、特定の目標値の計算のために、冷却モデルの入力側で例として言及されている入力変数のすべてを常に使用することは必ずしも必要ではないということである。
【0032】
図4は、例示的な有用な冷却ストラテジーを定性的に表すことで、本発明による冷却装置100に進入する前に冷却されるべき材料の幅にわたって異なる温度プロファイルの例を示す。破線の曲線推移は、冷却装置に進入する前の金属材料のそれぞれの温度プロファイルを示す。その破線の上に記載されている実線は、進入する温度プロファイルを処理するための冷却装置内の冷却剤の本発明による分布に対するそれぞれの特徴である。
【0033】
このように、例えば、進入する金属材料の場合、中央と比較して端部が弱く加熱されていることが、図4の上側の図で見取ることができる。それに応じて、冷却剤体積流も、中央よりも端部の方が少なくしていい。逆に、図4の中央の図は、端部が中央よりも強く加熱されている例を示す。従って、材料の全幅にわたって均一な冷却プロフィルを実現するために、端部における冷却剤流を増加させなければならない。図4の上部の及び中央の図は、冷却剤の対称的な分布を要求する、即ち冷却ビームの長さにわたった噴射領域の対照的な分割、及び噴射ノズルの対象的な配置、及び好ましくは、噴射領域内の噴射ノズルの対称的な配置をも伴うのに対して、図4下部の図は、非対称的な温度推移及び冷却剤の推移を示す。具体的には、左の端部領域の温度は、材料の中央に対して差異がないが、右の端部領域では、温度が明らかに低下していることが見て取れる。それに応じて、左の端部領域でのそのために必要な冷却剤分布も、冷却されるべき金属材料の中央領域と比べて、ほぼ一定であるか、又は変化しないものでなければならないが、右側端部での冷却剤体積流の流出は、明らかに低減されなければならない。
【0034】
最後に、図5は、隔壁140を冷却ビーム110の長手方向に移動可能である本発明の実施例を示す。図5の下側の図で分かるように、隔壁140移動は、冷却剤分布の減圧推移の開始に対する開始時点の推移を引き起こす。具体的には、左右の隔壁140は、図5に示されている実施例の場合に、それぞれ外側へ移動する(破線参照)。この結果、冷却剤体積流の減少する開始時間時点は、それぞれの左右の外側へ、即ち金属材料の端部へと移動される。
【符号の説明】
【0035】
100 冷却装置
110 冷却ビーム
120 バルブ
130 噴射ノズル
140 隔壁
144 隔壁を位置決めするための調節要素
150 制御装置
160 ポンプ
200 金属材料
300 冷却剤
400 冷却モデル
I,II,III 噴射領域
L,x 冷却ビームの長手方向
M 金属材料の中央
n,N 噴射領域の数
T,Y 金属材料の搬送方向
Temp 温度(-分布)
ΔY,ΔY 幅の部分
図1
図2
図3
図4
図5