(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】アルギナーゼ活性を阻害する組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
C07F 5/02 20060101AFI20220301BHJP
A61K 31/69 20060101ALI20220301BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220301BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220301BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220301BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20220301BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220301BHJP
【FI】
C07F5/02 C CSP
A61K31/69
A61P35/00
A61P35/02
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P37/04
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021014795
(22)【出願日】2021-02-02
(62)【分割の表示】P 2018522126の分割
【原出願日】2016-10-28
【審査請求日】2021-02-15
(32)【優先日】2015-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-01-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515018448
【氏名又は名称】カリセラ バイオサイエンシズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ビー・シェーグレン
(72)【発明者】
【氏名】ジム・リー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・バン・ザント
(72)【発明者】
【氏名】ダレン・ホワイトハウス
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-542223(JP,A)
【文献】特表2015-516397(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 5/02
A61K 31/69
A61P 35/00
A61P 35/02
A61K 39/395
A61P 37/04
A61P 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の構造:
【化1】
を有する化合物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、リン酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、乳酸、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、グリコール酸塩、サリチル酸塩、クエン酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、マロン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、シュウ酸塩、又はマンデル酸塩である薬学的に許容される塩の形態である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
薬学的に許容される塩が、酒石酸塩である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
酒石酸1分子あたり、2分子の請求項1に記載の化合物を含む、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物の溶媒和物又はその薬学的に許容される塩。
【請求項6】
水溶媒和物、メタノール溶媒和物、エタノール溶媒和物又はジメチルホルムアミド溶媒和物である、請求項5に記載の溶媒和物。
【請求項7】
がんを治療するための医薬の製造における、請求項1~6のいずれか1項に記載の化合物若しくは溶媒和物又はその薬学的に許容される塩の使用。
【請求項8】
がんが、急性骨髄性白血病(AML)、膀胱がん、乳がん、結腸直腸がん、慢性骨髄性白血病(CML)、食道がん、胃がん、肺がん、メラノーマ、中皮腫、非小細胞性肺癌(NSCLC)、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、腎臓がん、皮膚がん、胆管がん、多発性骨髄腫、副腎皮質癌、頭頸部がん、及び子宮内膜がんから選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
がんが、膀胱がん、結腸直腸がん、食道がん、胃がん、肺がん、メラノーマ、中皮腫、非小細胞性肺癌(NSCLC)、卵巣がん、腎臓がん、胆管がん、多発性骨髄腫、副腎皮質癌、頭頸部がん、及び子宮内膜がんから選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項10】
がんが膀胱がんである、請求項9に記載の使用。
【請求項11】
がんが結腸直腸がんである、請求項9に記載の使用。
【請求項12】
がんが食道がんである、請求項9に記載の使用。
【請求項13】
がんが胃がんである、請求項9に記載の使用。
【請求項14】
がんが肺がんである、請求項9に記載の使用。
【請求項15】
がんがメラノーマである、請求項9に記載の使用。
【請求項16】
がんが中皮腫である、請求項9に記載の使用。
【請求項17】
がんが非小細胞性肺癌(NSCLC)である、請求項9に記載の使用。
【請求項18】
がんが卵巣がんである、請求項9に記載の使用。
【請求項19】
がんが腎臓がんである、請求項9に記載の使用。
【請求項20】
がんが胆管がんである、請求項9に記載の使用。
【請求項21】
がんが多発性骨髄腫である、請求項9に記載の使用。
【請求項22】
がんが副腎皮質癌である、請求項9に記載の使用。
【請求項23】
がんが頭頸部がんである、請求項9に記載の使用。
【請求項24】
がんが子宮内膜がんである、請求項9に記載の使用。
【請求項25】
前記医薬が、1種以上の追加の化学療法剤と組み合わせて投与するためのものである、請求項7~24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項26】
前記医薬が、1種以上の追加の化学療法剤と併せて投与するためのものである、請求項7~24のいずれか1項に記載の使用。
【請求項27】
1種以上の追加の化学療法剤が、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、AZD5363、カルメット・ゲラン桿菌ワクチン(bcg)、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブセレリン、ブスルファン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルフィルゾミブ、カルムスチン、クロラムブシル、クロロキン、シスプラチン、クラドリビン、クロドロン酸塩、コビメチニブ、コルシチン、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デメトキシビリジン、デキサメタゾン、ジクロロアセテート、ジェネストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エピルビシン、エルロチニブ、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エベロリムス、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、リュープロリド、レバミゾール、ロムスチン、ロニダミン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトホルミン、メトトレキサート、ミルテホシン、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、MK-2206、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オラパリブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、パゾパニブ、ペントスタチン、ペリホシン、プリカマイシン、ポマリドミド、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ルカパリブ、セルメチニブ、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブ、スラミン、タラゾパリブ、タモキシフェン、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、テストステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、チタノセンジクロリド、トポテカン、トラメチニブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ベリパリブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、又はビノレルビンを含む、請求項25又は26に記載の使用。
【請求項28】
1種以上の追加の化学療法剤が、アバゴボマブ、アデカツムマブ、アフツズマブ、アナツモマブマフェナトックス、アポリズマブ、ブリナツモマブ、カツマキソマブ、デュルバルマブ、エプラツズマブ、イノツズマブオゾガマイシン、インテツムマブ、イピリムマブ、イサツキシマブ、ランブロリズマブ、ニボルマブ、オカラツズマブ、オララツマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、チシリムマブ、サマリズマブ、又はトレメリムマブを含む、請求項25又は26に記載の使用。
【請求項29】
1種以上の追加の化学療法剤が、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、又はピジリズマブを含む、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記医薬が、1種以上のがん治療の非化学的な方法と共に使用するためのものであり、前記1種以上のがん治療の非化学的な方法が、放射線療法、手術、熱焼灼、集束超音波療法、凍結療法、又はそれらの組合せから選択される、請求項7~29のいずれかに記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2015年10月30日に出願された米国仮特許出願第62/248,632号、2016年1月22日に出願された米国仮特許出願第62/281,964号、及び2016年4月15日に出願された米国仮特許出願第62/323,034号の優先権の利益を主張し、これらの出願は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
がんは、体内の細胞が制御されない増殖を起こし、必須の臓器を侵襲し、しばしば死に至ることで特徴付けられる。当初、がんの薬理学的な処置には、正常な細胞を含めて全ての急速に分裂する細胞を標的とする非特異的な細胞毒性剤を利用していた。これらの非特異的な細胞毒性剤は抗腫瘍効果を有するが、その使用は激しい毒性により制限されることが多い。がん細胞の増殖を可能にするタンパク質及び経路の理解が進むにつれて、がん細胞内で活性化される特異的なタンパク質を封鎖するより新しくより確実に標的に向かう作用物質が開発されて来た。
【0003】
がんの治療において直面する課題に対処する治療学の開発のための新しく出現した分野は、腫瘍免疫学ともいわれるがん免疫療法(immuno-oncology)である。ある種の腫瘍型は身体の免疫系による破壊を逃れるメカニズムを発達させた。腫瘍免疫学は、自身の身体の免疫系を活性化して腫瘍を攻撃し殺すことに焦点を当てた治療の一分野である。天然に存在するアミノ酸アルギニンは、体内のがんと戦う細胞毒性T-細胞の活性化、増殖、及び生存にとって重要であるので、腫瘍免疫学に関与する。しかし、アルギニンの濃度は、多重の組織型のがん患者で蓄積される好中球及び骨髄由来抑制細胞(MDSC)により産生され分泌される酵素であるアルギナーゼによって腫瘍内微小環境で消耗される。実際、腎細胞癌、乳がん、慢性骨髄性白血病、食道がん、前立腺がん、非小細胞肺がん、膠芽腫、及び急性骨髄性白血病患者の血漿でアルギナーゼ酵素の高まった濃度が観察されている。したがって、腫瘍内微小環境でアルギニン濃度を回復させ、したがって細胞毒性T-細胞の殺腫瘍活性を増進するアルギナーゼの阻害剤を開発する必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
幾つかの実施形態において、本発明は、一連の新規なアルギナーゼ阻害剤化合物を提供する。本発明の化合物は、式(I)の構造又はその薬学的に許容される塩若しくはプロドラッグを有する。
【0005】
【化1】
式中、
R
aは、Hであるか、又は任意に置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルから選択され、
R
bは、Hであるか、又は任意に置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、-C(O)O(アルキル)、及び-C(O)O(アリール)から選択され、
各R
cは、H若しくはアルキルから独立して選択されるか、又は存在する2つのR
cは、介在する-O-B-O-基と一緒になって任意に置換されていてもよいホウ素含有環を形成し、
Xは、O又はSであり、
R
1及びR
2は、各々独立して、H並びに任意に置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルから選択されるか、
又はR
1及びR
2は、介在する原子と一緒になって、任意に置換されていてもよい5~7員の環を形成し、
R
3は、H又は任意に置換されていてもよいアルキルであり、
又はR
1及びR
3は、介在する基と一緒になって任意に置換されていてもよい5~7員の環を形成し、
ただし、化合物は
【0006】
【0007】
幾つかの実施形態において、本発明はまた、本発明の化合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物も提供する。
【0008】
幾つかの実施形態において、本発明は、治療上有効量の本発明の化合物又は医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、がんを治療又は予防する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】腫瘍体積を時間に対して描いたグラフである。単剤として投与されたアルギナーゼ阻害剤化合物10は、ルイス肺癌細胞を移植したマウスにおいて対照と比べて腫瘍の増殖を遅くする。
【
図2】腫瘍体積を時間に対して描いたグラフである。マディソン(Madison)109ネズミ肺癌細胞をbalb/cマウスに移植し、マウスにビヒクル又はアルギナーゼ阻害剤化合物10をBIDで経口投薬した(N=1群に付き10匹)。
【
図3】腫瘍体積を時間に対して描いたグラフである。B16F10ネズミメラノーマ細胞をC57.Bl/6マウスに移植し、マウスにビヒクル又はアルギナーゼ阻害剤化合物10をBIDで経口投薬した(N=1群に付き10匹)。
【
図4】パネルA及びBからなり、雌性のbalb/cマウスに同所性移植され、ビヒクル、化合物10(100mg/kg PO BID)、抗-CTLA-4(5mg/kg 2、5、8日にIP)+抗-PD-1(5mg/kg 3、6、及び9日にIP)、又は化合物10と抗-CTLA-4及び抗-PD-1との組合せのいずれかで処置された4T1乳癌細胞の増殖を示す(N=1群に付き10匹;
*P<0.05;
***P<0.001、
****P<0.0001 対ビヒクル)。
【
図5】腫瘍体積を時間に対して描いたグラフである。雌性のC57.Bl/6マウスの皮下に1×10
6のB16.F10ネズミメラノーマ細胞を移植した。2日目に、マウスを次のn=10匹のマウスの群にランダム化した;1)ビヒクルPO BID;2)化合物10、100mg/kg PO BID;3)エパカドスタット(Epacadostat)、100mg/kg PO BID;又は4)化合物10及びエパカドスタット(各々100mg/kg PO BID)。腫瘍を1週に三回キャリパーで測定し、腫瘍体積(mm
3)=(a×b
2/2)の式を用いて腫瘍体積を計算した。式中、「b」は最小の直径であり、「a」は最大の垂直直径である。
*P-値<0.05(ANOVA)。
【
図6】腫瘍体積を時間に対して描いたグラフである。雌性のbalb/cマウスの皮下に1×10
6のCT26ネズミ結腸癌細胞を移植した。2日目に、マウスを次のn=10匹のマウスの群にランダム化した;1)ビヒクルPO BID 2日目に開始;2)化合物10、100mg/kg PO BID 2日目に開始;3)ゲムシタビン、50mg/kg IP 10日目及び16日目;又は4)化合物10及びゲムシタビン それぞれのレジメンで。腫瘍をキャリパーで1週に三回測定し、腫瘍体積(mm
3)=(a×b
2/2)の式を用いて腫瘍体積を計算した。式中、「b」は最小の直径であり、「a」は最大の垂直直径である。
*P-値<0.05(ANOVA)。
【
図7】腫瘍体積を時間に対して描いたグラフである。雌性のbalb/cマウスの皮下に1×10
6のCT26ネズミ結腸癌細胞を移植した。2日目に、マウスを次のn=10匹のマウスの群にランダム化した;1)ビヒクルPO BID;2)化合物10、100mg/kg PO BID;3)抗-PD-L1(クローン10f.9g2)、5mg/kg IP 5、7、9、11、13、及び15日;又は4)化合物10及び抗-PD-L1。腫瘍をキャリパーで1週に三回測定し、腫瘍体積(mm
3)=(a×b
2/2)の式を用いて腫瘍体積を計算した。式中、「b」は最小の直径であり、「a」は最大の垂直直径である。
【
図8】生存率パーセントを時間に対して示す。雌性のbalb/cマウスの皮下に5×10
4のマディソン109ネズミ肺癌細胞を移植した。2日目に、マウスを次のn=10匹のマウスの群にランダム化した;1)ビヒクルPO BID;2)化合物10、100mg/kg PO BID;3)全身照射(X線) 2gy 10-14日及び17-21日;又は4)化合物10及び放射線。腫瘍をキャリパーで1週に二回測定し、腫瘍体積(mm
3)=(a×b
2/2)の式を用いて腫瘍体積を計算した。式中、「b」は最小の直径であり、「a」は最大の垂直直径である。
*P値<0.05(ログ-ランク検定)。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、アルギナーゼの小分子阻害剤を提供する。
【0011】
本発明の化合物
幾つかの実施形態において、本発明は、式(I)の構造を有する化合物又はその薬学的に許容される塩又はプロドラッグを提供する。
【0012】
【化3】
式中、
R
aは、Hであるか、又は任意に置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルから選択され、
R
bは、Hであるか、又は任意に置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、アシル、-C(O)O(アルキル)、及び-C(O)O(アリール)から選択され、
各R
cは、H若しくはアルキルから独立して選択されるか、又は存在する2つのR
cは、介在する-O-B-O-基と一緒になって任意に置換されていてもよいホウ素含有環を形成しており、
Xは、O又はSであり、
R
1及びR
2は、各々独立して、H並びに任意に置換されていてもよいアルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、(シクロアルキル)アルキル、ヘテロシクロアルキル、(ヘテロシクロアルキル)アルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、及びヘテロアラルキルから選択されるか、又は
R
1及びR
2は、介在する原子と一緒になって、任意に置換されていてもよい5~7員の環を形成しており、
R
3は、H又は任意に置換されていてもよいアルキルであり、
又は、R
1及びR
3は、介在する基と一緒になって任意に置換されていてもよい5~7員の環を形成しており、
ただし、化合物は
【0013】
【0014】
幾つかの実施形態において、式(I)の化合物は式(Ia)の構造を有する。
【0015】
【0016】
幾つかの実施形態において、式(I)の化合物は式(Ib)の構造を有する。
【0017】
【0018】
幾つかの実施形態において、式(I)の化合物は式(Ic)の構造を有する。
【0019】
【0020】
幾つかの実施形態において、式(I)の化合物は式(Id)の構造を有する。
【0021】
【0022】
幾つかの実施形態において、式(I)の化合物は式(Ie)の構造を有する。
【0023】
【0024】
幾つかの実施形態において、式(I)の化合物は式(If)の構造を有する。
【0025】
【0026】
幾つかの実施形態において、式(I)の化合物は式(Ig)の構造を有する。
【0027】
【0028】
幾つかの実施形態において、式(I)の化合物は式(Ih)の構造を有する。
【0029】
【化12】
式(I)、(Ia)、及び(Ib)のいずれかの幾つかの実施形態において、R
2はHである。
【0030】
上述の式のいずれかの幾つかの実施形態において、RaはH又は任意に置換されていてもよいアルキルである。幾つかの好ましい実施形態において、RaはHである。
【0031】
上述の式のいずれかの幾つかの実施形態において、RbはH又は任意に置換されていてもよいアルキル若しくはアシルである。幾つかの好ましい実施形態において、RbはHである。
【0032】
上述の式のいずれかの幾つかの実施形態において、Rcは各々の存在に対してHである。
【0033】
上述の式のいずれかの幾つかの実施形態において、存在する2つのRcは一緒になって、任意に置換されていてもよいジオキサボロラン、ジオキサボロラノン、ジオキサボロランジオン、ジオキサボリナン、ジオキサボリナノン、又はジオキサボリナンジオンを形成する。
【0034】
上述の式のいずれかの幾つかの実施形態において、XはOである。
【0035】
上述の式のいずれかの幾つかの実施形態において、R1がHである場合、R3はベンジルではない。
【0036】
上述の式のいずれかの幾つかの実施形態において、R1はHである。
【0037】
上述の式のいずれかの幾つかの実施形態において、R1がベンジルである場合、R3はメチルではない。
【0038】
幾つかの実施形態において、R1は任意に置換されていてもよいアラルキル、ヘテロアラルキル、(シクロアルキル)アルキル、又は(ヘテロシクロアルキル)アルキルである。
【0039】
幾つかの実施形態において、R1は任意に置換されていてもよいアラルキル又はヘテロアラルキルである。
【0040】
幾つかのかかる実施形態において、R1はベンジルである。
【0041】
他の幾つかのかかる実施形態において、R1は-CF3により置換されたベンジルではない。
【0042】
さらに他の幾つかのかかる実施形態において、R1は-CH2-(1H-イミダゾール-4-イル)のようなヘテロアラルキルである。
【0043】
上述の式のいずれかの幾つかの実施形態において、R1は任意に置換されていてもよいアルキル、アルケニル、又はアルキニルである。
【0044】
幾つかのかかる実施形態において、R1は任意にヒドロキシ、ハロ、ハロアルキル、アルコキシ、-SH、-S-(アルキル)、-SeH、-Se-(アルキル)、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アミノ、カルボン酸、エステル、グアニジノ、及びアミドから独立して選択される1つ以上の置換基により置換されていてもよいアルキルである。
【0045】
幾つかのかかる実施形態において、R1は任意にヒドロキシ、ハロ、ハロアルキル、アルコキシ、-SH、-S-(アルキル)、-SeH、-Se-(アルキル)、ヘテロアリール、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アミノ、カルボン酸、エステル、グアニジノ、及びアミドから独立して選択される1つ以上の置換基により置換されていてもよいアルキルである。
【0046】
幾つかのかかる実施形態において、R1は任意にヒドロキシ、アルコキシ、ハロアルキル、及び-S-(アルキル)から独立して選択される1つ以上の置換基により置換されていてもよいアルキルである。
【0047】
幾つかの実施形態において、R1は任意に置換されていてもよいシクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、及びヘテロアリールから選択される。
【0048】
幾つかの実施形態において、R1はArg、His、Lys、Asp、Glu、Ser、Thr、Asn、Gln、Cys、Sec、Gly、Ala、Val、Ile、Leu、Met、Phe、Tyr、又はTrpのアミノ酸側鎖である。
【0049】
幾つかの実施形態において、R1及びR2は介在する原子と一緒になって、任意に置換されていてもよい5~7員の環を形成する。
【0050】
幾つかの実施形態において、R1及びR2は介在する原子と一緒になって、任意に置換されていてもよい3員環のような3~7員の環を形成する。
【0051】
幾つかの実施形態において、R3はHである。
【0052】
幾つかの実施形態において、R1及びR3は介在する基と一緒になって、置換された5員環を形成する。
【0053】
幾つかの実施形態において、R1及びR3は介在する基と一緒になって、任意に置換されていてもよい6又は7員の環を形成する。
【0054】
幾つかの実施形態において、R1及びR3は、介在する基と一緒になって、例えばテトラヒドロイソキノリニル環
【0055】
【0056】
幾つかの実施形態において、式(I)の化合物は
【0057】
【0058】
幾つかの実施形態において、本発明の化合物は
【0059】
【化15】
又はこれらの薬学的に許容される塩又はプロドラッグから選択される構造を有する。
【0060】
幾つかの実施形態において、化合物はプロドラッグであってもよく、例えば、親化合物内のヒドロキシルがエステル又はカーボネートとして存在する場合、親化合物内に存在するカルボン酸はエステルとして存在し、又はアミノ基はアミドとして存在する。幾つかのかかる実施形態において、プロドラッグはインビボで活性な親化合物に代謝される(例えば、エステルは対応するヒドロキシル又はカルボン酸に加水分解される)。
【0061】
幾つかの実施形態において、ボロン酸は環状又は直鎖状の無水物の形態で存在し得る。幾つかの実施形態において、ボロン酸は6員環無水物の形態で存在し、ボロキシンとしても知られている。
【0062】
幾つかの実施形態において、本発明のアルギナーゼ阻害剤化合物はラセミ体であってもよい。幾つかの実施形態において、本発明のアルギナーゼ阻害剤化合物は1つのエナンチオマーが富化されていてもよい。例えば、本発明の化合物は30%超のee、40%超ee、50%超のee、60%超のee、70%超のee、80%超のee、90%超のee、又はさらには95%以上のeeを有し得る。
【0063】
本発明の化合物は1つより多くの立体中心を有する。したがって、本発明の化合物は1つ以上のジアステレオマーが富化され得る。例えば、本発明の化合物は30%超のde、40%超のde、50%超のde、60%超のde、70%超のde、80%超のde、90%超のde、又はさらには95%以上のdeを有し得る。幾つかの実施形態において、本発明の化合物は、1つ以上の立体中心に実質的に1つの異性体立体配置を有し、残りの立体中心に多重の異性体立体配置を有する。
【0064】
幾つかの実施形態において、R1を有する立体中心のエナンチオマー過剰率は少なくとも40%ee、50%ee、60%ee、70%ee、80%ee、90%ee、92%ee、94%ee、95%ee、96%ee、98%ee以上のeeである。
【0065】
本明細書で使用されるとき、立体化学なしで書かれた単結合はその化合物の立体化学を示さない。式(I)の化合物は、立体化学が示されていない化合物の一例を提供する。
【0066】
本明細書で使用されるとき、破線又は太字のくさび形でない結合は、相対的であるが絶対的ではない立体化学的配置を示す(例えば、所与のジアステレオマーのエナンチオマー同士を区別しない)。例えば、式(Ia)において、
【0067】
【化16】
太字のくさび形でない結合は、-CO
2R
a基と(CH
2)
3B(OR
c)
2基とが互いに対してcisであるように設定されていることを示すが、太字のくさび形でない結合はその化合物の絶対的な(即ち、R又はS)立体配置を表さない。
【0068】
本明細書で使用されるとき、破線又は太字のくさび形の結合は絶対的な立体化学的配置を示す。例えば、式(Ic)において、
【0069】
【化17】
太字のくさび形の結合はそれが結合している立体中心の絶対的な立体配置を示し、太字のくさび形でない結合は、-CO
2R
a基と(CH
2)
3B(OR
c)
2基とが互いに対してcisであるように設定されていることを示すが、それらの立体中心の絶対的な立体配置を示さない。したがって、式(Ic)の化合物は全部で2つの異性体
【0070】
【0071】
幾つかの実施形態において、本発明の化合物の治療製剤はある化合物の主に1つのエナンチオマーを提供するように富化され得る。エナンチオマー的に富化された混合物は、例えば、少なくとも60molパーセント、又はより好ましくは少なくとも75、90、95、又はさらには99molパーセントの1つのエナンチオマーを含み得る。幾つかの実施形態において、1つのエナンチオマーが富化した化合物は他のエナンチオマーを実質的に含まない。ここで、実質的に含まないとは、問題の物質が、例えば、組成物又は化合物混合物中の他のエナンチオマーの量と比較して、10%未満、又は5%未満、又は4%未満、又は3%未満、又は2%未満、又は1%未満を構成することを意味する。例えば、組成物又は化合物混合物が98グラムの第1のエナンチオマー及び2グラムの第2のエナンチオマーを含有する場合、98molパーセントの第1のエナンチオマー及び2%のみの第2のエナンチオマーを含有するといわれる。
【0072】
幾つかの実施形態において、治療製剤は本発明の化合物の主に1つのジアステレオマーを提供するように富化され得る。ジアステレオマー的に富化された混合物は、例えば、少なくとも60molパーセント、又はより好ましくは少なくとも75、90、95、又はさらには99molパーセントの1つのジアステレオマーを含み得る。
【0073】
幾つかの実施形態において、本発明の化合物は現存するアルギナーゼ阻害剤と比べて改良された薬物動態プロファイルを示す。
【0074】
幾つかの実施形態において、本発明の化合物は現存するアルギナーゼ阻害剤と比べて改良されたバイオアベイラビリティーを示す。
【0075】
治療方法
最近、T-細胞活性化への幾つかの具体的なアプローチが腫瘍の治療においてかなりの有望な進展を示している。1つのかかるアプローチは、抗体イピリムマブによるT-細胞表面抗原CTLA-4の封鎖によるT-細胞の活性化を含む。第2のアプローチは、T-細胞上に発現するプログラム細胞死1タンパク質即ちPD-1、及び多くの腫瘍上に見られるそのリガンドPD-L1の相互作用を封鎖することによって、免疫チェックポイントの活性化を防止することである。第3のアプローチは、トリプトファンのような重要な刺激因子又は栄養素を供給することによってT-細胞受容体を活性化することである。
【0076】
インドールアミンジオキシゲナーゼ即ちIDOの阻害剤は細胞外トリプトファンを回復することが示されているが、細胞外トリプトファンがないとT-細胞受容体は活性になることができない。トリプトファンと同様に、アルギニンは、細胞毒性T-細胞の機能に対して基本的なアミノ酸である。アルギニンがないと、腫瘍-特異的な細胞毒性T-細胞はその表面上に機能性のT-細胞受容体を発現することができず、結果として有効な抗-腫瘍反応を活性化し、増殖させ、又は開始させることができない。腫瘍が分泌した因子に応答して、骨髄由来抑制細胞即ちMDSCが腫瘍の回りに蓄積し、酵素アルギナーゼを分泌し、結果として腫瘍内微小環境からアルギニンが枯渇する。
【0077】
アルギナーゼの上昇した濃度に起因するアルギニンの枯渇は腎細胞癌及び急性骨髄性白血病で観察されている。加えて、有意なMDSC浸潤物が膵臓、乳房及びその他の腫瘍型で観察されている。本発明の幾つかの実施形態は、腫瘍内微小環境でアルギニン濃度を上昇させることにより体内の細胞毒性T-細胞を活性化させることによってがんを治療する方法を提供する。
【0078】
腫瘍内微小環境のアルギニン濃度を上昇させる1つの手段はアルギナーゼを阻害することである。本発明の化合物のような、アルギナーゼの阻害剤は、アルギニン濃度を回復させることにより体内の細胞毒性T-細胞の活性化を可能にすることによって抗-腫瘍性免疫反応を促進し得る。
【0079】
したがって、幾つかの実施形態において、本発明は、治療上有効量の本発明の化合物(例えば、式I、Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、又はIhの化合物)、又は前記化合物を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、がんを治療又は予防する方法を提供する。
【0080】
幾つかの実施形態において、本発明の方法により治療されるがんは、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、肛門がん、虫垂がん、非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、基底細胞癌、胆管がん、膀胱がん、骨癌、脳腫瘍、星状細胞腫、脳及び脊髄腫瘍、脳幹グリオーマ、中枢神経系非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍、中枢神経系胚芽腫、乳がん、気管支腫瘍、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍、原発不明癌、中枢神経系がん、子宮頸がん、小児がん、脊索腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性骨髄増殖性疾患、結腸がん、大腸がん、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞性リンパ腫、非浸潤性乳管癌(DCIS)、胚芽腫、子宮内膜がん、上衣芽腫、上衣腫、食道がん、鼻腔神経芽細胞腫、ユーイング肉腫、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝臓外胆管がん、眼がん、骨の線維性組織球腫、胆嚢がん、胃がん、消化管カルチノイド、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、卵巣胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛腫瘍、グリオーマ、有毛細胞白血病、頭頸部がん、心臓がん、肝細胞がん、組織球症、ランゲルハンス細胞がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内メラノーマ、島細胞腫瘍、カポジ肉腫、腎臓がん、ランゲルハンス細胞組織球症、喉頭がん、白血病、口唇がん及び口腔がん、肝臓がん、上皮内小葉癌(LCIS)、肺がん、リンパ腫、エイズ関連リンパ腫、マクログロブリン血症、男性乳がん、髄芽腫、髄上皮腫、メラノーマ、メルケル細胞癌、悪性中皮腫、原発不明の転移性頸部扁平上皮がん、NUT遺伝子関与正中線管癌腫(Midline Tract Carcinoma Involving NUT Gene)、口腔がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉症、骨髄異形成症候群、骨髄異形成/骨髄増殖性腫瘍、慢性骨髄性白血病(CML)、急性骨髄性白血病(AML)、骨髄腫、多発性骨髄腫、慢性骨髄増殖性疾患、鼻腔がん、副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺がん、口腔がん(Oral Cancer)、口腔がん(Oral Cavity Cancer)、口唇がん、口腔咽頭がん、骨肉腫、卵巣がん、膵臓がん、乳頭腫症、傍神経節腫瘍、副鼻腔がん、鼻腔がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、中間型松果体実質腫瘍、松果体芽腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍、胸膜肺芽腫、乳がん、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん、腎盂がん、尿管がん、移行上皮がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫、セザリー症候群、皮膚がん、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、扁平上皮癌、原発不明頸部扁平上皮がん、胃がん、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、T-細胞リンパ腫、精巣がん、咽頭がん、胸腺腫、胸腺癌腫、甲状腺がん、腎盂及び尿管の移行上皮がん、妊娠性絨毛腫瘍、原発不明がん、小児のまれながん、尿道がん、子宮がん、子宮肉腫、ワルデンストロームマクログロブリン血症、又はウィルムス腫瘍である。
【0081】
幾つかの実施形態において、本発明の方法により治療されるがんは、多種多様な急性骨髄性白血病(AML)、膀胱がん、乳がん、大腸がん、慢性骨髄性白血病(CML)、食道がん、胃がん、肺がん、メラノーマ、中皮腫、非小細胞性肺癌(NSCLC)、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、腎臓がん、又は皮膚がんである。
【0082】
幾つかの実施形態において、本発明の方法により治療されるがんは、多種多様な急性骨髄性白血病(AML)、乳がん、大腸がん、慢性骨髄性白血病(CML)、食道がん、胃がん、肺がん、メラノーマ、非小細胞性肺癌(NSCLC)、膵臓がん、前立腺がん、又は腎臓がんである。
【0083】
幾つかの実施形態において、がんは、膀胱がん、乳がん(TNBCを含む)、子宮頸がん、大腸がん、慢性リンパ性白血病(CLL)、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)、食道腺癌、膠芽腫、頭頸部がん、白血病(急性及び慢性)、ローグレードグリオーマ、肺がん(腺癌、非小細胞肺癌、及び扁平上皮癌を含む)、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫(NHL)、メラノーマ、多発性骨髄腫(MM)、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、腎臓がん(腎明細胞癌及び腎乳頭状細胞癌を含む)、及び胃がんから選択される。
【0084】
併用療法はがんのような多くの疾患環境で重要な治療法である。最近の科学的進歩によって、これら及び他の複雑な疾患の根底にある病態生理学的過程に対する我々の理解が進んだ。この進んだ理解により、多様な治療標的に対する薬剤の組合せを用いた新しい治療法を開発して、治療反応を改善し、耐性の発生を最小にし、又は有害事象を最小にすることが推進された。併用療法がかなりの治療上の利益をもたらす状況で、アルギナーゼ阻害剤のような新しい被験薬との組合せの開発に対する関心が増大している。
【0085】
複数の治療薬を一緒に投与することを考えるときには、いかなる種類の薬物相互作用が観察されるかに注意しなければならない。この作用は肯定的(薬物の効果が増強されるとき)若しくは対立的(薬物の効果が低減するとき)であることができ、又は自然には生じない新しい副作用が生まれる可能性がある。
【0086】
相互作用によって一方又は両方の薬物の効果が増大したとき、併用薬物のいずれかの薬物を単独で投与したときより大きい併用薬物の相互作用の最終的な効果の程度を計算して「併用指数(combination index)」(CI)といわれる値を得ることができる(Chou and Talalay, 1984)。1又はその付近の併用指数は「相加的」と考えられ、1より大きい値は「相乗的」と考えられる。
【0087】
本発明は、アルギナーゼ阻害剤(例えば、本発明の化合物)及び1種以上の追加の化学療法剤を含むがんを治療又は予防する際の併用療法の方法を提供する。
【0088】
本発明の幾つかの実施形態は、化学療法剤及び本発明の化合物を併せて投与することを含むがんの治療に関する。
【0089】
幾つかの実施形態において、化学療法薬は免疫刺激剤である。例えば、免疫刺激剤は炎症誘発剤であってもよい。
【0090】
本発明の方法において本明細書に記載されているアルギナーゼ阻害剤と併せて投与することができる化学療法剤としては、アミノグルテチミド、アムサクリン、アナストロゾール、アスパラギナーゼ、AZD5363、カルメット・ゲラン桿菌ワクチン(bcg)、ビカルタミド、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブセレリン、ブスルファン、カンプトテシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルフィルゾミブ、カルムスチン、クロラムブシル、クロロキン、シスプラチン、クラドリビン、クロドロン酸塩、コビメチニブ、コルシチン、シクロホスファミド、シプロテロン、シタラビン、ダカルバジン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デメトキシビリジン、デキサメタゾン、ジクロロアセテート、ジェネストロール、ジエチルスチルベストロール、ドセタキセル、ドキソルビシン、エパカドスタット、エピルビシン、エルロチニブ、エストラジオール、エストラムスチン、エトポシド、エベロリムス、エキセメスタン、フィルグラスチム、フルダラビン、フルドロコルチゾン、フルオロウラシル、フルオキシメステロン、フルタミド、ゲムシタビン、ゲニステイン、ゴセレリン、ヒドロキシ尿素、イダルビシン、イホスファミド、イマチニブ、インターフェロン、イリノテカン、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、リュープロリド、レバミゾール、ロムスチン、ロニダミン、メクロレタミン、メドロキシプロゲステロン、メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、メスナ、メトホルミン、メトトレキサート、ミルテホシン、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、MK-2206、ニルタミド、ノコダゾール、オクトレオチド、オラパリブ、オキサリプラチン、パクリタキセル、パミドロネート、パゾパニブ、ペントスタチン、ペリホシン、プリカマイシン、ポマリドミド、ポルフィマー、プロカルバジン、ラルチトレキセド、リツキシマブ、ルカパリブ、セルメチニブ、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、スニチニブ、スラミン、タラゾパリブ、タモキシフェン、テモゾロミド、テムシロリムス、テニポシド、テストステロン、サリドマイド、チオグアニン、チオテパ、チタノセンジクロリド、トポテカン、トラメチニブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ベリパリブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシン、又はビノレルビンがある。
【0091】
幾つかの実施形態において、本発明の方法で本明細書に記載されているアルギナーゼ阻害剤と共に投与することができる化学療法剤としては、アバゴボマブ、アデカツムマブ、アフツズマブ、アナツモマブマフェナトックス(anatumomab mafenatox)、アポリズマブ、アテゾリズマブ、ブリナツモマブ、カツマキソマブ、デュルバルマブ、エパカドスタット、エプラツズマブ、イノツズマブオゾガマイシン、インテツムマブ、イピリムマブ、イサツキシマブ、ランブロリズマブ、ニボルマブ、オカラツズマブ、オララツマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、チシリムマブ、サマリズマブ、又はトレメリムマブがある。
【0092】
幾つかの実施形態において、化学療法剤はイピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、又はピジリズマブである。
【0093】
多くの併用療法ががんの治療用に開発されている。幾つかの実施形態において、本発明の化合物は併用療法で併せて投与することができる。本発明の化合物を併せて投与することができる併用療法の例を表1に挙げる。
【0094】
【0095】
幾つかの実施形態において、併せて投与される化学療法剤は、グルコーストランスポーター、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸キナーゼM2、乳酸デヒドロゲナーゼ1又は2、ピルビン酸デヒドロゲナーゼキナーゼ、脂肪酸シンターゼ及びグルタミナーゼのような代謝酵素阻害剤から選択される。一部の実施形態において、阻害剤は乳酸デヒドロゲナーゼ1若しくは2、又はグルタミナーゼを阻害する。幾つかの実施形態において、阻害剤はCB-839である。
【0096】
免疫を標的とする作用物質(癌免疫療法剤ともいわれる)は、免疫細胞を調節することによって腫瘍に抗して作用する。がん免疫療法の分野は急速に成長しており、新しい標的が絶えず同定されている(Chen and Mellman, 2013; Morrissey et al., 2016; Kohrt et al., 2016)。本発明は、癌免疫療法剤とグルタミナーゼ阻害剤との組合せを提供する。
【0097】
癌免疫療法剤の例は、2B4、4-1BB(CD137)、AaR、B7-H3、B7-H4、BAFFR、BTLA、CD2、CD7、CD27、CD28、CD30、CD40、CD80、CD83リガンド、CD86、CD160、CD200、CDS、CEACAM、CTLA-4、GITR、HVEM、ICAM-1、KIR、LAG-3、LAIR1、LFA-1(CD11a/CD18)、LIGHT、NKG2C、NKp80、OX40、PD-1、PD-L1、PD-L2、SLAMF7、TGFRβ、TIGIT、Tim3及びVISTAのような免疫チェックポイントを調節する作用物質を含む。
【0098】
癌免疫療法剤は抗体、ペプチド、小分子又はウイルスの形態であり得る。
【0099】
一部の実施形態において、併せて投与される化学療法剤は、アルギナーゼ、CTLA-4、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ、及び/又はPD-1/PD-L1の阻害剤のような癌免疫療法治療薬である。幾つかの実施形態において、癌免疫療法治療薬は、アバゴボマブ、アデカツムマブ、アフツズマブ、アレムツズマブ、アナツモマブマフェナトックス、アポリズマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、ブリナツモマブ、BMS-936559、カツマキソマブ、デュルバルマブ、エパカドスタット、エプラツズマブ、インドキシモド、イノツズマブオゾガマイシン、インテツムマブ、イピリムマブ、イサツキシマブ、ランブロリズマブ、MED14736、MPDL3280A、ニボルマブ、オカラツズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、リツキシマブ、チシリムマブ、サマリズマブ、又はトレメリムマブである。或いは、癌免疫療法治療薬は、アバゴボマブ、アデカツムマブ、アフツズマブ、アナツモマブマフェナトックス、アポリズマブ、アテゾリズマブ、ブリナツモマブ、カツマキソマブ、デュルバルマブ、エパカドスタット、エプラツズマブ、インドキシモド、イノツズマブオゾガマイシン、インテツムマブ、イピリムマブ、イサツキシマブ、ランブロリズマブ、ニボルマブ、オカラツズマブ、オララツマブ、ペンブロリズマブ、ピジリズマブ、チシリムマブ、サマリズマブ、又はトレメリムマブである。一部の実施形態において、癌免疫療法剤は、インドキシモド、イピリムマブ、ニボルマブ、ペンブロリズマブ、又はピジリズマブである。幾つかの実施形態において、癌免疫療法治療薬はイピリムマブである。
【0100】
代表的な癌免疫療法剤はAdams. J. L. et al. “Big Opportunities for Small Molecules in Immuno-Oncology” Nature Reviews Drug Discovery 2015, 14, page 603-621(その内容は参照により本明細書に組み込まれる)に開示されている。
【0101】
幾つかの実施形態において、併せて投与される化学療法剤は炎症誘発剤である。幾つかの実施形態において、本発明のアルギナーゼ阻害剤と共に投与される炎症誘発剤はサイトカイン又はケモカインである。
【0102】
炎症誘発性サイトカインは、主にマクロファージを活性化することによって産生され、炎症反応のアップレギュレーションに関わっている。代表的な炎症誘発性サイトカインとしては、IL-1、IL-1β、IL-6、IL-8、TNF-α、及びIFN-γがある。
【0103】
ケモカインは一群の小さいサイトカインである。炎症誘発性のケモカインは複数の系統の白血球(例えば、リンパ球、マクロファージ)の補充及び活性化を促進する。ケモカインは一次構造において関連しており、幾つかの保存アミノ酸残基を共有する。特に、ケモカインは通例、ジスルフィド結合の形成により三次元構造に寄与する2又は4個のシステイン残基を含んでいる。ケモカインは、4つの群:C-Cケモカイン、C-X-Cケモカイン、Cケモカイン、及びC-X3-Cケモカインの1つに分類され得る。C-X-Cケモカインは、インターロイキン8(IL-8)、PF4及び好中球活性化ペプチド-2(NAP-2)のような好中球の幾つかの強力な化学誘引物質及び活性化剤を含む。C-Cケモカインとしては、例えば、RANTES(Regulated on Activation, Normal T Expressed and Secreted)、マクロファージ炎症性タンパク質1-アルファ及び1-ベータ(MIP-1α及びMIP-1β)、エオタキシン及びヒト単球走化性タンパク質1~3(MCP-1、MCP-2、MCP-3)があり、これらは単球又はリンパ球の化学誘引物質及び活性化剤として特徴付けられている。したがって、代表的な炎症誘発性ケモカインには、MIP-1α、MIP-1β、MIP-1γ、MCP-1、MCP-2、MCP-3、IL-8、PF4、NAP-2、RANTES、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、CXCL2、CXCL8、及びCXCL10がある。
【0104】
幾つかの実施形態において、がんを治療又は予防する方法は、さらに、放射線療法、手術、熱焼灼、集束超音波療法、凍結療法、又は以上のものの組合せのようながん治療の1種以上の非化学的な方法を投与することを含む。
【0105】
細胞経路は高速道路より道路網のように作用する。ある経路の阻害に応答して活性化される多数の重複、又は代わりの経路がある。この重複は、標的とされた作用物質の選択圧の下で耐性の細胞又は有機体の出現を促進し、結果として薬剤耐性及び臨床的再発を起こす。
【0106】
本発明の幾つかの実施形態において、化学療法剤はアルギナーゼ阻害剤と同時に投与される。幾つかの実施形態において、化学療法剤はアルギナーゼ阻害剤の前又は後約5分~約168時間以内に投与される。
【0107】
本発明は、CTLA-4、インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ、及びPD-1/PD-L1の阻害剤から選択される癌免疫療法剤、並びに式(I)のアルギナーゼ阻害剤を含む併用療法を提供する。幾つかの実施形態において、併用療法はがん、免疫学的疾患、又は慢性感染症を治療又は予防する。
【0108】
幾つかの実施形態において、本発明は、治療上有効量の本発明の化合物(例えば、式I、Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、又はIhの化合物)、又は前記化合物を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、免疫疾患を治療又は予防する方法を提供する。
【0109】
幾つかの実施形態において、免疫疾患は、強直性脊椎炎、クローン病、癩性結節性紅斑(ENL)、移植片対宿主病(GVHD)、HIV関連消耗症候群、エリテマトーデス、臓器移植拒絶、真性赤血球増加症、乾癬、乾癬性関節炎、再発性アフタ、関節リウマチ(RA)、重篤な再発性アフタ性口内炎、全身性硬化症、及び結節性硬化症から選択される。
【0110】
幾つかの実施形態において、免疫疾患を治療又は予防する方法は、さらに、上記のように癌免疫療法治療薬を併せて投与することを含む。
【0111】
幾つかの実施形態において、本発明は、治療上有効量の本発明の化合物(例えば、式I、Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、又はIhの化合物)、又は前記化合物を含む医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、慢性感染症を治療又は予防する方法を提供する。
【0112】
幾つかの実施形態において、慢性感染症は膀胱感染症、慢性疲労症候群、サイトメガロウイルス/エプスタインバーウイルス、線維筋痛、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、HIV/AIDSウイルス、マイコプラズマ感染症、及び尿路感染症から選択される。
【0113】
幾つかの実施形態において、慢性感染症を治療又は予防する方法は、さらに、上記のように癌免疫療法治療薬を併せて投与することを含む。
【0114】
アルギナーゼは体内で多数の重要な役割を果たす。免疫反応を調節することに加えて、アルギナーゼは、血管拡張及び気管支拡張を起こす酸化窒素濃度の調節に関わっている(Jung et al., 2010; Morris, 2010)。また、線維症及びリモデリングは、プロリン、コラーゲン及びポリアミン産生に関して、上流過程で機能するアルギナーゼ活性に依拠している(Kitowska et al., 2008; Grasemann et al., 2015)。
【0115】
幾つかの実施形態において、本発明は、対象におけるアルギナーゼI、アルギナーゼII、又はそれらの組合せの発現又は活性に関連する疾患又は状態の治療又は予防方法であって、その対象に治療上有効量の式(I)の少なくとも1種の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくは立体異性体を投与することを含む方法を提供する。
【0116】
幾つかの実施形態において、疾患又は状態は、心血管障害、性的障害、創傷治癒障害、胃腸障害、自己免疫疾患、免疫障害、感染症、肺疾患及び溶血性疾患から選択される。
【0117】
幾つかの実施形態において、疾患又は状態は、全身性高血圧、間質性肺疾患、肺動脈高血圧(PAH)、高地肺動脈高血圧、虚血再かん流(IR)傷害、心筋梗塞、及びアテローム性動脈硬化から選択される心血管障害である。
【0118】
幾つかの実施形態において、疾患又は状態は肺動脈高血圧(PAH)である。
【0119】
幾つかの実施形態において、疾患又は状態は心筋梗塞又はアテローム性動脈硬化である。
【0120】
幾つかの実施形態において、疾患又は状態は、化学的に誘発された肺線維症、特発性肺線維症、嚢胞性線維症、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、及び喘息から選択される肺疾患である。
【0121】
幾つかの実施形態において、疾患又は状態は、脳脊髄炎、多発性硬化症、抗リン脂質症候群1、自己免疫性溶血性貧血、慢性炎症性脱髄性多発性神経障害、疱疹状皮膚炎、皮膚筋炎、重症筋無力症、天疱瘡、関節リウマチ、全身硬直症候群、1型糖尿病、強直性脊椎炎、発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)、発作性寒冷血色素尿症、重篤な特発性自己免疫性溶血性貧血、及びグッドパスチャー症候群から選択される自己免疫疾患である。
【0122】
幾つかの実施形態において、疾患又は状態は、骨髄由来抑制細胞(MDSC)介在T-細胞機能不全、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、自己免疫性脳脊髄炎、及びABO異型輸血反応から選択される免疫障害である。
【0123】
幾つかの実施形態において、疾患又は状態は骨髄由来抑制細胞(MDSC)介在T-細胞機能不全である。
【0124】
幾つかの実施形態において、疾患又は状態は、鎌状赤血球病、地中海性貧血、遺伝性球状赤血球症、口唇状赤血球症、細血管障害性溶血性貧血ピルビン酸キナーゼ欠損、感染誘発貧血、心肺バイパス及び機械的心臓弁誘発貧血、並びに化学的誘発貧血から選択される溶血性疾患である。
【0125】
幾つかの実施形態において、疾患又は状態は、胃腸運動障害、胃がん、炎症性大腸炎、クローン病、潰瘍性結腸炎、及び胃潰瘍から選択される胃腸障害である。
【0126】
幾つかの実施形態において、疾患又は状態は、ペイロニー病及び勃起障害から選択される性的障害である。
【0127】
幾つかの実施形態において、疾患又は状態は、寄生虫感染、ウイルス感染、及び細菌感染症から選択される感染症である。幾つかの実施形態において、細菌感染症は結核である。
【0128】
幾つかの実施形態において、疾患又は状態は、肝臓IR、腎臓IR、及び心筋IRから選択される虚血再かん流(IR)傷害である。
【0129】
幾つかの実施形態において、疾患又は状態は、腎疾患炎症、乾癬、リーシュマニア症、神経変性疾患、創傷治癒、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、ピロリ菌(H. pylori)感染、線維性疾患、関節炎、カンジダ症、歯周病、ケロイド、扁桃腺炎(adenotonsillar disease)、アフリカ睡眠病及びシャーガス病から選択される。
【0130】
幾つかの実施形態において、疾患又は状態は、感染及び非感染創傷治癒から選択される創傷治癒障害である。
【0131】
さらなる実施形態において、本発明は、腫瘍中のアルギニンの濃度を上昇させるのに有効な治療薬を同定する方法あって、
a)腫瘍中のアルギニンの第1の濃度を測定し、
b)腫瘍を式(I)の化合物のような治療薬と接触させ、
c)腫瘍中のアルギニンの第2の濃度を測定する
ことを含んでおり、アルギニンの第2の濃度がアルギニンの第1の濃度より高いとき、治療薬は腫瘍中のアルギニンの濃度を上昇させるのに有効である、方法を提供する。
【0132】
幾つかの実施形態において、この方法はインビトロで実施される。代わりの実施形態において、この方法はインビボで実施される。
【0133】
幾つかの実施形態において(例えば、方法をインビボで実施する場合)、腫瘍を治療薬と接触させるステップは治療薬を対象に投与することを含む。幾つかの実施形態において、対象はヒトであることができる。
【0134】
アルギニンの濃度は、例えば、HPLC、質量分析、LCMS、又は当業者に公知の他の分析技術によって測定することができる。
【0135】
本発明はまた、対象において腫瘍中のアルギニンの濃度を上昇させるのに有効な治療薬を同定する方法であって、
a)対象の腫瘍中のアルギニンの第1の濃度を測定し、
b)対象に式(I)の化合物のような治療薬を投与し、
c)対象の腫瘍中のアルギニンの第2の濃度を測定する
ことを含んでおり、アルギニンの第2の濃度がアルギニンの第1の濃度より高いとき、治療薬は対象の腫瘍中のアルギニンの濃度を上昇させるのに有効である、方法も提供する。
【0136】
幾つかの実施形態において、投与するステップは治療薬の経口投与を含む。或いは、投与するステップは治療薬の非経口投与を含むことができる。さらなる投与方法は本明細書中で述べる。
【0137】
幾つかの実施形態において、対象はヒトである。
【0138】
本明細書で使用されるとき、用語「腫瘍中」とは、全腫瘍塊及び腫瘍内微小環境を指す。例えば、腫瘍塊は、限定されることは全くないが、がん(腫瘍状)の細胞、T-細胞、マクロファージ、及び間質細胞を含むことができる。「腫瘍内微小環境」は、当技術分野で認識されている用語であり、腫瘍が存在する細胞環境を指し、例えば、周囲の血管、免疫細胞、他の細胞、線維芽細胞、シグナリング分子、及び細胞外マトリックスを含む。したがって、「腫瘍中」のアルギニンの測定は、腫瘍塊中又はその微小環境中のアルギニンの測定を意味する。
【0139】
したがって、本明細書に記載されている方法の幾つかの実施形態において、アルギニンの第1及び第2の濃度は腫瘍細胞で測定される。
【0140】
他の実施形態において、アルギニンの第1及び第2の濃度は腫瘍に関連する間質細胞で測定される。
【0141】
幾つかの実施形態において、治療薬は式(I)の化合物である。代表的な化合物は本明細書に記載されている。
【0142】
治療薬が腫瘍中のアルギニンの濃度を上昇させるのに有効である幾つかの実施形態において、治療薬は腫瘍を治療するのに有効である可能性がある。
【0143】
他の実施形態において、本発明は、アルギニン療法の作用物質に対する腫瘍の反応を評価する方法であって、
a)がん患者の腫瘍中のアルギニンの第1の濃度を測定し、
b)患者にアルギニン療法の作用物質を投与し、
c)患者の腫瘍中のアルギニンの第2の濃度を測定することにより、アルギニン療法の作用物質に対する腫瘍の反応を評価する
ことを含む方法を提供する。
【0144】
幾つかの実施形態において、アルギニンの第2の濃度がアルギニンの第1の濃度より高い場合、腫瘍はアルギニン療法の作用物質に対して反応性である(即ち、それにより治療される)。腫瘍塊中又は腫瘍内微小環境中のアルギニンの増大は、細胞毒性T-細胞の数の増大又は細胞毒性T-細胞の活性の増大を示すことができる。
【0145】
「アルギニン療法の作用物質」は、本明細書で使用されるとき、関心のある系(例えば、腫瘍塊及びその微小環境)内のアルギニンの濃度の上昇を引き起こすことができる治療薬を意味する。好ましくは、アルギニン療法の作用物質はアルギナーゼ阻害剤である。より好ましくは、アルギナーゼ阻害剤は式(I)の化合物である。
【0146】
他の実施形態において、本発明は、アルギニン療法の作用物質の抗がん効能を評価する方法であって、
a)がん患者の腫瘍中のアルギニンの第1の濃度を測定し、
b)患者にアルギニン療法の作用物質を投与し、
c)患者の腫瘍中のアルギニンの第2の濃度を測定することにより、アルギニン療法の作用物質の抗がん効能を評価する
ことを含む方法を提供する。
【0147】
幾つかの実施形態において、アルギニンの第2の濃度がアルギニンの第1の濃度より高い場合、そのアルギニン療法の作用物質は患者のがんを治療するのに効果がある。
【0148】
幾つかの実施形態において、アルギニン療法の作用物質はアルギナーゼ阻害剤である。
【0149】
本発明はまた、がんを治療又は予防する方法であって、それを必要とする対象に治療上有効量のアルギニン療法の作用物質及び1種以上の追加の化学療法剤を併せて投与することを含む方法も提供する。
【0150】
幾つかの実施形態において、アルギニン療法の作用物質の投与は、対象の腫瘍中のアルギニンの濃度の、投与前の腫瘍中のアルギニンの濃度と比べて上昇をもたらす。
【0151】
幾つかの実施形態において、アルギニン療法の作用物質の投与は、対象の腫瘍細胞中のアルギニンの濃度の、投与前の腫瘍細胞中のアルギニンの濃度と比べて上昇をもたらす。
【0152】
同様に、アルギニン療法の作用物質の投与は、対象の腫瘍に関連する間質細胞中のアルギニンの濃度の、投与前の間質細胞中のアルギニンの濃度と比べて上昇をもたらし得る。
【0153】
幾つかの実施形態において、アルギニン療法の作用物質はアルギナーゼ阻害剤である。幾つかの代表的なアルギナーゼ阻害剤が本明細書に記載されている。特定の実施形態において、アルギナーゼ阻害剤は、本明細書に記載されている式I、Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、又はIhのいずれかの構造を有する化合物である。
【0154】
他の実施形態において、本発明は、併用療法レジメンの抗がん効能を評価する方法であって、
a)がん患者の腫瘍中のアルギニンの第1の濃度を測定し、
b)患者にアルギニン療法の作用物質及び1種以上の追加の化学療法剤を併せて投与し、
c)患者の腫瘍中のアルギニンの第2の濃度を測定することにより、併用療法レジメンの抗がん効能を評価する
ことを含む方法を提供する。
【0155】
幾つかの実施形態において、アルギニンの第2の濃度がアルギニンの第1の濃度より高い場合、その併用療法レジメンはその患者でがんを治療するのに効果がある。
【0156】
幾つかの実施形態において、併用療法レジメンで使用されるアルギニン療法の作用物質は式I、Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、又はIhのいずれか1つの化合物のようなアルギナーゼ阻害剤である。
【0157】
幾つかの実施形態において、併用療法レジメンは、単剤としてのアルギナーゼ阻害剤の療法レジメン、又は単剤としての追加の化学療法剤の療法レジメンより効果がある。
【0158】
定義
用語「アシル」は当技術分野で認識されており、一般式ヒドロカルビルC(O)-、好ましくはアルキルC(O)-で表される基を意味する。
【0159】
用語「アシルアミノ」は当技術分野で認識されており、アシル基で置換されたアミノ基を意味し、例えば、式ヒドロカルビルC(O)NH-で表され得る。
【0160】
用語「アシルオキシ」は当技術分野で認識されており、一般式ヒドロカルビルC(O)O-、好ましくはアルキルC(O)O-で表される基を意味する。
【0161】
用語「アルコキシ」は、酸素が結合しているアルキル基、好ましくは低級アルキル基を意味する。代表的なアルコキシ基には、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、tert-ブトキシなどがある。
【0162】
用語「アルコキシアルキル」は、アルコキシ基で置換されたアルキル基を意味し、一般式アルキル-O-アルキルで表され得る。
【0163】
用語「アルケニル」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも1つの二重結合を含有する脂肪族基を意味し、「非置換アルケニル」及び「置換アルケニル」の両方を包含することが意図されており、後者はアルケニル基の1個以上の炭素上の水素に取って代わった置換基を有するアルケニル部分を指す。かかる置換基は1つ以上の二重結合に含まれるか又は含まれない1個以上の炭素上にあり得る。また、かかる置換基は、安定性が手に負えない場合を除き、以下で述べるようなアルキル基として考えられる全てのものを包含する。例えば、1個以上のアルキル、カルボシクリル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリール基によるアルケニル基の置換が考えられる。
【0164】
「アルキル」基又は「アルカン」は、完全に飽和した、直鎖又は分岐した非芳香族炭化水素である。通例、直鎖又は分岐したアルキル基は、他に定義されない限り、1~約20個、好ましくは1~約10個の炭素原子を有する。直鎖及び分岐したアルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、へキシル、ペンチル及びオクチルがある。C1-C6直鎖又は分岐したアルキル基は「低級アルキル」基ともいわれる。
【0165】
また、本明細書、実施例、及び特許請求の範囲を通じて使用される用語「アルキル」(又は「低級アルキル」)は、「非置換アルキル」及び「置換アルキル」の両方を包含することが意図されており、後者は炭化水素主鎖の1個以上の炭素上の1個以上の水素に取って代わった置換基を有するアルキル部分を指す。かかる置換基は、特に規定されなければ、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、又はアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート、又はチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、グアニジノ、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族部分を包含することができる。炭化水素鎖上に置換された部分は、適切であれば、それ自体が置換されることができることが当業者には理解されよう。例えば、置換されたアルキルの置換基としては、置換及び非置換の形態のアミノ、アジド、イミド、アミド、ホスホリル(例えばホスホネート及びホスフィネート)、スルホニル(例えばスルフェート、スルホンアミド、スルファモイル及びスルホネート)、及びシリル基、並びにエーテル、アルキルチオ、カルボニル(例えばケトン、アルデヒド、カルボキシレート、及びエステル)、-CF3、-CNなどを挙げることができる。代表的な置換アルキルは以下に記載する。シクロアルキルは、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルキルチオ、アミノアルキル、カルボニルで置換されたアルキル、-CF3、-CNなどでさらに置換されることができる。
【0166】
用語「Cx-y」は、アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアルコキシのような化学部分に関連して、鎖中にx~y個の炭素を含有する基を含めて意味する。例えば、用語「Cx-yアルキル」は、置換又は非置換の飽和炭化水素基、例えば、トリフルオロメチル及び2,2,2-トリフルオロエチル、等のようなハロアルキル基を含めて、鎖中にx~y個の炭素を含有する直鎖アルキル及び分岐鎖アルキル基を意味する。C0アルキルは、その基が末端の位置にある場合は水素を、内部にあれば結合を意味する。用語「C2-yアルケニル」及び「C2-yアルキニル」は、長さ及び可能な置換が上記アルキルと類似であるが、それぞれ少なくとも1つの二重又は三重結合を含有する置換又は非置換の不飽和脂肪族基を意味する。
【0167】
用語「アルキルアミノ」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも1個のアルキル基で置換されたアミノ基を意味する。
【0168】
用語「アルキルチオ」は、本明細書で使用されるとき、アルキル基で置換されたチオール基を意味し、一般式アルキルS-で表され得る。
【0169】
用語「アルキニル」は、本明細書で使用されるとき、少なくとも1つの三重結合を含有する脂肪族基を意味し、「非置換アルキニル」及び「置換アルキニル」の両者を包含することが意図されており、後者はアルキニル基の1個以上の炭素上の水素に取って代わった置換基を有するアルキニル部分を指す。かかる置換基は1つ以上の三重結合に含まれるか又は含まれない1個以上の炭素上にあり得る。また、かかる置換基には、安定性が手に負えない場合を除き、上で述べたアルキル基に対して考えられるもの全てが含まれる。例えば、1個以上のアルキル、カルボシクリル、アリール、ヘテロシクリル、又はヘテロアリール基によるアルキニル基の置換が考えられる。
【0170】
用語「アミド」は、本明細書で使用されるとき、次の基を意味する。
【0171】
【化19】
ここで、各R
10は独立して水素若しくはヒドロカルビル基を表すか、又は2つのR
10はそれらが結合しているN原子と一緒になって環構造内に4~8個の原子を有する複素環を完成する。
【0172】
用語「アミン」及び「アミノ」は、当技術分野で認識されており、非置換及び置換アミン並びにそれらの塩、例えば、
【0173】
【化20】
で表すことができる部分を意味する。ここで、各R
10は独立して水素若しくはヒドロカルビル基を表すか、又は2つのR
10はそれらが結合しているN原子と一緒になって、環構造内に4~8個の原子を有する複素環を完成する。
【0174】
用語「アミノアルキル」は、本明細書で使用されるとき、アミノ基で置換されたアルキル基を意味する。
【0175】
用語「アラルキル」は、本明細書で使用されるとき、アリール基で置換されたアルキル基を意味する。
【0176】
用語「アリール」は、本明細書で使用されるとき、環の各原子が炭素である置換又は非置換の単環式芳香族基を包含する。好ましくは、環は5~7員の環、より好ましくは6員環である。用語「アリール」はまた、環の少なくとも1つが芳香族であり、例えば、他の環式環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであることができる、2個以上の炭素が2つの隣接する環に共通である2以上の環式環を有する多環式環系も包含する。アリール基としては、ベンゼン、ナフタレン、フェナントレン、フェノール、アニリンなどがある。
【0177】
用語「カルバメート」は当技術分野で認識されており、次の基を意味する。
【0178】
【化21】
ここで、R
9及びR
10は独立して水素又はアルキル基のようなヒドロカルビル基を表すか、又はR
9及びR
10は介在する原子と一緒になって環構造内に4~8個の原子を有する複素環を完成する。
【0179】
用語「炭素環」、及び「炭素環式」は、本明細書で使用されるとき、環の各原子が炭素である飽和又は不飽和の環を意味する。用語炭素環は芳香族の炭素環及び非芳香族の炭素環の両方を包含する。非芳香族の炭素環は、全ての炭素原子が飽和しているシクロアルカン環、及び少なくとも1つの二重結合を含有するシクロアルケン環の両方を包含する。「炭素環」は5-7員の単環式及び8-12員の二環式環を包含する。二環式炭素環の各環は飽和、不飽和及び芳香族の環から選択され得る。炭素環は1、2若しくは3個又はそれ以上の原子が2つの環間で共有される二環式分子を包含する。用語「縮合した炭素環」は、各々の環が2個の隣接する原子を他の環と共有する二環式の炭素環を意味する。縮合した炭素環の各々の環は飽和、不飽和及び芳香族の環から選択され得る。代表的な実施形態において、芳香族の環、例えばフェニルは、飽和又は不飽和の環、例えば、シクロヘキサン、シクロペンタン、又はシクロヘキセンと縮合し得る。原子価が許容するとき、飽和、不飽和および芳香族の二環式環の任意の組合せが炭素環式の定義に含まれる。代表的な「炭素環」として、シクロペンタン、シクロヘキサン、ビシクロ[2.2.1]へプタン、1,5-シクロオクタジエン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクト-3-エン、ナフタレン及びアダマンタンがある。代表的な縮合した炭素環としては、デカリン、ナフタレン、1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン、ビシクロ[4.2.0]オクタン、4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-インデン及びビシクロ[4.1.0]ヘプト-3-エンがある。「炭素環」は水素原子を有することができるいずれかの1つ以上の位置で置換され得る。
【0180】
「シクロアルキル」基は、完全に飽和している環状の炭化水素である。「シクロアルキル」は単環式及び二環式の環を包含する。通例、単環式のシクロアルキル基は、他に定義されない限り3~約10個の炭素原子、より典型的には3~8個の炭素原子を有する。二環式シクロアルキルの第2の環は飽和、不飽和及び芳香族の環から選択され得る。シクロアルキルは1、2若しくは3個又はそれ以上の原子が2つの環間で共有される二環式の分子を包含する。用語「縮合したシクロアルキル」は、各々の環が2個の隣接する原子を他の環と共有する二環式のシクロアルキルを意味する。縮合した二環式シクロアルキルの第2の環は飽和、不飽和及び芳香族の環から選択され得る。「シクロアルケニル」基は1つ以上の二重結合を含有する環状の炭化水素である。
【0181】
用語「(シクロアルキル)アルキル」は、本明細書で使用されるとき、シクロアルキル基で置換されたアルキル基を意味する。
【0182】
用語「カーボネート」は当技術分野で認識されており、基-OCO2-R10を意味し、ここでR10はヒドロカルビル基を表す。
【0183】
用語「カルボキシ」は、本明細書で使用されるとき、式-CO2Hで表される基を意味する。
【0184】
用語「エステル」は、本明細書で使用されるとき、基-C(O)OR10を意味し、ここでR10はヒドロカルビル基を表す。
【0185】
用語「エーテル」は、本明細書で使用されるとき、酸素を介してもう1つ別のヒドロカルビル基に結合したヒドロカルビル基を意味する。したがって、ヒドロカルビル基のエーテル置換基はヒドロカルビル-O-であり得る。エーテルは対称又は非対称のいずれかでよい。エーテルの例としては、限定されることはないが、複素環-O-複素環及びアリール-O-複素環がある。エーテルは「アルコキシアルキル」基を包含し、これは一般式アルキル-O-アルキルで表され得る。
【0186】
用語「ハロ」及び「ハロゲン」は、本明細書で使用されるとき、ハロゲンを意味し、クロロ、フルオロ、ブロモ、及びヨードを包含する。
【0187】
用語「ヘテロアラルキル」は、本明細書で使用されるとき、ヘテロアリール基で置換されたアルキル基を意味する。
【0188】
用語「ヘテロアルキル」は、本明細書で使用されるとき、炭素原子及び少なくとも1個のヘテロ原子の飽和又は不飽和の鎖を意味し、ここで2個のヘテロ原子が隣接することはない。
【0189】
用語「ヘテロアリール」は置換又は非置換の芳香族単環構造、好ましくは5~7員環、より好ましくは5~6員環を包含し、その環構造は少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1又は2個のヘテロ原子を含む。用語「ヘテロアリール」はまた、2個以上の炭素が2つの隣接する環に共通であり、少なくとも1つの環がヘテロ芳香族である、2つ以上の環式環を有する多環式の環系も包含し、例えば、他の環式環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであることができる。ヘテロアリール基としては、例えば、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、及びピリミジンなどがある。
【0190】
用語「ヘテロ原子」は、本明細書で使用されるとき、炭素又は水素以外のいずれかの元素の原子を意味する。好ましいヘテロ原子は窒素、酸素、及びイオウである。
【0191】
用語「ヘテロシクロアルキル」、「複素環」、及び「複素環式」は、置換又は非置換の非芳香族環構造、好ましくは3~10員の環、より好ましくは3~7員の環を意味し、その環構造は少なくとも1個のヘテロ原子、好ましくは1~4個のヘテロ原子、より好ましくは1又は2個のヘテロ原子を含む。用語「ヘテロシクロアルキル」及び「複素環式」はまた、2個以上の炭素が2つの隣接する環に共通である2つ以上の環式環を有し、少なくとも1つの環が複素環式である多環式環系も包含し、例えば、他の環式環はシクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリルであることができる。ヘテロシクロアルキル基としては、例えば、ピペリジン、ピペラジン、ピロリジン、モルホリン、ラクトン、ラクタムなどがある。
【0192】
用語「(ヘテロシクロアルキル)アルキル」は、本明細書で使用されるとき、ヘテロシクロアルキル基で置換されたアルキル基を意味する。
【0193】
用語「ヒドロカルビル」は、本明細書で使用されるとき、=O又は=S置換基をもたない炭素原子を介して結合しており、通例少なくとも1つの炭素-水素結合及び主として炭素の主鎖を有するが、任意にヘテロ原子を含んでいてもよい基を意味する。したがって、メチル、エトキシエチル、2-ピリジル、及びトリフルオロメチルのような基は本出願の目的からヒドロカルビルであると考えられるが、アセチル(結合している炭素上に=O置換基を有する)及びエトキシ(炭素ではなく酸素を介して結合する)のような置換基は考えられない。ヒドロカルビル基としては、限定されることはないが、アリール、ヘテロアリール、炭素環、ヘテロシクリル、アルキル、アルケニル、アルキニル、及びこれらの組合せがある。
【0194】
用語「ヒドロキシアルキル」は、本明細書で使用されるとき、ヒドロキシ基で置換されたアルキル基を意味する。
【0195】
用語「低級」は、アシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアルコキシのような化学部分に関連して使用されるとき、置換基中に水素以外の原子が10個以下、好ましくは6個以下存在する基を含めて意味する。例えば、「低級アルキル」は、10個以下、好ましくは6個以下の炭素原子を含有するアルキル基を意味する。幾つかの実施形態において、本明細書で規定されるアシル、アシルオキシ、アルキル、アルケニル、アルキニル、又はアルコキシ置換基は、単独であろうと、又は基ヒドロキシアルキル及びアラルキルのように他の置換基との組合せ(この場合、例えば、アリール基内の原子は、アルキル置換基内の炭素原子を数えるときには数えない)であろうと、それぞれ低級アシル、低級アシルオキシ、低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、又は低級アルコキシである。
【0196】
用語「ポリシクリル」、「多環」、及び「多環式」は、2個以上の原子が2つの隣接する環に共通であり、例えば、環が「縮合環」である2つ以上の環(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、及び/又はヘテロシクリル)を意味する。多環の各環は置換又は非置換であることができる。幾つかの実施形態において、多環の各環は環内に3~10個、好ましくは5~7個の原子を含有する。
【0197】
用語「シリル」は、3個のヒドロカルビル部分が結合しているケイ素部分を意味する。
【0198】
用語「置換された」とは、主鎖の1個以上の炭素上の水素に取って代わった置換基を有する部分を意味する。「置換」又は「置換された」は、かかる置換が置換される原子及び置換基の許容される原子価に従い、そして置換の結果として、例えば転位、環化、脱離、等によるような変換を自然には起こさない安定な化合物が生じるという暗黙の条件を含むことが理解される。本明細書で使用されるとき、用語「置換された」は、有機化合物の全ての許容される置換基を含むことが考えられる。広い局面において、許容される置換基は有機化合物の非環式及び環式、分岐及び非分岐、炭素環式及び複素環式、芳香族及び非芳香族の置換基を含む。許容される置換基は適当な有機化合物に対して1つ以上で、同一又は異なることができる。本発明の目的から、窒素のようなヘテロ原子は、水素置換基及び/又はヘテロ原子の原子価を満足する本明細書に記載されている有機化合物の任意の許容される置換基を有し得る。置換基としては、本明細書に記載されているいずれかの置換基、例えば、ハロゲン、ヒドロキシル、カルボニル(例えば、カルボキシル、アルコキシカルボニル、ホルミル、又はアシル)、チオカルボニル(例えば、チオエステル、チオアセテート、又はチオホルメート)、アルコキシル、ホスホリル、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、アミノ、アミド、アミジン、イミン、シアノ、ニトロ、アジド、スルフヒドリル、アルキルチオ、スルフェート、スルホネート、スルファモイル、スルホンアミド、スルホニル、ヘテロシクリル、アラルキル、又は芳香族若しくはヘテロ芳香族の部分を挙げることができる。当業者には理解されるように、置換基はそれ自体が、適切であれば置換されることができる。特に「非置換」と記載されていない限り、本明細書中で化学部分への言及は置換された変形体を含むと理解される。例えば、「アリール」基又は部分への言及は暗黙のうちに置換及び非置換変形体の両方を含む。
【0199】
用語「スルフェート」は当技術分野で認識されており、基-OSO3H、又はその薬学的に許容される塩を意味する。
【0200】
用語「スルホンアミド」は当技術分野で認識されており、次の一般式で表される基を意味する。
【0201】
【化22】
式中、R
9及びR
10は独立して水素又はアルキルのようなヒドロカルビルを表すか、又はR
9及びR
10は介在する原子と一緒になって環構造内に4~8個の原子を有する複素環を完成する。
【0202】
用語「スルホキシド」は当技術分野で認識されており、基-S(O)-R10を意味し、ここでR10はヒドロカルビルを表す。
【0203】
用語「スルホネート」は当技術分野で認識されており、基SO3H、又はその薬学的に許容される塩を意味する。
【0204】
用語「スルホン」は当技術分野で認識されており、基-S(O)2-R10を意味し、ここでR10はヒドロカルビルを表す。
【0205】
用語「チオアルキル」は、本明細書で使用されるとき、チオール基で置換されたアルキル基を意味する。
【0206】
用語「チオエステル」は、本明細書で使用されるとき、基-C(O)SR10又は-SC(O)R10を意味し、ここでR10はヒドロカルビルを表す。
【0207】
用語「チオエーテル」は、本明細書で使用されるとき、エーテルと等価であり、ここで酸素がイオウで置き替えられている。
【0208】
用語「尿素」は当技術分野で認識されており、次の一般式で表され得る。
【0209】
【化23】
式中、R
9及びR
10は独立して水素又はアルキルのようなヒドロカルビルを表すか、又はR
9のいずれかの存在はR
10及び介在する原子と一緒になって環構造内に4~8個の原子を有する複素環を完成する。
【0210】
用語「ジオキサボロラン」は、本明細書で使用されるとき、次の一般式で表される化学基を意味する。
【0211】
【化24】
ここで、ジオキサボロランは任意にいずれかの置換可能な位置で、限定されることはないが、アルキル(例えば、置換アルキル)、ヒドロキシアルキル、アルコキシル、カルボキシアルキル、-COOH、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、等を含めて1つ以上の置換基により置換されていてもよい。或いは、ジオキサボロランは、2つの隣接する置換可能な位置で、2つの置換基が介在する原子と共に任意に置換されていてもよいシクロアルキル又はアリール環(例えば、カテコラトホウ素-内のような)を形成するように置換されていることができる。
【0212】
用語「ジオキサボロラノン」は、本明細書で使用されるとき、次の一般式で表される化学基を意味する。
【0213】
【化25】
ここで、ジオキサボロラノンは任意にいずれかの置換可能な位置で、限定されることはないが、アルキル(例えば、置換アルキル)、ヒドロキシアルキル、アルコキシル、カルボキシアルキル、-COOH、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、等を含めて1つ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0214】
用語「ジオキサボロランジオン」は、本明細書で使用されるとき、次の一般式で表される化学基を意味する。
【0215】
【化26】
用語「ジオキサボリナン」は、本明細書で使用されるとき、次の一般式で表される化学基を意味する。
【0216】
【化27】
ここで、ジオキサボリナンは任意に、いずれかの置換可能な位置で、限定されることはないが、アルキル(例えば、置換アルキル)、ヒドロキシアルキル、アルコキシル、カルボキシアルキル、-COOH、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、等を含めて1つ以上の置換基により置換されていてもよい。或いは、ジオキサボリナンは2つの隣接する置換可能な位置で、2つの置換基が介在する原子と共に、任意に置換されていてもよいシクロアルキル又はアリール環を形成するように置換されていることができる。
【0217】
用語「ジオキサボリナノン」は、本明細書で使用されるとき、次の一般式で表される化学基を意味する。
【0218】
【化28】
ここで、ジオキサボリナノンは任意にいずれかの置換可能な位置で、限定されることはないが、アルキル(例えば、置換アルキル)、ヒドロキシアルキル、アルコキシル、カルボキシアルキル、-COOH、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、等を含めて1つ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0219】
用語「ジオキサボリナンジオン」は、本明細書で使用されるとき、次の一般式で表される化学基を意味する。
【0220】
【化29】
ここで、ジオキサボリナンジオンは任意に、いずれかの置換可能な位置で、限定されることはないが、アルキル(例えば、置換アルキル)、ヒドロキシアルキル、アルコキシル、カルボキシアルキル、-COOH、アリール、ヘテロアリール、アラルキル、ヘテロアラルキル、等を含めて1つ以上の置換基により置換されていてもよい。
【0221】
「保護基」は、ある分子内の反応性の官能基に結合したとき、その官能基の反応性を覆い隠し、低減させ、又は抑制する原子の群を意味する。通例、保護基は合成の過程で所望通り選択的に除去することができる。保護基の例は、Greene and Wuts, Protective Groups in Organic Chemistry, 3rd Ed., 1999, John Wiley & Sons, NY及びHarrison et al., Compendium of Synthetic Organic Methods, Vols. 1-8, 1971-1996, John Wiley & Sons, NYに見ることができる。代表的な窒素保護基としては、限定されることはないが、ホルミル、アセチル、トリフルオロアセチル、ベンジル、ベンジルオキシカルボニル(「CBZ」)、tert-ブトキシカルボニル(「Boc」)、トリメチルシリル(「TMS」)、2-トリメチルシリル-エタンスルホニル(「TES」)、トリチル及び置換トリチル基、アリルオキシカルボニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(「FMOC」)、ニトロ-ベラトリルオキシカルボニル(「NVOC」)などがある。代表的なヒドロキシル保護基としては、限定されることはないが、ヒドロキシル基がアシル化(エステル化)されているか又はアルキル化されているもの、例えば、ベンジル及びトリチルエーテル、並びにアルキルエーテル、テトラヒドロピラニルエーテル、トリアルキルシリルエーテル(例えば、TMS又はTIPS基)、グリコールエーテル、例えばエチレングリコール及びプロピレングリコール誘導体並びにアリルエーテルがある。
【0222】
本明細書で使用されるとき、疾患又は状態を「予防する」治療薬は、統計的試料において、処置された試料で、疾患又は状態の発生を未処置の対照試料と比べて低減するか、又は発症を遅らせるか、又は疾患又は状態の1つ以上の症状の重症度を未処置の対照試料と比べて低減する化合物を意味する。
【0223】
用語「治療」は予防及び/又は治療的処置を含む。用語「予防又は治療的」処置は当技術分野で認識されており、1つ以上の対象組成物の宿主への投与を含む。望まない状態(例えば、宿主動物の病気又はその他の望まない状態)の臨床兆候の前に投与するのであれば、その処置は予防である(即ち、望まない状態の発生に対して宿主を保護する)のに対して、望まない状態の兆候の後に投与するのであれば、その処置は治療である(即ち、存在する望まない状態又はその副作用を減少し、改善し、又は安定させることが意図されている)。
【0224】
用語「プロドラッグ」は、生理的条件下で、本発明の治療上活性な作用物質(例えば、式I、Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、又はIhの化合物)に変換される化合物を包含することが意図されている。プロドラッグを作成する一般的な方法は、生理的条件下で加水分解して所望の分子を曝露する1つ以上の選択された部分を含ませることである。他の実施形態において、プロドラッグは宿主動物の酵素活性によって変換される。例えば、エステル又はカーボネート(例えば、アルコール又はカルボン酸のエステル又はカーボネート)は本発明の好ましいプロドラッグである。或いは、アミド(例えば、アミノ基のアミド)は本発明のプロドラッグであり得る。幾つかの実施形態において、上に示した製剤内の式Iの化合物の幾らか又は全てを、対応する適切なプロドラッグ、例えば、親化合物内のヒドロキシルがエステル又はカーボネートとして呈示されるか又は親化合物内に存在するカルボン酸がエステルとして呈示されるプロドラッグで置き替えることができる。
【0225】
他の好ましい実施形態において、本発明のプロドラッグは、ボロン酸がエステル化又はその他修飾されて、生理的条件下で親のボロン酸に加水分解することができるボロン酸誘導体を形成している化合物を包含する。例えば、本発明の化合物は、ボロン酸の酒石酸又はクエン酸「エステル」、例えば、ホウ素が、酒石酸又はクエン酸部分の2個のヘテロ原子に結合することによってボラ環式化合物(boracycle)を形成しているものを含む。同様に、本発明の化合物は親のボロン酸のマンデル酸エステル又はシュウ酸エステルを含む。代表的なボロン酸エステルを以下に示す。
【0226】
【0227】
医薬組成物
幾つかの実施形態において、本発明は、式I、Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、若しくはIhの化合物のような本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。
【0228】
幾つかの実施形態において、本発明は、いずれかの本発明の化合物(例えば、式I、Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、又はIhの化合物)、及び1種以上の薬学的に許容される賦形剤を含む、ヒトの患者に使用するのに適した医薬製剤を提供する。幾つかの実施形態において、医薬製剤は本明細書に記載されている状態又は病気を治療又は予防するのに使用するためのものであり得る。幾つかの実施形態において、医薬製剤はヒトの患者に使用するのに適切な十分低い発熱活性を有する。
【0229】
本発明の1つの実施形態は、式I、Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、若しくはIhの化合物のような本発明の化合物、又はその薬学的に許容される塩、及び任意にその化合物を投与する仕方についての説明書を含む医薬キットを提供する。
【0230】
本発明の組成物及び方法は、それを必要とする個体を治療するために利用することができる。幾つかの実施形態において、個体はヒトのような哺乳動物、又は非ヒト哺乳動物である。ヒトのような動物に投与するとき、組成物又は化合物は好ましくは、例えば、本発明の化合物及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物として投与される。薬学的に許容される担体は当技術分野で周知であり、例えば、水若しくは生理緩衝食塩水のような水溶液又はグリコール、グリセロール、オリーブ油のような油、若しくは注射可能な有機エステルのような他の溶媒若しくはビヒクルがある。幾つかの好ましい実施形態において、かかる医薬組成物がヒトへの投与用、特に侵襲的な経路の投与(即ち、上皮性関門を介する輸送又は拡散を回避する、注射又は移植のような経路)用である場合、水溶液は発熱物質を含まない、又は実質的に発熱物質を含まない。賦形剤は、例えば、作用物質の遅延放出を起こすか又は1つ以上の細胞、組織若しくは臓器を選択的に標的とするように選択することができる。医薬組成物は錠剤、カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、顆粒、再構成用親液性物質、粉末、溶液、シロップ、座薬、注射などのような投与単位形態であることができる。組成物はまた、経皮送達系、例えば、皮膚パッチとして呈示することもできる。また組成物は、点眼薬のような、局所投与に適した溶液として呈示することもできる。
【0231】
薬学的に許容される担体は、例えば、本発明の化合物のような化合物を安定させ、その溶解度を増大させ、又はその吸収を増大させるように作用する生理学的に許容される作用物質を含有することができる。かかる生理学的に許容される作用物質としては、例えば、グルコース、スクロース又はデキストランのような炭水化物、アスコルビン酸又はグルタチオンのような酸化防止剤、キレート剤、低分子量タンパク質又はその他の安定剤若しくは賦形剤がある。生理学的に許容される作用物質を含めて薬学的に許容される担体の選択は、例えば、組成物の投与経路に依存する。製剤又は医薬組成物は自己乳化性の薬物送達系又は自己微細乳化性の薬物送達系であることができる。医薬組成物(製剤)はまた、その中に、例えば本発明の化合物を組み込むことができるリポソーム又は他のポリマーマトリクスであることができる。例えば、リン脂質又はその他の脂質を含むリポソームは、作成及び投与するのが比較的に簡単である、非毒性の生理学的に許容されかつ代謝可能な担体である。
【0232】
語句「薬学的に許容される」は、本明細書中で、正当な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又はその他の問題若しくは合併症がなく、妥当なベネフィット/リスク比と見合って、人間及び動物の組織と接触させて使用するのに適している化合物、物質、組成物、及び/又は投与形態を意味して使用されている。
【0233】
語句「薬学的に許容される担体」は、本明細書で使用されるとき、液体若しくは固体の充填剤、希釈剤、賦形剤、溶媒又はカプセル化材料のような薬学的に許容される物質、組成物又はビヒクルを意味する。各々の担体は、製剤の他の成分と相溶性であって、しかも患者に対して有害でないという意味で「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体として役に立つことができる物質の幾つかの例としては、(1)ラクトース、グルコース及びスクロースのような糖類、(2)トウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンのようなデンプン、(3)セルロース、及びその誘導体、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース及び酢酸セルロース、(4)粉末化トラガカント、(5)麦芽、(6)ゼラチン、(7)タルク、(8)ココアバター及び坐剤用ワックスのような賦形剤、(9)ピーナッツ油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、トウモロコシ油及びダイズ油のような油、(10)プロピレングリコールのようなグリコール、(11)グリセリン、ソルビトール、マンニトール及びポリエチレングリコールのようなポリオール、(12)オレイン酸エチル及びラウリン酸エチルのようなエステル、(13)寒天、(14)水酸化マグネシウム及び水酸化アルミニウムのような緩衝剤、(15)アルギン酸、(16)発熱物質を含まない水、(17)等張食塩水、(18)リンゲル液、(19)エチルアルコール、(20)リン酸緩衝液、及び(21)医薬製剤に使用される他の非毒性で相溶性の物質がある。
【0234】
医薬組成物(製剤)は、例えば、経口(例えば、水性若しくは非水性の溶液又は懸濁液のような水薬、錠剤、カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、ボーラス、粉末、顆粒、舌への塗布用のペースト);口腔粘膜を経る吸収(例えば、舌下);肛門、直腸又は膣(例えば、ペッサリー、クリーム又は泡として);非経口(例えば、筋肉内、静脈内、皮下又はクモ膜下、例えば、無菌の溶液又は懸濁液);経鼻;腹腔内;皮下;経皮(例えば皮膚に貼付されるパッチとして);及び局所(例えば、皮膚に塗布されるクリーム、軟膏若しくはスプレーとして、又は点眼薬として)を含めて、多数の投与経路のいずれかによって対象に投与することができる。化合物はまた吸入用に製剤化してもよい。幾つかの実施形態において、化合物は無菌の水に単に溶解又は懸濁してもよい。適当な投与経路及びそのために適した組成物の詳細は、例えば、米国特許第6,110,973号、同第5,763,493号、同第5,731,000号、同第5,541,231号、同第5,427,798号、同第5,358,970号及び同第4,172,896号、並びにそこで引用されている特許に見ることができる。
【0235】
製剤は好都合なことに単位投与形態で呈示され得、薬剤学の技術分野で周知のいずれかの方法で製造することができる。単一の投与形態を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、処置される宿主、個々の投与様式に応じて変化する。単一の投与形態を生成するために担体材料と組み合わせることができる活性成分の量は、一般に、治療効果を奏する化合物の量である。一般に、100パーセントの中で、この量は約1パーセント~約99パーセント、好ましくは約5パーセント~約70パーセント、最も好ましくは約10パーセント~約30パーセントの活性成分の範囲である。
【0236】
これらの製剤又は組成物を製造する方法は、本発明の化合物のような活性化合物を、担体及び、任意に、1種以上の補助成分と合わせるステップを含む。一般に、製剤は、本発明の化合物を液体担体、又は微細に分割した固体担体、又は両者と均一かつ密に混合し、その後、必要であれば、生成物を成形することによって製造される。
【0237】
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、カシェ、丸薬、錠剤、薬用キャンディー(味付け成分、通常スクロース及びアカシア又はトラガカントを用いる)、親液性物質、粉末、顆粒の形態で、又は水性若しくは非水性の液体中の溶液若しくは懸濁液として、又は水中油型若しくは油中水型液体エマルションとして、又はエリキシル剤若しくはシロップとして、又はトローチ(ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアのような不活性基剤を用いる)として及び/又はマウスウォッシュなどとしての形態であり得、各々所定量の本発明の化合物を活性成分として含有する。組成物又は化合物はまた、ボーラス、舐剤又はペーストとして投与してもよい。
【0238】
経口投与用の固体投与形態(カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、錠剤、丸薬、糖衣錠、粉末、顆粒など)を製造するためには、活性成分を、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウムのような1種以上の薬学的に許容される担体、及び/又は以下:(1)デンプン、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール、及び/又はケイ酸のような充填剤又は増量剤;(2)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及び/又はアカシアのような結合剤;(3)グリセロールのような保湿剤;(4)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はタピオカデンプン、アルギン酸、ある種のケイ酸塩、及び炭酸ナトリウムのような崩壊剤;(5)パラフィンのような溶解遅延剤(solution retarding agent);(6)第四級アンモニウム化合物のような吸収促進剤;(7)例えば、セチルアルコール及びグリセロールモノステアレートのような湿潤剤;(8)カオリン及びベントナイトクレーのような吸収剤;(9)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体のポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、及びこれらの混合物のような潤滑剤;(10)修飾及び未修飾シクロデキストリンのような錯化剤;並びに(11)着色剤のいずれかと混合する。カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、錠剤及び丸薬の場合、医薬組成物はまた緩衝剤も含み得る。類似の種類の固体組成物はまた、ラクトース又は乳糖のような賦形剤、並びに高分子量のポリエチレングリコールなどを用いてソフト及びハードゼラチンカプセル中に充填剤として使用し得る。
【0239】
錠剤は、任意に1種以上の補助成分と共に圧縮又は成型によって作成され得る。圧縮錠剤は、結合剤(例えば、ゼラチン又はヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(例えば、デンプングリコール酸ナトリウム又は架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム)、界面活性剤又は分散剤を用いて製造され得る。湿製錠剤は、不活性の液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物の適切な機械での成型によって作成され得る。
【0240】
糖衣錠、カプセル(スプリンクルカプセル及びゼラチンカプセルを含む)、丸薬及び顆粒のような、医薬組成物の錠剤、及び他の固体投与形態は、任意に、刻み目を付けてもよいし、又は調剤の技術分野で周知の腸溶性コーティング及びその他のコーティングのようなコーティング及びシェルを付けて製造してもよい。また、例えば、所望の放出プロファイルを提供するために様々な割合のヒドロキシプロピルメチルセルロース、又はポリマーマトリクス、リポソーム及び/又はマイクロスフェアを用いて、中の活性成分の持続放出又は制御放出を提供するように製剤化することもできる。また、例えば、細菌捕捉性フィルターに通してろ過することにより、又は使用直前に無菌水、又はある種の他の無菌の注射可能な媒質に溶解することができる無菌の固体組成物の形態の滅菌剤を組み込むことにより、滅菌することができる。これらの組成物はまた、任意に不透明化剤を含有していてもよく、また消化管の一定の部分で、任意に、遅らせて活性成分のみを、又は優先的に放出する組成であってもよい。使用することができる埋め込み用組成物の例にはポリマー性物質及びワックスがある。活性成分はまた、適切であれば1種以上の上記賦形剤と共にマイクロカプセル化された形態であることもできる。
【0241】
経口投与に有用な液体の投与形態には、薬学的に許容されるエマルション、再構成用の親液性物質、マイクロエマルション、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシル剤がある。活性成分に加えて、液体の投与形態は、例えば、水又はその他の溶媒、シクロデキストリン及びその誘導体のような、当技術分野で一般的な不活性の希釈剤、可溶化剤並びに乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ油、胚芽(例えば、小麦胚芽)油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、並びにこれらの混合物を含有し得る。
【0242】
不活性の希釈剤の外に、経口用組成物は、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味料、香味剤、着色剤、芳香剤及び保存剤のようなアジュバントも含むことができる。
【0243】
懸濁液は、活性化合物に加えて、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微晶質セルロース、メタ水酸化アルミニウム(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天及びトラガカント、並びにこれらの混合物のような懸濁剤を含有し得る。
【0244】
直腸、膣、又は尿道投与のための医薬組成物の製剤は座薬として呈示され得、これは、1種以上の活性な化合物を、例えばココアバター、ポリエチレングリコール、坐剤用ワックス又はサリチレートを含む1種以上の適切な非刺激性の賦形剤又は担体と混合することによって製造することができ、室温では固体であるが、体温では液体であり、したがって、直腸又は膣腔内で融解し、活性な化合物を放出する。
【0245】
口への投与用の医薬組成物の製剤はマウスウォッシュ、又は経口スプレー、又は口腔用軟膏として呈示され得る。
【0246】
或いは、又は加えて、組成物はカテーテル、ステント、ワイヤ、又はその他の管腔内装置を経由する送達用に製剤化することができる。かかる装置による送達は殊に、膀胱、尿道、尿管、直腸、又は腸への送達に有用であり得る。
【0247】
膣投与に適した製剤としては、当技術分野で適当であることが公知であるかかる担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡又はスプレー製剤もある。
【0248】
局所又は経皮投与用の投与形態には、粉末、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、溶液、パッチ及び吸入剤がある。活性な化合物は、無菌条件下で、薬学的に許容される担体、及び必要とされ得る任意の保存剤、緩衝剤、又は推進剤と混合され得る。
【0249】
軟膏、ペースト、クリーム及びゲルは、活性な化合物に加えて、動物及び植物脂肪、油、ワックス、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、ケイ酸、タルク及び酸化亜鉛、又はこれらの混合物のような賦形剤を含有し得る。
【0250】
粉末及びスプレーは、活性な化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム及びポリアミド粉末、又はこれらの物質の混合物のような賦形剤を含有することができる。スプレーはさらに、クロロフルオロ炭化水素並びにブタン及びプロパンのような揮発性の非置換炭化水素のような慣用の推進剤を含有することができる。
【0251】
経皮パッチは、本発明の化合物の身体への制御された送達を提供するという追加の利点を有する。かかる投与形態は、活性化合物を適正の媒質に溶解又は分散させることによって作成することができる。また、吸収促進剤を使用して、皮膚を横切る化合物の流れを増大させることもできる。かかる流れの速度は速度調節膜を設けるか又は化合物をポリマーマトリクス若しくはゲルに分散させることによって調節することができる。
【0252】
眼科用製剤、眼軟膏剤、粉末、溶液なども、本発明の範囲内であると考えられる。代表的な眼科用製剤は、参照によりその内容が本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2005/0080056号、同第2005/0059744号、同第2005/0031697号及び同第2005/004074号並びに米国特許第6,583,124号に記載されている。所望であれば、液体の眼科用製剤は涙液、房水若しくは硝子体液と類似の性質を有しているか、又はかかる流体と同等である。好ましい投与経路は局所投与である(例えば、点眼薬のような局所投与、又は移植片による投与)。
【0253】
語句「非経口投与」及び「非経口で投与する」は、本明細書で使用されるとき、腸及び局所投与以外の、通常注射による投与様式を意味し、制限なく、静脈内、筋肉内、動脈内、クモ膜下腔、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、髄腔内及び胸骨内注射並びに点滴を含む。非経口投与に適した医薬組成物は、1種以上の活性化合物を、1種以上の薬学的に許容される無菌の等張の水性若しくは非水性の溶液、分散液、懸濁液若しくはエマルション、又は使用直前に無菌の注射可能な溶液若しくは分散液に再構成され得る無菌の粉末と組み合わせて含み、また酸化防止剤、緩衝剤、静菌薬、製剤を意図された受容者の血液と等張にする溶質又は懸濁剤若しくは増粘剤含有してもよい。
【0254】
本発明の医薬組成物中に使用し得る適切な水性及び非水性の担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの適切な混合物、オリーブ油のような植物油、並びにオレイン酸エチルのような注射可能な有機のエステルがある。適正な流動性は、例えば、レシチンのようなコーティング材料の使用により、分散液の場合所要の粒径の維持により、また界面活性剤の使用により維持することができる。
【0255】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤のようなアジュバントを含有してもよい。微生物の活動の防止は様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール ソルビン酸などを含ませることによって確保することができる。また、糖類、塩化ナトリウムなどのような等張剤を組成物中に含ませることも望ましいであろう。さらに、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンのような吸収を遅らせる作用物質を含ませることによって、注射可能な薬学的形態の長期にわたる吸収を起こすことができる。
【0256】
幾つかの場合において、薬剤の効果を長引かせるために、皮下又は筋肉内注射からの薬剤の吸収を遅くするのが望ましい。これは、水溶解度が良くない結晶質又は非晶質の物質の液体懸濁液を使用することによって達成し得る。その際薬剤の吸収速度はその溶解速度に依存し、溶解速度自体は結晶の大きさ及び結晶形態に依存し得る。或いは、非経口で投与された薬剤形態の遅延吸収は薬剤を油ビヒクルに溶解又は懸濁することにより達成される。
【0257】
注射可能なデポー形態は、対象化合物がポリラクチド-ポリグリコリドのような生分解性のポリマー内にマイクロカプセル化されたマトリクスを形成することによって作成される。薬剤対ポリマーの比、及び使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬剤の放出速度を調節することができる。他の生分解性ポリマーの例としては、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)がある。デポー注射可能な製剤もまた、生体組織と適合性のリポソーム又はマイクロエマルション内に薬剤を封入することによって製造される。
【0258】
本発明の方法に使用される活性化合物は、それ自体で、又は、例えば、0.1~99.5%(より好ましくは、0.5~90%)の活性成分を薬学的に許容される担体と組み合わせて含有する医薬組成物として、与えることができる。
【0259】
導入の方法も再充電可能又は生分解性の装置により提供され得る。様々な持続放出ポリマー性装置が開発されており、近年タンパク性のバイオ医薬を含めて薬剤の制御された送達がインビボで試験されている。生分解性と非分解性の両方のポリマーを含めて多種多様な生体適合性のポリマー(ヒドロゲルを含む)を使用して、特定の標的部位で化合物の持続放出のための移植片を形成することができる。
【0260】
医薬組成物中の活性成分の実際の用量レベルは、患者に毒性でなく、特定の患者、組成物、及び投与様式に対する所望の治療反応を達成するのに有効な活性成分の量が得られるように変化し得る。
【0261】
選択される用量濃度は、使用する特定の化合物若しくは化合物の組合せ、又はそのエステル、塩若しくはアミドの活性、投与の経路、投与の時間、使用される特定の化合物の排泄の速度、治療の持続時間、使用する特定の化合物と組み合わせて使用される他の薬剤、化合物及び/又は物質、治療される患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康及び過去の病歴、並びに医学界で周知の類似の要因を含めて多種多様な要因に依存する。
【0262】
当技術分野で通常の技能を有する医師又は獣医は必要とされる医薬組成物の治療上有効量を容易に決定し処方することができる。例えば、医師又は獣医は、医薬組成物又は化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要とされるよりも低い濃度で開始し、所望の効果が達成されるまで用量を次第に増大することができよう。「治療上有効量」とは、所望の治療効果を引き出すのに充分な化合物の濃度を意味する。化合物の有効量は対象の体重、性別、年齢、及び病歴によって変化することが広く理解されている。有効量に影響を及ぼす他の要因としては、限定されることはないが、患者の状態の重症度、処置する疾患、化合物の安定性、及び、所望であれば、本発明の化合物と共に投与される別の種類の治療薬が挙げられる。より大きい総用量を作用物質の多数の投与により送達することができる。効能及び用量を決定する方法は当業者に公知である(Isselbacher et al. (1996) Harrison’s Principles of Internal Medicine 13 ed., 1814-1882、参照により本明細書に組み込まれる)。
【0263】
一般に、本発明の組成物及び方法に使用する活性化合物の適切な1日用量は、治療効果を生み出すのに有効な最低用量である化合物の量である。かかる有効な用量は一般に上記要因に依存する。
【0264】
所望であれば、活性化合物の有効な1日用量は、1日を通して適当な間隔で別々に投与される1、2、3、4、5、6以上のサブ用量として、任意に、単位投与形態で投与してもよい。本発明の幾つかの実施形態において、活性化合物は1日に二回又は三回投与され得る。好ましい実施形態において、活性化合物は1日に一回投与する。
【0265】
この治療を受ける患者は、それを必要とする霊長類、特にヒト、並びにウマ、ウシ、ブタ及びヒツジのような他の哺乳動物、並びに一般に家禽及びペットを始めとするあらゆる動物である。
【0266】
幾つかの実施形態において、本発明の化合物は、単独で使用してもよいし、又は別の種類の治療薬と併せて投与してもよい。本明細書で使用されるとき、語句「結合した投与」は、既に投与された治療用化合物が体内でまだ有効なうちに第2の化合物が投与されるような2種以上の異なる治療用化合物のあらゆる形態の投与を意味する(例えば、2つの化合物が患者において同時に有効であり、2つの化合物の相乗効果を含み得る)。例えば、異なる治療用化合物を同一の製剤又は別個の製剤として、同時に又は逐次投与することができる。幾つかの実施形態において、異なる治療用化合物は互いに1時間、12時間、24時間、36時間、48時間、72時間、又は1週以内に投与することができる。こうして、かかる治療を受ける個体は異なる治療用化合物の組み合わせた効果の利益を得ることができる。
【0267】
幾つかの実施形態において、本発明の化合物と1種以上の追加の治療薬(例えば、1種以上の追加の化学療法剤)との結合した投与は、本発明の化合物(例えば、式I、Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、又はIhの化合物)又は1種以上の追加の治療薬の各々個々の投与と比べて改良された効能を提供する。幾つかのかかる実施形態において、結合した投与は相加効果を提供し、ここで相加効果は本発明の化合物及び1種以上の追加の治療薬の個々の投与の各々の効果の総和を意味する。
【0268】
本発明は、本発明の化合物の薬学的に許容される塩の、本発明の組成物及び方法における使用を包含する。用語「薬学的に許容される塩」は、本明細書で使用されるとき、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸、マレイン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、グリコール酸、サリチル酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、マロン酸、トリフルオロ酢酸、トリクロロ酢酸、ナフタレン-2-スルホン酸、シュウ酸、マンデル酸及びその他の酸を始めとする無機又は有機の酸から誘導される塩を包含する。薬学的に許容される塩形態は、その塩を構成する分子の比が1:1ではない形態を包含することができる。例えば、塩は、式I、Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、又はIhの化合物の1分子当たり2つの塩酸分子のように、塩基1分子当たり1つより多くの無機又は有機酸分子を含んでいてもよい。もう1つ別の例として、塩は、1分子の酒石酸当たり2分子の式I、Ia、Ib、Ic、Id、Ie、If、Ig、又はIhの化合物のように、1分子の塩基当たり1つ未満の無機又は有機酸分子を含んでいてもよい。
【0269】
さらなる実施形態において、本発明の考えられる塩としては、限定されることはないが、アルキル、ジアルキル、トリアルキル又はテトラ-アルキルアンモニウム塩がある。幾つかの実施形態において、本発明の考えられる塩として、限定されることはないが、L-アルギニン、ベネタミン(benenthamine)、ベンザチン、ベタイン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2-(ジエチルアミノ)エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、ヒドラバミン、1H-イミダゾール、リチウム、L-リジン、マグネシウム、4-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、ピペラジン、カリウム、1-(2-ヒドロキシエチル)ピロリジン、ナトリウム、トリエタノールアミン、トロメタミン、及び亜鉛塩がある。幾つかの実施形態において、本発明の考えられる塩として、限定されることはないが、Na、Ca、K、Mg、Zn又はその他の金属塩がある。
【0270】
薬学的に許容される酸付加塩はまた、水、メタノール、エタノール、ジメチルホルムアミドなどとのような様々な溶媒和物として存在することもできる。かかる溶媒和物の混合物も製造することができる。かかる溶媒和物の起源は、製造又は結晶化の溶媒に固有であるか、又はかかる溶媒に付随的である結晶化の溶媒に由来し得る。
【0271】
湿潤剤、乳化剤及び潤滑剤、例えばラウリル硫酸ナトリウム及びステアリン酸マグネシウム、並びに着色剤、離型剤、コーティング剤、甘味料、香味剤及び芳香剤、保存剤及び酸化防止剤も組成物中に存在することができる。
【0272】
薬学的に許容される酸化防止剤の例としては、(1)アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなどのような水溶性酸化防止剤;(2)パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなどのような油溶性酸化防止剤;並びに(3)クエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などのような金属-キレート剤がある。
【0273】
本発明を一般的に記載したが、単に本発明の幾つかの局面及び実施形態の説明の目的のものであって、本発明を限定する意図はない以下の実施例を参照することによってより容易に理解されよう。
【実施例】
【0274】
[実施例1]合成方法
下記スキーム及びそれに続く実験手順は、本発明に包含される実施例を調製するのに使用することができる一般的な方法を説明する。方法の変形が所望の塩形態に応じて好ましいことがある。例えば、塩酸塩が所望であれば、中間体8をパラジウム炭素の存在下で水素ガスにより処理して中間体のアミノ酸9を得ることができる。続いて水性塩酸で処理すると標的とするアルギナーゼ阻害剤10が塩酸塩として得られる。
【0275】
遊離塩基が所望であれば、変更された手順で中間体8を使用することができる。ここでは、トリフルオロ酢酸で処理し、続いてイソブチルボロン酸で処理すると中間体アミン12が得られる。それに続くアジドの還元及びパラジウム炭素の存在下で水素ガスを用いるベンジルエステルの脱保護により、標的とするアルギナーゼ阻害剤13が遊離塩基として得られる。これらの方法の詳細な説明は以下に挙げる。
【0276】
(3R,4S)-3-アミノ-1-((S)-2-アミノプロパノイル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸二塩酸塩(10)の合成
【0277】
【0278】
ステップ1:tert-ブチル-trans-3-アリル-4-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキシレート(2、ラセミ体)の合成:
【0279】
【化32】
アリルマグネシウムブロミド(1.037mL、713mmol、ジエチルエーテル中0.69M)を0℃に冷却し、無水ジエチルエーテル(324mL、1M)中tert-ブチル6-オキサ-3-アザビシクロ[3.1.0]ヘキサン-3-カルボキシレート(60g、323.9mmol)で注意深く処理した。添加が完了した後、反応混合物を15min撹拌し、飽和水性塩化アンモニウム(500mL)でゆっくりクエンチし、ジエチルエーテル(2×400mL)で抽出し、MgSO
4上で脱水し、ろ過し、濃縮した。フラッシュカラムクロマトグラフィー(へプタン中20-40%酢酸エチル)による精製により、tert-ブチル-trans-3-アリル-4-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキシレート(2、64.33g、87%収率)を淡黄色の油として得た。
1H-NMR(CDCl
3、400MHz):δ
H:5.80(1H、m)、5.06(2H、m)、4.07(1H、m)、3.57(2H、m)、3.22(1H、m)、3.08(1H、m)、2.26-2.10(2H、m)及び1.45(9H、s)。
【0280】
ステップ2:tert-ブチル-3-アリル-4-オキソピロリジン-1-カルボキシレート(3、ラセミ体)の合成:
【0281】
【化33】
乾燥窒素雰囲気下でジクロロメタン(750mL、0.35M)中のtert-ブチル-trans-3-アリル-4-ヒドロキシピロリジン-1-カルボキシレート(2、60g、264mmol)及びジイソプロピルエチルアミン(132.2mL、799.8mmol)の氷冷溶液を、反応混合物を10℃未満に保つ速度で無水DMSO(750mL)中の三酸化イオウピリジン複合体(94.95g、596.6mmol)の溶液を滴下して処理した。添加が完了したのち、混合物を3℃で15min撹拌し、水(380mL)でクエンチし、酢酸エチル(500mL、次いで2×300mL)で抽出した。合わせた有機溶液を水(200mL)で二回、飽和水性塩化ナトリウム(200mL)で一回洗浄し、脱水し(MgSO
4)、濃縮した。得られた粗製の油を105℃(0.4mmHg)で蒸留してtert-ブチル3-アリル-4-オキソピロリジン-1-カルボキシレート(3、58g、83%収率)を無色の油として得た。
1H-NMR(CDCl
3、400MHz):δ
H:5.74(1H、m)、5.09(2H、m)、4.02(1H、m)、3.88(1H、d、J=19.4Hz)、3.68(1H、d、J=19.4Hz)、3.31(1H、dd、J=9.4、8.3Hz)、2.65(1H、m)、2.54(1H、m)、2.18(1H、m)及び1.45(9H、s)。
【0282】
ステップ3:trans-4-アリル-3-アジド-1-(tert-ブトキシカルボニル)ピロリジン-3-カルボン酸(4、ラセミ体)の合成
【0283】
【化34】
クロロホルム(26.86mL、333mmol)及びTMS-Cl(32.86mL、257.1mmol)の無水THF(300mL)中の溶液を-78℃に冷却した。10min撹拌した後、LHMDS(THF中1M、249mL、249mmol)を、温度が-60℃未満のままでいるような速度で加えた(およそ30min)。-60~-70℃でさらに30min撹拌した(反応混合物が曇って来る)後、溶液を-20℃に暖め(反応混合物が澄んでくる)、内部の反応温度が-20℃未満のままでいるような割合で、DMF(90mL)中のtert-ブチル-3-アリル-4-オキソピロリジン-1-カルボキシレート(3、30g、133.2mmol)及びDMF(90mL)中の酢酸テトラブチルアンモニウム(3.69g、12.24mmol)により処理した(反応混合物が濁って来る)。添加が完了した後、反応混合物を撹拌しながらケトン出発材料が消費されるまで(TLCによる)室温に暖め、次いで飽和水性NH
4Cl中に注ぎ入れ、EtOAc(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和水性NH
4Cl及び飽和水性NaCl(2×80mL)で連続して洗浄し、MgSO
4上で脱水し、ろ過し、濃縮した。
【0284】
窒素下で、粗製のTMSで保護された中間体を脱水THF(300mL)に溶解し、0℃に冷却し、酢酸(7.5mL、130.9mmol)及びTBAF(THF中1M、133.2mL、133.2mmol)を滴下して注意深く処理した。添加が完了した後、反応をさらに10min0℃で撹拌し、次いで飽和水性NaHCO3中に注ぎ入れ、EtOAc(3×100mL)で抽出した。合わせた有機層を飽和水性NaClで洗浄し、MgSO4上で脱水し、ろ過し、濃縮して粗製のアルコール中間体を得た。
【0285】
粗製のアルコールをジオキサン(200mL)に溶解し、0℃に冷却し、水(200mL)中のアジ化ナトリウム(14.04g、399.5mmol)及びNaOH(15.98g、399.5mmol)の予め冷却した(0℃)溶液を滴下して処理した。得られた反応混合物を撹拌しながら一晩放置して室温に暖めた後、飽和水性NH4Clでクエンチし、EtOAc(500mL)で抽出した。水層を分離し、EtOAc(2×300mL)で抽出した。合わせた有機層を水及び飽和水性NaClで洗浄し、MgSO4上で脱水し、ろ過し、濃縮して粗製のtrans-4-アリル-3-アジド-1-(tert-ブトキシカルボニル)ピロリジン-3-カルボン酸(4、粗製45g)を得、これをさらに精製することなく用いた。1H-NMR(CDCl3、400MHz):δH:5.80(1H、m)、5.06(2H、m)、4.05(1H、dd、J=9.9、4.9Hz)、3.59(2H、m)、3.22(1H、dd、J=11.6、4.4Hz)、3.08(1H、dd、J=11.0、5.2Hz)、2.24-2.04(2H、m)、1.65(1H、br s、OH)及び1.45(9H、s)。
【0286】
ステップ4:trans-3-ベンジル-1-(tert-ブチル)-4-アリル-3-アジドピロリジン-1,3-ジカルボキシレートの合成
【0287】
【化35】
粗製のtrans-4-アリル-3-アジド-1-(tert-ブトキシカルボニル)ピロリジン-3-カルボン酸(4、39.5g、133mmol-先のステップからの100%の収率を仮定して計算した量)及びK
2CO
3(92.04g、666mmol)のアセトニトリル(317mL)中の溶液を0℃に冷却し、臭化ベンジル(17.52mL、146.5mmol)で処理した。一晩室温で撹拌した後溶液を濃縮し、EtOAc(600mL)に溶解し、飽和水性NaClで洗浄し、MgSO
4上で脱水し、ろ過し、濃縮した。シリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン中10~30%EtOAc)による精製で、trans-3-ベンジル-1-(tert-ブチル)-4-アリル-3-アジドピロリジン-1,3-ジカルボキシレートを黄色の液体(5、40g、78%収率)として得た。
【0288】
生成物を、溶離液としてイソプロピルアルコール及びヘキサン(2:98)を用いたChiral Technologies Chiralpak ADHカラムを用いてそのエナンチオマーに分離した。同じ溶離液及び流量1.0mL/min及びUV検出(210nm)を用いた分析用Chiralpak ADHカラム(4.6×250mm)を用いた、分離したエナンチオマーの分析により、保持時間13.5minの所望のエナンチオマー(3-ベンジル-1-(tert-ブチル)(3R,4S)-4-アリル-3-アジドピロリジン-1,3-ジカルボキシレート、5a)及び10.3minの所望でないエナンチオマー(3-ベンジル-1-(tert-ブチル)(3S,4R)-4-アリル-3-アジドピロリジン-1,3-ジカルボキシレート、5b)を得た。各々のエナンチオマー過剰率はおよそ98%であった。1H-NMR(CDCl3、400MHz):δH:7.37(5H、s)、5.62(1H、m)、5.25(2H、m)、5.00(2H、m)、3.88(1H、dd、J=37.2、12.0Hz)、3.58(1H、ddd、J=37.2、11.0、7.0Hz)、3.42(1H、dd、J=21.4、12.0Hz)、3.28(1H、ddd、J=28.3、11.0、5.4Hz)、2.41(1H、m)、2.11(1H、m)、1.80(1H、m)及び1.44(9H、s)。
【0289】
ステップ5:(3R,4S)-3-ベンジル1-tert-ブチル3-アジド-4-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)プロピル)ピロリジン-1,3-ジカルボキシレート(6)の合成
【0290】
【化36】
3-ベンジル-1-(tert-ブチル)(3R,4S)-4-アリル-3-アジドピロリジン-1,3-ジカルボキシレート(5a、16.4g、42.4mmol)の無水塩化メチレン(130mL)中の撹拌した溶液を、窒素雰囲気下、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ジイリジウム(I)ジクロリド(0.75g、1.12mmol)及び1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(0.894g、2.24mmol)で処理し、反応を30分間室温で撹拌した後-25℃に冷却した。4,4,5,5-テトラメチル[1,3,2]ジオキサボロラン(9.83mL、67.75mmol)を滴下して加えた後、反応を室温までゆっくり暖め、20時間撹拌した。水(60mL)を加え、反応を10分間撹拌し、減圧下で塩化メチレンを除去した。残りの水性相を酢酸エチル(3×100mL)で抽出した。合わせた有機相を塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウム上で脱水し、ろ過し、真空中で濃縮した。残りの固体をシリカゲルの短いパッドに通し、ヘキサン中15%~30%酢酸エチルで溶離して、(3R,4S)-3-ベンジル1-tert-ブチル3-アジド-4-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)プロピル)ピロリジン-1,3-ジカルボキシレート(6、12.5g、57%)を得た。
1H-NMR(CDCl
3、400MHz):δ
H:7.35(5H、m)、5.23(2H、m)、3.85(1H、dd、J=39.3、11.8Hz)、3.60(1H、m)、3.37(1H、dd、J=24.3、11.8Hz)、3.25(1H、ddd、J=40、10.6、6.6Hz)、2.33(1H、m)、1.43(9H、s)、1.39-1.26(3H、m)、1.21(12H、s)、1.07(1H、m)及び0.68(2H、m)。
【0291】
ステップ6:(3R,4S)-3-ベンジル-3-アジド-4-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)プロピル)ピロリジン-3-カルボキシレート、トリフルオロ酢酸塩(7)の合成
【0292】
【化37】
(3R,4S)-3-ベンジル1-tert-ブチル3-アジド-4-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)プロピル)ピロリジン-1,3-ジカルボキシレート(6、10.2g、19.8mmol)の溶液を無水塩化メチレン(160mL)に溶解し、0℃に冷却し、トリフルオロ酢酸(40mL)で処理した。次いで、反応混合物を放置して暖め、室温で4時間撹拌した後減圧下で濃縮して粘性の油を得た。得られた油を脱水トルエン(3×100mL)と共に共沸混合物を形成させて残りのトリフルオロ酢酸を除去した後高真空下で乾燥して(3R,4S)-3-ベンジル-3-アジド-4-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)プロピル)ピロリジン-3-カルボキシレート、トリフルオロ酢酸塩(7)を極めて粘性の油(10.56g)として得た。これはゆっくりガラスになる。
1H-NMR(CDCl
3、400MHz):δ
H:9.7(1H、br m(exch)、NH)、7.55(1H、br s(exch)、NH)、7.38(5H、m)、5.31(1H、d、J=11.7Hz)、5.26(1H、d、J=11.7Hz)、3.77(1H、d、J=12.5Hz)、3.65(1H、dd、J=11.8、7.8Hz)、3.32(1H、d、J=12.4Hz)、3.18(1H、m)、2.54(1H、m)、1.45-1.26(3H、m)、1.22(12H、s)、1.02(1H、m)及び0.63(2H、t、J=7.4Hz)。
【0293】
ステップ7:(3R,4S)-3-ベンジル-3-アジド-1-((S)-2-((tert-ブトキシルカルボニル)アミノ)プロパノイル(propanyoyl))-4-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)プロピル)ピロリジン-3-カルボキシレート(8)の合成
【0294】
【化38】
(3R,4S)-3-ベンジル-3-アジド-4-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)プロピル)ピロリジン-3-カルボキシレート、トリフルオロ酢酸塩(7、10.56g、19.8mmol)の無水塩化メチレン(150mL)中の撹拌した溶液に、DMAP(50mg、触媒)及びHOBt(50mg、触媒)並びにN-(tert-ブトキシカルボニル)-L-アラニン(5.62g、29.7mmol)を加えた。反応を乾燥窒素の雰囲気下で0℃に冷却した後EDCI(5.69g、29.7mmol)及びトリエチルアミン(8.3mL、59.4mmol)で処理した。反応を0℃で1時間撹拌した後放置して室温まで暖め、16時間この温度で撹拌した。反応を水(100mL)中に注ぎ入れ、20分間撹拌した後、相を分離した。水性相を3×50mLの塩化メチレンで抽出した。合わせた有機相を水、1N塩酸及び塩水で洗浄し、次いで無水硫酸マグネシウム上で脱水し、ろ過し、真空中で濃縮した。残りの油をシリカゲルパッドに通し、ヘキサン中5%~50%酢酸エチルで溶離して、室温NMRにより回転異性体の1:1混合物として見られる(3R,4S)-3-ベンジル-3-アジド-1-((S)-2-((tert-ブトキシルカルボニル)アミノ)プロパノイル)-4-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)プロピル)ピロリジン-3-カルボキシレート(8)を無色の油として得た(9.50g、82%)。
1H-NMR(CDCl
3、400MHz):δ
H:7.56(5H、m)、5.40(0.5H、d、J=8.0Hz、NH)及び5.34(0.5H、d、J=8.0Hz、NH)、5.29-5.19(2H、m)、4.39(0.5H、dq、J=7.2、7.0Hz)及び4.30(0.5H、dq、J=7.2、7.0Hz)、4.06(0.5H、d、J=13.0Hz)及び3.89(0.5H、d、J=11.1Hz)、3.81(0.5H、dd、J=12.0、7.3Hz)及び3.69(0.5H、J=10.0、7.0Hz)、3.61(0.5H、d、J=11.1Hz)及び3.47(0.5H、d、J=13.0Hz)、3.54(0.5H、dd、J=10.0、6.0Hz)及び3.33(0.5H、dd、J=12.0、6.3Hz)、2.41(1H、m)、1.43(4.5H、s)及び1.42(4.5H、s)、1.40-1.28(3H、m)、1.31(1.5H、d、J=6.8Hz)及び1.20(1.5H、J=6.8Hz)、1.22(12H、s)、1.04(1H、m)及び0.67(2H、m)。
【0295】
ステップ8:(3R,4S)-3-アミノ-1-((S)-2-((tert-ブトキシルカルボニル)アミノ)プロパノイル)-4-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)プロピル)ピロリジン-3-カルボン酸(9)の合成
【0296】
【化39】
(3R,4S)-3-ベンジル-3-アジド-1-((S)-2-((tert-ブトキシルカルボニル)アミノ)プロパノイル)-4-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)プロピル)ピロリジン-3-カルボキシレート(8、9.48g、16.2mmol)を酢酸エチル及びエタノールの1:1混合物(120mL)に溶解した。10%パラジウム炭素(500mg)を加え、溶液を真空下でガスを抜き、水素(水素バルーン)でパージした。このパージ手順を三回繰り返した後反応を水素雰囲気下で5時間撹拌した。反応を真空下に戻して残りの水素を除去した後4×30mLのエタノール洗浄によりセライトパッドに通してろ過した。溶液を真空下で~20mLに濃縮した後4μシリンジフィルターに通してろ過してパラジウムの痕跡を除去した。溶液を真空下で濃縮乾固し、さらに精製することなく使用した。LC-MS:ESI+(IPA/水中0.1%HCOOH):C
22H
40BN
3O
7に対するm/z:期待値469.3、観察値492.3(M+Na)
+、470.3(M+H)
+、414.2(M+H-iBu)
+、370.3(M+H-Boc)
+、ESI-:468.0(M-H)
-。
【0297】
ステップ9:(3R,4S)-3-アミノ-1-((S)-2-アミノプロパノイル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸二塩酸塩(10)の合成
【0298】
【化40】
(3R,4S)-3-アミノ-1-((S)-2-((tert-ブトキシルカルボニル)アミノ)プロパノイル)-4-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)プロピル)ピロリジン-3-カルボン酸(先のステップからのもの)の4N塩酸(50mL)中懸濁液を50℃で16時間撹拌した後室温に冷却した。反応をさらに50mLの水で希釈した後塩化メチレンで五回洗浄した。水浴を50℃以下に保って、水性相を減圧下で濃縮乾固した。得られた油を水(30mL)に溶解し、濃縮した。この手順をさらに30mLのアリコートの水で二回繰り返した後真空下で乾燥して淡黄色の泡を得た。
【0299】
Dowex 550A-UPW水酸化物樹脂(75g)を水、メタノール(2×)及び水で洗浄した後真空乾燥した。加水分解反応からの泡残渣を水(100mL)に溶解し、洗浄したDowex樹脂(75g)で処理し、水溶液の試料がニンヒドリン染色で陽性と試験されなくなるまで60min撹拌した。混合物をろ過し、樹脂を水、メタノール、塩化メチレン、メタノール、塩化メチレン、メタノール、最後に水で引き続き洗浄し、簡潔に真空乾燥した。
【0300】
次いで、樹脂を2N塩酸(50mL)と共に15min撹拌し、水性液をフリットロート/フィルターフラスコ中にデカントし、保存した。これを三回2N塩酸(3×50mL)で繰り返し、最後の樹脂撹拌物をろ過し、水(20mL)で濯いだ。合わせた水性のろ液を真空中で濃縮し、残りの泡を三回水(20mL)に溶解し濃縮して、残りのHClを除去した。
【0301】
次いで、オフホワイト色の泡状固体を30mLの水に溶解し、-78℃で凍結し、凍結乾燥乾固して(36時間)、生成物の(3R,4S)-3-アミノ-1-((S)-2-アミノプロパノイル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸二塩酸塩(10)をその二塩酸塩として、オフホワイト色の粉末として得た(4.90g、2つのステップで84%)。最終の化合物は室温で回転異性体の3:2混合物として得られた。1H-NMR(D2O、400MHz):δH:4.16-4.04(1.6H、m)、3.95(0.4H、m)、3.85(0.6H、m)、3.68(0.4H、m)、3.47-3.35(1.6H、m)、3.18(0.4H、m)、2.58(0.6H、m)及び2.47(0.4H、m)、1.52(1H、m)、1.38(1.2H、d、J=7.3Hz)及び1.34(1.8H、d、J=7.0Hz)、1.32-1.09(3H、m)及び0.64(2H、m)。LC-MS:ESI+(IPA/水中0.1%HCOOH):C11H22BN3O5に対するm/z:期待値287.2、観察値288.2(M+H)+、270.2(M+H-H2O)+、252.2(M+H-2H2O)+、ESI-:268.2(M-H-H2O)-。
【0302】
(3R,4S)-3-アミノ-1-((S)-2-アミノプロパノイル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸(13)の合成
【0303】
【0304】
ステップ1:(3R,4S)-ベンジル-1-((S)-2-アミノプロパノイル)-3-アジド-4-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)プロピル)ピロリジン-3-カルボキシレートTFA塩(11)の合成
(3R,4S)-ベンジル-3-アジド-1-((S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)プロパノイル)-4-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)プロピル)ピロリジン-3-カルボキシレート(30.04g、51.31mmol)の無水ジクロロメタン(250mL)中溶液を0℃に冷却した後、TFA(50mL)のジクロロメタン(50mL)溶液を10分かけて滴下して加えた。溶液を放置して室温に暖めた後、この温度で3時間、TLCにより出発材料の完全な消費が示されるまで撹拌した。反応混合物を真空中で濃縮して淡黄色の油を得た。この油をトルエン(100mL)に溶解し、濃縮した。共沸法を三回繰り返して、生成物(11)をTFA塩として(30.85g)、淡黄色の油として得た。1H-NMR(400MHz、D4-MeOH) δ:7.39(4H、m)、7.15(1H、m)、5.29(2H、dd、J=14、12Hz)、4.25-3.20(5H、m)、2.51(1H、m)、1.50-1.25(6H、1.47(1.5H、d、J=7.0Hz)及び1.31(1.5H、d、J=6.9Hz(アラニン回転異性体))を含む)、1.20(12H、s))、1.07(1H、m)並びに0.65(2H、m)。LCMS(ESI+ve):C24H36BN5O5 m/z 計算値485.3、測定値486.2(MH+)。
【0305】
ステップ2:(3-((3S,4R)-1-((S)-2-アミノプロパノイル)-4-アジド-4-((ベンジルオキシ)カルボニル)ピロリジン-3-イル)プロピル)ボロン酸塩酸塩の合成
【0306】
【化42】
(3R,4S)-ベンジル-1-((S)-2-アミノプロパノイル)-3-アジド-4-(3-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)プロピル)ピロリジン-3-カルボキシレート(30.76g、51.31mmol)のTFA塩を、メタノール(200mL)及びヘキサン(400mL)の二相混合物に溶解した。イソブチルボロン酸(18.31g、179.6mmol)、次いで2N塩酸(50.85mL、101.7mmol)を加えた。反応混合物を室温で16時間激しく撹拌した。メタノール相を分離し、ヘキサン(5×100mL)で洗浄した後真空中で濃縮してボロン酸を塩酸塩として、オフホワイト色の泡として得た。
1H-NMR(400MHz、D
2O) δ:7.48-7.42(5H、m)、5.31(2H、m)、4.22(1H、dd、J=13、6.5Hz)、3.95-3.10(4H、m)、2.71-2.51(1H、m)、1.40-1.25(3H、m)、1.25-0.98(4H、m:1.20(1.5H、d、J=6.9Hz)及び1.07(1.5H、d、J=6.9Hz(アラニン回転異性体))を含む)及び0.69(2H、m)。LCMS(ESI+ve):C
18H
26BN
5O
5 m/z 計算値403.2、測定値404.2(MH
+)。
【0307】
ステップ3:(3-((3S,4R)-1-((S)-2-アミノプロパノイル)-4-アジド-4-((ベンジルオキシ)カルボニル)ピロリジン-3-イル)プロピル)ボロン酸(12)の合成
【0308】
【化43】
先のステップからの(3-((3S,4R)-1-((S)-2-アミノプロパノイル)-4-アジド-4-((ベンジルオキシ)カルボニル)ピロリジン-3-イル)プロピル)ボロン酸の塩酸塩を、30mLの水に溶解した後、固体の炭酸カリウムの慎重な添加によって溶液のpHをpH9に調節した。得られた溶液を固体の塩化ナトリウムの添加で飽和させた後ジクロロメタン(5×100mL)で抽出した。合わせたジクロロメタン相を硫酸マグネシウム上で脱水し、ろ過し、真空中で濃縮して、生成物(12)をその遊離塩基として、白色の泡の固体(19.4g、48.11mmol、94%)として得た。
1H-NMR(400MHz、D4-MeOH) δ:7.44-7.36(5H、m)、5.31(1H、d、J=1.8Hz)、5.27(1H、d、J=1.8Hz)、4.05(1H、dd、J=12、5Hz)、3.80(1H、m)、3.69-3.55(2H、m)、3.45-3.30(1H、m)、2.51(1H、m)、1.40-1.05(7H、m、1.22(1.5H、d、J=6.8Hz)及び1.07(1.5H、d、J=6.8Hz(アラニン回転異性体))を含む)並びに0.63(2H、m)。LCMS(ESI +ve):C
18H
26BN
5O
5 m/z 計算値403.2、測定値404.7(MH
+)。
【0309】
ステップ4:(3R,4S)-3-アミノ-1-((S)-2-アミノプロパノイル)-4-(3-ボロノプロピル)-イル)ピロリジン-3-カルボキシレート(13)の合成
【0310】
【化44】
アジドベンジルエステル(3-((3S,4R)-1-((S)-2-アミノプロパノイル)-4-アジド-4-((ベンジルオキシ)カルボニル)ピロリジン-3-イル)プロピル)ボロン酸(9.70g、24.06mmol)を水(300mL)と酢酸エチル(30mL)の混合物に懸濁し、激しく撹拌した。10%パラジウム炭素(2.6g、0.1当量)を加えた後、撹拌した混合物を軽い真空下で排気し、水素でフラッシュした。排気/フラッシュ手順を三回繰り返して空気を除去し、それを水素と交換した後、反応を水素バルーン下一晩室温で激しく撹拌し、この時点で、ろ過したアリコートのLCMS分析によって、アジド及びベンジルエステル基の完全な還元が示された。反応混合物を真空下に置き、水素を除去した後窒素でフラッシュし、セライトのパッドを通して(3回の水洗浄で)ろ過した後、溶液を真空中でおよそ50mLに濃縮した。得られた水溶液を4ミクロンのフィルターに通してろ過し(痕跡のPdを除去し)た後真空中で濃縮して標題化合物(13)を白色の粉末として得た(6.45g、93%)。
1H-NMR(400MHz、D
2O) δ:4.12(1H、m)、4.05(1H、m)、3.92(1H、m)、3.60-3.22(2H、m)、2.47-2.18(1H、m)、1.58-1.31(6H、m 1.46(3H、d、J=6.9Hz)を含む)、1.24-1.19(1H、m)及び0.79(2H、m)。LCMS(ESI+ve):C
11H
20BN
3O
5 m/z 計算値287.2、測定値269.9(MH
+-H
2O)、251.9(MH
+-2H
2O)及び(ESI-ve):C
11H
20BN
3O
5 m/z 計算値287.2、測定値267.7(M-H-H
2O)。
【0311】
(3R,4S)-3-アミノ-1-((S)-2-アミノ-3-メチルブタノイル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸二塩酸塩(14)
【0312】
【化45】
(3R,4S)-3-アミノ-1-((S)-2-アミノ-3-メチルブタノイル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸二塩酸塩は、7との反応におけるカルボン酸として(tert-ブトキシカルボニル)-L-バリンを使用したことを除いて、化合物10に対する手順で記載したのと類似の方法で調製した。最終的な化合物は室温で回転異性体の混合物として得られた。
1H-NMR(D
2O、400MHz):δ
H:4.10(1H、m)、3.96-3.87(2H、m)、3.42-3.36(1H、m)、3.07-2.91(1H、m)、2.55(0.7H、m)及び2.40(0.3H、m)、2.11(1H、m)、1.51(1H、m)、1.34-1.10(3H、m)、0.92(3H、d、J=6.9Hz)、0.87(3H、d、J=6.9Hz)、0.65(2H、m)。LC-MS:ESI+(IPA/水中0.1%HCOOH):C
11H
26BN
3O
5に対するm/z:期待値315.2、観察値326.3(M+H+HCOOH-H
2O)
+、298.3(M+H-H
2O)
+、280.3(M+H-2H
2O)
+、ESI-:296.2(M-H-H
2O)
-。
【0313】
(3R,4S)-3-アミノ-1-((S)-2-アミノ-3-ヒドロキシプロパノイル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸二塩酸塩(15)
【0314】
【化46】
(3R,4S)-3-アミノ-1-((S)-2-アミノ-3-ヒドロキシプロパノイル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸二塩酸塩は、7との反応におけるカルボン酸として(S)-3-(tert-ブトキシカルボニル)-2,2-ジメチルオキサゾリジン-4-カルボン酸を使用したことを除いて、化合物10に対する手順で記載したのと類似の方法で調製した。最終的な化合物は室温で回転異性体の2:1混合物として単離された。
1H-NMR(D
2O、400MHz):δ
H:4.21(1H、m)、4.11(1H、d、J=13.0Hz)、3.93(1H、dd、J=11.5、8.6Hz)、3.86-3.74(2H、m)、3.47(1H、m)、3.04-2.96(1H、m)、2.56(0.7H、m)及び2.44(0.3H、m)、1.51(1H、m)、1.29-1.12(3H、m)、0.64(2H、m)。LC-MS:ESI+(IPA/水中0.1%HCOOH):C
11H
22BN
3O
6に対するm/z:期待値303.16、観察値314.2(M+H+HCOOH-H
2O)
+、286.2(M+H-H
2O)
+、268.2(M+H-2H
2O)
+、ESI-:284.1(M-H-H
2O)
-。
【0315】
trans-3-アミノ-1-((S)-2-アミノ-3-(1H-イミダゾール-4-イル)プロパノイル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸三塩酸塩(16)
【0316】
【化47】
trans-3-アミノ-1-((S)-2-アミノ-3-(1H-イミダゾール-4-イル)プロパノイル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸三塩酸塩は、(tert-ブトキシカルボニル)-L-ヒスチジンをカルボン酸として使用し、ラセミ体5を5aの代わりに使用したことを除いて、化合物10に対する手順で記載したのと類似の方法で調製した。
1H-NMR(D
2O、400MHz):δ
H:8.57(1H、d、J=9.0Hz)、7.33(1H、d、J=16.9Hz)、4.20-3.70(3H、m)、3.51(1H、m)、3.37-3.24(3H、m)、2.58(1H、m)、1.50(1H、m)、1.39-1.11(3H、m)及び0.68(2H、m)。LC-MS:ESI+(IPA/水中0.1%HCOOH):C
14H
24BN
5O
5に対するm/z:期待値353.18、観察値354.41(M+H)
+、336.44(M+H-H
2O)
+、318.49(M+H-2H
2O)
+。
【0317】
(3R,4S)-3-アミノ-4-(3-ボロノプロピル)-1-グリシルピロリジン-3-カルボン酸(17)
【0318】
【化48】
(3R,4S)-3-アミノ-4-(3-ボロノプロピル)-1-グリシルピロリジン-3-カルボン酸は、7との反応におけるカルボン酸として(tert-ブトキシカルボニル)グリシンを使用したことを除いて、化合物13に対する手順で記載したのと類似の方法で調製した。最終的な化合物は室温で回転異性体の3:2混合物として単離された。
1H-NMR(D
2O、400MHz):δ
H:4.08-3.83(2H、m)、3.91(2H、d、J=4.6Hz)、3.63-3.53(1H、m)、3.40-3.22(1H、m)、2.57-2.37(1H、m)、1.61(1H、m)、1.50-1.35(2H、m)、1.25(1H、m)及び0.78(2H、m)。LC-MS:ESI+(IPA/水中0.1%HCOOH):C
10H
20BN
3O
5に対するm/z:期待値273.15、観察値256.2(M+H-H
2O)
+、238.2(M+H-2H
2O)
+;ESI-:254.2(M-H-H
2O)
-。
【0319】
(3R,4S)-3-アミノ-1-(2-アミノ-2-メチルプロパノイル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸(18)
【0320】
【化49】
(3R,4S)-3-アミノ-1-(2-アミノ-2-メチルプロパノイル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸は、7との反応におけるカルボン酸として2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-メチルプロパン酸を使用したことを除いて、化合物13に対する手順で記載したのと類似の方法で調製した。最終的な化合物は室温で回転異性体の2:1混合物として単離された。
1H-NMR(D
2O、400MHz):δ
H:4.38-3.88(2H、m)、3.72-3.63(1H、m)、3.40-3.08(1H、m)、2.75-2.52(1H、m)、1.71及び1.69(4H、s及び2H、s、CMe
2 2:1回転異性体)、1.64(1H、m)、1.55-1.41(2H、m)、1.31(1H、m)及び0.81(2H、m)。LC-MS:ESI+(IPA/水中0.1%HCOOH):C
12H
24BN
3O
5に対するm/z:期待値301.18、観察値284.0(M+H-H
2O)
+、266.0(M+H-2H
2O)
+、ESI-:281.8(M-H-H
2O)
-。
【0321】
(3R,4S)-3-アミノ-1-((S)-2-アミノブタノイル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸(19)
【0322】
【化50】
(3R,4S)-3-アミノ-1-((S)-2-アミノブタノイル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸は、7との反応におけるカルボン酸として(S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)ブタン酸を使用したことを除いて、化合物13に対する手順で記載したのと類似の方法で調製した。最終的な化合物は室温で回転異性体の2:1混合物として単離された。
1H-NMR(D
2O、400MHz):δ
H:4.07-3.87(3H、m)、3.62-3.27(2H、m)、2.45-2.17(1H、m)、1.80(2H、m)、1.58(1H、m)、1.50-1.33(2H、m)、1.21(1H、m)、0.99(3H、m)及び0.79(2H、m)。LC-MS:ESI+(IPA/水中0.1%HCOOH):C
12H
24BN
3O
5に対するm/z:期待値301.18、観察値284.2(M+H-H
2O)
+;ESI-:282.4(M-H-H
2O)
-。
【0323】
(3R,4S)-3-アミノ-1-((S)-2-アミノ-3,3-ジメチルブタノイル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸(20)
【0324】
【化51】
(3R,4S)-3-アミノ-1-((S)-2-アミノ-3,3-ジメチルブタノイル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸は、7との反応におけるカルボン酸として(S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-3,3-ジメチルブタン酸を使用したことを除いて、化合物13に対する手順で記載したのと類似の方法で調製した。最終的な化合物は室温で回転異性体の2:1混合物として単離された。
1H-NMR(D
2O、400MHz):δ
H 4.21-3.92(2H、m)、3.81[(0.67H、s)及び3.71(0.33H、s) 2:1回転異性体 CHN]、3.66-3.33(2H、m)、2.47-2.17(1H、m)、1.59(1H、m)、1.51-1.35(2H、m)、1.23(1H、m)、1.06及び1.04[(6H、s)及び(3H、s) tBu 2:1回転異性体)及び0.81(2H、m)。LC-MS:ESI+(IPA/水中0.1%HCOOH):C
14H
28BN
3O
5に対するm/z:期待値329.21、観察値312.4(M+H-H
2O)
+、294.4(M+H-2H
2O)
+、ESI-:310.4(M-H-H
2O)
-。
【0325】
(3R,4S)-3-アミノ-1-(1-アミノシクロプロパン-1-カルボニル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸(21)
【0326】
【化52】
(3R,4S)-3-アミノ-1-(1-アミノシクロプロパン-1-カルボニル)-4-(3-ボロノプロピル)ピロリジン-3-カルボン酸は、7との反応におけるカルボン酸として(S)-2-((tert-ブトキシカルボニル)アミノ)-2-シクロプロピル酢酸を使用したことを除いて、化合物13に対する手順で記載したのと類似の方法により調製した。最終的な化合物は室温で回転異性体の3:2混合物として単離された。
1H-NMR(D
2O、400MHz):δ
H:4.37-3.99(2H、m)、3.85-3.30(2H、m)、2.54-2.38(1H、m)、1.61(1H、m)、1.47-1.33(2H、m)、1.24(1H、m)、1.09(1H、m)、0.97(1H、m)、0.89(2H、m)及び0.81(2H、m)。LC-MS:ESI+(IPA/水中0.1%HCOOH):C
12H
22BN
3O
5に対するm/z:期待値299.17、観察値282.1(M+H-H
2O)
+、264.1(M+H-2H
2O)
+、ESI-:280.2(M-H-H
2O)
-。
【0327】
[実施例2]経口バイオアベイラビリティー研究
化合物投薬溶液を水中2.5及び5mg/mLで調製した。Charles River Laboratories(Hollister, California)の雌性のC57BL/6マウス(16-20g)を投薬前少なくとも3日間ケージに収容した。研究を通じてPicoLab 5053放射線照射齧歯類飼料を自由に摂らせた。化合物は、25又は50mg/kg(10mL/kg)での強制経口投与により適当な動物に一回投与した。25mg/kgの研究では投薬後30分及び1、2、4、8時間で、50mg/kgの研究では1時間で、血液試料を集めた(1時点に付き3匹の動物)。血液試料を湿った氷上に維持し、次いで10分間冷凍遠心機で遠心分離した。得られた血漿を分離し、ラベル付きポリプロピレンチューブに移し、-70℃以下に維持するように設定された冷凍室に分析まで凍結保存した。
【0328】
血漿試料をLC-MS系で分析した。50μLの血漿試料を、100ng/mLの内部標準を含有する0.1%TFAを含む100μLのアセトニトリル/水(80:20)と混合した。混合物をボルテックスし、遠心分離した。30μLの上清を、0.1%ギ酸を含む90μLの水を含有する96-ウェルプレートに移した。得られた溶液の20μLを、定量化のためのエレクトロスプレーイオン化源を備えたSCIEX QTRAP4000 LC/MS/MSに注入した。
【0329】
経口PKパラメーターは、Phoenix WinNonLin 6.3ソフトウェア(Pharsight, Mountain View, CA)を用いる濃度-時間データのノンコンパートメント解析によって計算した。濃度-時間曲線下の面積(AUC)は、最後の測定可能な濃度に対する投薬時間から計算された線形対数台形法(linear -up and log-down trapezoidal method)を用いて評価した。
【0330】
代表的な化合物に対するAUCを以下に示す。
【0331】
【化53】
プロリン、トリフルオロメチルフェニルアラニン、及びN-メチルフェニルアラニンから誘導された化合物と比較して、アラニン、バリン、及びセリン誘導体に対する経口曝露の方が好ましい。
【0332】
[実施例3]薬物動態研究
本発明の化合物の薬物動態を、マウスにおける単一の時点(1時間)での単一用量(50mg/kg)の投与後に研究した。血漿濃度は実施例2に記載したようにして決定した。代表的な化合物に対する結果を以下に示す。
【0333】
【0334】
[実施例4]化合物10の単剤抗-腫瘍活性
ルイス肺癌効能研究
雌性のC57.Bl/6マウス(n=40)の皮下に、PBSに懸濁した1×10
6個のルイス肺癌細胞を移植した。移植の翌日、マウスをn=10匹のマウスの4群にランダム化し、研究終了まで以下の経口投薬処置を1日二回受けさせた:1)ビヒクル(水);2)水中に製剤化した化合物10、50mg/kg;3)水中に製剤化した化合物10、100mg/kg;又は4)水中に製剤化した化合物10、200mg/kg。1週に三回デジタルキャリパーで腫瘍を測定し、式:腫瘍体積(mm
3)=(a×b
2/2)を用いて腫瘍体積を計算した。式中、「b」は最小の直径であり、「a」は最大の垂直直径である。
***P-値<0.001、
****P-値<0.0001(両側T-検定)。結果を
図1に示す。
【0335】
マディソン109効能研究
雌性のbalb/cマウス(n=20)の皮下に、PBSに懸濁した5×10
4個のマディソン109ネズミ肺癌細胞を移植した。移植の翌日、マウスをn=10匹のマウスの2群にランダム化し、研究終了まで1日二回次の経口投薬処置を受けさせた:1)ビヒクル(水);又は2)水中に製剤化した化合物10、100mg/kg。1週に三回デジタルキャリパーで腫瘍を測定し、式:腫瘍体積(mm
3)=(a×b
2/2)を用いて腫瘍体積を計算した。式中、「b」は最小の直径であり、「a」は最大の垂直直径である。
*P-値<0.05(両側T-検定)。結果を
図2に示す。
【0336】
B16効能研究
雌性のC57.Bl/6マウス(n=20)の皮下に、PBSに懸濁した2×10
6個のB16F10ネズミメラノーマ細胞を移植した。移植の翌日、マウスをn=10匹のマウスの2群にランダム化し、研究終了まで次の経口投薬処置を1日二回受けさせた:1)ビヒクル(水);又は2)水中に製剤化した化合物10、100mg/kg。1週に三回デジタルキャリパーを用いて腫瘍を測定し、式:腫瘍体積(mm
3)=(a×b
2/2)を用いて腫瘍体積を計算した。式中、「b」は最小の直径であり、「a」は最大の垂直直径である。
***P-値<0.001(両側T-検定)。結果を
図3に示す。
【0337】
[実施例5]4T1併用療法研究
雌性のbalb/cマウス(n=40)の乳房脂肪体に、PBSに懸濁した1×10
5個の4T1ネズミ乳癌細胞を移植した。移植翌日、マウスをn=10匹のマウスの4群にランダム化し、各々次の処置を受けさせた:1)研究終了まで1日二回経口で投与したビヒクル(水);2)100mg/kgで水中に製剤化し、研究終了まで1日二回経口で投薬した化合物10;3)移植後3、6、及び9日に5mg/kgでIP投薬した抗-PD-1(クローンRMPI-14)と、投薬後2、5、及び8日に5mg/kgでIP投薬した抗-CTLA-4(クローン9H10)との組合せ;又は4)それぞれのレジメンの化合物10と抗-PD-1と抗-CTLA-4との三重の組合せ。1週に三回デジタルキャリパーで腫瘍を測定し、式:腫瘍体積(mm
3)=(a×b
2/2)によって腫瘍体積を計算した。式中、「b」は最小の直径であり、「a」は最大の垂直直径である。
***P-値<0.001(両側T-検定)。25日目に、マウスを犠牲にし、肺を墨汁(PBS中25%)で潅流した後、摘出し、10:1:0.5の比の100%エタノール:10%中性緩衝ホルマリン:酢酸混合物に固定した。肺転移の数を手で盲検的に数えた。結果を
図4に示す。
【0338】
参照による組込み
本明細書中で述べた全ての刊行物及び特許は、参照により組み込まれると具体的かつ個別に示されているかのように、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。矛盾がある場合、本明細書中の定義を含めて本出願が支配する。
【0339】
等価物
本発明の具体的な実施形態について説明して来たが、以上の詳細は例示であり、制限するものではない。本明細書及び以下の特許請求の範囲を検討することにより、本発明の多くの変形が当業者には明らかとなろう。本発明の全範囲は、等価物、及び本明細書、並びにかかる変形の全範囲と共に特許請求の範囲を参照することにより決定されるべきである。