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特許7032608マイクログリッドにおけるレジリエンスの判断
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-02-28
(45)【発行日】2022-03-08
(54)【発明の名称】マイクログリッドにおけるレジリエンスの判断
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20220301BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20220301BHJP
   H02J 3/32 20060101ALI20220301BHJP
   H02J 13/00 20060101ALI20220301BHJP
   G06Q 50/06 20120101ALI20220301BHJP
【FI】
H02J3/38 110
H02J3/00 170
H02J3/32
H02J3/38 130
H02J3/38 160
H02J13/00 301D
G06Q50/06
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021515085
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2019074111
(87)【国際公開番号】W WO2020058040
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-05-26
(31)【優先権主張番号】18195383.7
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519431812
【氏名又は名称】ヒタチ・エナジー・スウィツァーランド・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】HITACHI ENERGY SWITZERLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マジュンダー,リトゥック
(72)【発明者】
【氏名】サーズ,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ベロット,ジョバンニ
(72)【発明者】
【氏名】シャイェステ,エブラヒム
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/067585(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0244252(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-5/00
H02J 13/00
G06Q 50/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアセット(14、16、18、20)を含むマイクログリッド(10)においてレジリエンスを判断する方法であって、各アセットは、前記マイクログリッドにおける異なる種類の電気エネルギーサブシステムであり、方法は、
前記アセットを制御するために用いられる装置(32、34、36、38)およびこの制御の通信リソースに関する状態データを取得すること(54)を備え、前記アセットを制御するために用いられる前記装置に関する前記状態データは、ハードウェア状態データおよび/またはソフトウェア状態データを含み、さらに、
前記状態データに基づいて、前記マイクログリッドにおいて破壊的事象に対応するための複数の機能(F1、F2、F3)の各々を支援するために、各アセットの健全性および可用性を判断すること(56)と、
前記複数の機能(F1、F2、F3)を行う際に、前記マイクログリッドのレジリエンス指数(RI)を判断すること(60)とを備え、前記レジリエンス指数は、破壊的事象に対応するための前記機能(F1、F2、F3)のすべてに関する各アセット(14、16、18、20)の個別のアセット健全性および可用性に基づいて判断され、さらに、
前記レジリエンス指数を前記マイクログリッドの制御システムに提供することと、
前記制御システムにおいて、前記レジリエンス指数(RI)を少なくとも1つの閾値と比較すること(62)と、
前記閾値のいずれかを超える場合、前記マイクログリッド(10)の前記制御を変更すること(66)とを備える、方法。
【請求項2】
前記状態データに基づいて判断することはさらに、前記マイクログリッドにおける破壊的事象に対応するための複数の機能の各々を支援するために、各アセットの能力を判断することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
破壊的事象に対応する前記機能は、電力バランス機能、電圧制御機能、周波数制御機能およびブラックスタート機能のうち少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
判断された前記レジリエンス指数は、破壊的事象に対応するための前記複数の機能(F1、F2、F3)の各々についてのレジリエンス値を含む、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
破壊的事象に対応するための前記機能(F1、F2、F3)の各々に対する各アセット(14、16、18、20)の適合性を取得すること(58)をさらに備え、前記レジリエンス(RI)は、前記適合性にも基づいて判断される、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記マイクログリッド(12)は、遮断器(26)を介して外部グリッド(28)に接続され、前記状態データを取得することは、前記遮断器の状態データを取得することを含み、前記方法はさらに、前記遮断器の状態に基づいて、前記アセットのうち少なくとも1つの適合性を調節することを備える、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記レジリエンス指数は、破壊的事象に対応するための機能ごとに1つずつ、複数の閾値と比較され、前記方法はさらに、前記閾値を超えた機能を支援するためにアセットを選択することを備える、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記制御システムはリモート制御システムである、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記マイクログリッド(10)は全体的な制御機能(MCF)を有し、前記状態データを取得することは、前記全体的な制御機能についても状態データを取得することを含み、破壊的事象に対応するための前記複数の機能の各々を支援するために各アセットの健全性および可用性を判断することは、前記全体的な制御機能の前記状態データにも基づく、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記レジリエンス指数をエネルギー管理システムに提供することをさらに備える、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
複数のアセット(14、16、18、20)を含むマイクログリッド(10)においてレジリエンスを判断するためのシステムであって、各アセットは、前記マイクログリッドにおける異なる種類の電気エネルギーサブシステムであり、前記システムは少なくとも1つの制御ユニット(30、32、34、36、38)を含み、前記少なくとも1つの制御ユニットは、
前記アセットを制御するために用いられる装置(32、34、36、38)およびこの制御の通信リソースに関する状態データを取得するように構成され、前記アセットを制御するために用いられる前記装置に関する前記状態データは、ハードウェア状態データおよび/またはソフトウェア状態データを含み、さらに、
前記状態データに基づいて、前記マイクログリッドにおいて破壊的事象に対応するための複数の機能(F1、F2、F3)の各々を支援するために、各アセットの健全性および可用性を判断し、
前記複数の機能(F1、F2、F3)を行う際に、前記マイクログリッドのレジリエンス指数(RI)を判断するように構成され、前記レジリエンス指数は、破壊的事象に対応するための前記機能(F1、F2、F3)のすべてに関する各アセット(14、16、18、20)の個別のアセット健全性および可用性に基づいて判断され、さらに、
前記レジリエンス指数(RI)を少なくとも1つの閾値と比較し、かつ、前記閾値のいずれかを超える場合、前記マイクログリッド(10)の前記制御を変更するように構成される、システム
【請求項12】
前記少なくとも1つの制御ユニットは、前記状態データを取得するように配置された少なくとも1つのコミットメント判断モジュール(CDM)と、レジリエンス指数(RI)を判断するように配置された少なくとも1つのレジリエンス判断モジュール(RDM)と、前記レジリエンス指数(RI)を少なくとも1つの閾値と比較し、かつ、前記閾値のいずれかを超える場合、前記マイクログリッド(10)の前記制御を変更するように配置されたレジリエンス調査モジュール(RIM)とを含む、請求項11に記載のシステム
【請求項13】
複数の局所制御ユニット(32、34、36)と中央制御ユニット(30)とをさらに備え、各コミットメント判断モジュール(CDM)は対応する局所制御ユニット(32、34、36)に設けられ、前記レジリエンス調査モジュール(RIM)は前記中央制御ユニット(30)に設けられ、前記レジリエンス判断モジュール(RDM)は局所制御ユニットまたは前記中央制御ユニットに設けられる、請求項12に記載のシステム
【請求項14】
複数のアセット(14、16、18、20)を含むマイクログリッド(10)においてレジリエンスを判断するためのコンピュータプログラム製品であって、各アセットは、前記マイクログリッドにおける異なる種類の電気エネルギーサブシステムであり、前記コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラムコード(72)を記録した記憶媒体(70)を備え、前記コンピュータプログラムコード(72)は、前記コンピュータプログラムコードが制御ユニット(30、32、34、36、38)内にロードされると、前記制御ユニット(30、32、34、36、38)の少なくとも1つに、
前記アセットを制御するために用いられる装置(32、34、36、38)および前記制御の通信リソースについて状態データを取得し、かつ、前記状態データに基づいて、前記マイクログリッドにおいて破壊的事象に対応するための複数の機能(F1、F2、F3)の各々を支援するために各アセットの健全性および可用性を判断するように配置された少なくとも1つのコミットメント判断モジュール(CDM)を設けさせるように構成され、前記アセットを制御するために用いられる前記装置に関する前記状態データは、ハードウェア状態データおよび/またはソフトウェア状態データを含み、さらに、
前記複数の機能(F1、F2、F3)を行う際に前記マイクログリッドのレジリエンス指数(RI)を判断するように配置された少なくとも1つのレジリエンス判断モジュール(RDM)を設けさせるように構成され、前記レジリエンス指数は、破壊的事象に対応するための前記機能(F1、F2、F3)のすべてに関する各アセット(14、16、18、20)の個別のアセット健全性および可用性に基づいて判断され、さらに、
前記レジリエンス指数(RI)を少なくとも1つの閾値と比較し、かつ、前記閾値のいずれかを超える場合、前記マイクログリッド(10)の前記制御を変更するように配置されたレジリエンス調査モジュール(RIM)を設けさせるように構成される、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、マイクログリッドにおいてレジリエンスを判断するための方法、配置およびコンピュータプログラム製品に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
マイクログリッドは、局所的な電力生成および消費、ならびに、メイングリッドに対する接続の用途にとって興味深いものである。そのようなマイクログリッドは、電気エネルギーの生成、貯蔵および/または消費に使用される複数のアセットを含み得る。マイクログリッドがシステムであると考えられる場合、アセットは、それに対するおよび/またそこからの電力の送達が可能な電気サブシステムでもよい。
【0003】
マイクログリッドでは、破壊的事象に関するレジリエンスについて知るのは興味深い場合がある。
【0004】
レジリエンスは、「破壊的事象の規模および/または継続時間を低減させる能力。強靱なインフラストラクチャまたは企業の有効性は、潜在的な破壊的事象を予測し、吸収し、それに適応し、および/またはそれから迅速に回復する能力によって決まる」と定義可能である。この定義は、国家インフラストラクチャ諮問委員会(NIAC)による2009年の重要インフラレジリエンス最終報告および提言(Critical Infrastructure Resilience Final Report and Recommendations)による。
【0005】
レジリエンスは、破壊的事象(たとえば、サイバーアタック、災害)の場合に、復旧時間の最小化に寄与し得るアクションの適応に関して決定を行う際にサポートを提供し、決定を容易にし得る。
【0006】
レジリエンスの判断について記載した文献が多数存在する。
US 2017/0040839はたとえば、不測の事態に直面して、安定した動作を確保するための3レベルマイクログリッド制御アーキテクチャを示す。レジリエンスメトリクスが、現在のシステム状態を含む複数のパラメータから計算され、システムは、それに基づいて不測の事態のレベルを仮定すると定められている。不測の事態のレベルは、起こり得る破壊を確実に最小限にするための運用上の決定の基準である。
【0007】
US 2017/0046458は、グリッドのトポロジーの仮想モデルの作成、瞬間パラメータの測定および将来の事象のシミュレーションによって、マイクログリッドに対して電力分析を行うためのシステムを示す。リアルタイムの測定値が予測値と比較され、偏差が度合いについて評価され、必要であれば、オペレータのためにアラームが出力される。システムセキュリティ指数は、さまざまな安全指数から計算され、不測の事態に耐えるグリッドの能力を示す。
【0008】
CN 103903058Aは、安全および緊急時の能力のメトリクスを含む、広範囲にわたる評価指数システムに基づくスマートグリッド監視および制御方法を示す。このメトリクスは、計画および決定で役立つ。
【0009】
上述のレジリエンスの判断は、すべて一元管理されており、やや複雑である。そこで、マイクログリッドについてのレジリエンスの判断に対して他の、および上述したすべてのより簡潔で分散化されたアプローチを用いることは興味深いであろう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
概要
それゆえ、本発明の目的は、分散化アプローチに基づいて簡易かつ迅速な、マイクログリッドのレジリエンスを判断する代替的な方法を得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的は、複数のアセットを含むマイクログリッドにおいてレジリエンスを判断する方法によって実現される本発明の第1の側面に従い、各アセットは、マイクログリッドにおける異なる種類の電気エネルギーサブシステムであり、方法は、アセットを制御するために用いられる装置およびこの制御の通信リソースに関する状態データを取得することを備え、アセットを制御するために用いられる装置に関する状態データは、ハードウェア状態データおよび/またはソフトウェア状態データを含み、方法はさらに、状態データに基づいて、マイクログリッドにおいて破壊的事象に対応するための複数の機能の各々を支援するために、各アセットの健全性および可用性を判断することと、複数の機能を行う際に、マイクログリッドのレジリエンス指数を判断することとを備え、レジリエンス指数は、破壊的事象に対応するための機能のすべてに関する各アセットの個別のアセット健全性および可用性に基づいて判断され、方法はさらに、レジリエンス指数をマイクログリッドの制御システムに提供することと、制御システムにおいて、レジリエンス指数を少なくとも1つの閾値と比較することと、閾値のいずれかを超える場合、マイクログリッドの制御を変更することとを備える。
【0012】
この目的は、複数のアセットを含むマイクログリッドにおいてレジリエンスを判断するための配置によって実現される本発明の第2の側面に従い、各アセットは、マイクログリッドにおける異なる種類の電気エネルギーサブシステムであり、配置は少なくとも1つの制御ユニットを含み、少なくとも1つの制御ユニットは、アセットを制御するために用いられる装置およびこの制御の通信リソースに関する状態データを取得するように構成され、アセットを制御するために用いられる装置に関する状態データは、ハードウェア状態データおよび/またはソフトウェア状態データを含み、少なくとも1つの制御ユニットはさらに、状態データに基づいて、マイクログリッドにおいて破壊的事象に対応するための複数の機能の各々を支援するために、各アセットの健全性および可用性を判断し、これらの複数の機能を行う際に、マイクログリッドのレジリエンス指数を判断するように構成され、レジリエンス指数は、破壊的事象に対応するための機能のすべてに関する各アセットの個別のアセット健全性および可用性に基づいて判断され、少なくとも1つの制御ユニットはさらに、レジリエンス指数を少なくとも1つの閾値と比較し、閾値のいずれかを超える場合、マイクログリッドの制御を変更するように構成される。
【0013】
少なくとも1つの制御ユニットは、状態データを取得するように配置された少なくとも1つのコミットメント判断モジュールと、レジリエンス指数を判断するように配置された少なくとも1つのレジリエンス判断モジュールと、レジリエンス指数を少なくとも1つの閾値と比較し、かつ、閾値のいずれかを超える場合、マイクログリッドの制御を変更するように配置されたレジリエンス調査モジュールとを含む。
【0014】
配置はさらに、複数の局所制御ユニットと中央制御ユニットとを備え、各コミットメント判断モジュールは対応する局所制御ユニットに設けられ、レジリエンス調査モジュールは中央制御ユニットに設けられ、レジリエンス判断モジュールは局所制御ユニットまたは中央制御ユニットに設けられる。
【0015】
この目的は、複数のアセットを含むマイクログリッドにおいてレジリエンスを判断するためのコンピュータプログラム製品によって実現される本発明の第3の側面に従い、各アセットは、マイクログリッドにおける異なる種類の電気エネルギーサブシステムであり、コンピュータプログラム製品は、コンピュータプログラムコードを有するデータキャリアを備え、コンピュータプログラムコードは、コンピュータプログラムコードが制御ユニット内にロードされると、少なくとも1つの制御ユニットに、アセットを制御するために用いられる装置およびこの制御の通信リソースについて状態データを取得し、かつ、状態データに基づいて、マイクログリッドにおいて破壊的事象に対応するための複数の機能の各々を支援するために各アセットの健全性および可用性を判断するように配置された少なくとも1つのコミットメント判断モジュールを設けさせるように構成され、アセットを制御するために用いられる装置に関する状態データは、ハードウェア状態データおよび/またはソフトウェア状態データを含み、少なくとも1つの制御ユニットにさらに、複数の機能を行う際にマイクログリッドのレジリエンス指数を判断するように配置された少なくとも1つのレジリエンス判断モジュールを設けさせるように構成され、レジリエンス指数は、破壊的事象に対応するための機能のすべてに関する各アセットの個別の健全性および可用性に基づいて判断され、少なくとも1つの制御ユニットにさらに、レジリエンス指数を少なくとも1つの閾値と比較し、かつ、閾値のいずれかを超える場合、マイクログリッドの制御を変更するように配置されたレジリエンス調査モジュールを設けさせるように構成される。
【0016】
レジリエンス指数は、破壊的事象に対応するための各機能ごとに1つずつ、複数の閾値と比較され、方法はさらに、閾値を超えた機能を支援するためにアセットを選択することを備えることが可能である。
【0017】
少なくとも1つの制御ユニットはさらに、レジリエンス指数を比較するときに、レジリエンス指数を複数の指数と比較するように構成され、指数は破壊的事象に対応するための機能ごとに1つずつ設けられ、さらに、機能に対するアセットの適合性に基づいて、閾値を超えた機能を支援するためのアセットを選択するように構成されることがさらに可能である。
【0018】
状態データに基づいて判断することは、そのため、マイクログリッドにおける複数の機能の各々を支援するために、各アセットの健全性および各アセットの可用性を判断することを含み得る。この判断はさらに、マイクログリッドにおける破壊的事象に対応するための複数の機能の各々を支援するために、各アセットの能力を判断することを含み得る。
【0019】
マイクログリッドは、アセットを接続可能な母線を含み得る。この場合、アセットは、エネルギーを受信および/または母線に送達するためのサブシステムでもよい。
【0020】
アセットは、少なくとも1つの電気エネルギー生成システムを含み得る。アセットはさらにまたは代わりに、少なくとも1つの電気エネルギー貯蔵サブシステムを含み得る。アセットはさらにまたは代わりに、少なくとも1つの電気エネルギー消費サブシステムを含み得る。
【0021】
状態データは、アセットの内蔵機能についての状態を含み得る。状態データは、アセットの内蔵機能の監視によって取得してもよい。
【0022】
状態データは、アセットの制御で用いられる装置から取得されてもよい。状態データは、アセットを制御するために用いられるコンポーネントにおいて一体化されてもよい。代替的にまたは代わりに、状態データは、サードパーティ・プロバイダからなど、マイクログリッドの外部から取得されてもよく、および/または、コンポーネント内で一体化されてもよい。
【0023】
判断されたレジリエンス指数は、破壊的事象に対応するための複数の機能の各々についてレジリエンス値を含み得る。判断されたレジリエンス指数は、さらにまたは代わりに、破壊的事象に対応するための複数の機能の各々についての個別のレジリエンス値によって得られるレジリエンス合計値を含み得る。レジリエンス指数は、一例として、レジリエンス値のベクトルまたはマトリックスとして提供されてもよい。
【0024】
マイクログリッドにおいて破壊的事象に対応するための複数の機能の各々に関するアセットの可用性および健全性は、複数の値として設けられてもよく、1つの値が、1つの機能についての可用性と健全性との両方を表す。可用性および健全性の値は、ベクトルまたはマトリックスで提供されてもよい。能力が判断されると、そのような1つの値は、可用性および健全性に加えて能力を表してもよい。
【0025】
第1の側面の第1の変形例によると、方法はさらに、破壊的事象に対応するための機能の各々に対する各アセットの適合性を取得することを備え、レジリエンスは適合性にも基づいて判断される。
【0026】
第2の態様の対応する第1の変形例によると、少なくとも1つの制御ユニットは、破壊的事象に対応するための機能の各々に対する各アセットの適合性を取得するように構成され、少なくとも1つの制御ユニットは、レジリエンスを判断するときに、さらに適合性にも基づいてレジリエンスを判断するように構成される。
【0027】
また、機能の各々に対するアセットの適合性は、機能ごとに1つずつ、複数の値として提供されてもよい。
【0028】
他の変形例によると、方法は、アセットごとに、破壊的事象に対応する機能に与えられたサポートを定義する機能コミットメントを判断することを備え、アセットの機能コミットメントは、破壊的事象に対応する複数の機能の各々についての可用性、健全性、適合性および場合によっては能力も含む。破壊的事象に対応する機能は、電力バランス機能、電圧制御機能、周波数制御機能およびブラックスタート機能のうち少なくとも1つを含み得る。
【0029】
第2の側面の対応する変形例によると、少なくとも1つの制御ユニットは、アセットごとに、破壊的事象に対応する機能に与えられたサポートを定義する機能コミットメントを判断するように構成され、アセットの機能コミットメントは、破壊的事象に対応する複数の機能の各々についての可用性、健全性、適合性および場合によっては能力も含む。
【0030】
マイクログリッドは、遮断器を介して外部グリッドに接続されてもよい。
第1の側面のさらに別の変形例によると、状態データの取得は、遮断器の状態データを取得することを含み、方法はさらに、遮断器の状態に基づいて、アセットのうち少なくとも1つの適合性を調節するステップを備える。
【0031】
第2の側面の対応する変形例によると、少なくとも1つの制御ユニットはさらに、状態データを取得するときに、遮断器の状態データを取得するように構成され、さらに、遮断器の状態に基づいて、アセットのうち少なくとも1つの適合性を調節するように構成される。
【0032】
マイクログリッドはさらに、全体的な制御機能を有してもよい。
第1の側面のさらに別の変形例によると、状態データを取得することは、全体的な制御機能にも関する状態データを取得することを含んでもよく、破壊的事象に対応するための複数の機能の各々を支援するために各アセットの健全性、可用性および場合によっては能力も判断することは、全体的な制御機能の状態データにも基づいてもよい。
【0033】
第2の態様の対応する変形例によると、少なくとも1つの制御ユニットはさらに、状態データを取得するときに、全体的な制御機能にも関する状態データを取得するように構成され、さらに、破壊的事象に対応するための複数の機能の各々を支援するために各アセットの健全性、可用性および場合によっては能力も判断するときに、全体的な制御機能の状態データにも基づいて健全性、可用性および場合によっては能力も判断するように構成される。
【0034】
レジリエンス指数の判断は、レジリエンス値について閾値を判断することを含んでもよく、閾値は、高すぎる値または低すぎる値に関連してもよい。
【0035】
判断されたレジリエンス指数および関連付けられた閾値は、オフラインおよびオンライン決定のために、制御システムに提供されてもよい。
【0036】
制御システムは、上述の全体的な制御を行うシステム、または、アセットの局所的な制御システムでもよい。しかしながら、制御システムはさらに、全体的な制御に関する仮想発電所などの、リモート制御システムでもよい。
【0037】
レジリエンス指数およびそのような閾値はさらに、オペレータに対して呈示されてもよい。これらは、異なるマイクログリッド機能についての警報信号として用いることができる。場合によっては、そのような警報信号によって、オペレータは、マイクログリッドにおいて予測不能の問題がある場合に決定を行うことが可能になる。
【0038】
レジリエンスおよび場合によってはそのような閾値もさらに、マイクログリッドの動作およびメンテナンスを計画するためにエネルギー管理システム(EMS)に提供されてもよい。
【0039】
レジリエンス指数はさらに、自動マイクログリッド動作において使用されてもよい。
そのような自動マイクログリッド動作に関する第1の側面のさらに別の変形例では、方法はさらに、レジリエンス指数を少なくとも1つの閾値と比較し、閾値のいずれかを超えると、マイクログリッドの制御を変更することを備える。
【0040】
アセットの選択は、機能に対するアセットの適合性に基づいてもよい。この選択はさらにまたは代わりに、機能に関するアセットの健全性、可用性、および場合によっては能力に基づいてもよい。
【0041】
レジリエンスの判断は、マイクログリッドの動作中は常に行われてもよい。それゆえ、レジリエンスを求めるために実施されるこれらのステップは、定期的に、たとえば周期的に繰り返されてもよい。
【0042】
本発明には複数の利点がある。本発明は、レジリエンスについて価値のある情報を提供する。これにより、多くの用途向けにマイクログリッドの機能がサポートされる。また、マイクログリッドの事前対応的な制御を可能にし、再開時間を減らし、遮断および/または機能停止を防止する、マイクログリッドレジリエンスを改善するための予防的な対策をとることができる。これにより、特に自然災害またはサイバーアタックの後に、事後保全コストおよび予防保全コストを節約可能である。
【0043】
本発明について、添付の図面を参照して以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】局所制御ユニットおよび中央制御ユニットを用いて、複数のアセットを有するマイクログリッドが制御される状態を概略的に示す図である。
図2】中央制御ユニットのある実現例を概略的に示す図である。
図3】局所制御ユニットのある実現例を概略的に示す図である。
図4】マイクログリッドにおいてレジリエンスを判断する方法の複数の方法ステップを示すフローチャートである。
図5】マイクログリッドの動作に影響を及ぼす際に判断されたレジリエンス指数を用いるための複数の方法ステップのフローチャートを概略的に示す図である。
図6】中央制御ユニットと局所制御ユニットとの間のデータのやり取り、およびこれらのユニットによって行われるさまざまな判断を示す図である。
図7】異なる所望の機能についての機能コミットメントの計算を示す図である。
図8】レジリエンスを評価するために中央制御ユニットによって受信されたすべてのそのような機能コミットメントの結合を示す図である。
図9】中央制御ユニットおよび複数の局所制御ユニットにおいて行われる処理に基づいて、中央制御ユニットにおけるレジリエンス判断を実現する制御概略図である。
図10】中央制御ユニットおよび複数の局所制御ユニットにおいて行われる処理に基づいて、中央制御ユニットにおけるレジリエンス判断を実現する別の制御概略図である。
図11】中央制御ユニットおよび複数の局所制御ユニットにおいて行われる処理に基づいて、中央制御ユニットにおけるレジリエンス判断を実現する他の代替的な制御概略図である。
図12】中央制御ユニットおよび複数の局所制御ユニットにおけるレジリエンス判断を実現するさらに代替的な制御概略図である。
図13】レジリエンス判断および調査機能を実現するために、CD-ROMディスクの形式で、コンピュータプログラムコードを有するデータキャリアを備えるコンピュータプログラム製品を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
詳細な説明
以下では、マイクログリッドのレジリエンスを判断するためのシステム、方法およびコンピュータプログラム製品の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0046】
図1は、マイクログリッド10またはメインシステム、およびマイクログリッド10を制御するためのさまざまな制御ユニットを概略的に示す図である。マイクログリッド10は、複数のサブシステムから構成されるシステムと考えられてもよい。そのため、マイクログリッド10は、複数のサブシステムが接続された母線12を備える。以下では、そのようなサブシステムはアセットであると考えられる。第1のインターフェースデバイス22を介して母線10に接続された第1のサブシステムまたはアセット14、母線12に直接接続された第2のサブシステムまたはアセット16、同様に母線10に直接接続された第3のサブシステムまたはアセット18、および第2のインターフェースデバイス24を介して母線12に接続された第4のサブシステムまたはアセット20が存在する。また、母線12は、外部グリッドインターフェース26を介してメインまたは外部グリッド28に接続され、外部グリッドインターフェース26は遮断器を含み得る。
【0047】
アセットは、マイクログリッド12における電気エネルギーサブシステムでもよい。アセットはそのため、電気エネルギーの受信および/または母線12への送達のためのサブシステムでもよい。
【0048】
第1のアセット14は、バッテリシステムなどの電気エネルギー貯蔵システムでもよい。第2のアセット16は、ディーゼル発電機システムなどの第1の電気エネルギー生成システムでもよく、第3のアセット18は、制御可能な電気負荷または電気エネルギー消費サブシステムでもよく、第4のアセット24は、たとえば太陽光発電(PV)要素を用いる太陽光発電サブシステムとしての、第2の電気エネルギー生成システムでもよい。
【0049】
マイクログリッド10はしたがって、少なくとも1つの電気エネルギー生成サブシステムを備え得る。代替的にまたはさらに、マイクログリッドは、少なくとも1つの電気エネルギー貯蔵サブシステムを備え得る。代替的にまたはさらに、マイクログリッドは、少なくとも1つの電気エネルギー消費サブシステムを備え得る。
【0050】
なお、ここでは、風力発電所としての第3の電気エネルギー生成サブシステムでもよい第5のアセットなど、さらに他のアセットを有することも可能であり、このアセットも、インターフェースデバイスを介して母線12に接続されてもよい。また、マイクログリッド10は、より少ない数のサブシステムを備えてもよい。
【0051】
母線12は、交流(AC)母線でもよい。アセットのうちのいくつかは直流(DC)で動作してもよく、これらは、AC/DCコンバータを含むインターフェースデバイスを介して、この母線12に接続される。他のいくつかのアセットはACで動作してもよく、これらはそのため、母線に直接接続されてもよい。上述の例では、第1のアセット14はDCで動作するエネルギー貯蔵システムであり、そのため、第1のインターフェースデバイス22はAC/DCコンバータを含む。第2のアセット16は、ACで動作するディーゼル発電機システムであり、そのため、母線12に直接接続されてもよい。また、負荷である第3のアセット18はACで動作し、そのため、母線12に直接接続されてもよい。また、PVサブシステムである第4のアセット20はDCで動作し、そのため、第2のインターフェースデバイス24はAC/DCコンバータを含む。
【0052】
なお、母線12は代替例としてDC母線でもよく、その場合、DCで動作するサブシステムは、母線に直接接続されてもよく、ACで動作するサブシステムは、DC/ACコンバータを介して接続されてもよい。外部またはメイングリッド28は、ACグリッドまたはDCグリッドでもよく、どの種類のグリッドであるか、およびマイクログリッドでどの種類の母線が使用されるかによって、外部のグリッドインターフェース26は、ACとDCとの間の変換に好適なコンバータを含み得る。
【0053】
なお、さらに、ACサブシステムはAC/ACコンバータを介してAC母線に接続されてもよく、DCサブシステムは、DC/DCコンバータを介してDC母線に接続されてもよい。
【0054】
エネルギーを受信および/または送達するためのマイクログリッド10の各アセットを制御するために、局所制御機能を含む対応する局所制御ユニットが存在する。それゆえ、第1のアセット14を制御するための第1の局所制御ユニット32、第2のアセット16を制御するための第2の局所制御ユニット34、第3のアセット18を制御するための第3の局所制御ユニット36、および第4のアセット20を制御するための第4の局所制御ユニット38がある。第1のアセット14は電気エネルギー貯蔵システムによって例示されるため、第1の制御ユニット32は貯蔵制御装置でもよく、第2のアセット16はディーゼル発電機システムによって例示されるため、第2の局所制御ユニット34はディーゼル制御装置でもよく、第3のアセット18は制御可能な電気負荷によって例示されるため、第3の局所制御ユニット36は負荷制御装置でもよく、第4のアセット20はPV生成サブシステムによって例示されるため、第4の局所制御ユニット38はPV制御装置でもよい。
【0055】
また、局所制御ユニットの各々は、マイクログリッド10の全体的な制御についての機能を含むマイクログリッド10についての全体的な制御ユニットである、中央制御ユニット30またはネットワーク制御装置と通信する。また、中央制御ユニット30に接続されたオペレータ端末40があり、オペレータ端末40は、マイクログリッドオペレータに情報を呈示してもよい。図では、レジリエンス標識RIとしてのある種類の情報が、中央制御ユニット30によってオペレータ端末40に提供されて呈示されると示されている。
【0056】
図では、局所制御ユニット32、34、36および38は、4つの機能コミットメントFC1、FC2、FC3およびFC4を主制御ユニット30に送信すると示され、これらは、可用性、健全性および適合性の指数である。
【0057】
各制御ユニットは、全体的なまたは局所的な制御機能などの制御機能を含む制御モジュールなど、関連付けられたメモリおよびソフトウェアを有するプロセッサなどのハードウェアとして実現可能である。局所的な制御機能は、対応するアセットを制御するために、すなわち、サブシステムを制御するために設けられてもよい。そのような制御は、電気エネルギーをサブシステムにおよび/またはサブシステムから送達するための制御を含み得る。ディーゼル発電機サブシステムおよびPV生成サブシステムなどのサブシステムの一部は、電気エネルギーを送達可能であるにすぎず、制御可能な負荷サブシステムなどのサブシステムの一部は、電気エネルギーを受信可能であるにすぎない一方で、エネルギー貯蔵サブシステムなどの他のシステムは、電気エネルギーの送達と受信との両方が可能である。
【0058】
また、各制御ユニットは、マイクログリッド10内の他の制御ユニットまたはマイクログリッド10外部のエンティティと通信するための通信インターフェースを有してもよい。
【0059】
図2は、中央制御ユニット30のある実現例を概略的に示す図である。中央制御ユニット30は、プロセッサPR42、およびコンピュータプログラム命令を含む関連付けられたプログラムメモリM44としてのハードウェアを含む。コンピュータプログラム命令は、全体的なマイクログリッド制御機能を有する主制御モジュールMCMを実現するための命令、レジリエンス判断モジュールRDMを実現するための命令、レジリエンス調査モジュールRIMを実現するための命令、および場合によっては、データ収集モジュールDCMを実現するための命令を含む。主制御モジュールMCMは、局所制御ユニットによって行われる個別の制御を考慮するマイクログリッドの全体的な制御モジュールである。また、主制御モジュールMCMがローカルおよび外部制御モジュールなどの他の制御モジュールと通信することを可能にするための、プロセッサ34に接続された第1の通信インターフェースCI46がある。また、レジリエンス判断モジュールRDMと、おそらく、レジリエンス調査モジュールRIMとが、通信インターフェース46を介して通信してもよい。
【0060】
同様に、図3は、ここでは第1の局所制御ユニット32によって例示される、局所制御ユニットの実現例を概略的に示す図である。局所制御ユニット32は、プロセッサPR48、およびコンピュータプログラム命令を含む関連付けられたプログラムメモリM50としてのハードウェアを含む。コンピュータプログラム命令は、上述した例ではエネルギー貯蔵制御モジュールである、局所制御機能を有する上述の局所制御モジュールLCMを実現するための命令を含む。また、コミットメント判断モジュールCDMがある。また、局所制御ユニット32は、局所制御モジュールLCMを、メインまたは全体的な制御モジュール、外部制御モジュール、データ収集モジュールおよび他のコミットメント判断モジュールなどの他の制御モジュールと通信可能にするために、プロセッサ48に接続された通信インターフェース52を含む。また、コミットメント判断モジュールCDMは、他の局所制御ユニットのコミットメント判断モジュール、およびレジリエンス判断モジュールRDM、データ収集モジュールDCM、および可能であればレジリエンス調査モジュールRIMとも通信するために、通信インターフェース52を用いてもよい。
【0061】
先に開示された例示的なマイクログリッド10は分散制御を有し、局所制御ユニットは、対応するマイクログリッド機能を最適な態様で行うために、制御されたサブシステムの挙動を最適化する。この目的を達成するために、各アセットは、局所制御ユニットを介して他のアセットと状態を共有する必要がある。そのため、各アセットについての局所制御ユニットは、マイクログリッドにおいて割当てられた機能、およびすべてのマイクログリッドアセットの状態(それら自体の状態も含む)に基づいて、各時間において最適な計画の決定を行う可能性がある。
【0062】
上述したように、破壊的事象に対するレジリエンスは、そのようなマイクログリッドでは重要な問題である。それゆえ、たとえばレジリエンス指数としてのレジリエンス表示としてレジリエンスを判断することは興味深く、この表示を、全体的な制御またはエネルギー管理システム(EMS)において用いてもよい。
【0063】
レジリエンスは、時間が経つにつれ進化および発展する、複数のスケールにまたがる自然および人間の力の交差点で発生する複雑な埋込まれたプロセスとして事態を理解する助けになり得るシステムの視点および状況認識を必要とする。
【0064】
マイクログリッドのレジリエンスを改善する重要な要素は、以下のように要約できる。
・関連付けられたコンポーネントを有するアセットの能力および接続性を監視すること:ハードウェア、ソフトウェア、通信など(たとえば、状態、機能可用性、環境条件など)。
・状況認識(発生している事態についてデータを迅速に詳細に調べ、貴重な情報を抽出する能力、およびアクションを行うべき人間のオペレータに対する効果的な通信)。
・最小限の時間での回復を助け得るマイクログリッド構成、製造および負荷の(完全または部分的に自動化された)迅速な適応能力。
【0065】
マイクログリッドシステムはそのため、マイクログリッドアセットの健全性および能力などの状態、ならびに特定の機能の可用性に基づいて、マイクログリッドオペレータのためにレジリエンスを判断可能でなければならず、レジリエンスは、レジリエンス表示の判断によって判断され得る。
【0066】
マイクログリッドが提供すると期待される、破壊的事象に対応するために用いられる重要な機能の一部は、以下の通りである。
・電力バランス
・電圧制御
・周波数制御
・ブラックスタート
本発明のさまざまな側面によると、レジリエンスは、破壊的事象に対応する多数の機能について判断され、これらの機能はそれゆえ、破壊的事象対応機能とも呼ばれる。
【0067】
本発明のさまざまな側面によると、レジリエンスは、異なる種類のアセットの状態の調査に基づいて判断される。各アセットはそれゆえ、個別に状態について調査され、各破壊的事象対応機能に対する各アセットの影響を、たとえば1つ以上のレジリエンス標識で呈示してもよい。さらに、全体的な制御機能および/または外部グリッドインターフェース26の遮断器を介したメイングリッドへの接続を調査し、破壊的事象対応機能に対するこれらのうちの一方または両方の影響を考慮することが可能である。
【0068】
これがどのように行われるかについて、マイクログリッド10についてレジリエンスを判断する方法の複数の方法ステップを示す図4も参照して説明する。これらの方法ステップは、中央制御ユニット30のレジリエンス判断モジュールRDM、ならびに中央および局所制御ユニット32、34、36および38の異なるコミットメント判断モジュールCDMによって行われる。
【0069】
方法は、ステップ54で、異なるアセット14、16および18と関連付けられた各コミットメント判断モジュールCDMが、各アセットの状態データを取得することから始まる。場合によっては、中央制御ユニット30のデータ収集モジュールDCMも、全体的な制御機能および/または外部グリッドインターフェースの遮断器の状態データを取得する。
【0070】
これは、図1のシステムの例において、第1の局所制御ユニット32によって実現されているコミットメント判断モジュールCDMが、第1のアセット14に関連する状態データを取得すること、第2の局所制御ユニット34のコミットメント判断モジュールが、第2のアセット16に関連する状態データを取得すること、第3の局所制御ユニット32のコミットメント判断モジュールが、第3のアセット18に関連する状態データを取得すること、および、第4の局所制御ユニット38のコミットメント判断モジュールが、第4のアセット20に関連する状態データを取得することを意味する。場合によっては、中央制御ユニット30のコミットメント判断モジュールCDMも、主制御モジュールMCMに関連する状態データおよび/または外部グリッドインターフェース26の遮断器に関連する状態データを取得する。データ収集モジュールDCMは、収集した状態データを、局所制御ユニットのコミットメント判断モジュールCDMに送信してもよい。
【0071】
アセットおよび全体的な制御機能の状態データは、使用される場合、より特定的に、制御機能の実行に関する状態データを含み得る。本発明の側面によると、これは、制御モジュールを実現するために用いられる装置についてのデータ、すなわち、全体的な制御機能およびアセットに関する局所制御機能を行うために用いられる異なる制御ユニット30、32、34、36および38についてのデータである。状態データは、より特定的に、制御ユニットのハードウェアおよび/またはソフトウェアについてのデータでもよい。アセットの状態データはそれゆえ、また、アセットを制御する局所制御ユニットのプロセッサおよびプログラムメモリに関するデータ、または、これらのメモリに格納された局所制御モジュールLCMに関するデータを含む。また、状態データは通信関連データも含み、通信関連データは、局所制御ユニットの通信インターフェースによって用いられる帯域幅などの通信リソースである、この局所制御モジュールが利用可能な通信リソースについてのデータである。主制御の状態データは、中央制御ユニットのプロセッサおよびプログラムメモリについてのデータ、ならびにこれらのメモリに格納された主制御モジュールに関するデータを含み得る。また、状態データは、主制御モジュールが利用可能な、帯域幅などの通信リソースについてのデータを含み、これらのリソースは、中央制御ユニットの通信インターフェースによって用いられる通信リソースである。また、状態データは、アセットの内蔵機能を監視するコミットメント判断モジュールCDMによって取得可能な、アセットの内蔵機能についての状態を含み得る。状態データはさらに、アセットの制御で用いられる装置から取得されてもよい。より特定的に、アセットを制御するために用いられるコンポーネントにおいて一体化されてもよい。代替的にまたは代わりに、状態データは、サードパーティ・プロバイダなど、マイクログリッド外部から取得されてもよい。
【0072】
遮断器の状態データは、それが開放されているかまたは投入されているかについてのデータを含み得る。
【0073】
第1の局所制御ユニット32の例では、コミットメント判断モジュールCDMはそれゆえ、プロセッサ48およびメモリ50に関連する状態データ、局所制御モジュールLCMに関する状態データ、ならびに通信インターフェース52が利用可能な通信リソースに関する状態データを取得する。場合によっては、プロセッサ42、メモリ44および通信インターフェース46および/または遮断器に関連する状態データも取得する。
【0074】
装置関連状態データは、残りのメモリ空間における制限など、追加の機能を行う際にハードウェアおよびソフトウェアにおける制限を含み得る。また、ハードウェアおよび/またはソフトウェアに対する変化についてのデータ、ならびに以前の不具合および障害についてのデータを含み得る。アセット関連状態データは、利用可能な電力、ヘッドルームおよび制御モード、ならびにサポートされる特徴についてのデータなど、アセットの制御において制限を含み得る。
【0075】
ステップ56で、このデータに基づいて、各アセットの可用性、健全性および場合によっては能力、すなわち、破壊的事象対応機能に寄与する能力が判断される。この判断において、中央制御ユニットからの全体的な制御機能の状態データも考慮することが可能である。
【0076】
これは、図1のシステムの例において、第1の局所制御ユニット32のコミットメント判断モジュールCDMが、破壊的事象対応機能の各々に関して、第1のアセットの可用性、健全性、および場合によっては能力も判断することを意味する。これは、利用可能なメモリ空間と、局所制御ユニットと中央制御ユニットとの両方におけるアセットに関して破壊的事象対応機能に割当てられてもよい処理能力とを判断することを含み得る。ある変形例では、これは、異なる破壊的事象対応機能間で過剰な能力を等しく割当てることを含み得る。この可用性、健全性および場合によっては能力を判断することは、代わりにまたはさらに、ハードウェアのメンテナンス、ローディング、および故障率、ならびにソフトウェアのソフトウェアバージョンを調査することを含み得る。また、第2の、第3のおよび第4の局所制御ユニット36、28および40のコミットメント判断モジュールは、これらの制御ユニットによって制御されるアセットに関してそのような判断を行う。
【0077】
さらに、破壊的事象対応機能の各々に対する個別のアセットの可用性を判断する際に考慮されるために、主制御の状態データを、中央制御ユニット30のデータ収集モジュールDCMから局所制御ユニットの異なるコミットメント判断モジュールに転送することも可能である。異なる機能についてアセットの可用性を判断するために、中央制御ユニットのハードウェア、ソフトウェアおよび通信能力の状態は、局所制御ユニットのハードウェア、ソフトウェアおよび通信能力の状態と結合されてもよい。
【0078】
アセットの健全性ならびにこのアセットの可用性および破壊的事象対応機能を支援する能力は、たとえばベクトルの形式で、機能ごとに1つずつ、複数の値として設けられてもよい。上述の健全性、可用性および場合によっては能力は、たとえばパーセンテージの形式で、健全性、可用性および破壊的事象対応機能に対する能力の度合いとしてさらに表現されてもよく、パーセンテージは、健全性、可用性および能力の点で形成可能である。
【0079】
その後、ステップ58で、各アセットならびに場合によっては主制御および/もしくは遮断器の重要性または各破壊的事象対応機能に対する適合性を取得する任意のステップを行ってもよい。そのため、第1の局所制御ユニット32のコミットメント判断モジュールCDMは、機能の各々に対する第1のアセットの適合性を取得してもよく、第2の局所制御ユニット34のコミットメント判断モジュールは、破壊的事象対応機能の各々に対する第2のアセットの適合性を取得してもよく、第3の局所制御ユニット36のコミットメント判断モジュールは、破壊的事象対応機能の各々に対する第3のアセットの適合性を取得してもよく、第4の局所制御ユニット38のコミットメント判断モジュールは、破壊的事象対応機能の各々に対する第4のアセットの適合性を取得してもよい。これらは、事前に判断され、適合性表に適合値として格納されてもよい。
【0080】
破壊的事象対応機能に対するアセットの適合性はそれゆえ、機能ごとに1つずつ、複数の値として設けられてもよい。これらの適合性はさらに、たとえばパーセンテージの形式で、たとえばベクトルで、破壊的事象対応機能に対する適合性の度合いとして表現されてもよい。
【0081】
アセットを機能に関して使用不可にすることも可能である。これは、適合性によって反映されてもよい。また、アセットは、破壊的事象対応機能を行うために、または破壊的事象対応機能を行う際に支援するために、処理必要条件に対応できないことがあり、その結果、適合性に影響を及ぼすこともある。さらに、アセットの適合性が可用性に影響を及ぼす可能性がある。ある機能について低い適合性を有するアセットの適合性は、なんらかの適合性を有する他の機能について、さらに高くてもよい。破壊的事象対応機能を実現できないアセットは、この機能についてゼロ可用性を有してもよく、それによって、関与可能な他の破壊的事象対応機能に関する可用性が増大されてもよい。
【0082】
周波数制御の機能を例にとると、第1のアセット14はDCを用いるため、この機能を支援するために用いることはできない。この機能についての第1のアセット14の適合性は、それゆえゼロでもよい。
【0083】
能力についても同じ事が当てはまり、この能力を有さないアセットは、故障対応機能を支援できないことがある。フル充電されたエネルギー格納システムはたとえば、追加のエネルギーを受取ることができないことがある。それは、エネルギーを貯蔵する必要がある機能についての能力がゼロでもよい。この機能に対する適合性はそれゆえ、ゼロでもよい。代わりに、エネルギーを必要とする機能について、適合性は高くてもよい。
【0084】
また、機能についてのアセットの適合性および/または可用性は、外部グリッドインターフェース26における遮断器の状態によって影響され得る。より特定的に、事象対応機能についてのアセットの適合性は、遮断器の状態に基づいて調節可能である。遮断器の状態は、外部メイングリッドの使用を必要とするすべての破壊的事象対応機能について適切であり得るが、それを必要としない破壊的事象対応機能についての適合性を欠く。それゆえ、メイングリッドへの接続を必要とする破壊的事象対応機能についてのアセットの適合性は、遮断器の状態が開放である場合、ゼロに設定されてもよい。
【0085】
異なる局所制御ユニット32、34、36および38の異なるコミットメント判断モジュールCDMは、すべての破壊的事象対応機能について対応するアセットの可用性、健全性、および場合によっては能力および/または適合性のうちの1つ以上の測定値を、中央制御ユニット30のレジリエンス判定ユニットRDFに転送してもよい。この測定値は、機能コミットメントであってもよく、この機能コミットメントは、アセットが異なる破壊的事象対応機能に対応する際に用いてもよいか、かつ、どのような度合いで用いてもよいかを特定し得るコミットメント判断モジュールCDMによって行われるコミットメントである。上述のように、主制御および/または遮断器の状態は、局所制御ユニットのコミットメント判断モジュールによって行われる機能コミットメントの判断で用いられてもよい。
【0086】
それゆえ、中央制御ユニット30内のレジリエンス判断モジュールRDMに対して通信インターフェース46および52を介して、第1の局所制御ユニット32は第1の機能コミットメントFC1を転送し、第2の局所制御ユニット34は第2の機能コミットメントFC2を転送し、第3の局所制御ユニット36は第3の機能コミットメントFC3を転送し、第4の局所制御ユニット38は第4の機能コミットメントFC4を転送する。
【0087】
ステップ60で、レジリエンス判断モジュールRDMはその後、破壊的事象対応機能の各々について、受信した機能コミットメントに基づいて、すなわち、各アセットの健全性、可用性、能力および適合性に基づいて、各破壊的事象対応機能の各々に関して、マイクログリッドのレジリエンスを判断する。このレジリエンスは、1つ以上のレジリエンス標識RIの形式で提供されてもよい、たとえば、オペレータ端末40に提供されるレジリエンス指数として実現されてもよい。
【0088】
4つの破壊的事象対応機能がある場合、これは、第1の破壊的事象対応機能についてすべてのコミットメント判断モジュールによって判断される健全性、可用性、能力および適合性を第1のレジリエンス値に結合すること、第2の破壊的事象対応機能についてすべてのコミットメント判断モジュールによって判断される健全性、可用性、能力および適合性を第2のレジリエンス値に結合すること、第3の破壊的事象対応機能についてコミットメント判断モジュールによって判断される健全性、可用性、能力および適合性を第3のレジリエンス値に結合すること、および第4の破壊的事象対応機能についてコミットメント判断モジュールによって判断される健全性、可用性、能力および適合性を第4のレジリエンス値に結合することを含み得る。そして、異なる破壊的事象対応機能についてのレジリエンス値は、オペレータ端末40に提供されるシステムレジリエンス標識RIに結合されて、オペレータに呈示されてもよい。レジリエンス標識RIは、たとえばベクトルまたはマトリックスとして1つ以上の値の形式でもよく、ベクトルの場合、破壊的事象対応機能ごとに1つの値を設けてもよい。マトリックスの場合、マトリックス内の各位置が機能についてアセットのレジリエンスに対応してもよい。マトリックス内の行はそれゆえ機能に対応してもよい一方で、列はアセットに対応してもよい。
【0089】
レジリエンスの判断は、合計値についての、および/または個別のレジリエンス値についての境界もしくは閾値の判断をさらに含んでもよく、境界は、高すぎる値または低すぎる値に関連してもよい。
【0090】
さらに、レジリエンスおよび場合によっては対応する境界または閾値は、異なるマイクログリッド機能についての警報信号としての使用のためにオペレータに呈示されてもよい。また、そのような警報信号は場合によっては、マイクログリッドにおいて予測不可能な問題が存在する際に、オペレータに決定させることができる。
【0091】
レジリエンスおよび場合によってはそのような閾値はさらに、マイクログリッドの動作およびメンテナンスを計画するために、EMSシステムに提供されてもよい。
【0092】
レジリエンスはさらに、自動マイクログリッド動作で用いられてもよい。
オペレータに対して呈示されると、オペレータは、これらがレジリエンスについての境界または閾値のセットの範囲外の場合、レジリエンス標識RIまたは個別のレジリエンス値のいずれかに作用してもよい。
【0093】
なお、レジリエンスの判断は、連続して行われてもよい。上述の方法ステップはそれゆえ、定期的に、たとえば周期的に繰り返されてもよい。
【0094】
オペレータはそれによって、定義された所望のマイクログリッド機能によってマイクログリッドレジリエンスを評価してもよい。さらに、評価結果は、異なるマイクログリッド機能について、マイクログリッドオペレータに対して適切な警報信号を提供するために使用可能である。
【0095】
自動マイクログリッド動作においてレジリエンスが用いられる場合、中央制御ユニット30がレジリエンス調査モジュールRIMを用いることが可能である。次に、このモジュールの動作について、調査を行うための複数の方法ステップを示す図5を参照して説明する。
【0096】
ステップ62で、レジリエンス調査モジュールRIMは、レジリエンスを少なくとも1つの閾値と比較してもよい。これは、判断された各々のレジリエンスを対応するレジリエンス閾値と比較することを含み得る。この比較は、一例として、全体的なレジリエンス値を、閾値および/または、対応する閾値を有する破壊的事象対応機能について判断された個別のレジリエンス値の1つ以上と比較することを含んでもよい。ステップ64で閾値を超えない場合、マイクログリッドの動作は調査前と同様に継続される。しかしながら、ステップ64で閾値を超えると、ステップ66で、レジリエンスを改善するために、マイクログリッド10の制御が変更される。この改良は、レジリエンス調査モジュールRIMが、主制御モジュールMCMに、どの破壊的事象対応機能がレジリエンスを増大させる必要があるかについて知らせることを含み得る。さらに、レジリエンスを増大させる際に支援する1つ以上のアセットを選択することを含んでもよく、この選択は、アセットの適合性に基づいて行われてもよい。たとえば、可能な限り高い健全性、可用性および場合によっては能力も有する最高の適合性を有するアセットを選択し、用いることが可能である。また、アセットの健全性、可用性および場合によっては能力にも基づいて選択することも可能である。主制御モジュールMCMはその後、このレジリエンスに影響を及ぼす、選択されたアセットなど、アセットの1つ以上の動作を変更してもよい。これは、局所制御ユニットに対して、対応するアセットの制御を変更するように指示することを含み得る。
【0097】
マイクログリッドのレジリエンスの測定値を、たとえばレジリエンス標識として設けることによって、自動化された適合アクション(たとえば、再構成、アイランド化、負荷制限など)を完全にまたは部分的に実現することが可能になる。また、災害または予測不可能な破壊的事象(たとえば、異常気象事象、サイバーアタックなど)の場合、マイクログリッドの復旧時間およびコストを最小限にし得る。
【0098】
次に、レジリエンスの対応のある詳細な変形例について、図6図7および図8を参照して説明する。図6は、中央制御ユニットと局所制御ユニットとの間のデータのやり取りを示し、図7は、局所制御ユニットにおける異なる所望の機能についての機能コミットメントの計算を示し、図8は、レジリエンスを評価するための中央制御ユニットによるすべてのそのようなコミットメントの結合を示す。
【0099】
1.各健全性、可用性および場合によっては能力またはアセット状態は、指数のセット、「アセット状態指数」という名称のSt(i)によって特徴付けられてもよい。St(i)は、スカラー指数の配列でもよい。各指数は、スケール(たとえば、0~5、0%~100%など)にわたる、アセットの監視された特徴の健全性状態(たとえば、ハードウェアおよび通信状態、制御モードおよびサポートされる特徴、利用可能な貯蔵エネルギーなど)を指す。
【0100】
2.局所制御ユニットのコミットメント判断モジュールCDMによって判断されるアセットの状態指数St(i)(その一部またはすべて)が、他の局所制御ユニットの他のコミットメント判断モジュールに、および中央制御ユニット30のレジリエンス判断モジュールRDMに、同報通信されてもよい。中央制御ユニット30のレジリエンス判断モジュールRDMは、ネットワークおよびインターフェース26の遮断器の状態指数を監視するタスクを有する。
【0101】
3.局所制御ユニットの各々は、制御されたアセット(たとえば、エネルギー貯蔵、ディーゼル発電機、PVなど)について、すべてのアセットの機能、健全性、可用性および能力モデルに基づいて、たとえば「機能コミットメント指数」(図1のFC1、FC2、FC3およびFC4)として機能コミットメントを計算する。可用性、健全性および能力に加えて、アセットのコミットメント指数は、グリッド内の他のアセット、すなわち、他のコンポーネント、ネットワーク、および制限の状態、ならびに検討されたアセットの状態にも基づいて、さまざまな動作特徴を実行する能力を示す。
【0102】
コミットメントを計算する提案された方法は指数であり、この指数は数式(1)で与えられ、式中、F(Asset i, Functions j)は、機能jを設ける際のアセットiの寄与を提供し、SAssetは、異なるマイクログリッドアセットの状態または可用性を表す。
【0103】
【数1】
【0104】
たとえば、電力バランスを提供する際のディーゼル発電機のコミットメントは、以下の数式によって計算可能である。
【0105】
【数2】
【0106】
局所制御ユニットの各々は、特定のアセットが関与すると推定される異なる破壊的事象対応機能F1、F2、F3(たとえば、電力バランス、電圧制御、周波数制御、ブラックスタートなど)について、コミットメント指数を計算する。計算では、ハードウェア、ソフトウェア、通信可用性、健全性、ならびに制御制限、ヘッドルームおよび制限、利用可能な電力、局所制御モードなどのモード、サポートされる特徴などといった能力が考慮される。説明的な例が図7に示される。機能コミットメントモジュールの実現のために、図7の故障制限およびネットワーク検査を実施しなければならないことがあり、それらは、明らかな障害状態の異常の状態を示す状態指数の閾値を定義する。
【0107】
障害調査は、通信障害、ハードウェアおよびソフトウェア障害、極限電力ならびにネットワーク構造の調査を含み得る。
【0108】
4.分散制御の設計原理に続いて、機能jのアセットiの機能コミットメント指数、すなわち各マイクログリッドアセットのF(i,j)は、すべての他の局所制御ユニットに、かつ中央制御ユニットに、同報通信される。同報通信の制限を、必要に応じて実現可能である。図8の中央制御ユニット30はデータアグリゲータとして動作し、ネットワークおよび遮断器機能コミットメント指数を監視するタスクも有し、それらをすべての局所制御ユニットに同報通信する。
【0109】
5.図8に示すように、中央制御ユニット30において、レジリエンス指数が最終的に計算される。レジリエンス判断モジュールは、すべての局所制御ユニットから収集された機能コミットメント指数F(i,j)を入力として有し、スカラー指数、レジリエンス指数のセットを出力として与える。
【0110】
破壊的事象の際にマイクログリッドの回復に必要な機能(たとえば、電力バランス、周波数制御および電力制御、ブラックスタートなど)ごとに、マイクログリッドレジリエンスが、スカラー指数(たとえば、0%~100%)でそのような機能を提供可能なすべてのアセットの順位として評価される。すなわち、機能jに対するマイクログリッドのレジリエンスは、以下の数式で計算されてもよい。
【0111】
【数3】
【0112】
これらの指数は、オペレータ端末40を介してマイクログリッドオペレータに、簡潔で効果的な手段で伝えられる。レジリエンス指数ごとに、自動警報閾値を中央制御ユニットで実現し、マイクログリッドオペレータに伝えることが可能である。
【0113】
災害の場合、マイクログリッドオペレータは、以下について修復に必要な機能ごとに情報を有し得る。
・マイクログリッド内の修復機能の可用性
・どのアセットがそのような機能を実行可能か
・災害後のアセットの出力を定格より下げることについての表示
・介入の修復に際してどのアセットを優先させるべきか
オペレータおよび/または中央制御ユニットは最終的に、破壊的事象の際に復旧時間の最小化に寄与し得る適応アクションについて決定できる。
【0114】
提案された計画の主な利点は、以下のように要約できる。
1.提案されたアプローチの最も重要な利点は、レジリエンスについて貴重な情報を提供することである。これによって、多くのアプリケーションについてマイクログリッド機能をサポートできる。
【0115】
2.また、マイクログリッドのよりスマートな制御を提供可能であり、再開時間を減らすマイクログリッドレジリエンスを改良するために予防策をとることが可能である。
【0116】
3.特に自然災害またはサイバーアタック後に、膨大な量の事後保全コストおよび予防保全コストを節約可能である。
【0117】
次に、さらに別の実現例について、図9図10図11および図12を参照して説明する。図9は、中央制御ユニットおよび複数の局所制御ユニットにおいて行われる処理に基づいて、中央制御ユニットにおいてレジリエンス判断を実現する制御概略図を示し、図10は、中央制御ユニットおよび複数の局所制御ユニットにおいて行われる処理に基づいて、中央制御ユニットにおいてレジリエンス判断を実現する代替的な制御概略図を示し、図11は、中央制御ユニットおよび複数の局所制御ユニットにおいて行われる処理に基づいて、中央制御ユニットにおいてレジリエンス判断を実現する別の代替的な制御概略図を示し、図12は、中央制御ユニットおよび複数の局所制御ユニットにおいてレジリエンス判断を実現するさらに別の代替的な制御概略図を示す。
【0118】
図9は、考慮されるマイクログリッドのある制御概略図を示す。各マイクログリッドアセットは、すべてのマイクログリッドアセットの状態に基づいて、対応するアセットの動作を最適化する局所制御ユニットを有し、かつ、アセット状態を他のマイクログリッドアセットと共有することが分かる。
【0119】
図9では、各マイクログリッドアセットは、検討されたアセットのソフトウェアSW、ハードウェアHW、および通信CCを表す3つの主なブロックを有する局所制御ユニットでモデル化されることが分かる。これらの3つの種類の状態データは共に、各マイクログリッドアセットの状態、たとえば、負荷速度、(エネルギー貯蔵についての)能力レベル、メンテナンス履歴などを記載可能である。それゆえ、これらの3つの部分はすべて、可用性、健全性および能力を示すいわゆる「アセット状態指数」を有するアセット状況を説明するために、各マイクログリッドアセットで用いられてもよい。
【0120】
なお、レジリエンス判断モジュールを実現する決定ユニットが、図9において別のユニットとして呈示されている。代替例として、局所制御ユニットのいずれかに、かつ、中央制御ユニットに、含まれてもよい。レジリエンスは、状態データを介して取得される可用性にのみ基づいて判断されてもよい。
【0121】
異なる所望の機能を提供する際の各アセットの寄与は、前述のように、機能コミットメント指数と呼ばれる指数のセットによってモデル化されてもよい。コミットメント指数の計算を簡潔にするために、各マイクログリッドアセットの可用性、健全性、能力および適合性が、アセット状態指数St(i)およびアセット重要性指数Im(i,f)という名称の2つの指数によって呈示される。前者はマイクログリッドアセットごとに定義される3つの前述の基本的な部分に基づいて取得される一方で(すなわち、ソフトウェア、ハードウェア、および通信)、適合性と関係があるアセット重要性指数Im(i,f)は、すべてのマイクログリッドアセットの全体的な状況と所望のマイクログリッド機能とに基づいて判断される。
【0122】
図10は、マイクログリッドを動作させる別の手段を表す。この図では、アセット状態指数St.(i)はアセット内部状態に基づいて導出される一方で、アセット重要性指数Im.(i,f)は、他のマイクログリッドアセットの状態にも左右されるため、局所制御ユニット内で判断されることが分かる。これらの2つの指数をアセットごとについて計算可能な方法について、以下でさらに明確に説明する。
【0123】
なお、また、アセット重要性指数Im.(i,f)は異なるマイクログリッド機能、すなわち、破壊的事象に対応する機能について変わってもよく、これは、他のコンポーネントの状態に応じて、異なるマイクログリッド機能を提供可能なアセットの数に基づいて、検討されたアセットのアセット重要性指数が異なり得ることを意味する。たとえば、マイクログリッド機能1を提供可能なマイクログリッド(検討されたアセットは別として)において、3つ以上のアセットが存在する状況を仮定する。しかしながら、検討されたアセットは、機能2を提供可能なマイクログリッド内のアセットのみである。そのような状況では、機能2についてのコンポーネントのアセット重要性指数は、機能1についての指数よりもはるかに高い。したがって、各マイクログリッドアセットは、考慮されるマイクログリッド機能の数に応じて、複数のアセット重要性指数を有する。図11は、複数のマイクログリッド機能を考慮した、提案される制御概略図を示す。
【0124】
くわえて、複数のマイクログリッド機能および分散制御コンセプトを考慮する制御概略図が、図12に示される。この図に示される模式図では、決定プロセスを実行できる2つ以上の局所制御ユニットが存在する。
【0125】
図11図12との両方において、決定プロセスを行う局所制御ユニットは、必要とされる警報信号をマイクログリッドオペレータに呈示しなければならないことが強調されるべきである。
【0126】
動作中、アセット状態指数St.(i)およびアセット重要性指数Im.(i.f)を、アセットごとに常に計算してもよい。アセット状態指数St.(i)を計算するために、各アセットのすべての基本部分(すなわち、ソフトウェア、ハードウェア、および通信)の現在および過去の動作状態が評価されてもよく、アセット状態指数が導出される。この指数計算をより明確に示すために、表の例(表I)は次のように提案される。
【0127】
【表1】
【0128】
この表によると、
-ソフトウェア状態は、S1+S2に等しく、2~4の間で変わり得る。
-ハードウェア状態は、H1+H2+H3に等しく、3~6の間で変わり得る。
-通信状態は、C1+C2に等しく、2~4の間で変わり得る。
-アセット状態指数St.(i)は、S1+S2+H1+H2+H3+C1+C2に等しく、7~14の間で変わり得る。
【0129】
なお、この表において提案された値および項目は、アセットの可用性および適合性を例示するための例にすぎない。
【0130】
アセット状態指数計算と同様に、アセット重要性指数Im.(i,f)も、表2において提案されたもののように、ルックアップテーブルによってアセットごとに計算可能である。
【0131】
【表2】
【0132】
表IIにおいて、MGはマイクログリッドの略語である。
この表によると、
-これらの4つの機能のうちいずれかに対するアセット重要性指数Im.(i.f)は、X1+X2に等しく、2~5の間で変わってもよく、Xは、P、V、FまたはBでもよい。
【0133】
上述の動作によると、すべてのアセットのすべてのアセット状態指数およびアセット重要性指数は、各所望の機能に対してマイクログリッドのレジリエンスを計算するために次のステップで用いられる。レジリエンスはここでは、レジリエンス指数として判断される。そのために、以下の数式を用いてもよい。
【0134】
【数4】
【0135】
【数5】
【0136】
これらの数式を用いて、レジリエンス判断モジュールを実現する決定ユニットは、各機能に対するマイクログリッドについてリスクレベルを計算し、取得した値および複数の事前に定義された閾値レベルに基づいて、適切な警報信号をシステムオペレータに示す。
【0137】
重要性指数についてより進化した形態の計算で、表IIの「2つ以上」、「あと1つのみ」、「それ以上なし」などの変数は、他のアセットの状態に依存し得る。一例として、2つのコンポーネントが1つの機能をサポートするもののみである場合、2つ以上のアセットを利用可能である。しかしながら、これらのアセットのうちの1つがメンテナンス状態が悪いために高い障害のリスクを有する場合、この機能を安全に提供可能なアセットが「それ以上ない」ため、他のアセットがさらに重要になる。重要性指数は、そのような実現例において、他の平行ユニットの状態がどれほど悪いかを記すために10進値を有し得る。
【0138】
上述のマイクログリッドに対して多くのさらに他の変形例が可能である。明らかなように、レジリエンス判断モジュールを任意の制御ユニットに配置してもよい。また、レジリエンス判断モジュールは、任意の制御ユニットに配置してもよい。しかしながら、レジリエンス判断ユニットと組み合わされるべきである。
【0139】
コミットメント判断モジュールは、分散していると説明された。コミットメント判断モジュールは、異なる制御ユニットに設けられる。主制御ユニットまたは局所制御ユニットのうちの1つに配置された1つの中央コミットメント判断モジュールがある代替例も可能である。これが行われると、機能コミットメントを判断するための入力として用いられるデータを、すべての他の制御ユニットからこの制御ユニットに提供してもよい。
【0140】
ある側面は、レジリエンスを判断するための配置に関する。この配置は、コミットメント判断モジュール、レジリエンス判断モジュールおよびレジリエンス調査モジュールなどの、この判断に関与するモジュールを含む。場合によっては、データ収集モジュールを含み得る。また、この配置は制御ユニットも含んでもよく、これらの制御ユニットでは、局所制御モジュールおよび中央制御モジュールなどの、これらのモジュールが実現される。
【0141】
モジュールは、特定用途向け集積回路(ASIC)およびフィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのハードウェアモジュールとして実現されてもよい。しかしながら、上述のように、ソフトウェア、すなわち、コンピュータプログラムコードとして実現されてもよい。
【0142】
レジリエンス判断モジュール、ならびにコミットメント判断モジュール、ならびに場合によってはデータ収集モジュールおよびレジリエンス調査モジュールも実現するために用いられるこのコンピュータプログラムコードは、プロセッサによって動作されるとこれらのモジュールのアクティビティを行う1つ以上のデータキャリア上に設けられてもよい。CD ROMディスクの形式で前述のコンピュータプログラムコード72を有する、あるそのようなデータキャリア70を、図13に概略的に示す。そのようなコンピュータプログラムは、代替例として、システムモデル生成およびシミュレーション装置を取得するために、サーバ上に設けられ、サーバからコンピュータにダウンロードされてもよい。
【0143】
現在最も実用的で好ましいと考えられるものに関連して本発明の説明を行ったが、本発明は、開示された実施形態に制限されるのではなく、さまざまな変形例および同等の配置を包含すると意図されると認識されるべきである。本発明は、以下の請求項の範囲だけに制限されるわけではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13