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  • -雨水利用分流装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】雨水利用分流装置
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/08 20060101AFI20220302BHJP
   E03B 3/03 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
E04D13/08 E
E03B3/03 A
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018141919
(22)【出願日】2018-07-28
(65)【公開番号】P2020016135
(43)【公開日】2020-01-30
【審査請求日】2020-05-26
(73)【特許権者】
【識別番号】509299444
【氏名又は名称】シップスレインワールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183715
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 康治
(72)【発明者】
【氏名】中山 義光
【審査官】齋藤 智也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-158416(JP,A)
【文献】特開2012-172369(JP,A)
【文献】実開昭54-035424(JP,U)
【文献】特開昭53-148714(JP,A)
【文献】特開2009-121198(JP,A)
【文献】国際公開第2009/015440(WO,A1)
【文献】韓国登録特許第10-1051133(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 1/00 - 3/40
E04D 13/00 - 15/07
E03B 1/00 - 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雨水が流れ込む集水管に接続され、雨水を分流する装置であって、上下方向に延びる柱体の上部において横断面が筒状を有し集水管に嵌合して雨水を導入する入口部とその下部に位置する柱体の雨水を受ける面である上面と雨水を排出する出口部となる下面を貫通して一定の距離を置いて等間隔に形成された3個以上の複数の分流孔を有する分流部からなる本体部と、本体部の前記入口部に嵌めこまれたネット部と、本体部の前記分流部の下面の各分流孔に継合される分岐管とから構成されることを特徴とする雨水利用分流装置。
【請求項2】
前記ネット部が、前記複数の分流孔を有する分流部の上面から一定の距離をおいて上方に設置されていることを特徴とする請求項1に記載の雨水利用分流装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水の有効利用を図ることができる新規な雨水の分流装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建造物の屋根或いは屋上に降った雨水は、軒端の雨樋や集水口から地上に繋がる筒状の集水管である竪樋へと流れ込み下水管を通じて河川等に排水される。
近年、雨水を単に排水・廃棄するのではなく水資源の有効利用として、様々な用途に使用する試みがなされている。例えば、水不足の際の対応として貯水槽に蓄え、又は建物に降った雨水の一部をガーデニングや散水等の雑用水として使用することが知られている。
【0003】
また特にコンクリート建造物では、省エネ対策として、夏場にサンルーフテラスやベランダなどに植物による緑壁を作って直射日光を避け涼陰となる環境や場所を提供している。これらの植物への給水としても雨水が利用されている。
【0004】
緑壁のある建物が複数階の建造物の場合、各階に植えられている植物に雨水を供給するには、屋根等に降って軒端から横樋に流れ込んだ雨水を集水口で受けて集水管である竪樋を伝わって流れる落ちる間に分流することが考えられている。
【0005】
この雨水を分流する手段として、様々な分流装置、又は方法が提供されている。
例えば、特許文献1に開示されているように、三方向分岐管の下方に向いている排出出口のバルブを閉め、其処に雨水が溜まり溢れることでその上部にある利水出口に雨水を供給する雨水利用装置がある。
【0006】
また、特許文献2に開示されているように、樋の途中を排水路1と2に分岐し、その間に切り替え板を設けて雨水の流れを1又は2に切替える。切り替え板には雨水一時受けタンクを設け、雨水がタンクに溜まるとその重量で切り替え板を回動させ排水路を切替える雨水利用システムがある。
【0007】
また、特許文献3に開示されているように、建物の階ごとに外壁に沿うようにして横方向に雨樋が配されており、各雨樋には階下の雨樋に排水する筒状集水器が取り付けられている。雨樋の底面から所定の高さを定めて設置してある筒状集水器の集水口の壁を雨水量が越えると雨水が階下の雨樋に流れ、最終的には地上に設置してある貯水タンクに貯める雨水循環システムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平09-21165号公報
【文献】特開平10-37255号公報
【文献】特開2012-107451号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、文献1に記載の雨水利用装置は、その都度バルブの開閉を調整して利水出口まで雨水を溜める必要があり、文献2に記載の雨水利用システムは、切り替え板のタンクに雨水を溜めて切り替え板を回動させ、排水路を切り替えると一方の水路に雨水が流れている間は、他方の水路には雨水は流れないという課題があった。また、文献3に記載の雨水循環システムは、上階の雨樋に一定の雨水が貯まらないと階下の雨樋に雨水が流れていかないという課題があった。また、何れの手段もそのままの状態で放置すると貯留した雨水が残存してしまうという課題があった。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、集水管から流れ落ちてくる雨水を貯留することなしにほぼ等しく分流して利用することができる雨水分流装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載された発明に係る雨水利用分流装置は、雨水が流れ込む集水管に接続され、雨水を分流する装置であって、上下方向に延びる柱体の上部において横断面が筒状を有し集水管に嵌合して雨水を導入する入口部とその下部に位置する柱体の雨水を受ける面である上面と雨水を排出する出口部となる下面を貫通して一定の距離を置いて等間隔に形成された3個以上の複数の分流孔を有する分流部からなる本体部と、本体部の前記入口部に嵌めこまれたネット部と、本体部の前記分流部の下面の各分流孔に継合される分岐管とから構成されることを特徴とするものである。
【0012】
請求項2に記載された発明に係る雨水利用分流装置は、請求項1に記載のネット部が、前記複数の分流孔を有する分流部の上面から一定の距離をおいて上方に設置されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の雨水利用分流装置によれば、複数の分流孔を有する分流部の上方にネット部を設置することで集水管を伝わって流れ落ちてくる雨水を拡散してほぼ均等に各分流孔に流し込むことができ、雨水を貯留することなしに分流することができるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は雨水利用分流装置の本体部とネット部を離した斜視図を示した説明図である。
図2図2は雨水利用分流装置の断面図を示した説明図である。
図3図3は雨水利用分流装置の(a)は単層、(b)は二層のネット部を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る雨水利用分流装置の実施の形態を図1~3に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1に示すように、本発明の雨水利用分流装置は、本体部01と本体部に着脱可能なネット部20、及び分岐管30の3つの部材から構成され、雨水の集水口に継続した集水管である竪樋40に接続される。尚、竪樋40の上方には雨水に混入しているゴミを取り除く集塵除去装置(図示せず)が設置されている。
【0017】
図2に示すように、本発明の雨水利用分流装置は、この集塵除去装置を通過した雨水が流れる竪樋40に接続される前記本体部01の上部に位置し雨水を導入する入口部03にネット部20を設置し、ネット部20と分流孔04を有する分流部02の上面05との間に空間07を設ける構成とすることで、本体部内で雨水を拡散する機能と、その拡散された雨水を速やかに分流孔04で分流する機能を有し、更に本体部01の分流部02の下面06の雨水の出口となる分流孔04の下端に分岐管30を取付けることで、分流された雨水を各方向に分岐して排出する機能を備えたことを最大の特徴とするものである。
【0018】
例えば、屋根に降り注いだ雨は、軒先に横方向に備えた樋に流れ落ち、その横樋を伝わって集水口に集められ、その集水口に継続した集水管である竪樋40に流れ込む。竪樋40から地上へと流れる際、雨水は竪樋40の管内全体ではなく、管内の何れかの側に流れ筋を作り、偏った流れで落下していくのが通常である。従って、雨水を均等に分流するには、一旦貯水槽等に雨水を貯めて其処から分岐した排出口により流す必要がある。
【0019】
本発明に係る雨水利用分流装置は、雨水の偏った流れを本体部01の上部の入口部03に設置したネット部20で受けることで、雨水を拡散させることを可能にしている。これは、ネット部20に落下した雨水が、水の表面張力の働きによりネット部20のネット24を塞いでネット部20の底面部22に張り巡らされたネット24を伝わってネット部20のネット24全体に広がることを利用したものである。従って、従来の貯水槽等による雨水の溜めを必要としない。
【0020】
そして、ネット部20のネット24全体に広がり自重によりネット24から落下した雨水は、ネット部20の下に一定の距離をおいて位置する分流部02に形成された複数の分流孔04に流れ込む。このとき多少の量的な違いは生じるものの前述したように雨水はネット部20のネット24全体に広がって流れ落ちることから、各分流孔04にはほぼ均等量の雨水が分散されて流れ込む。
【0021】
雨水利用分流装置の本体部01は、上下方向に延びる柱体の少なくとも上部半分の横断面が筒状を有して竪樋40に嵌合・接続して雨水を導入する入口部03と、その下部に位置する柱体から成る入口部03から受けた雨水を分流する分流部02から構成される。
【0022】
分流部02は、本体部01の下部に位置しており、複数の分流孔04が形成されている。この分流部02に設けられた複数の分流孔04は、本体部01の上部にある入口部03から流れ込む雨水を受ける面である分流部02の上面05と、その雨水を排出する出口部となる分流部02の下面06を貫通して各分流孔04が一定の距離を置いて等間隔に形成されている。
【0023】
分流孔04の数は、雨水を分流したい数に応じてその必要数を形成することができる。例えば、建物の1階から3階に亘る3箇所に雨水を分流して供給する場合には、3個の分流孔04が形成された本体部01を使用する。
【0024】
また、分流部上面05の各分流孔04の縁部に円錐状又は擂鉢状のザグリ10が形成されている。このザグリ10を形成しておくことで、ネット部20から落下してくる雨水をより円滑に分流孔04に流し込むことができる。
【0025】
入口部03は、分流部02の上面縁辺から上方に筒状に延びて形成されており、雨水の竪樋40に嵌設して雨水の取り入れ口を構成している。
【0026】
この筒状の入口部03の形状及び外径は、竪樋40の管の形状及び内径に準じて等しいものを採用しており、その竪樋40の管内に嵌挿できるように本体部01の外壁08の上端から下方向に一定の長さに亘り、その周囲に切り欠き加工を施して段差09を形成している。
【0027】
この段差09は、竪樋40の管の厚みに等しい距離を有しており、本体部01の切り欠き加工を施してある入口部03の外径は、竪樋40の管の内径のサイズに合わせて調整されており、入口部03を竪樋40の管内に嵌挿すると双方の外周壁面が一致するものとなっている。
【0028】
また、この入口部03には、ネット部20が分流部02の上面05から一定の距離をおいて嵌め込まれるようになっている。
【0029】
このため、分流部02の上面縁辺から上方に延びた入口部03の長さは、ネット部20を嵌合した際、ネット部20の底面部22が分流部02の上面05に接することがないようにその長さが調整されている。
【0030】
このように、本体部01は、竪樋40に嵌挿して雨水を導入する筒状の入口部03と柱体に複数の分流孔04を有する分流部02とが継合一体化して全体として上下方向において凹形状を有しているものである。
【0031】
ネット部20は、本体部01の入口部03に嵌合する環状部21と、環状部21の下面をネット24で覆う底面部22と、環状部21の上端部から半径方向外側に突設した外延部23から構成される。
【0032】
環状部21は、ネット部20の本体を形成するものであり、本体部01の入口部03に準じた形状を有している。また、その環状部21は、本体部01の入口部03に密接に嵌合するように環状部21の外径は本体部01の入口部03の内径に合わせて調整されている。
【0033】
環状部21の上端部から半径方向外側に突設した外延部23の長さは、本体部01の入口部03の上端部11の円環幅と同じ距離を有しており、ネット部20を入口部03に嵌合した際に外延部23が入口部03の上端部11に納まるように載置される。
【0034】
環状部21が本体部01の入口部03に嵌合され、外延部23が入口部03の上端部11に載置されることで本体部01とネット部20が一体化することになる。
【0035】
また、環状部21の上端部から底面部22までの長さは、分流部02の上面05から上方に筒状に延びた入口部03の長さよりも短く設計されている。これにより分流孔04が形成されている分流部02の上面05とネット部20の底面部22の間には一定の距離を有する空間07が作られる。
【0036】
この空間07を有することで、ネット部20で拡散された雨水は、拡散を維持したままの状態で落下することができる。これによりネット部20の下方に隔在して位置する分流部02の複数の分流孔04にほぼ均等量の雨水を拡散して流すことができる。
【0037】
ネット部20の底面部22は、環状部21の下部に位置し、ネット24が形成されている。このネット24のサイズは、大きすぎると水の表面張力が働かず、雨水は拡散せずに通り抜けてしまう。また、小さすぎると雨水がネット24を通過するのに時間が掛かり分流装置本体内に雨水が滞留してしまう。従って、ネット24のサイズとして好ましくは20~60メッシュの範囲であり、より好ましくは30~40メッシュの範囲である。
【0038】
このネット24は、例えば、網状に形成された合成樹脂製ネット又は金属製ネット等、前述したように水の表面張力が働き、雨水が拡散して落下する機能を有するものならどのようなものを用いてもよい。
【0039】
また、図3に示すようにネット部20は1つのネット24に限定されるものでなく複数のネット24を使用しても良い。この場合も第1ネット24aと第2ネット24bとの間に空間25を設けることで、空間07と相俟って雨水の拡散をより効果的に発揮することが可能となる。
【0040】
分岐管30は、本体部01の複数の分流孔04が形成されている分流部02の下面06の各分流孔04に継合して、各分流孔04からの雨水を目的とする方向に供給する。分岐管30には、上下方向に延びたパイプ体、又はL字型のパイプ体など種々の形態があり、目的に応じて使い分けることができる。また、分岐管30を分流孔04に固定してもよいが、着脱可能とすることで用途に応じて種々の形態の分岐管30の使用が可能となる。
【0041】
また、分岐管30を着脱可能とすることで水の供給が不要な箇所への分岐管30を取り外し、その分流孔04を塞ぐことで必要としない箇所への雨水の供給を止めることができる。
【0042】
このように分岐管30の上端は分流孔04に継合させ、下端は同じパイプ体や可とう管を連結させて連通することで必要に応じて距離を調整し、それぞれの目的箇所に雨水を分流供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
以上のように、本発明に係る雨水利用分流装置は、建造物において集水管から流下する雨水を貯留することなしに分流して雑用水に利用するための分流装置として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0044】
01 本体部
02 分流部
03 入口部
04 分流孔
05 上面
06 下面
07 空間
08 本体外壁
09 段差
10 ザグリ
11 上端部
20 ネット部
21 環状部
22 底面部
23 外延部
24 ネット
30 分岐管
図1
図2
図3