(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】イヤリング保持装置およびイヤリング
(51)【国際特許分類】
A44C 7/00 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
A44C7/00 A
(21)【出願番号】P 2021544792
(86)(22)【出願日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 JP2021017286
【審査請求日】2021-08-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521191333
【氏名又は名称】株式会社ジュエリー京都
(74)【代理人】
【識別番号】100088029
【氏名又は名称】保科 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】千徳 宏
【審査官】関口 知寿
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-289910(JP,A)
【文献】実開昭59-162010(JP,U)
【文献】特開2003-210219(JP,A)
【文献】国際公開第2019/175938(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A44C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳たぶを跨ぐUの形状であり、線材からなるイヤリング本体を耳たぶに保持するためのイヤリング保持装置であって、
そのイヤリング保持装置は、前記イヤリング本体の構成要素である、第1の線材アームおよび第2の線材アームと、それら第1の線材アームと第2の線材アームとを揺動可能に連結する連結機構とを備え、
第1の線材アームは、Uの一部を欠く形状で、一端に耳たぶに当たる第1のパッドを支持し、他方、第2の線材アームは、第1の線材アームにおける、前記Uの一部を欠く部分を補充し、第1の線材アームと相俟って前記Uの形状を形作り、しかも、一端が第1の線材アームとの連結側になり、他端に耳たぶに当たる第2のパッドを支持する構成であり、
さらに、前記連結機構は、次のA、B、Cの構成および条件を充足する、イヤリング保持装置。
A 第1の線材アームは、第1のパッドを支持する側とは反対側に、第2の線材アームにおける、第2のパッドを支持する側とは反対側との間を揺動可能に支持する揺動支持部をもつ
B 前記第1の線材アームは、第1のパッドを支持する側とは反対側には、前記揺動支持部よりも第2の線材アーム側に向かって伸びる延長アーム部をもつ
C 前記第1の線材アームの延長アーム部は、第1の線材アームと第2の線材アームとがUの形状を形作る状態において、第2の線材アームの動きを阻止するような弾性的な抵抗力を生じる構成であり、それにより、Uの形状を形作る状態において、第1のパッドと第2のパッドとが離れようとする動きを阻止する一方、第1のパッドと第2のパッドとが近づこうとする動きを許す
【請求項2】
前記第1の線材アームにおける揺動支持部は、第1の線材アームが伸びる方向とは交差する線材支持軸であり、その線材支持軸の周りに、前記第2の線材アームにおける、第2のパッドを支持する側とは反対側の屈曲部が支持され、それにより、第2の線材アームは、線材支持軸を中心に回転し、第1の線材アーム側の第1のパッドと第2の線材アーム側の第2のパッドとの距離を変えるように動くことができる、請求項1のイヤリング保持装置。
【請求項3】
前記第2の線材アームが第1の線材アームと相俟ってUの形状を形作る状態から、第2の線材アーム側の第2のパッドが第1の線材アーム側の第1のパッドから離れようとする第1の動きをするとき、そしてまた、その第1の動きにより第2のパッドが第1のパッドから離れた状態から、第1の線材アームおよび第2の線材アームがUの形状を形作るように動く第2の動きをするいずれの動きのときにも
、第1の線材アームが第2の線材アームの動きに対し、その動きを阻止するような弾性的な抵抗力を生じる構成である、請求項2のイヤリング保持装置。
【請求項4】
第2の線材アームは、第1の線材アーム側の線材支持軸に支持される屈曲部と、第2のパッドを支持するパッド支持個所との間に、互いに並行する二本のアーム部分を含み、それら二本のアーム部分の間にすき間を作り、そのすき間を前記第1の線材アームの延長アーム部が通過する際に、前記弾性的な抵抗力を生じる、請求項3のイヤリング保持装置。
【請求項5】
前記第2の線材アーム側の二本のアーム部分のすき間は、第2のパッドを支持する
パッド支持個所の側から前記屈曲部に向かうにつれて幅が広くなるテーパー状であり、しかも、前記第1の線材アームの延長アーム部の径は、テーパー状のすき間の広狭中間の大きさである、請求項4のイヤリング保持装置。
【請求項6】
請求項1のイヤリング保持装置を備えるイヤリングであり、イヤリング本体から加わる弾性力ではなく、第1のパッドおよび第2のパッドが生じる弾性力によって、耳たぶへの保持力を得る、イヤリング。
【請求項7】
イヤリング本体は金属製であり、第1のパッドおよび第2のパッドは高分子材料製である、請求項6のイヤリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、耳たぶの両側を挟み込むようにして取り付けるイヤリングの技術に関し、特には、耳たぶを跨ぐUの形状であり、線材からなるイヤリング本体を耳たぶに保持するためのイヤリング保持装置、およびそのイヤリング保持装置を含むイヤリングに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の耳たぶの両側を挟み込むタイプのイヤリングの主体は、耳たぶを跨ぐイヤリング本体である。イヤリング本体は、一般的に、CあるいはUの形状である。イヤリングが耳飾りであることから、イヤリング本体に積極的に装飾機能をもたせる考え方と、イヤリング本体は、主として保持あるいは支持のための部材とし、そこに他の装飾部品を取り付ける考え方とがある。前者の考え方によれば、イヤリング本体は目立つ存在となり、後者の考え方によれば、イヤリング本体はできるだけ目立たないような隠れた存在となる。
【0003】
一方、このようなイヤリング本体には、そのイヤリング本体が全体的に一部品あるいは一体的な構成の第1タイプと、二つの部品構成とし、それら二つの部品を開閉可能にした第2タイプとがある。一部品構成の第1タイプのイヤリング本体は、一般的に、耳たぶへの保持あるいは取付けが比較的に面倒であるのに対し、二つの部品構成の第2タイプのイヤリング本体は、開閉可能な点から、耳たぶへの保持あるいは取付けが比較的に容易である。たとえば、特許文献1や2は一部品構成の第1タイプを示し、特許文献3や4が二つの部品構成の第2タイプを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第3022781号公報
【文献】WO2019/175938A1
【文献】特開2014-151038号公報
【文献】特開2017-121382号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明者は、イヤリング本体が二つの部品構成である第2タイプに注目した。第2タイプでは、二つの部品が開閉可能であるため、イヤリング本体あるいはイヤリングを耳たぶに容易に取り付けることができるからである。
【0006】
しかし、二つの部品構成の第2タイプでは、二つの部品を揺動可能に連結する連結機構が必要であり、しかもまた、特定の開閉状態において、二つの部品の開閉状態を保持するための保持手段が必要である。そのような連結機構や保持手段を備えるため、第2タイプは、第1タイプに比べて、二つの部品の連結個所の体積を大きくせざるを得ない。そのため、イヤリング本体の部品の少なくとも一部が大きくなることから、イヤリング本体をできるだけ目立たないようにする場合に難点となる。そのため、たとえば線材で構成する目立たない存在のイヤリング本体を、開閉可能な二つの部品をもつ第2タイプにすることは困難である。線材構成で目立たないイヤリング本体は、たとえば直径0.5mm程度の線材を主体に構成する。そのような線材を用いて、あるいは、そのような線材に対し、連結機構と保持手段とを設けることは技術的に困難である。
【0007】
そこで、この発明では、線材を主体としたイヤリング本体を二つの部品構成として開閉可能とした上に、それらの二つの部品を特定の開閉状態に保持することができる技術を提供することを目的とする。また、この発明は、耳たぶに対する装着感が快適であり、長時間にわたって装着した場合でも、耳が痛くなりにくいイヤリング技術を提供することを他の目的とする。この発明のさらなる目的については、今後の説明から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、基本的に、イヤリング保持装置に関し、そのイヤリング保持装置を含むイヤリングの技術にも関する。この発明のイヤリング保持装置の主体は、耳たぶを跨ぐUの形状であり、線材からなるイヤリング本体である。イヤリング本体をUの形状にすることは、Uの形状がCの形状よりも耳たぶに良くフィットし、保持の安定性が高いからである。しかし、保持の安定性が損なわれない範囲で、そのUの形状を変形することができる。
【0009】
また、この発明のイヤリングは、イヤリング本体を含むイヤリング保持装置に加えて、そのイヤリング保持装置に付属させた装飾部品を備える。装飾部品は、イヤリング保持装置のイヤリング本体に直接固定することもできるし、あるいは台座を挟んで固定することもできる。さらには、イヤリング本体に装飾部品を吊下げるように支持することもできる。すなわち、イヤリング保持装置のイヤリング本体に対し、装飾部品を付属させる手法は、いろいろ知られており、この発明のイヤリングでは、それらの公知の手法を広く適用することができる。
【0010】
この発明のイヤリング保持装置は、イヤリング本体が二部品構成の第2タイプであり、イヤリング本体の構成要素である、第1の線材アームおよび第2の線材アームと、それら第1の線材アームと第2の線材アームとを揺動可能に連結する連結機構とを備える。
【0011】
第1の線材アームは、Uの一部を欠く形状で、一端に耳たぶに当たる第1のパッドを支持し、他方、第2の線材アームは、第1の線材アームにおける、前記Uの一部を欠く部分を補充し、第1の線材アームと相俟って前記Uの形状を形作り、しかも、一端が第1の線材アームとの連結側になり、他端に耳たぶに当たる第2のパッドを支持する構成である。
【0012】
さらに、この発明のイヤリング保持装置において、第1の線材アームと第2の線材アームとを連結する連結機構は、次のA、B、Cの構成および条件を充足する。
A 第1の線材アームは、第1のパッドを支持する側とは反対側に、第2の線材アームにおける、第2のパッドを支持する側とは反対側との間を揺動可能に支持する揺動支持部をもつ
B 前記第1の線材アームは、第1のパッドを支持する側とは反対側には、前記揺動支持部よりも第2の線材アーム側に向かって伸びる延長アーム部をもつ
C 前記第1の線材アームの延長アーム部は、第1の線材アームと第2の線材アームとがUの形状を形作る状態において、第2の線材アームとの線材同士の弾性的な結合により、Uの形状を形作る状態を保持可能である
【0013】
この発明のイヤリング保持装置において、一つの見方からすると、前記第1の線材アームにおける揺動支持部は、第1の線材アームが伸びる方向とは交差する線材支持軸であり、その線材支持軸の周りに、前記第2の線材アームにおける、第2のパッドを支持する側とは反対側の屈曲部が支持され、それにより、第2の線材アームは、線材支持軸を中心に回転し、第1の線材アーム側の第1のパッドと第2の線材アーム側の第2のパッドとの距離を変えるように動くことができる。
【0014】
この発明のイヤリング保持装置において、他の見方からすると、前記第2の線材アームが第1の線材アームと相俟ってUの形状を形作る状態から、第2の線材アーム側の第2のパッドが第1の線材アーム側の第1のパッドから離れようとする第1の動きをするとき、そしてまた、その第1の動きにより第2のパッドが第1のパッドから離れた状態から、第1の線材アームおよび第2の線材アームがUの形状を形作るように動く第2の動きをするいずれの動きのときにも、Uの形状を形作る時点において、第1の線材アームが第2の線材アームの動きに対し、その動きを阻止するような弾性的な抵抗力を生じる構成である。
【0015】
この発明のイヤリング保持装置において、さらに他の見方からすると、第2の線材アームは、第1の線材アーム側の線材支持軸に支持される屈曲部と、第2のパッドを支持するパッド支持個所との間に、互いに並行する二本のアーム部分を含み、それら二本のアーム部分の間にすき間を作り、そのすき間を前記第1の線材アームの延長アーム部が通過する際に、前記弾性的な抵抗力を生じる。
【0016】
この発明のイヤリング保持装置において、さらに別の見方からすると、前記第2の線材アーム側の二本のアーム部分のすき間は、第2のパッドを支持する個所の側から前記屈曲部に向かうにつれて幅が広くなるテーパー状であり、しかも、前記第1の線材アームの延長アーム部の径は、テーパー状のすき間の広狭中間の大きさである。
【0017】
この発明のイヤリング保持装置において、第1あるいは第2のアームの一方を、互いに並行する二本のアーム部分を含む構成とすることにより、前記弾性的な抵抗力を得ることは、線材を活用する点で有効である。その活用の仕方として、テーパー状のすき間のほか、線材の湾曲変形を利用することにより、一方の凹部を他方の凸部が通過する構成にすることもできる。
【0018】
この発明のイヤリングは、開閉可能なイヤリング本体を含むイヤリング保持装置のほか、さらに装飾部品を付属するイヤリングである。そのイヤリングでは、イヤリング本体から加わる弾性力ではなく、耳たぶの弾性的な変形に伴なって、第1のパッドおよび第2のパッドの間に生じる挟み力によって、耳たぶへの保持力を得る。そのため、耳たぶに無理な力が加わることがなく、長時間装着した際にも、耳が痛くなることを避けることができる。イヤリング本体は金属製であるが、耳たぶに当たる、第1のパッドおよび第2のパッドは、耳当たりの良い材料、たとえば、ゴム材料を含む高分子材料製であることが好ましい。しかし、耳当たりに問題を生じない限り、より硬質な樹脂材料あるいは金属材料によって、各パッドを構成することもできる。耳当たりをさらに良くするため、各パッドにシリコンゴム製などのカバーを被せることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】この発明のイヤリング保持装置の一実施例であり、イヤリング本体が閉じた状態を示す斜視図である。
【
図2】
図1の実施例の別の状態であり、イヤリング本体が少し開いた状態を示す斜視図である。
【
図3】
図1の実施例のさらに別の状態であり、イヤリング本体が大きく開いた状態を示す斜視図である。
【
図4】(a)(b)(c)の三つを含み、
図1~
図3の各状態を正面から見た図である。
【
図5】(a)(b)(c)の三つを含み、
図1~
図3の各状態を上から見た上面図である。
【
図6】
図1の実施例のイヤリング保持装置を耳に装着した状態を示す図である。
【
図7】この発明のイヤリング保持装置の変形例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
イヤリング保持装置10は、線材からなるイヤリング本体20を耳たぶ(耳)に保持するためのものである。イヤリング本体20は、耳たぶを跨ぐUの形状であり、その大きさは、たとえば、Uの幅が7~8mm、Uの高さが10~12mmほどである。
【0021】
そのようなイヤリング本体20のUの形状は、通例、一本の線材により構成される。線材は、たとえば直径0.5mm程度の金属製の弾性をもつ材料である。ここで用いるイヤリング本体20も、同様の線材で構成するが、イヤリング本体20のUの形状を、第1の線材アーム210と第2の線材アーム220の二部品で構成する。イヤリング本体20の線材の材料としては、高強度ピアノ線などの金属線材が代表である。また、所定の強度を備えていれば、金属以外に、弾性復帰力を有する樹脂、炭素繊維、複合繊維などの材料を用いることもできる。
【0022】
イヤリング本体20の二つの線材アームのうち、一方の第1の線材アーム210は、Uの形状の一部を欠く形状であり、他方の第2の線材アーム220が、第1の線材アーム210側のUの形状の一部を欠く部分を補充する。すなわち、第1の線材アーム210と第2の線材アーム220とが相俟って、所定のUの形状を形作る。
【0023】
Uの形状を形作る第1の線材アーム210および第2の線材アーム220の開放側の各端部はリング形状である。これらリング形状の部分210r,220rは、耳たぶに当たるパッドを支持する個所になる。各リング形状の部分210r,220rには、内側の面に、台座となる金属製の円板30が固定されている。固定の手法は、一般的な接着あるいは溶接である。円板30は、たとえば真鍮製であり、内側に向かう一方の面が、耳たぶに当たるパッドを支持するのに対し、外側に向かう他方の面には、装飾部品(図示しない)を支持することができる。
【0024】
円板30上のパッド、すなわち、第1の線材アーム210側の第1のパッド410と、第2の線材アーム220側の第2のパッド420とは同じ構成である。両パッド410,420ともに、適度の剛性があり、肌当たりの良い柔らかい素材製である。その素材として、ウレタン、シリコン等の高分子エラストマーが好ましい。
【0025】
第1の線材アーム210と第2の線材アーム220とは、一方の端部に耳たぶに当たるパッドをもつ点で共通しているが、第1の線材アーム210は、Uの形がもつ二つの湾曲した部分を含む釣り針状であるのに対し、第2の線材アーム220は、比較的に短い直線状である。そして、第1の線材アーム210は、リング形状の部分210rを含んで、全体が一本の線材からなる。それに対し、第2の線材アーム220は、リング形状の部分220rは一本の線材であるが、直線状の個所には、互いに並行する二本のアーム部分220a,220bがある。
【0026】
短い直線状の第2の線材アーム220は、第2のパッド420を支持する側とは反対側に揺動支点をもち、その揺動支点を中心に
図1の閉じた状態から
図2および
図3の開いた状態に揺動可能である。この揺動のため、第1の線材アーム210には、揺動支持部となる線材支持軸50があり、その線材支持軸50の周りに第2の線材アーム220の二本のアーム部分220a,220bが取り巻くように連結されている。線材支持軸50は、第1および第2の線材アーム210,220と同様の線材からなり、第1の線材アーム210が伸びる方向とは直交するように交差している。その線材支持軸50は、長さが数mm程度(たとえば、2mm)であり、スポット溶接などによって第1の線材アーム210側に固定されている。
【0027】
そのような線材支持軸50を取り巻く、第2の線材アーム220の端部、つまり、二本のアーム部分220a,220bの端部は、閉じるような屈曲部222を構成する。揺動支持部となる線材支持軸50、およびそれを取り巻く屈曲部222は、Uの形状の湾曲した部分に近いところに位置する。その位置は、
図1のイヤリング本体20が閉じた状態において、第1の線材アーム210側の第1のパッド410と、第2の線材アーム220側の第2のパッド420とが、互いに向かい合うように設定されている。
【0028】
さて、耳たぶに当たるパッド420を付随する第2の線材アーム220は、
図1~
図3、ならびに、
図4および
図5に示すように、第1の線材アーム210に対し、線材支持軸50あるいは屈曲部222を中心にして開閉する。第2の線材アーム220は、
図1のU形状の閉じた状態から
図2(あるいは
図3)の開いた状態に動く第1の動きをするとき、あるいは
図2(あるいは
図3)の開いた状態から
図1のU形状の閉じた状態に動く第2の動きをする際、第1の線材アーム210と第2の線材アーム220とは互いに干渉し合って、その動きを阻止するような弾性的な抵抗力を生じるようになっている。
【0029】
線材同士の弾性的な結合により、そのような抵抗力を生じる構成は、いろいろ考えられるが、好ましくは、第2の線材アーム220の二本のアーム部分220a,220bの間にテーパー状のすき間を作り、そのすき間を第1の線材アーム210の一部が弾力的に通過するようにすると良い。その構成によれば、互いに並行する二本のアーム部分220a,220bを何ら曲げることなく直線状の形態にすることができるからである。
【0030】
そのような二本のアーム部分220a,220bの間のテーパー状のすき間230については、正面からの
図4が明らかにしている。すき間230は、二本のアーム部分220a,220bの端部の屈曲部222の側は広く、リング状の部分220rの側が狭いテーパー状である。第2の線材アーム220が揺動あるいは開閉するとき、そのすき間230を第1の線材アーム210の一部が通過する。その通過する一部は、第1の線材アーム210における、線材支持軸50の個所から第2の線材アーム220側に向かって伸びる延長アーム部212である。延長アーム部212は、たとえば、線材の0.5mmの太さである。それに対し、すき間230は、広い側で0.5mmより少し大きく、狭い側で0.5mmより少し小さくなっている。そのようなテーパー状のすき間230を通過しようとするとき、通過しようとする延長アーム部212は、適度な弾性的な抵抗力を受ける。
【0031】
以上のようなイヤリング保持装置10を耳(耳たぶ)に取り付ける場合、揺動支持部である線材支持軸50および屈曲部222を、耳たぶの裏側に位置させるように取り付ける。取付けに際しては、
図3の大きく開いた状態から、
図2の小さな開き状態を通して、
図1のイヤリング本体20がU形状の閉じた状態にする。閉じた状態では、第1の線材アーム210の延長アーム部212と、第2の線材アーム220の二本のアーム部分220a,220bとの弾力的な結合により、取付け状態が保持される。
図6は、イヤリング保持装置10を耳たぶに取り付けた状態を示している。
【0032】
また、以上に述べた実施例においては、第1および第2の各パッド410,420を第1および第2の各線材アーム210,220に支持する手法として、各線材アームの一端にリング状の部分210r,220rを設け、そこにパッド支持用の円板30を設けるようにしている。
図7は、パッドを支持するため、別の手法を用いた例を示す。その手法では、円板30に各線材アームの一端を入れるための溝32を設け、その溝32に各線材アームの一端(
図7では、二本のアーム部分220a,220bの端)を入れて固定するようにしている。
【0033】
さらに、耳たぶに当たるパッドは、高分子エラストマーなどの耳当たりの良い材料で構成することが好ましいが、そのほか、パッド自体は硬質な材料で作り、それに耳当たりの良いカバーを被せたり、あるいは、硬質な材料と耳当たりの良い材料との二層構造にすることもできる。
【符号の説明】
【0034】
10 イヤリング保持装置
20 イヤリング本体
210 第1の線材アーム
212 延長アーム部
220 第2の線材アーム
210r,220r リング状の部分
220a,220b 二本のアーム部分
222 屈曲部
30 円板
410 第1のパッド
420 第2のパッド
50 線材支持軸(揺動支持部)
【要約】
【課題】イヤリング本体を二つの部品構成として開閉可能にした上に、それらの二つの部品を特定の開閉状態に保持することができる技術を提供する。
【解決手段】イヤリング本体20は、第1の線材アーム210と第2の線材アーム220との二つの部品構成である。それら二つの線材アーム210,220は、両者が相俟って、Uの形状を形作る。各線材アーム210,220の一端には、耳たぶに当たるパッド410,420を支持する。第2の線材アーム220は、線材支持軸50を中心に揺動し、パッド410,420間の距離を変える。二つの線材アーム210,220は、Uの形状を形作るとき、線材同士の干渉により、Uの形状を維持するような弾性的な抵抗力を生じる。
【選択図】
図1