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特許7032696廃棄物乾式メタン発酵処理のための前処理装置
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  • 特許-廃棄物乾式メタン発酵処理のための前処理装置 図1
  • 特許-廃棄物乾式メタン発酵処理のための前処理装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】廃棄物乾式メタン発酵処理のための前処理装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 5/00 20060101AFI20220302BHJP
   B02C 18/14 20060101ALI20220302BHJP
   B07B 1/22 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
B09B5/00 P
B09B5/00 Q
B02C18/14 B
B07B1/22 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018067545
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019177334
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2020-09-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085109
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 政浩
(72)【発明者】
【氏名】阿部 盛一
(72)【発明者】
【氏名】森下 桂樹
(72)【発明者】
【氏名】宅和 稔朗
【審査官】岡田 三恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-035629(JP,A)
【文献】特開2002-018410(JP,A)
【文献】特開2010-142742(JP,A)
【文献】特開平11-267623(JP,A)
【文献】特開2017-177008(JP,A)
【文献】特開2005-144262(JP,A)
【文献】特開2011-183393(JP,A)
【文献】特開平11-277041(JP,A)
【文献】特開2012-086157(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B09B 5/00
B02C 18/14
B07B 1/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メタン発酵可能な有機物とプラスチックを含む廃棄物を、乾式メタン発酵処理に適する適合物と適さない不適合物とに選別する前処理方法であって、該廃棄物を破砕する破砕刃の刃幅が80~120mmの二軸せん断式破砕機と、該破砕機で破砕された廃棄物を選別する篩目が40~60mmの高速回転式粒度選別機よりなる、廃棄物乾式メタン発酵処理のための前処理装置を用い、該高速回転式粒度選別機の円筒スクリーンの回転速度を面周速度で2m/sとすることを特徴とする、廃棄物乾式メタン発酵処理のための前処理方法
【請求項2】
請求項1に記載の高速回転式粒度選別機で選別された篩上物を破砕する破砕刃の刃幅が80~120mmの二軸せん断式破砕機と該破砕機で破砕された篩上物を選別する篩目が20~40mmの高速回転式粒度選別機よりなる、廃棄物乾式メタン発酵処理のための前処理装置を用い、該高速回転式粒度選別機の円筒スクリーンの回転速度を面周速度で2m/sとすることを特徴とする、廃棄物乾式メタン発酵処理のための前処理方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビニール袋に入れられた生ごみ等を乾式メタン発酵処理するために発酵適合物と発酵不適合物に選別する前処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
廃棄物処理において厨芥など有機物は、固形物のまま乾式メタン発酵処理しメタンガスを発生させ燃料として利用し、プラスチックなどメタン発酵処理には不適な廃棄物は焼却処理することが、廃棄物処理プロセス全体のエネルギー効率を高くすることができるとして推奨されている(特許文献1)。
【0003】
このような廃棄物処理を行うために廃棄物の分別が必要であるが、乾式メタン発酵処理設備での分別処理において、収集した廃棄物を破砕した後、乾式メタン発酵処理する適合物と不適合物とに分別する前処理を行う際に、発酵処理に適合する有機物(以下有機物という)を高い回収率(供給廃棄物中に含まれている有機物量に対する、適合物として回収する有機物量の比率)で回収するとともに、適合物として分別した側への不適合物の混入を極力低減することが要望されている。
【0004】
前処理装置に、従来、一般的に用いられている例としては、二軸せん断式破砕機と粉砕選別機がある。
【0005】
二軸せん断式破砕機は、シャフトに破砕刃とカラーが交互に組み合わされた軸を2本向かい合わせで回転させて、破砕刃のせん断作用により廃棄物を収納する袋を破袋し廃棄物を外に取り出し、50mm程度に粗くするものである。
【0006】
粉砕選別機は、スイングハンマーブレードにより廃棄物を粉砕し、分離スクリーンによりスクリーン孔径以下の小さいものを分離し発酵処理適合物として回収し、スクリーン孔径より大きいものを不適合物として除去するように選別するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-212860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
有機物とプラスチック類を含む一般廃棄物からメタン発酵に適さないプラスチック類を含む発酵不適合物を除去して発酵処理適合物の有機物を回収するために、上記の構成の前処理装置を用いて、破砕機により破砕サイズを50mm程度に破砕し、粉砕選別機により粉砕とスクリーンによる分離を行って、廃棄物をさらに細かくして、適合物の有機物とプラスチック等の不適合物とを選別している。
【0009】
しかしながら、プラスチック製品や発酵処理に不適で破砕困難な衣類などを細かくするには多くの動力を要する問題があり、さらに、ビニール袋などの破砕容易なシート状プラスチック類は細かく破砕されすぎるため、スクリーン孔を通過してしまい適合物として回収する有機物側に分離され、プラスチック等の不適合物が有機物側に混入して、不適合物の混入率が高くなるという問題があった。
【0010】
また、選別機に粉砕選別機に代えて振動式選別機を用いる場合には、振動振幅が十分に大きくないため有機物とプラスチックの分離性能が低く、有機物を適合物として回収する回収率が低いという問題があった。
【0011】
本発明の目的は、有機物とプラスチック類を含む廃棄物を、乾式メタン発酵処理に適する適合物と適さない不適合物とに選別する前処理装置において、適合物としての有機物の回収率を高く、不適合物としてのプラスチック類の有機物側への混入を少なくすることができる前処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題を解決するべくなされたものであり、破砕刃の刃幅が80~120mmの二軸せん断式破砕機と、篩目が40~60mmの高速回転式粒度選別機を組み合わせることによってかかる目的を達成したものである。
【0013】
従って、本発明はメタン発酵可能な有機物とプラスチックを含む廃棄物を、乾式メタン発酵処理に適する適合物と適さない不適合物とに選別する前処理装置であって、該廃棄物を破砕する破砕刃の刃幅が80~120mmの二軸せん断式破砕機と、該破砕機で破砕された廃棄物を選別する篩目が40~60mmの高速回転式粒度選別機よりなる、廃棄物乾式メタン発酵処理のための前処理装置を提供するものである。
【0014】
本発明は、また、上記の破砕、選別を2段で行い、2段目の高速回転式粒度選別機の篩目を20~40mmとすることによって、メタン発酵処理適合物の回収率が上がり、不適合物の流入率も低減できることを見出した。
【0015】
従って、本発明は上記の高速回転式粒度選別機で選別された篩上物を破砕する破砕刃の刃幅が80~120mmの二軸せん断式破砕機と該破砕機で破砕された篩上物を選別する篩目が20~40mmの高速回転式粒度選別機よりなる、廃棄物乾式メタン発酵処理のための前処理装置をも提供するものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、有機物とプラスチックを含む廃棄物から乾式メタン発酵処理適合物を効率よく分離することができ、それによってメタン発酵収率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の前処理装置の一実施態様の概略構成を示す図である。
図2】本発明の前処理装置の別の実施態様の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明で処理される廃棄物は、メタン発酵可能な有機物とプラスチックを含むものであり、例示すれば、厨芥その他の、家庭や料理店、スーパー、コンビニ等から排出される生ごみ、農作物加工場、水産物加工場、畜産物加工場からの廃棄物等である。
【0019】
<二軸せん断式破砕機>
シャフトに破砕刃とカラーが交互に組み合わされた軸を2本向かい合わせで回転させて、回転する破砕刃のせん断作用により廃棄物を収納した袋を破袋し廃棄物を外に取り出し、100mm程度に粗く破砕する。
【0020】
破砕刃の刃幅は80~120mmとすることが好ましく、特に100mm程度が好ましい。
【0021】
この範囲の刃幅の破砕刃を備える二軸せん断式破砕機により破砕することにより廃棄物は100mm程度に粗く破砕される。破砕刃の刃幅が80mmより小さいと廃棄物をほぐしながら破砕する性能が低く、作業効率が低く不適である。破砕刃の刃幅が120mmより大きいと廃棄物を破砕した破砕物の寸法が大きく、高速回転式粒度選別機で篩目を通過させ適合物とする篩下物量が少なくなり、分離作業性能が低く、作業効率が低く不適である。破砕の際、プラスチックをできるだけ細かく破砕しないように、破砕刃の刃幅寸法を適切な寸法のものとする。プラスチックを細かく破砕すると、不適合物として分離すべきプラスチック片が、高速回転式粒度選別機で篩目を通過して適合物とする篩下物側に混入する量が多くなるため高速回転式粒度選別機の篩目より大きな寸法に粗く破砕する。また、破砕刃の回転速度を適切な速度とする。
【0022】
<高速回転式粒度選別機(トロンメルと呼ばれる)>
回転する円筒スクリーンに二軸せん断式破砕機から破袋され粗く破砕された廃棄物を受け入れ、円筒スクリーンを回転して、破袋された袋から廃棄物を取り出し、かき上げてほぐし、円筒スクリーン上をかき混ぜながら通過させる際に、円筒スクリーンの篩目で篩い分け(粒度選別)を行う。円筒スクリーンの篩目を通過する篩目以下の粒度(粒径)の篩下物を適合物として回収し、スクリーンの篩目を通過せず残った篩上物を不適合物として除去して選別する。
【0023】
二軸せん断式破砕機により破砕され高速回転式粒度選別機に供給された廃棄物は主に100mm程度より小さい粒度分布となっている。篩目を適切なものとして、篩目以下の粒度の篩下物に適合物である有機物が多く含まれるように、また、篩目を通過せず残った篩上物に不適合物であるプラスチックが多く含まれるようにする。
【0024】
円筒スクリーンの篩目は40~60mmの範囲とすることが好ましい。特に50mm程度とすることがより好ましい。円筒スクリーンの篩目が40mmより小さいと、適合物として分別して得る篩下物量が少なく、廃棄物からの適合物の回収率が低く不適である。円筒スクリーンの篩目が60mmより大きいと不適合物のプラスチックが篩下物に多く含まれるようになり、不適合物の混入率が高くなり不適である。
【0025】
円筒スクリーン内で廃棄物がかき上げられ落下する時に篩目を通過しない廃棄物のうち濡れた紙類などは篩目を覆うように張り付いてしまう傾向があるので、円筒スクリーンを受け入れ側から篩上物排出側に向かって、傾斜角度を1度程度として下向きに傾斜させ、篩目を通過しないフィルム状の紙やプラスチックを滞留させずに篩上側に排出する。
【0026】
円筒スクリーンの面周速度を2m/sとするように円筒スクリーンの回転速度を25rpm程度とする。円筒スクリーンを2m/s程度の面周速度で高速回転させることにより廃棄物はかき上げられ十分にほぐされる。面周速度2m/s程度より低い面周速では廃棄物をかき上げほぐす作用が十分ではなく、有機物を適合物とする篩下物に分別する比率が低く、適合物の回収率を高めることができない。
【0027】
<二段の装置構成>
一段の二軸せん断式破砕機と高速回転式粒度選別機の装置構成に、二軸せん断式破砕機と高速回転式粒度選別機を追加し、二段階で破砕と粒度選別を行うようにする。一段目の高速回転式粒度選別機で選別された篩上物を、二段目の二軸せん断式破砕機によりさらに破砕し、一段目の二軸せん断式破砕機で破砕が十分でなかった廃棄物がさらに破砕され、回転式粒度選別機での分別効率を高めることができる。
【0028】
二段目の二軸せん断式破砕機の破砕刃の刃幅は、一段目の二軸せん断式破砕機の破砕刃の刃幅と同様に80~120mmとすることが好ましい、特に100mm程度が好ましい。破砕刃の刃幅を特定する根拠は一段目の二軸せん断式破砕機の根拠と同じである。
【0029】
二段目の高速回転式粒度選別機の円筒スクリーンの篩目は、20~40mmの範囲とすることが好ましい。特に30mm程度とすることがより好ましい。円筒スクリーンの篩目が20mmより小さいと、適合物として分別して得る篩下物量が少なく、廃棄物からの適合物の回収率が低く不適である。円筒スクリーンの篩目が40mmより大きいと不適合物のプラスチックが篩下物に多く含まれるようになり、不適合物の混入率が高くなり不適である。
【0030】
本発明の前処理装置で分離された適合物は固形物のまま乾式メタン発酵される。一方、不適合物に含まれているものはプラスチックなどであり、燃料等として使用することもできる。
【実施例1】
【0031】
厨芥等の家庭系、事業系の一般廃棄物が袋に収納されて収集され、乾式メタン発酵処理設備に搬入される。これを図1に示すように、廃棄物をコンベヤ等により二軸せん断式破砕機に投入する。この破砕機には、刃幅が100mm程度の破砕刃を備えたものを使用する。破砕機で破袋そして100mm程度に粗く破砕された廃棄物をコンベヤ等により高速回転式粒度選別機(トロンメル)に搬送する。ここで破砕され搬送された廃棄物は主に100mm程度より小さい粒度分布となっている。
【0032】
高速回転式粒度選別機の円筒スクリーンの篩目は50mm程度のものである。
【0033】
円筒スクリーンは受け入れ口から篩上物排出口に向かって角度を1度程度下側に傾斜させた位置で設置されており、また、円筒スクリーンは面周速度2m/s程度(回転速度25rpm程度)で高速回転している。有機物等の適合物は円筒スクリーンの篩目を通過し篩下に選別され、プラスチック等の不適合物は篩上に残り篩上物として排出される。選別された篩上及び篩下の廃棄物は、その後、磁力選別機にて鉄類の異物を除去し、篩下の適合物の廃棄物はメタン発酵設備へ、篩上の不適合物の廃棄物は焼却設備に搬送され、それぞれ処理される。
【0034】
適合物の有機物の回収率(供給廃棄物中に含まれていた有機物量に対する、適合物として回収する有機物量の比率)は99%と高くすることができ、不適合物のプラスチックの混入率(供給廃棄物中に含まれていたプラスチック量に対する、適合物側に混入するプラスチック量の比率)は16.5%と低くすることができた。
【実施例2】
【0035】
図2に示すように、2軸せん断式破砕機と高速回転式粒度選別機を2段に設け、最初の高速回転式粒度選別機1から排出された篩上物を2段目の2軸せん断式破砕機2に入れて破砕し、破砕物を高速回転式粒度選別機2で選別を行う。この高速回転式粒度選別機2の円筒スクリーンの篩目は30mm程度のものである。円筒スクリーンは受け入れ口から篩上物排出口に向かって角度を1度程度下側に傾斜させた位置で設置されており、また、円筒スクリーンは面周速度2m/s程度(回転速度25rpm程度)で高速回転している。高速回転式粒度選別機1から排出された篩上物は、2段目の2軸せん断式破砕機2により破砕され、高速回転式粒度選別機2により有機物や紙類等の適合物は円筒スクリーンの篩目を通過し篩下に選別され、プラスチック等の不適合物は篩上に残り篩上物として排出される。選別された篩上及び篩下の廃棄物は、その後、磁力選別機にて鉄類の異物を除去し、篩下の適合物の廃棄物はメタン発酵設備へ、篩上の不適合物の廃棄物は焼却設備に搬送され、それぞれ処理される。
【0036】
二段目の高速回転式粒度選別機により粒度選別して円筒スクリーンの篩目より小さな寸法の紙類を篩下物として分別しメタン発酵処理に供給することにより、一段目の高速回転式粒度選別機では不適合物として分別された紙類を適合物として回収でき、適合物の回収率を高めることができ、また、不適合物の混入率を低減できる。
【比較例】
【0037】
従来の前処理装置である二軸せん断式破砕機と粉砕分別機(ハンマーブレード・分離スクリーン)による破砕、粉砕分別では、プラスチックが細かく粉砕され、適合物側に混入する量が多く、プラスチックの混入率((供給廃棄物中に含まれていたプラスチック量に対する、適合物側に混入するプラスチック量の比率)は29%と高くなった。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明の前処理装置は、乾式メタン発酵処理に適する適合物を高回収率で、しかも不適合物の混入を少なくすることができるので、厨芥等の乾式メタン発酵処理の前処理装置として幅広く利用できる。
図1
図2