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特許7032729硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの濃度検出方法および濃度検出装置ならびに植物生長・延命剤製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの濃度検出方法および濃度検出装置ならびに植物生長・延命剤製造装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/59 20060101AFI20220302BHJP
   G01N 21/33 20060101ALI20220302BHJP
   A01N 3/02 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
G01N21/59 Z
G01N21/33
A01N3/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017240194
(22)【出願日】2017-12-15
(65)【公開番号】P2019109054
(43)【公開日】2019-07-04
【審査請求日】2020-09-18
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501169143
【氏名又は名称】愛知みなみ農業協同組合
(74)【代理人】
【識別番号】100149320
【弁理士】
【氏名又は名称】井川 浩文
(74)【代理人】
【識別番号】110001324
【氏名又は名称】特許業務法人SANSUI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】滝川 浩史
(72)【発明者】
【氏名】下村 友人
(72)【発明者】
【氏名】谷本 壮
(72)【発明者】
【氏名】針谷 達
(72)【発明者】
【氏名】ショリハッタ アジズ クスマワン
(72)【発明者】
【氏名】中曽 哲史
【審査官】吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-518157(JP,A)
【文献】特開昭63-191945(JP,A)
【文献】特開昭61-172031(JP,A)
【文献】特開2012-166171(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0194033(US,A1)
【文献】特開2016-214207(JP,A)
【文献】浜口博他,紫外部吸収を利用する硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの同時定量,分析化学,1958年,Vol.7/No.7,PP.409-415
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/958
A01N 3/02
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体中に電離した硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの濃度を検出するための濃度検出装置を使用して、切り花を生長促進させるための液体を製造する装置であって、
液体を貯留するタンクと、
該タンクに貯留される液体を揚上し、所定の循環路に沿って液体を流下させる揚上ポンプと、
該循環路に沿って流下する液体に硝酸イオンを発生させる硝酸イオン発生部と、
該循環路の上流側において前記タンクから揚上される液体中の硝酸イオン濃度を測定する硝酸イオン濃度測定部とを備え、
前記硝酸イオン濃度測定部は、前記濃度検出装置と、硝酸イオン濃度換算部とを有するものであり、
前記濃度検出装置は、
少なくとも波長200nm~400nmの光を1%以上透過できる壁面によって適宜間隔の空隙が形成され、該空隙に濃度検出対象の液体を通過または保存可能とする検査領域構成部と、
該検査領域構成部の壁面外方から該検査領域構成部を透過させるように、少なくとも波長270nm~330nmおよび波長350nm~400nmの範囲内にある光を放出する光源と、
該光源から放出され、前記検査領域構成部を透過した光の強度を検出する光検出部とを備える
ことを特徴とする植物生長・延命剤製造装置。
【請求項2】
前記濃度検出装置は、
さらに、特定波長における透過光強度から濃度検出対象液体の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンのそれぞれの濃度に演算する演算部を備え、
前記検査領域構成部の空隙内の濃度検出対象の液体を透過する特定波長の透過光強度を測定することにより、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの濃度の値を算出することを特徴とする請求項1に記載の植物生長・延命剤製造装置。
【請求項3】
前記光源は、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの双方について吸光特性を有する波長領域の第1の光源と、亜硝酸イオンのみについて吸光特性を有する波長領域の第2の光源とに区分されていることを特徴とする請求項1または2に記載の植物生長・延命剤製造装置。
【請求項4】
前記光検出部は、前記第1および第2の光源による透過光を交互に検出するものである請求項3に記載の植物生長・延命剤製造装置。
【請求項5】
前記光検出部は、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの双方について吸光特性を有する波長領域の光の強度を検出する第1の検出器と、亜硝酸イオンのみ双方について吸光特性を有する波長領域の光の強度を検出する第2の検出器とを備えている請求項3に記載の植物生長・延命剤製造装置。
【請求項6】
前記検査領域構成部は、前記壁面によって側壁を形成してなる流路によって構成され、前記流路に供給される濃度検出対象液体に対して、随時光が照射されるものであることを特徴とする請求項1ないし5に記載の植物生長・延命剤製造装置。
【請求項7】
前記硝酸イオン発生部は、複数の放電プラズマ照射手段によって構成されており、前記循環路に沿って流下する液体に対し、同時または順次に放電プラズマを照射するものである請求項1ないし6のいずれかに記載の植物生長・延命剤製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
液体中に含有される硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの濃度を検出する方法と装置、当該装置を使用する植物生長・延命剤の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
花卉類、特に切り花の鮮度保持を目的として、硝酸塩を投与することが周知されている(例えば、特許文献1参照)。また、硝酸イオンまたは亜硝酸イオンをプラズマ放電によって生成させる方法が案出されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-239506号公報
【文献】特開2016-214207号公報
【文献】特開2004-077388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前掲の特許文献2に開示される技術は、酸素および窒素を含む雰囲気下においてプラズマを生成し、当該プラズマを液体に接触させてプラズマ処理水を生成するものであり、このプラズマ処理水には、亜硝酸イオンが含有されており、また硝酸イオン、水素イオンおよび過酸化水素を含む場合があることを前提とし、例えば300mlの水道水に対して30Wの投入電力で30分間プラズマを生成すると、硝酸イオン濃度が100ppmのプラズマ処理水が生成できるとされている。さらに、硝酸イオン濃度や亜硝酸イオンなどの含有イオンの濃度を検出するために、各種のセンサを設けることとされている。
【0005】
ところが、各種イオン濃度を検出するための各種センサに関し、上記特許文献2には具体的な構成が示されておらず、一般的なイオン濃度センサは、当該イオンに感応する物質を電極に使用するものであった。例えば、硝酸イオン濃度を検出するためのセンサにあっては、特許文献3に開示されるように、硝酸イオン感応膜を電極に使用している。しかし、感応膜型のイオン濃度センサを使用する場合には、硝酸イオンを含有する液体の電位を測定するものであるため、硝酸イオン感応物質は電極に使用され、通電により硝酸イオン感応物質中の特定物質が液体中に溶出することによって、切り花等の植物に使用する液体が変質することが懸念されていた。
【0006】
また、イオンセンサによるイオン濃度を測定する場合、さらには紫外可視分光光度計によって透過光を測定する場合には、いずれもサンプリング測定が必要となり、サンプリング測定の結果と対比するため、煩瑣なものとならざるを得なかった。
【0007】
さらに、大気圧プラズマを液体(水道水または蒸留水等)に照射することにより、硝酸イオンまたは亜硝酸イオンが液体に含有されることは前記特許文献2においても示されているが、上記イオンのいずれが含有されていても、花卉等の植物の生長促進や切り花等の延命のための栄養水として効果を有するものと思われていたが、本願発明者らの研究により、硝酸イオンが亜硝酸イオンよりも効果的であることが判明した。また、硝酸イオンを含有した液体は、切り花等の延命剤として効果を有するほかに、花卉等の植物にあっては、その発根、発芽、開花、結実、着果等にも効果があるものと想定される。そこで、プラズマ処理をした処理水中の硝酸イオンの濃度を直ちに測定し得る方法および検出装置が切望されているところであった。
【0008】
さらに、花卉などの植物の生長や切り花等の延命のために使用される液体には、硝酸イオンが効果的であるところ、液体に大気圧プラズマを照射するとしても、硝酸イオンを所望の濃度とするためには、長時間のプラズマ照射が必要である。ところが、貯留した状態の液体全体に対してプラズマを照射する場合には、硝酸イオンが所望濃度に達したか否かを確認するためには、プラズマ照射を一時中断したうえで、処理水を測定しなければならず、連続的にプラズマを照射しながら硝酸イオン濃度を測定し得る装置についても切望されるところとなっていた。
【0009】
本発明は、上記諸点に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの濃度を非接触によって測定することができる方法および装置と、当該装置を組み込んだ植物の生長・延命剤製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの濃度検出方法に係る本発明は、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの双方において吸光特性を生じさせる第1の波長帯域の光と、亜硝酸イオンのみにおいて吸光特性を生じさせる第2の波長帯域の光とを濃度検出対象の液体に照射し、第2の波長帯域の照射光についての透過光強度から亜硝酸イオンによる吸光度を算出するとともに、該吸光度に基づいて亜硝酸イオンの濃度を算出し、第1の波長帯域の照射光についての透過光強度から硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの双方による吸光度を算出するとともに、前記亜硝酸イオンの濃度の基づく第2の波長帯域の照射光における吸光度を減算することにより硝酸イオンによる吸光度を算出し、該吸光度に基づいて硝酸イオンの濃度を算出することを特徴とする。
【0011】
上記構成の検出方法によれば、第2の波長帯域の光を濃度検出対象の液体に照射する場合には、亜硝酸イオン(NO )のみよって吸光されることから、当該液体における当該波長の吸光度によって亜硝酸イオンの濃度を算出することが可能となる。他方、第1の波長帯域の光を濃度検出対象の液体に照射する場合には、硝酸イオン(NO )および亜硝酸イオン(NO )の双方によって吸光されることから、同じ液体について二種類の波長帯域における吸光度を得ることにより、第1の波長帯域の光を照射したときの吸光度から前記亜硝酸イオンの濃度に基づく吸光度の変化分を差し引いた範囲が硝酸イオンによる吸光度となる。その結果、当該吸光度を硝酸イオン濃度に換算することが可能となる。
【0012】
なお、上記のような換算方法のために、まず、第2の波長帯域の光を照射して、その際の透過光強度から亜硝酸イオンによる吸光度を算出し、さらに、そのときの吸光度に基づいて亜硝酸イオンの1モル当たりの濃度(モル濃度)を算出すのである。モル濃度の算出にはランベルト・ベールの法則によることができる。上記と同時または上記の次に、第1の波長帯域の光を照射して、そのときの透過光強度から硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの双方による吸光度を算出し、さらに、前述の亜硝酸イオンのモル濃度に基づく第2の波長帯域の照射光における吸光度を減算したうえで硝酸イオンによる吸光度を算出するのである。これにより、第2の波長帯域の光の吸光度のうち硝酸イオンのみによる吸光度が算出されるから、この吸光度に基づいて硝酸イオンのモル濃度を算出するのである。そして、これらの硝酸イオンおよび亜硝酸イオンのそれぞれのモル濃度から全体の濃度を算出することが可能となる。
【0013】
上記構成の濃度検出方法に係る発明においては、前記第1の波長帯域の光が、波長が270nm~330nmの範囲内における任意の波長を有する光であり、前記第2の波長帯域の光が、波長が350nm~400nmの範囲内における任意の波長を有する光であることが好ましい。
【0014】
上記構成によれば、いわゆる紫外光を照射し、当該濃度検出対象の液体を透過する光の強度により当該液体における吸光度を検出することができ、硝酸イオンまたは亜硝酸イオンの濃度変化に応じて変化する特定波長の光の吸光度から、当該液体中に含有されるイオン濃度を検出することができる。第2の波長帯域の光を波長350nm~400nmの範囲内としているのは、この帯域の波長を有する光を照射する場合、硝酸イオンによる吸光特性が生じないからである。また、第1の波長帯域の光を波長270nm~330nmの範囲内としているのは、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの双方による吸光特性が大きく生ずる帯域であるからである。
【0015】
なお、第2の波長帯域の光は、略355nmまたは略370nmであれば、亜硝酸イオンによる吸光特性が大きくなることから、当該波長帯域における光を照射することが好ましい。また、第1の波長帯域の光は、略300nmであれば、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの双方による吸光特性が大きくなることから、この帯域の光を照射することが好ましい。さらに、LEDによる光源を使用する場合には、第1の波長帯域では355nm(実測値357.8nm)および第2の波長帯域では310nm(実測値309.4nm)を使用することができる。
【0016】
硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの濃度の検出装置に係る本発明は、少なくとも波長200nm~400nmの光を1%以上透過できる壁面によって適宜間隔の空隙が形成され、該空隙に濃度検出対象の液体を通過または保存可能とする検査領域構成部と、該検査領域構成部の壁面外方から該検査領域構成部を透過させるように、少なくとも波長270nm~330nmおよび波長350nm~400nmの範囲内にある光を放出する光源と、該光源から放出され、前記検査領域構成部を透過した光の強度を検出する光検出部とを備えることを特徴とする。
【0017】
上記構成によれば、濃度検出対象液体に対して、いわゆる紫外光を照射することにより、当該濃度検出対象液体を透過する光の強度により当該液体における吸光度を検出することができる。この吸光度を検出することにより、硝酸イオンまたは亜硝酸イオンの濃度変化に応じて変化する特定波長の光の吸光度から、当該液体中に含有されるイオン濃度を検出することができる。個々のイオンの具体的な濃度の算出は、予め作成した検量線に基づくことにより容易に測定値を得ることができる。
【0018】
上記構成の濃度検出装置に係る発明においては、さらに、特定波長における透過光強度から濃度検出対象液体の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンのそれぞれの濃度に演算する演算部を備え、前記検査領域構成部の空隙内の濃度検出対象液体を透過する特定波長の透過光強度を測定することにより、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの濃度の値を算出する構成としてもよい。
【0019】
このような構成の場合には、特定波長の透過光強度すなわち吸光度に基づいて、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの濃度に換算することができる。すなわち、液体中の各イオン濃度に対する特定波長の吸光度の変化を予め測定し、検量線を作成することにより、検出される特定波長の吸光度に基づいて、各種のイオン濃度を得ることができる。
【0020】
そこで、上記構成の発明において、前記光源は、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの双方について吸光特性を有する波長領域の第1の光源と、亜硝酸イオンのみについて吸光特性を有する波長領域の第2の光源とに区分されている構成とすることができる。
【0021】
このように、第2の光源の照射により、亜硝酸イオンのみが吸光特性を有する場合の吸光度を測定することができることから、当該吸光度から亜硝酸イオンの濃度を検出することができる。さらに、第1の光源の照射により、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの双方において吸光特性を有する場合の吸光度を測定することができ、双方が含有される濃度から前記亜硝酸イオン濃度を減算することにより、硝酸イオン濃度を検出することができるのである。なお、硝酸イオンについて直接吸光度から濃度を換算しないのは、波長200nm~400nmの範囲において、硝酸イオンのみが吸光特性を有する波長領域が存在しないからである。
【0022】
上記構成の濃度検出装置に係る発明において、前記光検出部は、前記第1および第2の光源による透過光を交互に検出するものとしてもよい。また、前記光検出部は、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの双方について吸光特性を有する波長領域の光の強度を検出する第1の検出器と、亜硝酸イオンのみ双方について吸光特性を有する波長領域の光の強度を検出する第2の検出器とを備える構成としてもよい。
【0023】
上記構成のうち、第1および第2の透過光を交互に検出させる構成にあっては、二種類の光源を使用し、または分光器等を使用して単一の光源を二種類に分光させることにより、それぞれの透過光を時間差によって検出させることができる。他方、第1および第2の検出器を備える構成にあっては、単一の光源をスプリッタによって、両検出器に向かって照射させることができ、または、回転フィルタによって順次異なる検出器に対する照射光を放出させてもよい。このほか、二種類の光源に対し二種類の検出器を設け、各光源による照射光を個別に受光する構成としてもよい。
【0024】
上記各構成の濃度検出装置に係る発明において、前記検査領域構成部は、前記壁面によって側壁を形成してなる流路によって構成され、前記流路に供給される濃度検出対象液体に対して、随時光が照射されるものとする構成とすることができる。
【0025】
上記構成の場合には、検査領域構成部が流路として機能することから、濃度検出対象液体を当該流路に沿って流下させつつ連続的な濃度検出が可能となる。このように、連続的に濃度検出ができることにより、例えば、硝酸イオンを発生させる(増加させる)工程の途中過程において、所望濃度に到達していることを確認することができる。特に、電気的な放電によって発生させた放電プラズマを照射することによって硝酸イオンを増加させる場合には、繰り返してプラズマ照射を必要とするため、プラズマ照射を継続しつつ濃度検出対象液体中の硝酸イオン濃度を逐次検出することができるのである。すなわち、サンプリングが不要となるため、サンプリング測定を幾度も繰り返す必要がなく、その手間を省くことができるとともに、サンプリングのために徐々に液体が取り出されることによって最終的な処理液の量が減少することもないこととなる。
【0026】
植物生長・延命剤製造装置に係る本発明は、上記構成の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの濃度検出装置を使用するものであり、液体を貯留するタンクと、該タンクに貯留される液体を揚上し、所定の循環路に沿って液体を流下させる揚上ポンプと、該循環路に沿って流下する液体に硝酸イオンを発生させる硝酸イオン発生部と、該循環路の上流側において前記タンクから揚上される液体中の硝酸イオン濃度を測定するイオン濃度測定部とを備え、前記硝酸イオン濃度測定部は、前記濃度検出装置と、硝酸イオン濃度換算部とを有するものであることを特徴とする。
【0027】
上記構成の発明によれば、タンクに貯留される液体(当初は処理前の原液)をポンプで揚上し、これを循環路に供給させることから、液体を循環路に沿って流下させることができる。循環路には、硝酸イオン発生部が設けられることから、液体が循環路を流下する過程において順次硝酸イオンが増加することとなる。この硝酸イオン発生部を通過した液体は、再びタンクに戻されることとなるため、タンクに貯留する液体全体について硝酸イオンの濃度が上昇することとなる。そこで、このタンクに貯留される液体全体における硝酸イオンの濃度を検出するため、循環路の上流側にイオン濃度測定部を備えている。このイオン濃度測定部は、流路を形成した検査領域構成部を備える濃度検出部が設けられているため、タンクで揚上された液体は、この検査領域構成部の流路を経由することとなり、この検査領域構成部を流下するときに、濃度検出装置によるイオン濃度の検出が行われるのである。従って、液体は、順次硝酸イオン発生部を経由して硝酸イオン濃度を連続的に増加させることができるとともに、その増加したイオン濃度についても連続的に検出されることから、装置を稼動しつつタンク全体の液体における硝酸イオンの濃度検出を所望の濃度まで継続することができる。
【0028】
上記構成の植物生長・延命剤製造装置に係る本発明において、前記硝酸イオン発生部は、複数の放電プラズマ照射手段によって構成されており、前記循環路に沿って流下する液体に対し、同時または順次に放電プラズマを照射するものとすることができる。
【0029】
大気圧プラズマを液体に照射することにより、硝酸イオンまたは亜硝酸イオンが液体に含有されることは前述の特許文献2においても示されており、放電プラズマを照射することにより、液体中の硝酸イオン濃度を上昇させることができるものである。なお、使用する液体は、当初は原液であるが、繰り返し放電プラズマを照射させることから、液体中には、徐々に硝酸イオンを含有するものとなる。
【0030】
ここで、原液としては、浄水器通過水道水または蒸留水を用いることができるが、これに限定されるものではなく、他の成分を含有する農業用水などを使用することもできる。さらには、植物の生長促進または延命のために、上記の蒸留水等に糖分その他の物質を含有させたものを使用してもよい。
【発明の効果】
【0031】
硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの濃度検出方法に係る本発明によれば、第1および第2の二種類の波長帯域による照射光における透過光強度から液体の吸光度を算出でき、これらの吸光度は、一方が亜硝酸イオンのみに関する吸光度であるから、まず亜硝酸イオンの濃度を算出したうえで、他方の吸光度を利用して硝酸イオンを算出できる。このような方法は、光の照射と透過光強度の検出によるため、非接触によって濃度検出が可能となる。また、第1の波長帯域の光の波長が270nm~330nmの範囲内であり、第2の波長帯域の光の波長が350nm~400nmの範囲内であることから、独自に開発することなく現時点において汎用されているLEDを使用することができる。
【0032】
硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの濃度検出装置に係る本発明によれば、少なくとも所定範囲の波長を有する光を透過する壁面によって形成される検査領域構成部に対し、特定波長の光を照射し、透過光強度を測定することにより非接触によって濃度検出が可能となる。さらに、検査領域構成部に形成される空隙を流路として使用する場合には、流下する液体に対し連続的に各イオンの濃度を測定できる。しかも、非接触であることから液体の流下状態に影響を与えることなく測定することができる。さらには、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの双方を含有する液体中の硝酸イオン濃度を測定することも可能となる。
【0033】
他方、植物生長・延命剤製造装置に係る本発明よれば、保存液に加工される前の原液を循環させつつ、硝酸イオンの発生(増加)と硝酸イオンの濃度測定を可能とする。これにより、原液を循環路中に供給して循環させることによって、徐々に硝酸イオン濃度を上昇させ、所望の硝酸イオン濃度に到達させることによって花卉等の植物の生長促進または切り花等の延命に効果を有する液体を製造することができる。なお、硝酸イオンは放電プラズマの照射によって生成されるものであるところ、一時的な放電プラズマの照射によって硝酸イオン濃度が急激に増加するものではないことから、原液を循環させつつ徐々に硝酸イオン濃度を上昇させるものである。この場合、プラズマ放電装置を複数のグループに区分し、硝酸イオン発生部において、各グループのプラズマ放電装置を順次作動させる構成とすることにより、放電プラズマによる硝酸イオン濃度を効率よく上昇させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの濃度検出装置に係る実施形態の概略を示す説明図である。
図2】(a)は紫外光を照射したときの波長と吸光度との関係を示すグラフであり、(b)は検量線の一例を示すグラフである。
図3】検量線の作製方法を示す説明図である。
図4】検量線による濃度の検出方法を示す説明図である。
図5】植物生長・延命剤の製造装置に係る実施形態の概略を示す説明図である。
図6】植物生長・延命剤の製造装置に係る実施形態の概略を示す説明図である。
図7】プラズマ照射装置をグループ分けした場合のデューティ比を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。説明の便宜上、イオン濃度検出装置の実施形態を説明したうえで、イオン濃度(硝酸イオン濃度)の検出方法を説明する。また、最後に栄養水製造装置の実施形態について説明する。
【0036】
<硝酸イオン濃度の検出装置>
図1は、硝酸イオン(NO )および亜硝酸イオン(NO )の濃度検出装置に係る実施形態の概略を示す模式図である。なお、図1(a)は、検出装置周辺を示す斜視図であり、図1(b)は、B-B線による断面図である。この図に示されているように、本実施形態は、検査領域構成部1と、この検査領域構成部1に対して光を放射する光源2,3と、この光源2,3から放出される光の強度を検出する光検出部4,5とで構成されている。
【0037】
検査領域構成部1は、少なくとも二枚の壁面11,12が適宜間隔を有して配置され、その中間領域において空隙13が形成されているものであればよく、本実施形態では、流路を形成するために底面部14と、さらに上面部15を設けている。上記の空隙13には濃度検出対象液体Xが供給されることにより、流路(空隙13)内を濃度検出対象液体Xが流下するものである。なお、検査領域構成部1は、流路とせずに液体を貯留し得る構成としてもよいが、連続的な濃度検出を行う場合は、流路とすることが好ましい。この場合には、図1(a)に示されるように、送液部6と流下部7を設けることができる。送液部6は、ポンプ等によって揚上した液体が供給管61を介して強制的に流入(供給)される構造であり、送液部6に供給された液体は、その底部から検査領域構成部1に送られるものである。また、流下部7は、検査領域構成部1を経過した液体が自然流下によって流入するものとしている。なお、この流下部7には、後述するプラズマ放電装置を設けることにより硝酸イオン発生手段として機能させることができ、さらに、これらの送液部6および流下部7の下位にタンク等を設け、流下部7を流下した液体を貯留し、かつ当該タンクに揚上ポンプを設けることにより、循環路を構成することができるものである。
【0038】
また、壁面11,12は、特定波長の光が透過し得る材料によって構成されている。特定波長の光とは、後述の光源2から放出され、濃度検出対象液体Xを透過させるべき波長の光であり、本実施形態では、少なくとも波長200nm~400nmの範囲内の光である。そのため、例えば、石英やUVガラスなどを使用することができる。
【0039】
光源2,3は、広範囲な波長の光(紫外光から赤外光までを含む光)を放出するものであってもよいが、第1の光源2は波長270nm~330nmの範囲内とし、第2の光源3は、波長350nm~400nmの範囲内としている。これは、波長270nm~330nmの範囲内による光源の光を照射する場合には、液体中の硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの双方が適度な吸光特性を示すこととなり、他方、波長350nm~400nmの範囲内による光源の光を照射することにより、液体中の亜硝酸イオンのみが適度な吸光特性を示すからである。亜硝酸イオンのみが吸光特性を示すということは、当該波長の光を照射した場合は、硝酸イオンの有無にかかわらず、透過光強度に変化を生じないということである。
【0040】
なお、異なる波長帯域の光を照射するために二種類の光源2,3を使用しているが、単一の光源を使用し、スプリッタによって、両検出器に向かって照射させることができ、または、回転フィルタによって順次異なる検出器に対する照射光を放出させてもよい。これらの光源としては、重水素ランプ(D2ランプ)、UV-LED(紫外線LED)、またはDeep UV-LED(深紫外線LED)などを使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0041】
これら各種の波長の光を放出する光源2,3は、前記検査領域構成部1を構成する片方の壁面11の外方に設けられ、当該壁面11に向かって光を照射するように設置される。このような構成により、光源2から照射される光は、壁面11を透過し、濃度検出対象液体Xに照射される。この濃度検出対象液体Xを光が透過する場合には、さらに反対側に位置する他の壁面12を透過し、その外方へ到達することとなる。
【0042】
そこで、光検出部4,5は、当該反対側の壁面12に設けられるものである。光検出部4,5は、それぞれ受光部41,51を備えており、これらの受光部41,51としてはフォトディテクタ(光検出器)が用いられており、受光した光の強度を電気的に変換することができる。これらの受光部41,51によって検出される光強度のデータは、送信ケーブル42,52を介して、図示せぬ制御部に送信される。なお、フォトディテクタとしては、例えば 半導体のpn接合を利用するフォトダイオードなどがある。
【0043】
本実施形態では、2つの光検出部4,5によって異なる光源からの照射光(透過光)を検出する構成としているが、単一の光検出部によって構成してもよい。この場合には、二種類の透過光を交互に検出させるのである。例えば、二つの光源2,3を使用し、それぞれの透過光を時間差によって検出させることができる。また、光源が単一の場合には、当該光源を分光器等によって二種類に分光させ、これを交互に検出させる方法があり得る。
【0044】
制御部は、吸光度からイオン濃度に換算するための換算部として機能するものであって、前記の光検出部4,5によって測定される光強度(透過光強度)から濃度検出対象液体Xによる吸光度を算出し、さらに特定波長ごとの吸光度を比較することにより、硝酸イオンおよび亜硝酸イオンの各濃度を算出するものである。
【0045】
硝酸イオン濃度の検出装置に係る本発明の実施形態は上記のような構成であるから、濃度検出対象液体Xを検査領域構成部1に連続的に流下させつつ、連続的な測定を行うことができる。その結果、既に作製された硝酸イオン含有液体について、その濃度を検出することができるほか、硝酸イオンを添加(発生)させながら、所望濃度に到達したか否かを検出しつつ、徐々に硝酸イオン濃度を上昇させる場合に使用することができるものである。これは、特に大量の硝酸イオン含有液体を製造する場合に効果的である。
【0046】
<硝酸イオン濃度の検出方法>
次に、硝酸イオン濃度の検出方法について説明する。硝酸イオンおよび亜硝酸イオンは、透過される光の波長に応じて異なる吸光特性を示すことが周知とされている。すなわち、前述のとおり、例えば波長350nm~400nmの光を透過させる場合、硝酸イオン(NO )に対する吸光特性は示さないが、亜硝酸イオン(NO )に対する吸光特性を示す。また、波長270nm~330nmの光を透過させる場合は、双方のイオン(NO ,NO )に対して吸光特性を示すものがある。このように、異なる波長における吸光度の変化を図2(a)に示す。
【0047】
このような構成の場合には、第1の光源2の光を照射することにより、硝酸イオン(NO )および亜硝酸イオン(NO )の双方によって吸光された状態の透過光強度を測定することができ、第2の光源3の光を照射することにより、亜硝酸イオン(NO )のみによって吸光された状態の透過光強度を測定することができる。このとき、異なる波長の光が照射されるため、濃度検出対象液体Xの吸光度が異なり、単純に両者の測定値を比較することはできない。そこで、第2の光源の光の照射の際に測定される透過光強度により、亜硝酸イオン(NO )の吸光度を算出し、さらに当該吸光度に応じた亜硝酸イオン(NO )の濃度を算出する。次に、第1の光源の光の照射の際に測定される透過光強度から吸光度を算出し、前記亜硝酸イオン(NO )の算出濃度における吸光度との差分を算出することにより、当該差分をもって硝酸イオン(NO )の濃度と特定するのである。
【0048】
例えば、図2(a)に示すように、純水に硝酸イオン(NO )のみを含有させた試液と、硝酸イオン(NO )および亜硝酸イオン(NO )を含有させた試液について、第1の光源2として、波長310nm(実測値309.4nm)の光を照射するLEDを使用し、第2の光源3として、波長355mm(実測値357.8nm)の光を照射するLEDを使用した場合には、両光源2,3では異なる吸光特性が示されるものとなる。なお、吸光度から濃度の算出に関しては、ランベルト・ベールの法則を用いることで算出可能であり、検量線を作製することにより、当該検量線に基づいて換算することが可能となる。
【0049】
なお、図2(a)のAT1は、波長310nmにおける全体の吸光度であり、これら全体AT1のうち、Aは硝酸イオンのみによる吸光度、Aは亜硝酸イオンのみによる吸光度を示すものであり、その結果、次の関係式が成り立つ。
【0050】
【数1】
【0051】
また、図2(a)のAT2は、波長355nmにおける全体の吸光度であり、Aを硝酸イオンによる吸光度、Aを亜硝酸イオンによる吸光度とする場合、A=0であるから、結果的に次の関係式となる。
【0052】
【数2】
【0053】
そこで、次に検量線の作製について説明する。検量線の作製には、ランベルト・ベールの法則に基づくこととする。ランベルト・ベールの法則は、下式のように、溶液の吸光路は、溶液の濃度と光路長に比例するというものである。
【0054】
【数3】
【0055】
そこで、上記の式から、モル濃度(c)を算出するためには、下式によることができる。
【0056】
【数4】
【0057】
上式から現実に使用される液体の濃度に換算する場合は、液体濃度(mg/L)=物質量(g/mol)×モル濃度(mol/L)/1000によって算出できる。
【0058】
ところで、検量線を作製するためには、硝酸イオン(NO )および亜硝酸イオン(NO )の濃度が異なる場合における吸光度と濃度との関係を測定することが必要となる。そこで、二種類の照射光の波長を特定し、両イオン濃度が異なる溶液について濃度ごとの吸光度を測定した。二種類の波長は、前述と同様である。これらの波長の光の吸光度と濃度の関係を図2(b)に示している。AT1としてグラフ上に示す線図が一定の割合で混合した両イオンにおける吸光度と硝酸濃度のみの濃度を示すものである。なお、図2(b)の線図Aは、310nmの光源を照射した場合の硝酸イオン(A)の関係を示し、線図Aは、355nmの光源を照射した場合の亜硝酸イオンの関係を示している。いずれも予め濃度を調整した液体を使用し、それぞれの吸光度を測定した結果によるものである。
【0059】
図2(b)のAの線図は、次のようにして得ることができる。すなわち、図3(a)に示すように、線図Aは、硝酸イオンのみを含有する液体の関係を示し、線図AT1は、所定の割合で硝酸イオンと亜硝酸イオンとを含有させた液体の関係を示していることから、両者の吸光度の差分Hは、亜硝酸イオンの含有率に伴う吸光度の増加分となる。
【0060】
そこで、図3(b)に示すように、当該吸光度の増加分Hを線図A(すなわち波長355における亜硝酸イオンのみの線図)によって得られる濃度に換算する(同じ濃度となる吸光度をプロットする)ことにより、波長310nmにおける吸光度に変化し得る。同じ濃度割合の液体について、異なる濃度ごとに吸光度を求めることにより、線図Aを求めることができる。これにより、A,A,AT1およびAの全ての検量線を得ることができる。
【0061】
これらの検量線を使用する場合には、予め、二種類の波長(310nmおよび355nm)における吸光度を同時または順次測定し、まず線図A(波長355nm)によって得られる亜硝酸イオンの濃度から、線図A(波長310nm)における吸光度Lを求める。この吸光度は、波長310nmにおける亜硝酸イオンの同じ濃度によるものであるため、これを310nmにおける吸光度から減算する(修正値)。この修正値における線図A上の濃度が、検出値から亜硝酸イオン濃度分を差し引いた硝酸イオン濃度となる。
【0062】
硝酸イオン濃度の検出方法に係る本発明の実施形態は上記のような構成であるから、二種類の所定波長における吸光度を同時または順次に測定することにより、まずは、亜硝酸イオン濃度を算出するとともに、当該亜硝酸イオン濃度によって作用する吸光度を他方の吸光度に反映させることにより、硝酸イオン濃度を得ることができる。その結果として、濃度検出対象液体における硝酸イオン濃度を瞬時に測定できる。また、硝酸イオン濃度を変化させつつ連続的に濃度検出を行うことにより、その増加の傾向を測定することができるうえ、所望の濃度に到達させるまで測定を継続させることができる。これらの検出方法は、前述の検出装置における制御部において処理されることとなるが、検量線に基づく場合には、処理方法が単純となるため、その処理時間は極めて高速なものとなる。
【0063】
ところで、上述のような照射光の波長と吸光度の関係(図2(a)参照)は、液体のpHが4未満における場合であり、液体のpHが4以上となる場合には、吸光度のピークが変化することがある。そこで、上述の実施形態では、液体のpHが4未満であることを前提したものであるが、後述のように硝酸イオン濃度を上昇させるために放電プラズマを照射する場合には、プラズマ照射によって液体のpHは下降する。従って、検出対象液体がプラズマ照射によって製造される場合には、照射開始から僅かな時間を除けば、pHは4未満であるものとして処理することができる。
【0064】
これを確認するため、当初のpH値が7であった原水1リットルに対し放電プラズマを照射する実験を行った(NGK社製PFR6Bを使用し、出力設定電圧=10kV、デューティ比25%)。その結果、放電プラズマの照射開始から約30分後にはpH値が4未満となり、その後もpH値は上昇することがなかった。また、硝酸イオン濃度を大きく上昇させる場合には数時間以上を要することを考慮すれば、放電プラズマの初期照射時間(約30分)の後において、図2(a)に示すような吸光特性を利用し、上記実施形態に例示するような方法によってイオン濃度測定を行うことができるものとなる。
【0065】
なお、放電プラズマを照射せずに硝酸イオン濃度を上昇させようとする場合、または上述の放電プラズマの照射によるpHの変化を確認する必要がある場合には、pHセンサを使用することとしてもよい。この場合には、pHセンサによって検出されるpH値に基づき、液体のpHが4未満となっていることを確認しつつ、上記実施形態に記載の手法によってイオン濃度を検出することが可能となる。
【0066】
さらに、上述の例示は、液体のpHが4未満における吸光特性を利用するものであったが、液体のpHが4以上となる場合の吸光特性を利用することも可能である。すなわち、液体のpHが4以上の場合には、例えば波長略350nmの帯域の光を透過させるときに、亜硝酸イオン(NO )のみが顕著に吸光特性を示す性質を有している。そこで、このような場合における亜硝酸イオンの検量線(A)を作製しておくことにより、pH4以上の液体についてもイオン濃度の検出が可能となる。この場合において、硝酸イオン(NO )および亜硝酸イオン(NO )の双方について吸光特性を有する光の波長帯域も変化することがあるため、当該波長帯域における検量線(A,A,AT1)についてもpHに応じたものを別途作製すべき場合があり得る。そして、上述の例示のようにpHセンサを用いる場合には、当該pHセンサによる検出値に基づき、複数の検量線から妥当なものを適宜選択することにより、異なる条件下においてもイオン濃度を検出することができる。
【0067】
<植物生長・延命剤製造装置>
次に、植物生長・延命剤の製造装置に係る本発明の実施形態について説明する。図5および図6は本実施形態の植物生長・延命剤製造装置を示すものである。なお、図5は一部分における斜視図であり、図6は全体の概略を示す模式図である。こられの図に示されているように、本実施形態は、前述のイオン濃度の検出装置100を用いたものであり、当該検出装置100の流下部7にプラズマ放電装置8を設けたものである。このプラズマ放電装置8を備えることにより、当該流下部7は、硝酸イオン発生部として機能することとなる。また、これらの装置100の下方にはタンク9が設けられ、流下部(硝酸イオン発生部)7の下流側において、排出された(硝酸イオンが発生した)液体が、タンク9に流入させるものとしている。このタンク9には、揚上ポンプ91が設けられ、再び送液部6に液体を供給できるものとしている。このような構成による所定の循環路を形成するのである。
【0068】
本実施形態では、硝酸イオンを発生させるためにプラズマ放電装置8を使用することから、当該プラズマ放電装置8に対して電源81を供給するとともに、流下部(硝酸イオン発生部)7の底面部分には、液中電極(銅製、プラチナ製、プラチナ-ロジウム製、など)80が長手方向に配設されている。電源81は、電圧・電流や電力出力の調整制御部82を介して、プラズマ放電装置8に所定電圧・電流あるいは電力を送電するものである。
【0069】
このような構成により、所定電圧が印加されたプラズマ放電装置(放電電極)8は、液中電極80に向けてプラズマを照射することとなり、そのプラズマの照射を受けた液体は、大気中の窒素と反応して液体中に硝酸イオンを発生させることができる。
【0070】
なお、プラズマ放電装置8は、単一であってもよく、複数を配設してもよいが、本実施形態では、図6に示しているように、多数のプラズマ放電装置(放電電極)8を複数のグループに区分し、それぞれの作動のタイミングを調整するように構成している。すなわち、イオン濃度検出装置100に近接する側から数個(図は3個)を一つグループ(Aグループ)8Aとし、同数の次順位のグループ(Bグループ)8Bおよび次のグループ(Cグループ)8Cとして3つのグループを構成させている。このように複数のグループに区分して、順次プラズマを照射することにより、流下する液体に対して集中して放電プラズマを作用させることができる。
【0071】
このように、各グループ8A,8B,8Cを順次作動させるために、電源とプラズマ放電装置8との間にはスイッチング回路83を介在させている。このスイッチング回路83の制御により、例えば、図7に示すようなデューティ比を1/4(25%)とすることにより、連続的な放電ではなく間欠的な放電により、放電電極の加熱を抑制しつつ、つまり、電極周りの部品に熱損傷を及ぼすことなく、流下する液体に対して放電プラズマを連続して照射し得ることとなる。
【0072】
なお、流下部(硝酸イオン発生部)7を流下する液体の液面は、送液部6に供給される液体の量またはイオン濃度検出装置100を通過する液体の量によって一定とすることができ、その場合のプラズマ放電装置8の先端と液面との間隙Xを一定に維持させることができる。また、硝酸イオンを発生させるためには、上記間隙は、例えば5mm程度が好適である。
【0073】
また、上記のイオン濃度の検出装置100には、図示せぬ制御部が設けられ、この制御部は、吸光度からイオン濃度に換算するための換算部であり、特に、硝酸イオン濃度換算部として機能する。従って、硝酸イオン濃度測定部は、イオン濃度の検出装置100と制御部とで構成され、予めイオン濃度の検出装置100に制御部を有する構成の場合には、当該イオン濃度の検出装置100によって硝酸イオン濃度測定部が構成されていることとなる。
【0074】
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、本発明がこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、イオン濃度検出装置における光源2,3に関しては、上記実施形態では、第1の光源2と第2の光源3の二種類としたが、さらに多数の光源を使用してもよい。硝酸イオン(NO )および亜硝酸イオン(NO )の双方について吸光特性を顕著に示す領域が前記二つの領域に存在するが、多数の領域の吸光度の値を利用することにより、硝酸イオン(NO )の濃度検出の正確性を担保することとなるからである。
【0075】
また、上記実施形態中の検査領域構成部1の底面部14(または流路4の底部)は、壁面11,12と一体に構成(図示にて構成)している。これは、検査領域構成部1の空隙13に照射された光源1の光が底面部14によって反射しないためである。このように、底面部14を壁面11,12と同種の材料にすべき必要性はなく、他の材料で構成してもよいが、少なくとも空隙13の内部に反射光が侵入しない材料を使用することが要請される。また、検査領域構成部1の壁面11,12は、その名称に沿って側方に分かれて設置した構成のみを示しているが、これを上下方向に配置する(実質的には底面部14と上面部15として設置する)場合も本発明に含まれるものである。検査領域構成部1は、所定の空隙13が形成される構成であれば、同様の効果を得ることができるからである。
【0076】
さらに、上記実施形態では、光検出部4,5によって透過光強度が検出された値は、送信ケーブル42,52によって処理部に送信されるものとしているが、このような有線によるデータ送信に限らず無線による送信または、インターネット回線等の公衆回線を介してデータ送信する場合もあり得る。
【符号の説明】
【0077】
1 検査領域構成部
2,3 光源
4,5 光検出部
6 送液部
7 流下部(硝酸イオン発生部)
8 プラズマ発生装置(放電電極)
8A グループA
8B グループB
8C グループC
11,12 壁面
13 空隙
14 底面部
15 上面部
41,51 受光部
42,52 送信ケーブル
80 液中電極
81 電源
82 出力調整制御部
83 スイッチング回路
100 イオン濃度検出装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7