IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社奥村組の特許一覧 ▶ 植村技研工業株式会社の特許一覧

特許7032736FCプレートの固定部材および函体構造物の設置方法
<>
  • 特許-FCプレートの固定部材および函体構造物の設置方法 図1
  • 特許-FCプレートの固定部材および函体構造物の設置方法 図2
  • 特許-FCプレートの固定部材および函体構造物の設置方法 図3
  • 特許-FCプレートの固定部材および函体構造物の設置方法 図4
  • 特許-FCプレートの固定部材および函体構造物の設置方法 図5
  • 特許-FCプレートの固定部材および函体構造物の設置方法 図6
  • 特許-FCプレートの固定部材および函体構造物の設置方法 図7
  • 特許-FCプレートの固定部材および函体構造物の設置方法 図8
  • 特許-FCプレートの固定部材および函体構造物の設置方法 図9
  • 特許-FCプレートの固定部材および函体構造物の設置方法 図10
  • 特許-FCプレートの固定部材および函体構造物の設置方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】FCプレートの固定部材および函体構造物の設置方法
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/06 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
E21D9/06 301L
E21D9/06 311Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018119391
(22)【出願日】2018-06-23
(65)【公開番号】P2020002526
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-04-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(73)【特許権者】
【識別番号】592069137
【氏名又は名称】植村技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101971
【弁理士】
【氏名又は名称】大畑 敏朗
(72)【発明者】
【氏名】亀井 寛功
(72)【発明者】
【氏名】山崎 芳弘
(72)【発明者】
【氏名】松浦 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】生田 光輝
(72)【発明者】
【氏名】川嶋 英介
(72)【発明者】
【氏名】丸田 新市
(72)【発明者】
【氏名】中村 智哉
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特公昭63-31623(JP,B2)
【文献】特開2008-144377(JP,A)
【文献】特開2007-262679(JP,A)
【文献】特公昭55-12515(JP,B1)
【文献】特開平1-304297(JP,A)
【文献】特開2007-146533(JP,A)
【文献】特開平8-193330(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
函体構造物の構築予定位置と外面とが一致して並ぶようにして組み立てられた複数の箱形ルーフに載ったFCプレートの固定部材であって、
前記FCプレートが固定された鋼材である第1の桁材と、
前記第1の桁材と対向する位置に配置されて支圧壁に取り付けられた鋼材である第2の桁材と、
それぞれの両端部が前記第1の桁材の端部と前記第2の桁材の端部とに固定され、前記第1の桁材と前記第2の桁材とで矩形の枠体を形成する鋼材である第3の桁材および第4の桁材と、
両端部が第1の桁材と前記第2の桁材とに固定されて前記枠体の内側に位置する鋼材である少なくとも1本の第5の桁材と、
を有することを特徴とするFCプレートの固定部材。
【請求項2】
前記第5の桁材は、
両端部が前記第1の桁材の中央部と前記第2の桁材の中央部とに固定されている、
ことを特徴とする請求項1記載のFCプレートの固定部材。
【請求項3】
前記第2の桁材は、前記支圧壁を形成する鋼材の前記函体構造物の推進方向とは反対側に配置され、前記函体構造物の推進時に前記鋼材を押圧するように取り付けられている、
ことを特徴とする請求項1または2記載のFCプレートの固定部材。
【請求項4】
前記第2の桁材と前記支圧壁との間には、フラットジャッキの支圧板が挿入可能なスペーサが着脱可能に設置されている、
ことを特徴とする請求項3記載のFCプレートの固定部材。
【請求項5】
矩形断面を有する中空の函体構造物を推進することで前記函体構造物を路線下に横断して構築する函体推進工法における函体構造物の設置方法であって、
前記函体構造物の構築予定位置と外面とが一致して並ぶようにして、FCプレートの載った複数の箱形ルーフを発進立坑に設置する工程と、
請求項1~4の何れか一項に記載のFCプレートの固定部材を構築する工程と、
前記発進立坑に函体構造物を設置する工程と、
前記発進立坑に設置された前記函体構造物を推進しながら当該函体構造物を路線下に横断して設置していく工程と、
を有することを特徴とする函体構造物の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FCプレートの固定部材および函体構造物の設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
走行する列車や車などの流れを阻害せずに、矩形断面を有する中空の函体構造物(例えば、プレキャストボックスカルバートなど)を路線下に横断して構築するためには函体推進工法(例えばR&C工法やSFT工法など)が用いられる。
【0003】
この函体推進工法においては、函体構造物の構築予定位置と外面とが一致して並ぶようにして、断面中空矩形状となった複数の箱形ルーフを、路線を横断する方向に沿って圧入しておく。そして、発進立坑側から函体構造物を推進させて箱形ルーフを到達立坑側に押し出しながら、函体構造物を箱形ルーフと置換して路線下に構築する。
【0004】
函体構造物を設置する技術については、例えば特公昭63-31623号公報に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特公昭63-31623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、函体推進工法においては、組み立てられた複数の箱形ルーフの上面にFC(Friction Cut)プレートを設置して、函体構造物の推進施工時に周辺地山と縁を切り、推進時の摩擦抵抗による地山の乱れや共連れ(函体構造物の上部の盛土が函体構造物に乗った状態で到達立坑側に移動してしまう現象)を防いでいる。
【0007】
FCプレートは、発進立坑側において所定の方式によりFCプレートを固定し、函体構造物の推進時に生じる函体構造物とFCプレートとの摩擦によって生じる引張力(推進方向に函体構造物とともに向かおうとする力)に対抗している。
【0008】
従来のFCプレートの固定方式としては、桁方式、タイロッド方式、牽引方式などが知られている。
【0009】
ここで、桁方式は、発進坑口でFCプレート全数を連結した固定部材(主として仮土留と平行方向の部材)の両端部を固定し、この部材の剛性を持ってFCプレートの横移動を規制する方式である。タイロッド方式は、発進坑口でFCプレート全数を連結した固定部材を引張り材(PC鋼棒など)で立坑背面の支圧壁などに固定し、FCプレートの横移動を規制する方式である。牽引方式は、発進坑口でFCプレート全数を連結した固定部材を引張り材(PC鋼棒など)で函体後方へ引っ張る油圧ジャッキを複数配置し、桁材の位置でFCプレートの変位量をストローク計でリアルタイムに計測し、油圧ジャッキ制御システムと電磁弁式操作盤を組み合わせることにより変位量が設定値を超えると自動的に制御ジャッキが作用してFCプレートを自動制御する方式である。
【0010】
しかしながら、これらの固定方式では、次のような問題点がある。
【0011】
桁方式では、固定部材を容易に設置できる反面、作用する引張力の反力を盛土側の地盤反力から得る必要があるため、土被りが小さいところでは設置できない。また、背面の地盤反力係数が小さい場合、FCプレートの固定桁自体の剛性を向上させるため、トラス状にする場合もあるが、発進立坑のスペースが限られる場合には設置が困難になる。
【0012】
タイロッド方式では、函体構造物の設置断面が大きい場合、FCプレートの枚数が多くなって多くの引張り材が必要となるが、函体構造物の設置時やスペーサの設置時にこれらを取り外し、再設置しなければならず、施工の手間が増える。
【0013】
そして、牽引方式では、推進される函体構造物の上部と後部とに、装置を設置するための多くのスペースを要する。また、函体構造物を設置するたびに、装置の撤去と再設置とが必要になる。
【0014】
本発明は、上述の技術的背景からなされたものであって、周辺地山の状態に制約されることなく、スペース効率に優れ、函体構造物の設置が容易なFCプレートの固定部材および当該固定部材を用いた函体構造物の設置方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の本発明のFCプレートの固定部材は、函体構造物の構築予定位置と外面とが一致して並ぶようにして組み立てられた複数の箱形ルーフに載ったFCプレートの固定部材であって、前記FCプレートが固定された鋼材である第1の桁材と、前記第1の桁材と対向する位置に配置されて支圧壁に取り付けられた鋼材である第2の桁材と、それぞれの両端部が前記第1の桁材の端部と前記第2の桁材の端部とに固定され、前記第1の桁材と前記第2の桁材とで矩形の枠体を形成する鋼材である第3の桁材および第4の桁材と、両端部が第1の桁材と前記第2の桁材とに固定されて前記枠体の内側に位置する鋼材である少なくとも1本の第5の桁材と、を有することを特徴とする。
【0016】
請求項2に記載の本発明のFCプレートの固定部材は、上記請求項1に記載の発明において、前記第5の桁材は、両端部が前記第1の桁材の中央部と前記第2の桁材の中央部とに固定されている、ことを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の本発明のFCプレートの固定部材は、上記請求項1または2に記載の発明において、前記第2の桁材は、前記支圧壁を形成する鋼材の前記函体構造物の推進方向とは反対側に配置され、前記函体構造物の推進時に前記鋼材を押圧するように取り付けられている、ことを特徴とする。
【0018】
請求項4に記載の本発明のFCプレートの固定部材は、上記請求項3に記載の発明において、前記第2の桁材と前記支圧壁との間には、フラットジャッキの支圧板が挿入可能なスペーサが着脱可能に設置されている、ことを特徴とする。
【0019】
上記課題を解決するため、請求項5に記載の本発明の函体構造物の設置方法は、矩形断面を有する中空の函体構造物を推進することで前記函体構造物を路線下に横断して構築する函体推進工法における函体構造物の設置方法であって、前記函体構造物の構築予定位置と外面とが一致して並ぶようにして、FCプレートの載った複数の箱形ルーフを発進立坑に設置する工程と、請求項1~4の何れか一項に記載のFCプレートの固定部材を構築する工程と、前記発進立坑に函体構造物を設置する工程と、前記発進立坑に設置された前記函体構造物を推進しながら当該函体構造物を路線下に横断して設置していく工程と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、固定部材が、矩形の枠体を形成する鋼材である第1~第4の桁材と、枠体の内側に位置する鋼材である第5の桁材とで構成されているので、固定部材の設置が周辺地山の状態に制約されることがなくなる。また、固定部材の設置に際して矩形の枠体以上のスペースは不要なことから、狭隘な発進立坑でも設置可能になる。さらに、函体構造物を設置する際には第5の桁材だけを避けるようにすればよいことから、函体構造物の設置が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の一実施の形態に係る函体構造物の設置方法で用いられる函体構造物を示す斜視図である。
図2】本発明の一実施の形態に係る函体構造物の設置方法で実行される推進工法の一つであるR&C工法における一部の工程を示す説明図である。
図3】本発明の一実施の形態に係る函体構造物の設置方法で実行される推進工法の一つであるR&C工法における図2に続く工程を示す説明図である。
図4】本発明の一実施の形態に係る函体構造物の設置方法で実行される推進工法の一つであるR&C工法における図3に続く工程を示す説明図である。
図5】本発明の一実施の形態に係る函体構造物の設置方法で実行される推進工法の一つであるR&C工法における図4に続く工程を示す説明図である。
図6】本発明の一実施の形態であるFCプレートの固定部材が設置された発進立坑を示す平面図である。
図7図6の発進立坑の発進坑口を示す正面図である。
図8図6のA-A線に沿った断面図である。
図9図6のB-B線に沿った断面図である。
図10】FCプレートの固定部材を構成する第1の桁材と第2の桁材を示す正面図である。
図11】FCプレートの固定部材を構成する枠体の隅部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の一例としての実施の形態について、図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための図面において、同一の構成要素には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0023】
本実施の形態において用いられる函体構造物は、例えば上下スラブにプレストレスを導入したPRC(Prestressed Reinforced Concrete)構造であり、図1に示すように、矩形断面を有する中空構造となっている。そして、このような函体構造物を縦列配置して地下構造物を構築することにより、道路用暗渠、下水道、導水路、地下横断歩道などとして用いられる。
【0024】
図1において、函体構造物10は、上下方向で対向した上部スラブ10aおよび下部スラブ10bと、これら上部スラブ10aおよび下部スラブ10bの両端において横方向で対向した一対の側板10c,10dとからなる。また、前後が開口10eとして開放されている。そして、開口10eを相互に連通させながら推進して複数の函体構造物10を縦列配置することにより、地下構造物が構築される。
【0025】
図示するように、函体構造物10の四隅には、推進方向に沿って延び、隣接する函体構造物10同士をボルトとナットで定着させるための定着材挿通孔10fが貫通して形成されている。なお、図示する函体構造物10には形成されていないが、例えば3体に1体おきの割合で配置される函体構造物10には、設置後にグラウト材を注入するためのグラウトホールが形成されている。
【0026】
次に、このような函体構造物10を用いた地下構造物の構築について、図2図5を用いて説明する。なお、ここでは、軌道下を横断する地下道の構築について説明する。また、本実施の形態では、推進工法の一つであるR&C工法が用いられている。
【0027】
この地下道は、軌道20の下において、当該軌道20に交差して設けられる。このような地下道を構築するには、図2に示すように、まず、軌道20を挟んだ両側地盤に土留壁25を打ち込んで発進立坑21および到達立坑22を掘削した後、計画地下道の予定位置に発進立坑21より軌道20を横断する方向、すなわち地下道の延在方向に、断面中空矩形状の箱形ルーフ23を圧入する。なお、圧入は推進機24を用いて行われる。
【0028】
箱形ルーフ23の圧入は、函体構造物10の上部スラブ10aの配設予定位置と外面が一致して並ぶように行う。また、函体構造物10の側板10c,10dの配設予定位置にも、外面が一致して並ぶように行う。なお、多くの場合、函体構造物10は複数が縦列配置され、したがって箱形ルーフ23も函体構造物10に応じた数だけ縦列配置されることになるが、図2図5においては、6体が縦列配置される場合が示されている。また、これらの図面において、図面表示の煩雑さを回避するために、函体構造物10の側板10c,10dの配設予定位置に圧入された箱形ルーフ23の図示は省略されている。
【0029】
この際、箱形ルーフ23の内部にオーガ等の掘削機(図示せず)を挿入して軌道20の地表下の地盤を掘削しながら箱形ルーフ23の後端を推進機24で押圧して到達立坑22に達するまで圧入する。このとき、掘削土砂はオーガスクリューによって箱形ルーフ23の内部を通って後方から搬出される。
【0030】
ここで、函体構造物10の上部スラブ10aの配設予定位置に圧入される箱形ルーフ23の上面にFCプレート26を載せ、当該FCプレート26の先端部のみを箱形ルーフ23の先端に溶接あるいは螺子止め等により固定する。そして、箱形ルーフ23を圧入した後は、箱形ルーフ23との固定を解除して、後述するFCプレート26の固定部材40に固定する。
【0031】
このような作業は、箱形ルーフ23を推進して函体構造物10と置き換える際に、箱形ルーフ23と地盤との間に発生する摩擦抵抗による地山の乱れや共連れをFCプレート26で防止するためである。
【0032】
このようにして発進立坑21から到達立坑22まで貫通する箱形ルーフ23の圧入を終えたならば、図3に示すように、発進立坑21内に推進台27を設置し、当該推進台27の上に、刃口28を箱形ルーフ23に向けて取り付けた函体構造物10を(本実施の形態では、一度に3体の函体構造物10を)設置する。また、到達立坑22内には、函体構造物10と置き換えられて除去された箱形ルーフ23を受ける受台29を設置する。
【0033】
なお、函体構造物10は、FCプレート26の固定部材40を設置した後に設置してもよく、逆に、FCプレート26の固定部材40を設置する前に設置してもよい。さらに、両者を併行して設置してもよい。
【0034】
また、刃口28は箱形ルーフ23が圧入されていない地盤を切削するもので、後方から押圧されることによって地盤内を圧入切削し、切削土砂が刃口28の内部に取り込まれるように、前方が内側に傾斜している。
【0035】
上述のように函体構造物10を推進台27の上に載置したならば、函体構造物10の後端面と発進立坑21の後端壁面との間に支圧壁31を設け、当該支圧壁31に反力をとるように複数本の推進ジャッキ30を設置する。
【0036】
そして、図4に示すように、推進ジャッキ30を作動させ、1体の函体構造物10の長さ分推進するごとに1体のスペーサ32を設置しつつ刃口28により地山を掘削しながら函体構造物10を推進させると、箱形ルーフ23は到達立坑22側に押し出される。これとともに、刃口28によって函体構造物10の両側壁側の地盤が切削され、その土砂が函体構造物10内に取り込まれるので、この土砂を排除しながら推進ジャッキ30によってさらに函体構造物10を押圧する。
【0037】
このとき、FCプレート26は固定部材40に固定されているので、箱形ルーフ23が到達立坑22側に移動するにも拘わらず、表層部の土砂は移動しない。
【0038】
このようにして最初に設置した3体の函体構造物10をFCプレート26に沿って推進させ、内部土砂を切削しながら到達立坑22側に先頭の箱形ルーフ23を排出して函体構造物10と置換したならば、図5に示すように、スペーサ32を撤去して、先行する3体の函体構造物10の後方に、次の3体の函体構造物10を設置する。
【0039】
そして、最初の3体の函体構造物10の場合と同様にして、スペーサ32を適宜設置しながらこれらの函体構造物10を推進し、次の箱形ルーフ23を到達立坑22側に排出する。これを順次繰り返すことで函体構造物10を縦列配置すれば、地下道が構築される。
【0040】
なお、上記説明においては、函体構造物10を後端側から押圧する場合について述べたが、到達立坑側から鋼線を埋設して函体構造物10を引っ張る等の方法を採用してもよく、要するに函体構造物10を推進させればよい。
【0041】
次に、本発明の実施の形態においてFCプレート26を固定している固定部材40の構造について、図6図11を用いて説明する。
【0042】
図6は本発明の一実施の形態であるFCプレートの固定部材が設置された発進立坑を示す平面図、図7図6の発進立坑の発進坑口を示す正面図、図8図6のA-A線に沿った断面図、図9図6のB-B線に沿った断面図、図10はFCプレートの固定部材を構成する第1の桁材と第2の桁材を示す正面図、図11はFCプレートの固定部材を構成する枠体の隅部を示す平面図である。
【0043】
図6図9において、また前述のように、発進立坑21から到達立坑22にわたって、函体構造物10の配設予定位置と外面が一致して並ぶように複数の箱形ルーフ23が圧入されている。また、発進立坑21には、3体の函体構造物10(図6では図示省略)が推進台27上に設置されている。
【0044】
なお、一度に設置される函体構造物10の数は3体に限定されるものではなく、函体構造物10のサイズ、現場の状況、推進ジャッキ30の能力などといった様々な条件によって最適な設置数が決定される。また、函体構造物10の推進に際しては、必ずしもスペーサ32を用いなくてもよい。
【0045】
図示するように、箱形ルーフ23の上面には、当該箱形ルーフ23の幅および全長に略等しい帯状鋼板よりなるFCプレート26が載せられている。図7に示すように、函体構造物10の上部スラブ10aに対応する箱形ルーフ23は複数であることから、FCプレート26もこれらの箱形ルーフ23に対応して複数枚(本実施の形態では6枚)設置される。
【0046】
さて、図6に示すように、FCプレート26を固定するための固定部材40は、例えばH形鋼などの鋼材で構成されており、矩形の枠体を形成する第1の桁材41、第2の桁材42、第3の桁材43および第4の桁材44と、枠体の内側に配置された第5の桁材45とで構成されている。なお、本願において「矩形」とは、長方形のみならず正方形をも含む概念である。
【0047】
第1の桁材41はFCプレート26に固定され、第1の桁材41の対向位置の第2の桁材42は支圧壁31に取り付けられ、第3の桁材43および第4の桁材44は、それぞれの両端部が第1の桁材41の端部と第2の桁材42の端部とに固定されている。また、第5の桁材45は、両端が第1の桁材41と第2の桁材42とに固定されている。
【0048】
なお、本実施の形態では、第5の桁材45は、固定部材40を構成する矩形の枠体の中央に位置しているために、プレキャスト化された函体構造物10を設置することができない。したがって、本実施の形態で用いられるのは、発進立坑21内において現場打ちで設置された函体構造物10や、分割されたプレキャスト部材を組み立てて設置された函体構造物10となる。また、スペーサ32は、第5の桁材45と干渉せずに設置が可能な2分割タイプが用いられる。
【0049】
ここで、第1の桁材41は、FCプレート26の端部の配列方向に沿って配置されており、全てのFCプレート26と溶接で固定されている。具体的には、第1の桁材41の両側の壁面とFCプレート26の表面とで形成される角部に略三角形の複数の固定板50が溶接され、これにより第1の桁材41とFCプレート26とが固定されている。なお、固定板50に加えて、あるいは固定板50に換えて、第1の桁材41とFCプレート26とを直接溶接してもよい。
【0050】
また、図10に示すように、第1の桁材41には、H形鋼のウエブWを挟むように形成された一対のフランジFの間に掛け渡されるようにして、長手方向に延びる板状の補強板51が溶接されている。
【0051】
そして、このような構造により、函体構造物10の推進によって箱形ルーフ23とともに到達立坑22側に移動しようとするFCプレート26を規制している。
【0052】
第2の桁材42は、前述のように、第1の桁材41と対向する位置に配置されて支圧壁31に取り付けられている。ここで、支圧壁31は、縦方向に並んで配置された鋼材であるH形鋼で構成されている。そして、第2の桁材42は、支圧壁31における函体構造物10の推進方向とは反対側に配置されており、函体構造物10の推進時に支圧壁31である鋼材を押圧するように取り付けられている。
【0053】
図10に示すように、第2の桁材42にも、第1の桁材41と同様の板状の補強板51が溶接されている。また、図8および図9に示すように、支圧壁31には、当該支圧壁31のH形断面に嵌め込まれるようにして、補強板31aが上下に所定間隔で溶接されている。そして、このような補強構造により、函体構造物10の推進によりFCプレート26を介して伝達される推進方向への力に対抗している。
【0054】
本実施の形態において、第2の桁材42と支圧壁31との間には図示しないスペーサが着脱可能に嵌め込まれており、両者の間隔が例えば10cm程度確保されている。これは、函体構造物10の推進に伴って固定部材40自体に過大な変位が生じた場合を想定したものである。すなわち、過大な変位が発生した場合には、スペーサを撤去して生じた空隙にフラットジャッキの支圧板を挿入して当該空隙を広げるようにすれば、第2の桁材42が押し戻されて変位量を事後的に緩和することが可能になる。
【0055】
なお、第2の桁材42は、溶接やボルトなどで支圧壁31に固定してもよい。但し、本実施の形態のように、函体構造物10の推進時に支圧壁31を押圧するように、支圧壁31の函体構造物10の推進方向と反対側に配置しておけば、第2の桁材42を支圧壁31に固定するための作業が不要になるので、第2の桁材42の設置や撤去が容易になる。
【0056】
図6に示すように、第3の桁材43および第4の桁材44は、これらの両端部が第1の桁材41の端部と第2の桁材42の端部とに溶接やボルトなどで固定され、第1の桁材41と第2の桁材42とで矩形の枠体を形成している。
【0057】
また、同じ図6に示すように、矩形の枠体と同様にH形鋼などの鋼材で構成された第5の桁材45は、その両端部が第1の桁材41の中央部と第2の桁材42の中央部に溶接やボルトなどで固定されている。
【0058】
そして、これら第1~第5の桁材41~45で形成される各コーナには、桁材同士の固定強度を上げるための補強板52が溶接されている。図11において、第1の桁材41と第3の桁材43とで形成されるコーナに設けられた補強板52を示す。図示する場合には、補強板52は略三角形の形状を呈しているが、前述の固定板50を含め、形状は自由に設定することができる。
【0059】
以上説明した本実施の形態の固定部材40は、矩形の枠体を形成する鋼材である第1~第4の桁材41~44と、枠体の内側に位置する鋼材である第5の桁材45とにより構成されているので、極めて高い剛性を備えている。
【0060】
したがって、函体構造物10の推進によって箱形ルーフ23とともに到達立坑22側に移動しようとするFCプレート26により発生した力に対して、FCプレート26の固定された第1の桁材41と、第1の桁材41によって長手方向に引っ張られる第3、第4および第5の桁材43,44,45と、これらの桁材43,44,45によって3箇所から分散して短手方向に引っ張られる第2の桁材42とにより、確実に対抗することが可能になる。
【0061】
そして、固定部材40が、矩形の枠体を形成する鋼材である第1~第4の桁材41~44と、枠体の内側に位置する鋼材である第5の桁材45とで構成されているので、固定部材40の設置が周辺地山の状態に制約されることがなくなる。また、固定部材40の設置に際して矩形の枠体以上のスペースは不要なことから、狭隘な発進立坑21においても剛性の高い固定部材40を設置できるようになり、スペース効率に優れる。さらに、函体構造物10を設置する際には第5の桁材45だけを避けるようにすればよいことから、函体構造物10の設置が容易になる。
【0062】
以上本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本明細書で開示された実施の形態はすべての点で例示であって、開示された技術に限定されるものではない。すなわち、本発明の技術的な範囲は、前記の実施の形態における説明に基づいて制限的に解釈されるものでなく、あくまでも特許請求の範囲の記載に従って解釈されるべきであり、特許請求の範囲の記載技術と均等な技術および特許請求の範囲の要旨を逸脱しない限りにおけるすべての変更が含まれる。
【0063】
たとえば、第5の桁材45は、本実施の形態では1本となっているが、第1~第4の桁材41~44で形成される枠体の大きさが大きい場合には、2本以上つまり複数本設置してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
以上の説明では、本発明による函体構造物の設置方法を、推進工法の一つであるR&C工法に用いた場合が示されているが、R&C工法以外にも、例えばSFT工法やFJ工法など、様々な推進工法に用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
10 函体構造物
10a 上部スラブ
10b 下部スラブ
10c,10d 側板
10e 開口
10f 定着材挿通孔
20 軌道
21 発進立坑
22 到達立坑
23 箱形ルーフ
24 推進機
25 土留壁
26 FCプレート
27 推進台
28 刃口
29 受台
30 推進ジャッキ
31 支圧壁
31a 補強板
32 スペーサ
40 固定部材
41 第1の桁材
42 第2の桁材
43 第3の桁材
43 第4の桁材
45 第5の桁材
50 固定板
51 補強板
52 補強板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11