(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】心電図解析支援装置、プログラム、心電図解析支援方法、及び心電図解析支援システム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/349 20210101AFI20220302BHJP
A61B 5/355 20210101ALI20220302BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20220302BHJP
A61B 5/366 20210101ALI20220302BHJP
A61B 5/361 20210101ALI20220302BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20220302BHJP
【FI】
A61B5/349
A61B5/355
A61B5/352
A61B5/366
A61B5/361
G06N20/00 130
(21)【出願番号】P 2021050381
(22)【出願日】2021-03-24
【審査請求日】2021-05-17
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006677
【氏名又は名称】アステラス製薬株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】516325349
【氏名又は名称】株式会社エムハート
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】特許業務法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】荻野 淳
(72)【発明者】
【氏名】清水 光久
(72)【発明者】
【氏名】橋本 英樹
(72)【発明者】
【氏名】香川 敏也
【審査官】▲高▼原 悠佑
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第111714111(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0097537(US,A1)
【文献】国際公開第2021/019984(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109864739(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109846476(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第109875545(CN,A)
【文献】特表2020-536693(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0379589(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第109864714(CN,A)
【文献】谷口浩久、田村雄一,人工知能(AI)を用いたホルター心電図自動診断システムの開発,国際医療福祉大学学会誌,2018年08月26日,Vol.23,抄録号,p.168
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに前記心電図の解析に関する予め定められた種類のピークが存在するか否かを示すピーク情報が出力情報とされたピーク推定モデルと、
心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに対応する区間が、予め定められた種類の区間のうちの何れの区間であるかを示す区間種類情報が出力情報とされた区間推定モデルと、
解析対象とする心電図における波形データを取得する解析用波形取得部と、
前記解析用波形取得部によって取得された波形データから、予め定められた第1期間の波形データを、当該第1期間より短い期間として予め定められた移動期間ずつ移動させながら解析用区分波形データとして切り出す解析用波形切出部と、
前記解析用波形切出部によって切り出された解析用区分波形データを前記ピーク推定モデルに入力することで前記ピーク情報を導出する導出部と、
前記解析用波形取得部によって取得された波形データから、前記第1期間より長い期間である第2期間の波形データを第2解析用区分波形データとして切り出す第2解析用波形切出部と、
前記第2解析用波形切出部によって切り出された第2解析用区分波形データを前記区間推定モデルに入力することで前記区間種類情報を導出する第2導出部と、
前記導出部によって導出されたピーク情報及び前記第2導出部によって導出された区間種類情報を合成することで、前記解析対象とする心電図が示す状況を推定する推定部と、
を備えた心電図解析支援装置。
【請求項2】
前記予め定められた種類の区間は、通常の区間である通常区間、心房細動の区間である心房細動区間、及び解析の対象外とする区間である非解析区間のうちの少なくとも2つの区間を含む、
請求項
1に記載の心電図解析支援装置。
【請求項3】
学習対象とする心電図における波形データを取得する学習用波形取得部と、
前記学習用波形取得部によって取得された波形データから前記第1期間の波形データを学習用区分波形データとして切り出す学習用波形切出部と、
を更に備え、
前記ピーク推定モデルは、前記学習用波形切出部によって切り出された学習用区分波形データを入力情報とし、当該学習用区分波形データに対応する前記ピーク情報を出力情報として機械学習されたものである、
請求項1
又は請求項
2に記載の心電図解析支援装置。
【請求項4】
前記予め定められた種類は、正常又は心房性期外収縮を示す第1種類、心房細動を示す第2種類、及び心室性期外収縮を示す第3種類のうちの少なくとも1種類を含む、
請求項1~請求項
3の何れか1項に記載の心電図解析支援装置。
【請求項5】
心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに前記心電図の解析に関する予め定められた種類のピークが存在するか否かを示すピーク情報が出力情報とされたピーク推定モデル、及び心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに対応する区間が、予め定められた種類の区間のうちの何れの区間であるかを示す区間種類情報が出力情報とされた区間推定モデルを用いたプログラムであって、
解析対象とする心電図における波形データを取得し、
取得した波形データから、予め定められた第1期間の波形データを、当該第1期間より短い期間として予め定められた移動期間ずつ移動させながら解析用区分波形データとして切り出し、
切り出した解析用区分波形データを前記ピーク推定モデルに入力することで前記ピーク情報を導出し、
取得した波形データから、前記第1期間より長い期間である第2期間の波形データを第2解析用区分波形データとして切り出し、
切り出した第2解析用区分波形データを前記区間推定モデルに入力することで前記区間種類情報を導出し、
導出したピーク情報及び導出した区間種類情報を合成することで、前記解析対象とする心電図が示す状況を推定する、
処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。
【請求項6】
心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに前記心電図の解析に関する予め定められた種類のピークが存在するか否かを示すピーク情報が出力情報とされたピーク推定モデル、及び心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに対応する区間が、予め定められた種類の区間のうちの何れの区間であるかを示す区間種類情報が出力情報とされた区間推定モデルを用いた心電図解析支援方法であって、
解析対象とする心電図における波形データを取得し、
取得した波形データから、予め定められた第1期間の波形データを、当該第1期間より短い期間として予め定められた移動期間ずつ移動させながら解析用区分波形データとして切り出し、
切り出した解析用区分波形データを前記ピーク推定モデルに入力することで前記ピーク情報を導出し、
取得した波形データから、前記第1期間より長い期間である第2期間の波形データを第2解析用区分波形データとして切り出し、
切り出した第2解析用区分波形データを前記区間推定モデルに入力することで前記区間種類情報を導出し、
導出したピーク情報及び導出した区間種類情報を合成することで、前記解析対象とする心電図が示す状況を推定する、
心電図解析支援方法。
【請求項7】
請求項1~請求項
4の何れか1項に記載の心電図解析支援装置と、
前記心電図解析支援装置に対して解析対象とする心電図における波形データを転送し、当該波形データの転送に応じて前記心電図解析支援装置によって得られた情報を受信して提示する端末装置と、
を含む心電図解析支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、心電図解析支援装置、プログラム、心電図解析支援方法、及び心電図解析支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、新たな心電計の普及により、心電図の計測データは増大しているが、当該計測データを解析する専門家の数は余り増加しておらず、人員不足が問題となっている。一方で、心電図の解析を行うルールベース型の解析エンジンもあるが、その性能の向上には限界があり、解析結果を手動で修正する作業が伴う場合が多く、解析を行う医師や臨床検査技師等の医療従事者の負担が大きい。このため、医療従事者の負担を軽減することができる技術が要望されている。
【0003】
従来、医療従事者の負担を軽減するために適用することのできる、心電図の解析に関する技術として、以下の技術があった。
【0004】
特許文献1には、複数の心拍波形データを含むデータセットから生成されたトレーニング用の心拍波形に関する入力データに基づいてトレーニング用の心拍波形の心拍タイプが出力される学習モデルを生成し、データセットからサンプリングされた各バッチの損失重みを決定し、各バッチの損失重みに基づいて損失関数を決定することにより、学習モデルをトレーニングし、テスト用の心拍波形を学習モデルに入力してテスト用の心拍波形の心拍タイプを分類する態様が記載されている。
【0005】
特許文献2には、メタボリック症候群や糖尿病を始めとする生活習慣病の予防や、ダイエット、医療サービスなどのヘルスケアを目的とした、食事を行った時刻を推定する技術として、コンピュータに、心拍数の時系列データを取得し、前記心拍数の時系列データに含まれる部分データごとに、食事開始後に心拍数のピークが先行して現れる第1ピークよりも後続して現れる第2ピークに関する特徴量を算出し、前記部分データごとに算出された第2ピークに関する特徴量を用いて、前記部分データにおける食事の有無を判定し、前記食事が有りと判定された部分データから食事時刻を推定する処理を実行させることを特徴とする食事推定プログラムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許出願公開第2020/0289010号明細書
【文献】国際公開第2016/092707号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、心電図においては、心房性期外収縮、心房細動、心室性期外収縮等の不整脈の種類によって波形データにおけるピークの状況が異なることが知られており、本発明者らの検討の結果、当該ピークの状況を解析することで、特定の種類の不整脈が生じているか否かを高い精度で判断することができることが分かった。
【0008】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示されている技術では、心電図の波形データのピークの状況に関しては考慮されておらず、必ずしも特定の種類の不整脈が生じているか否かの判断に寄与することができるとは限らない、という問題点があった。
【0009】
本開示は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、特定の種類の不整脈が生じているか否かの判断に寄与することができる心電図解析支援装置及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の第1態様は、心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに前記心電図の解析に関する予め定められた種類のピークが存在するか否かを示すピーク情報が出力情報とされたピーク推定モデルと、心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに対応する区間が、予め定められた種類の区間のうちの何れの区間であるかを示す区間種類情報が出力情報とされた区間推定モデルと、解析対象とする心電図における波形データを取得する解析用波形取得部と、前記解析用波形取得部によって取得された波形データから、予め定められた第1期間の波形データを、当該第1期間より短い期間として予め定められた移動期間ずつ移動させながら解析用区分波形データとして切り出す解析用波形切出部と、前記解析用波形切出部によって切り出された解析用区分波形データを前記ピーク推定モデルに入力することで前記ピーク情報を導出する導出部と、前記解析用波形取得部によって取得された波形データから、前記第1期間より長い期間である第2期間の波形データを第2解析用区分波形データとして切り出す第2解析用波形切出部と、前記第2解析用波形切出部によって切り出された第2解析用区分波形データを前記区間推定モデルに入力することで前記区間種類情報を導出する第2導出部と、前記導出部によって導出されたピーク情報及び前記第2導出部によって導出された区間種類情報を合成することで、前記解析対象とする心電図が示す状況を推定する推定部と、を備えた心電図解析支援装置である。
【0013】
本開示の第2態様は、第1態様の心電図解析支援装置において、前記予め定められた種類の区間は、通常の区間である通常区間、心房細動の区間である心房細動区間、及び解析の対象外とする区間である非解析区間のうちの少なくとも2つの区間を含むものである。
【0014】
本開示の第3態様は、第1態様又は第2態様の心電図解析支援装置において、学習対象とする心電図における波形データを取得する学習用波形取得部と、前記学習用波形取得部によって取得された波形データから前記第1期間の波形データを学習用区分波形データとして切り出す学習用波形切出部と、を更に備え、前記ピーク推定モデルは、前記学習用波形切出部によって切り出された学習用区分波形データを入力情報とし、当該学習用区分波形データに対応する前記ピーク情報を出力情報として機械学習されたものである。
【0015】
本開示の第4態様は、第1態様~第3態様の何れか1の態様の心電図解析支援装置において、前記予め定められた種類は、正常又は心房性期外収縮を示す第1種類、心房細動を示す第2種類、及び心室性期外収縮を示す第3種類のうちの少なくとも1種類を含む。
【0018】
本開示の第5態様は、心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに前記心電図の解析に関する予め定められた種類のピークが存在するか否かを示すピーク情報が出力情報とされたピーク推定モデル、及び心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに対応する区間が、予め定められた種類の区間のうちの何れの区間であるかを示す区間種類情報が出力情報とされた区間推定モデルを用いたプログラムであって、解析対象とする心電図における波形データを取得し、取得した波形データから、予め定められた第1期間の波形データを、当該第1期間より短い期間として予め定められた移動期間ずつ移動させながら解析用区分波形データとして切り出し、切り出した解析用区分波形データを前記ピーク推定モデルに入力することで前記ピーク情報を導出し、取得した波形データから、前記第1期間より長い期間である第2期間の波形データを第2解析用区分波形データとして切り出し、切り出した第2解析用区分波形データを前記区間推定モデルに入力することで前記区間種類情報を導出し、導出したピーク情報及び導出した区間種類情報を合成することで、前記解析対象とする心電図が示す状況を推定する、処理をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0019】
本開示の第6態様は、心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに前記心電図の解析に関する予め定められた種類のピークが存在するか否かを示すピーク情報が出力情報とされたピーク推定モデル、及び心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに対応する区間が、予め定められた種類の区間のうちの何れの区間であるかを示す区間種類情報が出力情報とされた区間推定モデルを用いた心電図解析支援方法であって、解析対象とする心電図における波形データを取得し、取得した波形データから、予め定められた第1期間の波形データを、当該第1期間より短い期間として予め定められた移動期間ずつ移動させながら解析用区分波形データとして切り出し、切り出した解析用区分波形データを前記ピーク推定モデルに入力することで前記ピーク情報を導出し、取得した波形データから、前記第1期間より長い期間である第2期間の波形データを第2解析用区分波形データとして切り出し、切り出した第2解析用区分波形データを前記区間推定モデルに入力することで前記区間種類情報を導出し、導出したピーク情報及び導出した区間種類情報を合成することで、前記解析対象とする心電図が示す状況を推定する、心電図解析支援方法である。
本開示の第7態様は、請求項1~請求項4の何れか1項に記載の心電図解析支援装置と、前記心電図解析支援装置に対して解析対象とする心電図における波形データを転送し、当該波形データの転送に応じて前記心電図解析支援装置によって得られた情報を受信して提示する端末装置と、を含む心電図解析支援システムである。
【発明の効果】
【0020】
本開示によれば、特定の種類の不整脈が生じているか否かの判断に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】一実施形態に係る心電図解析支援装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】一実施形態に係るピーク推定モデル及び区間推定モデルのデータの流れの一例を示す模式図である。
【
図3】一実施形態に係る心電図解析支援装置のピーク推定モデル及び区間推定モデルの学習時における機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図4】一実施形態に係る心電図解析支援装置のピーク推定モデル及び区間推定モデルの運用時における機能的な構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】一実施形態に係る混合ガウスモデルを用いたクラスタリングの説明に供するグラフである。
【
図6】一実施形態に係るピーク推定モデルの中間層の利用状態の一例を示す模式図である。
【
図7】一実施形態に係る第1学習用波形データデータベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図8】一実施形態に係る第2学習用波形データデータベースの構成の一例を示す模式図である。
【
図9】一実施形態に係る学習処理の一例を示すフローチャートである。
【
図10】一実施形態に係る心電図解析支援処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】一実施形態に係る心電図解析支援処理の説明に供する図であり、第1解析用区分波形データの切り出し状態の一例を示す波形図である。
【
図12】一実施形態に係る心電図解析支援処理の説明に供する図であり、第2解析用区分波形データの切り出し状態の一例を示す波形図である。
【
図13】一実施形態に係る心電図解析支援処理の説明に供する図であり、ピーク推定モデルからの出力の縮約状況の一例を示す模式図である。
【
図14】一実施形態に係る心電図解析支援処理の説明に供する図であり、区間推定モデルからの出力の一例を示す模式図である。
【
図15】一実施形態に係る心電図解析支援処理の説明に供する図であり、ピーク推定モデルの出力と区間推定モデルの出力との合成状態の一例を示す模式図である。
【
図16】一実施形態に係る心電図解析支援処理の説明に供する図であり、ピーク推定モデルの出力と区間推定モデルの出力との合成結果の修正状態の一例を示す模式図である。
【
図17】一実施形態に係る心電図解析支援処理の実行時において表示される結果画面の構成の一例を示す正面図である。
【
図18】一実施形態に係る心電図解析支援処理の説明に供する図であり、分類結果情報により示される各種タイプの心電図波形の一例を示す波形図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本開示の実施形態の一例を詳細に説明する。なお、各図面において同一または等価な構成要素および部分には同一の参照符号を付与している。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0023】
本実施形態では、本開示の技術における心電図解析支援装置を据え置き型のパーソナルコンピュータ等の情報処理装置に適用した場合について説明する。但し、本開示の技術の適用対象は据え置き型の情報処理装置に限るものではなく、スマートフォン、携帯型のゲーム装置、タブレット端末、ノートブック型パーソナルコンピュータ等の他の携帯型の情報処理装置にも適用することができる。
【0024】
まず、
図1~
図6を参照して、本実施形態に係る心電図解析支援装置の構成を説明する。
図1は、一実施形態に係る心電図解析支援装置のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。また、
図2は、一実施形態に係るピーク推定モデル及び区間推定モデルのデータの流れの一例を示す模式図である。また、
図3は、一実施形態に係る心電図解析支援装置のピーク推定モデル及び区間推定モデルの学習時における機能的な構成の一例を示すブロック図である。また、
図4は、一実施形態に係る心電図解析支援装置のピーク推定モデル及び区間推定モデルの運用時における機能的な構成の一例を示すブロック図である。また、
図5は、一実施形態に係る混合ガウスモデルを用いたクラスタリングの説明に供するグラフである。更に、
図6は、一実施形態に係るピーク推定モデルの中間層の利用状態の一例を示す模式図である。
【0025】
図1に示すように、本実施形態に係る心電図解析支援装置10は、CPU(Central Processing Unit)11、一時記憶領域としてのメモリ12、不揮発性の記憶部13、及びキーボードとマウス等の入力部14を備えている。また、本実施形態に係る心電図解析支援装置10は、液晶ディスプレイ等の表示部15、及び媒体読み書き装置(R/W)16を備えている。更に、本実施形態に係る心電図解析支援装置10は、通信インタフェース(I/F)部18、及び音声出力部19を備えている。CPU11、メモリ12、記憶部13、入力部14、表示部15、媒体読み書き装置16、通信I/F部18、及び音声出力部19はバスBを介して互いに接続されている。媒体読み書き装置16は、記録媒体17に書き込まれている情報の読み出し及び記録媒体17への情報の書き込みを行う。
【0026】
一方、記憶部13はHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等によって実現される。記憶媒体としての記憶部13には、学習プログラム13A及び心電図解析支援プログラム13Bが記憶されている。学習プログラム13Aは、当該プログラム13Aが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの当該プログラム13Aの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶される。また、心電図解析支援プログラム13Bは、当該プログラム13Bが書き込まれた記録媒体17が媒体読み書き装置16にセットされ、媒体読み書き装置16が記録媒体17からの当該プログラム13Bの読み出しを行うことで、記憶部13へ記憶される。CPU11は、学習プログラム13A及び心電図解析支援プログラム13Bを記憶部13から読み出してメモリ12に展開し、学習プログラム13A及び心電図解析支援プログラム13Bが有するプロセスを順次実行する。
【0027】
このように、本実施形態に係る心電図解析支援装置10では、学習プログラム13A及び心電図解析支援プログラム13Bを、記録媒体17を介して心電図解析支援装置10にインストールしているが、これに限るものではない。例えば、通信I/F部18を介してダウンロードすることにより、学習プログラム13A及び心電図解析支援プログラム13Bを心電図解析支援装置10にインストールする形態としてもよい。
【0028】
また、記憶部13には、ピーク推定モデル13C及び区間推定モデル13Dが記憶される。
【0029】
本実施形態に係るピーク推定モデル13Cは、心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに心電図の解析に関する予め定められた種類のピークが存在するか否かを示すピーク情報が出力情報とされている。
【0030】
なお、本実施形態では、上記予め定められた種類として、正常又は心房性期外収縮を示す第1種類、心房細動を示す第2種類、及び心室性期外収縮を示す第3種類の全てを含むものとしているが、これに限るものではない。例えば、これらの3種類のうちの1種類又は2種類の組み合わせを上記予め定められた種類として含むものとしてもよいし、上記3種類に他の不整脈の種類を加えて、上記予め定められた種類として含むものとしてもよい。以下では、上記第1種類を「N or S」又は「N」とも表現し、上記第2種類を「small_n」又は「n」とも表現し、上記第3種類を「PVC」又は「V」とも表現する。また、以下では、上記予め定められた種類のピークが存在しない場合の種類を「FALSE」とも表現する。
【0031】
また、本実施形態では、上記ピーク情報として、上記波形データに心電図の解析に関する予め定められた種類のピークが存在するか否かを示す情報のみならず、当該ピークが存在する場合における、上記予め定められた種類を示す情報も含むものとしている。従って、本実施形態に係るピーク推定モデル13Cは、上述した「FALSE」に加えて、「FALSE」でない場合、即ち当該ピークが存在する場合における「N or S」等の不整脈の種類を示す情報もピーク情報として出力するものとされている。
【0032】
一方、本実施形態に係る区間推定モデル13Dは、心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに対応する区間が、予め定められた種類の区間のうちの何れの区間であるかを示す区間種類情報が出力情報とされている。
【0033】
なお、本実施形態では、上記予め定められた種類の区間として、通常の区間である通常区間、心房細動の区間である心房細動区間、及び解析の対象外とする区間である非解析区間の全ての区間を含むものとしているが、これに限るものではない。例えば、これらの3種類のうちの2種類の組み合わせを上記予め定められた種類の区間として含むものとしてもよいし、上記3種類に他の区間を加えて、上記予め定められた種類の区間として含むものとしてもよい。
【0034】
本実施形態では、ピーク推定モデル13C及び区間推定モデル13Dとして、CNN(Convolutional Neural Network、畳み込みニューラルネットワーク)によるものを適用しているが、これに限るものではない。例えば、RNN(Recurrent Neural Network、再帰型ニューラルネットワーク)によるものをピーク推定モデル13C及び区間推定モデル13Dの少なくとも一方として適用する形態としてもよい。
【0035】
一例として
図2に示すように、本実施形態では、ピーク推定モデル13C及び区間推定モデル13Dとして、畳み込み層及びプーリング層を含んで構成されたCNN層が4層で、Dense層が2層とされた1次元CNNを適用している。
【0036】
また、記憶部13には、第1学習用波形データデータベース13E及び第2学習用波形データデータベース13Fが記憶される。第1学習用波形データデータベース13E及び第2学習用波形データデータベース13Fについては、詳細を後述する。
【0037】
次に、
図3を参照して、本実施形態に係る心電図解析支援装置10のピーク推定モデル13C及び区間推定モデル13Dの学習時における機能的な構成について説明する。
【0038】
図3に示すように、ピーク推定モデル13C及び区間推定モデル13Dの学習時における心電図解析支援装置10は、学習用波形取得部11A及び学習用波形切出部11Bを含む。心電図解析支援装置10のCPU11が学習プログラム13Aを実行することで、学習用波形取得部11A及び学習用波形切出部11Bとして機能する。
【0039】
本実施形態に係る学習用波形取得部11Aは、ピーク推定モデル13C及び区間推定モデル13Dの各モデルに対する学習対象とする心電図における波形データ(以下、「学習用波形データ」という。)を取得する。
【0040】
なお、本実施形態では、ピーク推定モデル13Cに対する学習用波形データ(以下、「第1学習用波形データ」という。)を、後述する第1学習用波形データデータベース13Eから読み出すことにより取得する。また、本実施形態では、区間推定モデル13Dに対する学習用波形データ(以下、「第2学習用波形データ」という。)を、後述する第2学習用波形データデータベース13Fから読み出すことにより取得する。但し、この形態に限るものではなく、心電計によって得られた波形データを学習用波形データとして、通信I/F部18等を介して直接取得する形態としてもよい。
【0041】
また、本実施形態に係る学習用波形切出部11Bは、学習用波形取得部11Aによって取得された第1学習用波形データから予め定められた第1期間(以下、単に「第1期間」という。)の波形データを学習用区分波形データ(以下、「第1学習用区分波形データ」という。)として切り出す。
【0042】
なお、本実施形態に係る学習用波形切出部11Bでは、第1学習用区分波形データの切り出しを、第1学習用波形データにおける時間軸の中心を中心として第1期間の波形データを切り出すことにより行っているが、これに限るものではない。例えば、第1学習用波形データにおける時間軸の先端を先端として第1期間の波形データを切り出すことにより行う形態としてもよいし、第1学習用波形データにおける時間軸の後端を後端として第1期間の波形データを切り出すことにより行う形態としてもよい。
【0043】
また、本実施形態では、第1期間として2秒を適用しているが、これに限るものではない。例えば、1.8秒、2.5秒等といった2秒以外の期間を第1期間として適用する形態としてもよい。ここで、第1期間として2秒を適用しているのは、心電図の一般的なピークの間隔が約1秒であるためであり、2秒前後であれば、ピーク、及び当該ピークの前後の情報を適切に得ることができる。
【0044】
また、本実施形態に係る学習用波形切出部11Bは、学習用波形取得部11Aによって取得された第2学習用波形データから、第1期間より長い期間である第2期間(以下、単に「第2期間」という。)の波形データを学習用区分波形データ(以下、「第2学習用区分波形データ」という。)として切り出す。
【0045】
なお、本実施形態に係る学習用波形切出部11Bでは、第2学習用区分波形データの切り出しを、第2学習用波形データにおける時間軸の中心を中心として第2期間の波形データを切り出すことにより行っているが、これに限るものではない。例えば、第2学習用波形データにおける時間軸の先端を先端として第2期間の波形データを切り出すことにより行う形態としてもよいし、第2学習用波形データにおける時間軸の後端を後端として第2期間の波形データを切り出すことにより行う形態としてもよい。
【0046】
また、本実施形態では、第2期間として5秒を適用しているが、これに限るものではない。例えば、4.8秒、5.5秒等といった5秒以外の期間を第2期間として適用する形態としてもよい。ここで、第2期間として5秒を適用しているのは、本発明の発明者らの試行錯誤の結果、第2期間が5秒前後であれば、心房細動区間及び非解析区間を判定するのに十分な情報が得られ、かつ、心房細動区間及び非解析区間が混在することも抑制することができるとの結果が得られたためである。
【0047】
そして、本実施形態に係るピーク推定モデル13Cは、学習用波形切出部11Bによって切り出された第1学習用区分波形データを入力情報とし、当該第1学習用区分波形データに対応する上記ピーク情報を出力情報として機械学習される。また、本実施形態に係る区間推定モデル13Dは、学習用波形切出部11Bによって切り出された第2学習用区分波形データを入力情報とし、当該第2学習用区分波形データに対応する上記区間種類情報を出力情報として機械学習される。
【0048】
次に、
図4を参照して、本実施形態に係る心電図解析支援装置10のピーク推定モデル13C及び区間推定モデル13Dの運用時における機能的な構成について説明する。
【0049】
図4に示すように、ピーク推定モデル13C及び区間推定モデル13Dの運用時における心電図解析支援装置10は、解析用波形取得部11C、解析用波形切出部11D、導出部11E、第2解析用波形切出部11F、第2導出部11G、推定部11H、中間情報取得部11I、及び分類部11Jを含む。心電図解析支援装置10のCPU11が心電図解析支援プログラム13Bを実行することで、解析用波形取得部11C、解析用波形切出部11D、導出部11E、第2解析用波形切出部11F、第2導出部11G、推定部11H、中間情報取得部11I、及び分類部11Jとして機能する。
【0050】
本実施形態に係る解析用波形取得部11Cは、解析対象とする心電図における波形データ(以下、「解析用波形データ」という。)を取得する。なお、本実施形態では、解析用波形データを心電計から通信I/F部18等を介して直接取得する形態としている。但し、この形態に限るものではなく、解析対象とする心電図の波形データをデータベース化しておき、当該データベースから読み出すことで、解析用波形データを取得する形態としてもよい。
【0051】
また、本実施形態に係る解析用波形切出部11Dは、解析用波形取得部11Cによって取得された解析用波形データから、第1期間の波形データを、当該第1期間より短い期間として予め定められた移動期間(以下、単に「移動期間」という。)ずつ移動させながら第1解析用区分波形データとして切り出す。
【0052】
なお、本実施形態では、移動期間として0.1秒を適用しているが、これに限るものではない。例えば、0.05秒、0.2秒等の第1期間より短い他の期間を移動期間として適用する形態としてもよい。ここで、移動期間として0.1秒を適用しているのは、本発明の発明者らの試行錯誤の結果、移動期間が0.1秒前後であれば、心電図のピークの未検出が防止でき、かつ、演算時間の長時間化を防止できるとの結果が得られたためである。
【0053】
そして、本実施形態に係る導出部11Eは、解析用波形切出部11Dによって切り出された第1解析用区分波形データをピーク推定モデル13Cに入力することで、ピーク推定モデル13Cに上記ピーク情報を導出させる。
【0054】
一方、本実施形態に係る第2解析用波形切出部11Fは、解析用波形取得部11Cによって取得された解析用波形データから、第2期間の波形データを第2解析用区分波形データとして切り出す。また、本実施形態に係る第2導出部11Gは、第2解析用波形切出部11Fによって切り出された第2解析用区分波形データを区間推定モデル13Dに入力することで、区間推定モデル13Dに上記区間種類情報を導出させる。
【0055】
そして、本実施形態に係る推定部11Hは、導出部11Eによる第1解析用区分波形データの入力によってピーク推定モデル13Cにより導出されたピーク情報、及び第2導出部11Gによる第2解析用区分波形データの入力によって区間推定モデル13Dにより導出された区間種類情報を合成することで、解析対象とする心電図が示す状況を推定する。
【0056】
一方、本実施形態に係る中間情報取得部11Iは、解析用波形切出部11Dによって切り出された第1解析用区分波形データがピーク推定モデル13Cに入力されることで当該ピーク推定モデル13Cの中間層で生成される、当該第1解析用区分波形データに含まれるピークの形状の特徴を示す中間情報(以下、単に「中間情報」という。)を取得する。
【0057】
そして、本実施形態に係る分類部11Jは、中間情報取得部11Iによって取得された中間情報を用いて、解析対象とする心電図の波形のタイプを分類分けする。
【0058】
なお、本実施形態では、上記波形のタイプとして、標準的なタイプ、当該標準的なタイプよりT波が大きなタイプ、上記標準的なタイプよりQRS波の幅が広いタイプ、及びその他のタイプの全てのタイプを含むものとしているが、これに限るものではない。例えば、これらの4種類のタイプのうちの2種類又は3種類の組み合わせを上記波形のタイプとして含むものとしてもよいし、上記4種類に他のタイプを加えて、上記波形のタイプとして含むものとしてもよい。
【0059】
また、本実施形態に係る分類部11Jでは、中間情報をクラスタリングすることで上記分類分けを行う形態とされている。
【0060】
なお、本実施形態では、上記クラスタリングとして、一例として
図5に示すように、混合ガウスモデル(Gaussian Mixture Model, GMM)を用いたクラスタリングを適用している。混合ガウスモデルによるクラスタリングは、複数のガウス分布を足し合わせることで任意の連続関数を近似する手法であり、ガウス分布の数が分類数となる。但し、上記クラスタリングは混合ガウスモデルによるクラスタリングに限るものではなく、例えば、スペクトラル・クラスタリング(Spectral Clustering)等の他のクラスタリングの手法を用いて上記分類分けを行う形態としてもよい。
【0061】
一例として
図6に示すように、本実施形態に係る心電図解析支援装置10では、ピーク推定モデル13Cにおける1層目のDense層によって生成されたデータを中間情報として適用し、当該データをクラスタリングの対象として用いる。
【0062】
次に、
図7を参照して、本実施形態に係る第1学習用波形データデータベース13Eについて説明する。
図7は、一実施形態に係る第1学習用波形データデータベース13Eの構成の一例を示す模式図である。
【0063】
本実施形態に係る第1学習用波形データデータベース13Eは、上述したように、ピーク推定モデル13Cの学習に用いる第1学習用波形データに関する情報を記憶するためのものである。
【0064】
図7に示すように、本実施形態に係る第1学習用波形データデータベース13Eは、波形ID(Identification)、波形データ、及びピーク情報の各情報が記憶される。
【0065】
上記波形IDは、対応する波形データを識別するために、波形データの各々毎に異なるものとして予め付与された情報である。また、上記波形データは、第1学習用波形データそのものを示す情報であり、上記ピーク情報は、対応する波形データが入力された場合にピーク推定モデル13Cから出力されるべき正しいピーク情報(正解情報)を示す情報である。
【0066】
次に、
図8を参照して、本実施形態に係る第2学習用波形データデータベース13Fについて説明する。
図8は、一実施形態に係る第2学習用波形データデータベース13Fの構成の一例を示す模式図である。
【0067】
本実施形態に係る第2学習用波形データデータベース13Fは、上述したように、区間推定モデル13Dの学習に用いる第2学習用波形データに関する情報を記憶するためのものである。
【0068】
図8に示すように、本実施形態に係る第2学習用波形データデータベース13Fは、波形ID、波形データ、及び区間種類情報の各情報が記憶される。
【0069】
上記波形IDは、対応する波形データを識別するために、波形データの各々毎に異なるものとして予め付与された情報である。また、上記波形データは、第2学習用波形データそのものを示す情報であり、上記区間種類情報は、対応する波形データが入力された場合に区間推定モデル13Dから出力されるべき正しい区間種類情報(正解情報)を示す情報である。
【0070】
次に、
図9~
図18を参照して、本実施形態に係る心電図解析支援装置10の作用を説明する。まず、
図9を参照して、ピーク推定モデル13C及び区間推定モデル13Dを学習させる場合における心電図解析支援装置10の作用を説明する。
図9は、一実施形態に係る学習処理の一例を示すフローチャートである。
【0071】
心電図解析支援装置10のCPU11が学習プログラム13Aを実行することによって、
図9に示す学習処理が実行される。
図9に示す学習処理は、ユーザにより、学習プログラム13Aの実行を開始する指示入力が入力部14を介して行われた場合に実行される。なお、錯綜を回避するために、以下では、第1学習用波形データデータベース13E及び第2学習用波形データデータベース13Fが既に構築済みである場合について説明する。
【0072】
図9のステップ100で、CPU11は、第1学習用波形データデータベース13Eから一組の波形データ(第1学習用波形データ)及びピーク情報を読み出す。ステップ102で、CPU11は、読み出した第1学習用波形データから第1学習用区分波形データを上述したように切り出す。
【0073】
ステップ104で、CPU11は、切り出した第1学習用区分波形データを入力情報とし、読み出したピーク情報を出力情報(正解情報)として、ピーク推定モデル13Cを機械学習する。ステップ106で、CPU11は、第1学習用波形データデータベース13Eに記憶されている全ての波形データについてステップ104による機械学習が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ100に戻る一方、肯定判定となった場合はステップ108に移行する。なお、ステップ100~ステップ106の処理を繰り返し実行する場合にCPU11は、それまでに処理対象としなかった第1学習用波形データを処理対象とするようにする。
【0074】
ステップ108で、CPU11は、第2学習用波形データデータベース13Fから一組の波形データ(第2学習用波形データ)及び区間種類情報を読み出す。ステップ110で、CPU11は、読み出した第2学習用波形データから第2学習用区分波形データを上述したように切り出す。
【0075】
ステップ112で、CPU11は、切り出した第2学習用区分波形データを入力情報とし、読み出した区間種類情報を出力情報(正解情報)として、区間推定モデル13Dを機械学習する。ステップ114で、CPU11は、第2学習用波形データデータベース13Fに記憶されている全ての波形データについてステップ112による機械学習が終了したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ108に戻る一方、肯定判定となった場合は本学習処理を終了する。なお、ステップ108~ステップ114の処理を繰り返し実行する場合にCPU11は、それまでに処理対象としなかった第2学習用波形データを処理対象とするようにする。
【0076】
以上の学習処理により、ピーク推定モデル13C及び区間推定モデル13Dが学習されることになる。なお、以上の学習処理によって得られるピーク推定モデル13C及び区間推定モデル13Dの推定精度が十分でない場合等には、同様の学習処理を繰り返し実行する形態としてもよい。
【0077】
次に、
図10~
図18を参照して、ピーク推定モデル13C及び区間推定モデル13Dを運用する場合における心電図解析支援装置10の作用を説明する。
図10は、一実施形態に係る心電図解析支援処理の一例を示すフローチャートである。また、
図11は、一実施形態に係る心電図解析支援処理の説明に供する図であり、第1解析用区分波形データの切り出し状態の一例を示す波形図である。更に、
図12は、一実施形態に係る心電図解析支援処理の説明に供する図であり、第2解析用区分波形データの切り出し状態の一例を示す波形図である。
【0078】
心電図解析支援装置10のCPU11が心電図解析支援プログラム13Bを実行することによって、
図10に示す心電図解析支援処理が実行される。
図10に示す心電図解析支援処理は、ユーザにより、心電図解析支援プログラム13Bの実行を開始する指示入力が入力部14を介して行われた場合に実行される。なお、錯綜を回避するために、以下では、ピーク推定モデル13C及び区間推定モデル13Dの学習が終了している場合について説明する。また、以下では、心電図の解析対象とする人に装着された図示しない心電計が心電図解析支援装置10の通信I/F部18に接続されており、当該心電計からの心電図の波形データが心電図解析支援装置10によって受信可能な状態となっている場合について説明する。
【0079】
図10のステップ200で、CPU11は、上記心電図から受信している波形データ(上述した解析用波形データに相当し、以下、「解析用波形データ」という。)の記憶部13への記憶を開始する。ステップ202で、CPU11は、ピーク推定モデル13Cによる推定を行うタイミングとして予め定められたタイミング(以下、「第1タイミング」という。)が到来したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ212に移行する。また、CPU11は、ステップ202で肯定判定となった場合はステップ204に移行する。なお、本実施形態では、上記第1タイミングとして、予め定められた基準時間(本実施形態では、本心電図解析支援処理の実行が開始された時刻)を起点として第1期間が終了し、かつ、移動期間が終了したタイミングを適用している。
【0080】
ステップ204で、CPU11は、記憶部13から第1期間分の解析用波形データを読み出すことにより、第1解析用区分波形データを切り出す。ステップ206で、CPU11は、切り出した第1解析用区分波形データをピーク推定モデル13Cに入力し、ステップ208で、CPU11は、当該第1解析用区分波形データの入力に応じてピーク推定モデル13Cから出力されるピーク情報を取得する。ステップ210で、CPU11は、取得したピーク情報を記憶部13に記憶する。
【0081】
以上のステップ202~ステップ210の処理が繰り返し実行されることで、一例として
図11に示すように、第1期間(本実施形態では、2秒)の幅とされた第1解析用区分波形データが、移動期間(本実施形態では、0.1秒)の刻み幅で、ピーク推定モデル13Cに入力され、これに応じてピーク推定モデル13Cから出力されたピーク情報が記憶部13に記憶されることになる。
【0082】
ステップ212で、CPU11は、区間推定モデル13Dによる推定を行うタイミングとして予め定められたタイミング(以下、「第2タイミング」という。)が到来したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ222に移行する。また、CPU11は、ステップ212で肯定判定となった場合はステップ214に移行する。なお、本実施形態では、上記第2タイミングとして、上記基準時間を起点として第2期間が終了したタイミングを適用している。
【0083】
ステップ214で、CPU11は、記憶部13から第2期間分の解析用波形データを読み出すことにより、第2解析用区分波形データを切り出す。ステップ216で、CPU11は、切り出した第2解析用区分波形データを区間推定モデル13Dに入力し、ステップ218で、CPU11は、当該第2解析用区分波形データの入力に応じて区間推定モデル13Dから出力される区間種類情報を取得する。ステップ220で、CPU11は、取得した区間種類情報を記憶部13に記憶する。
【0084】
以上のステップ212~ステップ220の処理が繰り返し実行されることで、一例として
図12に示すように、第2期間(本実施形態では、5秒)の幅とされた第2解析用区分波形データが区間推定モデル13Dに入力され、これに応じて区間推定モデル13Dから出力された区間種類情報が記憶部13に記憶されることになる。
【0085】
ステップ222で、CPU11は、分類部11Jによるクラスタリングの対象とする中間情報を取得するタイミングとして予め定められたタイミング(以下、「第3タイミング」という。)が到来したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ232に移行する。また、CPU11は、ステップ222で肯定判定となった場合はステップ224に移行する。なお、本実施形態では、上記第3タイミングとして、ステップ210の処理によって記憶したピーク情報が「FALSE」以外であったタイミング、即ち、解析用波形データにおいて何らかのピークが検出されたタイミングを適用している。
【0086】
ステップ224で、CPU11は、記憶部13から第1期間分の解析用波形データを読み出すことにより、解析用区分波形データを切り出す。ステップ226で、CPU11は、切り出した解析用区分波形データをピーク推定モデル13Cに入力し、ステップ228で、CPU11は、当該解析用区分波形データの入力に応じてピーク推定モデル13Cの中間層(本実施形態では、1層目のDense層)で生成される中間情報を取得する。ステップ230で、CPU11は、取得した中間情報を記憶部13に記憶する。
【0087】
ステップ232で、CPU11は、予め定められた計測を終了するタイミング(以下、「終了タイミング」という。)が到来したか否かを判定し、否定判定となった場合はステップ202に戻る一方、肯定判定となった場合はステップ234に移行する。なお、本実施形態では、上記終了タイミングとして、上記基準時間からの解析用波形データにおけるピークの発生数が予め定められた閾値(本実施形態では、60)に達したタイミングを適用しているが、これに限るものではない。例えば、上記基準時間から予め定められた時間(本実施形態では、60秒)が経過したタイミングを上記終了タイミングとして適用する形態としてもよい。
【0088】
ステップ234で、CPU11は、ステップ200の処理によって開始した解析用波形データの記憶部13への記憶を停止する。ステップ236で、CPU11は、以上の処理によって記憶されたピーク情報、区間種類情報、及び中間情報を全て記憶部13から読み出す。
【0089】
ステップ238で、CPU11は、読み出したピーク情報及び区間種類情報を用いて、解析対象とする心電図が示す状況を推定する。以下、
図13~
図16を参照して、当該推定について説明する。なお、
図13は、一実施形態に係る心電図解析支援処理の説明に供する図であり、ピーク推定モデルからの出力の縮約状況の一例を示す模式図である。また、
図14は、一実施形態に係る心電図解析支援処理の説明に供する図であり、区間推定モデルからの出力の一例を示す模式図である。また、
図15は、一実施形態に係る心電図解析支援処理の説明に供する図であり、ピーク推定モデルの出力と区間推定モデルの出力との合成状態の一例を示す模式図である。更に、
図16は、一実施形態に係る心電図解析支援処理の説明に供する図であり、ピーク推定モデルの出力と区間推定モデルの出力との合成結果の修正状態の一例を示す模式図である。
【0090】
また、
図13~
図16における各2列構成の図の上段が経過時間を表し、下段が対応するモデルからの出力情報を表す。また、
図13~
図16におけるピーク推定モデル13Cから出力されたピーク情報では、「FALSE」を「F」と表し、「N or S」を「N」と表し、「PVC」を「V」と表し、「small_n」を「n」と表す。更に、
図14~
図16における区間推定モデル13Dから出力された区間種類情報では、通常区間を「N」と表し、心房細動区間を「n」と表し、非解析区間を「N/A」(No Analyze)と表す。
【0091】
まず、CPU11は、読み出したピーク情報を、予め定められたルールに従ってピークの位置及びピークの種類を示す情報のみに縮約する。なお、本実施形態では、上記ルールとして、次のルールを適用する。
【0092】
(ルール1)ピークの位置:単独のピークについては当該ピークの位置を適用し、複数回連続するピークについては当該ピーク群の中心位置を適用する。
【0093】
(ルール2)ピークの種類:単独のピークについては当該ピークの種類を適用し、複数回連続するピークについては当該ピーク群の種類の最も多い種類を適用する。この場合、最も多い種類が複数存在する場合があるが、この場合は、「PVC」→「N or S」→「small_n」の優先順位で決定する。
【0094】
なお、上記優先順位としたのは、以下に示す理由からである。
【0095】
即ち、心室性期外収縮V(PVC)は、見逃しを可能な限り少なくする必要がある。このため、心室性期外収縮Vの可能性があれば当該心室性期外収縮Vと判定すべき、との考えに基づいて、心室性期外収縮Vの優先度を最も高く設定している。
【0096】
一方、心房細動n(small_n)かどうかは、最終的には区間推定モデル13Dの結果に基づいて判定し、ピーク推定モデル13Cの心房細動nの判定は補完的なものでしかない。このため、心房細動nの優先度を最も低く設定している。
【0097】
この処理により、読み出したピーク情報が
図13の上図である場合の縮約結果は
図13の下図に示すものとなる。
【0098】
次いで、CPU11は、縮約されたピーク情報と、読み出した区間種類情報とを合成する。この際、CPU11は、以下に示すようにピーク情報と区間種類情報との合成を行う。
【0099】
第1に、CPU11は、区間推定モデル13Dで通常区間Nと判定された区間内にある「small_n」のピークは「N or S」に修正する。
【0100】
第2に、CPU11は、区間推定モデル13Dで心房細動区間nと判定された区間内にある「N or S」のピークは「small_n」に修正する。
【0101】
第3に、CPU11は、区間推定モデル13Dで非解析区間N/Aと判定された区間内にあるピークはノイズを誤検出したものと見なして、すべてピークから除外する。(但し、内部的には保持する。)
【0102】
ピーク推定モデル13Cから出力されて上記縮約が行われた情報が
図13に示すものであり、区間推定モデル13Dから出力された区間種類情報が
図14に示すものである場合における上記合成が行われた結果は
図15に示すものとなる。
【0103】
この場合、3.45秒及び6.9秒のピークが「small_n」から「N or S」に修正されている。また、13.6秒及び14.45秒のピークが「N or S」から「small_n」に修正されている。更に、15.25秒以降のピークがピークから除外されている。
【0104】
一例として
図15の下図に示す合成後のデータが推定部11Hによって得られる、解析対象とする心電図が示す状況を示すデータであり、当該データを以下では「心電図状況情報」という。
【0105】
最後に、CPU11は、既存のルールベース型の解析と同様の短縮率ルールを用いて、ピーク推定モデル13Cから出力された「N or S」を正常Nと心房性期外収縮APCに振り分ける判定を行い、心電図状況情報を修正する。以下、本実施形態に係る短縮率ルールについて説明する。
【0106】
即ち、正常Nと心房性期外収縮APCは波形自体に大きな差はないが、正常Nのピークが規則的に出現するのに対し、心房性期外収縮APCのピークは通常より早いタイミングで出現する。このため、ルールベース型のアルゴリズムでは、直前のピークとの間隔が通常より短ければ心房性期外収縮APCと判定する。具体的には、直前のピークとの間隔が移動平均の0.8倍以下なら、心房性期外収縮APCと判定する。この0.8倍という閾値のことを「短縮率」と呼ぶ。
【0107】
この修正により、一例として
図16に示すように、最終的な心電図状況情報が得られる。
【0108】
ステップ240で、CPU11は、読み出した中間情報に対して、上述したようにクラスタリング(本実施形態では、GMMを用いたクラスタリング)を行うことで、解析対象とする心電図のタイプを分類分けした結果を示す分類結果情報を導出する。
【0109】
ステップ242で、CPU11は、以上の処理によって導出された心電図状況情報及び分類結果情報を用いて、予め定められた構成とされた結果画面を表示するように表示部15を制御し、ステップ244で、CPU11は、所定情報が入力されるまで待機する。
【0110】
図17には、本実施形態に係る結果画面の一例が示されている。
図17に示すように、本実施形態に係る結果画面では、解析対象とする心電図の各ピークの種別、各ピークの位置、及び分類結果を示す情報が表示される。従って、ユーザは、結果画面を参照することにより、これらの各情報を把握することができる。なお、
図18には、分類結果情報により示される各種タイプの心電図波形の一例を示す波形図が示されている。
図18における(A)が標準的なタイプに属する波形の一例であり、(B)が標準的なタイプよりT波が大きなタイプに属する波形の一例である。また、
図18における(C)が標準的なタイプよりQRS波の幅が広いタイプに属する波形の一例であり、(D)がその他のタイプに属する波形の一例である。
【0111】
一例として
図17に示す結果画面が表示部15に表示されると、ユーザは、表示内容を把握した後、終了ボタン15Aを、入力部14を介して指定する。ユーザによって終了ボタン15Aが指定されると、ステップ244が肯定判定となって本心電図解析支援処理が終了する。
【0112】
以上説明したように、一実施形態によれば、心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに当該心電図の解析に関する予め定められた種類のピークが存在するか否かを示すピーク情報が出力情報とされたピーク推定モデル13Cと、解析対象とする心電図における波形データを取得する解析用波形取得部11Cと、解析用波形取得部11Cによって取得された波形データから、予め定められた第1期間の波形データを、当該第1期間より短い期間として予め定められた移動期間ずつ移動させながら解析用区分波形データとして切り出す解析用波形切出部11Dと、解析用波形切出部11Dによって切り出された解析用区分波形データをピーク推定モデル13Cに入力することでピーク情報を導出する導出部11Eと、を備えている。従って、ピーク推定モデル13Cによって得られたピーク情報を用いることで、特定の種類の不整脈が生じているか否かの判断に寄与することができる。
【0113】
また、一実施形態によれば、学習対象とする心電図における波形データを取得する学習用波形取得部11Aと、学習用波形取得部11Aによって取得された波形データから第1期間の波形データを学習用区分波形データとして切り出す学習用波形切出部11Bと、を更に備え、ピーク推定モデル13Cを、学習用波形切出部11Bによって切り出された学習用区分波形データを入力情報とし、当該学習用区分波形データに対応するピーク情報を出力情報として機械学習されたものとしている。従って、ピーク推定モデル13Cの運用時における波形データとは異なる期間で切り出された波形データを用いて機械学習する場合に比較して、より高精度な特定の種類の不整脈が生じているか否かの判断に寄与することができる。
【0114】
また、一実施形態によれば、上記予め定められた種類を、正常又は心房性期外収縮を示す第1種類、心房細動を示す第2種類、及び心室性期外収縮を示す第3種類のうちの少なくとも1種類を含むものとしている。従って、適用した種類の不整脈の発見に寄与することができる。
【0115】
また、一実施形態によれば、心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに対応する区間が、予め定められた種類の区間のうちの何れの区間であるかを示す区間種類情報が出力情報とされた区間推定モデル13Dと、解析用波形取得部11Cによって取得された波形データから、第1期間より長い期間である第2期間の波形データを第2解析用区分波形データとして切り出す第2解析用波形切出部11Fと、第2解析用波形切出部11Fによって切り出された第2解析用区分波形データを区間推定モデル13Dに入力することで区間種類情報を導出する第2導出部11Gと、導出部11Eによって導出されたピーク情報及び第2導出部11Gによって導出された区間種類情報を合成することで、解析対象とする心電図が示す状況を推定する推定部11Hと、を更に備えている。従って、区間推定モデル13Dを用いない場合に比較して、より高精度な特定の種類の不整脈が生じているか否かの判断に寄与することができる。
【0116】
また、一実施形態によれば、上記予め定められた種類の区間を、通常の区間である通常区間、心房細動の区間である心房細動区間、及び解析の対象外とする区間である非解析区間のうちの少なくとも2つの区間を含むものとしている。従って、適用した区間の特定に寄与することができる。
【0117】
また、一実施形態によれば、心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに当該心電図の解析に関する予め定められた種類のピークが存在するか否かを示すピーク情報が出力情報とされたピーク推定モデル13Cを用いた心電図解析支援装置であって、解析対象とする心電図における波形データを取得する解析用波形取得部11Cと、解析用波形取得部11Cによって取得された波形データから、予め定められた第1期間の波形データを解析用区分波形データとして切り出す解析用波形切出部11Dと、解析用波形切出部11Dによって切り出された解析用区分波形データをピーク推定モデル13Cに入力することで当該ピーク推定モデル13Cの中間層で生成される、当該解析用区分波形データに含まれるピークの形状の特徴を示す中間情報を取得する中間情報取得部11Iと、中間情報取得部11Iによって取得された中間情報を用いて、解析対象とする心電図の波形のタイプを分類分けする分類部11Jと、を備えている。従って、解析対象とする心電図の波形のタイプの特定に寄与することができる。
【0118】
また、一実施形態によれば、上記波形のタイプを、標準的なタイプ、当該標準的なタイプよりT波が大きなタイプ、標準的なタイプよりQRS波の幅が広いタイプ、及びその他のタイプのうちの少なくとも2つのタイプを含むものとしている。従って、適用したタイプの特定に寄与することができる。なお、上記標準的なタイプよりT波が大きなタイプは、高カリウム血症に対応するタイプであり、当該タイプを上記波形のタイプに含めることで、血清電解質異常である可能性があることを把握することができる。また、上記標準的なタイプよりQRS波の幅が広いタイプは、脚ブロックに対応するタイプであり、当該タイプを上記波形のタイプに含めることで、重い心筋疾患等である可能性があることを把握することができる。
【0119】
更に、一実施形態によれば、中間情報をクラスタリングすることで上記分類分けを行う。従って、中間情報をクラスタリングしない場合に比較して、より的確に解析対象とする心電図の波形のタイプの特定に寄与することができる。
【0120】
なお、上記実施形態では、心電図状況情報及び分類結果情報を表示部による表示により提示する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、音声出力部19による音声によって心電図状況情報及び分類結果情報を提示する形態としてもよいし、プリンタ等の画像形成装置による印刷によって心電図状況情報及び分類結果情報を提示する形態としてもよい。
【0121】
また、上記実施形態では、本発明の心電図解析支援装置を単体構成とされた装置により構成した場合について説明したが、これに限定されない。例えば、クラウドサーバ等のサーバ装置と端末装置との、複数の装置を用いたシステムによって本発明に係る心電図解析支援装置を構成する形態としてもよい。この場合、例えば、端末装置にてユーザの心電図を計測して当該計測により得られた波形データをサーバ装置に転送し、サーバ装置にて受信した波形データを解析対象として、一例として
図10に示した心電図解析支援処理を実行する。そして、これによって得られた心電図状況情報及び分類結果情報を端末装置に送信し、端末装置にて、これらの情報を提示する形態を例示することができる。
【0122】
また、上記実施形態において、例えば、学習用波形取得部11A、学習用波形切出部11B、解析用波形取得部11C、解析用波形切出部11D、導出部11E、第2解析用波形切出部11F、第2導出部11G、推定部11H、中間情報取得部11I、及び分類部11Jの各処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(processor)を用いることができる。上記各種のプロセッサには、前述したように、ソフトウェア(プログラム)を実行して処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0123】
処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種又は異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせや、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0124】
処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアント及びサーバ等のコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0125】
更に、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【符号の説明】
【0126】
10 心電図解析支援装置
11 CPU
11A 学習用波形取得部
11B 学習用波形切出部
11C 解析用波形取得部
11D 解析用波形切出部
11E 導出部
11F 第2解析用波形切出部
11G 第2導出部
11H 推定部
11I 中間情報取得部
11J 分類部
12 メモリ
13 記憶部
13A 学習プログラム
13B 心電図解析支援プログラム
13C ピーク推定モデル
13D 区間推定モデル
13E 第1学習用波形データデータベース
13F 第2学習用波形データデータベース
14 入力部
15 表示部
16 媒体読み書き装置
17 記録媒体
18 通信I/F部
19 音声出力部
【要約】
【課題】特定の種類の不整脈が生じているか否かの判断に寄与することができる心電図解析支援装置、プログラム、方法、システム、モデル生成方法を得る。
【解決手段】心電図解析支援装置10は、心電図における波形データの一部の区間の波形データが入力情報とされ、当該波形データに心電図の解析に関する予め定められた種類のピークが存在するか否かを示すピーク情報が出力情報とされたピーク推定モデル13Cと、解析対象とする心電図における波形データを取得する解析用波形取得部11Cと、解析用波形取得部11Cによって取得された波形データから、予め定められた第1期間の波形データを、当該第1期間より短い期間として予め定められた移動期間ずつ移動させながら解析用区分波形データとして切り出す解析用波形切出部11Dと、解析用波形切出部11Dによって切り出された解析用区分波形データをピーク推定モデル13Cに入力することでピーク情報を導出する導出部11Eと、を備える。
【選択図】
図4