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特許7032754金属蒸着箔付粘着テープおよびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】金属蒸着箔付粘着テープおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/21 20180101AFI20220302BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20220302BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20220302BHJP
   B32B 15/12 20060101ALI20220302BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20220302BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20220302BHJP
   C09J 7/29 20180101ALI20220302BHJP
【FI】
C09J7/21
C09J201/00
B32B15/08 E
B32B15/12
B32B27/00 M
C09J7/38
C09J7/29
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017211964
(22)【出願日】2017-11-01
(65)【公開番号】P2019085439
(43)【公開日】2019-06-06
【審査請求日】2020-10-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390010157
【氏名又は名称】中塚株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101638
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 峰太郎
(72)【発明者】
【氏名】中塚 裕士
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-023241(JP,A)
【文献】特開平11-240535(JP,A)
【文献】特開平02-182997(JP,A)
【文献】特開昭61-019899(JP,A)
【文献】実開平03-116928(JP,U)
【文献】特開2007-105941(JP,A)
【文献】特開2003-295769(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
浸処理が施された紙基材の表面側に設ける接着剤層に、金属蒸着箔を転写して着させ、紙基材の裏面側に粘着剤層を形成させた金属蒸着箔付粘着テープにおいて、
金属の蒸着基材への蒸着によって金属蒸着箔を形成する前に、蒸着基材の一表面側に形成され、形成後の表面に金属が蒸着され、転写時に金属蒸着箔とともに蒸着基材から分離して、金属蒸着箔の表面側にる透明保護層と、
透明保護層の表面側に、印刷インクとの密着性が良好な樹脂で形成される下地層と、
下地層の表面への印刷で形成される印刷インク層と、
を含むことを特徴とする金属蒸着箔付粘着テープ。
【請求項2】
前記印刷インク層の表面に形成されるオーバーコート層をさらに含む、
ことを特徴とする請求項1記載の金属蒸着箔付粘着テープ。
【請求項3】
前記下地層の表面、または該下地層よりも表面側となる層の表面に、エンボス加工によって形成される凹凸を有することを特徴とする請求項1または2記載の金属蒸着箔付粘着テープ。
【請求項4】
前記印刷インク層は、多版印刷で形成されたものであることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の金属蒸着箔付粘着テープ。
【請求項5】
裏面側に粘着剤層を有し、防浸処理が施された紙基材の表面側に、金属蒸着箔を転写して付着させた金属蒸着箔付粘着テープの製造方法において、
金属蒸着箔を、蒸着基材上に、印刷インクとの密着性が良好な樹脂で下地層を形成してから、金属を蒸着して形成しておき、
蒸着基材上に形成されている状態の金属蒸着箔を、蒸着基材側を表面側とする裏面側で紙基材の表面側に接着し、
蒸着基材を除去して露出させる下地層上に、印刷インク層を形成する、
ことを特徴とする金属蒸着箔付粘着テープの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙を基材とする粘着テープに金属蒸着箔を転写して付着させた金属蒸着箔付粘着テープおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、クレープ紙、クラフト紙、あるいは和紙などの紙を基材とする粘着テープは、マスキングテープとして、工業用途、特に塗装時のマスキングに使用されている(たとえば、特許文献1参照)。紙基材のマスキングテープは、手切れ性が良好で手で簡単に切れて対象物に貼付けることができ、また貼付けた後で剥がすことも容易である。ただし、塗装工程が進行してマスキングの必要が無くなっても、マスキングテープを剥がし忘れるおそれがある。このためマスキングテープは、剥がし忘れがないように、比較的目立つ色に彩色されることがある。
【0003】
近年、目立つ色に彩色されたマスキングテープは、新たな内装材や装飾材などとして家庭用や芸術用として注目されている。すなわち、マスキングテープは、ユーザが自己の趣味や個性を主張する媒体の一つとなり、各種色分けシールなど、種々の分野で使用されるに至っている。マスキングテープとしても、塗装時のマスキングを用途とするのではなく、装飾を用途とする前提で、複数色を使用して、色鮮やかな各種模様を印刷したものが開発されている。今日では、生活雑貨としての店舗やインターネットを介して販売するのに適した商品として、多種多様な模様で装飾したマスキングテープが製造されている。
【0004】
金属質感が得られるマスキングテープは、金属粉末を混合させたメタリックインクを紙基材に印刷したものが販売されている。本件出願人は、紙基材に金属蒸着箔を転写する金属蒸着箔付粘着テープを提案している(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2000-63772号公報
【文献】特許第5692834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
マスキングテープの表面に金属含有層を付着させれば、顔料や染料で着色する印刷インキでは不可能な、キラキラ感を伴う光沢ある模様を形成可能となると期待される。ただし、金属粉末を混合した印刷インキを使用する程度では、十分な光沢の効果が得られない。金属的な光沢が得られるのは、特許文献2のように、面状の箔として付着させる場合である。
【0007】
マスキングテープは、ロール状に巻かれた状態で商品として提供される。ロール状に巻かれて保管されている状態では、最外層以外には外層が存在し、最外層以外の表面には外層となる部分の裏面側の粘着剤が接触する。粘着剤には、固化を防ぐための成分として、粘着性付与剤や可塑剤などが含まれている。マスキングテープの表面に印刷されたインクや、特許文献2の部分転写箔などは、粘着剤の固化を防ぐ成分の浸透で紙基材への付着力が弱まる。マスキングテープを巻出すと、ロール状に巻かれて残る部分の印刷インク層や部分転写箔が、巻出す部分の裏面側の粘着剤に付着して剥がれてしまうおそれがある。
【0008】
特許文献2では、金属蒸着箔付粘着テープの表面全体をアクリル系の樹脂によるオーバーコート層で覆い、粘着剤から金属蒸着箔層を保護している。しかしながら、オーバーコート層の形成は、金属蒸着箔層を紙基材に接着してから行うので、別工程を要し、生産コストを上昇させてしまう。また、印刷インク層と金属蒸着箔層との間の付着強度が十分でない場合は、オーバーコート層で保護する効果が得られない。
【0009】
本発明の目的は、紙基材の表面側に金属蒸着箔を接着しても、裏面側の粘着剤層で金属蒸着箔上の印刷インク層の付着強度が低下することがない、金属蒸着箔付粘着テープおよびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、浸処理が施された紙基材の表面側に設ける接着剤層に、金属蒸着箔を転写して着させ、紙基材の裏面側に粘着剤層を形成させた金属蒸着箔付粘着テープにおいて、
金属の蒸着基材への蒸着によって金属蒸着箔を形成する前に、蒸着基材の一表面側に形成され、形成後の表面に金属が蒸着され、転写時に金属蒸着箔とともに蒸着基材から分離して、金属蒸着箔の表面側にる透明保護層と、
透明保護層の表面側に、印刷インクとの密着性が良好な樹脂で形成される下地層と、
下地層の表面への印刷で形成される印刷インク層と、
を含むことを特徴とする金属蒸着箔付粘着テープである。
【0011】
また本発明は、前記印刷インク層の表面に形成されるオーバーコート層をさらに含む、
ことを特徴とする。
【0012】
また本発明は、前記下地層の表面、または該下地層よりも表面側となる層の表面に、エンボス加工によって形成される凹凸を有することを特徴とする。
【0013】
また本発明で、前記印刷インク層は、多版印刷で形成されたものであることを特徴とする。
【0014】
さらに本発明は、裏面側に粘着剤層を有し、防浸処理が施された紙基材の表面側に、金属蒸着箔を転写して付着させた金属蒸着箔付粘着テープの製造方法において、
金属蒸着箔を、蒸着基材上に、印刷インクとの密着性が良好な樹脂で下地層を形成してから、金属を蒸着して形成しておき、
蒸着基材上に形成されている状態の金属蒸着箔を、蒸着基材側を表面側とする裏面側で紙基材の表面側に接着し、
蒸着基材を除去して露出させる下地層上に、印刷インク層を形成する、
ことを特徴とする金属蒸着箔付粘着テープの製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、金属蒸着箔は全面転写されるので、ロール状に巻かれた状態での裏面側の粘着剤層の影響は、金属蒸着箔の表面側に留まり、接着剤層には及ばないので、金属蒸着箔層は剥がれ難い。印刷インク層は、印刷インクとの密着性が良好な下地層と、透明保護層とを介して金属蒸着箔の表面に付着するので、付着強度が低下しないようにすることができる。
【0016】
また本発明によれば、印刷インク層の表面をオーバーコート層で覆って保護することができる。
【0017】
また本発明によれば、エンボス加工による凹凸を層間に形成して、層間の付着強度を高めることができる。ロール状に巻かれている状態で粘着剤層と接触する表面に凹凸があれば、表面と粘着剤層とが密着しにくくなり、表面への粘着剤層の影響を低減することができる。
【0018】
また本発明によれば、印刷インク層は、多版で形成するので、多色模様、多柄模様で、なおかつ繊細な柄などの印刷も可能となる。
【0019】
さらに本発明によれば、下地層を、金属蒸着箔を蒸着によって形成する前に形成しておき、蒸着して紙基材への転写後の金属蒸着箔の表面に形成する印刷インク層の付着力を低下させないための下地として、利用することができる。下地層の形成および金属蒸着箔の蒸着を大ロットで行うことができるので、印刷インク層の形成を小ロット多品種で行う場合でも、生産効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、本発明の実施例1として、マスキングテープ1に使用する金属蒸着箔付粘着テープ2の概略的な構成を示す簡略化した斜視図および模式的な断面図である。
図2図2は、本発明の図1の金属蒸着箔付粘着テープ2を製造する際に使用する転写箔シート10の構成を示す模式的な断面図である。
図3図3は、本発明の実施例2として、金属蒸着箔付粘着テープ22の構成を示す模式的な断面図である。
図4図4は、本発明の実施例3として、金属蒸着箔付粘着テープ32の構成を示す模式的な断面図である。
図5図5は、本発明の実施例4として、金属蒸着箔付粘着テープ42の構成を示す模式的な断面図である。
図6図6は、本発明の実施例5として、金属蒸着箔付粘着テープ52の構成および多層印刷インク層60を形成した転写印刷シート70の構成を示す模式的な断面図である。
図7図7は、本発明の実施例6としての金属蒸着箔付粘着テープ82の構成と、その製造に使用する転写箔シート80の構成とを示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図1および図2で、本発明の実施例1としての金属蒸着箔付粘着テープ2およびその製造方法について説明する。図3図4図5図6および図7は、本発明の実施例2、実施例3、実施例4、実施例5および実施例6としての金属箔付粘着テープ22,32,42,52、82の構成をそれぞれ示す。各図で対応する部分には同一の参照符を付し、重複する説明を省略する。特に、実施例2、実施例3、実施例4、実施例5および実施例6では、先に説明した実施例と異なる部分のみ説明し、同様な部分の説明は省略する。
【実施例1】
【0022】
図1は、本発明の実施例1としての金属蒸着箔付粘着テープ2の概略的な構成を、(a)の斜視図、および(b)の断面図でそれぞれ示す。金属蒸着箔付粘着テープ2は、(a)に示すように、マスキングテープ1として、巻き芯1aに巻かれたロール状の商品形態で市場に提供される。金属蒸着箔付粘着テープ2の裏面側には粘着剤層3が設けられ、巻き芯1aから巻出した金属蒸着箔付粘着テープ2を、多くの対象物に貼付け可能にしている。粘着剤層3は、天然ゴム系やアクリル系など、特許文献1に記載されているような材料で形成される。金属蒸着箔付粘着テープ2の表面側は、印刷インク層4を有する。(b)に示すように、粘着剤層3は、紙基材5の裏面側に設けるけれども、形成は他の部分の形成後に行う。紙基材5の表面側には、接着剤層6を設け、金属蒸着箔7を接着する。接着剤層6を接着させる金属蒸着箔7の裏面側の表面には、トップコート層8aを形成しておく。金属蒸着箔7は、金属の蒸着によって形成する。金属蒸着箔7の表面は、透明保護層8bで覆って腐食しないように保護する。透明保護層8bの表面は、透明下地層9で覆う。透明下地層9上に印刷インク層4を形成する。透明保護層8bや透明下地層9は、金属蒸着箔7の被膜としての性質である被膜性を補強する。なお、透明樹脂に染料や顔料を入れて、着色した下地層を用いることもできる。
【0023】
紙基材5は、粘着剤や接着剤の含浸を防ぐための防浸処理として、樹脂を含浸させ、ロール間に挟んで圧縮したものを使用する。ロールでの圧縮による防浸処理は、接着剤層6で金属蒸着箔7を接着する直前に行うことが好ましい。接着剤層6は、ポリエステル樹脂系やポリウレタン樹脂系で有機溶剤型の2液タイプの主剤と硬化材とを混ぜて塗布し、40~50℃で40~100時間保持して硬化させる。トップコート層8aは、接着剤層6と相性の良い樹脂、たとえば同系の樹脂で形成する。透明下地層9は、透明で、印刷インク層4を形成する印刷インクへの親和性を有する樹脂、たとえば同系の樹脂で形成する。透明下地層9には、次のような系統の樹脂を使用することができる:
硝化綿系、ポリエステル系、メラミン系、ポリウレタン系、ウレタン系、アミノ樹脂系、アクリル系、スチレン系、混合樹脂系。
【0024】
印刷は、たとえばグラビア印刷で行うことができ、スクリーン印刷やインクジェット印刷など、種々の方法を用いることもできる。印刷には、次のような系統の樹脂を使用することができる:
塩酢ビ系、塩化ゴム系、塩素化ポリプロピレン系、アクリル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、硝化綿系、ウレタン系、アルキッド系、酢酸綿系、メラミン系、混合樹脂系(ポリアミド樹脂と硝化綿樹脂など)。
【0025】
グラビアインクは、これらの樹脂とともに、着色剤、助剤を加え、溶剤で溶いて形成する。金属蒸着箔7上に形成する印刷インク層4としては、着色剤で着色すると、着色した金属光沢が得られ、着色しなければ、金属蒸着箔7自体の金属光沢が得られる。印刷インク層4を着色しない場合、インクとして印刷インク用の透明樹脂(メジウム)を塗布することになる。たとえば、着色用の印刷インクが樹脂90%で染料10%とすれば、透明樹脂は樹脂含有量100%となるので、透明下地層9との密着強度が上がる。
【0026】
図2は、金属蒸着箔7を形成する途中の状態となる転写箔シート10の断面構成を模式的に示す。金属蒸着箔7は、蒸着基材11の表面に離型剤層12を形成してから、透明下地層9、透明保護層8を形成した後、金属の真空蒸着によって形成し、さらにトップコート層8aを形成する。金属としては、アルミニウム(Al)や、銅(Cu)、亜鉛(Zn)などを使用することができる。蒸着基材11としては、耐熱性のあるポリエステル(PEs)のフィルムを使用する。ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステルやポリプロピレン(PP)などの合成樹脂シートを使用することができる。離型剤層12は、WAX系離型(ポリオレフィン樹脂系)剤、セルロース系(硝化綿系)離型剤、フッ素系離型剤やシリコーン系離型剤などの樹脂系の離型剤で形成する。金属蒸着箔付粘着テープ2を構成する金属蒸着箔7は、転写箔シート10をトップコート層8a側に接着剤層6を付着させ、紙基材5に接着した後で、離型剤層12の部分で蒸着基材11を剥離させ、透明下地層9側が表面となるようにして使用する。金属蒸着箔7をアルミニウムで形成するとシルバーの光沢を有する状態となる。印刷インク層4も透明であれば、シルバーメタリックの外観が得られる。印刷インク層4が黄色であれば、ゴールドメタリックの外観が得られる

【0027】
アルミニウム(Al)を蒸着して金属蒸着箔7を形成する場合、厚さは数百オングストローム~数千オングストローム程度とする。転写に使用するアルミニウムの金属蒸着箔7の被膜性は、透明下地層9や透明保護層8bの性質や厚さで補強される。
【実施例2】
【0028】
図3は、本発明の実施例2として、金属蒸着箔付粘着テープ22の構成を示す。本実施例2では、印刷インク層4の表面に、エンボス加工で凹凸4aを形成する。凹凸4aによって、図1(a)の巻き芯1aに巻かれたマスキングテープ1の状態で、巻かれた外層の粘着剤層3と印刷インク層4の表面とが密着しにくくなり、エンボス加工の凹凸が深ければ深いほど、粘着剤層3と接する面積が減り、粘着力が減少し粘着剤層3の影響を低減することができる。この低減で、紙基材5と接着剤層3の層間密着、接着剤層3とトップコート層7aの層間密着など、各層間密着を剥がれにくくすることができる。また、凹凸4aによって、金属光沢が艶消しされる効果もある。
【実施例3】
【0029】
図4は、本発明の実施例3として、金属蒸着箔付粘着テープ32の構成を示す。本実施例3では、印刷インク層4の表面に、ウレタン系樹脂によるオーバーコート層30を形成する。透明下地層9が印刷インクとの密着性が良好で、なおかつ被膜性のある透明樹脂であれば、この透明下地層9とオーバーコート層30の両方があると強密着になると考えられる。オーバーコート層30は、直接塗布して形成するばかりではなく、他の基材上に形成して、さらに接着剤層を形成してから転写してもよい。
【0030】
透明下地層9を形成してから、エンボス加工を施すことも可能であり、強密着になる。エンボス加工によって凹凸が生じ、粘着剤が付きにくくなるけれども、金属蒸着箔7のように薄い箔と、薄い透明下地層9との組合せでは、金属蒸着箔7と透明下地層9に亀裂が発生し、密着力を弱めるおそれもある。このような場合、エンボス加工の後にオーバーコート層30を形成すれば、亀裂を埋めることができる。
【0031】
オーバーコート層30は、たとえば165メッシュのロールを使用してグラビア印刷機でコーティングする。この場合、9~13ミクロンの厚さのオーバーコート層30が得られ、2回塗りでは18~26ミクロンの厚さが得られている。220メッシュのロールを使用して、5~7ミクロンの厚さのオーバーコート層30が得られている。このように、オーバーコート層30の厚さは、5~26ミクロン程度となる。オーバーコート層30には次のような系統の樹脂を使用することができる:
ウレタン系、アクリル系、硝化綿系、メラミン系、塩酢ビ樹脂系、塩化ゴム系、塩素化ポリプロピレン系、ポリアミド樹脂系、ポリエステル系、スチレン系、マレイン酸樹脂系、アミノ樹脂系、エポキシ系、塩ビ樹脂系、塩素化ポリオレフィン系、塩素化EVA系、フッ素樹脂系、シリコーン樹脂系、混合樹脂系。
【実施例4】
【0032】
図5は、本発明の実施例4として、金属蒸着箔付粘着テープ42の構成を示す。本実施例4では、紙基材5として、実施例1~3の紙基材5と同様な樹脂含浸基材5aに、コーティング層5bを加えている。実施例1~3でも同様に、コーティング層5bを加えてもよい。
【0033】
本実施例4や実施例3で、表面、あるいは層間に、エンボス加工による凹凸を設けることもできる。凹凸によって、金属光沢に対する艶消しの効果があり、表面の凹凸、または層間の凹凸でも表面に反映される凹凸は、巻き芯1aに巻かれている状態で、粘着剤層3が密着し難くなる効果がある。
【実施例5】
【0034】
図6は、本発明の実施例5として、(a)で金属蒸着箔付粘着テープ52の構成を示し、(b)で多層印刷インク層60を形成した転写印刷シート70の構成を示す。(a)に示す金属蒸着箔付粘着テープ52は、透明下地層9から紙基材5まで、実施例1の金属蒸着箔付粘着テープ2と同様に形成する。透明下地層9の表面には塗布や印刷で接着剤層56を形成し、多層印刷インク層60を転写し、さらにオーバーコート層30を形成する。多層印刷インク層60の転写後に、図3と同様なエンボス加工を施すこともできる。エンボス加工後にオーバーコート層30を形成すると、オーバーコート層30にもエンボス加工で形成される凹凸が残る。
【0035】
図6(b)に示すように、転写印刷シート70は、転写基材71上に離型剤層72およびオーバーコート層30を形成した後で、多層印刷インク層60を形成する。多層印刷インク層60は、1版目印刷61、2版目印刷62、3版目印刷63、4版目印刷64、5版目印刷65、6版目印刷66、7版目印刷67および8版目印刷68のように版を重ねる多版グラビア印刷で形成する。各層は、先行する層を形成して乾燥させてから形成する。印刷基材71として、ポリエステルフィルム(PET)を使用すると、多色模様、多柄模様、繊細な柄などを印刷することができる。離型剤層72は、図2の離型剤層12と同様な離型剤で形成する。印刷は、他の方法で行うこともできる。オーバーコート層30を設ける場合、金属蒸着箔7は部分転写でも良い。
【0036】
多色模様、多柄模様、繊細な柄などを、実施例1~4の印刷インク層4のように、紙基材5を加工した媒体に直接印刷することは困難である。その原因は、紙基材5が薄くて樹脂含浸されているので、腰がなく柔らかくて伸縮する印刷適性の悪い媒体だからである。また、紙基材5は、柔らかいので加工中に強いテンションをかけられず、転写加工、エンボス加工などの加工をすればするほど、媒体に負荷(負担)がかかり、片側がたるむような癖が発生し、皺になりやすい。皺が入ると不良品になる。多版グラビア印刷に使用する版ロールは、円周を同一にしており、柄合わせの目印になるトンボマークを印刷しても、伸縮や癖などで媒体が不安定になると、版を重ねる際、1版目と2版目、3版目、4版目の柄位置が合わなくなり、不良品となる。PETフィルムが媒体であれば、媒体の表面が平滑で伸縮がほとんどなく、耐熱性が良く、インクが浸透しないので、印刷適性に優れている。
【0037】
金属蒸着箔7の蒸着前には透明下地層9までを大量(大ロット)に形成しておき、蒸着後に印刷インク層4や多層印刷インク層60を形成する方が小ロット多品種生産に対応しやすい。転写印刷シート70の裏面に2液タイプ(主剤と硬化剤)の接着剤を塗布して透明下地層9上に貼付け、エージング(40℃で保持)する。エージング後、印刷基材71を剥がして除去すれば、多層印刷インク層60が透明下地層9上に転写される。
【実施例6】
【0038】
図7は、本発明の実施例6としての金属蒸着箔付粘着テープ82の構成を(a)で、金属蒸着箔7を蒸着して形成した転写箔シート80の途中の構成を(b)でそれぞれ示す。金属蒸着箔7は、蒸着基材11上に離型剤層72および透明下地層79を介して多層印刷インク層60を形成しておいてから形成する。透明下地層9は、多層印刷インク層60の各層で印刷するインクと同じ樹脂を透明な状態で使用し、蒸着工程での下地として機能する。多層印刷インク層60の替りに、印刷インク層4を形成することも可能である。多層印刷インク層60や印刷インク層4を蒸着前に形成しておく方法は、大ロット少品種の生産に適する。透明下地層79は、離型剤層12の上に透明樹脂を塗布して形成する。形成後、この樹脂に染料を入れたインクで、複数版たとえば4版印刷してから、金属蒸着箔7を蒸着する。8版目印刷68のような最後に印刷した版のインクが下地層として機能するので、樹脂が多くなるようにして金属蒸着箔7との密着性を良くする。(a)で示すように、蒸着基材11を除去してから、多層印刷インク層60の上にオーバーコート層30を形成する。オーバーコート層30を設けないで、多層印刷インク層60と同じ樹脂の無色または着色の透明樹脂層を設けて色の調整を行っても良く、さらにその上にオーバーコート層30を設けても良い。
【0039】
次の表1は、実施例1~実施例6と、実施例1で透明下地層9を設けない比較例とについて、巻き芯1aに巻いた状態から巻出す際に印刷インク層4や接着剤層6による金属蒸着箔7の密着性が保たれるか否かを試験した結果の一例を示す。試験方法は、試験体に市販のセロハンテープを貼って、セロハンテープの上をこするように強く押さえてから、勢いよく瞬間的に剥がすことによる。試験結果は、「印刷」は印刷インク層4について、「箔」は金属蒸着箔7について、○が剥がれないでセロハンテープに付かない、×が剥がれてセロハンテープに付くことをそれぞれ示す。実施例1、2、4と実施例3とで差は無いけれども、恒温恒湿(40℃前後、湿度80%前後)槽に1週間前後入れるなどの加速試験を行えば、実施例3の方が良好であると推定される。
【0040】
【表1】
【符号の説明】
【0041】
1 マスキングテープ
2,22,32,42,52,82 金属蒸着箔付粘着テープ
3 粘着剤層
4 印刷インク層
4a 凹凸
5 紙基材
6,56 接着剤層
7 金属蒸着箔
8a トップコート層
8b 透明保護層
9,79 透明下地層
10,80 転写箔シート
11 蒸着基材
12,72 離型剤層
30 オーバーコート層
60 多層印刷インク層
70 転写印刷シート
71 印刷基材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7