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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】制振用ダンパーの変位計測装置
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/04 20060101AFI20220302BHJP
   E01D 22/00 20060101ALI20220302BHJP
   E04H 9/02 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
E01D19/04 101
E01D22/00 Z
E04H9/02 351
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018100196
(22)【出願日】2018-05-25
(65)【公開番号】P2019203339
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2020-10-12
(73)【特許権者】
【識別番号】508036743
【氏名又は名称】株式会社横河ブリッジ
(73)【特許権者】
【識別番号】592182573
【氏名又は名称】オックスジャッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076255
【弁理士】
【氏名又は名称】古澤 俊明
(72)【発明者】
【氏名】永田 考
(72)【発明者】
【氏名】三木 英二
(72)【発明者】
【氏名】山形 昭博
(72)【発明者】
【氏名】茂木 稔
(72)【発明者】
【氏名】松本 将
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 逸人
(72)【発明者】
【氏名】中村 泰二
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-105021(JP,A)
【文献】特開2014-115152(JP,A)
【文献】特開2014-109160(JP,A)
【文献】実開昭59-025405(JP,U)
【文献】実開昭61-187403(JP,U)
【文献】実開昭54-173762(JP,U)
【文献】特開2002-333318(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0067542(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 19/04
E01D 22/00
E04H 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに摺動可能に設けられた第1構造物(2)と第2構造物(3)との間の振動を抑制する制振用ダンパーの変位計測装置であって、
前記第1構造物(2)に固定されたシリンダ(11)と、
前記第2構造物(3)に固定されて前記シリンダ(11)に摺動可能に挿入されるロッド(12)と、
前記シリンダ(11)に摺動可能に収容されて前記ロッド(12)に連結されたピストン(13)と、
前記ロッド(12)に固定的に設けられ、前記ロッド(12)と前記シリンダ(11)の少なくとも一部を覆い、前記シリンダ(11)の摺動方向(A)に長孔(22)が形成された円筒状のロッドカバー(14)と、
前記長孔(22)に沿って摺動可能となるように前記ロッドカバー(14)に設けられた一対の第1可動部(23a,23b)と、
前記シリンダ(11)に、前記摺動方向(A)に移動不能に設けられ、前記一対の第1可動部(23a,23b)の間に配置されるように前記長孔(22)に挿入された作動片(30)と、
前記長孔(22)を覆う長孔カバー(28)と、
を備え、前記長孔(22)の延在方向と直交する方向を幅方向(D)とした場合に、前記一対の第1可動部(23a,23b)の突出部(24b,24b)は、前記長孔(22)から前記幅方向(D)に延びて前記長孔カバー(28)から突出することを特徴とする制振用ダンパーの変位計測装置。
【請求項2】
互いに摺動可能に設けられた第1構造物(2)と第2構造物(3)との間の振動を抑制する制振用ダンパーの変位計測装置であって、
前記第1構造物(2)に固定されたシリンダ(11)と、
前記第2構造物(3)に固定されて前記シリンダ(11)に摺動可能に挿入されるロッド(12)と、
前記シリンダ(11)に摺動可能に収容されて前記ロッド(12)に連結されたピストン(13)と、
前記ロッド(12)に固定的に設けられ、前記ロッド(12)と前記シリンダ(11)の少なくとも一部を覆い、前記シリンダ(11)の摺動方向(A)に長孔(22)が形成された円筒状のロッドカバー(14)と、
前記長孔(22)に沿って摺動可能となるように前記ロッドカバー(14)に設けられた一対の第1可動部(23a,23b)と、
前記シリンダ(11)に、前記摺動方向(A)に移動不能に設けられ、前記一対の第1可動部(23a,23b)の間に配置されるように前記長孔(22)に挿入された作動片(30)とを備え、
前記ロッド(12)と前記シリンダ(11)は、相対的に軸回り方向(B)に回動可能に設けられ、
前記シリンダ(11)に設けられた作動片(30)の端部を、前記軸回り方向(B)に回動自在に支持するように前記ロッド(12)の端部に設けられた回動保持板(31)と、
前記作動片(30)と前記回動保持板(31)との相対的な軸回り方向(B)の回動量を表示する手段と、
を更に備えることを特徴とする制振用ダンパーの変位計測装置。
【請求項3】
前記作動片(30)と前記回動保持板(31)との相対的な軸回り方向(B)の回動量を表示する手段は、前記回動保持板(31)の弧状部に設けた目盛り(41b)と、この目盛り(41b)の対応した前記作動片(30)に設けた指針(41a)とからなることを特徴とする請求項2に記載の制振用ダンパーの変位計測装置。
【請求項4】
前記作動片(30)と前記回動保持板(31)との相対的な軸回り方向(B)の回動量を表示する手段は、前記作動片(30)の両側部に臨ませられ、かつ、前記回動保持板(31)の弧状部に移動自在に設けた第2可動部(42a、42b)からなることを特徴とする請求項2に記載の制振用ダンパーの変位計測装置。
【請求項5】
前記長孔(22)を覆う長孔カバー(28)を更に備え、
前記長孔(22)の延在方向と直交する方向を幅方向(D)とした場合に、前記一対の第1可動部(23a,23b)の突出部(24b,24b)は、前記長孔(22)から前記幅方向(D)に延びて前記長孔カバー(28)から突出することを特徴とする請求項2に記載の制振用ダンパーの変位計測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、橋梁等において、第1構造物である橋脚と第2構造物である橋桁との間に取り付けられ、相互の振動を減衰させる制振用ダンパーの変位計測装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、互いに摺動可能な第1構造物である橋脚と第2構造物である橋桁との間の振動を減衰させ、橋梁の破損や橋桁の落下を防止するために、これらの間に制振用ダンパーが用いられている。この制振用ダンパーは、ピストンが摺動可能に収容された円筒状のシリンダと、シリンダに摺動可能に挿入されてピストンに連結されるロッドとを備えており、シリンダとロッドの間が伸縮することで、振動を減衰させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-109160号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の制振用ダンパーは、その作動量(最大伸縮量)を計測する機構を備えていないため、橋梁にどの程度の振動が発生したのかを判別することができなかった。
【0005】
ところで、特許文献1には、座屈拘束ブレースの変位を計測する変位計測装置が記載されている。この座屈拘束ブレースは、常時やレベル1地震時には弾性部材として機能するが、レベル2地震時には軸部材(芯部材)が降伏して塑性変形を繰り返すことで、地震エネルギーを吸収して振動を減衰させるものである。特許文献1に記載された変位計測装置は、このような座屈拘束ブレースにおいて、軸部材と補剛材との軸方向変位を検出するものである。そして、特許文献1に記載された変位計測装置が搭載される座屈拘束ブレースは、上記のような制振用ダンパーと使用目的、構造、動作等が全く異なるため、特許文献1に記載された変位計測装置を、上記のような制振用ダンパーにそのまま適用できるものではない。
【0006】
そこで、本発明の第1の目的は、互いに摺動可能な第1構造物と第2構造物との間の振動を減衰させつつ、その作動量を容易に判別することができる制振用ダンパーの変位計測装置を提供することである。
本発明の第2の目的は、第1構造物と第2構造物との間の相互の回動量(回動角度)をも判別することができる制振用ダンパーの変位計測装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る制振用ダンパーの変位計測装置は、互いに摺動可能に設けられた第1構造物と第2構造物との間の振動を抑制する制振用ダンパーの変位計測装置であって、前記第1構造物に固定されたシリンダと、前記第2構造物に固定されて前記シリンダに摺動可能に挿入されるロッドと、前記シリンダに摺動可能に収容されて前記ロッドに連結されたピストンと、前記ロッドに固定的に設けられ、前記ロッドと前記シリンダの少なくとも一部を覆い、前記シリンダの摺動方向に長孔が形成された円筒状のロッドカバーと、前記長孔に沿って摺動可能となるように前記ロッドカバーに設けられた一対の第1可動部と、前記シリンダに、前記摺動方向に移動不能に設けられ、前記一対の第1可動部の間に配置されるように前記長孔に挿入された作動片と、を備える。
【0008】
本発明に係る制振用ダンパーの変位計測装置によれば、回動量をも計測するため、前記ロッドと前記シリンダは、相対的に軸回り方向に回動可能に設けられ、前記シリンダに設けられた作動片の端部を、前記軸回り方向に回動自在に支持するように前記ロッドの端部に設けられた回動保持板と、前記作動片と前記回動保持板との相対的な軸回り方向の回動量を表示する手段と、を更に備える。
【0009】
前記作動片と前記回動保持板との相対的な軸回り方向の回動量を表示する手段は、前記回動保持板の弧状部に設けた目盛りと、この目盛りの対応した前記作動片に設けた指針とからなる。
【0010】
前記作動片と前記回動保持板との相対的な軸回り方向の回動量を表示する手段は、前記作動片の両側部に臨ませられ、かつ、前記回動保持板の弧状部に移動自在に設けた第2可動部からなる。
【0011】
前記長孔を覆う長孔カバーを更に備え、前記長孔の延在方向と直交する方向を幅方向とした場合に、前記一対の第1可動部の突出部は、前記長孔から前記幅方向に延びて前記長孔カバーから突出する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1記載の発明によれば、
互いに摺動可能に設けられた第1構造物(2)と第2構造物(3)との間の振動を抑制する制振用ダンパーの変位計測装置であって、
前記第1構造物(2)に固定されたシリンダ(11)と、
前記第2構造物(3)に固定されて前記シリンダ(11)に摺動可能に挿入されるロッド(12)と、
前記シリンダ(11)に摺動可能に収容されて前記ロッド(12)に連結されたピストン(13)と、
前記ロッド(12)に固定的に設けられ、前記ロッド(12)と前記シリンダ(11)の少なくとも一部を覆い、前記シリンダ(11)の摺動方向(A)に長孔(22)が形成された円筒状のロッドカバー(14)と、
前記長孔(22)に沿って摺動可能となるように前記ロッドカバー(14)に設けられた一対の第1可動部(23a,23b)と、
前記シリンダ(11)に、前記摺動方向(A)に移動不能に設けられ、前記一対の第1可動部(23a,23b)の間に配置されるように前記長孔(22)に挿入された作動片(30)と、
前記長孔(22)を覆う長孔カバー(28)と、
を備え、前記長孔(22)の延在方向と直交する方向を幅方向(D)とした場合に、前記一対の第1可動部(23a,23b)の突出部(24b,24b)は、前記長孔(22)から前記幅方向(D)に延びて前記長孔カバー(28)から突出する
ので、シリンダ(11)に対してロッド(12)が伸縮すると、作動片(30)は、シリンダ(11)に対するロッド(12)の伸縮量だけ、一対の第1可動部(23a,23b)を互いに離間するように長孔(22)に沿って摺動させる。これにより、一対の第1可動部(23a,23b)の位置を視認することで、シリンダ(11)に対するロッド(12)の最大伸縮量を容易に判別することができる。
また、ロッドカバー(14)の長孔(22)が長孔カバー(28)に覆われているため、長孔(22)からロッドカバー(14)内に雨や塵埃等が入り込むのを抑制することができる。これにより、制振用ダンパーの長寿命化を図ることができる。しかも、一対の第1可動部(23a,23b)の突出部(24b,24b)長孔(22)から幅方向に延びて長孔カバー(28)から突出しているため、長孔カバー(28)を取り外さなくても、一対の第1可動部(23a,23b)の位置を視認することができる。
【0013】
本発明の請求項2記載の発明によれば、
互いに摺動可能に設けられた第1構造物(2)と第2構造物(3)との間の振動を抑制する制振用ダンパーの変位計測装置であって、
前記第1構造物(2)に固定されたシリンダ(11)と、
前記第2構造物(3)に固定されて前記シリンダ(11)に摺動可能に挿入されるロッド(12)と、
前記シリンダ(11)に摺動可能に収容されて前記ロッド(12)に連結されたピストン(13)と、
前記ロッド(12)に固定的に設けられ、前記ロッド(12)と前記シリンダ(11)の少なくとも一部を覆い、前記シリンダ(11)の摺動方向(A)に長孔(22)が形成された円筒状のロッドカバー(14)と、
前記長孔(22)に沿って摺動可能となるように前記ロッドカバー(14)に設けられた一対の第1可動部(23a,23b)と、
前記シリンダ(11)に、前記摺動方向(A)に移動不能に設けられ、前記一対の第1可動部(23a,23b)の間に配置されるように前記長孔(22)に挿入された作動片(30)とを備え、
前記ロッド(12)と前記シリンダ(11)は、相対的に軸回り方向(B)に回動可能に設けられ、
前記シリンダ(11)に設けられた作動片(30)の端部を、前記軸回り方向(B)に回動自在に支持するように前記ロッド(12)の端部に設けられた回動保持板(31)と、
前記作動片(30)と前記回動保持板(31)との相対的な軸回り方向(B)の回動量を表示する手段と、
を更に備えているので、橋梁の第1構造物(2)と第2構造物(3)との間の振動を減衰させつつ、その伸縮量のみならず、回動量をも容易に判別することができる。
【0014】
本発明の請求項3記載の発明によれば、
前記作動片(30)と前記回動保持板(31)との相対的な軸回り方向(B)の回動量を表示する手段は、前記回動保持板(31)の弧状部に設けた目盛り(41b)と、この目盛り(41b)の対応した前記作動片(30)に設けた指針(41a)とからなるので、軸回り方向(B)の回動量を視認することができる。
【0015】
本発明の請求項4記載の発明によれば、
前記作動片(30)と前記回動保持板(31)との相対的な軸回り方向(B)の回動量を表示する手段は、前記作動片(30)の両側部に臨ませられ、かつ、前記回動保持板(31)の弧状部に移動自在に設けた第2可動部(42a、42b)からなるので、振動が収まった後でも軸回り方向(B)の最大回動量を視認することができる。
【0016】
本発明の請求項5記載の発明によれば、
前記長孔(22)を覆う長孔カバー(28)を更に備え、
前記長孔(22)の延在方向と直交する方向を幅方向(D)とした場合に、前記一対の第1可動部(23a,23b)の突出部(24b,24b)は、前記長孔(22)から前記幅方向(D)に延びて前記長孔カバー(28)から突出したので、ロッドカバー(14)の長孔(22)が長孔カバー(28)に覆われているため、長孔(22)からロッドカバー(14)内に雨や塵埃等が入り込むのを抑制することができる。これにより、制振用ダンパーの長寿命化を図ることができる。しかも、一対の第1可動部(23a,23b)の突出部(24b,24b)長孔(22)から幅方向に延びて長孔カバー(28)から突出しているため、長孔カバー(28)を取り外さなくても、一対の第1可動部(23a,23b)の位置を視認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態の制振用ダンパーの変位計測装置に用いられた制振用ダンパーの設置状態を示す模式図である。
図2図1の制振用ダンパーの内部構造を示す破断側面図である。
図3】第1実施形態の制振用ダンパーの変位計測装置の一部を拡大した側面図である。
図4図3において長孔カバーを取り外した状態を示す平面図である。
図5図3におけるV-V線断面図である。
図6図4におけるVI-VI線断面図である。
図7図4におけるVII-VII線断面図である。
図8図4における他の実施例を示すVII-VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好適な実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態では、本発明に係る制振用ダンパーの変位計測装置を、橋梁に適用したものとして説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0019】
図1において、符号10は、制振用ダンパーで、橋梁1に互いに摺動可能に設けられた第1構造物2と第2構造物3との間に取り付けられて、これらの第1構造物2と第2構造物3との間の振動を抑制するものである。この制振用ダンパー10は、例えば、第1構造物2が橋脚であり、第2構造物3が橋桁である。本発明に係る制振用ダンパーの変位計測装置は、前記制振用ダンパー10に設けた例として説明する。
【0020】
図1及び図2に示すように、前記制振用ダンパー10は、第1構造物2に固定される円筒状のシリンダ11と、第2構造物3に固定されてシリンダ11に摺動可能に挿入される棒状のロッド12と、シリンダ11に摺動可能に収容されてロッド12に連結されたピストン13と、ロッド12とシリンダ11の一部を覆う円筒状のロッドカバー14と、を備える。前記ロッド12は、シリンダ11に対してロッド12の軸回り方向Bに回動可能となるように、シリンダ11に摺動可能に挿入されている。以下の説明では、シリンダ11に対するロッド12の軸方向の摺動方向を、摺動方向Aといい、シリンダ11に対するロッド12の軸回り方向を、回動方向Bという。
そして、本発明は、シリンダ11に対するロッド12の摺動方向Aのみならず、シリンダ11に対するロッド12の回動方向をBについても制振用ダンパーの変位計測を可能にしたものである。
【0021】
第1に、摺動方向Aについての制振用ダンパーの変位計測装置について説明する。
前記シリンダ11におけるロッド12と反対側の端部には、シリンダ11を第1構造物2に固定するシリンダ固定部(クレビス金具)16が接続されている。このため、シリンダ11は、シリンダ固定部16により間接的に第1構造物2に固定される。前記ロッド12におけるシリンダ11と反対側の端部には、ロッド12を第2構造物3に固定するロッド固定部(クレビス金具)17が接続されている。このため、ロッド12は、ロッド固定部17により間接的に第2構造物3に固定される。なお、シリンダ固定部16及びロッド固定部17は、2山のクレビスとした。2山のクレビスは、1山のクレビスの球面軸受けで±5度(両側で±10度)程度の回転が可能である。第1構造物2及び第2構造物3に対する制振用ダンパー10のさらに大きな動きを許容するためには、自由継手(ユニバーサルジョイント)を備えていることがより望ましい。
【0022】
前記シリンダ11の内部には、ピストン13を収容する内部領域Cが形成されている。内部領域Cは、摺動方向Aに長い円筒状に形成されている。内部領域Cには、例えば、オイル等の粘性液体が充填されている。ピストン13は、摺動方向Aに摺動可能となるように、内部領域Cに収容されている。内部領域Cは、ピストン13によりシリンダ固定部16側の領域とロッド固定部17側の領域とに分離されており、シリンダ固定部16側の領域とロッド固定部17側の領域とは、ピストン13とシリンダ11の内壁との間の隙間、又は、ピストン13に形成された穴により連通されている。図2では、ピストン13とシリンダ11の内壁との間の隙間により、シリンダ固定部16側の領域とロッド固定部17側の領域とが連通されている。
【0023】
前記ロッドカバー14は、ロッド12に固定的に取り付けられ、摺動方向Aに移動不能に設けられている。具体的には、ロッドカバー14は、ダンパー本体のクレビス金具に固定されている。そして、ロッドカバー14は、クレビス金具から、摺動方向Aに沿ってシリンダ11まで延びている。なお、ロッド12は、シリンダ11から露出している全ての部分がロッドカバー14に覆われていることが好ましい。
【0024】
図3図6に示すように、ロッドカバー14は、摺動方向Aに長い平板状の摺動プレート21を備えている。摺動プレート21は、ネジ等によりロッドカバー14に着脱可能に取り付けられている。
【0025】
前記摺動プレート21には、摺動方向Aに延びる長孔22が形成されている。つまり、摺動プレート21は、ロッドカバー14に、摺動方向Aに延びる長孔22を形成する。なお、摺動プレート21の幅方向であって、長孔22の延在方向と直交する方向(摺動方向Aと直交する方向)を、幅方向Dという。
【0026】
摺動プレート21には、一対の第1可動部23a,23bが設けられている。一対の第1可動部23a,23bは、長孔22に沿って摺動可能となるように摺動プレート21に設けられている。具体的には、図5に示すように、一対の第1可動部23a,23bは、それぞれ、摺動プレート21の表面側(ロッドカバー14の外周面側)に配置される表側プレート部24と、摺動プレート21の裏面側(ロッドカバー14の内周面側)に配置される裏側プレート部25とで前記摺動プレート21を挟み、これらの表側プレート部24と裏側プレート部25は、長孔22に挿入された締結部材26で一体に摺動可能に締結している。
【0027】
前記裏側プレート部25は、長孔22よりも幅広となるように幅方向Dに延びて摺動プレート21に当接される部材である。前記締結部材26は、例えば、ボルトとナットとにより構成される。表側プレート部24は、長孔22よりも幅広となるように幅方向Dに延びて摺動プレート21に当接される平板部24aと、幅方向Dにおける平板部24aの両端縁から摺動プレート21とは反対側に延び、移動量を表示する一対の突出部24b,24bと、を備える。なお、一対の突出部24b,24bは、垂直方向に延びていてもよく、互いに外方へ斜め方向に延びていてもよい。表側プレート部24は、例えば、一枚の矩形板状の部材の両端部を屈曲することにより形成することができる。
【0028】
そして、一対の第1可動部23a,23bは、表側プレート部24及び裏側プレート部25が長孔22に挿入された締結部材26により締結されて摺動プレート21を挟み込むことで、長孔22に沿って摺動可能となるように摺動プレート21に設けられている。
【0029】
摺動プレート21の摺動方向Aにおける両端部には、摺動プレート21の表面から突出する一対の支持台27,27が取り付けられており、この一対の支持台27,27に、長孔22を覆う長孔カバー28が取り付けられている。一対の支持台27,27は、例えば、ネジによる螺合により摺動プレート21に着脱可能に取り付けられており、長孔カバー28は、例えば、ネジによる螺合により一対の支持台27,27に着脱可能に取り付けられている。一対の支持台27,27の幅方向Dにおける断面形状は、例えば台形に形成されており、長孔カバー28の幅方向Dにおける断面形状は、例えば一対の支持台27,27の表面に沿った略コ字状に形成されている。前記支持台27,27及び長孔カバー28の形状は、上記例に限られるものではない。そして、長孔カバー28は、摺動プレート21及びロッドカバー14との間に間隙を形成しており、この隙間から、表側プレート部24の一対の突出部24b,24bが突出している。つまり、表側プレート部24は、幅方向Dに延びて長孔カバー28から突出している。そのため、長孔カバー28を取り外さなくても、一対の第1可動部23a,23bの位置を視認することができる。
【0030】
図4図6図7に示すように、シリンダ11のロッド固定部17側の先端面11aには、作動片30が設けられている。この作動片30は、上端部が長孔22から上方に突出し、下端部がシリンダ11の先端面11aに臨ませられている。前記作動片30の上端部には、部分的に幅方向Dにおいて細くなった首部30aが形成されており、この首部30aが長孔22に嵌め込まれることで、作動片30が摺動プレート21から脱落しないように構成されている。前記作動片30の下端部は、シリンダ11の先端面11aに設けた回動保持板31とシリンダ11の先端面11aとの隙間43に遊嵌され、作動片30は、摺動方向Aに移動不能であるが、回動方向Bに移動可能となっている。
【0031】
次に、本実施形態に係る制振用ダンパー変位計測装置の摺動方向Aの作用について説明する。
地震等により第1構造物2と第2構造物3との間に振動が発生すると、シリンダ11に対してロッド12が伸縮し、これに伴いロッド12に連結されたピストン13がシリンダ11に対して摺動する。これにより、第1構造物2と第2構造物3との間の振動が減衰する。
【0032】
ここで、一対の第1可動部23a,23bは、当初図6の鎖線のように作動片30の両側に接している。すなわち、ロッド12に対して摺動方向Aに移動不能に設けられた摺動プレート21に摺動方向Aに延びる長孔22が形成され、この長孔22に沿って摺動可能となるようにロッドカバー14に一対の第1可動部23a,23bが設けられ、シリンダ11に対して摺動方向Aに移動不能に設けられた作動片30が一対の第1可動部23a,23bの間に配置されている。ここで、シリンダ11に対してロッド12が伸縮すると、作動片30は、シリンダ11に対するロッド12の伸縮量だけ、一対の第1可動部23a,23bを図6の実線のように互いに離間するように長孔22に沿って摺動させる。これにより、一対の第1可動部23a,23bの位置を視認することで、シリンダ11に対するロッド12の最大伸縮量a1,a2を容易に判別することができる。
【0033】
また、ロッドカバー14の長孔22が長孔カバー28に覆われているため、長孔22からロッドカバー14内に雨や塵埃等が入り込むのを抑制することができる。これにより、制振用ダンパーの変位計測装置の長寿命化を図ることができる。しかも、一対の第1可動部23a,23bは、長孔22から幅方向Dに延びて突出部(24b,24b)が長孔カバー28から突出しているため、長孔カバー28を取り外さなくても、一対の第1可動部23,23の位置を視認することができる。
【0034】
第2に、回動方向Bについての制振用ダンパーの変位計測装置について説明する。
回動方向Bの実施形態は、シリンダに対するロッドの最大回動量を判別する構成を備える点で摺動方向Aの実施形態と相違するが、基本的には同様の構成である。
【0035】
図6図7に示すように、回動方向Bの実施形態の制振用ダンパーの変位計測装置は、摺動方向Aの実施形態の制振用ダンパーの変位計測装置の各構成に加えて、シリンダ11の先端面11aとの間に隙間43をもって回動保持板31を取り付け、前記隙間43に作動片30の下端部を幅方向に揺動可能に差し込む。また、回動保持板31は、上縁部がシリンダ11の外周面と同一の弧状をなし、この弧状の縁部に目盛り41bを形成し、この回動保持板31の目盛り41bに対応した作動片30の位置に指針41aを設けて回動量を表示する手段を構成する。
【0036】
次に、本実施形態に係る制振用ダンパーの変位計測装置の回動方向Bの作用について説明する。
地震等により第1構造物2と第2構造物3との間に振動が発生して、摺動方向Aのみならず、シリンダ11とカバー14(ロッド12)が相対的に回動したものとする。すると、カバー14に取り付けられている作動片30は、回動保持板31とシリンダ11の先端面11aとの間の隙間43で揺動する。そして、回動量を表示する手段としての作動片30の指針41aが回動保持板31の目盛り41bのどの位置を指しているかを、長孔カバー28を外して長孔22から視認することで、シリンダ11に対するロッド12の最大回動量を容易に判別することができる。
【0037】
シリンダ11とカバー14(ロッド12)が相対的に回動したときの最大回動量を保持するために、回動量を表示する手段は、図8に示すように、回動保持板31の弧状の縁部であって、作動片30の両側に接して、例えば、コの字形の第2可動部42a、42bを摺動可能に嵌め込む。そして、シリンダ11とカバー14の相対的な回動により、カバー14に取り付けられている作動片30は、第2可動部42a、42bの位置をずらすことにより、その移動量から最大回動量を容易に判別することができる。
【0038】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、作動片30は、一対の第1可動部23a,23bの間に配置されてシリンダ11に対するロッド12の最大伸縮量を容易に判別する第1作動片としての機能と、一対の第2可動部42a,42bの間に配置されてシリンダ11に対するロッド12の最大回動量を判別する第2作動片としての機能を兼ねるものとして説明したが、第1作動片と第2作動片とを別構成としてもよい。
前記実施例では、シリンダ11を固定した側を第1構造物2とし、ロッド12を固定した側を第2構造物3としたが、これら第1構造物2と第2構造物3の名称は、2つを区別するための名称であって、特定の構造物を指すものではなく、いずれか一方を第1構造物2としたとき、他方を第2構造物3と表現したにすぎないものである。
以上の実施例では、「制振用」「振動」という用語を用いたが、これは、地震時の「震動」の他に、「交通振動」、「風による振動」等のあらゆる振動を含むものとする。
【符号の説明】
【0039】
1…橋梁、2…第1構造物、3…第2構造物、10…制振用ダンパー、11…シリンダ、11a…先端面、12…ロッド、13…ピストン、14…ロッドカバー、16…シリンダ固定部、17…ロッド固定部、21…摺動プレート、22…長孔、23、23a、23b…第1可動部、24…表側プレート部、24a…平板部、24b…突出部、25…裏側プレート部、26…締結部材、27…支持台、28…長孔カバー、30…作動片、30a…首部、31…回動保持板、41…目盛り、42、42a、42b…第2可動部、43…隙間、A…摺動方向、B…回動方向、C…内部領域、D…幅方向。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8