(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】手術訓練装置
(51)【国際特許分類】
G09B 23/32 20060101AFI20220302BHJP
G09B 9/00 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
G09B23/32
G09B9/00 Z
(21)【出願番号】P 2018123642
(22)【出願日】2018-06-28
【審査請求日】2020-09-30
(31)【優先権主張番号】P 2017214424
(32)【優先日】2017-11-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】508195545
【氏名又は名称】イービーエム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】藤原 武史
(72)【発明者】
【氏名】島田 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】加藤 サラ
(72)【発明者】
【氏名】松田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】朴 栄光
【審査官】比嘉 翔一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-109121(JP,A)
【文献】特開2010-086864(JP,A)
【文献】特開2009-122130(JP,A)
【文献】特開2005-202267(JP,A)
【文献】特開2013-085579(JP,A)
【文献】特表2005-525173(JP,A)
【文献】心臓外科手術訓練シミュレータの世界展開,産学官連携ジャーナル,2013年06月15日,Vol.9,N0.6,P.4-6,https://www.jst.go.jp/tt/journal/journal_contents/before2015/pdf/2013/1306-all.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00- 9/56
G09B17/00-19/26
G09B23/00-29/14
A61B 1/00-90/98
JSTPlus(JDream3)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
伸縮動作する生体組織を対象とした手術の訓練に用いられ、当該生体組織を模擬した模擬体を、当該伸縮動作を模擬した態様にて動作させる駆動装置と、前記駆動装置の駆動態様を制御する制御装置とを備えた手術訓練装置であって、
前記駆動装置は、電場応答性高分子アクチュエータを備
え、
複数の前記駆動装置を備え、
前記駆動装置の各々は、前記模擬体の互いに異なる箇所に対して力を作用させる、
手術訓練装置。
【請求項2】
前記電場応答性高分子アクチュエータはシート状をなしており、
前記電場応答性高分子アクチュエータには、その面に直交する方向に沿って延びるとともに前記模擬体に対して力を作用させる出力部材が設けられている、
請求項
1に記載の手術訓練装置。
【請求項3】
脈動する血管を対象とした手術の訓練に用いられ、当該血管を模擬した模擬血管を、当該脈動を模擬した態様にて動作させる駆動装置と、前記駆動装置の駆動態様を制御する制御装置とを備えた手術訓練装置であって、
前記駆動装置は、電場応答性高分子アクチュエータを備
え、
複数の前記駆動装置を備え、
前記駆動装置の各々は、前記模擬血管の互いに異なる箇所に対して力を作用させる、
手術訓練装置。
【請求項4】
前記模擬血管が固定された台座を備え、
前記電場応答性高分子アクチュエータは、シート状をなしており、前記台座に固定されている、
請求項
3に記載の手術訓練装置。
【請求項5】
前記電場応答性高分子アクチュエータは、柔軟なシート状をなしており、
前記模擬体は、柔軟なシート状をなしており、前記電場応答性高分子アクチュエータに重ね合わされた状態で支持されている、
請求項1に記載の手術訓練装置。
【請求項6】
前記電場応答性高分子アクチュエータの周囲が枠部材により支持されている、
請求項
5に記載の手術訓練装置。
【請求項7】
前記模擬体全体が、前記電場応答性高分子アクチュエータ上に重ね合わされた状態で支持されている、
請求項
5または請求項
6に記載の手術訓練装置。
【請求項8】
前記電場応答性高分子アクチュエータは、誘電エラストマーからなる誘電層及び導電エラストマーからなるとともに前記誘電層を挟む電極層をそれぞれ有し、同一面上に配置された複数の駆動層と、複数の前記駆動層をそれらの厚さ方向の両側から挟むとともに複数の前記駆動層に共通の絶縁層とを備える誘電アクチュエータであり、
前記模擬体は、互いに隣り合う複数の前記駆動層に跨る態様にて前記絶縁層上に設けられている、
請求項
5~請求項
7のいずれか一項に記載の手術訓練装置。
【請求項9】
前記電場応答性高分子アクチュエータは、誘電エラストマーからなる誘電層と、導電エラストマーからなり、前記誘電層を挟む電極層とを有する誘電アクチュエータである、
請求項1~請求項
7のいずれか一項に記載の手術訓練装置。
【請求項10】
前記誘電層は、架橋されたポリロタキサンを含有してなる、
請求項
8または請求項
9に記載の手術訓練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術訓練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、拍動下での冠動脈バイパス手術の訓練に用いられる外科手術訓練装置が開示されている。
この外科手術訓練装置は、模擬血管を含む模擬体と、模擬体を保持する保持体と、保持体を動作可能に支持する支持体と、保持体及び支持体を連結するワイヤと、保持体の動作を制御する制御ユニットとを備えている。ワイヤは、発熱により収縮可能となるTi-Ni系またはTi-Ni-Cu系の形状記憶合金により形成されている。制御ユニットは、ワイヤに対して供給される電流の供給状態を変化させることでワイヤの形状の変化を伴って保持体の動作制御を行う。
【0003】
このような従来の外科手術訓練装置によれば、保持体により保持された模擬体を60~100BPM(Beats Per Minute)で動作させることができる。これは、一般的な成人の安静時の心拍数に対応している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-122130号公報
【文献】特許第4326011号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば子供の心拍数は約150BPMと一般的な成人に比べて高いことから、子供を対象とする手術は難易度が高く、手術訓練の必要性も高い。しかしながら、特許文献1に記載の外科手術訓練装置は、保持体を動作させるアクチュエータとして、形状記憶合金により形成されたワイヤを用いているため、通電を開始してからワイヤが温度上昇するまで、あるいは通電を遮断してからワイヤが温度低下するまでに要する時間が長い。そのため、保持体の動作速度、すなわち応答性が低く、子供などの心拍数の高い患者を模擬した手術訓練に対応できない。
【0006】
なお、こうした問題は、拍動下での冠動脈バイパス手術の訓練装置に限られるものではなく、伸縮動作するその他の生体組織を対象とした手術や、脈動する血管を対象とした手術の訓練装置においても同様にして生じる。
【0007】
本発明の目的は、多用なバリエーションの手術訓練に対応可能な手術訓練装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための手術訓練装置は、伸縮動作する生体組織を対象とした手術の訓練に用いられ、当該生体組織を模擬した模擬体を、当該伸縮動作を模擬した態様にて動作させる駆動装置と、前記駆動装置の駆動態様を制御する制御装置とを備えたものであり、前記駆動装置は、電場応答性高分子アクチュエータを備える。
【0009】
同構成によれば、制御装置により駆動装置への通電態様が制御されることで、駆動装置の駆動態様が制御され、模擬体の動作が制御される。
ここで、上記構成によれば、駆動装置が電場応答性高分子アクチュエータを備えているため、形状記憶合金からなる従来のアクチュエータに比べて、模擬体の動作速度、すなわち応答性を高めることができ、子供などの心拍数の高い患者を模擬した手術訓練に対応できるようになる。したがって、多用なバリエーションの手術訓練に対応することが可能となる。
【0010】
上記手術訓練装置において、複数の前記駆動装置を備え、前記駆動装置の各々は、前記模擬体の互いに異なる箇所に対して力を作用させることが好ましい。
同構成によれば、複数の駆動装置が模擬体の互いに異なる箇所に対して力を作用させるため、制御装置により各駆動装置の動作態様を互いに異ならせるようにすれば、模擬体を複雑なパターンで動作させることができるようになる。したがって、模擬体の動作を生体組織の実際の伸縮動作に近づけることができる。
【0011】
上記手術訓練装置において、前記電場応答性高分子アクチュエータはシート状をなしており、前記電場応答性高分子アクチュエータには、その面に直交する方向に沿って延びるとともに前記模擬体に対して力を作用させる出力部材が設けられていることが好ましい。
【0012】
同構成によれば、出力部材により模擬体に対して力を作用させる位置を適宜設定することにより、模擬体の動作態様を容易に変更することができる。
上記手術訓練装置において、脈動する血管を対象とした手術の訓練に用いられ、当該血管を模擬した模擬血管を、当該脈動を模擬した態様にて動作させる駆動装置と、前記駆動装置の駆動態様を制御する制御装置とを備えたものであり、前記駆動装置は、電場応答性高分子アクチュエータを備える。
【0013】
同構成によれば、制御装置により駆動装置への通電態様が制御されることで、駆動装置の駆動態様が制御され、模擬血管の動作が制御される。このため、脈動する血管を対象とした手術訓練に対応できるようになる。特に、駆動装置が電場応答性高分子アクチュエータを備えているため、模擬血管の動作速度、すなわち応答性を高めることができ、子供などの脈拍数の高い患者を模擬した手術訓練に対応できるようになる。したがって、多用なバリエーションの手術訓練に対応することが可能となる。
【0014】
上記手術訓練装置において、前記模擬血管が固定された台座を備え、前記電場応答性高分子アクチュエータは、シート状をなしており、前記台座に固定されていることが好ましい。
【0015】
同構成によれば、シート状の電場応答性高分子アクチュエータを介して台座が伸縮するとともに、台座に固定された模擬血管が伸縮するようになる。したがって、脈動を模擬した態様にて模擬血管を容易に動作させることができる。
【0016】
上記手術訓練装置において、前記電場応答性高分子アクチュエータは、柔軟なシート状をなしており、前記模擬体は、柔軟なシート状をなしており、前記電場応答性高分子アクチュエータ上に重ね合わされた状態で支持されていることが好ましい。
【0017】
模擬体が厚く、硬い場合には、動作中の模擬体の一部をピンセットで押えるなどすると、模擬体全体の動作が抑制されることとなる。そのため、模擬体の動作を生体組織の実際の伸縮運動に近づけることができないおそれがある。
【0018】
この点、上記構成によれば、電場応答性高分子アクチュエータ及び模擬体が共に柔軟なシート状をなしており、且つ模擬体が電場応答性高分子アクチュエータ上に重ね合わされた状態で支持されている。このため、動作中の模擬体の一部をピンセットで押えた場合であっても、模擬体のその他の部分が柔軟なシート状をなす電場応答性高分子アクチュエータと共に動作し続けることとなる。また、模擬体をピンセットで押えた力により電場応答性高分子アクチュエータが伸びることで、模擬体に対して力が加えられる箇所が移動する。したがって、模擬体の動作を生体組織の実際の伸縮動作に近づけることができる。
【0019】
上記手術訓練装置において、前記電場応答性高分子アクチュエータの周囲が枠部材により支持されていることが好ましい。
上記手術訓練装置において、前記模擬体全体が、前記電場応答性高分子アクチュエータ上に重ね合わされた状態で支持されていることが好ましい。
【0020】
同構成によれば、模擬体のいずれの箇所をピンセットで押えた場合であっても、その他の部分が柔軟なシート状をなす電場応答性高分子アクチュエータと共に動作し続けることとなる。したがって、模擬体の動作を生体組織の実際の伸縮動作に一層近づけることができる。
【0021】
上記手術訓練装置において、前記電場応答性高分子アクチュエータは、誘電エラストマーからなる誘電層及び導電エラストマーからなるとともに前記誘電層を挟む電極層をそれぞれ有し、同一面上に配置された複数の駆動層と、複数の前記駆動層をそれらの厚さ方向の両側から挟むとともに複数の前記駆動層に共通の絶縁層とを備える誘電アクチュエータであり、前記模擬体は、互いに隣り合う複数の前記駆動層に跨る態様にて前記絶縁層上に設けられていることが好ましい。
【0022】
同構成によれば、複数の駆動層が模擬体の互いに異なる箇所に対して各別に力を作用させることが可能となる。このため、制御装置により各駆動層の動作態様を互いに異ならせるようにすれば、模擬体を複雑なパターンで動作させることができるようになる。したがって、模擬体の動作を生体組織の実際の伸縮動作に近づけることができる。
【0023】
上記手術訓練装置において、前記電場応答性高分子アクチュエータは、誘電エラストマーからなる誘電層と、導電エラストマーからなり、前記誘電層を挟む電極層とを有する誘電アクチュエータであることが好ましい。
【0024】
同構成によれば、簡単な構成により、模擬体を安定して動作させる駆動装置を具現化することができる。
上記手術訓練装置において、前記誘電層は、架橋されたポリロタキサンを含有してなることが好ましい。
【0025】
同構成によれば、誘電アクチュエータがスライドリングマテリアルにより構成されているため、誘電アクチュエータが変形する際のヒステリシスロスがほとんどない。これにより、模擬体や模擬血管の動作の再現性を向上させることができる。また、スライドリングマテリアルでは、架橋点が自由に動くことから、誘電アクチュエータの耐久性を高めることができる。したがって、各駆動装置の耐久性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、多用なバリエーションの手術訓練に対応することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】
図1の2-2線に沿った断面図であって、同実施形態における各駆動装置の位置関係を示す図。
【
図4】同実施形態における1つの駆動装置の断面図。
【
図5】同実施形態の駆動装置を構成する誘電アクチュエータの拡大断面図。
【
図6】同実施形態の誘電アクチュエータの電気回路図。
【
図7】同実施形態の各駆動装置及び制御装置の概略図。
【
図10】第3実施形態における手術訓練装置の斜視図。
【
図12】同実施形態の誘電アクチュエータの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
以下、
図1~
図7を参照して、第1実施形態について説明する。
本実施形態の手術訓練装置は、心臓血管の吻合手術、より詳しくは、拍動下での冠動脈バイパス手術の訓練に用いられるものであり、上部に開口を有するケース(図示略)内に設けられる。
【0029】
図1に示すように、ケースの底壁40には、支持機構10が固定されている。
支持機構10は、底壁40から上方に向けて延びる筒状の脚部材11、脚部材11の上部に設けられた筒状の下側部材12、下側部材12の上部に設けられた上側部材13、及び上側部材13の上部に固定された平面視略正方形状の支持プレート15を備えている。
【0030】
脚部材11の上部は、下側部材12の下部開口を通じてその内部に挿入されている。このことにより、下側部材12は脚部材11に対して昇降可能とされている。なお、下側部材12には、脚部材11に対して下側部材12を固定するためのねじ(図示略)が設けられている。
【0031】
上側部材13の下端には球状部13aが一体に設けられており、この球状部13aが下側部材12の内部において転動可能に支持されている。このことにより、上側部材13は、下側部材12に対して球状部13aを中心に傾動可能とされている。すなわち、下側部材12及び上側部材13によってユニバーサルジョイント14が構成されている。なお、下側部材12には、下側部材12に対して上側部材13を固定するためのねじ(図示略)が設けられている。
【0032】
図1及び
図2に示すように、支持プレート15上には、心臓の一部を模擬した模擬体50を、心臓の伸縮動作、すなわち拍動を模擬した態様にて動作させる3つの駆動装置20A,20B,20Cが固定されている。
【0033】
各駆動装置20A,20B,20Cは、上方に向けて延びる出力軸としてのボルト25A,25B,25Cを備えている。
各ボルト25A,25B,25Cの上端には、平面視略長方形状の保持プレート16が固定されている。この保持プレート16の上面に上記模擬体50が固定されている。
【0034】
図1及び
図3に示すように、模擬体50は、訓練対象となる生体組織の一部、詳しくは、冠動脈が表出する心臓表面の一部分を模擬したものである。
図3に示すように、模擬体50は、略直方体状をなす模擬心筋51と、模擬心筋51の上面における幅方向の中央部に固定され、模擬心筋51の長手方向に沿って延びる円筒状の模擬血管52とを有している。模擬心筋51及び模擬血管52はいずれもシリコーンエラストマーなどの弾性部材により形成されている。
【0035】
本実施形態における冠動脈バイパス手術の訓練では、この模擬血管52の途中部分を切開し、切開部分に他の模擬血管(図示略)の一端側を吻合する処置が行われる。
次に、本実施形態の各駆動装置20A,20B,20Cの構成について詳細に説明する。
【0036】
なお、各駆動装置20A,20B,20Cはいずれも同一の形状を有している。このため、以降においては、駆動装置20Aの各構成について説明するとともに、駆動装置20Aの各構成と同一の符号または駆動装置20Aの各構成の符号「2*A」の末尾「A」を「B」あるいは「C」に変更した符号を付することにより、重複する説明を省略する。
【0037】
図1、
図2及び
図4に示すように、駆動装置20Aは、いずれも平面視略正方形状をなし、上下に重ね合わされた状態で互いに固定された2つの枠部材22Aと、支持プレート15の上面に下端が固定されるとともに下側の枠部材22Aの4つの角部に上端が固定されて枠部材22Aを支持する4つの支持部材21Aとを備えている。
【0038】
図4に示すように、各枠部材22Aは、上下に重ね合わされた状態で互いに固定された一対の枠部材(下側枠部材23及び上側枠部材24)からなる。下側枠部材23及び上側枠部材24は共に同一の形状を有しており、平面視円形状の中心孔23a,24aを有している。下側枠部材23及び上側枠部材24は共に硬質の合成樹脂材料により形成されている。
【0039】
下側枠部材23と上側枠部材24との間には、平面視略正方形状であり、シート状の誘電アクチュエータ30が挟まれている。
図5に示すように、誘電アクチュエータ30(DEA:Dielectric Elastomer Actuator)は、誘電エラストマーからなるシート状の誘電層31と、導電エラストマーからなり、誘電層31をその厚さ方向の両側から挟む一対の電極層32,33と、電極層32,33をその厚さ方向の両側から挟む絶縁層34とを有するエラストマー製圧電素子である。
【0040】
本実施形態では、誘電層31が、架橋されたポリロタキサンを含有する誘電エラストマーにより形成されている。具体的には、誘電エラストマーは、直鎖状分子としてのポリエチレングリコールと、環状分子としてのシクロデキストリンと、封鎖基としてのアダマンタンアミンとからなる。
【0041】
また本実施形態では、各電極層32,33が、絶縁性高分子及び導電性フィラーを含有する導電エラストマーにより形成されている。上記絶縁性高分子としては、ポリロタキサンが用いられている。また、上記導電性フィラーとしては、ケッチェンブラック(登録商標)が用いられている。
【0042】
誘電層31及び電極層32,33の厚さはいずれも数十~数百μmである。
図4に示すように、各誘電アクチュエータ30の中心には、貫通孔30aが設けられている。各貫通孔30aには、共通の上記ボルト25Aが下方から挿通されている。ボルト25Aのうち上側の誘電アクチュエータ30の貫通孔30aから上方に突出した部分には、ナット26が螺合されている。ボルト25Aの頭部と下側の誘電アクチュエータ30との間、上下の誘電アクチュエータ30の間、及び上側の誘電アクチュエータ30とナット26との間には、スペーサ28が設けられている。このようにして、ボルト25Aが各誘電アクチュエータ30に固定されている。
【0043】
また、ボルト25Aの基端(下端)と支持プレート15との間には、ボルト25A(各誘電アクチュエータ30)を下方に向けて付勢する付勢部材27が設けられている。本実施形態では、付勢部材27としてコイルばねを用いている。
【0044】
ここで、
図4に示すように、誘電アクチュエータ30は、電圧が印加されておらず、付勢部材27による下方への付勢力と釣り合った状態において、フラットな状態とされている。
【0045】
図2に示すように、各駆動装置20A,20B,20Cのボルト25A,25B,25Cにより、模擬体50の互いに異なる箇所に対して力が作用されるようになっている。
図6及び
図7に示すように、各駆動装置20A,20B,20Cには、これらの駆動態様を制御する制御装置60が電気的に接続されている。すなわち、
図6に示すように、各誘電アクチュエータ30の正電極層32には、導線を介して電源61のプラス端子63が接続されている。また、各誘電アクチュエータ30の負電極層33には、導線を介して電源61の接地端子64が接続されている。
【0046】
図7に示すように、制御装置60は、各誘電アクチュエータ30の電極層32,33間に電源61から例えば900~1500Vの直流電圧を印加する際の印加態様を制御する制御部62を備えている。制御部62は、印加電圧を0~5Hzの周波数の範囲内で可変設定することにより、各誘電アクチュエータ30を0~300BPM(Beats Per Minute)の範囲内で駆動する。\ 次に、本実施形態の作用について説明する。
【0047】
本実施形態の手術訓練装置を用いた冠動脈バイパス手術の訓練に先立ち、支持機構10を操作することにより、保持プレート16(模擬体50)の高さや角度を調節する。
そして、当該訓練に際しては、制御装置60により駆動装置20A,20B,20Cへの通電態様が制御されることで、駆動装置20A,20B,20Cの駆動態様が制御され、模擬体50の動作が制御される。
【0048】
すなわち、各駆動装置20A,20B,20Cの誘電アクチュエータ30の正電極層32と負電極層33との間に直流電圧が印加されると、誘電アクチュエータ30の内部においてプラスの電荷とマイナスの電荷とが近づこうとする力によって、誘電層31が厚さ方向に圧縮されて誘電層31の面に沿った方向に伸張するようになる。このとき、誘電アクチュエータ30の厚さが薄くなることで誘電アクチュエータ30の弾性力が付勢部材27による付勢力よりも低くなり、誘電アクチュエータ30が下方に向けて変位することとなる。
【0049】
その後、誘電アクチュエータ30への電圧の印加が停止されると、誘電層31の厚さが復元されることで誘電アクチュエータ30の弾性力が回復し、誘電アクチュエータ30が上方に向けて変位することとなる。
【0050】
特に、本実施形態では、各駆動装置20A,20B,20Cの誘電アクチュエータ30に対して電圧を印加する位相を互いに異ならせるようにしている。
このようにして各駆動装置20A,20B,20Cの誘電アクチュエータ30が上下動することで、各誘電アクチュエータ30の中心部に設けられたボルト25A,25B,25Cが互いに位相差をもって上下動するようになる。これにより、保持プレート16により保持された模擬体50が心臓の伸縮動作を模擬した態様にて動作するようになる。
【0051】
本実施形態では、各駆動装置20A,20B,20Cが誘電アクチュエータ30を備えているため、形状記憶合金からなる従来のアクチュエータに比べて、模擬体50の動作速度、すなわち応答性を高めることができる。これにより、子供などの心拍数の高い患者を模擬した手術訓練に対応できるようになる。
【0052】
以上説明した本実施形態に係る手術訓練装置によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)手術訓練装置は、拍動下での冠動脈バイパス手術の訓練に用いられ、当該心臓の一部を模擬した模擬体50を、心臓の伸縮動作を模擬した態様にて動作させる駆動装置20A,20B,20Cと、駆動装置20A,20B,20Cの駆動態様を制御する制御装置60とを備える。駆動装置20A,20B,20Cは、誘電エラストマーからなる誘電層31と、導電エラストマーからなり、誘電層31を挟む電極層32,33とを有する誘電アクチュエータ30を備える。
【0053】
上記構成によれば、上述した作用を奏することから、子供などの心拍数の高い患者を模擬した手術訓練に対応できるようになり、多用なバリエーションの手術訓練に対応することが可能となる。
【0054】
(2)誘電アクチュエータ30を構成する誘電層31が、架橋されたポリロタキサンを含有している。
こうした構成によれば、誘電アクチュエータ30がスライドリングマテリアルにより構成されているため、誘電アクチュエータ30が変形する際のヒステリシスロスがほとんどない。これにより、模擬体50の動作の再現性を向上させることができる。また、スライドリングマテリアルでは、架橋点が自由に動くことから、誘電アクチュエータ30の耐久性を高めることができる。したがって、各駆動装置20A,20B,20Cの耐久性を向上させることができる。
【0055】
(3)手術訓練装置は、3つの駆動装置20A,20B,20Cを備えており、各駆動装置20A,20B,20Cは、模擬体50の互いに異なる箇所に対して力を作用させる。
【0056】
こうした構成によれば、3つの駆動装置20A,20B,20Cが模擬体50の互いに異なる箇所に対して力を作用させるため、制御装置60により各駆動装置20A,20B,20Cの動作態様を互いに異ならせるようにすることで、模擬体50を複雑なパターンで動作させることができるようになる。したがって、模擬体50の動作を実際の心臓の伸縮動作に近づけることができる。
【0057】
(4)誘電アクチュエータ30はシート状をなしている。誘電アクチュエータ30には、その面に直交する方向に沿って延びるとともに保持プレート16(模擬体50)に対して力を作用させるボルト25A,25B,25Cが設けられている。
【0058】
こうした構成によれば、ボルト25A,25B,25Cにより模擬体50に対して力を作用させる位置を適宜設定することにより、模擬体50の動作態様を容易に変更することができる。
【0059】
<第2実施形態>
以下、
図8及び
図9を参照して、第2実施形態について説明する。
図8及び
図9に示すように、本実施形態の模擬体150は、第1実施形態の模擬体50と同様、冠動脈が表出する心臓表面の一部分を模擬したものである。以下、第1実施形態の模擬体50との相違点を中心に説明する。なお、第1実施形態と同一または対応する構成については、第1実施形態の構成の符号に対して「100」を加算した符号を付すことにより重複する説明を省略する。
【0060】
模擬体150は、模擬心筋151と、模擬血管152とを有している。模擬心筋151は、いずれも略直方体状をなす上側台座153及び下側台座154を有している。上側台座153の上面に模擬血管152が固定されている。模擬心筋151、上側台座153及び下側台座154は、いずれもシリコーンエラストマーなどの弾性部材により形成されている。
【0061】
上側台座153と下側台座154との間には、シート状の誘電アクチュエータ130が接着剤により固定されている。なお、誘電アクチュエータ130は、第1実施形態において例示した誘電アクチュエータ30と同様な構成を有している。
【0062】
誘電アクチュエータ130には、誘電アクチュエータ130の駆動態様を制御する制御装置160が電気的に接続されている。
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0063】
制御装置160により誘電アクチュエータ130への通電態様が制御されることで、誘電アクチュエータ130の駆動態様が制御され、模擬血管152の動作が制御される。
すなわち、シート状の誘電アクチュエータ130を介して上側台座153が伸縮するとともに、上側台座153に固定された模擬血管152が伸縮するようになる。このため、模擬血管152を脈拍に応じて脈動させることができる。
【0064】
以上説明した本実施形態に係る手術訓練装置によれば、第1実施形態の効果(2)に加えて、新たに以下に示す効果が得られるようになる。
(5)手術訓練装置は、脈動する人体の血管を対象とした手術の訓練に用いられ、当該血管を模擬した模擬血管152を、当該脈動を模擬した態様にて動作させる駆動装置としての誘電アクチュエータ130と、誘電アクチュエータ130の駆動態様を制御する制御装置160とを備える。
【0065】
こうした構成によれば、冠動脈バイパス手術のような脈動する血管を対象とした手術訓練に対応できるようになる。特に、駆動装置が誘電アクチュエータ130であるため、模擬血管152の動作速度、すなわち応答性を高めることができ、子供などの脈拍数の高い患者を模擬した手術訓練に対応できるようになる。したがって、より多くのバリエーションの手術訓練に対応することが可能となる。
【0066】
(6)模擬血管152が固定された上側台座153を備えている。誘電アクチュエータ130は、シート状をなしており、上側台座153に固定されている。
こうした構成によれば、シート状の誘電アクチュエータ130を介して上側台座153が伸縮するとともに、上側台座153に固定された模擬血管152が伸縮するようになる。したがって、脈動を模擬した態様にて模擬血管152を容易に動作させることができる。
【0067】
<第3実施形態>
以下、
図10~
図13を参照して、第3実施形態について、第1実施形態との相違点を中心に説明する。第1実施形態では、模擬体50を下方に向けて変位させる駆動力として主として付勢部材27(コイルばね)の付勢力を利用しているのに対し、本実施形態では上記駆動力として模擬体に働く重力のみを利用している点で相違している。なお、第1実施形態と同一または対応する構成については、第1実施形態の構成の符号に対して「200」を加算した符号を付すことにより重複する説明を省略する。
【0068】
図10及び
図11に示すように、駆動装置220は、いずれも平面視正方形板状をなし、上下に重ね合わされた状態で互いに固定された下側枠部材223及び上側枠部材224からなる枠部材222を備えている。
【0069】
枠部材223,224は、平面視角丸正方形状の中心孔223a,224aを有している。
下側枠部材223の4つの角部には、下方に向かって延在する4つの支持部材221が設けられている。
【0070】
図10に示すように、上側枠部材224の中心孔224aの内周縁のうち上側枠部材224の正方形の対角上に位置する一対の隅部には、一対の凹部224A,224Bが設けられている。
【0071】
また、下側枠部材223の中心孔223aの内周縁のうち下側枠部材223の正方形の対角上であって、上側枠部材224の一対の凹部224A,224Bが位置する対角上とは異なる対角上に位置する一対の隅部には、一対の凹部(図示略)がそれぞれ設けられている。
【0072】
図10及び
図11に示すように、下側枠部材223と上側枠部材224との間には、平面視略正方形の柔軟なシート状の誘電アクチュエータ230の周縁部が接着剤を介して固定されている。
【0073】
図12及び
図13に示すように、誘電アクチュエータ230は、第1実施形態の誘電アクチュエータ30と同様なエラストマー製圧電素子である。誘電アクチュエータ230は、誘電層231及び誘電層231を挟む一対の電極層(正電極層232、負電極層233)をそれぞれ有し、同一面上に配置された2つの駆動層230A,230Bと、2つの駆動層230A,230Bをその厚さ方向の両側から挟むとともに各駆動層230A,230Bに共通の絶縁層234とを備えている。なお、絶縁層234は透明であることから、
図10及び
図12において絶縁層234の内部に位置する駆動層230A,230Bを実線にて示している。
【0074】
図10及び
図12に示すように、駆動層230A(230B)は、中心孔223aの内周縁よりも内周側に位置するとともに同内周縁に沿って延在する略U字状の外周縁部235A(235B)と、外周縁部235A(235B)の両端P1,P2(P3,P4)間にて直線状に延在する対向縁部236A(236B)とを有している。駆動層230A,230Bの対向縁部236A,236B同士は間隔をおいて対向している。
【0075】
図13に示すように、誘電アクチュエータ230の外周縁部、及び駆動層230A,230B同士の間の部分は、絶縁層234のみで構成されている。
図10及び
図12に示すように、駆動層230Aの外周縁部235Aのうち上側枠部材224の凹部224Aに対応する部分には、正電極層232が外周側に突出した突片232Aが設けられている。また、駆動層230Aの外周縁部235Aのうち下側枠部材223の凹部(図示略)に対応する部分には、負電極層233が外周側に突出した突片233Aが設けられている。
【0076】
駆動層230Bの外周縁部235Bのうち上側枠部材224の凹部224Bに対応する部分には、正電極層232が外周側に突出した突片232Bが設けられている。また、駆動層230Bの外周縁部235Bのうち下側枠部材223の凹部(図示略)に対応する部分には、負電極層233が外周側に突出した突片233Bが設けられている。
【0077】
各突片232A,233A(232B,233B)には、誘電アクチュエータ230の駆動態様を制御する制御装置との接点が設けられる。
図10~
図12に示すように、誘電アクチュエータ230の上面の中心部には、模擬体250が固定されている。
【0078】
模擬体250は、中心孔223aの内周縁よりも小さい平面視正方形の柔軟なシート状をなす模擬心筋251と、模擬心筋251の上面における幅方向の中央部に固定され、模擬心筋251の長さ方向に沿って延びる円筒状の模擬血管252とを有している。模擬心筋251及び模擬血管252はいずれもシリコーンエラストマーなどの弾性部材により形成されている。
【0079】
模擬心筋251全体が、互いに隣り合う2つの駆動層230A,230Bに跨る態様にて重ね合わされた状態で支持されている。本実施形態では、模擬心筋251が接着剤を介して絶縁層234上に固定されている。模擬体250は、実質的に誘電アクチュエータ230の張力のみで支持されている。
【0080】
なお、模擬体250の厚さは例えば2mmである。
ここで、誘電アクチュエータ230としては、誘電アクチュエータ230における模擬体250が配置される直径20mmの領域内に対して10gの荷重を加えた場合に、当該領域の下方への変位量が1~100mmとなる弾性特性を有することが好ましい。本実施形態の誘電アクチュエータ230は、当該領域の下方への変位量が約10mmとなる弾性特性を有している。
【0081】
また、誘電アクチュエータ230のヤング率としては、1~3MPaであることが好ましい。
以上説明した本実施形態に係る手術訓練装置によれば、第1実施形態の効果(1),(2)に加えて、新たに以下に示す効果が得られるようになる。
【0082】
(7)誘電アクチュエータ230及び模擬体250は共に柔軟なシート状をなしている。模擬体250全体が、誘電アクチュエータ230上に重ね合わされた状態で支持されている。
【0083】
模擬体が厚く、硬い場合には、動作中の模擬体の一部をピンセットで押えるなどすると、模擬体全体の動作が抑制されることとなる。そのため、模擬体の動作を心臓の実際の伸縮運動に近づけることができないおそれがある。
【0084】
この点、上記構成によれば、動作中の模擬体250のいずれの箇所をピンセットで押えた場合であっても、模擬体250のその他の部分が柔軟なシート状をなす誘電アクチュエータ230と共に動作し続けることとなる。また、模擬体250をピンセットで押えた力により誘電アクチュエータ230が伸びることで、模擬体250に対して力が加えられる箇所が移動する。したがって、模擬体250の動作を心臓の実際の伸縮動作に近づけることができる。
【0085】
(8)誘電アクチュエータ230は、誘電層231及び誘電層231を挟む電極層232,233をそれぞれ有し、同一面上に配置された2つの駆動層230A,230Bと、2つの駆動層230A,230Bをそれらの厚さ方向の両側から挟むとともに2つの駆動層230A,230Bに共通の絶縁層234とを備えている。模擬体250は、互いに隣り合う2つの駆動層230A,230Bに跨る態様にて絶縁層234上に設けられている。
【0086】
こうした構成によれば、2つの駆動層230A,230Bが模擬体250の互いに異なる箇所に対して力を作用させることが可能となる。このため、制御装置により各駆動層230A,230Bの動作態様を互いに異ならせるようにすれば、模擬体250を複雑なパターンで動作させることができるようになる。したがって、模擬体250の動作を心臓の実際の伸縮動作に一層近づけることができる。
【0087】
<変形例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0088】
・第1実施形態では、3つの駆動装置20A,20B,20Cを備えた手術訓練装置について例示したが、駆動装置の数を4つ以上にすることもできるし、2つまたは1つにすることもできる。
【0089】
・付勢部材27を省略することもできる。
・第1実施形態では、各駆動装置20A,20B,20Cにおいて、2枚の誘電アクチュエータ30を、上下に間隔をおいて配置したが、3枚以上の誘電アクチュエータ30を、上下に間隔をおいて配置することもできる。また、複数の誘電アクチュエータ30を隙間なく多数(例えば50枚)積層することにより駆動装置を構成すれば、付勢部材27を省略できる。また、1枚の誘電アクチュエータ30によって駆動装置を構成することもできる。
【0090】
・第3実施形態では、2つの駆動層230A,230Bを備える誘電アクチュエータ230について例示したが、誘電アクチュエータは3つ以上の駆動層を備えるものであってもよいし、1つの駆動層を備えるものであってもよい。
【0091】
・誘電層31,231を構成する誘電エラストマーはポリロタキサンに限定されるものではなく、シリコーンエラストマーやアクリルエラストマー、ウレタンエラストマーなどの他の誘電エラストマーを採用することもできる。
【0092】
・電極層32,33,232,233を構成する導電エラストマーの絶縁性高分子はポリロタキサンに限定されるものではなく、シリコーンエラストマー、アクリルエラストマー、ウレタンエラストマーなどの他の絶縁性高分子を採用することもできる。また、これら絶縁性高分子のうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0093】
・電極層32,33,232,233を構成する導電エラストマーの導電性フィラーはケッチェンブラックに限定されるものではなく、その他のカーボンブラックや、銅や銀などの金属粒子を採用することもできる。また、これら導電性フィラーのうちの一種を用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
【0094】
・駆動装置は、シート状の誘電アクチュエータを備えるものに限定されず、シート状の誘電アクチュエータが筒状に丸められた筒形のものであってもよい。この場合、駆動装置はその軸線方向に沿って伸縮する。
【0095】
・駆動装置は、誘電アクチュエータを備えるものに限定されない。他に例えば、イオン交換ポリマーメタル複合体(IPMC:Ionic Polymer Metal Composite )などの他の電場応答性高分子アクチュエータ(EPA:Electroactive Polymer Actuator)を採用することもできる。
【0096】
・本発明に係る手術訓練装置は、拍動下での冠動脈バイパス手術の訓練に用いられるものに限定されず、カテーテル手術など心臓以外の伸縮動作する生体組織を対象とした手術の訓練に用いることもできる。
【符号の説明】
【0097】
10…支持機構、11…脚部材、12…下側部材、13…上側部材、13a…球状部、14…ユニバーサルジョイント、15…支持プレート、16…保持プレート、20A,20B,20C,220…駆動装置、21A,21B,21C,221…支持部材、22A,22B,22C,222…枠部材、23,223…下側枠部材、24,224…上側枠部材、23a,223a,24a,224a…中心孔、25A,25B,25C…ボルト(出力部材)、26…ナット、27…付勢部材、28…スペーサ、30,130,230…誘電アクチュエータ、30a…貫通孔、31,231…誘電層、32,232…正電極層、33,233…負電極層、34,234…絶縁層、40…底壁、50,150,250…模擬体、51,151,251…模擬心筋(伸縮動作する生体組織)、52,152,252…模擬血管、60,160…制御装置、61…電源、62…制御部、63…プラス端子、64…接地端子、224A,224B…凹部、230A,230B…駆動層、232A,232B,233A,233B…突片、235A,235B…外周縁部、236A,236B…対向縁部。