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7032778建物の天井部及びこれに使用する吊り具並びに天井部用空調設備
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】建物の天井部及びこれに使用する吊り具並びに天井部用空調設備
(51)【国際特許分類】
   E04B 9/00 20060101AFI20220302BHJP
   F24F 5/00 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
E04B9/00 H
E04B9/00 K
F24F5/00 101B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2017164484
(22)【出願日】2017-08-29
(65)【公開番号】P2019044329
(43)【公開日】2019-03-22
【審査請求日】2020-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000143972
【氏名又は名称】株式会社ササクラ
(74)【代理人】
【識別番号】100099966
【弁理士】
【氏名又は名称】西 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134751
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 隆一
(72)【発明者】
【氏名】前羽 誠
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-117315(JP,A)
【文献】特開2014-072077(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0082252(US,A1)
【文献】特開平10-144130(JP,A)
【文献】特開平03-145001(JP,A)
【文献】特開2010-101603(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/00-9/36
E04B 1/76,1/86
F24F 5/00
F21V 21/04
F21Y 115/10,115/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視矩形の天井材と、前記天井材の一側縁に沿って長く延びる吊り具とを有しており、
前記天井材は、前記吊り具の長手方向と直交した水平方向から見て下面が凹凸形状になっており、このため、前記天井材の下面には、前記吊り具の長手方向と直交した方向の全長に亙って延びる多数の下向き溝条が並列状に形成されている一方、
前記吊り具は、前記天井材の一側縁が載る水平状のフランジと、前記フランジから立ち上がった垂直部とを有しており、前記天井材における多数の下向き溝条の端部が前記フランジの上に位置している構成であって、
前記吊り具の垂直部又はフランジに、前記フランジの上の空間から前記天井材の各下向き溝条に向けて光を水平方向に照射する発光素子が配置されている、建物の天井部。
【請求項2】
平面視矩形で下面は直線状の下向き溝条の群が並設された凹凸面になっている天井材を、前記各下向き溝条の端部が位置する一側縁の箇所において吊支する吊り具であって、
前記天井材の一側縁が載るフランジと、前記フランジから立ち上がった垂直部とを有しており、前記垂直部又はフランジに、前記天井材を支持した状態で前記フランジの上の空間から前記天井材の各下向き溝条に向けて光を水平方向に照射する発光素子が配置されている、
天井材用の吊り具。
【請求項3】
天井材としての平面視矩形の放射パネルと、前記放射パネルの一側縁に沿って長く延びる吊り具とを備えており、
前記放射パネルは、下面に下向き突条と下向き溝条とが交互に存在する放射プレートと、前記放射プレートに設けた流体通路とを有していて、前記下向き突条及び下向き溝条は、前記吊り具の長手方向と直交した方向の全長に亙って延びている一方、
前記吊り具は、前記放射パネルの一側縁が載るフランジと、前記フランジから立ち上がった垂直部とを有しており、前記天井材における多数の下向き溝条の端部が前記フランジの上に位置している構成であって、
前記吊り具の垂直部又はフランジに、前記フランジの上の空間から前記放射パネルの各下向き溝条に向けて光を水平方向に照射する発光素子が配置されている、天井部用空調設備。
【請求項4】
前記発光素子はLED又は有機ELであり、前記吊り具における垂直部の側面又はフランジの上面に設けている、
請求項1に記載した天井部。
【請求項5】
前記発光素子はLED又は有機ELであり、前記垂直部の側面又はフランジの上面に設けている、
請求項2に記載した天井材用の吊り具。
【請求項6】
前記発光素子はLED又は有機ELであり、前記吊り具における垂直部の側面又はフランジの上面に設けている、
請求項3記載した天井部用空調設備。
【請求項7】
前記発光素子は、前記天井材の各下向き溝条に対応した箇所に設けている、
請求項1又は4に記載した天井部。
【請求項8】
前記発光素子は、前記天井材の各下向き溝条に対応した箇所に設けている、
請求項2又は5に記載した天井材用の吊り具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、天井材を吊り具で吊支した構造の天井部及びこれに使用する吊り具、並びに、放射パネルを吊り具で吊支した構造の天井部用空調設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱媒体として水のような液体(流体)を使用して、液体で冷却又は加温された放射パネルによって冷房や暖房を行う放射空調設備(放射空調システム)があり、この空調設備は、騒音がなくて快適性に優れる等の利点があって広く普及している。
【0003】
放射パネルには様々の形態があるが、例えば特許文献1に開示されているように、下面を、山と溝(谷)とが交互に並んだ凹凸形状に形成したものがあり、このタイプの放射パネルは、平坦な構造に比べて伝熱面積が大きいため、空調効率を向上できる利点がある。
【0004】
また、この種の放射パネルは平面視矩形に形成されていて、多数枚が縦横に整列して敷設されているが、敷設するに当たって、例えば放射パネルが長方形であると、多数枚の放射パネルを、長辺同士は互いに当接して、短辺間には隙間が空くようにして配置し、短辺部をTバーと呼ばれる吊り具で支持している。天井部の施工において、Tバーを使用した支持構造は軽天構造の天上部などで広く行われており、放射パネルの支持構造は、一般的な天井部の構造を踏襲したものである。
【0005】
Tバーを使用して天井部を構成した場合、一つの問題として、人が天井面を見上げたときに、天井材とTバーとの素材の違いによって違和感を受けることがある。この点について特許文献2には、天井材とTバーとにスパッター塗装を施して両者の見え方を共通化することが開示されている。
【0006】
また、特許文献3には、Tバーのフランジと天井材との間の隙間に影が生じることを防止するため、Tバーのフランジを下方から透明なカバー部材で覆い、カバー部材の両長手縁部に、天井材下面に向いた上向き片を突出させて、透明な上向き片(透明部)で隙間を塞ぐことによって影の発生を防止することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2008-275227号公報
【文献】特開平10-68191号公報
【文献】特開2006-282005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
図8は、特許文献1のように下面が凹凸に形成された放射パネル1′をTバー12′で支持した構造を示している。この構造において、放射パネル1′は、下向き突条4′の下端がTバー12′のフランジ13′で支持されるため、下向き溝条20′がTバー12′の垂直部14′に向けて入り込んでいるが、室内の照明は放射パネルにおける各下向き溝条20′の端部には届かないため、(B)にドットで示すように、各下向き溝条20′の端部が影Sとして現れており、このため、人が天井部を見上げたときに、影SがTバー12′の長手方向に沿って点々と現れ、人が違和感を持つことが懸念される。
【0009】
特許文献3でも、Tバーのフランジと天井材との間に影ができることを問題としており、そこで、図8において生じる影Sを特許文献3の手段で解消することが考えられるが、放射パネル1′の下向き溝条20′の上下深さはかなり大きいため、透明なカバー部材の上向き片で下向き溝条20を塞いだ程度では影の発生を防止できるとは言い難く、単に、カバーの上向き片を介して下向き溝条20′が暗いトンネルのように見えてしまうことが懸念される。
【0010】
本願発明は、このような現状を契機にして成されたものであり、人が見上げても違和感のない天井部の構造を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願発明は様々な構成を含んでおり、その典型を各請求項で特定している。このうち請求項1の発明は建物の天井部に適用したものであり、
「平面視矩形の天井材と、前記天井材の一側縁に沿って長く延びる吊り具とを有しており、
前記天井材は、前記吊り具の長手方向と直交した水平方向から見て下面が凹凸形状になっており、このため、前記天井材の下面には、前記吊り具の長手方向と直交した方向の全長に亙って延びる多数の下向き溝条が並列状に形成されている一方、
前記吊り具は、前記天井材の一側縁が載る水平状のフランジと、前記フランジから立ち上がった垂直部とを有しており、前記天井材における多数の下向き溝条の端部が前記フランジの上に位置している」
という構成において、
「前記吊り具の垂直部又はフランジに、前記フランジの上の空間から前記天井材の各下向き溝条に向けて光を水平方向に照射する発光素子が配置されている」
という構成を備えている。
【0012】
請求項2の発明は、天井材用の吊り具に適用したものである。すなわち、
平面視矩形で下面は直線状の下向き溝条の群が並設された凹凸面になっている天井材を、前記各下向き溝条の端部が位置する一側縁の箇所において吊支する
吊り具に関するものであり、
前記天井材の一側縁が載るフランジと、前記フランジから立ち上がった垂直部とを有しており、前記垂直部又はフランジに、前記天井材を支持した状態で前記フランジの上の空間から前記天井材の各下向き溝条に向けて光を水平方向に照射する発光素子が配置されている」
という構成になっている。
【0013】
請求項3の発明は、天井部用空調設備に関する。この天井部用空調設備は、
天井材としての平面視矩形の放射パネルと、前記放射パネルの一側縁に沿って長く延びる吊り具とを備えており、
前記放射パネルは、下面に下向き突条と下向き溝条とが交互に存在する放射プレートと、前記放射プレートに設けた流体通路とを有していて、前記下向き突条及び下向き溝条は、前記吊り具の長手方向と直交した方向の全長に亙って延びている一方、
前記吊り具は、前記放射パネルの一側縁が載るフランジと、前記フランジから立ち上がった垂直部とを有しており、前記天井材における多数の下向き溝条の端部が前記フランジの上に位置している」
という基本構成において、
「前記吊り具の垂直部又はフランジに、前記フランジの上の空間から前記放射パネルの各下向き溝条に向けて光を水平方向に照射する発光素子が配置されている」
という構成が付加されている。
【0014】
請求項4~6の発明では、前記発光素子はLED又は有機ELであり、前記吊り具における垂直部の側面又はフランジの上面に設けている。請求項7,8では、前記発光素子は、前記天井材の各下向き溝条に対応した箇所に設けている。
【0015】
【0016】
本願発明では、発光素子の光で下向き溝条が照らされるため、下向き溝条の箇所に影が発生してもこれを確認(視認)し難くできるか、或いは、下向き溝条の箇所の影に発生することを防止又は抑制できる。
【0017】
従って、人が天井を見上げたときに影が目に入って違和感を持つことを防止して、美観を向上できる。また、本願発明では、発光素子は室内の照明の役割も果たし得るため、室内の明るさの調節などにも貢献できる。
【0018】
なお、発光素子の光が強すぎると、発光素子の光が違和感の原因になるおそれがあるが、発光素子の光を室内の主照明の下で目立たない程度の照度に設定しておくことにより、違和感のない状態を作り出すことができる。発光素子の照度を調節できるようにしておいてもよい。
【0019】
本願発明では、光はフランジの上の空間から照射されるため、下向き溝条を奥から照らすことになって、影の発生を確実に防止できる。また、発光素子の光が人目に直接当たることはなくて間接照明になるため、室内の照明の補助として特に好適であるといえる。例えば、プロジェクタを使用するために室内の照度を落す場合など、本願発明の発光素子のみを点灯させることにより、室内の照度を均等に落すことができる。
【0020】
請求項7,8のように、各下向き溝条に対応して発光素子を設けると、影の発生防止の確実性を格段に向上できる。また、間接照明機能も向上できる。
【0021】
本願発明において、天井材は単なる天井板であってもよいが、請求項3のように天井部用空調設備に適用すると、下面が凹凸形状の放射パネルを使用して空調効率を高めつつ美観を向上できて好適である。なお、発光素子の群は、全体をON・OFFする構成でもよいし、各天井材の箇所ごとにON・OFFできるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】実施形態に係る建物の室内の斜視図である。
図2】(A)は放射パネルの平面図、(B)は(A)のB-B視図である。
図3】第1実施形態の天井部の部分的な平面図である。
図4】(A)は天井部の要部拡大平面図、(B)は図3のB-B視断面図、(C)は図3のC-C視断面図である。
図5】(A)は上から見た分離斜視図、(B)は下方から見た斜視図である。
図6】(A)は第1参考例の斜視図、(B)は第2参考例の底面図、(C)は第3参考例の側面図、(D)は第4参考例の側面図である。
図7】(A)は第実施形態の縦断側面図、(B)は第実施形態の縦断側面図、(C)は第5参考例の側面図、(D)は第実施形態の側面図である。
図8】従来構造を示す斜視図で、(A)はTバーを一点鎖線で表示したもの、(B)Tバーを実線で表示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
(1).第1実施形態
次に、本願発明の実施形態(及び参考例)を図面に基づいて説明する。本実施形態は、放射パネルを有する天井部用空調設備に適用している。すなわち、天井材として放射パネルが使用されている。まず、図1図5に示す第1実施形態を説明する。
【0024】
図1,2で建物と空調設備との概略を表示しているが、これらの図のとおり、室の天井部は、前後左右(縦横)に整列して配置された多数枚の放射パネル1を備えている。放射パネル1の構造は従来と同様であるが、念のため、説明しておく。
【0025】
図2に明示するように、放射パネル1は平面視長方形の形態であり、その多数枚を、長辺を互いに当接させた状態で前後に並べて配置することによって放射パネル列を形成し、左右に隣り合った放射パネル列の間には、ある程度の間隔(隙間、空間)が空いている。なお、図2では、前後に隣り合った放射パネル1の長辺間に若干の隙間を描いているが、実際には、隣り合った放射パネル1の長辺同士は当接している。
【0026】
本実施形態では、上記のとおり、方向を特定するため前後・左右の文言を使用するが、放射パネル1の短辺に沿った方向を前後方向、放射パネル1の長辺に沿って方向を左右方向として定義している(これらの方向は、説明のための便宜的なものである。)。正面視は前後方向から見た状態であり、側面視は左右方向から見た状態である。念のため、図1,2に方向を明記している。
【0027】
図2図3に示すように、放射パネル1は、前後方向に並列配置された6枚の放射プレート2と、その上面に装着されたパイプ3とで構成されている。従って、本実施形態では、パイプ3によって流体通路が形成されている。
【0028】
放射プレート2は左右長手の細長い形態であり、放射パネル1としても、上記したように左右長手の長方形に形成されている。各放射プレート2には、半円状の下向き突条4が左右に並んで3列形成されている。従って、各放射プレート2の下面は、左右長手の下向き突条4と下向き溝条20とが前後に交互に並んだ側面視で凹凸形状になっていると共に、放射パネル1としても側面視で凹凸形状になっている。
【0029】
図4(C)のとおり、各放射プレート2において、前後の長手側縁のうち一方の長手側縁は段上がり部2aになって、他方の長手側縁は段落ち部2bになっており、前後に隣り合った段上がり部2aと段落ち部2bとを重ね合わせることにより、放射パネル1は全体として1枚板のような外観を呈している。
【0030】
他方、図2のとおりパイプ3は平面視でジグザグに曲げられており、パイプ3の直線部が、各放射プレート2における中央部の下向き突条4に嵌まっている。各放射プレート2における中央部の下向き突条4には、パイプ3を抱持する上向きリブ5を形成している。従って、パイプ3は、上向きリブ5を弾性変形させて下向き突条4に嵌め込まれる(強制嵌合される。)。
【0031】
パイプ3のうちU形に曲がった部分は、下向き突条4の上に露出している。また、パイプ3の一端部3aと他端部3bとは、図2のとおり、放射プレート2の一短辺部と平行に延びるように曲げられており、一端部3aと他端部3bとは反対方向に向いている。そして、前後に隣り合った一方の放射パネル1におけるパイプ3の一端部3aと、他方の放射パネル1におけるパイプ3の他端部3bとが、図2に点線で表示したジョイントパイプ6で接続されている。
【0032】
パイプ3には、前後長手の押さえフレーム7が上から重なっている。押さえフレーム7は下向きに開口したコ字形の形態であり(図2参照)、その前後側板に切り開き係合溝8を飛び飛びで複数形成している一方、放射プレート2の前後長手側縁には、切り開き係合溝8に嵌合する係合リブ9を一体に形成しており、係合リブ9の先端縁に形成した爪を切り開き係合溝8の段部に係合させることにより、押さえフレーム7によってパイプ3を放射プレート2に押さえ保持すると共に、6枚の放射プレート2を1枚板状に連結している。
【0033】
図4(C)に示すように、押さえフレーム7のうちパイプ3に当たる部分は、下向き開口の台形状に切欠いている。押さえフレーム7は、放射パネル1の左右両端寄り部位と左右中間部とに3本配置しており、中間部に位置した押さえフレーム7における天板の前後両端寄り部位の下面に、ナット10を溶接によって固定している。なお、押さえフレーム7の配置本数は任意に設定できる。そして、図示は省略するが、天井スラブ(図示せず)から直接に又は中間部材を介して垂下した吊りボルト(図示せず)をナット10に螺合することにより、押さえフレーム7が吊支されている。
【0034】
放射プレート2は、アルミ等の金属や樹脂を材料にした押し出し加工品を採用しているが、樹脂を材料にした射出成形品や、金属ダイキャスト品、金属焼結加工品、或いは板金加工品など、様々な素材・態様のものを採用できる。放射パネル1を1枚の放射プレート2で構成することも可能である。
【0035】
(2).吊り具
前後に並んだ多数の放射パネル1によって放射パネル列が構成されており、複数列の放射パネル列が左右に並んでいるが、例えば図4(A)(B)に示すように、左右に隣り合った放射パネル列の間には間隔(空間)が空いており、この箇所に吊り具(Tバー)12を配置している。また、吊り具12は、左右の右の端に位置した放射パネル1の外側にも配置されている。
【0036】
図4(B)に明示するように、吊り具12は、水平状の左右フランジ13と、その長手中心線の箇所から一体に立ち上がった垂直部14とを有しており、フランジ13によって放射パネル1の一側縁(短手端部)が下方から支持されている。従って、フランジ13は放射パネル1を吊支する機能と、隣り合った放射パネル1の短手端部間の隙間を塞ぐ目地の機能とを有している。吊り具12は、アルミ等の金属又は合成樹脂を材料にした押し出し加工品を採用しているが、板金加工品なども採用できる。
【0037】
吊り具12における垂直部14の上端には厚肉部15が形成されており、前後長手の中間吊り板16の下端に形成した抱持部17で厚肉部15を抱持し、中間吊り板16を、吊りボルト18及びナット19によって吊支している。
【0038】
放射パネル1の一側縁(短手側縁)と吊り具12の垂直部14との間には、ある程度の間隔(例えば、数mm~十数mm)の隙間が空いている。また、放射プレート2の下面は側面視で凹凸になっているため、吊り具12のフランジ13に載るのは下向き突条4の下端のみであり、従って、放射プレート2の短辺部と吊り具12のフランジ13との間には、前後に並んだ下向き突条4で挟まれた多数の下向き溝条20が形成されている。下向き溝条20は、上面を平坦面として前後両側を湾曲傾斜面と成しており、台形に近い形態になっている。
【0039】
そこで、図4,5に示すように、吊り具12における垂直部14の前後両側面に、回路基板21を介してLED22を配置している。回路基板21は、垂直部14に接着剤又は両面粘着テープで接着しているが、ビス止め等の他の手段で固定してもよい。LED22は放射パネル1の各下向き溝条20箇所に位置するように、回路基板21に飛び飛びで多数搭載されており、光の照射方向は下向き溝条20を向いている。
【0040】
従って、図5(B)に模式的に示すように、放射パネル1の各下向き溝条20がLED22から水平方向に照射された光によって奥から照らされる。これにより、室内用の照明によって下向き溝条20の箇所に影ができることはなくて、人が天井を見上げても違和感を持つことはない。
【0041】
本実施形態では、LED22は室内用の間接照明としても機能している。従って、例えば室内でプロジェクタを使用する場合など、室内全体の照度を落としたい場合は、本願発明のLED22のみを点灯しておくことにより、所望の雰囲気を作り出すことができる。また、LED22は一般に12ボルトの直流電流で駆動されるので、予備電源としてバッテリーを用意しておくことにより、停電時の非常灯として機能させることも可能である。LED22の照度を可変式に構成することも可能である。
【0042】
LED22の照度は、人が違和感を持つことがない程度に設定しているが、人が天井を見上げてもLED22の光が直接目に入ることはないため、室内照明を補助するようにある程度の照度を確保していても、人が違和感を持つことはない。
【0043】
LED22は、吊り具12の垂直部14に直接取り付けることも可能であるが、実施形態のように回路基板21を使用すると、取付けが簡単であり、既存の吊り具12にも簡単に適用できる利点がある。なお、回路基板21を使用する場合、適宜の長さのものを直列に配置したらよい。
【0044】
(3).図6参考例
次に、図6に示す参考例を説明する。図6(A)に示す第1参考例及び図6(B)に示す第2参考例では、LED22は、回路基板21を介してフランジ13の下面に配置されている。この場合、(A)の第1参考例では、LED22はフランジ13の長手中心線に沿って一列だけ配置されており、(B)の第2参考例では、フランジ13の左右長手縁部に寄せて2列形成している。LED22は、光の照射角度ができるだけ大きい(例えば180度程度)のが好ましい。
【0045】
この参考例では、LED22の群により、フランジ13の下面の外側にはみ出た状態で光の帯が形成されるため、下向き溝条20の箇所に影が発生していても、影は光の帯に隠れた状態になっていて、人が見上げても影を認識することはできない。従って、この参考例でも、影に起因して人が違和感を持つことを防止できる。
【0046】
また、LED22の光の一部が下向き溝条20に向かうため、下向き溝条20の箇所で影ができることを防止又は抑制することも可能である。特に、(B)の第2参考例のようにフランジ13の長手縁に寄せてLED22を配置すると、照射光は回折によって下向き溝条20に向かうため、影の発生の防止機能が高いと云える。
【0047】
図6(C)(D)では、LED22を、光が横向きに照射される状態でフランジ13の下面部に配置している。このうち(C)に示す第3参考例では、左右の横向き溝23を有する合成樹脂製等のホルダー部材24をフランジ13の下面に接着等で固定し、ホルダー部材24の横向き溝23にLED22を配置している。
【0048】
他方、(D)に示す第4参考例では、吊り具12が押し出し加工されていることを利用して、フランジ13の下面部に横向き溝23を一体に形成して、この横向き溝23にLED22を配置している。いずれにおいても、LED22は回路基板21に搭載しているが、LED22を単体で取付けてもよい。これら(C)(D)の参考例では、光が横向きに照射されるため、下向き溝条20の照射を促進して影の発生を一層的確に防止できる。また、間接照明機能も向上できる。
【0049】
(4).図7の実施形態・参考例
図7(A)に示す第実施形態では、垂直部14に、回路基板21を上下から抱持する上下のホルダー部材24を一体に形成している。この実施形態では、回路基板21の取付けが簡単であると共に、LED22の前後位置の変更を簡単に行える利点がある。
【0050】
図7(B)に示す第実施形態では、垂直部14のうち放射パネル1よりも高い部位に横向きリップ25を一体に設けて、横向きリップ25の下面に、回路基板21を介してLED22を配置している。LED22の光は下向きに照射されて、垂直部14及びフランジ13によって反射して下向き溝条20に向かう。従って、影を防止する機能は万全である。
【0051】
この実施形態では、LED22は放射パネル1よりも高い位置に配置されているので、放射パネル1と垂直部14との間に僅かの隙間しかない場合でも、影の発生をしっかりと防止できる。この場合、一点鎖線で示すように、垂直部14の側面とフランジ13の上面とのちいずれか一方又は両方に反射テープ26を貼着しておくと、光の反射・散乱を促進して、影の発生を一層的確に防止できる。
【0052】
なお、反射テープ26などによって光をフランジ13の箇所で強く反射・散乱させ得る場合は、LED22は必ずしも各下向き溝条20に対応して設ける必要はない。従って、LED22の位置決めは不要であり、このため施工が容易である。第1実施形態でも、本実施形態と同様にフランジ13の上面に反射テープ26を貼着しておくと、1つのLED22で複数の下向き溝条20を照らすことができるので、LED22を正確に位置決めする必要はない。
【0053】
図7のうち(C)に示す第5参考例と(D)に示す第実施形態では、吊り具12に、フランジ13を抱持する樹脂製のブラケット材27を脱落不能に装着して、ブラケット材27にLED22を取り付けている。すなわち、ブラケット材27は、フランジ13を下方から抱持する断面C形であり、このうち(C)の第5参考例では、ブラケット材27の長手側縁の下端に横向き張り出し部27aを形成して、これにLED22を搭載している。LED22は横向き張り出し部27aに直接搭載しているが、回路基板21を介して取付けてもよい。
【0054】
この第5参考例では、LED22の光は上向きに照射されるため、影の発生を確実に防止できる。LED22は必ずしも各下向き溝条20に対応させる必要はなく、複数の下向き溝条20を1つのLED22で照らすことも可能である(この場合も、横向き張り出し部27aの上面に反射テープを貼ったり金属色の塗装を施したりすると有益である。)。
【0055】
(D)に示す第実施形態では、ブラケット材27の上片27bに、垂直部14に重なった蟻溝状抱持部27cを一体に設けて、蟻溝状抱持部27cに回路基板21を装着している。従って、第1実施形態や図7(A)の第実施形態と同様に、LED22は垂直部14の側面部に配置されている。
【0056】
これら(C)(D)の参考例及び実施形態は、既存の吊り具12にも容易に適用できる利点がある。なお、(C)(D)の参考例及び実施形態では、放射パネル1は、ブラケット材27の上片27bを介してフランジ13で支持される。従って、仮に火災でブラケット材27が消失しても、放射パネル1が落下することはない。
【0057】
本願発明は、以上の実施形態の他にも様々に具体化できる。例えば、LEDをフランジの上面に配置することも可能である(この場合は、図7(C)のようなブラケット材27を使用することにより、LEDの位置を容易に調節できるようにしておくのが好ましい。)。また、上記の実施形態は天井部用空調設備に適用したが、空調機能を持たない天井部及びそのための吊り具(Tバー)にも適用できる。
【0058】
発光素子としては、シート状等の有機ELを使用することも可能であるし、LEDと有機ELとを併用することも可能である。有機ELを使用すると、例えば垂直部の側面に貼着して面発光させることができるため、影の防止の確実性に優れると共に、施工性にも優れている。
【0059】
実施形態では、放射パネルの流体通路をパイプで構成したが、流体通路をプレートに一体形成することも可能である。また、対象になる天井材は、少なくとも下面が凹凸形状であればよいのであり、上面はフラットであっても本願発明の対象になる。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本願発明は、天井部用空調設備等に具体化できる。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0061】
天井材を構成する放射パネル
2 放射プレート
3 流体通路を構成するパイプ
4 下向き突条
12 吊り具(Tバー)
13 水平状のフランジ
14 垂直部
20 放射パネルの下向き溝条
21 回路基板
22 LED
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8