(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】顕微鏡用照明器具
(51)【国際特許分類】
G02B 21/06 20060101AFI20220302BHJP
G02B 21/24 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
G02B21/06
G02B21/24
(21)【出願番号】P 2018034986
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2020-12-18
(73)【特許権者】
【識別番号】517105788
【氏名又は名称】株式会社大一電機
(74)【代理人】
【識別番号】100155882
【氏名又は名称】齋藤 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100154678
【氏名又は名称】齋藤 博子
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 昭一
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 雅一
(72)【発明者】
【氏名】角屋 徹
(72)【発明者】
【氏名】村井 大
【審査官】森内 正明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭60-118115(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第105044896(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 - 21/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象物を載置する架台及び前記架台から垂直に延びる支柱を備え前記支柱に対して昇降移動する観察光学系を有する顕微鏡に取付可能であり、前記観察対象物を照明するための顕微鏡用照明器具であって、
前記観察対象物を照明する光源と、
前記光源が一方の端部に固定された棒部と、
前記棒部を前記顕微鏡に取付可能な取付部と
、
前記棒部を前記観察光学系の昇降方向に移動可能とする移動機構と、を備え、
前記棒部は、
フレキシブルチューブによって構成され、前記フレキブルチューブの内部に挿入された電線を介して前記光源に電気を供給し、
前記移動機構は、前記取付部に形成された第1の条溝と、前記第1の条溝に対向配置された押圧部に設けられるとともに前記第1の条溝に対向する第2の条溝とを備え、
前記第1の条溝及び前記第2の条溝によって前記棒部を保持することを特徴とする顕微鏡用照明器具。
【請求項2】
前記観察対象物に対する角度が変更可能な角度変更機構をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の顕微鏡用照明器具。
【請求項3】
前記取付部は、前記顕微鏡の昇降移動する部材に取り付けられることを特徴とする請求項1または2記載の顕微鏡用照明器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、観察対象物を照明するために顕微鏡に取付可能な照明器具に関し、特に架台に対して観察光学系が相対移動可能な顕微鏡に取付可能な照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、架台に対して観察光学系が昇降移動可能となっている顕微鏡は一般的に知られている。特許文献1に記載された顕微鏡は、架台と、焦点調節柱と、焦点調節アームとを備える顕微鏡用スタンドと、顕微鏡用スタンドに着脱可能に固定される観察光学系とを備える。観察光学系は、焦点調節アームに支持される鏡筒と、鏡筒の一方の端部であって架台に対向する対物レンズと、鏡筒の他方の端部に位置する接眼レンズとを備える。焦点調節アームを操作することによって、観察光学系は昇降移動可能であって、架台に相対移動する。対物レンズにはホルダ部材を介して光源を取付可能とし、観察対象物に垂直に近い角度で照射し、影の影響を少なくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の顕微鏡用照明器具においては、光源が対物レンズにホルダ部材を介して固定されるため、対物レンズを含む観察光学系が昇降移動すると、光源も昇降移動する。観察対象物は架台に載置されるから、対物レンズが観察対象物から離れるように移動した場合には、光源も観察対象物から離れてしまい、その分視野が暗くなってしまうという問題があった。また、観察対象物の大きさ等によっては、対物レンズと観察対象物との離間寸法が大きくなってしまい、対物レンズに固定された光源では明るさが不十分な場合もある。
【0005】
この発明は、光源を観察対象物から一定の距離に保つことができる顕微鏡用照明器具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、観察対象物を載置する架台及び前記架台から垂直に延びる支柱を備え前記支柱に対して昇降移動する観察光学系を有する顕微鏡に取付可能であり、前記観察対象物を照明するための顕微鏡用照明器具であって、前記観察対象物を照明する光源と、前記光源が一方の端部に固定された棒部と、前記棒部を前記顕微鏡に取付可能な取付部と、前記棒部を前記観察光学系の昇降方向に移動可能とする移動機構と、を備え、前記棒部は、フレキシブルチューブによって構成され、前記フレキブルチューブの内部に挿入された電線を介して前記光源に電気を供給し、前記移動機構は、前記取付部に形成された第1の条溝と、前記第1の条溝に対向配置された押圧部に設けられるとともに前記第1の条溝に対向する第2の条溝とを備え、前記第1の条溝及び前記第2の条溝によって前記棒部を保持することを特徴とする。
【0007】
前記顕微鏡用照明器具は、前記観察対象物に対する角度が変更可能な角度変更機構をさらに備えることを特徴とするものであってもよい。
【0008】
前記顕微鏡用照明器具は、前記取付部が、前記顕微鏡の昇降移動する部材に取り付けられることを特徴とするものであってもよい。
【発明の効果】
【0009】
この発明に係る顕微鏡用照明器具の実施形態によれば、光源が固定された棒部が、顕微鏡に取付可能な取付部に対して軸方向に移動可能な移動機構を備えるので、取付部が観察対象物から離れるように移動した場合には、移動機構によって光源を観察対象物に近づけるように移動することができる。したがって、一定の視野の明るさを保つことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】この発明の実施形態に係る顕微鏡用照明器具を顕微鏡に取り付けた時の概要側面図。
【
図3】顕微鏡用照明器具の取付部を説明するための斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本願発明の一実施形態に係る照明器具10を顕微鏡1に取り付けた状態を示す。
顕微鏡1は、観察対象物を載置する架台2と、架台2から垂直に伸びる支柱3と、架台2に対向する観察光学系4と、観察光学系4を支柱3に対して昇降移動させるための昇降機構5とを備える。
【0012】
観察光学系4は、架台2に対向する対物レンズ41と、対物レンズ41に鏡筒42を介して配置される接眼レンズ43とを備える。鏡筒42は、固定部44を介して昇降機構5に連結される。
固定部44は、支柱3側に位置する基端部44aと、その反対側に位置する先端部44bとを備え、先端部44b近傍で観察光学系4の鏡筒42を支持する。
【0013】
昇降機構5は、支柱3に沿って延びる図示しないスライダーと、スライダーに沿って固定部44を昇降移動させる照準ハンドル52を備える。照準ハンドル52を回動させることによって、固定部44を昇降移動させることができ、観察光学系4と観察対象物との距離を移動させ、焦点の粗動調節をすることができる。また、観察光学系4は、鏡筒42に内蔵された図示しないズームレンズを移動させ、焦点の微動調節をするためのズームハンドル46を備える。
【0014】
照明器具10は、支柱3に対して昇降移動可能な固定部44に取り付けられる。より詳細には、照明器具10は固定部44の基端部44a近傍に取り付けられる。
図2を合わせて参照すれば、照明器具10は、観察対象物を照明可能な光源6と、光源6が一方の端部71に固定された棒部7と、棒部7を支持するとともに顕微鏡1の固定部44に取付可能な取付部8とを備える。さらに、照明器具10は、取付部8に対して棒部7が軸方向に移動可能な移動機構9と、観察対象物に対する角度が変更可能な角度変更機構とを備える。
【0015】
この実施形態において光源6として、有機ELパネルを用いている。棒部7として、柔軟に屈曲可能な可撓性を有する材料を用いることができ、例えばフレキシブルチューブを用いることができる。有機ELパネルにはフレキシブルチューブの内部に挿入された電線を介して電源を供給する(
図1参照)。
図3を合わせて参照すれば、取付部8は、取付本体81と、取付本体81に形成されるとともに固定部44に嵌合可能な嵌合凹部82と、嵌合凹部82を固定部44に固定するための締付部83とを備える。棒部7の他方の端部72が移動機構9によって移動可能に保持される。
【0016】
嵌合凹部82は、その一端面82aから他端面82bまでの寸法が、固定部44の幅よりも大きく、固定部44の上に載置可能である。一端面82aには例えばねじ部材を有する締付部83が設けられ、締付部83によって取付本体81を固定部44に嵌合、固定することができる。
【0017】
照明器具10には、棒部7が軸方向すなわち観察光学系4の昇降方向に移動可能な移動機構9が設けられる。移動機構9は、取付本体81に形成された第1の条溝91と、第1の条溝91に対向配置された押圧部92と、押圧部92に設けられるとともに第1の条溝91に対向する第2の条溝93と、押圧部92に螺合されるとともに、押圧部92と取付本体81とを固定可能なねじ部材94とを備える。ねじ部材94を時計回りに回転させることによって押圧部92を棒部7に押し付けることができ、第1の条溝91と第2の条溝93とによって棒部7を強固に保持することができる。ねじ部材94を反時計回りに回転させると押圧を弱くすることができ、棒部7を軸方向に移動可能とすることができる。
【0018】
上記のような構成において、焦点調節のため観察光学系4を架台2から遠ざかるように上昇移動させた場合、観察光学系4を支持する固定部44も上昇移動する。照明器具10の取付本体81は固定部44に嵌合させるから、取付本体81もこれに伴い上昇移動する。仮に光源が観察対象物から遠ざかるとその分視野は暗くなってしまう。しかし、この実施形態によれば、光源に取り付けられた棒部7は取付本体81に対して軸方向に移動可能であるから、棒部材7を下降させることによって光源も下降させることができ、観察対象物から光源が遠ざかるのを抑止することができる。また、棒部7としてフレキシブルチューブを用いることができるので、観察対象物に対する光源の角度を自在に変更可能である。すなわち、フレキシブルチューブを用いることによって角度変更機構を実現することができる。
【0019】
光源として有機ELパネルを用いることによって、観察対象物におけるハレーションを抑制することができる。特に、観察対象物が光沢を有する金属であったり、反射率の高いフィルムであったりした場合にはハレーションが起こりやすくなるが、これを有効に抑制することができ、観察対象物の適切な観察が実現される。また、有機ELパネルを用いることによって、面発光による照射が可能となり、観察対象物に影ができにくいというメリットもある。パネルは折り曲げ可能な可撓性パネルを用いることもでき、例えば観察対象物を囲むように湾曲させて用いることもできる。光源として複数の種類の光源を組み合わせることもできる。例えば、有機ELとLEDとを組み合わせることによって、明るい視野を確保しつつ、ハレーションを抑制することもできる。採用する光源の種類および数等は、使用目的に応じて適宜変更可能である。
【0020】
この実施形態において、棒部7としてフレキシブルチューブを用いているが、非可撓性材料を用いることもできる。その場合には、可動部を設けることによって、光源の角度を変更可能とすることができ、角度変更機構とすることができる。
また、光源は一つであっても複数であってもよい。また、顕微鏡1に固定された光源を別途備える場合であっても、この実施形態における顕微鏡用照明器具を用いることができる。
【0021】
照明器具10は、顕微鏡1の観察光学系4を支柱3に固定するための固定部44に取り付けることとしているが、これに限定されるものではない。例えば昇降機構5のいずれかに取り付けることもできるし、観察光学系4に取り付けることもできる。この場合には、例えば、対物レンズ41に取付部8を取り付けることによって、光源6を移動可能に保持することができる。また、顕微鏡1として観察光学系4が昇降移動するものを用いているが、これに限定されるものではない。観察光学系4が固定されている場合であっても、この実施形態の照明器具10を用いることによって、任意の位置に光源を配置することができるため、観察対象物に対し所望の照明を得ることができる。
【0022】
この実施形態において用いた具体的機構および材料は、この発明の一例であり、この分野において通常用いられる機構および材料を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0023】
1 顕微鏡
6 光源
7 棒部
8 取付部
9 移動機構
10 照明器具(顕微鏡用照明器具)