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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】防護壁設置方法及び連続防護壁
(51)【国際特許分類】
   E01F 15/08 20060101AFI20220302BHJP
   E01D 19/10 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
E01F15/08
E01D19/10
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018073821
(22)【出願日】2018-04-06
(65)【公開番号】P2019183461
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2020-11-02
(73)【特許権者】
【識別番号】501407263
【氏名又は名称】有限会社 創友
(74)【代理人】
【識別番号】100119725
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 希世士
(74)【代理人】
【識別番号】100072213
【弁理士】
【氏名又は名称】辻本 一義
(74)【代理人】
【識別番号】100168790
【弁理士】
【氏名又は名称】丸山 英之
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 洋一
【審査官】柿原 巧弥
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-034810(JP,A)
【文献】特開2008-095363(JP,A)
【文献】特開2007-009604(JP,A)
【文献】特開平02-157308(JP,A)
【文献】特表平10-506159(JP,A)
【文献】特開昭55-148849(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0303545(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 15/08
E01D 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の防護壁における長手方向の両端に位置する内側面又は前記内側面のうち少なく とも一方の内側面において内側に窪んだ略半円柱状の窪み部と、前記防護壁と一体又 は別体の略円柱状のスペーサーを当接するとともに隣接する前記内側面の間に隙間を 空けて複数の防護壁を連設する連設工程と、
前記防護壁の内部に位置し長手方向に沿って穿設された挿通孔に線材を挿通し固設す る配線工程と、
複数の前記防護壁における連設した前記内側面の隙間に固設剤を注入する充填工程を 備えることを特徴とする防護壁設置方法。
【請求項2】
前記連設工程において、複数の前記防護壁のうち少なくとも2基以上の前記防護壁の 短手方向における外側面に、前記挿通孔と連通する穴部が設けられて、前記穴部から 前記線材を挿通して固設することを特徴とする請求項1に記載の防護壁設置方法。
【請求項3】
前記固設剤が、モルタル及びエラストマーからの少なくとも一種であることを特徴と する請求項1又は請求項2に記載の防護壁設置方法。
【請求項4】
長手方向に連設された複数の防護壁と、
前記防護壁と一体又は別体であって、前記防護壁における長手方向の両端に位置する 内側面又は前記内側面のうち少なくとも一方の内側面において内側に窪んだ略半円柱 状の窪み部に当接して、隣接する前記内側面の間に隙間を空けている略円柱状のスペ ーサーと、
前記防護壁の内部に位置し長手方向に沿って穿設された挿通孔に挿通され固設された 線材と、
隣接する前記内側面の間に空けられた隙間に注入された固設剤を備える連続防護壁。
【請求項5】
複数の前記防護壁のうち少なくとも2基以上の前記防護壁の短手方向における外側面 に、前記挿通孔と連通する穴部が設けられていることを特徴とする請求項4に記載の 連続防護壁。
【請求項6】
前記防護壁の底面側において短手方向に穿設された貫通孔を有することを特徴とする 請求項4又は請求項5に記載の連続防護壁。
【請求項7】
前記防護壁の前記内側面において、底面側及び前記防護壁の短手方向における外側面 側の角に前記内側面より段差を設けて窪んで設けられた内側面窪み部を有することを 特徴とする請求項4から請求項6のいずれか一つに記載の連続防護壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速道路や一般道路の中央分離帯及び路側帯に設置され、正規ルートを外れた車両を減速、停止や方向転換をさせる防護壁の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンクリートなどで作製された複数の防護壁を、高速道路や一般道路の中央分離帯及び路側帯における車両の進行方向に沿って隙間を空けて載置して、金属製の線材により連結してから、複数の防護壁の隙間をモルタル等で充填することにより施工する方法が種々知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数の防護壁を設置する方法が開示されている。具体的には、まず、複数の一般用ブロック1と定着用ブロック2とを交互に並べる。そして、複数の一般用ブロック1を挟む2つの定着用ブロック2のうち一方の定着用ブロック2の挿通孔4′の切り欠き部3内の開口からPC鋼撚り線5を挿入していき、他方の定着用ブロック2の挿通孔4′の切り欠き部3内の開口から延出させておく。その後、各ブロックの隣接空間にセメントモルタルを充填する。そして、そのセメントモルタルの硬化を待ってPC鋼撚り線5の緊張定着作業を行っている。なお、本段落の符号は、特許文献1における符号である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-240024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の防護壁の設置方法では、複数の防護壁の間の空間にセメントモルタルを充填して、その硬化を待ってから、金属製の線材を張って固定するために、個々の防護壁の間の空間に充填したセメントモルタルが硬化し始め設計基準強度に達するまでに2週間ほど要し、その間に複数の防護壁を挿通する金属製の線材を張る作業は一切行うことができず効率的ではなく工期が長期化するという課題があった。
【0006】
そこで、本発明は、高速道路や一般道路の中央分離帯及び路側帯における車両の進行方向に沿って設置される複数の防護壁を載置してそれらを連設させて完成させるまでの工期を短縮することができる設置方法及び防護壁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔1〕すなわち、本発明は、複数の防護壁(1)における長手方向(X)の両端に位 置する内側面(1a・1a)又は前記内側面(1a・1a)のうち少なくとも一方の内 側面(1a)において内側に窪んだ略半円柱状の窪み部(11)と、前記防護壁(1) と一体又は別体の略円柱状のスペーサー(2)を当接するとともに隣接する前記内側面 (1a・1a)の間に隙間を空けて複数の防護壁(1)を連設する連設工程と、前記防 護壁(1)の内部に位置し長手方向(X)に沿って穿設された挿通孔(12)に線材( 3)を挿通し固設する配線工程と、複数の前記防護壁(1)における連設した前記内側 面(1a・1a)の隙間に固設剤(4)を注入する充填工程を備えることを特徴とする 防護壁設置方法である。
【0008】
〔2〕そして、前記連設工程において、複数の前記防護壁(1)のうち少なくとも2基以上の前記防護壁(1)の短手方向(Y)における外側面(1b)に、前記挿通孔(12)と連通する穴部(13)が設けられて、前記穴部(13)から前記線材(3)を挿通して固設することを特徴とする前記〔1〕に記載の防護壁設置方法である。
【0009】
〔3〕そして、前記固設剤(4)が、モルタル及びエラストマーからの少なくとも一種であることを特徴とする前記〔1〕又は前記〔2〕に記載の防護壁設置方法である。
【0011】
〕そして、長手方向(X)に連設された複数の防護壁(1)と、前記防護壁(1 )と一体又は別体であって、前記防護壁(1)における長手方向(X)の両端に位置す る内側面(1a・1a)又は前記内側面(1a・1a)のうち少なくとも一方の内側面 (1a)において内側に窪んだ略半円柱状の窪み部(11)に当接して、隣接する前記 内側面(1a・1a)の間に隙間を空けている略円柱状のスペーサー(2)と、前記防 護壁(1)の内部に位置し長手方向(X)に沿って穿設された挿通孔(12)に挿通さ れ固設された線材(3)と、隣接する前記内側面(1a・1a)の間に空けられた隙間 に注入された固設剤(4)を備える連続防護壁である。
【0012】
〕そして、複数の前記防護壁(1)のうち少なくとも2基以上の前記防護壁(1 )の短手方向(Y)における外側面(1b)に、前記挿通孔(12)と連通する穴部( 13)が設けられていることを特徴とする前記〔〕に記載の連続防護壁である。
【0013】
〕そして、前記防護壁(1)の底面側(1c)において短手方向(Y)に穿設さ れた貫通孔(14)を有することを特徴とする前記〔〕又は前記〔〕に記載の連続 防護壁である。
〔7〕そして、前記防護壁(1)の前記内側面(1a)において、底面(1c)側及 び前記防護壁(1)の短手方向(Y)における外側面(1b)側の角に前記内側面(1 a)より段差を設けて窪んで設けられた内側面窪み部(15)を有することを特徴とす る前記〔4〕から前記〔6〕のいずれか一つに記載の連続防護壁である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の設置方法によれば、複数の防護壁を載置してそれらを連設させて完成させるまでの工期を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一実施形態における複数の防護壁を載置した状態の斜視図である。
図2】本発明の第一実施形態における一の防護壁の斜視図である。
図3】本発明の第一実施形態における一の防護壁のC部の拡大図である。
図4】本発明の第一実施形態における一の防護壁のA-A線断面図である。
図5】本発明の第一実施形態における一の防護壁の穴部付近の拡大図である。
図6】(a)本発明の第一実施形態における複数の防護壁を載置した状態の平面図である。(b)本発明の第一実施形態における複数の防護壁を設置して完成させた状態の平面図である。
図7】本発明の第一実施形態における二つの防護壁の隙間付近であるD部の拡大図である。
図8】本発明の第二実施形態におけるD部に相当する部分の拡大図である。
図9】本発明の第三実施形態におけるD部に相当する部分の拡大図である。
図10】本発明の第四実施形態におけるD部に相当する部分の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る防護壁の設置方法に関する実施形態について詳しく説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明を実施するに好ましい具体例であるから、技術的に種々の限定がなされているが、本発明は、以下の説明において特に発明を限定する旨が明記されていない限り、この形態に限定されるものではない。また、説明中の上下方向とは、図4における上下方向である。なお、数値範囲を示す表現は、上限と下限を含むものである。
【0017】
〔第一実施形態〕
図1図4に示すように、防護壁1は、車両が衝突したときに衝撃を受け止める部材であって、道路の延伸方向に沿って長い形状を有している。そして、防護壁1は、長手方向Xの両端に位置する内側面1a・1aにおいて、内側に溝状に窪んだ窪み部11、防護壁1の内部に位置し長手方向Xに沿って穿設された挿通孔12を有する部材である。そして、図4に示すように、防護壁1は、地面等に載置する側である底面1c側から上面1d側に至るまで、内側面1a側から視たときに段階的に又は連続して横幅が狭くなり、等脚台形を複数個組み合わせたような形状を有し、一端の内側面1aから他端の内側面1aの長さが長手方向Xとなるように形成されている。本実施形態では、防護壁1は内側面1a視で複数の等脚台形を組み合わせたような形状を有しているが、他の実施形態において、防護壁1の重心ができるだけ底面1c側に位置し短手方向Yから衝撃が加わっても転倒しないような形状であれば、種々の形状とすることができる。
【0018】
また、使用する複数の防護壁1のうち、防護壁1の短手方向Yにおける外側面1bに、挿通孔12と連通して設けられた穴部13を有するものも使用する。すなわち、穴部13を有さない防護壁1と穴部13を有する防護壁1を使用する。例えば、穴部13を有さない防護壁1を3~4基並べるごとに、穴部13を有さない防護壁1を並べるようにして載置する。
【0019】
窪み部11は、防護壁1の両端の内側面1aに、その内側面1aの中央近傍を窪ませて設けられている。窪み部11は、スペーサー2と当接してスペーサー2を支持するように作用する。図6図7に示すように、隣接する防護壁1・1の対向する窪み部11・11の深さの和よりも大きい径を有するスペーサー2をそれぞれの窪み部11・11に当接して介在させ、そして、隣接する防護壁1・1の対向する内側面1a・1aの間に隙間を空けて防護壁1・1を連設する。このように複数の防護壁1を順次連設することより、予め隣接する防護壁1・1の対向する内側面1a・1aの間の隙間がほぼ固定されるので、挿通孔12に線材3を挿通し固設する配線工程と、内側面1a・1aの間の隙間に固設剤4を注入する充填工程を、従来の工法で掛かっていた2週間などの長い時間を要することなく数時間~1両日中に行うことができる。本実施形態において、窪み部11は、上面1dから底面1c側の途中まで窪んで設けられているが、他の実施形態において、上面1dから底面1cに至るまで窪んで設けることもできる。また、本実施形態において、窪み部11は湾曲した略半円柱状の形状を有しており、隣接する防護壁1同士を所定の範囲内で角度の調整できるようになっているが、他の実施形態において、スペーサー2の外形に合わせてスペーサー2と当接しやすいようにする限りにおいて、角柱形状などの窪み形状とすることができる。
【0020】
挿通孔12は、一の防護壁1において、一端の内側面1aから他端の内側面1aまで、細長い略円柱状に穿設されおり、線材3を防護壁1の長手方向Xに沿って挿通するための孔である。図1などに示すように、挿通孔12は、穴部13を有さない防護壁1においては一端の内側面1aから他端の内側面1aまで連続して穿設されており、穴部13を有さない防護壁1においては一端の内側面1aから他端の内側面1aまで途中で穴部13と連通する箇所では途切れて断続的に穿設されている。なお、本実施形態において、挿通孔12は、防護壁1の上下方向に並んで2本穿設されているが、他の実施形態において、穿設されている箇所、本数は複数の防護壁1を連設できる限りにおいて、水平方向に並設することも可能であるし、1つ又は3つ以上設けるなど種々変更することができる。
【0021】
穴部13は、使用する複数の防護壁1のうち、少なくとも2基以上に、防護壁1の短手方向Yにおける外側面1bに、略直方状の窪みとして設けられており、挿通孔12と連通している。複数の防護壁1を連設したときに、一の防護壁1の穴部13から線材3を挿通孔12に挿通して送っていき、スペーサー2のスペーサー挿通孔21及び穴部13を有さない防護壁1の挿通孔12にも挿通して、他の穴部13を有する防護壁1の穴部13からその線材3の先端部を露出させ、図3から図5に示すように、線材固定具5にて緊締して固設する。また、穴部13が、防護壁1の短手方向Yにおける外側面1bに設けられていることから、防護壁1の上面1dに設けられていることに比べ、専用の特殊なジャッキが必要でなく通常のジャッキで作業ができるなど作業の効率性が向上する。
【0022】
貫通孔14は、防護壁1の底面1c側において短手方向Yに貫通して穿設されている。貫通孔14により、現場に設置したときに道路に流れてくる雨水などの液体を低い方に流すことができ、防護壁1で液体を堰き止めないようにすることができる。貫通孔14は、砂や小石などが詰まってしまわない程度の開口を有していることが好ましい。本実施形態において、貫通孔14は、防護壁1の底面1c側に5つ設けられているが、他の実施形態において、1本又は2本以上の複数本を設けることができる。
【0023】
内側面窪み部15は、防護壁1の内側面1aにおいて、底面1c側及び外側面1b側の角に内側面1aより段差を設けて窪んで設けられている。複数の防護壁1を配設しようとする道路などが曲がっているときに、それぞれの内側面窪み部15・15に厚みの異なる板状部材をあてがって、連設される複数の防護壁1の曲がる角度を調整することができる。
【0024】
さらに、防護壁1の上面1dには、上面1dから内部に略円筒状、略角柱状などに窪んだ少なくとも1つの嵌入穴を開けておくことができる。一端に環状やフック状に形成されている吊り下げ可能な部材を嵌入穴に嵌入させて固設するより、クレーンなどの重機を用いて道路などに配設することができる。また、嵌入穴が設けられていなかったとしても、貫通孔14にワイヤーなどを挿通してクレーンなどの重機を用いて道路などに配設することもできる。
【0025】
防護壁1の寸法としては、設置したときの強度と運搬の容易さとの兼ね合いから、両端内側面1aの間の長さである長手方向Xが4000~6000mm、底面1cの短手方向Yが450~650mm、上面1dの短手方向Yが100~200mm、底面1cから上面1dに至る高さが800~1200mmであることが好ましい。
【0026】
また、防護壁1は、砂、砂利、セメント、水などが混練され成型されたコンクリート、砂、セメント、水などが混練され成型されたモルタル、鉄など比重が1より重い材料からなっていることが好ましく、運搬の利便性や風雨に晒されても劣化しにくいという長期安定性からコンクリート又はモルタルであることがより好ましい。
【0027】
スペーサー2は、防護壁1と一体又は別体であり窪み部11に当接する部材である。本実施形態において、スペーサー2は、防護壁1とは別体の略円柱状として設けられており、隣接する防護壁1・1の対向する内側面1a・1aの間に隙間を設けさせる。このため、スペーサー2の直径は、隣接する防護壁1・1の対向する窪み部11・11の深さの和よりも大きい。本実施形態において、スペーサー2は、略円柱状であるが、他の実施形態において、窪み部11の形状に応じて略角柱状や略筒状とすることもできる。
【0028】
スペーサー2には、軸方向と垂直に貫通したスペーサー挿通孔21が穿設されている。図2図3に示すように、スペーサー2を防護壁1の窪み部11に当接したときに、防護壁1の挿通孔12とスペーサー挿通孔21が連通するように設けることができ、線材3を折れ曲げずに真っすぐに挿通することができる。なお、本実施形態において、スペーサー挿通孔21は、スペーサー2の上下方向に並んで2本穿設されているが、他の実施形態において、防護壁1の挿通孔12の位置に応じて、水平方向に並設することも可能であるし、1つ又は3つ以上設けるなど種々変更することができる。
【0029】
線材3は、複数の防護壁1を緊締するために用いられる線状の部材である。線材3としては、直径8mm以下の高強度鋼であるPC鋼線、直径10mm以上の高強度鋼であるPC鋼棒、PC鋼線を撚り合わせたPC鋼撚り線などのPC鋼材、又は炭素繊維などの材料を用いることができる。
【0030】
固設剤4は、隣接する防護壁1・1の対向する内側面1a・1aの間に隙間に充填され隣接する防護壁1・1を接続する部材であり、充填するときには流動性を有するが時間の経過や冷やされることによって固形状、半固形状となる部材である。本実施形態において、固設剤4は、モルタル、セメントなどの時間の経過とともに硬くなる部材を用いるとともに、いくつかの防護壁1ごとに、応力が加わったときには変形するが応力が加わらなくなったときにも元の形状に戻るようなエラストマーとすることもできる。モルタル、セメントなどの塑性変形しない部材に加えて、エラストマーなどの塑性変形する部材も用いることで、車両が防護壁1に衝突したときにその衝撃を吸収することができる。また、モルタルを使用する場合、無収縮モルタルを用いることが好ましい。
【0031】
線材固定具5は、線材3を緊締させた状態で防護壁1に固定する部材である。線材固定具5は、図5に示すようにテーパ孔を有する定着体51、定着体51のテーパ孔内に挿入した線材3の外周を把むようにテーパ円筒を半割状にした定着楔52などからなる。 定着楔52に線材3を挿入し、線材3を緊張した際の戻り方向の力によって定着楔52を 定着体51のテーパ孔内に引き込ませ、その際の定着楔52の半径方向の把持力によって線材3を定着させる。本実施形態において、線材固定具5は、定着体51、定着楔52などからなる部材であるが、他の実施形態において、線材3の先端に取付けられた雄螺子と、穴部13の内側に配設されその雄螺子と螺着される雌螺子からなる部材とすることもできる。
【0032】
次に、本実施形態において、複数の防護壁1の取り付け手順について説明する。主として、複数の防護壁1を連設する連設工程と、防護壁1の内部に線材3を挿通し固設する配線工程と、隣接する防護壁1の隙間に固設剤4を注入する充填工程からなる。
【0033】
まず、連設工程に関し、長手方向Xの両端に位置する内側面1a・1aのうち少なくとも一方の内側面1aにおいて内側に窪んだ窪み部11を有する一の防護壁1を、その防護壁1と別体のスペーサー2を窪み部11に当接し、そのスペーサー2の反対側に他の防護壁1の窪み部11と当接するように、他の防護壁1を載置する。隣接する防護壁1・1の対向する窪み部11・11の深さの和よりも大きい径を有するスペーサー2をそれぞれの窪み部11・11に当接して介在させていることで、隣接する内側面1a・1aの間に隙間を空けて連設している。このようにして、防護壁1を3基、4基と次々に連設させる。また、複数の防護壁1を載置するときに、図1に示すように、穴部13を有さない防護壁1を3基並べるごとに、穴部13を有さない防護壁1を並べるようにして載置していくことが好ましい。
【0034】
そして、配線工程に関し、防護壁1の内部に位置し長手方向Xに沿って穿設された挿通孔12に、穴部13を有する一の防護壁1の穴部13から線材3の一種であるPC鋼撚り線を挿通する。そして、そのPC鋼撚り線の先端が穴部13を有する他の防護壁1の穴部13から露出するので、その先端を線材固定具5の一種である定着体51及び定着楔52にて固設する。また、穴部13が露出しないようにするために、図4に示すように、穴部13を覆い隠す広さを有する蓋部6を穴部13に覆設して外側面1bに固設する。なお、蓋部6を用いずに、穴部13をモルタルなどで埋めることもできる。
【0035】
そして、充填工程に関し、複数の防護壁1における連設した内側面1a・1aの隙間に固設剤4の一種である無収縮モルタルを注入する。そして、無収縮モルタルを連続して3回注入すると、次の隙間では固設剤4の一種であるエラストマーを注入するなど、適宜エラストマーも使用する。
【0036】
配線工程及び充填工程に関し、連設工程の後に配線工程を行ってから、充填工程を行うことが好ましいが、連設工程の後に充填工程を行ってから、配線工程を行うこともできる。
【0037】
このような防護壁設置方法により、複数の防護壁を載置してそれらを連設させて完成させるまでの工期を大幅に短縮することができ、道路を早く開放することができる。
【0038】
〔第二実施形態〕
防護壁設置方法の第二実施形態は、多くの部分を第一実施形態と共通するが、防護壁1及びスペーサー2において異なる。具体的には、図8に示すように、隣接する防護壁1・1の対向する内側面1a・1aにおいて、一方には窪み部11が形成されているが、他方には防護壁1と一体となっているスペーサー2が内側面1aから突設されている。窪み部11の深さよりもスペーサー2の径あるいは突設している長手方向Xにおける長さが大きく設けられており、隣接する防護壁1・1の対向する内側面1a・1aの間に隙間を空けて隣接する防護壁1・1を連設し得る。
【0039】
図8では、隣接する防護壁1・1の対向する内側面1a・1aの近傍を拡大して示しているが、一の防護壁1において、一方の内側面1aには窪み部11を設け、他方の内側面1aには防護壁1と一体となっているスペーサー2を突設することで、第一実施形態と同様に、複数の防護壁1を連設することができる。
【0040】
連設工程後の配線工程及び充填工程に関しては、第一実施形態と同様に行うことができ、同様の作用効果を得ることができる。
【0041】
〔第三実施形態〕
防護壁設置方法の第三実施形態は、多くの部分を第一実施形態と共通するが、防護壁1及びスペーサー2において異なる。具体的には、図9に示すように、隣接する防護壁1・1の対向する内側面1a・1aにおいて、第一実施形態や第二実施形態とは異なり、内側面1a・1aから内側に略直方体状に窪んだ窪み部11が2箇所並んで穿設されている。そして、その窪み部11に、防護壁1とは別体で棒状のスペーサー2が嵌合する。窪み部11の深さの和よりもスペーサー2の長さが大きく設けられており、隣接する防護壁1・1の対向する内側面1a・1aの間に隙間を空けて隣接する防護壁1・1を連設し得る。
【0042】
図9では、隣接する防護壁1・1の対向する内側面1a・1aの近傍を拡大して示しているが、一の防護壁1において、両端の内側面1a・1aに窪み部11を設け、防護壁1とは別体の棒状のスペーサー2を設けることで、第一実施形態や第二実施形態と同様に、複数の防護壁1を連設することができる。また、本実施形態において、スペーサー2として棒状の形状を有しているが、隣接する防護壁1・1の対向する内側面1a・1aの間に隙間を空けるために所定以上の厚みを有する板状部材、球状部材、直方状部材などを用いて、隣接する防護壁1・1の対向する内側面1a・1aの間に介在させることなどもできる。また、防護壁1と別体である棒状のスペーサー2について、対向する内側面1aの窪み部11と対応するように、防護壁1の内側面1aから同様な形状に突出して一体として形成されていてもよい。
【0043】
連設工程後の配線工程及び充填工程に関しては、配線工程を先に行い充填工程をその後に行うこと以外は、第一実施形態や第二実施形態と同様に行うことができ、同様の作用効果を得ることができる。
【0044】
〔第四実施形態〕
防護壁設置方法の第四実施形態は、多くの部分を第一実施形態と共通するが、防護壁1の内側面1a及びスペーサー2において異なる。具体的には、図10に示すように、隣接する防護壁1・1の対向する内側面1a・1aにおいて、第一実施形態から第三実施形態とは異なり、内側面1a・1aにはそもそも窪み部11に相当する窪みが存在せず、内側面1a・1aにおける外側面1b・1b側に、防護壁1とは別体で棒状のスペーサー2・2が当接する。スペーサー2が所定の大きさを有しており、隣接する防護壁1・1の対向する内側面1a・1aの間に隙間を空けて隣接する防護壁1・1を連設し得る。
【0045】
図10では、隣接する防護壁1・1の対向する内側面1a・1aの近傍を拡大して示しているが、一の防護壁1において、両端の内側面1a・1aに窪み部11を設けず、防護壁1とは別体の棒状のスペーサー2を設けることで、第一実施形態から第三実施形態と同様に、複数の防護壁1を連設することができる。また、本実施形態において、スペーサー2として紙面の前後方向に細長い棒状の形状を有しているが、隣接する防護壁1・1の対向する内側面1a・1aの間に隙間を空けるために所定以上の厚みを有する板状部材、球状部材、直方状部材などを用いて、隣接する防護壁1・1の対向する内側面1a・1aの間に介在させることなどもできる。また、防護壁1と別体である棒状のスペーサー2について、防護壁1の内側面1aから同様な形状に突出して一体として形成されていてもよい。さらに、防護壁1の内側面1aに別体の棒状のスペーサー2を当接することに加えて、第三実施形態のように両端の内側面1a・1aに窪み部11とその窪み部11に当接する異なるスペーサーを付加することもできる。
【0046】
連設工程後の配線工程及び充填工程に関しては、配線工程を先に行い充填工程をその後に行うこと以外は、第一実施形態から第三実施形態と同様に行うことができ、同様の作用効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0047】
1・・・防護壁
11・・・窪み部
12・・・挿通孔
13・・・穴部
14・・・貫通孔
15・・・内側面窪み部
1a・・・内側面
1b・・・外側面
1c・・・底面
1d・・・上面
2・・・スペーサー
21・・・スペーサー挿通孔
3・・・線材
4・・・固設剤
5・・・線材固定具
51・・・定着体
52・・・定着楔
6・・・蓋部
図1
図2
図3
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図6
図7
図8
図9
図10