(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】接合方法及び接合装置
(51)【国際特許分類】
B23K 20/10 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
B23K20/10
(21)【出願番号】P 2020112393
(22)【出願日】2020-06-30
【審査請求日】2021-11-11
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】594114019
【氏名又は名称】株式会社アルテクス
(74)【代理人】
【識別番号】100136180
【氏名又は名称】羽立 章二
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 茂
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-115814(JP,A)
【文献】特開2001-38475(JP,A)
【文献】特開平10-244380(JP,A)
【文献】特開2000-176653(JP,A)
【文献】特開平8-252679(JP,A)
【文献】国際公開第2019/198816(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の接合部材を含む接合部材群の接合処理を行う接合方法であって、
接合装置が備えるホーン部が、前記接合部材群に対して音波振動及び/又は超音波振動を与えて前記接合部材群の接合処理を行う接合ステップを含み、
前記接合ステップにおいて、前記ホーン部は、前記ホーン部よりも柔らかい緩衝部材を介して前記接合部材群に対して音波振動及び/又は超音波振動を与え
、
前記接合部材群は、前記ホーン部に最も近い第1接合部材と、前記第1接合部材に隣接する第2接合部材を含み、
前記緩衝部材及び前記第1接合部材は、金属であり、
前記ホーン部による前記第1接合部材への音エネルギーの伝達効率が、前記緩衝部材がない場合と比較して上がった状態で、前記第1接合部材と前記第2接合部材が接合する、接合方法。
【請求項2】
前記第1接合部材は、ハイテンである、請求項1記載の接合方法。
【請求項3】
前記緩衝部材は、アルミである、請求項1又は2に記載の接合方法。
【請求項4】
前記接合ステップにおいて、前記緩衝部材は溶解温度よりも高くなる、請求項1
から3のいずれかに記載の接合方法。
【請求項5】
前記接合ステップにおいて、前記接合部材の一つは、前記緩衝部材及び他の前記接合部材よりも温度が高くなる、請求項1
から4のいずれかに記載の接合方法。
【請求項6】
前記緩衝部材及び前記接合部材の少なくとも一つは、他の部材との接触面に突起部を備える、請求項1から
5のいずれかに記載の接合方法。
【請求項7】
前記緩衝部材及び前記接合部材の少なくとも一つは、他の部材との接触面に凹溝が形成される、請求項1から
6のいずれかに記載の接合方法。
【請求項8】
前記緩衝部材及び前記接合部材は、平板状である、請求項1から
5のいずれかに記載の接合方法。
【請求項9】
前記接合部材群に含まれる複数の接合部材は、隣接する2枚の非金属部材と、少なくとも前記非金属部材と前記ホーンとの間に金属部材を含み、
前記接合ステップにおいて、少なくとも隣接する2枚の前記非金属部材が接合する、請求項1から
8のいずれかに記載の接合方法。
【請求項10】
前記接合処理部において、前記ホーン部は、複数の支持位置で支持され、
前記ホーン部が前記緩衝部材に接触する接触部は、前記複数の支持位置の間にある、請求項1から
7のいずれかに記載の接合方法。
【請求項11】
複数の接合部材を含む接合部材群の接合処理を行う接合装置であって、
前記接合部材群に対して音波振動及び/又は超音波振動を与えるホーン部を備え、
前記ホーン部は、前記ホーン部よりも柔らかい緩衝部材を介して前記接合部材群に対して音波振動及び/又は超音波振動を与え
、
前記接合部材群は、前記ホーン部に最も近い第1接合部材と、前記第1接合部材に隣接する第2接合部材を含み、
前記緩衝部材及び前記第1接合部材は、金属であり、
前記ホーン部による前記第1接合部材への音エネルギーの伝達効率が、前記緩衝部材がない場合と比較して上がった状態で、前記第1接合部材と前記第2接合部材が接合する、接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法及び接合装置に関し、特に、接合部材群の接合処理を行う接合方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
出願人は、複数の金属部材の少なくとも一部の接合面に突起部を設けることにより、音波振動及び/又は超音波振動を利用してエネルギーを集中させることを提案した(特許文献1参照)。
【0003】
また、出願人は、複数個所でホーンを支持し、ホーンに対して複数の方向から音波振動及び/又は超音波振動を与えることにより、大きなエネルギーによる接合処理を実現することを提案した(特許文献2及び3参照)。
【0004】
なお、特許文献1、2及び3の内容は、本願に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特願2019-026976
【文献】特願2019-229190
【文献】特願2020-012556
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、大きなエネルギーを利用した接合処理では、ホーン部と接合部材群との間で新たな問題が顕在化することとなった。例えば、ホーンにダメージが生じる場合があること、音エネルギーの伝達効率が良くない場合があること、などである。
【0007】
よって、本発明は、ホーン部と接合部材群との関係に着目して接合処理を改善することに適した接合方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の第1の観点は、複数の接合部材を含む接合部材群の接合処理を行う接合方法であって、接合装置が備えるホーン部が、前記接合部材群に対して音波振動及び/又は超音波振動を与えて前記接合部材群の接合処理を行う接合ステップを含み、前記接合ステップにおいて、前記ホーン部は、前記ホーン部よりも柔らかい緩衝部材を介して前記接合部材群に対して音波振動及び/又は超音波振動を与える。
【0009】
本願発明の第2の観点は、第1の観点の接合方法であって、前記接合ステップにおいて、前記緩衝部材は溶解温度よりも高くなる。
【0010】
本願発明の第3の観点は、第1又は第2の観点の接合方法であって、前記接合ステップにおいて、前記接合部材の一つは、前記緩衝部材及び他の前記接合部材よりも温度が高くなる。
【0011】
本願発明の第4の観点は、第1から第3のいずれかの観点の接合方法であって、前記緩衝部材及び前記接合部材の少なくとも一つは、他の部材との接触面に突起部を備える。
【0012】
本願発明の第5の観点は、第1から第4のいずれかの観点の接合方法であって、前記緩衝部材及び前記接合部材の少なくとも一つは、他の部材との接触面に凹溝が形成される。
【0013】
本願発明の第6の観点は、第1から第3のいずれかの観点の接合方法であって、前記緩衝部材及び前記接合部材は、平板状である。
【0014】
本願発明の第7の観点は、第1から第6のいずれかの観点の接合方法であって、前記接合部材群に含まれる複数の接合部材は、隣接する2枚の非金属部材と、少なくとも前記非金属部材と前記ホーンとの間に金属部材を含み、前記接合ステップにおいて、少なくとも隣接する2枚の前記非金属部材が接合する。
【0015】
本願発明の第6の観点は、第1から第5のいずれかの観点の接合方法であって、前記接合処理部において、前記ホーン部は、複数の支持位置で支持され、前記ホーン部が前記緩衝部材に接触する接触部は、前記複数の支持位置の間にある。
【0016】
本願発明の第7の観点は、複数の接合部材を含む接合部材群の接合処理を行う接合装置であって、前記接合部材群に対して音波振動及び/又は超音波振動を与えるホーン部を備え、前記ホーン部は、前記ホーン部よりも柔らかい緩衝部材を介して前記接合部材群に対して音波振動及び/又は超音波振動を与える。
【0017】
なお、本願発明を、音波振動及び/又は超音波振動を利用して接合処理を行う接合装置を制御するためのコンピュータを制御して本願発明の各観点を実現するためのプログラム、及び、そのプログラムを記録するためのコンピュータ読み取り可能な記録媒体として捉えてもよい。
【0018】
また、本願発明を、接合ステップにおいて、チッソ雰囲気下で行うことにより酸化を防ぐものとしてとして捉えてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本願発明の各観点によれば、緩衝部材を利用することにより、ホーン部や接合部材をダメージから守り、接合処理を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本願発明の実施の形態に係る接合装置1の(a)構成の一例を示すブロック図、(b)動作の一例を示すフロー図、及び、(c)動作を具体的に説明するための図である。
【
図2】本願発明の概要を説明するための第1図である。
【
図3】本願発明の概要を説明するための第2図である。
【
図4】本願発明の実験結果を説明するための第1図である。
【
図5】本願発明の実験結果を説明するための第2図である。
【
図6】本願発明の実験結果を説明するための第3図である。
【
図7】セラミックス超電導材どうしの接合の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本願発明の実施例について述べる。なお、本願発明の実施の形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0022】
図1は、本願発明の実施の形態に係る接合装置1の(a)構成の一例を示すブロック図、(b)動作の一例を示すフロー図及び(c)動作を具体的に説明するための図である。
【0023】
図1(a)を参照して、接合装置1は、制御部3と、接合処理部5(本願請求項の「接合処理部」の一例)と、移動部7と、圧力調整部9を備える。接合処理部5は、ホーン部11と、第1支持部15と、第2支持部17と、第1振動子部19と、第2振動子部21と、第1発振部23と、第2発振部25と、連結信号配線部27を備える。ホーン部11は、接触部13を備える。
【0024】
接合処理部5は、第1接合部材33と第2接合部材35(本願請求項の「接合部材群」の一例)の接合処理を行う。第1接合部材33は、第2接合部材35よりも上に位置し、接合処理部5に近い。第2接合部材35は、第1接合部材33との接触面に突起部371及び372を備える。これにより、EC(Energy Concentration)突起接合を実現することができる(特許文献1参照)。第1接合部材33と接合処理部5との間に、緩衝部材31(本願請求項の「緩衝部材」の一例)が存在する。
【0025】
例えば、ホーン部11は、金属(例えばスチール)である。第1接合部材33は、金属(例えばスチール、ハイテンなど)である。第2接合部材35は、金属(例えばアルミ、スチール、ハイテンなど)でもよく、非金属(セラミックスなど)でもよい。緩衝部材31は、金属(アルミなど)である。
【0026】
制御部3は、制御信号を利用して、接合装置1の動作を制御することができる。移動部7は、ホーン部11の上下動を制御する。接触部13は、ホーン部11が下降することにより緩衝部材31に接触する。圧力調整部9は、接触部13による圧力を調整する。
【0027】
接合処理部5は、音波振動(20kHz未満の振動)及び/又は超音波振動(20kHz以上の振動)を利用して、第1接合部材33と第2接合部材35との接合処理を行う。
【0028】
接合処理部5において、第1発振部23及び第2発振部25は、連結信号配線部27を利用して、音波振動及び/又は超音波振動に対応する電気信号を発振する。第1振動子部19及び第2振動子部21は、それぞれ、第1発振部23及び第2発振部25の電気信号を、機械振動に変換してホーン部11に伝える。ホーン部11は、第1支持部15及び第2支持部17により支持されており、共振する。これにより、接合処理部5は、音波振動及び/又は超音波振動を利用して接合処理を実現することができる。
【0029】
図1(b)は、接合装置1の動作の一例を示すフロー図である。移動部7は、ホーン部11を下降させて接触部13を緩衝部材31に接触させる(ステップST1)。圧力調整部9は、接触部13により緩衝部材31、第1接合部材33及び第2接合部材35に対する加圧を開始する(ステップST2)。接合処理部5は、ホーン部11を発振する(ステップST3)。接合処理部5は、発振を終了するか否かを判断する(ステップST4)。発振を終了しないならば、ステップST3の処理を続ける。発振を終了するならば、接合処理部5は、ホーン部11の発振を終了して、圧力調整部9は接触部13による加圧を停止し(ステップST5)、移動部7はホーンを上昇する(ステップST6)。
【0030】
図1(c)は、ホーン部11の発振の一例を説明する図である。ホーン部11は、複数のノーダル・ポイント(振動が極小となる部分)と、ノーダル・ポイントの間に振動が極大となる部分が存在する。第1支持部15及び第2支持部17は、ノーダル・ポイントに設けられる。接触部13は、振動が極大となる部分に設けられる。
図1(c)では、ノーダル・ポイントが偶数(4個)である場合の一例を示す。第1発振部13及び第2発振部15は、連結信号配線部27を利用して、逆位相の電気信号を発振する。すると、各ノーダル・ポイントでは、伸縮が交互に出現する。このようにして、接合処理部5は、音波振動及び/又は超音波振動を利用して、第1接合部材33及び第2接合部材35の接合処理を行うことができる。
【0031】
接合処理部5による接合処理では、緩衝部材31を介して、第1接合部材33と第2接合部材35との接合処理を行う。
【0032】
緩衝部材31は、例えば、ホーン部11の金属並びに第1接合部材33よりも溶解温度が低いもの、及び/又は、ホーン部11の金属よりも柔らかいもの(例えば硬度が低いもの)である。
【0033】
例えば、ホーン部11がスチールであり、第1接合部材33がハイテンであり、第2接合部材35がアルミ(例えばアルミ押出成形品など)である場合に、緩衝部材31はアルミである。特にアルミは材質的に特有の性格があり、利用範囲が広く半導体分野にも有効である。
【0034】
この例で、仮に緩衝部材31がなく、ホーン部11(スチール)によって、第1接合部材33(ハイテン)と第2接合部材35(アルミ)の接合処理を実現しようとしても、ホーン部11(スチール)は、第1接合部材33(ハイテン)に刺さりにくく、音エネルギーの伝達効率が悪い。それに対し、ホーン部11(スチール)は、緩衝部材31(アルミ)に対する音エネルギーの伝達効率はよい。緩衝部材31(アルミ)を利用することにより、緩衝部材31(アルミ)と第1接合部材33(ハイテン)との間の接合が先に進む。ホーン部11(スチール)と緩衝部材31(アルミ)との間の音エネルギーの伝達効率の良さを利用して、ホーン部11(スチール)と第1接合部材33(ハイテン)との間の音エネルギーの伝達効率が上がることとなる。
【0035】
スチールの溶解温度は1300℃以上であり、アルミの溶解温度は約660℃である。この差を利用して、接合処理部5は、音エネルギーを利用して第1接合部材33(ハイテン)の原子を励起運動させて、緩衝部材31(アルミ)の溶解温度を上回る温度である660℃以上にまで上昇させる。これは、外部からの過熱ではなく、内部の自己発熱である。この現象が生じていることは、ハイテンが高温になったためにハイテンが焼けていることで確認することができる(
図4~
図6参照)。これにより、第1接合部材33(ハイテン)と第2接合部材35(アルミ)を接合する。第2接合部材35には溶解が発生する。また、第1接合部材33と第2接合部材35との界面には拡散層(合金)がある。同時に緩衝部材31(アルミ)と第1接合部材33(ハイテン)の間の強度も上がる。緩衝部材31に溶解が発生してバリとなってはみ出す。目視等によりこの状態を確認することにより、接合強度を判断することができる。
【0036】
さらに、ホーン部11(スチール)は、アルミには強く、焼けがなく摩耗等が発生しにくい。そのため、コストダウンが可能になる。このように、緩衝部材31の溶解温度が、ホーン部11の溶解温度よりも低いものとし、及び/又は、柔らかいものとすることにより、ホーンをダメージ(焼け、摩耗など)から守り、実用的になる。
【0037】
ステンレスとセラミックスの接合でも同様である。例えば、ホーン部11がスチールであり、第1接合部材33がステンレスであり、第2接合部材35がセラミックスである場合に、緩衝部材31はアルミである。ステンレスが真っ赤に灼熱するまで励起させることで瞬時に接合することができる。このとき、同様に緩衝部材31に溶解が発生してバリとなってはみ出す。目視等によりこの状態を確認することにより、接合強度を判断することができる。また、ホーンをダメージ(焼け、摩耗など)から守ることができる。
【0038】
このように、緩衝部材31を利用することにより、スチール同士の音波接合が可能となり、スチールとの異金属間やセラミックスなどとの異材料間接合も可能となった。
【0039】
特に、EC(Energy Concentration)突起接合は、例えば、スチールどうしの接合や、スチールと異金属間の接合に有効である。スチールは、硬く、溶解温度が1000度以上である。EC突起接合は、緩衝部材及び接合部材の少なくとも一つにおいて、他の部材との接触面に突起部を設けることにより、音エネルギーを集中させて加工するものである(特許文献1参照)。さらに、例えばハイテンとアルミA7075やA6063、A5052などのように、硬く、溶解温度差が大きな材質間の接合では、他の部材との接触面に溝加工したEC突起接合の利用が有効である。
【0040】
EC突起接合の突起部は、例えば緩衝部材31において、第1接合部材33との接触面に設けてもよい。また、例えば第1接合部材33において、緩衝部材31との接触面及び/又は第2接合部材35との接触面に設けてもよい。また、例えば第2接合部材35において、第1接合部材33との接触面に設けてもよい。
図1では、第2接合部材35において、接触面とは反対の面から打撃して接触面に窪みを形成することにより突起部37
1及び37
2を形成している。突起部37
1及び37
2を利用して音エネルギーを集中させて、原子の励起状態で660℃以上に自己発熱させることができる。
【0041】
本願発明により、例えば、音波振動(20kHz未満の振動、例えば15kHz)の領域を利用して溶解しない拡散接合から溶解接合までが可能となる。さらに、
図1にあるように両支持構造のWPS(両支持構造/DSSの接合装置の出力を2倍にすることが可能。Double Power System)を利用することにより、例えば周波数15kHzで1万ワットとなるような、音波振動を利用して圧力が小さな状態での大出力が可能である。このような大出力で、溶解温度が低いアルミから高い鉄やセラミックスまでの幅広い材質の接合が可能となった。
【0042】
本願発明は、緩衝部材、接合部材が平板状(突起などが形成されていない状態)でもよい。
【0043】
以上より、緩衝部材31は、柔らかく接合しやすいために、ホーン部11や第1接合部材33をダメージから守ることができる。さらに、緩衝部材31は、ホーン部11が直接当たり、緩衝部材31と第1接合部材33が、第1接合部材33と第2接合部材35よりも先に接合することで、ホーン部11による第1接合部材33への音エネルギーの伝達効率が上がり、例えばスチール同士も接合できることとなる。
【0044】
本願発明により、スチールを含む素材全般(例えば、スチール同士、スチールと異金属、スチールと非金属、スチールとセラミックス等の組み合わせなど)の接合が可能となった。さらに、接合強度の確保をも可能になった。さらに、各素材を溶かして接合することが可能となった。これにより、音波接合のアプリケーションの範囲や大きさの規模を飛躍的に広げ、音エネルギーの可能性の概念を変えることとなる。さらに、設備導入のコストを低減させるとともに、ホーンが長寿命となり、消耗品経費が削減できる。さらに、接合プロセスがシンプルになり、環境問題とエネルギーに貢献できる。
【0045】
なお、
図1では、振動子部が2つの例を説明したが、本願発明において、振動子部は、1つでもよく、3つ以上でもよい。
【0046】
図2及び
図3は、本願発明の概要を説明するための図である。
【0047】
図2(a)を参照して、音波接合における周波数、振幅及び荷重の関係を説明する。上から順に、ホーン、緩衝材、第1接合部材、第2接合部材、受け治具及びベースプレートがある。ホーンの振動方向は、横である。エネルギーレイヤは、緩衝材と第1接合部材との間(レイヤ1)、第1接合部材と第2接合部材の間(接合面、レイヤ2)、第2接合部材と受け治具の間(レイヤ3)及び受け治具とベースプレートとの間(レイヤ4)がある。レイヤ1、2、3及び4のエネルギーレイヤを制御する必要がある。一般に、周波数が低く、かつ、振幅が小さくなれば、荷重は大きくなる。周波数が高く、かつ、振幅が大きくなれば、荷重は小さくなる。周波数、振幅及び荷重について、レイヤ1~4において最適となる接合条件にする必要がある。
【0048】
図2(b)を参照して、例えばハイテン(第1接合部材)とアルミ(第2接合部材)の接合であれば、緩衝部材としてアルミを採用して、接合処理を実現することができる。ハイテン(第1接合部材)は、加振中、自己発熱して上下部材よりも高温になり、接合処理を実現することができる。
【0049】
図3(a)を参照して、例えばハイテン(第1接合部材)とハイテン(第2接合部材)の接合であれば、緩衝部材としてアルミを採用して、EC突起接合を利用した接合処理を実現することができる。
図3(a)の例では、ハイテン(第1接合部材)に、ハイテン(第2接合部材)との接合面側に突起部を設けている。
図3(a)の例では、接合部材の一面に対して柱状材で打撃を加えて、反対面に突起部を形成している(パンチングEC)。
【0050】
図3(b)を参照して、例えばハイテン(第1接合部材)とアルミ(第2接合部材)の接合であれば、緩衝部材としてアルミを採用して、EC突起接合を利用した接合処理を実現することができる。
図3(b)の例では、緩衝部材(アルミ)に、ハイテン(第1接合部材)との接合面側に凹凸溝加工を行い、突起部を形成している(凹凸溝加工EC)。
【0051】
図4は、緩衝部材としてアルミを使用した場合のハイテン(第1接合部材)とアルミ(第2接合部材)の接合例を示す図である。第1段階では、荷重2500N、R/T=3000ms、W/T=5.000s、振幅Amp.=46mmとし、第2段階では、荷重2500N、R/T=3000ms、W/T=7.000s、振幅Amp.=52mmとした。
【0052】
図5は、第1接合部材がハイテン(HTSS、厚さt=1.2)であり、第2接合部材はアルミ(A6063、厚さt=3.0)であり、緩衝部材はアルミ(A5052、厚さt=1.0)である場合の接合例を示す。
【0053】
図5(a)は、接合前の状態を示す。
図5(b)は、接合後の状態を示す。
図5(c)は、チッソ雰囲気下(N
2環境)で加工したものであり、
図5(b)と比較して、ほぼ酸化することなく綺麗な接合処理を実現することができている。
【0054】
図6は、凹凸溝加工ECによる実験結果を示す。
図6(a)及び(b)では、保護部材は、厚さt=2.0mmのアルミA7075であり、第1接合部材との接触面に凹凸溝加工がなされている。第1接合部材はハイテン(HTSS、厚さt=1.2mm)、第2接合部材はアルミ(A7075、厚さt=3.0mm)である。
図6(a)は、緩衝部材が接合後に外れた状態を示す。
図6(b)は、引張実験による実験結果を示す。引張強度は12.500kN(約1.25トン)であった。
【0055】
図6(c)は、押出形成品である第2接合部材(アルミ、A7075、厚さt=3.0mm)に、第1接合部材(ハイテン、HTSS、厚さt=1.2mm)を接合した例である。保護部材は、厚さt=2.0mmのアルミA7075であり、第1接合部材との接触面に凹凸溝加工がなされている。
【0056】
図7は、セラミックス超電導材どうしの接合の一例を説明するための図である。
図7(a)を参照して、ホーン51とアンビル53との間に、緩衝材アルミ55と、接合部材群がある。接合部材群は、上から、第1金属板57、第1セラミックス超電導材59、第2セラミックス超電導材61及び第2金属板63である。第1金属板57及び第2金属板63は、例えばスチールなどである。第1金属板57は、EC付きであり、下に突起が形成されている。緩衝材アルミ55の溶解温度は、金属板の溶解温度よりも低い。第1セラミックス超電導材59及び第2セラミックス超電導材61は、テープ状であり、互いに接する面がセラミックスである。
【0057】
ホーン51を用いて、例えば20kHzによるワンショット接合を行う。
図7(b)は、接合した状態の一例を示す。第1金属板57及び/又は第2金属板63の一瞬の高温度上昇を利用して、第1セラミックス超電導材59と第2セラミックス超電導材61どうしを接合する。接合レイヤは、接合装置の接合条件でコントロールすることができる。
【0058】
第1セラミックス超電導材59と第2セラミックス超電導材61の接合が目的であるため、緩衝材アルミ55、第1金属板57、第2金属板63では、接合がなされてもなされなくても問題はない。
【符号の説明】
【0059】
1 接合装置、3 制御部、5 接合処理部、7 移動部、9 圧力調整部、11 ホーン部、13 接触部、15 第1支持部、17 第2支持部、19 第1振動子部、21 第2振動子部、23 第1発振部、25 第2発振部、27 連結信号配線部、31 緩衝部材、33 第1接合部材、35 第2接合部材、51 ホーン、53 アンビル、55 緩衝材アルミ、57 第1金属板、59 第1セラミックス超電導材、61 第2セラミックス超電導材、63 第2金属板