(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】標的システム
(51)【国際特許分類】
F41J 5/06 20060101AFI20220302BHJP
F41J 1/01 20060101ALI20220302BHJP
A63F 9/02 20060101ALI20220302BHJP
A63H 33/18 20060101ALI20220302BHJP
A63F 13/837 20140101ALI20220302BHJP
A63F 13/215 20140101ALI20220302BHJP
【FI】
F41J5/06
F41J1/01
A63F9/02 B
A63H33/18 Z
A63F13/837
A63F13/215
(21)【出願番号】P 2020194720
(22)【出願日】2020-11-24
(62)【分割の表示】P 2016213794の分割
【原出願日】2016-10-31
【審査請求日】2020-12-24
(31)【優先権主張番号】P 2015214763
(32)【優先日】2015-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 自社ホームページ http://www.eitech.co.jp/ 平成28年6月20日掲載 エアガン射撃場 シューティングレンジTarget1新宿店 平成28年6月30日貸し出し 雑誌 ガンプロフェッショナルズ10月号,第144~149頁 平成28年8月27日発行
(73)【特許権者】
【識別番号】512198660
【氏名又は名称】株式会社エイテック
(74)【代理人】
【識別番号】100121131
【氏名又は名称】西川 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100082131
【氏名又は名称】稲本 義雄
(72)【発明者】
【氏名】永井 克己
【審査官】長谷井 雅昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/093511(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3046840(JP,U)
【文献】登録実用新案第3194671(JP,U)
【文献】特開2014-086459(JP,A)
【文献】特開2013-084893(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41J 5/06
F41J 1/01
A63F 9/02
A63H 33/18
A63F 13/837
A63F 13/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的に向かって飛翔する飛翔物体の衝突を撓むことによって受け止め、前記飛翔物体の反発を抑制する軟質の部材により構成され、前記標的の前方に平面的に配置される標的板と、
前記標的板の背面側に配置され、前記飛翔物体が前記標的板に衝突する際に発生する衝撃音を検出する検出部と
を有する標的装
置
を備え、
前記検出部が配置されている空間の前記標的板から背面側に向かう間隔が、基準面積と、前記間隔を求める対象の目的面積と、基準の前記間隔に基づいた比例定数とを用いて求められる規定間隔未満に設定されている
標的システム。
【請求項2】
前記規定間隔は、前記目的面積が、前記基準面積以下のサイズである場合、基準の前記間隔より狭く設定される
請求項1に記載の標的システム。
【請求項3】
前記規定間隔は、前記標的板に前記飛翔物体が衝突した際の前記標的板の凹み量以上となるように設定される
請求項1に記載の標的システム。
【請求項4】
前記規定間隔は、前記規定間隔をDとし、前記基準面積をS1とし、前記目的面積をS2とし、前記比例定数をkとして、下記の式(1)を用いて求められる
【数1】
請求項1に記載の標的システム。
【請求項5】
前記標的装置は、前記標的板の背面側に配置される背面板をさらに有し、
前記間隔は、前記標的板および前記背面板により挟まれる前記空間の間隔である
請求項1に記載の標的システム。
【請求項6】
前記標的となる標的画像が前記標的板または前記背面板に投影される
請求項5に記載の標的システム。
【請求項7】
前記標的となる標的画像を表示する表示装置をさらに備え、
前記間隔は、前記標的板および前記表示装置により挟まれる前記空間の間隔である
請求項1に記載の標的システム。
【請求項8】
前記表示装置は、前記標的装置に組み込まれるディスプレイパネルである
請求項7に記載の標的システム。
【請求項9】
前記標的装置の上面に設けられた固定板が前記表示装置の上面に係止されることで、前記標的装置が前記表示装置に対して固定される
請求項7に記載の標的システム。
【請求項10】
前記標的装置は、前記標的装置が前記表示装置に対して固定された状態で前記標的装置の重量を支えるように、高さを調整可能な脚部をさらに有する
請求項9に記載の標的システム。
【請求項11】
前記固定板に、前記標的装置の上面の背面側に係止されるストッパが設けられる
請求項9に記載の標的システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、標的システムに関し、特に、着弾位置などの測定精度を向上させることができるようにした標的システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プラスチック製の弾丸(以下、BB(Ball Bullet)弾と称する)を低圧の圧縮空気などで発射する機構を備えたトイガンであるソフトエアガンを使用して標的を射撃し、標的にBB弾が着弾したときの着弾位置に応じて得られるスコアを競う射撃競技が行われている。このような射撃競技では、BB弾の着弾位置を正確に検出することが重要である。
【0003】
そこで、本願出願人は、標的板にBB弾が着弾したときに発生する衝撃波を検出することで、標的板に着弾したBB弾の着弾位置や着弾速度、エネルギーなどを正確に算出することができる標的システムを提案している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の特許文献1で開示されている標的システムにおいても、十分に高精度に着弾位置などを算出することができるが、さらなる測定精度の向上が求められている。
【0006】
本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、着弾位置などの測定精度を向上させることができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の側面の標的システムは、標的に向かって飛翔する飛翔物体の衝突を撓むことによって受け止め、前記飛翔物体の反発を抑制する軟質の部材により構成され、前記標的の前方に平面的に配置される標的板と、前記標的板の背面側に配置され、前記飛翔物体が前記標的板に衝突する際に発生する衝撃音を検出する検出部とを有する標的装置を備え、前記検出部が配置されている空間の前記標的板から背面側に向かう間隔が、基準面積と、前記間隔を求める対象の目的面積と、基準の前記間隔に基づいた比例定数とを用いて求められる規定間隔未満に設定されている。
【0008】
本開示の第1の側面においては、標的板は、標的に向かって飛翔する飛翔物体の衝突を撓むことによって受け止め、その飛翔物体の反発を抑制する軟質の部材により構成され、標的の前方に平面的に配置される。また、標的板の背面側に配置される検出部により、飛翔物体が標的板に衝突する際に発生する衝撃音が検出される。そして、検出部が配置されている空間の標的板から背面側に向かう間隔が、基準面積と、間隔を求める対象の目的面積と、基準の間隔に基づいた比例定数とを用いて求められる規定間隔未満に設定される。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一側面によれば、着弾位置などの測定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の第1の実施の形態である標的システムの構成例を示す斜視図である。
【
図2】標的装置の第1の構成例を示す斜視図である。
【
図3】標的装置の第2の構成例を示す斜視図である。
【
図4】標的装置の第3の構成例を示す斜視図である。
【
図5】標的装置の第4の構成例を示す斜視図である。
【
図6】標的装置の第5の構成例を示す側面図である。
【
図7】着弾位置を示す操作画面の一例を示す図である。
【
図8】従来の標的装置における着弾位置を示す操作画面の一例を示す図である。
【
図9】着弾位置の測定精度を比較して説明する図である。
【
図10】本発明の第2の実施の形態である標的システムの構成例を示す斜視図である。
【
図14】標的装置を壁面に取り付けた状態を示す側面図である。
【
図15】空間の間隔を28mmに設定したときの着弾位置の検出結果の一例を示す図である。
【
図16】空間の間隔を18mmに設定したときの着弾位置の検出結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
<本発明の第1の実施の形態である標的システムの構成例>
【0015】
図1に示すように、標的システム10は、標的装置11、ディスプレイ12、およびPC(Personal Computer)13により構成されており、標的装置11の背面側にディスプレイ12が配置される。
【0016】
ユーザは、例えば、PC13を手元に設置し、標的装置11とPC13とを信号ケーブル14により接続し、ディスプレイ12とPC13とを映像ケーブル15により接続する。なお、例えば、標的装置11およびPC13は、ワイヤレス通信により接続されるように構成してもよい。そして、ユーザは、PC13を操作して、射的を行う際の標的を表す標的画像16をディスプレイ12に表示させる。
【0017】
その後、ユーザは、ソフトエアガン17の銃身を標的装置11に向け、その銃身に沿って固定されている照準器を覗き込んで、ディスプレイ12に表示される標的画像16に対して照準を合わせて射的を行うことができる。ソフトエアガン17から発射されたBB弾18は、標的装置11の回収機構によって散らばることなく回収ケース19に回収される。
【0018】
また、標的システム10では、標的装置11にBB弾18が着弾した着弾位置を検出することができ、その着弾位置を示す着弾マークPが、ディスプレイ12に表示される標的画像16に重畳して表示される。そして、標的システム10では、PC13の表示部にも、ディスプレイ12と同様の標的画像16が表示されており、ユーザは、PC13の表示部に表示される着弾マークPにより、BB弾18の着弾位置を詳細に確認することができる。
【0019】
このように標的システム10は構成されており、ディスプレイ12に表示される標的画像16を標的として着弾位置の正確さを競う競技に使用することができる。従って、標的装置11は、高精度に着弾位置を検出することができるように構成する必要がある。
【0020】
<標的装置の構成例>
図2は、標的装置11の第1の構成例を示す斜視図である。
【0021】
標的装置11は、
図1のディスプレイ12に表示される標的画像16を狙って射撃されたBB弾18を回収するとともに、BB弾18が着弾した際の着弾位置や着弾速度などを検出するための検出信号を出力する機能を備える。
【0022】
図2に示す一点鎖線の矢印は、射撃されたBB弾18の経路の一例を示しており、標的装置11に対してBB弾18が向かってくる側(
図2の右下側)を、標的装置11の前面側とし、その反対側(
図2の左上側)を標的装置11の背面側とする。
【0023】
図示するように、標的装置11は、筐体21、前面板22、背面板23、標的板24、捕集板25、排出口ノズル26、音響センサ27-1乃至27-4、および信号処理基板28を備える。
【0024】
また、標的装置11の背面側には、
図1に示したように、標的画像16を表示するLCD(Liquid Crystal Display)などから成るディスプレイ12が備わる。そして、標的装置11の奥に見える標的画像16に対して射撃されたBB弾18は、ディスプレイ12の前面側に設けられた透明な標的板24に当たり、標的装置11の内部で反射したり転がったりした後、標的装置11を前面側から見て左方に配置されている回収ケース19に回収される。
【0025】
筐体21は、上面板21a、右側面板21b、左側面板21c、および下面板21dを組み付けることで上下面および左右側面が構成され、前面および背面が開口した矩形の筒形状となっている。上面板21aは、筐体21の上側の面を構成する板状の部材であり、右側面板21bは、筐体21の右側の面を構成する板状の部材である。また、左側面板21cは、筐体21の左側の面を構成する板状の部材であり、下面板21dは、筐体21の下側の面を構成する板状の部材である。なお、筐体21は、図示するように複数枚の板状の部材で構成する他、例えば、射出成型などにより一体成型で構成することができる。
【0026】
前面板22は、筐体21の前方の開口部における下辺近傍を覆うように、筐体21に取り付けられる板状の部材である。
【0027】
背面板23は、筐体21の後方の開口部の全面を覆うように、筐体21に取り付けられる透明な板状の部材である。
【0028】
標的板24は、ディスプレイ12に表示された標的画像16を透過させるとともに、標的画像16に向かってソフトエアガンにより発射されたBB弾18の衝突を撓むことによって受け止め得る板状の部材から成り、全体的に平坦となるように、即ち、撓みが生じないように、上下端および左右端が筐体21の内面に対して前面側から固定される。例えば、標的板24には、衝撃による変形に対する復元速度が緩やかな材質からなるシート状の軟質の部材(具体的には、厚み2.0mmの軟質の塩化ビニル樹脂など)が用いられ、標的板24は、ディスプレイ12の前方において略垂直となるように張った状態で平面的に固定される。
【0029】
標的板24は、このような材質の部材を用いることで、BB弾18が標的板24に着弾したとき、ゆっくりと元の形状に復元することになり、標的装置11の外部に及ぶような跳弾の発生を抑止することができる。また、上述したように、標的板24を前面側から取り付けるようにしたので、ディスプレイ12および背面板23を取り外すことなく、標的板24を容易に交換することができる。
【0030】
また、背面板23および標的板24を透明な部材で構成することにより、ユーザは、ディスプレイ12に表示される標的画像16を標的装置11の前面側から視認することができる。
【0031】
捕集板25は、筐体21の内部であって、標的板24の前面側の空間であり、かつ、筐体21の前方の開口部の下端(前面板22の上端面)よりも下方の空間に配置され、全体的に、背面側に向かって下るとともに、左面側に向かって下るような傾斜を有するように固定される。
【0032】
排出口ノズル26は、筐体21の左側面板21cに形成されるBB弾の排出口を覆うように、左側面板21cの外面に取り付けられ、排出口から出たBB弾18を回収ケース19に導く。
【0033】
音響センサ27-1乃至27-4は、例えば、BB弾18が標的板24に着弾したときに生じる衝撃音を取得し、取得した衝撃音の振幅の変化に従った音響信号を信号処理基板28に供給する。
【0034】
音響センサ27-1乃至27-4の配置については、標的板24の背面側であって、それぞれ標的板24の四隅に近い位置となるように、筐体21の内側に固定される。例えば、音響センサ27-1は、左側面板21cの内側を向く面の上端近傍に配置され、音響センサ27-2は、右側面板21bの内側を向く面の上端近傍に配置される。また、音響センサ27-3は、左側面板21cの内側を向く面の下端近傍に配置され、音響センサ27-4は、右側面板21bの内側を向く面の下端近傍に配置される。以下、音響センサ27-1乃至27-4をまとめて音響センサ27と称する。
【0035】
なお、本実施の形態では4個の音響センサ27-1乃至27-4を用いた構成について説明するが、音響センサ27の個数は4個に限定されるものではない。例えば、3個や6個、8個など、標的装置11のサイズまたは形状に応じて、着弾位置などを適切に測定可能な個数の音響センサ27を用いることができる。例えば、6個の音響センサ27を用いる場合には、四隅に加え、上辺中央および下辺中央にも音響センサ27が配置される。
【0036】
信号処理基板28は、下面板21dと捕集板25との間の空間に配置される。そして、信号処理基板28は、BB弾18が標的板24に着弾したときに音響センサ27から出力される音響信号に対して所定の信号処理を施すことにより、BB弾18が標的板24に着弾したときの着弾位置や着弾速度などを検出するための検出信号を出力する。信号処理基板28による所定の信号処理では、音響信号を増幅して全波整流し、その振幅のピーク値を保持したピークホールド信号、および、ピークホールド信号を積分して得られる信号が基準値以上となったタイミングを示す衝撃音検出時刻信号を、検出信号として出力する。
この検出信号は、
図1のPC13に供給される。
【0037】
ここで、標的装置11では、音響センサ27が配置される空間29は、標的板24により前面側が閉鎖され、筐体21により上下および左右が閉鎖され、背面板23により背面側が閉鎖されている。即ち、音響センサ27は、基本的に、筐体21、背面板23、および標的板24によって外部から閉鎖されている空間29に配置される。
【0038】
一方、標的装置11は、複数の開口部31が背面板23に形成されることによって、空間29が部分的に外部に開放された構成となっている。例えば、
図2の例では、背面板23の上辺に沿って4つの開口部31-1乃至31-4が形成され、背面板23の下辺に沿って4つの開口部31-5乃至31-8が形成され、背面板23の左辺に沿って4つの開口部31-9乃至31-12が形成され、背面板23の右辺に沿って4つの開口部31-13乃至31-16が形成されている。なお、背面板23に形成される開口部31の個数や配置などは、図示する例に限定されることなく、音響センサ27から出力される音響信号の測定結果などに基づいた適切な個数や配置で、背面板23に開口部31を形成してもよい。
【0039】
このように、標的装置11は、音響センサ27が配置される標的板24の背面側の空間29に対して複数の開口部31を設けた構成となっている。このため、空間29は、複数の開口部31によって部分的に開口されているので、完全に開放的なものではなく、かつ、完全に閉鎖的なものとも異なって、衝撃音を適切に反響させつつ、圧力の上昇が適度に抑制されるものとなっている。従って、標的装置11では、開口部31を介して空間29に対する空気の出入りが容易に行われることより、例えば、BB弾18が標的板24に衝突することによる空間29の内部における圧力の上昇が適度に抑制される。
【0040】
以上のように構成されている標的装置11においては、射撃されたBB弾18が標的板24に着弾し、その衝撃力に応じて標的板24の面積が着弾位置を中心に極浅いすり鉢状に凹むことによってBB弾18の衝突による衝撃が吸収される。このように標的板24により着弾の衝撃が吸収されたBB弾18は、捕集板25に向かって落下し、捕集板25の傾斜に従って標的装置11内で背面側および左面側に向かって転がった後、左側面板21cの排出口から排出されて、排出口ノズル26を通過して回収ケース19に回収される。
【0041】
このように、標的装置11は、標的板24がBB弾18の衝撃を吸収することができ、捕集板25に向かってBB弾18が落下するように構成されているので、筐体21の外部にまで及ぶ跳弾を生じさせることなく、確実、かつ、容易にBB弾18を回収することができる。
【0042】
また、標的装置11の音響センサ27は、音響環境が定常的な空間29に配置されている。このため、音響センサ27は、より再現性の高い衝撃音を取得できる。換言すれば、音響センサ27は、BB弾18の着弾位置および着弾速度が同一であれば、ほぼ同一の衝撃音を取得することができる。
【0043】
つまり、標的装置11は、空間29に対して、後方の開口部が背面板23により覆われ、かつ、前方の開口部が標的板24により覆われる構成となっている。これにより標的装置11では、開口に張った膜の振動によって音を出す楽器(例えば、太鼓やティンパニなど)のように、BB弾18が標的板24に衝突する際の振動によって再現性のある衝撃音が発生する。
【0044】
従って、例えば、音響センサ27では、標的板24の所定の箇所にBB弾18が着弾するとき、同一の着弾条件(着弾位置、着弾速度、および弾重量)に対して、常に同一の衝撃音が取得される。これにより、音響センサ27から出力される音響信号に基づいて、BB弾18が着弾した標的板24上の位置である着弾位置や、標的板24に着弾した際のBB弾18の速度である着弾速度や、標的板24に着弾した際のBB弾18のエネルギーを高い精度で検出することができる。
【0045】
さらに、音響センサ27が空間29に配置されることにより、例えば、ソフトエアガンからBB弾18が撃ち出されたときの発射音が音響センサ27により取得されることを回避することができる。これにより、音響センサ27から出力される音響信号から、発射音の成分を除去する処理が不要になるので、BB弾18の着弾位置などをその分だけ速やかに演算できる。また、着弾位置などの演算精度を高めることができる。
【0046】
そして、標的装置11では、上述したように、複数の開口部31を背面板23に設けることより、BB弾18の着弾によって標的板24が撓むことで空間29の容積が急激に減少しても、開口部31を介して適切に空気が排出される。これにより、BB弾18が着弾した際の空間29内の圧力の上昇を適度に抑制することができるため、音響センサ27による衝撃音の取得を安定的に行うことができる。従って、標的装置11は、音響センサ27から出力される音響信号に基づいて求められる着弾位置や着弾速度、エネルギーなどのバラツキが抑制される結果、それらの検出精度を向上させることができる。
【0047】
また、標的装置11は、開口部31を背面板23に形成する構成により、例えば、空間29の前方が開口される構成よりも、音響センサ27が、BB弾18の発射音の影響を受けることを抑制することができる。
【0048】
さらに、標的装置11は、標的板24および背面板23が、ほぼ平行となるように、音響センサ27が配置可能な程度の一定間隔で、筐体21に固定されている。これにより、標的装置11は、ユーザから見て、標的板24にBB弾18が衝突した位置と、ディスプレイ12に着弾マークPが表示される位置との差を小さくすることができ、それらの差によって発生する違和感を少なくすることができる。もちろん、標的板24および背面板23の間隔は、BB弾18が着弾したことによって標的板24が撓んでも、背面板23には当接しない程度とする必要がある。
【0049】
次に、
図3は、標的装置11の第2の構成例を示す斜視図である。なお、
図3に示す標的装置11Aについて、
図2の標的装置11と共通する構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0050】
図3に示すように標的装置11Aは、筐体21、背面板23、および標的板24によって外部から閉鎖されている空間29に音響センサ27が配置される点で、
図2の標的装置11と同様の構成とされる。そして、標的装置11Aにおいても、BB弾18が標的板24に衝突するときの衝撃音に基づいて、BB弾18の着弾位置を検出することができる。
【0051】
一方、標的装置11Aでは、開口部31A-1および31A-2が筐体21に形成される点で、
図2の標的装置11と異なる構成となっている。即ち、標的装置11Aでは、筐体21を構成する左側面板21cに開口部31A-1が形成されており、筐体21を構成する右側面板21bに開口部31A-2が形成されている。
【0052】
開口部31A-1は、空間29に開口するように左側面板21cの後端近傍に、縦方向に細長いスロット形状に形成される。同様に、開口部31A-2は、空間29に開口するように右側面板21bの後端近傍に、縦方向に細長いスロット形状に形成される。
【0053】
このように構成される標的装置11Aにおいても、
図2の標的装置11と同様に、開口部31A-1および31A-2によって空間29の内部における圧力の上昇を適度に抑制することができる。従って、標的装置11Aは、着弾位置などの検出精度を向上させることができる。
【0054】
次に、
図4は、標的装置11の第3の構成例を示す斜視図である。なお、
図4に示す標的装置11Bについて、
図2の標的装置11と共通する構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0055】
図4に示すように標的装置11Bは、筐体21、背面板23、および標的板24によって外部から閉鎖されている空間29に音響センサ27が配置される点で、
図2の標的装置11と同様の構成とされる。そして、標的装置11Bにおいても、BB弾18が標的板24に衝突するときの衝撃音に基づいて、BB弾18の着弾位置を検出することができる。
【0056】
一方、標的装置11Bでは、筐体21に対してスペーサ32を挟み込んで背面板23を取り付ける構成によって、筐体21および背面板23の間に開口部31Bが設けられる点で、
図2の標的装置11と異なる構成となっている。即ち、標的装置11Bでは、筐体21の左側面板21cの後方に2個のスペーサ32-1および32-2を挟み込み、筐体21の左側面板21bの後方に図示しない2個のスペーサを挟み込むことで、標的装置11Bの上下面および左右面を一周するような開口部31Bが設けられる。
【0057】
このように構成される標的装置11Bにおいても、
図2の標的装置11と同様に、開口部31Bによって空間29の内部における圧力の上昇を適度に抑制することができる。従って、標的装置11Bは、着弾位置などの検出精度を向上させることができる。
【0058】
次に、
図5は、標的装置11の第4の構成例を示す斜視図である。なお、
図5に示す標的装置11Cについて、
図2の標的装置11と共通する構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0059】
図5に示す標的装置11Cは、筐体21、標的板24、およびディスプレイ12によって外部から閉鎖されている空間29に音響センサ27が配置される。即ち、標的装置11Cは、背面板23が取り外されている点で、
図2の標的装置11と異なる構成となっている。そして、標的装置11Cでは、筐体21の後端から所定の間隔を設けて、例えば、
図4のスペーサ32と同程度の間隔を設けて、ディスプレイ12が配置されている。これにより、筐体21およびディスプレイ12の間に、標的装置11Cの上下面および左右面を一周するような開口部31Cが設けられる。
【0060】
このように構成される標的装置11Cにおいても、
図2の標的装置11と同様に、開口部31Cによって空間29の内部における圧力の上昇を適度に抑制することができる。従って、標的装置11Cは、着弾位置などの検出精度を向上させることができる。
【0061】
次に、
図6は、標的装置11の第5の構成例を示す側面図である。なお、
図6に示す標的装置11Dについて、
図2の標的装置11と共通する構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0062】
図6に示す標的装置11Dは、ディスプレイパネル33が筐体21Dに組み込まれる構成となっており、標的板24とディスプレイパネル33とに挟まれた空間29に音響センサ27が配置される。つまり、標的装置11Dでは、上述した背面板23に替えて、ディスプレイパネル33が標的板24の背面側に配置されるように、標的装置11Dの内部にディスプレイパネル33が組み込まれて構成される。
【0063】
そして、標的装置11Dでは、筐体21Dの両側面のディスプレイパネル33よりも背面側に、縦方向に細長いスロット形状の開口部31Dが形成される。なお、例えば、開口部31Dは、ディスプレイパネル33で発生する熱を排出する排熱口としての機能も備えることができる。さらに、例えば、ディスプレイパネル33を収納する筐体21Dの背面板に開口部31Dが形成される構成としてもよい。
【0064】
このように構成される標的装置11Dにおいても、
図2の標的装置11と同様に、開口部31Dによって空間29の内部における圧力の上昇を適度に抑制することができる。従って、標的装置11Dは、着弾位置などの検出精度を向上させることができる。
【0065】
なお、上述した標的装置11A乃至11Dの構成は、一例であって、空間29の内部における圧力の上昇を適度に抑制することができれば、開口部31の形状や個数、配置などについて、適宜、適切なものを採用することができる。以下では、開口部31が適切に設けられた標的装置11により求められる着弾位置、着弾速度、およびエネルギーについて説明する。例えば、着弾速度は、音響センサ27-1乃至27-4それぞれにより検出される音響信号の振幅の平均値に比例するものとなり、エネルギーは、音響センサ27-1乃至27-4それぞれにより検出される音響信号の振幅の二乗に比例するものとなる。
【0066】
<操作画面の表示例>
【0067】
次に、
図7は、PC13の表示部に表示される操作画面の一例を示す図である。
【0068】
図7に示す操作画面50には、ターゲットパネル51、スコアパネル52、弾速計パネル53、コマンドパネル54、およびスコアボード55が表示される。
【0069】
ターゲットパネル51には、標的システム10を用いて射的競技を行う際に、選択された標的画像16が表示され、
図7の例では、標準ターゲットが表示されている。また、ターゲットパネル51には、BB弾18が標的板24に着弾することにより検出される検出信号に基づいて求められる着弾位置に応じた着弾マークが表示され、
図7の例では、垂直方向に対して一定の高さで、例えば、1cm間隔でソフトエアガン17を水平方向へ移動させながら、射撃を行った結果から求められた22カ所の着弾マークが表示されている。
【0070】
スコアパネル52には、ターゲットパネル51に表示される標的画像16を用いた射的競技に応じたスコアが表示される。例えば、
図7の例では、BB弾18の着弾が検出された回数、BB弾18がターゲットに着弾した回数、BB弾18の着弾位置に応じた得点および総合得点、並びに、競技の残り時間が表示されている。
【0071】
弾速計パネル53には、BB弾18が標的板24に着弾したときのエネルギーおよび着弾速度が表示される。また、弾速計パネル53には、1秒間にBB弾18の着弾を検出した回数であるサイクル回数、予め入力された弾径および弾重量が表示される。
【0072】
コマンドパネル54は、ターゲットパネル51に表示される標的画像16を用いた射的競技に応じた各種の設定項目の入力に用いられる。
【0073】
スコアボード55には、BB弾18の着弾を検出するごとに、スコア、中心から着弾位置に向かう方向、着弾を検出した時刻、エネルギー、および着弾速度が表示される。
図7の例では、ターゲットパネル51に表示される22カ所の着弾マークに対応して、それぞれのスコア、中心からの方向、着弾時刻、エネルギー、および着弾速度が表示されている。
【0074】
例えば、スコアボード55に示されている着弾速度は、図示するように、52.6~55.6m/sの範囲内に収まっている。また、エネルギーは、0.28~0.31ジュールの範囲内に収まっている。
【0075】
一方、従来の標的装置の構成では、即ち、標的装置11のように空間29に対して開口部31が設けられていない構成では、着弾速度およびエネルギーのどちらも、ばらつきが大きくなっている。
図8には、従来の標的装置を用いて、
図7と同様の条件で射的を行ったときの操作画面が示されている。
図8に示すように、従来の標的装置では、着弾速度は、68.8~77.1m/sの範囲となっており、エネルギーは、0.47~0.59ジュールの範囲となっている。
【0076】
このように、開口部31が適切に設けられた標的装置11では、従来の標的装置と比較して、着弾速度およびエネルギーのどちらも、値が小さくなっているとともに、バラツキが小さく抑えられている。
【0077】
例えば、標的装置11は、標的板24および背面板23が、ほぼ平行となるように配置されていることから、背面板23の周囲部分に開口部31(
図2参照)を設けても、標的板24および背面板23の中心部では、それらの間で衝撃音が共鳴していると考えられる。このため、標的装置11では、音響センサ27が、安定した音響信号を取得することができる。また、標的装置11では、開口部31を設けることにより、音響センサ27-1乃至27-4それぞれの配置位置に依存して音圧に生じる違いを抑制することができる。
【0078】
また、開口部31を設けることにより、例えば、有孔ボードと同様に、空間29を拡げるのと同様の効果を得ることができるので、小型の標的装置11であっても、音響センサ27により衝撃音を安定的に検出することができる。
【0079】
従って、標的装置11は、着弾速度が振幅に比例し、その測定の再現性が高くなることより、音響センサ27-1乃至27-4それぞれが衝撃音を検出するタイミングの差に基づいて求められる着弾位置の測定精度も向上することになる。また、標的装置11は、製造する際の工作精度や、組み上げた後の調整作業などについて、従来の標的装置よりも簡易化しても、測定精度が低下することを回避することができる。例えば、標的装置11は、標的板24を交換する際の再調整も不要とすることができる。
【0080】
即ち、樹脂板である標的板24および背面板23を板金加工の筐体21に固定する際に、標的板24および背面板23が湾曲することによって不規則な隙間が発生してしまい、空間29を密閉状態とする場合には、この隙間の影響が大きくなる結果、個体ごとの調整や、標的板24を交換する際の再調整などが必要になる。これに対し、不規則な隙間よりも十分に大きな開口部31を設けて空間29が部分的に外部に開放された状態とすることで、空間29の音響特性の殆どが開口部31により決定されることになる結果、不規則な隙間の影響を無視できるほどに排除することができる。従って、標的装置11は、開口部31の位置や形状、大きさなどに合わせた補正データを用意することで、上述したように測定の再現性が高くなるなどの効果を得ることができる。
【0081】
ここで、
図9を参照して、着弾位置の測定精度について比較して説明する。
【0082】
図9Aは、
図7のターゲットパネル51に表示される着弾マークを拡大して図示しており、水平方向に沿って補助線が図示されている。同様に、
図9Bは、
図8のターゲットパネル51に表示される着弾マークを拡大して図示しており、水平方向に沿って補助線が図示されている。
【0083】
図9Bに示すように、従来の標的装置では着弾マークの垂直方向のバラツキが大きいのに対し、
図9Aに示すように、開口部31が適切に設けられた標的装置11では、相対的に、着弾マークの垂直方向のバラツキが小さくなっている。即ち、標的装置11では、開口部31により空間29を部分的に開口することで、着弾位置の測定精度が向上していることが示されている。
【0084】
例えば、開口部31によって空間29が部分的に開口されることで、空間29がより閉鎖的である状態と比較して、その内部の空気が圧縮される度合いが異なることになる。そのため、開口部31が適切に設けられた標的装置11では、従来の標的装置と比較して、音響センサ27-1乃至27-4により検出される音響信号の振幅の平均値が小さくなっている。このことも、信号処理基板28による信号処理に影響を与えていると考えられるが、標的装置11の方が、音響信号の振幅が安定する効果によって、従来の標的装置よりも、より高精度に着弾位置を求めることができる。
【0085】
特に、
図7および
図9Aに示す着弾マークを求めた実験では、上側に配置される音響センサ27-1および27-2の真上の上面板21aに開口部31を形成した標的装置11を用いており、有孔ボードと同様に、空間29の上部を拡げるのと同様の効果を得ることができる。このため、衝撃音が空間29内で反射することによる音響センサ27-1および27-2に対する音圧の上昇が抑制されることになる。このように、開口部31を適切に設け、空間29内で反射する衝撃音の音圧が音響センサ27-1乃至27-4においてバランスよく検出されるようにすることで、着弾位置の測定精度の向上を図ることができる。
【0086】
また、標的装置11は、標的板24の背面側の空間29に音響センサ27を配置することで、外部の音を遮音するだけでなく、例えば、太鼓やティンパニのような共鳴によっても、音響センサ27への外部の音の影響を削減し、音響センサ27ごとに検出値に差が生じることを抑制して、測定精度や安定性を向上させることができる。そして、密閉性の高い共鳴体を利用して音階を奏でるティンパニにしても、共鳴体の底には穴が開いており完全に密閉されたものではなく、標的装置11に設けられる開口部31も同様に、空間29を密閉させることのないように設けられている。例えば、仮に、ティンパニが完全に密閉する構造であった場合には、音が詰まってしまうため安定した音を出すことができなくなると考えられる。
【0087】
つまり、標的装置11においても、開口部31を設けることで、空間29の内部で空気が圧縮されるのを防止し、衝撃音が安定的になると考えられる。これにより、音響センサ27から出力される音響信号も安定したものとなる。
【0088】
また、ティンパニなどの楽器では、穴の大きさにより、音の伸びが違ったものとなり、穴を小さくすると、音が良く伸びるようになる一方、小さくしすぎると悪影響が出ることになる。同様に、標的装置11においても、適切な大きさの開口部31を設けることで、音の伸びを調整することができ、ソフトエアガン17の高速連射時にも漏らすことなく、着弾位置を検出することができる。つまり、標的装置11では、複数の開口部31を背面板23に設けることより、空間29が密閉された状態と比較して、標的板24の振動が収束されるまでの時間を短縮することができる。これにより、音響センサ27により検出される衝撃音の伸びが短くなるため、標的装置11は、例えば、BB弾18を高速で連続的に射撃すること(高速連射)にも対応して、高精度に連続的に着弾位置などを求めることができる。
【0089】
また、標的装置11では、空間29の内部の音圧が上昇し過ぎることを抑制することができるので、高い音圧に耐えられる音響センサ27を選択する必要がなく、音響センサ27の選択幅を広げることができる。
【0090】
以上のように、標的装置11は、空間29に適切な開口部31を設けることで、空間29の内部の圧力の変化を安定させることができ、音圧の調整や音の伸びなどが最適になるように調整することができる。これにより、標的装置11は、BB弾18が標的板24に着弾したときの着弾位置や着弾速度、エネルギーの測定精度を向上させることができる。
【0091】
<本発明の第2の実施の形態である標的システムの構成例>
【0092】
図10乃至16を参照して、標的システムの第2の実施の形態について説明する。なお、
図10に示す標的システム100について、
図1の標的システム10と共通する構成については同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0093】
図10に示すように、標的システム100は、標的装置101、ディスプレイ12、およびPC13により構成されており、標的装置101の背面側にディスプレイ12が配置される。即ち、標的システム100は、
図1の標的システム10の標的装置11に替えて標的装置101を備える点で、
図1の標的システム10と異なる構成となっている。
【0094】
また、標的システム100において、ソフトエアガン17から標的装置101に向かって発射されたBB弾18は、標的装置101の標的板24が撓むことによって衝突の勢いが吸収される。そして、標的装置101の標的板24に着弾したBB弾18は、標的装置101の手前側の下方に配置される回収トレー102に落下して回収される。
【0095】
このように構成される標的システム100は、
図1の標的システム10と同様に、ディスプレイ12に表示される標的画像16を標的として発射されたBB弾18の着弾位置を高精度に検出して、着弾マークPを表示することができる。
【0096】
<標的装置の構成例>
【0097】
図11乃至
図13を参照して、標的装置101の構成例について説明する。
図11には、標的装置101の正面図が示されており、
図12には、標的装置101の平面図が示されており、
図13には、標的装置101の側面図が示されている。なお、
図11乃至
図13に示す標的装置101について、
図2の標的装置11と共通する構成については同一の符号を付して説明する。
【0098】
図示するように、標的装置101は、背面板23、標的板24、音響センサ27-1乃至27-4、外周枠111、およびコントロールユニット112を備える。
【0099】
標的装置101では、背面板23が、標的装置101の背面側(
図13に示すように、ディスプレイ12が配置される側)となるように外周枠111に取り付けられるとともに、標的板24が、標的装置101の表面側となるように外周枠111に取り付けられる。
そして、標的装置101では、背面板23、標的板24、および外周枠111により囲われる空間29内に音響センサ27-1乃至27-4が配置される。
【0100】
背面板23は、例えば、厚み3.0mmのアクリル樹脂などからなる透明な板状の部材である。また、背面板23は、複数本のネジにより所定のピッチで、背面板23の外周を周枠111に対して固定することで、外周枠111に取り付けられる。
【0101】
標的板24は、例えば、厚み2.0mmの軟質の塩化ビニル樹脂などからなるシート状の部材である。また、標的板24は、複数本のネジにより所定のピッチで、標的板24自体が撓むことのないように、標的板24の外周を外周枠111に対して固定することで、外周枠111に取り付けられる。従って、標的板24は、外周枠111よりも内側の範囲において、即ち、
図11に示す破線で囲われる高さHおよび長さLの範囲において、自由に振動することができる。
【0102】
音響センサ27-1乃至27-4は、
図2の標的装置11と同様に、標的板24の背面側であって、それぞれ標的板24の四隅に近い位置に配置される。例えば、音響センサ27-1は、外周枠111の左側面を構成する部材の内側を向く面の上端近傍に配置され、音響センサ27-2は、外周枠111の右側面を構成する部材の内側を向く面の上端近傍に配置される。また、音響センサ27-3は、外周枠111の左側面を構成する部材の内側を向く面の下端近傍に配置され、音響センサ27-4は、外周枠111の右側面を構成する部材の内側を向く面の下端近傍に配置される。
【0103】
外周枠111は、背面板23および標的板24の外周を固定するための枠形状の部材である。また、外周枠111は、音響センサ27が配置される空間29の間隔D(
図13)、即ち、背面板23および標的板24の間の距離となる幅の細長い部材によって、上下側面および左右側面が形成され、正面から見たときにロ字形状となるように形成される。
【0104】
また、外周枠111の上側面の中央には、主固定板121が固定されるとともに、外周枠111の上側面の両端近傍には、補助固定板122および123がそれぞれ固定される。主固定板121並びに補助固定板122および123は、標的装置101をディスプレイ12に固定するのに利用される。例えば、
図12および
図13に示すように、主固定板121並びに補助固定板122および123は、外周枠111から背面側に突出するように固定されている。そして、
図13に示すように、それらの突出している部分の下側を向く面に緩衝用ゴム板141が貼着されるとともに、緩衝用ゴム板141にストッパ142が取り付けられている。ストッパ142は、例えば、背面板23から背面側に向かってディスプレイ12の上面の幅に応じた間隔が設けられるように調整して取り付けることができる。
【0105】
また、外周枠111の下側面の両端近傍には、脚部131および132がそれぞれ回転可能に固定されており、脚部131にアジャスタ133が取り付けられるとともに、脚部132にアジャスタ134が取り付けられている。
【0106】
コントロールユニット112は、例えば、
図2の信号処理基板28を収納する筐体であり、主固定板121の上側に固定される。また、コントロールユニット112には、音響センサ27-1乃至27-4から出力される音響信号を入力するための信号線(図示せず)が接続されている。そして、
図13に示すように、コントロールユニット112の側面には、
図10の信号ケーブル14を接続するためのコネクタ143、および、コントロールユニット112に電源が供給されていることを示す電源表示LED(Light Emitting Diode)144が設けられている。
【0107】
このように構成される標的装置101は、
図13に示すように、ディスプレイ12に対して固定した状態で使用することができる。
【0108】
例えば、主固定板121並びに補助固定板122および123の下側を向く面を、緩衝用ゴム板141を介してディスプレイ12の上面に当接させた状態とし、ストッパ142によりディスプレイ12の上面の背面側が係止されることで、標的装置101がディスプレイ12に対して固定される。さらに、この状態で、アジャスタ133および134の高さを調整して、アジャスタ133および134が標的装置101の重量を支えることにより、標的装置101の重量がディスプレイ12に掛かることを軽減することができる。
【0109】
また、標的装置101では、空間29が部分的に外部に開放された構成とするために、
図12に示すように、外周枠111の上側面に、複数の開口部31が形成されている。このように複数の開口部31を設けることによって、上述したように、BB弾18が標的板24に着弾した際の空間29内の圧力の上昇を適度に抑制することができるため、音響センサ27による衝撃音の取得を安定的に行うことができる。なお、対称性を考慮して、外周枠111の上側面と同様に、外周枠111の下側面にも複数の開口部31を形成することにより音響特性のバランスを良好にすることができる。
【0110】
なお、複数の開口部31を通過して空間29にBB弾18が入り込むことを防止するために、
図12において破線で示す範囲に、通気性の良好な布が貼り付けられている。この布により、空間29に埃が入り込むことも防止することができる。または、空間29にBB弾18が入り込むことを防止するために、例えば、目の細かいメッシュ板や穴あき板などを貼り付けたり、開口部31の直径がBB弾18の直径以下となるように加工したりしてもよい。
【0111】
また、
図14には、標的装置101を壁面151に固定して使用する状態が示されている。
【0112】
上述の
図12に示すように、主固定板121の後端近傍には、壁掛け用の穴124-1が形成されている。同様に、補助固定板122の後端近傍には、壁掛け用の穴124-2が形成されており、補助固定板123の後端近傍には、壁掛け用の穴124-3が形成されている。
【0113】
そして、これらの壁掛け用の穴124を、
図14に示すように、壁面151に固定された壁掛けフック152に対して係止することで、標的装置101を壁面151に固定することができる。このとき、脚部131および132は、標的装置101の後方に向かうように回転させた状態として、アジャスタ133および134を壁面151に当接させることで、標的装置101を垂直に保つことができる。
【0114】
なお、標的装置101を壁面151に固定して使用する際には、例えば、
図10に示すような標的画像16が描かれた標的紙(図示せず)が、背面板23の裏面に貼り付けられ、その標的紙に向かって射的が行われる。あるいは、背面板23の背後の壁面151に対して、標的画像16が描かれた標的紙を設置してもよい。
【0115】
ところで、標的装置101では、標的板24および背面板23に挟まれた空間29の間隔Dを適切に設定することで、BB弾18が標的板24に着弾したときの衝撃音を、標的板24および背面板23の間で共鳴させることができる。このように衝撃音が共鳴することによって、音響センサ27-1乃至27-4それぞれが安定した検出値を得ることができる結果、標的装置101は、BB弾18の着弾位置や着弾速度、エネルギーなどを高精度に求めることができるようになる。
【0116】
ここで、標的装置101における適切な空間29の間隔Dの設定について説明する。
【0117】
例えば、本願出願人は、
図2に示したような構成の標的装置11を、対角の長さが17インチスクエアのディスプレイ12に合わせて製造している。このとき、BB弾18の着弾時に標的板24が撓んでも、標的板24が背面板23には当接しない程度に、標的板24および背面板23の間隔を17.4mmに設計していた。このように、17インチ用の標的装置11では、標的板24および背面板23の間隔を17.4mmに設定することで、BB弾18の着弾位置を非常に良好に検出することができた。さらに、標的板24および背面板23の間隔を17.4mmよりも狭く設定し、実験的に、BB弾18の着弾位置の検出を行ったところ、検出精度の更なる向上が確認された。
【0118】
例えば、17インチ以下のディスプレイ12に適用させて小型化するときには、標的板24の撓みも小さくなるため、標的板24および背面板23の間隔を17.4mmより狭く設定することができる。これに対し、17インチ以上のディスプレイ12に適用させて大型化するときには、標的板24に軟質の部材を採用していることより、サイズの増加に伴って標的板24に発生する撓みの変動幅(凹み量)が大きくなると想定される。
【0119】
そこで、標的装置101では、17インチ以上のディスプレイ12に適用して設計する際に、次の式(1)を満たすように求められる間隔D(単位:mm)を規定間隔とし、その規定間隔未満となるように空間29の間隔Dを設定することが好ましい。
【0120】
【0121】
但し、式(1)において、基準面積S1は、基準となる標的装置11の有効面積が適用される。例えば、標的装置11が17インチスクエアのディスプレイ12に合わせて設計されている場合、基準面積S1には、17インチスクエア画面よりも一回り大きな、106,359mm2(=363×293)が用いられる。ここで、標的装置11の有効面積は、筐体21の内側に固定される標的板24が自由に振動することができる範囲の面積(例えば、標的板24の固定に利用される外周部分より内側の面積、または、透明な標的板24の背後が視認可能な範囲の面積と同等)であり、BB弾18が標的板24に着弾したことを検出するのに有効な範囲の面積である。
【0122】
また、目的面積S2は、式(1)を用いて適切な間隔Dを求める対象となる標的装置101の有効面積が適用される。ここで、標的装置101の有効面積は、外周枠111を利用して外周が固定される標的板24が自由に振動することができる範囲の面積であり、BB弾18が標的板24に着弾したことを検出するのに有効な範囲の面積である。即ち、
図11を参照して説明すると、高さHおよび長さLの破線で囲われた範囲よりも外周側では、標的板24の背面に外周枠111があるため、標的板24は自由に振動することができない。これに対し、高さHおよび長さLの破線より内側の範囲では、標的板24は自由に振動することができ、この範囲が、標的装置101の有効面積となる。
【0123】
また、比例定数kは、17インチのディスプレイ12に合わせて設計された標的装置11が基準となるので、上述したように、標的装置11において標的板24および背面板23の間隔として用いられていた17.4mmを採用することができる。
【0124】
従って、例えば、32インチワイド(対角の長さが32インチで、縦横比が16:9)のディスプレイ12に合わせて標的装置101を設計する場合には、目的面積S2に、32インチワイド画面よりも一回り大きな、328,696mm
2(=724×454、
図11の長さLおよび高さH参照)が採用される。従って、この場合、空間29の間隔Dの規定間隔は、式(1)に従って30.6mmと求められる。即ち、32インチワイド用の標的装置101は、空間29の間隔Dが30.6mm未満となるように設計することで、BB弾18の着弾位置を良好に検出することができる。
【0125】
同様に、例えば、60インチワイドのディスプレイ12に合わせて標的装置101を設計する場合には、32インチ用と同じ割合で画面サイズに対する余裕幅を設けたとすると、60インチワイドのディスプレイ12の面積は、32インチワイドのディスプレイ12の面積の3.63倍であると想定されるので、目的面積S2に、1,193,166mm2(=328,696×3.60)が用いられる。従って、この場合、空間29の間隔Dの規定間隔は、式(1)に従って58.3mmと求められる。即ち、60インチワイド用の標的装置101は、空間29の間隔Dが58.3mm未満となるように設計することで、BB弾18の着弾位置を良好に検出することができる。
【0126】
このように、標的装置101は、空間29の間隔D、即ち、標的板24および背面板23の間隔を、標的装置11を基準として適切に設定することができ、BB弾18の着弾位置を高精度に検出することができる。
【0127】
ここで、
図15および
図16を参照して、空間29の間隔Dに応じた検出精度の違いについて説明する。
【0128】
図15には、空間29の間隔Dを28mmに設定したときの着弾位置の検出結果の一例が示されており、
図16には、空間29の間隔Dを18mmに設定したときの着弾位置の検出結果の一例が示されている。
【0129】
図15および
図16には、上述した
図7と同様に、PC13の表示部に表示される操作画面50が示されており、垂直方向に対して一定の高さで、例えば、2cm間隔でソフトエアガン17を水平方向へ移動させながら、射撃を行った結果から求められた24カ所の着弾マークが表示されている。
【0130】
また、操作画面50のスコアボード55に示されている着弾速度(m/s)は、BB弾18が標的板24に着弾したときに、音響センサ27-1乃至27-4それぞれが検出した衝撃音の振幅の平均値に比例する。なお、音響センサ27-1乃至27-4は、BB弾18が標的の中央に着弾したときに、それぞれが取得する衝撃音の振幅が同じ値を示し、それらの平均値が、使用したソフトエアガン17の弾速(65 m/s)と同程度となるように、それぞれの増幅度が調整されている。
【0131】
図15および
図16を見比べて分かるように、空間29の間隔Dを18mmに設定した構成(
図16)は、空間29の間隔Dを28mmに設定した構成(
図15)よりも、中心部と周辺部とにおいて、着弾時のエネルギー(Joule)の差が小さくなっている。このように、中心部と周辺部とにおいて、着弾時のエネルギー(Joule)の差が小さくなることは、音響センサ27-1乃至27-4による衝撃音の検出精度が向上していることを示している。
【0132】
また、上述したように増幅度を調整した状態で、標的の中央にBB弾18を着弾させたとき、空間29の間隔Dを28mmに設定した構成(
図15)における着弾速度の検出結果は65.4m/sであった。また、空間29の間隔Dを18mmに設定した構成(
図16)において、同じ個所にBB弾18を着弾させたときの着弾速度の検出結果が同じく65.4m/s程度となる増幅度を、空間29の間隔Dが28mmのままの状態で設定して計測した着弾速度の検出結果は41.4m/sであった。そして、着弾速度は衝撃音の振幅に比例することより、空間29の間隔Dを28mmから18mmに変更することで、衝撃音の音圧が約1.6倍(≒65.4/41.4)に増加することが分かる。
【0133】
従って、標的装置101は、空間29の間隔Dを狭く設定することで、音響センサ27-1乃至27-4により検出される衝撃音の音圧が上昇し、中心部と周辺部との音圧差が減少することより、衝撃音の検出精度が向上することになる。そして、それらの衝撃音が検出される時間差に基づいて着弾位置を求める際の閾値は同じであることから、音響センサ27-1乃至27-4により検出される衝撃音の振幅差が小さくなる結果、着弾位置の検出精度が確実に向上することになる。
【0134】
また、標的装置101では、空間29の間隔Dを狭く設定することにより、射的を行うユーザから見たときに、BB弾18が標的板24に着弾した位置と、ディスプレイ12に表示される着弾マークPとの誤差(以下、視認誤差と称する)を小さくすることができる。即ち、ディスプレイ12よりも標的板24が手前側にあるため、空間29の間隔Dが広い場合には、ユーザが視認する着弾位置よりも内側にずれた位置に、着弾マークPが表示されることになり、ユーザに違和感が生じることがあった。
【0135】
これに対し、標的装置101では、空間29の間隔Dを狭く設定することで、例えば、32インチワイド用の標的装置101において空間29の間隔Dを30.6mm未満に設定することで、視認誤差を小さくすることができる。これにより、視認誤差によってユーザに違和感が生じることを抑制することができる。
【0136】
なお、上述したように、空間29の間隔Dを狭く設定することでBB弾18の着弾位置の検出精度を向上させることができるが、BB弾18の着弾時に、標的板24が撓んで背面板23に当接してしまうことは好ましくない。そこで、標的板24が撓んでも背面板23に当接しない程度の空間29の間隔Dを特定することが必要となる。例えば、標的装置101を垂直にした状態で、標的板24の中央を押してみたときの撓みが背面板23まで届かないことにより確認したり、標的装置101を水平にした状態で、標的板24の自重による撓みが背面板23まで届かないことにより確認したりし、そのように確認した撓みに、BB弾18の着弾時の凹み量を予想して加えることで、標的板24が背面板23に当接しない空間29の間隔Dを特定することができる。
【0137】
さらには、例えば、18歳以上用のソフトエアガン17(0.45Jおよび0.87Jなど)を用いて、標的板24の中央にBB弾18を着弾させて、標的板24の撓みを実測することもできる。なお、ソフトエアガン17によりBB弾18を連射しても、標的板24の撓みは、BB弾18を連射していないときと同等であった。これは、BB弾18を連射しても、次弾が着弾するまでに、標的板24の撓みが元に戻るためと考えられる。
【0138】
また、標的板24の撓みは、例えば、標的板24の撓みが背面板23まで届いたときにBB弾18が大きく跳ね返ることを観察することにより実測することができる。例えば、空間29の間隔Dを1mmずつ狭くしていき、BB弾18が標的板24に着弾したときの跳ね返りを観察し、BB弾18が大きく跳ね返ったときの空間29の間隔Dを、BB弾18が標的板24に着弾したときに発生する撓み(凹み量)とすることがでる。
【0139】
さらに、標的板24の撓みを実測する別の方法としては、例えば、液体の塗料を塗布した板を背面板23の表面に貼着し、その板の厚みを1mmずつ増加させて空間29の間隔Dを狭くしていき、その塗料が標的板24の背面に付着したときの間隔Dを特定する。即ち、塗料が標的板24の背面に付着したときの空間29の間隔Dを、BB弾18が標的板24に着弾したときに発生する撓み(凹み量)とすることがでる。例えば、0.87Jのソフトエアガン17を用いて、凹み量は5mm程度であると実測することができた。
【0140】
このように、標的装置101は、標的板24にBB弾18が着弾したときの凹み量を特定し、空間29の間隔Dを、少なくとも凹み量以上となるように設定することが必要である。
【0141】
ところで、上述した5mm程度の凹み量は、17インチ用および32インチ用のサイズの標的板24を0.87Jのソフトエアガンで射撃して計測した結果である。このように実際に計測した結果、どちらのサイズでも、凹み量は略5mmであった。従って、標的板24のサイズを変更しても凹み量に変化が見られない点を考慮して、上述した式(1)を、次の式(2)の様に変形してもよい。例えば、式(2)を採用して標的装置101を設計した構成は、式(1)を採用したときの構成よりも、より狭い間隔Dで、BB弾18の着弾時に標的板24が背面板23に当接することを回避することができる。即ち、式(2)は、BB弾18の着弾時に標的板24が背面板23に当接することを回避したうえで、無駄のない合理的な第2の規定間隔を求めることができる。
【0142】
【0143】
但し、式(2)において、凹み量d(単位:mm)は、18歳以上用のソフトエアガンで発射したBB弾18が着弾したときに標的板24が凹む量であり、実測値として5mmを採用することができる。
【0144】
また、比例定数kは、17インチのディスプレイ12に合わせて設計された標的装置11を基準とすると、12.4mm(=17.4-5.0)を採用することができる。即ち、比例定数kは、標的装置11で採用されていた間隔(17.4mm)から、凹み量(5.0mm)を減算した値である。上述したように、標的板24のサイズを変更しても凹み量に変化が見られず、凹み量dは5mm程度であったことより、比例定数kとして12.4mm(=17.4-5.0)を採用することで、単純に17.4を採用するよりも、より適切な規定間隔が求められる。
【0145】
なお、基準面積S1および目的面積S2は、上述した式(1)と同様の値が用いられる。即ち、基準面積S1には、基準となる標的装置11の有効面積が適用され、目的面積S2には、式(2)を用いて適切な間隔Dを求める対象となる標的装置101の有効面積が適用される。
【0146】
従って、例えば、32インチワイド(対角の長さが32インチで、縦横比が16:9)のディスプレイ12に合わせて標的装置101を設計する場合には、目的面積S2に、32インチワイド画面よりも一回り大きな、328,696mm
2(=724×454、
図11の長さLおよび高さH参照)が採用される。従って、この場合、空間29の間隔Dの規定間隔は、式(2)に従って26.8mmと求められる。即ち、32インチワイド用の標的装置101は、空間29の間隔Dが26.8mm未満となるように設計することで、BB弾18の着弾時に標的板24が背面板23に当接することを回避したうえで、BB弾18の着弾位置を良好に検出することができる。
【0147】
同様に、例えば、60インチワイドのディスプレイ12に合わせて標的装置101を設計する場合には、32インチ用と同じ割合で画面サイズに対する余裕幅をとったとすると、60インチワイドのディスプレイ12の面積は、32インチワイドのディスプレイ12の面積の3.63倍であると想定されるので、目的面積S2に、1,193,166mm2(=328,696×3.60)が用いられる。従って、この場合、空間29の間隔Dの規定間隔は、式(2)に従って46.5mmと求められる。即ち、60インチワイド用の標的装置101は、空間29の間隔Dが46.5mm未満となるように設計することで、BB弾18の着弾時に標的板24が背面板23に当接することを回避したうえで、BB弾18の着弾位置を良好に検出することができる。
【0148】
ところで、
図12に示したように、外周枠111の上側面に複数の開口部31を設けることによって、ディスプレイ12において発生する熱が空間29に籠ることを回避して、その放熱を促すことができる。これにより、空間29の温度上昇を抑制することができ、音響センサ27-1乃至27-4による検出値を安定させる効果が得られる。なお、放熱による対流を促すために、外周枠111の下側面にも同様に、複数の開口部31を設けることが好適である。
【0149】
なお、本実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【0150】
例えば、標的に対して飛翔物体を当てる任意の競技や遊戯、具体的には、ダーツ、吹き矢などの標的システムに適用してもよい。この場合、弾痕マークの代わりにダーツや吹き矢の矢を標的画像上に表示すればよい。また、当然ながら、BB弾に代わるダーツや吹き矢の矢が標的板24に刺さらないようにその先端を丸める必要がある。さらに、標的板24の強度を増せば、本発明は、トイガン(ソフトエアガン)よりも着弾時のエネルギーが強い実銃(空気銃等)の標的システムにも適用することも可能である。
【0151】
なお、標的画像16を表示するディスプレイ12を利用することなく、同様の標的が描かれた紙を背面板23に貼り付けたり、同様の標的を標的板24に描いたりしてもよい。
また、背面板23または標的板24を白色などにして、プロジェクタにより背面板23または標的板24に標的画像16を投影してもよい。また、ディスプレイ12を背面板23の替りとして用いることができ、この場合、空間29の間隔Dは、標的板24およびディスプレイ12の間の距離となる。
【符号の説明】
【0152】
10 標的システム, 11 標的装置, 12 ディスプレイ, 13 PC, 14 信号ケーブル, 15 映像ケーブル, 16 標的画像, 17 ソフトエアガン, 18 BB弾, 19 回収ケース, 21 筐体, 22 前面板, 23 背面板, 24 標的板, 25 捕集板, 26 排出口ノズル, 27 音響センサ, 28 信号処理基板, 31 開口部, 32 スペーサ, 33 ディスプレイパネル, 100 標的システム, 101 標的装置, 102 回収トレー, 111 外周枠, 112 コントロールユニット, 121 主固定板, 122および123 補助固定板, 124 壁掛け用の穴, 131および132 脚部, 133および134 アジャスタ, 141 緩衝用ゴム板, 142 ストッパ, 143 コネクタ, 144 電源表示LED