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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】航空機
(51)【国際特許分類】
   B64C 3/38 20060101AFI20220302BHJP
   B64C 27/08 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
B64C3/38
B64C27/08
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020508721
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 JP2018013317
(87)【国際公開番号】W WO2019186918
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】510274027
【氏名又は名称】▲なら▼原 裕
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】▲なら▼原 裕
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-297825(JP,A)
【文献】特開2007-253946(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0283052(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0369162(US,A1)
【文献】国際公開第2017/131834(WO,A2)
【文献】国際公開第2011/131733(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 3/38- 3/56
B64C 27/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
航空機の機体正面図を、Y軸を縦軸とするXY平面で表す3次元の直交座標を機体座標とし、これを基準とし下記の(1)から(4)を定義するとき、
(1)肩回転軸:Y軸と平行な軸の上部を、Z軸を中心に45°から60°の範囲で回転させ機体外側に向けて傾け、X軸を中心に20°から35°の範囲で回転させ機体の機首方向に傾けた軸。
(2)肩座標:肩回転軸を、原点を通るY軸とする直交座標。
(3)腕回転軸:肩回転軸にとりつけられた機体外側に向けて伸びる軸で、肩座標X軸と平行な軸を、肩座標Z軸を中心に20°から35°の範囲で回転させ、その軸の先を機体上方向に傾けた肩座標Z=0を通る軸。
(4)揚力点:航空機の主翼片側一枚に働く揚力を1つの点として表すもの。
1組以上の肩回転軸と腕回転軸を航空機の機体左右に設け、それらの腕回転軸に取り付けられた機体揚力源により生じる揚力点の機体との相対的な位置を、肩回転軸を回転させることにより変化させ、それらの揚力点に生じる揚力の向きを、腕回転軸を回転させることにより変化させ、それらの変化の組み合わせにより制御する航空機。
【請求項2】
前記直交座標において肩座標Z=0を通る腕回転軸を第1腕回転軸とし、肩座標Z≠0を通る腕回転軸を第2腕回転軸と定義するとき、前記第1腕回転軸の代わりに前記第2腕回転軸を用いることを特徴とする請求項1に記載の航空機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、航空機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、垂直離着陸可能な航空機が実用に供されている。
【0003】
しかし、それらの垂直離着陸は垂直離着陸専用の機構を備えることによりその機能を実現しているため、通常離着陸型の航空機の機体より構造が複雑で重いという問題があった。
【0004】
それらの垂直離着陸用の機構は通常の飛行時には機能せず、それらの尾翼は垂直離着陸時には機能せず、常に、飛行に貢献しない重量物を機体に抱えているという問題があった。
【0005】
また、それらは垂直離着陸時と通常の飛行時とで異なる機構で飛行制御を行うことから、それらを飛行させるにはこの2種類の制御方法を習得する必要があった。
【0006】
これらの理由により、垂直離着陸機の機体は、製造・保守・運用の費用は通常離着陸機より増加するにも係らず、その機動性と航続距離性能は通常離着陸型より劣るという問題が避けられなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、現状の垂直離着陸機が垂直離着陸用と通常の飛行用との2種類の機構と異なる2つの制御を必要とする点である
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、航空機の飛行制御に肩回転軸と腕回転軸という概念を導入することにより、垂直離着陸と通常の飛行を同一の機構で制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の航空機は、垂直離着陸機であっても、垂直離着陸専用の機構と制御を持たないためその構造がより単純で、本発明を採用する通常離着陸機と同一の方法で操縦できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】肩回転軸2の左側を55°に、右側を-35°に、両腕回転軸3を30°に回転させた機体の機体座標の斜視図である。(実施例1)
図2図1の正面図である。
図3図1の側面図である。
図4図1の底面図である。
図5】肩回転軸2と腕回転軸3を左右対称に(それぞれ55°と30°)回転させた機体の、機体座標の平面図である。(実施例1)
図6図5で水平飛行する機体の、空間姿勢の側面図である。
図7】肩回転軸2と腕回転軸3を左右対称に(それぞれ33°と52°)回転させた機体の、機体座標の平面図である。(実施例1)
図8図7で機首上げした機体の、空間姿勢の側面図である。
図9】肩回転軸2と腕回転軸3を左右対称に(それぞれ75°と0°)回転させた機体の、機体座標の平面図である。(実施例1)
図10図9で機首下げした機体の、空間姿勢の側面図である。
図11】肩回転軸2の左右を非対称に(左側55°、右側-35°)回転させ、腕回転軸3を左右対称に(60°)回転させた機体の、機体座標の平面図である。(実施例1)
図12図11で旋回する機体の、空間姿勢の平面図である。
図13図12の背面図である。
図14】肩回転軸2を左右対称に、腕回転軸3の左右を非対称に回転させた、ロールする機体の機体座標の正面図である。(実施例1)
図15】肩回転軸2の左側を45°に回転させ、右側を-35°に回転させ、両腕回転軸3を90°に回転させた機体の、機体座標の斜視図である。(実施例2)
図16図15の正面図である。
図17図15の側面図である。
図18】肩回転軸2と腕回転軸3を左右対称に(それぞれ45°と90°)回転させた機体の、機体座標の平面図である。(実施例2)
図19図18で水平飛行する機体の、空間姿勢の側面図である。
図20】肩回転軸2と腕回転軸3を左右対称に(それぞれ25°と90°)回転させた機体の、機体座標の平面図である。(実施例2)
図21図20で機首上げした機体の、空間姿勢の側面図である。
図22】肩回転軸2と腕回転軸3を左右対称に(それぞれ65°と90°)回転させた機体の、機体座標の平面図である。(実施例2)
図23図22で機首下げした機体の、空間姿勢の側面図である。
図24】肩回転軸2の左右を非対称に(左側45°、右側-35°)回転させ、腕回転軸3を左右対称に(90°)回転させた機体の、機体座標の平面図である。(実施例2)
図25図24で旋回する機体の、空間姿勢の平面図である。
図26図25の背面図である。
図27】肩回転軸2と腕回転軸3を左右対称に(それぞれ25°と90°)回転させた、機首上げで空間停止する機体の空間姿勢の平面図である。(実施例2)
図28】肩回転軸2を左右対称に、腕回転軸3の左右を非対称に(左側30°、右側120°)それぞれ回転させ、機首上げで空間停止しながらヨー軸で回転する機体の、空間姿勢の平面図である。(実施例2)
図29図28の側面図である。
図30】肩回転軸2と腕回転軸3を左右対称に(それぞれ25°と120°)回転させ、機首上げで空間停止しながら後退する機体の、空間姿勢の平面図である。(実施例2)
図31】肩回転軸2の左右を非対称に(左側25°、右側0°)回転させ、腕回転軸3を左右対称に(90°)回転させた機体の、機体座標の平面図である。
図32図31で空間停止しながら横へ移動する機体の、空間姿勢の平面図である。(実施例2)
図33図32の正面図である。
図34】水平飛行する機体の、空間姿勢の斜視図である。(実施例3)
図35】機首上げで空間停止する機体の、空間姿勢の平面図である。(実施例3)
図36図35の斜視図である。(実施例3)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に3つの実施例について説明する。
【実施例1】
【0012】
図1~14は、本発明の通常離着陸型の航空機である。
【0013】
図5図6は、この機体が水平飛行する際の、肩回転軸2と腕回転軸3の状態を示す機体座標図と、その状態で飛行する際の空間姿勢の図である。この機体は肩回転軸2を回転させ機体左右の揚力点5と機体の重力中心点4の機体座標Zの位置を同じにすることにより、機体を水平にバランスさせて水平飛行し、腕回転軸3を回転させることにより翼6に生じる揚力点5の揚力の向きを調整する。
【0014】
図7から図10は、この機体のピッチ制御の方法を示す機体座標図とその空間姿勢の図である。肩回転軸2を回転させ機体両側の揚力点5を機体の重力中心点4より機体前方に移動させることにより、両揚力点5を結ぶ直線を軸に機体の重力中心点4が回転しその下に移動し安定しようとすることを利用し機首上げのピッチ制御を行う。同様に、両揚力点5を機体の重力中心点4より機体後方に移動させることにより、機首下げを行う。
【0015】
図11から図13は、この機体の旋回制御の方法を示す機体座標図とその空間姿勢の図である。2つの肩回転軸2のうちの、旋回時に内側となる側の軸の回転角をその外側となる軸より減少させ、旋回内側の揚力点5を外側の揚力点5より機体前方に移動させることにより、両揚力点5を結ぶ直線に機体座標のX軸、Y軸、Z軸のそれぞれに対する傾きを作りだし、その傾きを有する軸を中心に機体の重力中心点4が回転しその下に移動し安定しようとすることを利用し機首上げ制御とロール制御の2つを行い、肩回転軸2の回転角を減少させたことにより、迎角が増加した旋回内側の翼6が空気抵抗で減速することによりその翼6を中心としたヨー軸の回転を制御して旋回する。
【0016】
図14は、この機体のロール制御の方法を示す機体座標図である。腕回転軸3の左右を非対称に回転させ揚力の向きの左右を非対称に傾けることによりロール制御を行う。
【実施例2】
【0017】
図15図33は、本発明の垂直離着陸型の航空機である。
【0018】
図18図19は、この機体の水平飛行時の機体座標図とその空間姿勢の図である。実施例1との制御方法上の差異はなく、異なるのはこの機体の揚力源が翼6ではなくプロペラ回転面8である点だけである。
【0019】
図20から図23は、この機体のピッチ制御の方法を示す機体座標図とその空間姿勢の図である。この制御方法は実施例1と同じである。
【0020】
図24から図26は、この機体の旋回制御の方法を示す機体座標図とその空間姿勢の図である。この制御方法は実施例1と同じで、異なるのはこの機体のヨー軸の回転を得るために利用する空気抵抗源が翼6ではなくプロペラ回転面8である点だけである。
【0021】
この機体のロール制御の方法も実施例1と同じである。
【0022】
図27は、この機体が機首上げして空間停止する際の空間姿勢の図である。このピッチ制御も実施例1と同じである。
【0023】
図28は、この機体が機首上げして空間停止しながら、ヨー軸で回転する際の空間姿勢の図である。腕回転軸3の左右を非対称に回転させ揚力点5の揚力の向きの左右を非対称に傾けることにより機体を中心としたヨー軸の回転制御を行う。
【0024】
図29は、図28の側面図である。
【0025】
図30は、この機体が機首上げして空間停止しながら、後退する際の空間姿勢の図である。腕回転軸3を左右対称に回転させ両揚力点5の揚力の向きを機体後方に傾けることにより後退する。
【0026】
図31は、この機体が機首上げして空間停止しながら、機体の横方向に移動する際の機体座標図である。2つの肩回転軸2のうちの、横移動時に進行方向の前となる側の軸の回転角をその後となる側の軸より減少させ、進行方向の前となる側の揚力点5をその後となる側の側揚力点5より機体前方に移動させることにより、両揚力点5を結ぶ直線に機体座標のX軸、Y軸、Z軸のそれぞれに対する傾きを作りだし、その傾きを有する軸を中心に機体の重力中心点4が回転しその下に移動し安定しようとすることを利用し、機首上げのピッチ制御とロール制御をおこない、その結果機体とともに揚力点5の揚力の向きが横方向へ傾くこと利用し、横方向へ移動する。
【0027】
図32図33は、図31の空間姿勢の図である。
【実施例3】
【0028】
図34から図36は、本発明の請求項2を採用する垂直離着陸機であり翼6の上にジェットエンジンを備える。この機体の飛行制御の方法は実施例2と同じである。
【符号の説明】
【0029】
1 機首
2 肩回転軸
3 腕回転軸
4 機体の重力中心点
5 揚力点
6 翼
7 プロペラ軸
8 プロペラ回転面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34
図35
図36