(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】水銀イオン検出用の蛍光試験紙及び検出法
(51)【国際特許分類】
G01N 31/22 20060101AFI20220302BHJP
G01N 31/00 20060101ALI20220302BHJP
G01N 21/78 20060101ALI20220302BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
G01N31/22 121F
G01N31/00 S
G01N21/78 C
G01N21/64 F
G01N21/78 A
(21)【出願番号】P 2020565783
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 CN2019107980
(87)【国際公開番号】W WO2021035855
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2020-11-24
(31)【優先権主張番号】201910789122.6
(32)【優先日】2019-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517405840
【氏名又は名称】江▲蘇▼大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】特許業務法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】石 吉勇
(72)【発明者】
【氏名】李 文亭
(72)【発明者】
【氏名】▲ゾウ▼ 小波
(72)【発明者】
【氏名】李 志華
(72)【発明者】
【氏名】黄 暁▲ウェイ▼
(72)【発明者】
【氏名】郭 志明
(72)【発明者】
【氏名】胡 雪桃
(72)【発明者】
【氏名】梁 ▲ニー▼▲ニー▼
(72)【発明者】
【氏名】史 永強
(72)【発明者】
【氏名】石 海軍
(72)【発明者】
【氏名】崔 雪平
【審査官】三好 貴大
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-287009(JP,A)
【文献】国際公開第2014/032615(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/211415(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0065195(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104845609(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103776823(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103487431(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第102706873(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101135644(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 31/00-31/46
G01N 21/78
G01N 21/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境校正用のカーボン量子ドット蛍光プローブが分布されたカーボン量子ドットの分布領域(3)と水銀イオン濃度検出用の銅ナノクラスターの蛍光プローブが分布された銅ナノクラスターの分布領域(4)とを含む蛍光発色領域を含むことを特徴とする水銀イオン検出用の蛍光試験紙。
【請求項2】
前記蛍光試験紙が、試験紙の手持ち領域をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の水銀イオン検出用の蛍光試験紙。
【請求項3】
前記の試験紙の手持ち領域、カーボン量子ドットの分布領域、及び銅ナノクラスターの分布領域が、T字形の分割線によって分割されていることを特徴とする請求項2に記載の水銀イオン検出用の蛍光試験紙。
【請求項4】
前記カーボン量子ドットの分布領域(3)と銅ナノクラスターの分布領域(4)との面積比は、1:1であることを特徴とする請求項1に記載の水銀イオン検出用の蛍光試験紙。
【請求項5】
参照チャンネル励起波長の印刷領域(6)と参照チャンネルに対応する励起色の印刷領域(7)が含まれる参照チャンネル領域を含む標準蛍光比色スケールをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の水銀イオン検出用の蛍光試験紙。
【請求項6】
水銀イオン標準サンプル濃度の標識領域(8)、水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の標識領域(10)、及び標準水銀イオンの濃度単位の標識領域(12)が含まれる水銀イオン標準サンプル濃度領域をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の水銀イオン検出用の蛍光試験紙。
【請求項7】
前記水銀イオン標準サンプル濃度の標識領域(8)が、複数の水銀イオン標準サンプル濃度の印刷単位(9)を含むことを特徴とする請求項6に記載の水銀イオン検出用の蛍光試験紙。
【請求項8】
前記水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の標識領域(10)が、複数の水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の印刷単位(11)を含むことを特徴とする請求項6に記載の水銀イオン検出用の蛍光試験紙。
【請求項9】
前記の蛍光発色領域と標準蛍光比色スケールが、同一の試験紙に配置され、またはそれぞれ独立して配置されていることを特徴とする請求項5に記載の水銀イオン検出用の蛍光試験紙。
【請求項10】
前記の蛍光試験紙が、複数の発色領域を含むことを特徴とする請求項1に記載の水銀イオン検出用の蛍光試験紙。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の蛍光試験紙の作製法であって、ブランクの試験紙に、環境校正用のカーボン量子ドット蛍光プローブが分布されたカーボン量子ドットの分布領域と水銀イオン濃度検出用の銅ナノクラスターの蛍光プローブが分布された銅ナノクラスターの分布領域を形成することを含むことを特徴とする蛍光試験紙の作製法。
【請求項12】
応答チャンネル/参照チャンネルの標準色を得ることをさらに含み、具体的には、
Hg
2+濃度が異なる複数のHg
2+標準サンプルを調製すること;
蛍光試験紙を各Hg
2+標準サンプルにそれぞれ浸漬し、数分間保持して取り出し、複数の反応後の試験紙を得ること;
反応後の試験紙の所定光源照射下のRGB画像をそれぞれ採集すること;
RGB画像におけるカーボン量子ドットの分布領域に対応する色シグナルを抽出し、前記色シグナルの平均値を求めて参照チャンネルに対応する標準色とすること;
RGB画像における銅ナノクラスターの分布領域に対応する色シグナルを抽出し、Hg
2+濃度が異なるHg
2+標準サンプルに対応する応答チャンネルの標準色を得ること
を含むことを特徴とする請求項11に記載の作製法。
【請求項13】
請求項5~9のいずれかに記載の蛍光試験紙の作製法であって、ブランクの試験紙に、環境校正用のカーボン量子ドット蛍光プローブが分布されたカーボン量子ドットの分布領域と水銀イオン濃度検出用の銅ナノクラスターの蛍光プローブが分布された銅ナノクラスターの分布領域を形成することを含み、
前記標準蛍光比色スケール領域内に印刷することをさらに含み、具体的には、
前記標準蛍光比色スケール領域内に、所定の光源照射条件、参照チャンネルに対応する標準色、Hg
2+標準サンプルに対応する複数のHg
2+濃度、標準水銀イオンの濃度単位、Hg
2+標準サンプルに対応する応答チャンネルの標準色を印刷すること
を含むことを特徴とす
る蛍光試験紙の作製法。
【請求項14】
請求項1~10のいずれかに記載の蛍光試験紙が適用される水銀イオン検出用の方法であって、
被検出溶液に蛍光試験紙を浸漬し、数分間保持して取り出し、クリアガラス板上に置き、自然風で乾燥させ、被検出溶液に対応する反応した試験紙PPを得る蛍光試験紙の反応工程と、
反応した試験紙PPを所定の光源下に置き、カーボン量子ドットの分布領域(3)に対応する色C
_CQDs’を観察し、当該C
_CQDs’と標準比色スケールの参照チャンネルに対応する励起色の印刷領域(7)の色C
_CQDsとを一致させるように環境を校正する蛍光検出環境の校正工程と、
校正された蛍光検出環境における反応した試験紙PPの銅ナノクラスターの分布領域(4)の色シグナルC
_CuNCs’を観察し、標準比色スケール内の水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の標識領域(10)における前記色シグナルC
_CuNCs’に最も近い水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の印刷単位(11)が対応すれば、当該水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の印刷単位(11)の上方での水銀イオン標準サンプル濃度の印刷単位(9)内の数字が、Hg
2+の濃度である水銀イオン含有量比色の読み取り工程と、
を含むことを特徴とする水銀イオン検出用の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品安全性に対する検出の技術分野に属し、具体的に、水銀イオン検出用の蛍光試験紙及び検出法に関する。
【背景技術】
【0002】
水銀は、毒性の高い重金属の一種であり、食物連鎖を介して移動し、人体内での代謝が緩やかで、蓄積によって中毒を引き起こしやすく、脳細胞の機能に影響を与えることがある。現在、水銀イオン(Hg2+)の検出法には、主に原子吸光分光法(AAS)、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)、電気化学方法などがあり、これらの方法は、検出の感度が高く、結果が正確であるが、検出のプロセスが煩雑で、操作が複雑且つ設備が高価で、実験室の条件下で実行する必要があり、現場での迅速な検出や日常の検出に対するニーズを満たすことが難しい。水銀イオンによる人体への害と既存の検出法の欠点を鑑みて、食品内の水銀イオン含有量を迅速かつ便利に検出する方法を開発することは、非常に実用上の意義がある。
【0003】
近年、既存の水銀イオン蛍光プローブによる検出法には、二つの欠点がある。その一つは、使用するナノ材料が高価で、合成プロセスが煩雑であること、もう一つは、応答チャンネルと参照チャンネルの蛍光シグナルを得るための専用の機器が必要であり、ハードウェアのコストが高く、操作が複雑であることである。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、既存方法の欠点の一つを克服するために、銅ナノクラスター(CuNCs)-カーボン量子ドット(CQDs)による食品内の水銀イオンの蛍光試験紙及び検出法を提供し、食品内の水銀イオンを低コスト且つ迅速に検出することができる。
【0005】
上記の本発明の目的を達成するために、本発明において採用される態様は、次の通りである。
【0006】
本発明は、最初にカーボン量子ドットの分布領域と銅ナノクラスターの分布領域とを含む蛍光発色領域が含まれる水銀イオン検出用の蛍光試験紙を提供し、ただし、前記のカーボン量子ドットの分布領域に環境校正用のカーボン量子ドット蛍光プローブが浸漬されており、前記銅ナノクラスターの分布領域に水銀イオン濃度検出用の銅ナノクラスターの蛍光プローブが浸漬されている。
【0007】
前記カーボン量子ドットの分布領域と銅ナノクラスターの分布領域との面積比は、1:1である。
【0008】
前記蛍光試験紙は、試験紙の手持ち領域をさらに含む。
【0009】
前記試験紙の手持ち領域、カーボン量子ドットの分布領域、及び銅ナノクラスターの分布領域は、T字形の分割線によって分割されている。
【0010】
前記蛍光試験紙は、参照チャンネル励起波長の印刷領域と参照チャンネルに対応する励起色の印刷領域を含む参照チャンネル領域が含まれる標準蛍光比色スケールをさらに含む。前記標準蛍光比色スケールは、水銀イオン標準サンプル濃度の標識領域、水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の標識領域、及び標準水銀イオンの濃度単位の標識領域が含まれる水銀イオン標準サンプル濃度領域をさらに含む。
【0011】
ただし、前記水銀イオン標準サンプル濃度の標識領域は、複数の水銀イオン標準サンプル濃度の印刷単元を含み、前記の水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の標識領域は、複数の水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の印刷単位を含む。
【0012】
前記の蛍光発色領域と標準蛍光比色スケールとは、同一の試験紙に配置され、またはそれぞれ独立して配置されている。
【0013】
前記蛍光試験紙は、複数の発色領域を含む。
【0014】
本発明は、水銀イオン検出用の蛍光試験紙作製法をさらに提供し、当該方法は、
ブランクの試験紙に、環境校正用のカーボン量子ドット蛍光プローブが分布されたカーボン量子ドットの分布領域と水銀イオン濃度検出用の銅ナノクラスターの蛍光プローブが分布された銅ナノクラスターの分布領域を形成する蛍光試験紙の作製工程と、
Hg2+濃度が異なる複数のHg2+標準サンプルを調製して、蛍光試験紙を各Hg2+標準サンプルにそれぞれ浸漬し、数分間保持して取り出し、複数の反応後の試験紙を得て、反応後の試験紙の所定光源照射下のRGB画像をそれぞれ採集して、RGB画像におけるカーボン量子ドットの分布領域に対応する色シグナルを抽出し、前記色シグナルの平均値を求めて参照チャンネルに対応する標準色として、RGB画像における銅ナノクラスターの分布領域に対応する色シグナルを抽出し、Hg2+濃度が異なるHg2+標準サンプルに対応する応答チャンネルの標準色を得る応答チャンネル/参照チャンネルの標準色の獲得工程と、
標準蛍光比色スケール領域内に、所定の光源照射条件、参照チャンネルに対応する標準色、Hg2+標準サンプルに対応する複数のHg2+濃度、標準水銀イオンの濃度単位、Hg2+標準サンプルに対応する応答チャンネルの標準色を印刷する標準蛍光比色スケール領域の印刷工程と、
を含む。
【0015】
具体的に、前記印刷の操作は、次の通りである。
【0016】
参照チャンネル励起波長の印刷領域内に、所定の光源照射条件「励起波長W1nm」を印刷し、参照チャンネルに対応する励起色の印刷領域内に、参照チャンネルに対応する標準色C_CQDsを印刷する。水銀イオン標準サンプル濃度の標識領域内の対応する水銀イオン標準サンプル濃度の印刷単位内に、Hg2+標準サンプルS1、S2、…、Sn-1、Snに対応するHg2+濃度を順番にn個印刷し、標準水銀イオンの濃度単位の標識領域内に、標準水銀イオンの濃度単位を印刷する。水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の標識領域内の対応する水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の印刷単位内に、Hg2+標準サンプルS1、S2、…、Sn-1、Snに対応する応答チャンネルの標準色C_CuNCs_1、C_CuNCs_2、…、C_CuNCs_n-1、C_CuNCs_nを順番にn個印刷する。
【0017】
ただし、n>0且つ正の整数であり、W1は特定の励起波長であり、W1は0より大きく且つ正の整数であり、好ましくは、前記W1nmは365nmである。
【0018】
本発明は、水銀イオンの検出法をさらに提供し、当該方法は、
被検出溶液に蛍光試験紙を浸漬し、数分間保持して取り出し、クリアガラス板上に置き、自然風で乾燥させ、被検出溶液に対応する反応した試験紙PPを得る蛍光試験紙の反応工程と、
反応した試験紙PPを波長がW1nm、好ましくは365nmである光源下に置き、カーボン量子ドットの分布領域(3)に対応する色C_CQDs’を観察し、C_CQDs’と標準比色スケールの参照チャンネルに対応する励起色の印刷領域(7)の色C_CQDsとの間に差異があれば、光源の発光強度を校正すること及び反応した試験紙PPと光源との間の距離を調節することにより、色のC_CQDs’とC_CQDsとを一致させる蛍光検出環境の校正工程と、
校正された蛍光検出環境における反応した試験紙PPの銅ナノクラスターの分布領域(4)の色シグナルC_CuNCs’を観察し、標準蛍光比色スケールにおける水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の標識領域(10)内に色シグナルC_CuNCs’に最も近い水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の印刷単位(11)があれば、上記の水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の印刷単位(11)の上方での水銀イオン標準サンプル濃度の印刷単位(9)内の数字は、Hg2+の濃度である水銀イオン含有量比色の読み取り工程と、
を含む。
【発明の効果】
【0019】
本発明の態様は、標準比色スケールにおける参照チャンネルに対応する励起色を参照とし、カーボン量子ドットの分布領域に対応する色の観察により蛍光試験紙による検出時の蛍光検出環境を校正し、蛍光試験紙による検出時と水銀イオン標準サンプルに応答するチャンネルの標準色検出時との蛍光検出環境の差異を低減することにより、水銀イオンの蛍光試験紙による比色検出に対する蛍光検出の環境差異の影響を減らすことができる。
【0020】
比率型の蛍光プローブによる水銀イオンの検出法は、その高い検出感度と強い抗環境干渉能力などのメリットで注目が集まっている。比率型の蛍光プローブは、二重放射の蛍光シグナルチャンネル(応答チャンネルと参照チャンネル)を有し、上記の応答チャンネルのシグナル強度が被検物の濃度に関連しており、参照チャンネルのシグナル強度が被検物の濃度とは関係なく、被検物の蛍光シグナル強度に影響を与える環境要素にのみ関連している。参照チャンネルの校正機能によって、検出結果に対する環境要素の干渉が効果的に低減され、単一チャンネル蛍光プローブ(単一放射の蛍光プローブ)よりも正確な検出結果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】は、本発明の水銀イオン検出用の蛍光試験紙の好ましい実施例の概略構造図である。
【
図2】は、
図1に示される蛍光試験紙の標準蛍光比色スケールの概略構造図である。
【
図3】は、実施例で作製された標準蛍光比色スケールである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図では、1は試験紙の手持ち領域、2はT字形の分割線、3はカーボン量子ドットの分布領域、4は銅ナノクラスターの分布領域、5は比色スケール手持ち領域、6は参照チャンネル励起波長の印刷領域、7は参照チャンネルに対応する励起色の印刷領域、8は水銀イオン標準サンプル濃度の標識領域、9は水銀イオン標準サンプル濃度の印刷単位、10は水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の標識領域、11は水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の印刷単位、12は標準水銀イオンの濃度単位の標識領域である。
【0023】
以下に、各実施形態により本発明をさらに詳述するが、これらの実施例は、単に本発明を説明するためだけのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。なお、本技術分野の当業者は、本発明に記載の内容を読んだ後、本発明に対してさまざまな変更または修正をすることができ、これらと同等の形式も本出願に添付する特許請求の範囲に限定される範囲に収まる。
【0024】
実施例1:水銀イオン検出用の蛍光試験紙及び作製法
工程1 蛍光試験紙の作製は、ブランクの試験紙の作製、蛍光プローブの作製、及び蛍光プローブの浸染の3つの工程を含む。
【0025】
工程1.1. ブランクの試験紙の作製:サイズが3cm×4cmであるブランクの中性ろ紙(蛍光が含まれない)を取り、前記ろ紙が、カーボン量子ドットの分布領域3と銅ナノクラスターの分布領域4が含まれる蛍光発色領域を含む。前記カーボン量子ドットの分布領域3には環境校正用のカーボン量子ドットの蛍光プローブが浸漬されている。前記の銅ナノクラスターの分布領域4には水銀イオン濃度検出用の銅ナノクラスターの蛍光プローブが浸漬されている。
【0026】
前記試験紙は、手持ち領域1、T字形の分割線2、カーボン量子ドットの分布領域3、及び銅ナノクラスターの分布領域4を含む。手持ち領域1とカーボン量子ドットの分布領域3と銅ナノクラスターの分布領域4がT字形の分割線2によって分割されている。前記のカーボン量子ドットの分布領域と銅ナノクラスターの分布領域の面積比は、1:1である。
【0027】
工程1.2. 蛍光プローブの作製:カーボン量子ドットsの蛍光プローブの作製と銅ナノクラスターの蛍光プローブの作製が含まれる。
【0028】
カーボン量子ドットsの蛍光プローブの作製法は、次の通りである。質量分率が30%である蔗糖水溶液1mL、質量分率が98%である濃硫酸0.2mL、分子量が200であるポリエチレングリコール6mLを取り、混合攪拌した後、電子レンジ中に置き、15s加熱した後、得られたカーボン量子ドット溶液を透析袋(1000D)によって脱イオン水に24h透析して精製し、励起波長が365nmで、発射波長が550nmであり且つ水銀イオンに対して蛍光応答のないカーボン量子ドットの蛍光プローブを得る。
【0029】
銅ナノクラスターの蛍光プローブの作製法は、CuSO4を32mg取って水20gに加え、NaOH溶液(0.5M)2mLとアスコルビン酸溶液(0.1M)20mLを添加して、pHが8.0~9.0に調節され、温度が50 ℃である条件で、水浴で15h攪拌した後、得られた銅ナノクラスター溶液の原液を透析袋(1000D)によって脱イオン水に24h透析して精製し、励起波長が365nmで発射波長が445nmで且つ水銀イオンに対して蛍光応答のある銅ナノクラスターの蛍光プローブを得る。
【0030】
工程1.3. 蛍光プローブの浸染:工程1.1で作製されたブランクの試験紙のカーボン量子ドットの分布領域3を工程1.2で作製されたカーボン量子ドットの蛍光プローブ溶液に浸漬し、10分間保持して取り出す。工程1.1で作製されたブランクの試験紙の銅ナノクラスターの分布領域4を工程1.2で作製された銅ナノクラスターの蛍光プローブ溶液に浸漬し、10分間保持して取り出す。その後、蛍光プローブが浸染されたブランクの試験紙をクリアガラス板上に置き、自然風で乾燥させ、蛍光試験紙Pを得る。
【0031】
工程2 標準蛍光比色スケールの作製:比色スケールの設計、応答チャンネル/参照チャンネルの標準色の獲得、及び標準蛍光比色スケールの印刷の三つのプロセスが含まれる。
【0032】
工程2.1. 比色スケールの設計:前記比色スケールは、比色スケールにおける手持ち領域5、参照チャンネル励起波長の印刷領域6と参照チャンネルに対応する励起色の印刷領域7が含まれる参照チャンネル領域、及び水銀イオン標準サンプルの濃度領域。前記水銀イオン標準サンプル濃度領域は、水銀イオン標準サンプル濃度の印刷単位9を10個有する水銀イオン標準サンプル濃度の標識領域8、水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の印刷単位11を10個有する水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の標識領域10、及び標準水銀イオンの濃度単位の標識領域12が含まれる。水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の印刷単位11内の色及びその水銀イオン標準サンプル濃度の印刷単位9内の数字は、それぞれ同一の水銀イオン標準サンプルの励起色及び水銀イオン濃度に対応する。
【0033】
工程2.2. 応答チャンネル/参照チャンネルの標準色を得る方法は、次の通りである。
【0034】
(1)濃度勾配Q1、Q2、…、Q9、Q10がそれぞれ0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、0.9、1.1、1.3mg/kgである10個のHg2+標準溶液S1、S2、…、S9、S10を準備する;
(2)工程1で作製された10枚の蛍光試験紙P1、P2、…、P9、P10をそれぞれHg2+標準溶液S1、S2、…、S9、S10に浸漬し、10分間保持して取り出し、クリアガラス板上に置き、自然風で乾燥させ、10枚のHg2+標準溶液と反応した後の試験紙P’1、P’2、…、P’9、P’10を得る;
(3)10枚の反応した試験紙P’1、P’2、…、P’9、P’10の365nm光源の照射下でのRGB画像I1、I2、…、I9、I10をカメラで撮る;
(4)10枚の反応した試験紙の画像I1、I2、…、I9、I10におけるカーボン量子ドットの分布領域3に対応するRGBシグナル[235 242 20]、[229 238 18]、[236 236 14]、[230 245 15]、[233 240 18]、[232 235 20]、[238 234 16]、[237 238 15]、[239 243 19]、[230 239 16]を抽出し、上記色値の平均値を求めて参照チャンネルに対応する標準色[234 239 17]とする。10枚の反応した試験紙画像I1、I2、…、I9、I10における銅ナノクラスターの分布領域4に対応するRGBシグナルを抽出し、Hg2+標準溶液濃度0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、0.9、1.1、1.3mg/kgに対応する応答チャンネルの標準色[21 87 242]、[123 160 255]、[76 158 235]、[55 176 228]、[85 197 226]、[111 201 236]、[129 226 214]、[113 220 185]、[109 209 134]、[211 218 73]を10個得る。
【0035】
工程2.3. 標準蛍光比色スケールの作製と印刷:「励起波長365nm」という文字をカラー印刷機により参照チャンネル励起波長の印刷領域6に印刷し、参照チャンネルに対応する標準色RGB=[234 239 17]を参照チャンネルに対応する励起色の印刷領域7に印刷し、水銀イオン標準サンプル濃度の標識領域8内の10個の水銀イオン標準サンプル濃度の印刷単位9内に、Hg2+標準サンプルS1、S2、…、Sn-1、Snに対応するHg2+濃度0、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.7、0.9、1.1、1.3mg/kgを左から右に順番に10個印刷し、標準水銀イオンの濃度単位「水銀イオン濃度mg/kg」を標準水銀イオンの濃度単位の標識領域12内に印刷する。水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の標識領域10内の10個の標準Hg2+サンプルに対応する励起色の印刷単位11内に、Hg2+標準サンプルS1、S2、…、Sn-1、Snに対応する応答チャンネルの標準色RGB=[21 87 242]、[123 160 255]、[76 158 235]、[55 176 228]、[85 197 226]、[111 201 236]、[129 226 214]、[113 220 185]、[109 209 134]、[211 218 73]を左から右に順番に10個印刷する。
【0036】
上記で作製された蛍光試験紙は、カーボン量子ドットの分布領域3と銅ナノクラスターの分布領域4が含まれる蛍光発色領域を含む。前記の蛍光試験紙は、試験紙の手持ち領域1をさらに含む。
【0037】
前記の蛍光試験紙は、標準蛍光比色スケールをさらに含む。前記蛍光発色領域と標準蛍光比色スケールとは、同一の試験紙上に配置され、または前記蛍光発色領域は蛍光試験紙上に配置されていて、標準蛍光比色スケールは独立して設置されている。
【0038】
前記の蛍光試験紙は、複数の発色領域を含む。
【0039】
実施例2:水銀イオンの検出
食品におけるHg2+比色検出は、蛍光試験紙の反応、蛍光検出環境の校正、及び水銀イオン含有量比色の読み取りの3つのプロセスが含まれる。
【0040】
工程3.1. 蛍光試験紙の反応:まず、カニの試料(市販)を取り、中国モクズガニ(Eriocheir sinensis)の体の表面の汚れを洗い流し、解剖し、肝膵臓、生殖腺、及び筋肉を摘み取り、十分に研磨して均一に混ぜてから、冷蔵庫に凍結保存する。サンプル1.0gをポリテトラフルオロエチレンの消化タンクに入れ、硝酸4mLを加え、そして過酸化水素2mLを加え、一晩静置し、消化タンクをマイクロ波消化機に入れ、消化や酸除去のプロセスを完成して、カニの消化液を得て、濃度が異なるHg2+(それぞれ0.3mg/kg、0.5mg/kg、0.8mg/kg)標準溶液をそれぞれ前処理した後のカニ消化液に加えて、被検出溶液が得られる。実施例1で作製された蛍光試験紙を被検出溶液に浸漬し、10分間保持して取り出し、クリアガラス板上に置き、自然風で乾燥させ、被検出溶液に対応して反応した試験紙PPを得る。
【0041】
工程3.2. 蛍光検出環境の校正:反応した試験紙PPを波長が365nmである光源下に置き、カーボン量子ドットの分布領域3に対応する色C_CQDs’を視覚観察し、C_CQDs’と標準比色スケールにおける参照チャンネルに対応する励起色の印刷領域7の色との間に差異があれば、光源の発光強度を校正すること、反応した試験紙PPと光源の間の距離を調節することによって、色のC_CQDs’と標準比色スケールにおける参照チャンネルに対応する励起色とを一致させる。
【0042】
工程3.3. 水銀イオン含有量比色の読み取り:反応した試験紙PPの銅ナノクラスターの分布領域4を工程3.2で校正した後、蛍光検出環境下に対応する色シグナルC_CuNCs’を視覚観察し、標準比色スケールにおける水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の標識領域10から、色シグナルC_CuNCs’に最も近い水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の印刷単位11が見出されれば、当該水銀イオン標準サンプルに対応する励起色の印刷単位11の上方での水銀イオン標準サンプル濃度の印刷単位9内の数字がカニにおける水銀イオンの濃度である。中国の国家規格方法による誘導結合などのイオン体-原子発光分光法(ICP-MS)、二重チャンネルの蛍光試験紙法、及び単一チャンネルの蛍光試験紙法により得られたカニにおける水銀イオンの検出結果は、表1に示される。表1から見れば、単一チャンネルの蛍光試験紙に対応する検出結果と比べて、二重チャンネルの蛍光試験紙に対応する検出結果が中国の国家規格方法による検出結果に近い。上記の検出結果には、本発明における試験紙の参照チャンネルが蛍光検出の環境参数を効果的に校正し、水銀イオンに対する検出感度を高めることができることを示している。
【0043】