(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】複合箸の補強構造
(51)【国際特許分類】
A47G 21/10 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
A47G21/10 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021027587
(22)【出願日】2021-02-24
【審査請求日】2021-02-24
(32)【優先日】2020-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】521080462
【氏名又は名称】亨將精密工業股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】頼 銀柱
【審査官】石井 茂
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3088465(JP,U)
【文献】特開平3-153911(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0249851(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 21/00-23/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合箸の補強構造であって、当該複合箸はユーザが把持するための1つの把持部と、挟持するための挟持部とを備え、当該把持部の一端が当該挟持部の一端に接続し、かつ当該挟持部は当該一端に開口が形成されている中空金属棒であり、当該複合箸の補強構造は、 当該挟持部内に位置決めされ、少なくとも1つの第1の溝を有する1つの第1の管状部材と、
当該挟持部の内部および当該少なくとも1つの第1の溝内に充填され、当該第1の管状部材を固定する1つの充填部と、
当該把持部の内部に固定され、かつ当該第1の管状部材の一端が延伸してなる第2の管状部材とを備えることを特徴とする複合箸の補強構造。
【請求項2】
当該第1の管状部材の外周縁と当該挟持部の内周縁とは同様な断面を有し、かつ当該第1の管状部材を当該挟持部内に直接挿入して位置決めするように、当該第1の管状部材の外周縁が当該挟持部の内周縁よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の複合箸の補強構造。
【請求項3】
当該第1の管状部材が径方向に伸縮する弾性を有するように、当該第1の溝は当該第1の管状部材と同じ軸方向に沿って開設することを特徴とする請求項1に記載の複合箸の補強構造。
【請求項4】
当該第2の管状部材の壁部に少なくとも1つの径方向に沿う貫通穴を更に設けることを特徴とする請求項1に記載の複合箸の補強構造。
【請求項5】
当該第2の管状部材は、少なくとも1つの第2の溝を更に有し、当該第2の管状部材の断面がCの形状になるように、当該第2の溝は当該第2の管状部材と同じ軸方向に沿って開設することを特徴とする請求項4に記載の複合箸の補強構造。
【請求項6】
当該充填部の一端が当該第2の管状部材の内、外周縁に充填されることを特徴とする請求項1に記載の複合箸の補強構造。
【請求項7】
当該充填部の一端が当該挟持部の当該一端が延伸してなり、かつ把持部を形成することを特徴とする請求項6に記載の複合箸の補強構造。
【請求項8】
くびれ部を更に備え、当該くびれ部の一端が延伸して当該第1の管状部材となり、当該くびれ部の他端が延伸して当該第2の管状部材となることを特徴とする請求項1から7の何れか1項に記載の複合箸の補強構造。
【請求項9】
当該第1の管状部材が両端が開放する第1のパイプを有し、当該くびれ部が1つの中間パイプを有し、当該第2の管状部材が両端が開放する第2のパイプを有し、当該第1のパイプ、当該中間パイプ、および当該第2のパイプがこの順に直線状に連通することを特徴とする請求項8に記載の複合箸の補強構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合箸の補強構造に関し、特に強度を効率的に高めて製品品質を向上し、かつ使用寿命を延長できるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザが使用する箸は木材を加工してできたものが主であるが、多湿環境において、木製の箸には黴が生えやすく、かつ長時間に使用すると、擦り傷に汚れが溜まりやすくなる。その結果、現在の市販の箸は金属製のものが多く、特に中空のステンレス製の箸が良くある。
【0003】
上述の中空のステンレス製の箸は主に下記のように加工される。ステンレス板を円管状に巻き付けた後に溶接し、研磨加工して成型させる。箸の加工法は、中華民国特許第M493943号公報に記載の「中空の金属箸の構造改良」がさらにある。この加工法において、金属板を折り曲げた後に溶接して成型させる。箸の他の加工法において、金属管を加圧して直接加圧成型させる。そして、円管または角管で太さが徐々に細くなる中空のステンレス箸が製造される。しかしながら、上述の各種の金属箸の内部は完全な中空形状となり、実際に使用される際に、軽微な外力により金属表面に圧痕または凹みが形成し、ひいてはより大きな外力により曲がってしまう。その結果、圧痕または凹みにより製品品質が低下する以外、ユーザが食物を挟持することに不利、かつ製品の使用寿命が短縮される。
【0004】
出願人が出願した特許第M458170号公報に記載の「複合式箸の補強構造」において、1つの補強棒材を1つの金属スリーブおよび1つのプラスチック把持体に被覆される構造を提供し、補強棒材による補強によって金属スリーブの表面に圧痕または凹みが形成することを防止し、曲げ強度を効率的に向上させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許第M458170号公報に記載の複合式箸の射出成型時に、補強棒材を宙に浮くようにして金属スリーブの開口端の内、外の間に位置決めし、プラスチック把持体を成型する際に共に被覆するため、成型中に補強棒材のずれにより製品品質に悪影響をもたらす。また、補強棒材の外周縁と金属スリーブの内周縁との間にプラスチック材料を充填するため、金属スリーブ、プラスチック材料、および棒材は異なる材料にて連結し、全体の強度および結合力が低下する現象が起き、所望の強度補強効果を達成できない。そこで、発明者は多年の経験を生かし、不断な研究開発を経て、従来技術の構造と異なり、かつ上記の問題を改善し本発明に至る。
【0006】
本発明の1つの目的は、下記の複合箸の補強構造を提供することにある。本発明は、従来の中実の補強棒材が成型時に位置決めを効率よくできず、異なる材質の材料を結合する際に所望の強度および結合力を得ず、強度不足が発生し、表面に圧痕または凹みが形成し、あるいは曲りが発生する問題を解決し、補強構造の位置決めを効率よく行い、異なる材質の材料間の結合力を向上させ、金属箸の表面および全体の強度を向上させて製品品質を向上させ、使用寿命を延長する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の一態様に係る複合箸の補強構造は、第1の管状部材と、充填部と、第2の管状部材とを備える。第1の管状部材は、挟持部内に位置決めされる。第1の管状部材は、少なくとも1つの第1の溝を有する。充填部は、挟持部の内部および少なくとも1つの第1の溝の中に充填され、第1の管状部材を固定する。第2の管状部材は、把持部の内部に固定され、かつ第2の管状部材は、第1の管状部材の一端が延伸してなる。
【0008】
実施時に、第1の管状部材の外周縁と挟持部の内周縁とは同様な断面を有し、かつ第1の管状部材を挟持部内に直接挿入して位置決めするように、第1の管状部材の外周縁が挟持部の内周縁よりも小さい。
【0009】
実施時に、第1の管状部材が径方向に伸縮する弾性を有するように、第1の溝は第1の管状部材と同じ軸方向に沿って開設する。
【0010】
実施時に、第2の管状部材の壁部に少なくとも1つの径方向に沿う貫通穴を更に設ける。
【0011】
実施時に、第2の管状部材は、少なくとも1つの第2の溝を更に有する。第2の管状部材の断面がCの形状になるように、第2の溝は第2の管状部材と同じ軸方向に沿って開設する。
【0012】
実施時に、充填部の一端が第2の管状部材の内、外周縁に充填される。
【0013】
実施時に、充填部の一端が挟持部の当該端部が延伸してなり、かつ把持部を形成する。
【0014】
実施時に、くびれ部を更に備え、くびれ部の一端が延伸して第1の管状部材となり、くびれ部の他端が延伸して第2の管状部材となる。
【0015】
実施時に、第1の管状部材が両端が開放する第1のパイプを有し、くびれ部が1つの中間パイプを有し、第2の管状部材が両端が開放する第2のパイプを有する。第1のパイプ、中間パイプ、および第2のパイプがこの順に直線状に連通する。
【0016】
本発明を更に理解できるように、以下好ましい実施例を挙げ、図面、部材番号を参照して、本発明の具体的な構成内容および達成できる効果を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の好ましい実施例における一部の部材の斜視図である。
【
図2】本発明の好ましい実施例の組み合わせ断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔実施形態〕
本発明に係る複合箸の補強構造は、1つの挟持部内および1つの把持部内に固定され、主にこの順に延伸する1つの第1の管状部材と、1つの第2の管状部材とを備える。第1の管状部材と第2の管状部材は、それぞれ挟持部内および把持部内に位置決めされる。第1の管状部材は、少なくとも1つの第1の溝を有する。第1の管状部材を挟持部内に固定するように、1つの充填部は、挟持部の内部および少なくとも1つの第1の溝の中に充填される。
【0019】
図1、2を参照される。これらの図は本発明に係る複合箸の補強構造1の好ましい実施例である。複合箸9は、主にユーザが把持する1つの把持部91と食物を挟持する1つの挟持部92とを備える。把持部91の底端が挟持部92の頂端に接続し、かつ挟持部92は角管で太さが徐々に細くなる中空金属棒である。実施時に、挟持部92は円管で太さが徐々に細くなる形状でもよいし、断面が楕円形、三角形、四辺形以上の他の多角形で太さが徐々に細くなるパイプであってもよい。挟持部92の頂端に開口921が形成され、挟持部921の上半分の対向する側にそれぞれ横方向に沿って壁部を貫通する1つの貫通穴922を有する。
【0020】
複合箸9の補強構造1は、1つの第1の管状部材2と、1つのくびれ部3と、1つの第2の管状部材4と、1つの充填部5とを備える。第1の管状部材2と、くびれ部3と、第2の管状部材4とは1つの金属板をそれぞれ折り曲げてなる。成型後の第1の管状部材2の断面が四角形で、両端が開放する第1のパイプ21を有する。第1の管状部材2を挟持部92内に直接挿入して位置決めするように、第1の管状部材2の外周縁が挟持部92の内周縁よりも小さい。第1の管状部材2の四角形壁部に、同じ軸方向に沿い、間隔をあけて開設した、少なくとも1つの第1の溝22を有する。実施時に、第1の管状部材2が径方向に伸縮する弾性を有するように、第1の溝22が四角管の1つの側辺であるのは好ましい。第1の溝22が挟持部92の四角錐状のパイプ内に挿入された後、外方向へ拡張する力により挟持部92の内周縁に密接するようにあてて、安定して位置決めされる効果を奏する。
【0021】
くびれ部3は錐状管であり、くびれ部3の径の大きい一端が延伸して第1の管状部材2となり、くびれ部3の径の小さい他端が延伸して第2の管状部材4となる。2つの径の間に中間パイプ31が形成され、中間パイプ31の一端が第1の管状部材2の第1のパイプ21と連通する。くびれ部3の壁部に同じ軸方向に沿う1つの第3の溝32が設けられ、第3の溝32が第1の溝22と連通する。
【0022】
第2の管状部材4は直管であり、両端が開放する第2のパイプ41を有する。第1のパイプ21、中間パイプ31、および第2のパイプ41がこの順に直線状に連通する。第2の管状部材4の断面がCの形状になるように、第2の管状部材4の壁部側に同じ軸方向に沿う1つの第2の溝42が設けられ、第2の溝42が第3の溝32と連通する。第2の管状部材4の壁部の対向側に同じ軸方向に沿い、間隔をあけて開設する2つの径方向に沿う穴43を有し、実施時に、当該径方向に沿う穴43が1つであってもよい。
【0023】
充填部5は、プラスチックを注入、流し込む、または射出により成型される。成型時、充填部5の一端と第1の管状部材2とが挟持部92の内部に安定して位置決めされ、かつ充填部5の他端が第2の管状部材4の内、外周縁に充填され、第2の管状部材4を完全に被覆し、第2の管状部材4を把持部91の内部に固定するように、プラスチックは第2の管状部材4から第1の管状部材2に向けて入り、挟持部92の内部、少なくとも1つの第1の溝22、および挟持部92の上半分側の貫通穴922の中に充填される。本実施例において、充填部5が挟持部92の内部に完全に充填された後、挟持部92の頂端の開口921から直線方向に沿って外部へ突出し、第2の管状部材4を完全に被覆する以外、四角形且つ太さが徐々に太くなる延伸棒が形成され、当該延伸棒が把持部91として異なる材質の二段式箸構造となる。
【0024】
このため、本発明は下記の長所を有する。
【0025】
1、本発明の第1の管状部材が径方向に伸縮する弾性を有し、挟持部に挿入した後、第1の管状部材を反発させて安定して位置決めされる。このため、プラスチックを射出成型時に、支持部材全体がずれるまたは斜めになることなく、プラスチックを第1の管状部材および第2の管状部材の予定の内、外空間内に充填することができ、箸内の一体的に成型する埋め込み射出成型技術の品質を確保できる。
【0026】
2、本発明の第1の管状部材の外周縁が挟持部の内周縁に直接押圧し、かつ第1の管状部材、くびれ部、および第2の管状部材4は1つの金属板をそれぞれ折り曲げてなる。このため、充填部を挟持部の内部、少なくとも第1の溝および挟持部の上半分の両側の貫通穴に充填すると、異なる材質が結合する複合箸の中部の曲り強度を効率的に向上し、断裂しにくくなり、かつ金属棒本体の表面および全体の強度を効率的に向上させ、製品品質を向上する以外、使用寿命を延長できる。
【0027】
3、本発明の第1の管状部材の壁部に少なくとも1つの第1の溝を設け、第2の管状部材の壁部側に同じ軸方向に沿って1つの第2の溝を設け、第2の管状部材の他の側に少なくとも1つの径方向に沿う貫通穴を設けている。このため、充填部を成型時、プラスチックを滑らかに流動させて第1の管状部材、くびれ部、および第2の管状部材を被覆して固定し、かつ把持部と挟持部との結合力を向上して離脱を防止できる。
【0028】
以上を纏めると、上述に開示の内容によると、本発明は、予定した目的を確実に達成し、1つの補強構造を効率よく位置決めし、異なる材質の間の結合力を向上し、かつ金属箸の表面および全体の強度を向上し、製品品質が向上され、かつ使用寿命が延長された複合箸の補強構造を提供でき、産業上の利用価値がきわめて高いため、法律に基づいて発明特許出願を提出する。
【符号の説明】
【0029】
1 複合箸の補強構造
2 第1の管状部材
21 第1のパイプ
22 第1の溝
3 くびれ部
31 中間パイプ
32 第3の溝
4 第2の管状部材
41 第2のパイプ
42 第2の溝
43 穴
5 充填部
9 複合箸
91 把持部
92 挟持部
921 開口
922 貫通穴