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特許7032875誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマー駆動装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマー駆動装置
(51)【国際特許分類】
   H02N 11/00 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
H02N11/00 Z
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017121073
(22)【出願日】2017-06-21
(65)【公開番号】P2019009851
(43)【公開日】2019-01-17
【審査請求日】2019-11-13
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514285911
【氏名又は名称】千葉 正毅
(73)【特許権者】
【識別番号】510244754
【氏名又は名称】和氣 美紀夫
(73)【特許権者】
【識別番号】591005006
【氏名又は名称】マクセルクレハ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【弁理士】
【氏名又は名称】臼井 尚
(72)【発明者】
【氏名】千葉 正毅
(72)【発明者】
【氏名】和氣 美紀夫
【審査官】三島木 英宏
(56)【参考文献】
【文献】特許第4695226(JP,B1)
【文献】特開2008-245509(JP,A)
【文献】特許第5937044(JP,B2)
【文献】特開2017-099429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電エラストマー層および当該誘電エラストマー層を挟む一対の電極層を有する誘電エラストマー機能要素を備える誘電エラストマートランスデューサーであって、
前記誘電エラストマー機能要素を支持する支持体をさらに備えており、
前記各電極層は、1以上の印加領域を有しており、
前記誘電エラストマー機能要素は、前記一対の電極層の前記印加領域が重なった1以上の機能部を有しており、
前記機能部は、前記支持体から離間しており、
前記誘電エラストマー機能要素は、前記電極層が設けられていない1以上の無電極部を有しており、
前記無電極部は、前記支持体に固定されており、
前記誘電エラストマー機能要素は、少なくとも前記機能部が一重となる筒状とされており、
前記誘電エラストマー機能要素は、軸方向に互いに離間した複数の前記機能部を有し、
前記電極層は、前記複数の印加領域同士を連結する連結部を有しており、
前記連結部は、前記支持体に固定されておらず、
一方の前記電極層の前記連結部は、他方の前記電極層と重なっておらず、
前記軸方向において互いに隣り合う前記機能部の間において、前記誘電エラストマー機能要素のうち前記径方向内側に位置する前記電極層が設けられていない領域であって前記径方向外側に位置する前記電極層の前記連結部が設けられた領域の前記誘電エラストマー層が、前記支持体に固定されており、
前記軸方向において互いに隣り合う前記機能部の間において、前記誘電エラストマー機能要素のうち前記径方向内側に位置する前記電極層の前記連結部から径方向内方に凹むように、前記支持体に凹部が形成されていることを特徴とする、誘電エラストマートランスデューサー。
【請求項2】
請求項1に記載の誘電エラストマートランスデューサーと、
前記誘電エラストマートランスデューサーに電圧を印加するための電源部と、
を備えることを特徴とする、誘電エラストマー駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマー駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
誘電エラストマーを用いた誘電エラストマートランスデューサーを備える駆動装置は、電動モータ等と比べて軽量であり反応速度に優れる等の利点を有する。図24および図25は、従来の誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマー駆動装置を示している(特許文献1)。同図に示された誘電エラストマー駆動装置は、誘電エラストマートランスデューサー90と電源部95とを有する。誘電エラストマートランスデューサー90は、誘電エラストマー層91および一対の電極層92,93と張力維持体94とを備える。誘電エラストマー層は、所定の樹脂材料からなり、一対の電極層92,93は、誘電エラストマー層91の両面にそれぞれ形成されている。図24に示すように、誘電エラストマー層91および一対の電極層92,93は、十分な大きさを有する1枚の材料が巻き取られることにより複数層の円筒形状をなしている。図25に示すように、誘電エラストマートランスデューサー90においては、誘電エラストマー層91および一対の電極層92,93が、張力維持体94に巻きつけられている。張力維持体6は、誘電エラストマー層91を軸方向に伸長させる張力を維持する。電源部95から一対の電極層92,93に電圧が印加されると、クーロン力によって一対の電極層92,93が引き合う。この引力により、誘電エラストマー層91の厚さが減じられ、軸方向寸法が増大する。これにより、誘電エラストマートランスデューサー90が軸方向に伸長する。誘電エラストマー駆動装置Xにおいては、電源部95による電圧の印加を制御することにより、誘電エラストマートランスデューサー90を伸長または収縮させることができる。
【0003】
誘電エラストマー層91および一対の電極層92,93を複数層の円筒形状とする構成は、誘電エラストマートランスデューサー90の駆動力を高めることが意図されている。しかし、このような構成は、以下に述べる点が懸念される。
【0004】
誘電エラストマートランスデューサー90においては、誘電エラストマー層91および一対の電極層92,93が張力維持体94に巻きつけられている。仮に、誘電エラストマー層91および一対の電極層92,93が張力維持体94に接合されていなくても、張力維持体94によって軸方向に伸長させる張力が維持された誘電エラストマー層91は、軸方向中央部分がくびれるような変形を生じる。このため、一対の電極層92,93が張力維持体94に押付けられ、あるいは一対の電極層92,93が密着しあう格好となる。このような状態で、電源部95からの電圧印加制御により誘電エラストマートランスデューサー90が伸長および収縮すると、一対の電極層92,93が不当に擦れてしまう事態が生じ、一対の電極層92,93の損傷が懸念される。また、誘電エラストマートランスデューサー90のうち張力維持体94に固定された部分は、電圧が印加されても伸長には寄与しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-65427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、電極層の損傷を回避しつつ、十分な伸長量を得ることが可能な誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマー駆動装置を提供することをその課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面によって提供される誘電エラストマートランスデューサーは、誘電エラストマー層および当該誘電エラストマー層を挟む一対の電極層を有する誘電エラストマー機能要素を備える誘電エラストマートランスデューサーであって、前記誘電エラストマー機能要素を支持する支持体をさらに備えており、前記各電極層は、1以上の印加領域を有しており、前記誘電エラストマー機能要素は、前記一対の電極層の前記印加領域が重なった1以上の機能部を有しており、前記機能部は、前記支持体から離間していることを特徴としている。
【0008】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記誘電エラストマー機能要素は、前記電極層が設けられていない1以上の無電極部を有しており、前記無電極部は、前記支持体に固定されている。
【0009】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記誘電エラストマー機能要素は、少なくとも前記機能部が一重となる筒状とされている。
【0010】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記誘電エラストマー機能要素は、軸方向に互いに離間した複数の前記機能部を有する。
【0011】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記印加領域は、周方向において複数の部分に分割されている。
【0012】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記電極層は、前記複数の印加領域同士を連結する連結部を有しており、前記連結部は、前記支持体に固定されていない。
【0013】
本発明の好ましい実施の形態においては、一方の前記電極層の前記連結部は、他方の前記電極層と重なっていない。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記支持体は、軸方向視において円形状であり且つ軸方向に離間配置された複数の板状部材からなる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記印加領域に接続された配線をさらに備える。
【0016】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記誘電エラストマー機能要素を伸長させる張力維持体をさらに備える。
【0017】
本発明の第2の側面によって提供される誘電エラストマー駆動装置は、本発明の第1の側面によって提供される誘電エラストマートランスデューサーと、前記誘電エラストマートランスデューサーに電圧を印加するための電源部と、を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、電極層の損傷を回避しつつ、十分な伸長量を得ることができる。
【0019】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行う詳細な説明によって、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態の誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマー駆動装置を示す斜視図である。
図2】本発明の第1実施形態の誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマー駆動装置を示す平面図である。
図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図3のIV部を示す要部拡大断面図である。
図5図3のV-V線に沿う要部拡大断面図である。
図6】本発明の第1実施形態の誘電エラストマートランスデューサーの誘電エラストマー層および電極層を示す展開平面図である。
図7】本発明の第1実施形態の誘電エラストマートランスデューサーの誘電エラストマー層および電極層を示す展開平面図である。
図8】本発明の第1実施形態の誘電エラストマートランスデューサーの誘電エラストマー層および電極層を示す展開平面図である。
図9】本発明の第1実施形態の変形例の誘電エラストマートランスデューサーの誘電エラストマー層および電極層を示す展開平面図である。
図10】本発明の第1実施形態の変形例の誘電エラストマートランスデューサーの誘電エラストマー層および電極層を示す展開平面図である。
図11】本発明の第1実施形態の他の変形例の誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマー駆動装置を示す断面図である。
図12】本発明の第2実施形態の誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマー駆動装置を示す斜視図である。
図13】本発明の第2実施形態の誘電エラストマートランスデューサーの誘電エラストマー層および電極層を示す展開平面図である。
図14】本発明の第2実施形態の誘電エラストマートランスデューサーの誘電エラストマー層および電極層を示す展開平面図である。
図15】本発明の第2実施形態の変形例の誘電エラストマートランスデューサーの誘電エラストマー層および電極層を示す展開平面図である。
図16】本発明の第2実施形態の変形例の誘電エラストマートランスデューサーの誘電エラストマー層および電極層を示す展開平面図である。
図17】本発明の第3実施形態の誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマー駆動装置を示す断面図である。
図18】本発明の第3実施形態の誘電エラストマートランスデューサーの誘電エラストマー層および電極層を示す展開平面図である。
図19】本発明の第3実施形態の誘電エラストマートランスデューサーの誘電エラストマー層および電極層を示す展開平面図である。
図20】本発明の第4実施形態の誘電エラストマートランスデューサーを示す斜視図である。
図21】本発明の第5実施形態の誘電エラストマートランスデューサーを示す斜視図である。
図22】本発明に係る誘電エラストマー発電装置の一例を示す構成図である。
図23】本発明に係る誘電エラストマーセンサ装置の一例を示す構成図である。
図24】従来の誘電エラストマートランスデューサーの一例に用いられる誘電エラストマー層および電極層を示す斜視図である。
図25】従来の誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマー駆動装置の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0022】
図1図8は、本発明の第1実施形態の誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマー駆動装置を示している。本実施形態の誘電エラストマー駆動装置B1は、誘電エラストマートランスデューサーA1および電源部7を備えている。誘電エラストマー駆動装置B1は、たとえば電源部7からの電圧印加に応じて、誘電エラストマートランスデューサーA1を動作させることにより、駆動力を出力する装置である。誘電エラストマー駆動装置B1の用途は特に限定されず、典型的な例としては、たとえばロボットアームや義手等が挙げられる。
【0023】
図1は、誘電エラストマートランスデューサーA1および誘電エラストマー駆動装置B1を示す斜視図である。図2は、誘電エラストマートランスデューサーA1および誘電エラストマー駆動装置B1を示す平面図である。図3は、図2のIII-III線に沿う断面図である。図4は、図3のIV部を示す要部拡大断面図である。図5は、図3のV-V線に沿う要部拡大断面図である。図6図8は、誘電エラストマートランスデューサーA1の誘電エラストマー層および電極層を示す展開平面図である。
【0024】
誘電エラストマートランスデューサーA1は、誘電エラストマー機能要素1、複数の支持体5および張力維持体6を備えている。誘電エラストマー機能要素1は、誘電エラストマー層2および一対の電極層3,4を有しており、いわゆる人工筋肉と称される動作を可能とするものである。
【0025】
誘電エラストマー層2は、誘電エラストマー機能要素1がたとえば人工筋肉として用いられることを考慮すると、弾性変形が可能であるとともに、絶縁強度が高いことが求められる。このような誘電エラストマー層2の材質は特に限定されないが、好ましい例として、たとえばシリコーンエラストマーやアクリルエラストマー等が挙げられる。
【0026】
一対の電極層3,4は、誘電エラストマー層2を挟んでおり、電源部7によって電圧が印加されるものである。一対の電極層3,4は、導電性を有するとともに、誘電エラストマー層2の弾性変形に追従しうる弾性変形が可能な材質によって形成される。このような材質としては、弾性変形可能な主材に導電性を付与するフィラーが混入された材質が挙げられる。前記フィラーの好ましい例として、たとえばカーボンナノチューブが挙げられる。本実施形態においては、円筒形状とされた誘電エラストマー層2の外面に電極層3が設けられており、内面に電極層4が設けられている。
【0027】
誘電エラストマー機能要素1は、外部からの外力や拘束を受けていない場合、電源部7からの電圧が印加されていない状態においては、自発的な伸長や伸縮を生じていない自然長状態であり、外力が付与された場合に、誘電エラストマー層2の弾性変形が許容されている。電源部7から電圧が付与されると、一対の電極層3,4には、誘電エラストマー層2を挟んで正負の電荷が蓄えられる。これらの電荷のクーロン力により、一対の電極層3,4が互いに引き合い、誘電エラストマー層2が厚さ方向に圧縮される。この厚さ方向の圧縮に応じて、誘電エラストマー層2の厚さ方向視寸法が伸長する。このように、誘電エラストマー機能要素1は、電圧が印加されることにより、厚さ方向視寸法が伸長する挙動をとりうる。なお、本発明で言う誘電エラストマー機能要素としては、電圧の印加により厚さ方向視寸法が伸長する構成に限定されず、電圧の印加によって厚さ方向視寸法が縮小する構成を採用してもよい。
【0028】
図6図8は、誘電エラストマートランスデューサーA1が構築される前の状態の誘電エラストマー層2および一対の電極層3,4を示している。なお、これらの図においては、図1に示す周方向θの特定の位置である位置P1,P2,P3,P4に相当する位置を一点鎖線で示している。
【0029】
図6は、誘電エラストマートランスデューサーA1において誘電エラストマー層2の外面となる面を示す平面図である。同図に示すように、本実施形態の電極層3は、複数の印加部31、複数の連結部32および接続部33を有する。
【0030】
印加部31は、誘電エラストマー機能要素1において電極層4の対応する部位とともに誘電エラストマー層2を挟む部位であり、電圧が印加される部位である。印加部31の形状等は特に限定されず、図示された例においては、周方向θに長く延びる長矩形状である。複数の印加部31は、軸方向zに隙間をおいて並んでいる。複数の印加部31の個数は特に限定されず、図示された例においては、3つの印加部31を有する場合が示されている。複数の印加部31の個数は、2個であってもよいし、4個以上であってもよい。
【0031】
連結部32は、軸方向zに隣り合う印加部31同士を連結しており、隣り合う印加部31を導通させている。図示された例においては6つの連結部32が設けられている。このうち3つずつの連結部32の軸方向z位置が一致している。また、これらの連結部32は、位置P2および位置P4に位置している。
【0032】
接続部33は、軸方向z上側に位置する印加部31から軸方向z上方に延びる部分である。図3に示すように、接続部33は、電源部7からの電圧印加回路を構成する配線71が接続される部位である。
【0033】
図7は、誘電エラストマートランスデューサーA1において誘電エラストマー層2の内面となる面を示す平面図である。同図に示すように、本実施形態の電極層4は、複数の印加部41、複数の連結部42および接続部43を有する。
【0034】
印加部41は、誘電エラストマー機能要素1において電極層3の印加部31とともに誘電エラストマー層2を挟む部位であり、電圧が印加される部位である。印加部41の形状等は特に限定されず、図示された例においては、周方向θに長く延びる長矩形状である。複数の印加部41は、軸方向zに隙間をおいて並んでいる。複数の印加部41の個数は特に限定されず、図示された例においては、3つの印加部41を有する場合が示されている。複数の印加部41の個数は、2個であってもよいし、4個以上であってもよい。
【0035】
連結部42は、軸方向zに隣り合う印加部41同士を連結しており、隣り合う印加部41を導通させている。図示された例においては4つの連結部42が設けられている。このうち2つずつ連結部42の軸方向z位置が一致している。また、これらの連結部42は、位置P1および位置P3に位置しており、電極層3の連結部32とは、周方向θにおける位置が異なっている。
【0036】
接続部43は、軸方向z下側に位置する印加部41から軸方向z下方に延びる部分であり、軸方向zにおける位置が電極層3の接続部33とは反対側である。図3に示すように、接続部43は、電源部7からの電圧印加回路を構成する配線72が接続される部位である。
【0037】
図8は、誘電エラストマー層2および電極層3に電極層4の一部を陰線で重ねて示している。同図に示すように、誘電エラストマー機能要素1は、複数の機能部11および複数の無電極部12が構成されている。
【0038】
機能部11は、電極層3の印加部31および電極層4の印加部41と、誘電エラストマー層2のうちこれらの印加部31および印加部41に挟まれた部分と、によって構成されている。すなわち機能部11を構成する誘電エラストマー層2の部分は、印加部31および印加部41に電圧が印加されると顕著に変形する部分である。図示された例においては、軸方向zに並ぶ3つの機能部11が設けられている。
【0039】
無電極部12は、誘電エラストマー層2のうち電極層3および電極層4の双方が形成されていない部分によって構成されており、軸方向zにおいて隣り合う機能部11の間に位置している。図示された例においては、8つの無電極部12が設けられている。
【0040】
複数の支持体5は、誘電エラストマー機能要素1を筒状に維持するためのものである。本実施形態においては、誘電エラストマー機能要素1を円筒形状に維持する構成とされており、軸方向z視において円形状の板状部材であり、外周面51を有する。支持体5の個数は特に限定されず、本実施形態においては3つの機能部11が軸方向zに並べられていることに対応して、4つの支持体5が設けられている。なお、支持体5の構成は特に限定されず、誘電エラストマー機能要素1を所望の状態で支持するものであればよい。支持体5は、楕円形及び多角形状等であってもよい。これらの場合、誘電エラストマー機能要素1は、楕円筒状や多角形筒状となる。さらに、誘電エラストマー機能要素1は、板状の他に枠状や骨組構造であってもよい。
【0041】
図3に示すように、軸方向zの上端および下端に位置する2つの支持体5は、大きな貫通孔を有していない。軸方向z内側に位置する2つの支持体5は、貫通孔52を有している。貫通孔52は、支持体5を軸方向zに貫通しており、軸方向z視において支持体5の中央に位置している。また、支持体5は、凹部53を有していてもよい。図示された例においては、位置P1および位置P3に、2つの凹部53が形成されている。凹部53は、外周面51から径方向内方に凹んでいる。
【0042】
張力維持体6は、誘電エラストマー機能要素1を軸方向zに伸長させる張力を維持するものである。張力維持体6の具体的構成は特に限定されず、本実施形態においては、張力維持体6は、ばねによって構成されている。図3に示すように、張力維持体6の両端は、軸方向zの上端および下端に位置する2つの支持体5に取付けられている。また、張力維持体6は、軸方向z内側に位置する2つの支持体5の貫通孔52に挿通されている。
【0043】
本実施形態においては、誘電エラストマー機能要素1が4つの支持体5に接合されることにより、誘電エラストマー機能要素1が円筒形状に維持されている。図6図8に示す誘電エラストマー機能要素1を4つの支持体5に巻き付けることにより、円筒形状とする。本実施形態においては、誘電エラストマー機能要素1は、一重の円筒形状とされている。より具体的には、少なくとも機能部11が一重となる構成である。すなわち、図6図8に示す誘電エラストマー機能要素1を複数の支持体5に巻きつけた際に、誘電エラストマー機能要素1の周方向θであって機能部11以外の部分同士が僅かに重なり合う構成であってもよい。
【0044】
誘電エラストマー機能要素1は、4つの支持体5の外周面51に接合されている。より具体的には、図5に示すように、誘電エラストマー機能要素1の無電極部12の内面が接合材29によって支持体5の外周面51に接合されている。また、図4に示すように、誘電エラストマー層2のうち外面に電極層3が設けられているものの、内面に電極層4が設けられていない箇所が、支持体5の外周面51に接合材29によって接合されている。一方、図3および図4に示すように、機能部11を構成する印加部41は、複数の支持体5に対して軸方向zに離間している。このため、印加部41(機能部11)は、支持体5に対して接合されておらず、軸方向zに離間している。
【0045】
また、電極層4の連結部42は、支持体5に対して接合されていない。本実施形態においては、図5に示すように、支持体5のうち連結部42が存在する位置P1および位置P3に凹部53が形成されている。周方向θにおいて連結部42と凹部53との位置を一致させることにより、連結部42は、支持体5から明瞭に離間している。なお、凹部53が設けられていることにより、連結部42を支持体5から離間させる構成に限定されず、凹部53が設けられていない支持体5を用いてもよい。この場合であっても、無電極部12を接合材29によって外周面51に接合し、連結部42は、支持体5の外周面51には接合しないことが好ましい。
【0046】
図3に示すように、円筒形状とされた誘電エラストマー機能要素1の内部に張力維持体6が設けられている。誘電エラストマー機能要素1と張力維持体6とは接しておらず、径方向rに離間している。図示された状態は、電源部7からの電圧が印加されていない状態である。同図において、張力維持体6は、自然長に対して軸方向zに圧縮された状態であり、軸方向zに伸長して復帰しようとする弾性力を発揮している。この張力維持体6の弾性力が2つの支持体5を介して誘電エラストマー機能要素1の軸方向z両端に付与されている。これにより、誘電エラストマー機能要素1は、軸方向zに伸長する張力が維持されている。この張力維持により、誘電エラストマー機能要素1は、軸方向zに伸長するとともに、軸方向zにおいて隣り合う支持体5の間において、若干くびれた形状となる。図示された例においては、たとえば支持体5の直径が軸方向zにおいて隣り合う支持体5同士の距離と同程度か当該距離よりも小である。このため、隣り合う支持体5の間に位置する誘電エラストマー機能要素1は、比較的短軸の円筒形状をなしている。このため、上述した誘電エラストマー機能要素1のくびれは、たとえば、軸方向zの上端および下端の2つの支持体5のみによって誘電エラストマー機能要素1を円筒形状とし同等の張力を維持した場合のくびれと比べて、顕著に小となっている。
【0047】
次に、誘電エラストマートランスデューサーA1および誘電エラストマー駆動装置B1の作用について説明する。
【0048】
本実施形態によれば、図3に示すように、無電極部12が支持体5に固定されており、機能部11は、支持体5から離間している。機能部11は、電源部7による電圧印加により、伸縮する部位である。このような機能部11が支持体5に接合されていると、伸縮が支持体5によって不当に拘束されることになる。これにより、十分な伸縮が阻害されてしまう。また、たとえば印加部41が支持体5に接合されていると、印加部41に過大な応力が生じ、印加部41が破損することが懸念される。本実施形態においては、機能部11が支持体5から離間しているため、機能部11の伸縮が阻害されるおそれがなく十分な伸縮が期待できる。また、機能部11を構成する印加部31および印加部41は、いずれも支持体5に接合されていない。このため、印加部31および印加部41に過大な応力が生じることを回避可能であり、印加部31および印加部41の破損を抑制することができる。したがって、誘電エラストマートランスデューサーA1および誘電エラストマー駆動装置B1によれば、電極層3,4の損傷を回避しつつ、十分な伸長量を得ることができる。
【0049】
複数の機能部11が軸方向zにおいて多段をなす構成であることにより、各機能部11の軸方向z寸法を相対的に縮小することが可能である。これにより、誘電エラストマー機能要素1の張力に伴うくびれ量を縮小することが可能であり、誘電エラストマートランスデューサーA1の伸縮を効果的に生じさせることができる。また、誘電エラストマー機能要素1が一重とされていることにより、たとえば機能部11が重なり合うことによって電極層3および電極層4が擦れ合うことを回避することができる。
【0050】
図4および図5に示すように、誘電エラストマー機能要素1のうち支持体5の外周面51に接合されている部位は、誘電エラストマー層2の一部であり、電極層4は、支持体5には接合されていない。このため、誘電エラストマートランスデューサーA1の伸縮に伴って連結部42に変形が生じたとしても、この変形が支持体5によって拘束されることを回避可能である。これは、電極層4の保護に好ましい。
【0051】
図6図8に示すように、電極層3の連結部32と電極層4の連結部42とは、周方向θにおける位置が互いに異なるものとされている。このため、軸方向zにおいて支持体5が存在する領域においては、誘電エラストマー層2の同一部分を電極層3と電極層4との双方が挟む構造が存在しない。すなわち、誘電エラストマー層2のみによって構成された部分、または誘電エラストマー層2と電極層3および電極層4のいずれか一方のみとによって構成された部分は、電源部7によって電圧が印加されても顕著な変形を生じない。したがって、誘電エラストマー機能要素1のうち支持体5に接合された箇所が、変形に抗して不当に拘束されるという事態を回避することができる。
【0052】
接続部33と接続部43とが軸方向zにおいて互いに反対側に設けられていることにより、接続部33と接続部43との間に意図しないクーロン力が生じることを防止することができる。
【0053】
図9図23は、本発明の変形例および他の実施形態を示している。なお、これらの図において、上記実施形態と同一または類似の要素には、上記実施形態と同一の符号を付している。
【0054】
図9および図10は、誘電エラストマートランスデューサーA1の変形例の誘電エラストマー機能要素1を示している。本変形例においては、電極層3の接続部33と電極層4の接続部43とが、軸方向zにおいて同じ側に設けられている。
【0055】
本変形例においては、図9に示すように、周方向θに離間配置された複数の接続部33が設けられている。また、図10に示すように、周方向θに離間配置された複数の接続部43が設けられている。複数の接続部33は、位置P2および位置P4に設けられており、複数の接続部43は、位置P1および位置P3に設けられている。すなわち、複数の接続部33と複数の接続部43とは、周方向θにおいて互いに異なる位置に設けられている。
【0056】
このような変形例によっても、電極層3,4の損傷を回避しつつ、十分な伸長量を得ることができる。
【0057】
図11は、誘電エラストマートランスデューサーA1および誘電エラストマー駆動装置B1の他の変形例を示している。本実施形態においては、誘電エラストマートランスデューサーA1に複数の配線73および複数の金属膜75が設けられている。金属膜75は、たとえばCu等の金属からなり、支持体5に接合されている。より具体的には、金属膜75は、径方向rを長手方向とし周方向θを幅方向とする帯状である。4つの支持体5のうち軸方向z下方に位置する3つの支持体5に金属膜75が接合されている。金属膜75は、支持体5の軸方向上面、下面および外周面51にわたって設けられている。複数の配線73は、隣り合う支持体5に設けられた金属膜75に接続されており、隣り合う金属膜75を導通させる低抵抗な導通経路を構成している。金属膜75のうち外周面51を覆う部分は、電極層4の連結部42に導通接続されている。
【0058】
このような変形例によっても、電極層3,4の損傷を回避しつつ、十分な伸長量を得ることができる。また、配線73および金属膜75によって導通経路を構成することにより、複数の印加部41は、隣り合う印加部41を経由する導通経路に加えて、配線73および金属膜75を経由する導通経路が構成されている。配線73および金属膜75を経由する導通経路は、印加部41を経由する導通経路よりも低抵抗とすることが容易である。したがって、誘電エラストマー機能要素1の全体をより効率よく伸縮させることができる。また、誘電エラストマー機能要素1への電荷の供給や誘電エラストマー機能要素1からの電荷の除去をより短時間で完了させることが可能である。したがって、誘電エラストマートランスデューサーA1の動作速度を高めることができる。なお、本変形例の構成の他に、配線73に代えて張力維持体6によって、誘電エラストマー機能要素1への導通経路を構成してもよい。たとえば、張力維持体6の少なくとも表面を導電体によって構成し、この張力維持体6と金属膜75とを接触させることにより、上述の導通経路を構成することができる。
【0059】
図9図11に示す変形例の構成は、以降の実施形態においても適宜採用できる。
【0060】
図12図14は、本発明の第2実施形態の誘電エラストマートランスデューサーを示している。本実施形態の誘電エラストマートランスデューサーA2は、図13に示すように、電極層3が、6つの印加部31を有している。そして、2つずつの印加部31が周方向θに互いに離間して配置されている。軸方向zにおいて隣り合う印加部31は、連結部32によって連結されている。また、図14に示すように、電極層4が、6つの印加部41を有している。そして、2つずつの印加部41が周方向θに互いに離間して配置されている。軸方向zにおいて隣り合う印加部41は、連結部42によって連結されている。このような電極層3および電極層4の構成により、誘電エラストマー機能要素1は、6つの機能部11を有している。2つずつの機能部11が周方向θに互いに離間して配置されている。また、位置P2および位置P4を挟んで3つずつの機能部11がそれぞれ周方向θに分かれて配置されている。軸方向zにおいて隣り合う機能部11の間には、上述した実施形態と同様に無電極部12が設けられている。
【0061】
本実施形態においては、電極層3の2つの接続部33のそれぞれに図3に示す配線71が個別に接続される。また、電極層4の2つの接続部43のそれぞれに図3に示す配線72が個別に接続される。このような構成により、図12に示すように、電極層3および電極層4の全体に電圧を印加した場合、誘電エラストマートランスデューサーA2は、軸方向zに伸長するように変形する。また、位置P1に位置する接続部33および接続部43のみに電圧を印加した場合、誘電エラストマートランスデューサーA1は、位置P3側に曲がるように変形する。また、位置P3に位置する接続部33および接続部43のみに電圧を印加した場合、誘電エラストマートランスデューサーA1は、位置P1側に曲がるように変形する。
【0062】
このような実施形態によっても、電極層3,4の損傷を回避しつつ、十分な伸長量を得ることができる。また、電圧を印加する印加部31および印加部41(機能部11)を適宜選択することにより、誘電エラストマートランスデューサーA2に伸長と2通りの曲げという複数種類の変形を生じさせることができる。なお、張力維持体6として、ばねとは異なる弾性体の棒状部材を採用してもよい。この場合、誘電エラストマー機能要素1の張力を維持できるものの、2つの接続部33および2つの接続部43の双方に電圧を印加しても誘電エラストマートランスデューサーA2は、顕著な変形を呈さない。一方の接続部33および接続部43に電圧を印加した場合に、上述した曲がるような変形を呈する。
【0063】
図15および図16は、誘電エラストマートランスデューサーA2の変形例の誘電エラストマー機能要素1を示している。本変形例においては、電極層3が12個の印加部31を有しており、電極層4が12個の印加部41を有している。4つずつの印加部31が周方向θに互いに離間配置されており、4つずつの印加部41が周方向θに互いに離間配置されている。これにより、誘電エラストマー機能要素1は、12個の機能部11を有しており、4つずつの機能部11が周方向θに離間配置されている。また、周方向θに離間配置された印加部31および印加部41に対応して、4つの接続部33および4つの接続部43が設けられている。
【0064】
このような変形例によっても、電極層3,4の損傷を回避しつつ、十分な伸長量を得ることができる。また、4つの接続部33および4つの接続部43のいずれか一組のみに電圧を印加することにより、この接続部33および接続部43が存在する位置とは周方向θにおいて反対側に誘電エラストマートランスデューサーA2が曲がるように変形を生じさせることができる。したがって、本変形例の誘電エラストマートランスデューサーA2は、互いに90°ずつ異なる4つの方位に曲がるような変形を任意に選択して生じさせることができる。
【0065】
図17図19は、本発明の第3実施形態に基づく誘電エラストマートランスデューサーおよび誘電エラストマー駆動装置を示している。本実施形態の誘電エラストマートランスデューサーA3および誘電エラストマー駆動装置B3においては、図17および図18に示すように、電極層3が、誘電エラストマー層2の略全体を覆う矩形状とされている。ただし、この電極層3は、図中において補助線および符号を用いて示されたように、3tの印加部31、2つの連結部32および接続部33を有する。3つの印加部31は、z方向に配列されており、連結部32は、隣り合う印加部31の間に介在している。また、図19に示すように、電極層4が軸方向zに離間配置された3つの印加部41を有している。電極層4は、隣り合う印加部41同士を連結する部位を有していない。このため、3つの印加部41同士は、それぞれ互いに絶縁されている。誘電エラストマー機能要素1は、軸方向zに離間配置された3つの機能部11を有する。
【0066】
図17に示すように、誘電エラストマー駆動装置B3は、配線71および複数の配線72を有している。また、3つの支持体5には、貫通孔54がそれぞれ設けられている。配線71は、たとえば電源部7のマイナス極に繋げられており、電極層3の接続部33に接続されている。これにより、配線71は、接続部33および複数の連結部32を介して各印加部31に導通している。また、複数の配線72は、たとえば電源部7のプラス極に繋げられており、電極層4の3つの印加部41に各別に接続されている。これにより、誘電エラストマー駆動装置B3においては、3つの機能部11のそれぞれに独立して電圧を印加可能とされている。
【0067】
このような実施形態によっても、電極層3,4の損傷を回避しつつ、十分な伸長量を得ることができる。また、3つの機能部11のそれぞれに独立して電圧を印加可能であることにより、軸方向zに多段構成とされた複数の機能部11のいずれかを任意に伸長させることができる。また、図13および図14図15および図16に示すように、印加部31および印加部41を、周方向θに離間配置された複数のものとして構成することにより、誘電エラストマートランスデューサーA3を、多段の伸縮に加えて多段の曲げが可能な構成とすることができる。
【0068】
図20は、本発明の第4実施形態に基づく誘電エラストマートランスデューサーを示している。本実施形態の誘電エラストマートランスデューサーA4は 、誘電エラストマー機能要素1が1つのみの機能部11を有している。すなわち、電極層3が1つのみの印加部31を有し、電極層4が1つのみの印加部41を有している。電極層3及び電極層4は、上述の接続部33及び接続部43を有していてもよい。
【0069】
本実施形態においても、機能部11は、支持体5から離間しており、支持体5には固定されていない。また、誘電エラストマー機能要素1は、機能部11の周囲に無電極部12が設けられている。無電極部12の少なくとも一部が支持体5に固定されることにより、誘電エラストマー機能要素1は、支持体5によって筒状に支持されている。
【0070】
このような実施形態によっても、電極層3,4の損傷を回避しつつ、十分な伸長量を得ることができる。また、本実施形態から理解されるように、本発明においては、誘電エラストマー機能要素1は、支持体5によって固定されていない1つ以上の機能部11を有する構成であればよい。
【0071】
図21は、本発明の第5実施形態に基づく誘電エラストマートランスデューサーを示している。本実施形態の誘電エラストマートランスデューサーA5は、誘電エラストマー機能要素1の基本形状や個数が、上述した実施形態と異なっている。
【0072】
本実施形態においては、誘電エラストマー機能要素1は、2つずつの誘電エラストマー層2、電極層3及び電極層4を有している。各誘電エラストマー層2は、たとえば長矩形状である。各電極層3は、2つの印加部31と連結部32とを有している。2つの印加部31は、誘電エラストマー層2の長手方向に並んで配置されており、各々がたとえば矩形状である。各電極層4は、2つの印加部41と連結部42とを有している。2つの印加部41は、誘電エラストマー層2の長手方向に並んで配置されており、各々がたとえば矩形状である。このような構成により、誘電エラストマー機能要素1は、z方向に並んだ2つの機能部11と、2つの機能部11の間に位置する無電極部12とを有している。
【0073】
また、誘電エラストマートランスデューサーA5は、3つの支持体5を有している。各支持体5は、たとえばz方向視において、x方向及びy方向に沿う四辺を有する矩形状の板状である。3つの支持体5は、z方向に互いに離間して配置されている。3つの支持体5のx方向手前側の部分に、一方の誘電エラストマー機能要素1が固定されている。また、3つの支持体5のx方向奥側の部分に、他方の誘電エラストマー機能要素1が固定されている。これらの固定においても、機能部11は、支持体5に固定されておらず、無電極部12が支持体5に固定されている。なお、誘電エラストマートランスデューサーA5のx方向への屈曲動作をよりスムーズに生じさせる観点からは、支持体5は、z方向視においてx方向を短手方向とし、y方向を長手方向とする、長矩形状が好ましい。
【0074】
このような実施形態によっても、電極層3,4の損傷を回避しつつ、十分な伸長量を得ることができる。また、本実施形態から理解されるように、誘電エラストマー機能要素1の形状は筒状に限定されず、平板状、錐台形状等の様々な形状としうる。また、複数の誘電エラストマー機能要素1を備えることにより、誘電エラストマートランスデューサーA5を複数の方向に駆動させることができる。
【0075】
図22は、本発明に係る誘電エラストマー発電装置の一例を示している。本実施形態の誘電エラストマー発電装置C1は、誘電エラストマートランスデューサーA1、制御部81及び蓄電部82を備えており、誘電エラストマー機能要素1の伸縮によって発電する装置である。
【0076】
誘電エラストマー発電装置C1には、誘電エラストマートランスデューサーA1の他、本発明によって提供される様々な形態の誘電エラストマートランスデューサーを用いることができる。
【0077】
制御部81は、誘電エラストマー機能要素1の電極層3及び電極層4への初期電圧の印加および電極層3及び電極層4からの出力電力を適宜制御する。また、制御部81は、当該印加および入力に際し、必要となるスイッチ(図示略)の切り替え制御を行う。このような制御部81は、たとえば、初期電荷を生じる電源部、出力電力を利用に適した電圧に変圧する等の機能を果たす変電部、電源部および変電部を制御するCPU、を含む。
【0078】
蓄電部82は、誘電エラストマートランスデューサーA1から出力された電力が入力されるものであり、誘電エラストマー発電装置C1における蓄電手段である。蓄電部82の構成は特に限定されず、誘電エラストマートランスデューサーA1から発電される電力を適切に蓄電可能な蓄電容量を備えたものであればよい。蓄電部82を構成する所謂二次電池としては、たとえばニッケル水素電池やリチウムイオン電池が挙げられる。また、蓄電部82は、入力電圧を二次電池に適した電圧に降下させる降圧回路を備えていてもよい。
【0079】
誘電エラストマー発電装置C1における発電は、まず、誘電エラストマー機能要素1が伸長した状態でに初期電圧を印加する。次いで、外力の除外もしくは作用により、誘電エラストマー機能要素1が伸縮すると、コンデンサとしての誘電エラストマー機能要素1の静電容量が小さくなる。これに伴い、誘電エラストマー機能要素1での電圧が初期電圧よりも高められる。この、初期電圧よりも高められた電圧に相当する電力が、誘電エラストマー発電装置C1における発電によって得られる電力である。
【0080】
本実施形態から理解されるように、本発明の誘電エラストマートランスデューサーの用途は、駆動に限定されず、発電に用いてもよい。
【0081】
図23は、本発明に係る誘電エラストマーセンサ装置の一例を示している。本実施形態の誘電エラストマーセンサ装置D1は、誘電エラストマートランスデューサーA1、発振駆動部900、中間回路910及び判定回路920を備えており、誘電エラストマー機能要素1の伸縮(変形)によって対象物の動作等を検出する装置である。
【0082】
誘電エラストマートランスデューサーA1および発振駆動部900は、発振回路を構成しており、交流電気信号を出力する。誘電エラストマー機能要素1は、可変コンデンサと見做して使用される。発振駆動部900は、たとえば交流電気信号を発生させるための電源や可変コンデンサとしての誘電エラストマー機能要素1とともに、従来公知のCR発振回路、LC発振回路、タイマICを用いた発振回路等を構成するものである。誘電エラストマー機能要素1の静電容量の変化に伴い、出力される交流電気信号の周波数が変化する。
【0083】
判定回路920は、上記発振回路の出力信号に基づき、誘電エラストマー機能要素1の静電容量の変化を判定するものである。判定回路920の構成は、特に限定されず、上記発振回路の出力信号と静電容量との関係を従来公知の種々の手法に基づいて判定可能なものであればよい。判定回路920の具体的構成は、後述する中間回路910のように、上記発振回路からの出力信号を適宜処理する回路の有無やその構成に応じて適切に選択される。判定回路920としては、マイコン、A/D変換IC、コンパレータ、オシロスコープ等が例示される。図示された例においては、上記発振回路の出力信号が一方の極性において周期的に変動する電気信号(以下、直流電気信号)に変換された場合に、この直流電気信号の周波数から誘電エラストマー機能要素1の静電容量の変化を判定する回路である。すなわち、誘電エラストマー機能要素1の初期静電容量に相当する周波数から、上記発振回路の出力信号としての直流電気信号の周波数が変化した場合に、誘電エラストマー機能要素1の静電容量Cが変化したと判定する。当該判定には、閾値等の判定基準を適宜採用してもよい。
【0084】
中間回路910は、上記発振回路の出力信号を判定回路920による判定に適したものに処理するものである。判定回路920が上記発振回路の出力信号を直接判定可能な構成の場合には、中間回路910を省略してもよいが、上記発振回路の出力信号である交流電気信号の周波数と静電容量Cとの関係を適切に判定するには、フィルター回路902を含む中間回路910を備えることが好ましく、現実的である。図示された例においては、中間回路910は、交流増幅回路901、フィルター回路902、検波回路903および直流増幅回路904を備えており、上記発振回路の出力信号を交流電気信号から直流電気信号に変換する構成である。
【0085】
交流増幅回路901は、上記発振回路からの交流電気信号を増幅させることにより、ダイナミックレンジを広げるものである。上記発振回路からの交流電気信号の信号レベルが十分である場合、交流増幅回路901を省略してもよい。交流増幅回路901は特に限定されず、たとえばトランジスター、FET、オペアンプ等が例示される。
【0086】
フィルター回路902は、上記発振回路の交流電気信号に含まれる所望の周波数帯の信号を通過させ、不要である周波数帯の信号を減衰あるいは遮断するものである。フィルター回路902は特に限定されず、たとえばハイパスフィルター、ローパスフィルター、バンドパスフィルター、バンドエルミネータフィルター等が例示される。図示された例においては、ハイパスフィルターが採用された場合を示している。なお、フィルター回路902具体的構成は、検波回路903から出力される直流電圧の変化幅に応じて選択される。
【0087】
検波回路903は、フィルター回路902から出力される交流電気信号としての上記発振回路の出力信号を直流に変換するものである。検波回路903は特に限定されず、たとえばダイオードを用いた半坡整流回路または全波整流回路が例示される。誘電エラストマー機能要素1の静電容量の判定の高速化には、応答特性が良好である構成の検波回路903を用いることが好ましい。
【0088】
直流増幅回路904は、検波回路903から出力される直流電気信号としての上記発振回路の出力信号を判定回路920での判定に適した信号レベルに増幅されるものである。なお、検波回路903からの直流電気信号のレベルが十分である場合、直流増幅回路904を省略してもよい。
【0089】
本実施形態から理解されるように、本発明の誘電エラストマートランスデューサーの用途は、駆動に限定されず、センサに用いてもよい。
【0090】
本発明に係る誘電エラストマー動作装置は、上述した実施形態に限定されるものではない。本発明に係る誘電エラストマー動作装置の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【符号の説明】
【0091】
A1~A5:誘電エラストマートランスデューサー
B1,B3:誘電エラストマー駆動装置
C1 :誘電エラストマー発電装置
D1 :誘電エラストマーセンサ装置
1 :誘電エラストマー機能要素
2 :誘電エラストマー層
3 :電極層
4 :電極層
5 :支持体
6 :張力維持体
7 :電源部
11 :機能部
12 :無電極部
29 :接合材
31 :印加部
32 :連結部
33 :接続部
41 :印加部
42 :連結部
43 :接続部
51 :外周面
52 :貫通孔
53 :凹部
54 :貫通孔
71,72,73:配線
75 :金属膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図19
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図21
図22
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