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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】包装用容器の蓋体
(51)【国際特許分類】
   B65D 43/08 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
B65D43/08 200
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2017128816
(22)【出願日】2017-06-30
(65)【公開番号】P2019011102
(43)【公開日】2019-01-24
【審査請求日】2020-06-19
(73)【特許権者】
【識別番号】391011825
【氏名又は名称】中央化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067448
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 スミ子
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【弁理士】
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】川島 修也
(72)【発明者】
【氏名】中村 歩香
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 哲也
(72)【発明者】
【氏名】今井 努
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3055773(JP,U)
【文献】特開2008-174278(JP,A)
【文献】特開平11-059683(JP,A)
【文献】特開2009-284892(JP,A)
【文献】登録実用新案第3116617(JP,U)
【文献】登録実用新案第3101382(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 35/44-35/54
B65D 39/00-55/16
B65D 1/00- 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視で略平坦な天面部と、
当該天面部の周縁に設けられた側壁部と、
裏返した状態で食用の液体を貯水するように当該天面部と一体的に形成された液体貯水部とを備え、
前記液体貯水部は側壁部との間に閉鎖された底部部分を形成するように通常の状態において溝状に形成された仕切り部を有し、
前記閉鎖された底部部分は仕切り部および/または側壁部に向かって、裏返した状態で、前記天面部とは異なる傾斜角で下方へ傾斜する傾斜部を有する
ことを特徴とする包装用容器の蓋体。
【請求項2】
前記傾斜部が、各々の下端部が対向するように設けられた第一の傾斜部及び第二の傾斜部であり、
前記仕切り部が、前記第一の傾斜部の下端部及び前記第二の傾斜部の下端部から対向するように設けられた第一の仕切り部及び第二の仕切り部を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の包装用容器の蓋体。
【請求項3】
請求項1又は2のいずれか一項に記載の蓋体と、当該蓋体で閉蓋される容器本体とを備えたことを特徴とする包装用容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体に収納した食品の調味料等の液体を貯水する構造を備えた蓋体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、スーパーマーケットやコンビニエンスストアで販売される食品を購入した消費者は、購入時の包装用容器のまま食品を食卓等に配膳するようになってきた。これは、消費者の生活習慣(例えば、独り暮らしや共働きにより食事の準備及び片づけに要する時間の短縮化等)や包装用容器の発達が影響していると考えられている。すなわち、食品の盛り付け及び食器の洗浄の負荷を回避したい消費者ニーズに応えるため、包装用容器のデザイン性や機能性も高まってきた。
【0003】
このような食品包装の背景に応じて、食品(例えば、刺身や寿司)に用いる調味料(例えば、醤油やたれ)の受け皿構造も変化しており、例えば、包装用容器の蓋体の裏側に仕切りを設けて調味料を貯める構造が開示されている(例えば、特許文献1~4参照.)。このような構造により、容器本体の食品の収納領域を狭めず、蓋体の裏面中に調味料が拡散してしまうことを予防する効果が期待されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平7-215384号公報
【文献】実用新案登録第3072230号公報
【文献】意匠登録第1443301号公報
【文献】意匠登録第1443711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1~4では、通常の状態にて透明な蓋体の天面部分越しから容器本体内の食品を観察しにくくする恐れがある。すなわち、平坦状の天面部分に対して仕切りの厚みや溝が目立ち、消費者の視界に仕切りが入ってしまうため、その分食品の観察力が低下してしまう。このような問題に対する配慮が公知文献ではなされておらず、工夫の余地がある。
【0006】
一方、一般的な包装用容器の蓋体では、食品の名称や値段等が印刷されたラベルが天面部分の右下に貼られるため、このラベルが貼られる領域に合わせて仕切りを設ければ、消費者の食品観察力の低下を軽減できる。このような発想に基づき、調味料を貯水する構造を活かしたラベルの貼り付け構造にも工夫の余地があるものの、この点について公知文献では記載も示唆もない。
【0007】
また、蓋体に設けられた調味料の貯水構造を利用する消費者にとって、単なる調味料の受け皿替わりでは、心証形成に与える影響は低い。すなわち、仕切りの形状を工夫することで、調味料の貯水機能を提供するのみならす、消費者の視覚に与える美感を向上させる余地があるものの、この点について公知文献では記載も示唆もない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、消費者の視界を妨げず蓋体の天面部分の構造を活かした調味料等の貯水構造を備えた包装用容器の蓋体を提供することにある。本発明の別の目的は、ラベルの貼り付け構造を配慮した調味料等の貯水構造を備えた包装用容器の蓋体を提供することにある。本発明のまた別の目的は、消費者の心証形成に影響を与える調味料等の貯水構造を備えた包装用容器の蓋体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明による包装用容器の蓋体は、平面視で略平坦な天面部と、上記天面部の周縁に設けられた側壁部と、裏返った状態で食用の液体を貯水するために上記天面部と一体的に形成された液体貯水部とを備え、上記液体貯水部は、上記天面部に対して部分的に傾斜している傾斜部と、上記傾斜部の下端部と連接している底部とで少なくとも形成されることを特徴としてもよい。
【0010】
また、上記底部が、上記天面部の略中央部分に配され、上記傾斜部が、上記底部の周縁に対して少なくとも四方から連接していることが望ましい。
【0011】
また、上記底部が、上記側壁部との境界に隣接する上記天面部の端部分及び/又は略中央部分に配され、上記傾斜部が、上記側壁部と連接していない上記底部の周縁に対して一方向及び/又は対向する二方向から連接していることが望ましい。
【0012】
また、上記天面部が、平面視で角部分を有する矩形状で、上記底部が、上記側壁部との境界に隣接する上記天面部の角部分に配され、上記傾斜部が、上記側壁部と連接していない上記底部の周縁に対して一方向から連接していることが望ましい。
【0013】
また、本発明による包装用容器の蓋体は、上記液体貯水部が、さらに上記傾斜部の周縁に設けられた仕切り部を有し、上記底部が、上記傾斜部の下端部と上記仕切り部の下端部との間又は略境界に配されていることを特徴としてもよい。
【0014】
また、上記傾斜部が、各々の下端部が対向するように設けられた第一の傾斜部及び第二の傾斜部であり、上記仕切り部が、上記第一の傾斜部の下端部及び上記第二の傾斜部の下端部から対向するように設けられた第一の仕切り部及び第二の仕切り部を有することが望ましい。
【0015】
以下に、本発明を構成する各要件の定義、意味、又は具体例を示す。
【0016】
「平面視で略平坦な天面部」とは、例えば、全体的又は部分的に高低差の小さい傾斜面が形成されていてもよく、完全な平面状以外の天面部も含まれることを意味してもよい。
【0017】
「裏返った状態」とは、蓋体の通常の向き(容器本体の開口部分を閉蓋する逆凹向き)とは逆向き(凹向き)にした状態を意味してもよい。
【0018】
「食用の液体」とは、包装用容器に盛り付けられる食品(刺身、寿司、揚げ物、サラダ等)の調味料が該当し、例えば、醤油、ソース、ケチャップ、マヨネーズ、マスタード、辣油、酢、レモン汁、ドレッシングでもよく、限定はない。
【0019】
「傾斜部」とは、上述したように裏返った状態にて上記天面部に形成された傾斜面又は上記傾斜面を一部とする構造が該当してもよく、剛性を高めるために上記天面部の縦方向、横方向、斜め方向、又は放射状(四方を含む)に設けられた所定幅のリブ(上記天面部の補強構造)でもよい。
「部分的に傾斜している」とは、上記天面部の所定の部分(例えば、中央部分、端部分、角部分等)に上記傾斜部が形成されていることを意味し、上記天面部の中心に対して縦方向、横方向、又は斜め方向で対称となるように形成されていてもよい。
「傾斜部の下端部」は、直線状、波状、又は円弧状でもよい。
【0020】
「底部」とは、天面部の一部で形成された矩形状、円形状、三角形状、又は線状(上記傾斜部の下端部と上記仕切り部の下端部との境界、上記傾斜部の下端部及び/又は上記仕切り部の下端部と上記側壁部の下端部分との境界)の領域でもよく、上記傾斜部の下端部及び/又は上記仕切り部の下端部の一部分でもよい。
「底部」が配される位置は、例えば、上記天面部の略中央部分、側壁部との境界に隣接する上記天面部の端部分、略中央部分から端部分までの間の部分、又は上記仕切り部との境界に隣接する上記天面部の所定の部分でもよい。
【0021】
「仕切り部」とは、上記食用の液体が上記底部を越えて天面部に拡散しないようせき止める障壁を意味してもよく、単数又は複数の仕切り部で形成される輪郭の平面視上の形状は、例えば、自然物(富士山、雲など)、植物(木、花など)、動物(犬、猫など)、乗り物(飛行機、船、自動車など)、ヒト、キャラクターでもよく、限定はない。
【発明の効果】
【0022】
本発明による包装用容器の蓋体では、液体貯水部が、天面部に対して部分的に傾斜している傾斜部と、傾斜部の下端部と連接している底部とで形成されることにより、天面部の形状を活かして食品用の液体を貯水する領域を形成することができる。すなわち、傾斜部により生じる天面部の高低差で食用の液体を底部側に寄せて溜められるため、液体貯水部を簡易な構造で成形形成することができる。さらに、液体をせき止める仕切りの形状を活かすことにより、液体貯水部を食品に関する情報のラベルを貼り付ける領域として兼用したり、消費者の心証形成の向上に寄与したりする効果も期待できる。
【0023】
また、底部が天面部の略中央部分に配され、傾斜部が底部の周縁に対して少なくとも四方から連接していることにより、天面部のほぼ中央部分に液体貯水部を形成すると共に、傾斜部の形状、配置、及び組み合わせにより天面部の剛性を維持することができる。
【0024】
また、底部が側壁部との境界に隣接する天面部の端部分及び/又は略中央部分に配され、傾斜部が側壁部と連接していない底部の周縁に対して一方向及び/又は対向する二方向から連接していることにより、傾斜部と側壁部とで底部を囲って液体貯水部を形成すると共に、液体貯水部の構造自体で天面部の剛性を維持する効果も期待できる。
【0025】
また、天面部が平面視で角部分を有する矩形状で、底部が側壁部との境界に隣接する天面部の角部分に配され、傾斜部が側壁部と連接していない底部の周縁に対して一方向から連接していることにより、傾斜部と側壁部とで略三角形状の底部を囲って液体貯水部を形成すると共に、液体貯水部の構造自体で天面部の剛性を維持する効果も期待できる。
【0026】
また、液体貯水部が傾斜部の周縁に設けられた仕切り部を有し、底部が傾斜部の下端部と仕切り部の下端部との間又は略境界に配されていることにより、通常の向きにおいて傾斜部が消費者の見やすい位置および向き(例えば、天面部の右下かつ手前側に傾斜している状態)に形成されていれば、液体貯水部の構造を食品等に関する情報のラベル貼付領域として活用する効果も期待できる。
【0027】
また、傾斜部が、各々の下端部が対向するように設けられた第一の傾斜部及び第二の傾斜部であり、仕切り部が、第一の傾斜部の下端部及び第二の傾斜部の下端部から対向するように設けられた第一の仕切り部及び第二の仕切り部を有することにより、各々の仕切り部を隔てて第一の傾斜部に貯水した液体と第二の傾斜部に貯水した液体とが向き合って生じる配色効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】包装用容器の蓋体の一例を示す平面図である。
図2】包装用容器の蓋体の一例を示す底面図である。
図3】包装用容器の蓋体の一例を示す正面図である。
図4】包装用容器の蓋体の一例を示す右側面図である。
図5】包装用容器の蓋体の一例を示す端面図である。
図6】包装用容器の蓋体の別の一例を示す平面図である。
図7】包装用容器の蓋体の別の一例を示す底面図である。
図8】包装用容器の蓋体の別の一例を示す正面図である。
図9】包装用容器の蓋体の別の一例を示す右側面図である。
図10】包装用容器の蓋体の別の一例を示す端面図である。
図11】包装用容器の蓋体のまた別の一例を示す平面図である。
図12】包装用容器の蓋体のまた別の一例を示す底面図である。
図13】包装用容器の蓋体のまた別の一例を示す正面図ある。
図14】包装用容器の蓋体のまた別の一例を示す右側面図である。
図15】包装用容器の蓋体のまた別の一例を示す端面図である。
図16】包装用容器の蓋体のさらに別の一例を示す平面図である。
図17】包装用容器の蓋体のさらに別の一例を示す底面図である。
図18】包装用容器の蓋体のさらに別の一例を示す正面図である。
図19】包装用容器の蓋体のさらに別の一例を示す右側面図である。
図20】包装用容器の蓋体のさらに別の一例を示す端面図である。
図21】包装用容器の蓋体のまたさらに別の一例を示す平面図である。
図22】包装用容器の蓋体のまたさらに別の一例を示す底面図である。
図23】包装用容器の蓋体のまたさらに別の一例を示す正面図である。
図24】包装用容器の蓋体のまたさらに別の一例を示す背面図である。
図25】包装用容器の蓋体のまたさらに別の一例を示す右側面図である。
図26】包装用容器の蓋体のまたさらに別の一例を示す端面図である。
図27】包装用容器の蓋体のさらにまた別の一例を示す平面図である。
図28】包装用容器の蓋体のさらにまた別の一例を示す底面図である。
図29】包装用容器の蓋体のさらにまた別の一例を示す正面図である。
図30】包装用容器の蓋体のさらにまた別の一例を示す背面図である。
図31】包装用容器の蓋体のさらにまた別の一例を示す右側面図である。
図32】包装用容器の蓋体のさらにまた別の一例を示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図1図32を参照しつつ、本発明の一実施形態における包装用容器の蓋体(以下、「本包装用容器の蓋体」ともいう。)について説明する。
これらの図において、複数個存在する同一の部位については、一つの部位のみに符番しているものもある。図面上では確認できず見えない部位については、その部位の該当箇所や引き出し線を破線で示しているものもある。図面上では仮想で描写している部位については、その部位や引き出し線を二点鎖線で示しているものもある。図面上では、背面図が正面図及び/又は左側面図が右側面図と同一又は対称に表れる場合、背面図及び/又は左側面図を省略しているものもある。
なお、本包装用容器の蓋体の向きは、消費者が本包装用容器と向き合う通常の向きを基準としてもよく、この通常の向きを本包装用容器の蓋体の正面としてもよく、この正面に位置する消費者にとって近い方を手前側、遠い方を奥側、左手方向を左側、右手方向を右側、上方向を上側、下方向を下側と表現してもよい。
【0030】
まず、本包装用容器の蓋体のうち、液体貯水部が種々の実施形態をそれぞれ有するため、図1図5を参照しつつ、本包装用容器の蓋体の基本構成及び各種蓋体の共通点について説明する。
【0031】
図1図5に示すとおり、本包装用容器の蓋体は、平面視で略平坦な天面部1と、この天面部の周縁に設けられた側壁部2と、裏返った状態で食用の液体を貯水するためにこの天面部と一体的に形成された液体貯水部3とを備え、この液体貯水部は、この天面部に対して部分的に傾斜している傾斜部31と、この傾斜部の下端部31aと連接している底部32とで少なくとも形成されることを特徴としてもよい。
【0032】
本包装用容器の蓋体は、食品等が収容される容器本体(図示しない)を閉蓋する平面視で略長方形状に成型された熱可塑性樹脂製の蓋体であって、平面視で略平坦な天面部1と、この天面部の周縁から下方に拡開する平坦状の側壁部2と、この側壁部の下端から外方に延出するフランジ部(符番しない)とを備えていてもよい。
なお、蓋体は、容器本体を外嵌合又は内嵌合にて閉蓋する構造でもよい。蓋体の形状は、平面視で正方形状、円形状、楕円形状でもよい。
【0033】
天面部1は、平面視で略長方形状でもよい。天面部1の角部分から側壁部2の角部分に渡って隅切り状に形成されていてもよい。
側壁部2の所定の箇所における水平断面上の端面は、平面視で略長方形状(天面部1と相似形状)でもよい。側壁部2は、部分的にフランジ部(例えば、膨出部や幅広部)上に立ち上がっていてもよい。
なお、天面部の形状は、平面視で正方形状、円形状、楕円形状でもよい。天面部1又はこの天面部から側壁部に渡る部分には、商品説明や値段を表示するシール状のラベルの貼付領域が設けられていてもよい。ラベルの裏面には、商品説明や値段等の情報の記載がされていてもよく、これらの記載の上からシール材が塗布されていてもよい。
【0034】
液体貯水部3は、本包装用容器の蓋体を裏返した状態で所定量の食品用の液体を貯水可能な構造であり、天面部1に対して全体的又は部分的に形成されていてもよい。天面部1に対する液体貯水部3の数は、単数でも2つ以上でもよい。天面部1に対する液体貯水部3の位置は、略中央部分、端部分(例えば、左端下、右端下など)、角部分、又はこれらのうち2つ以上に配されていてもよい。液体貯水部3の底部32に対して連接する傾斜部31の数は、単数でも2つ以上でもよい。
なお、平面状又は湾曲状、底部32は、平面状、湾曲状、又は線状でもよい。底面部32に対する傾斜部31の傾きは、0°超90℃未満であればいずれでもよく、限定はない。
【0035】
次に、液体貯水部の種々の特徴について説明する。
なお、図1図5で示した部位と同等のものは、参照を容易にする等のため、図6図10において一律100を加えた番号にしてもよい。また、図11図15図16図20図21図26、及び図27図32においても同様に、一律200~500を加えた番号にしてもよい。途中から新たに登場する部位については、周辺の部位に関連する番号にしてもよい。また、図5図2図10図7図15図12図20図17図26図22図32図28のA-A、B-B部分におけるC-C端面図である。
【0036】
図2及び図5に示す液体貯水部3の構成としては、底部32が、天面部1の略中央部分に配され、傾斜部31の下端部31aが、この底部の周縁に対して少なくとも四方から連接していてもよい。
【0037】
通常の状態の天面部1においては、図1及び図3に示すように、中央部分が平面状で、全体的には僅かに略ドーム状に膨出している略平坦な形状であってもよい。
裏返った状態の天面部1においては、図2及び図5に示すように、天面部1の周縁の4辺からそれぞれ中央部分に向かって緩やかに湾曲している平面視で略台形状の傾斜部31が計4つ設けてあり、この傾斜部の下端部31aが平面状の底部32の周縁と連接していてもよい。さらに、隣接する略台形状の傾斜部31同士の間には、天面部1の角部分からそれぞれ中央部分に向かって緩やかに湾曲している幅広の傾斜部31が計4つ設けてあり、この傾斜部の下端部31aが平面状の底部32の周縁と連接していてもよい。すなわち、液体貯水部3は、底部32が略台形状の傾斜部31と幅広の傾斜部31とで囲まれて形成されていてもよい。略台形状の傾斜部31と幅広な傾斜部31とは、それぞれ緩やかな曲面を描いて一体的に形成されていてもよい。液体貯水部3を構成する幅広な傾斜部31の各々は、通常の状態において天面部1の剛性を高めるリブとして機能してもよい。
【0038】
この構成によれば、通常の状態において天面部1に容器本体内の食品の視認性を妨げる部位がなく、かつ蓋体の剛性が適度に維持されているため、食品の消費者に対して見た目上及び使用上の不快感を回避しつつ、裏返った状態において略中央部分に設けられた液体貯水部3に食品の液体を貯水して飲食に使用できる。
【0039】
なお、傾斜部31の数及び各々の形状は、天面部1の周縁や底部32の周縁の形状に応じて選択してもよい。幅広な傾斜部31の幅寸法は、5mm~30mmが好ましく、10mm~20mmがより好ましく、5mm未満だと細過ぎてこの天面部に対して形状が目立ってしまい透明な蓋体の視認性が低下する恐れがあり、30mm超だとこの天面部に所望の剛性を付加できない恐れがある。天面部1の膨出量(底部32と天面部1の周縁との高低差)は、1mm~5mmが好ましく、1~3mmがより好ましく、1mm未満だと食品用の液体が貯水できない恐れがあり、5mm超だと液体貯水部の深さが深すぎて飲食しにくい恐れがある。
【0040】
図7及び図10に示す液体貯水部103の構成としては、底部132が、側壁部131との境界に隣接する天面部101の端部分に配され、傾斜部131の下端部131aが、この側壁部と連接していないこの底部の周縁に対して一方向から連接していてもよい。
なお、液体貯水部103は、天面部101の両端かつ対称に設けられていてもよく、図面上では一方の液体貯水部のみ符番してもよい。
【0041】
通常の状態の天面部101においては、図6及び8に示すように、略中央部分かつ側壁部302の長手壁の一端側から他端側に渡って凹状部分を有する形状であってもよい。
裏返った状態の天面部101においては、図7及び図10に示すように、上述した凹状部分が凸状部分となり、この凸状部分の両側から短手壁側に向かって緩やかに傾斜している傾斜部131がそれぞれ設けてあり、この傾斜部の下端部131aが平面状の底部132の周縁に該当する端部分と連接し、この端部分以外の部分は側壁部102の長手壁の一部かつ短手壁と連接していてもよい。すなわち、液体貯水部103は、底部132が傾斜部131と側壁部102の長手壁の一部及び短手壁とで囲まれて形成されてもよい。液体貯水部103は、通常の状態において天面部101の剛性を高めるリブとして機能してもよい。
【0042】
この構造によれば、通常の状態において天面部101に容器本体内の食品の視認性を妨げる部位がなく、かつ蓋体の剛性が適度に維持されているため、食品の消費者に対して見た目上及び使用上の不快感を回避しつつ、裏返った状態において両端部分に設けられた液体貯水部103に2種類の食品の液体をそれぞれ貯水して飲食に使用できる。
【0043】
なお、液体貯水部103の深さ(通常の状態での天面部101の頂点と凹状部分の最下点)との高低差は、1mm~5mmが好ましく、1mm~3mmがより好ましく、1mm未満だと食品用の液体が貯水できず、かつ天面部101に所望の剛性を付加できない恐れがあり、5mm超だと液体貯水部の深さが深すぎて飲食しにくく、かつこの天面部越しからの視認性が低下する恐れがある。
【0044】
図12及び図15に示す液体貯水部203の構成としては、底部232が、側壁部231との境界に隣接する天面部201の端部分及び略中央部分に配され、傾斜部231の下端部231aの双方が、この側壁部と連接していないこの底部の周縁に対して一方向又は対向する二方向から連接していてもよい。
なお、液体貯水部203は、天面部201の両端かつ対称に設けられていてもよく、図面上では一方の液体貯水部のみ符番してもよい。
【0045】
通常の状態の天面部201においては、図11及び図13に示すように、略中央部分と双方の短手壁側との間かつ長手壁の一端側から他端側に渡って凹状部分を計2つ有する形状であってもよい。
裏返った状態の天面部201においては、図12及び図15に示すように、上述した凹状部分が凸状部分となり、これらの凸状部分の両側から短手壁側に向かって緩やかに傾斜している傾斜部231がそれぞれ設けてあり、この傾斜部の下端部231aが平面状の底部232の周縁に該当する端部分と連接し、この底部の端部分以外の部分は側壁部202の長手壁の一部や長手壁の一部かつ短手壁と連接していてもよい。すなわち、中央部分の液体貯水部203は、底部232が双方の傾斜部231と側壁部202の長手壁の一部とで囲まれて形成されてもよい。両端部分の液体貯水部203は、底部232が一方の傾斜部231と側壁部202の長手壁の一部及び短手壁とで囲まれて形成されてもよい。液体貯水部203は、通常の状態において天面部201の剛性を高めるリブとして機能してもよい。
【0046】
この構造によれば、通常の状態において天面部201に容器本体内の食品の視認性を妨げる部位がなく、かつ蓋体の剛性が適度に維持されているため、食品の消費者に対して見た目上及び使用上の不快感を回避しつつ、裏返った状態において略中央部分及び両端部分に設けられた液体貯水部203に3種類の食品の液体をそれぞれ貯水して飲食に使用できる。
【0047】
図17及び図20に示す液体貯水部303の構成としては、天面部301が、平面視で角部分を有する矩形状で、底部332が、側壁部302との境界に隣接するこの天面部の角部分に配され、傾斜部331の下端部331aが、この側壁部と連接していないこの底部の周縁に対して一方向から連接していてもよい。
なお、液体貯水部303は、天面部301の角部分に点対称に設けられていてもよく、図面上では一方の液体貯水部のみ符番してもよい。
【0048】
通常の状態の天面部301においては、図16及び図18に示すように、略直角の角部分を形成する側壁部302の長手壁側から短手壁側に渡って幅広の凹状部分が点対称に配される形状であってもよい。
裏返った状態の天面部301においては、図17及び図20に示すように、上述した凹状部分が凸状部分となり、これらの凸状部分の少なくとも角部分側に緩やかに傾斜している傾斜部331がそれぞれ設けてあり、この傾斜部の下端部331aが平面状の底部332の周縁に該当する端部分と連接し、この底部の端部分以外の部分は側壁部302(長手壁及び短手壁)と連接していてもよい。すなわち、液体貯水部303は、底部332が傾斜部331と側壁部302とで囲まれて形成されていてもよい。通常の状態において、液体貯水部303を構成する幅広の凹状部分は、天面部301の剛性を高めるリブとして機能してもよい。
【0049】
この構造によれば、通常の状態において天面部301に容器本体内の食品の視認性を妨げる部位がなく、かつ蓋体の剛性が適度に維持されているため、食品の消費者に対して見た目上及び使用上の不快感を回避しつつ、裏返った状態において双方の角部分に設けられた液体貯水部303に2種類の食品の液体をそれぞれ貯水して飲食に使用できる。
【0050】
図22及び図26に示す液体貯水部403の構成としては、さらに傾斜部431の周縁に設けられた仕切り部433を有し、底部431が、この傾斜部の下端部431aとこの仕切り部の下端部(符番しない)との間又は略境界に配されていてもよい。
【0051】
通常の状態の天面401においては、図21及び図23に示すように、側壁部402に連接するように略矩形状に形成された溝部分に囲まれて側壁部側(外側)に向かって傾斜している略矩形状の傾斜部分を有する形状が、略右下部分に配されていてもよい。
裏返った状態の天面部401においては、図22及び図26に示すように、上述した傾斜部分が側壁部402と連接して中央寄り(内側)に向かって傾斜している傾斜部431となり、上述した溝部分がこの傾斜部の周縁に設けられた仕切り部433となり、この傾斜部の下端部431aとこの仕切り部とが接する部分に略線状の底部432が設けてあってもよい。すなわち、液体貯水部403は、略線状の底部432を形成する傾斜部431が仕切り部433に囲まれて形成されていてもよい。
【0052】
この構成によれば、通常の状態において天面部401に容器本体内の食品の視認性を妨げる部位がなく、かつ略矩形状の傾斜部分に食品に関する情報ラベルを見えやすく貼り付けられるため、食品の消費者に対して見た目上の不快感を回避しつつ、裏返った状態において液体貯水部403に食品の液体を貯水できるのみならず、上記情報ラベルの裏面の記載事項も視認可能となる。ラベルの裏面の記載事項により消費者の注意を誘えれば、液体貯水部の利用頻度の向上も期待できる。
【0053】
なお、傾斜部431の角度は、3°~7°が好ましく、4°~6°がより好ましく、3°未満だと食品用の液体が貯水できず、7°以上だと情報ラベルの記載事項が見えにくくなる恐れがある。底部432は平面状でもよく、傾斜部431の下端部431aを含め一部分がこの底部でもよい。
【0054】
図28及び図32に示す液体貯水部503の構成としては、傾斜部が、各々の下端部531ma、531naが対向するように設けられた第一の傾斜部531m及び第二の傾斜部531nであり、仕切り部が、この第一の傾斜部の下端部及びこの第二の傾斜部の下端部から対向するように設けられた第一の仕切り部533m及び第二の仕切り部533nを有していてもよい。
【0055】
通常の状態の天面501においては、図27及び図29に示すように、山型の溝部分が形成され、この山型の溝部分の内側に波型の溝部分がさらに形成され、この波型の溝部分から側壁部502(外側)に向かって緩やか傾斜している山型の中腹から裾野に該当する傾斜部分と、この天面部の内側に向かって緩やかに傾斜している山型の頂上付近に該当する傾斜部分とを有する形状が、略左下部分に配されていてもよい。
一方、裏返った状態の天面部501においては、図28及び図32に示すように、上述した山型の溝部分が仕切り部533となり、波型の溝部分が第一の仕切り部533m及び第二の仕切り部533nとなり、山型の中腹から裾野に該当する傾斜部分が第一の傾斜部531m、山型の頂上付近に該当する傾斜部分が第二の傾斜部531nとなり、この第一の仕切り部と第一の傾斜部の下端部531maとが接する部分を略線状の第一の底部532m、この第二の仕切り部と第二の傾斜部の下端部531naとが接する部分を略線状の第二の底部532nとしてもよい。すなわち、液体貯水部503は、略線状の第一の底部532mを形成する第一の傾斜部531m及び第一の仕切り部533mと、略線状の第二の底部532nを形成する第二の傾斜部531n及び第二の仕切り部533nとが互いに対向し、かつこれらが山型の仕切り部533に囲まれて形成されていてもよい。第一の仕切り部533m及び第二の仕切り部532nは、V字状に形成された波型の溝部分が裏返って形成されたものでもよい。
【0056】
この構成によれば、通常の状態において天面部501に容器本体内の食品の視認性を妨げる部位がなく、かつ山型の形状を視認できるため、食品の消費者に対して見た目上の不快感を回避しつつ良好な心証を形成できるばかりでなく、裏返った状態において液体貯水部503に食品の液体を貯水するのみならず、この液体が第一の及び第二の傾斜部をゆっくり流れ落ちて第一及び第二の仕切り部でせき止められることにより生じるグラデーション効果を演出することもできる。
【0057】
なお、第一の傾斜部531m及び第二の傾斜部531nの角度の範囲は、上述した傾斜部431と同等でもよく、上述したグラデーション効果を考慮してこの第一の傾斜部と第二の傾斜部との角度が異なっていてもよい。第一の仕切り部533mと第二の仕切り部532nとの距離に限定はなく、上述したグラデーション効果を考慮して広めでも狭めでもよい。
【0058】
したがって、これらの液体貯水部の実施形態には、以下の効果が期待できる。
【0059】
まず、本包装用容器の蓋体では、液体貯水部3・103~503が、天面部1・101~501に対して部分的に傾斜している傾斜部31・131~531m及び531nと、この傾斜部の下端部31a・131a~531ma及び531naと連接している底部32・132~532m及び532nとで形成されることにより、この天面部の形状を活かして食品用の液体を貯水する領域を形成することができる。すなわち、傾斜部により生じる天面部の高低差で食用の液体を底部側に寄せて溜められるため、各種の液体貯水部を簡易な構造で成形形成することができる。さらに、液体をせき止める仕切りの形状を活かすことにより、液体貯水部401・501を食品に関する情報のラベルを貼り付ける領域として兼用したり、消費者の心証形成の向上に寄与したりする効果も期待できる。
【0060】
また、底部32が天面部1の略中央部分に配され、傾斜部31がこの底部の周縁に対して少なくとも四方から連接していることにより、この天面部のほぼ中央部分に液体貯水部3を形成すると共に、この傾斜部の形状、配置、及び組み合わせにより天面部の剛性を維持することができる。
【0061】
また、底部132が側壁部102との境界に隣接する天面部101の端部分及びに配され、傾斜部131が側壁部102と連接していない底部の周縁に対して一方向から連接していることにより、この傾斜部と側壁部とで底部を囲って液体貯水部103を形成すると共に、この液体貯水部の構造自体で天面部の剛性を維持する効果も期待できる。
【0062】
また、底部232が側壁部202との境界に隣接する天面部201の端部分及び略中央部分に配され、傾斜部231が側壁部202と連接していない底部の周縁に対して一方向又は対向する二方向から連接していることにより、この傾斜部と側壁部とで底部を囲って液体貯水部203を形成すると共に、この液体貯水部の構造自体で天面部の剛性を維持する効果も期待できる。
【0063】
また、天面部301が平面視で角部分を有する矩形状で、底部332が側壁部302との境界に隣接するこの天面部の角部分に配され、傾斜部331がこの側壁部と連接していない底部の周縁に対して一方向から連接していることにより、この傾斜部と側壁部とで略三角形状の底部を囲って液体貯水部303を形成すると共に、この液体貯水部の構造自体で天面部の剛性を維持する効果も期待できる。
【0064】
また、液体貯水部403が傾斜部431の周縁に設けられた仕切り部433を有し、底部432がこの傾斜部の下端部431aとこの仕切り部の下端部との間又は略境界に配されていることにより、通常の向きにおいて傾斜部が消費者の見やすい位置および向き(例えば、天面部の右下かつ手前側に傾斜している状態)に形成されていれば、この液体貯水部の構造を食品等に関する情報のラベル貼付領域として活用する効果も期待できる。
【0065】
また、傾斜部が、各々の下端部が対向するように設けられた第一の傾斜部531m及び第二の傾斜部531nであり、仕切り部533が、この第一の傾斜部の下端部531ma及び第二の傾斜部の下端部531naから対向するように設けられた第一の仕切り部533m及び第二の仕切り部533nを有することにより、各々の仕切り部を隔ててこの第一の傾斜部に貯水した液体と第二の傾斜部に貯水した液体とが向き合って生じる配色効果を期待できる。
【0066】
なお、本実施形態における蓋体(及びこの蓋体にて閉蓋する容器本体)は、例えば真空成型、熱板圧空成型、真空圧空成型、両面真空成型等のシート成型で、合成樹脂シートを熱成型することにより形成されてもよい。合成樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、ポリスチレン等のスチレン系樹脂、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂で、単層や多層のシートを使用してもよい。樹脂としては、例えば、発泡樹脂を使用すれば、軽量かつ断熱性があり好ましい。さらに、シートの表面または裏面を合成樹脂フィルムで覆ってもよく、表面を覆った場合は印刷を施してもよい。合成樹脂シートの厚みは特に制限はないが、0.15~0.5mmであればよく、好ましくは0.18~0.45mm、より好ましくは0.2~0.35mmである。
【符号の説明】
【0067】
1、101、201、301、401、501 天面部
2、102、202、302、402、502 側壁部
3、103、203、303、403、503 液体貯水部
31、131、231、331、431、531m、531n 傾斜部
31a、131a、231a、331a、431a、531ma、531na 傾斜部の下端部
32、132、232、332、432、532m、532n 底部
433、533、533m、533n 仕切り部
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