(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】シールのための搬送ユニット
(51)【国際特許分類】
H01B 13/012 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
H01B13/012 A
(21)【出願番号】P 2017187003
(22)【出願日】2017-09-27
【審査請求日】2020-08-25
(32)【優先日】2016-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599122503
【氏名又は名称】シュロニガー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】マルク ジェンキンス
(72)【発明者】
【氏名】ルエディ イムフェルト
(72)【発明者】
【氏名】エルンスト ツヴェイフェル
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-531112(JP,A)
【文献】特開昭59-154783(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブル加工システムのための、シール(1)または同様のケーブルアセンブリコンポーネントの搬送ユニットであって、
シール加工作業と同時に、前記シール(1)をコンベア装置(3)から持ち上げ、シールアセンブリ装置に搬送するように設計され、この目的のために、前記シール(1)を支持する支持スリーブ(6)を有する、収集軸(2)を備え、
前記支持スリーブ(6)内に、前記シール(1)のためのアセンブリパイプ(4)が、前記シール(1)を通過後に突出可能である、搬送ユニットにおいて、
前記支持スリーブ(6)は、弾性材料から製造され、前記シール(1)に最も近い平坦な端面(6b)を有することを特徴とする、搬送ユニット。
【請求項2】
請求項1に記載の搬送ユニットであって、
前記支持スリーブ(6)は、前記収集軸(2)をすきまなく取り囲むことを特徴とする、搬送ユニット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の搬送ユニットであって、
前記収集軸(2)方向の前記支持スリーブ(6)の高さは、少なくとも前記支持スリーブ(6)の直径と同じ大きさであるか、好ましくはそれより大きいことを特徴とする、搬送ユニット。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の搬送ユニットであって、
前記支持スリーブ(6)は、ショアA硬度が60~120の範囲である材料から作られることを特徴とする、搬送ユニット。
【請求項5】
請求項4に記載の搬送ユニットであって、
前記支持スリーブ(6)は、ショアA硬度が90±5である材料から作られることを特徴とする、搬送ユニット。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の搬送ユニットであって、
前記支持スリーブ(6)は、着脱可能な接続により、前記収集軸(2)上に保持されることを特徴とする、搬送ユニット。
【請求項7】
ケーブル(K)にシール(1)を組み付ける方法であって、
搬送ユニットによる前記シールの収集を可能にする収集位置に、コンベア装置(3)によって前記シール(1)を搬送すること、を含み、
収集軸(2)が前進移動中に、この収集軸(2)が前記シール(1)の中央空洞内へ前進することにより、前記収集位置において、前記シール(1)が前記コンベア装置(3)から収集され、その後、前記収集軸(2)はアセンブリパイプ(4)内に突出し、ここで、前記シール(1)が前記アセンブリパイプ(4)を覆うように押し付けられ、
続いて、前記シール(1)が加工対象のケーブル(K)上に組み付けられること、をさらに含む、方法において、
前記シール(1)は、請求項1から6のいずれか1項に記載のとおり構成される搬送ユニットに収集され、前記シール(1)は、弾性材料から作られる支持スリーブ(6)に支持され、前記支持スリーブ(6)の前記シール(1)と向き合う前記端面(6b)は平坦であることを特徴とする、方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、
前記アセンブリパイプ(4)は、前記収集軸(2)に向かう相対運動中に、前記収集軸(2)から離れるように前記支持スリーブ(6)を持ち上げ、その幅を広げ、前記収集軸(2)と前記支持スリーブ(6)との間を押し進むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の方法であって、
前記アセンブリパイプ(4)は、前記収集軸(2)から離れる相対運動中に、前記支持スリーブ(6)と前記収集軸(2)との間の中間空間から後退し、その後、前記支持スリーブ(6)が再び前記収集軸(2)をすきま空間なく取り囲むことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の前提部分に記載の、ケーブル加工システム用のシールまたは同様のケーブルアセンブリコンポーネントのための搬送ユニット、および請求項7の前提部分に記載のシールまたは同様のアセンブリコンポーネントをケーブルに取り付ける方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばシールとケーブルグロメットのための搬送ユニットは、一般的に、シール加工作業と同時に、コンベア装置からシールを収集し、シールをシールアセンブリ装置に搬送するように設計された少なくとも1つの収集軸を備える。そのような搬送ユニットは、例えば特許文献1に開示される。特許文献2からより明確に理解されるように、収集軸の一端には、支持スリーブを設けても良く、または収集軸の一端を、シールが軸に押し付けられる際にシールを支持するために、これに応じて成型しても良い。この支持スリーブ内に、シール用アセンブリパイプがシールを貫通後、突出可能である。
【0003】
これらの通常の搬送ユニットにおいて、シール、つまり弾性ケーブル支持スリーブは、手段である搬送軸によって持ち上げられ、その後、アセンブリパイプに送られる。このプロセスにおいて、収集軸がアセンブリパイプ内に前進し、シールはアセンブリパイプ上にスライドする。このような方法で、収集軸の支持スリーブは、シールの上限止め具として機能する。皿穴は、金属支持スリーブの端面と適合し、その大きさと深さは、アセンブリパイプが一定のすきまを有する状態でスリーブ内に嵌合し内部を通過できるほどである。スリーブは、確実にシールをアセンブリパイプ上にスライドさせる、支持部材として機能する。
【0004】
特許文献3は、コンベア装置からシールを収集し、それらをシールアセンブリ装置に搬送するように設計された収集軸を備える、シールのための搬送ユニットを開示している。軸は、前進しながら、シールの中央空洞内を通過することにより、シールを持ち上げる。収集軸はさらに、シールを支持するための、環状に軸の周囲を通る溝を端面に備える、金属支持スリーブを有する。シールのためのアセンブリパイプは、中央空洞を通過後、溝内に突出可能であり、収集軸の先端部もまたアセンブリパイプを同時に貫通する。
【0005】
このシステムの有効性は長年にわたって証明され、信頼できるものの、特にシールが非常に小型、柔軟、薄肉、もしくは大きく末広がりである場合、または他に特別な特徴がある場合、および、収集軸とアセンブリパイプが一定の寸法である場合、収集軸の外径と支持スリーブの内径との間の重大な間隙によって、シールが破損することがある。この破損は、シールがアセンブリパイプと金属支持スリーブの皿穴との間に閉じ込められる場合に起こる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】欧州特許出願公開公報第1022821号明細書
【文献】欧州特許出願公開公報第881720号明細書
【文献】国際公開公報第2013/046075号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、あらゆる素材、あらゆる寸法の組み合わせであってもシールの破損を確実に回避できる搬送ユニットと、ケーブルにシールを組み付ける方法を設計することであった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために、上記搬送ユニットと上記方法は、独立請求項1および7の構成を特徴とする。さらに有利な変形例が、図面と従属請求項により提示される。
【0009】
具体的には、搬送ユニットの特徴は、支持スリーブが弾性材料から作られることと、シールに最も近い支持スリーブの前面が平坦であることである。それに加え、支持スリーブの材料は、収集軸およびアセンブリパイプを製造する材料よりも、さらに弾性的な材料から作られる。このようにすると、アセンブリパイプが弾性支持スリーブ自体を広げて、支持スリーブの下へ突出するために必要な空間を作ることができるため、アセンブリパイプが支持スリーブの下に入るとき、シールを押したり破損させたりする可能性のある、重大な空隙を一層小さくすることができる。他の領域では全て、シールは支持スリーブに対して同一平面に支持される。
【0010】
また、支持スリーブが収集軸をすきまなく取り囲むように設けることが好ましい。そうすることにより重大な空隙を完全になくし、シールが押しつぶされる危険性を確実に回避することができる。アセンブリパイプをスリーブの下に貫通させる環状間隙は、アセンブリパイプが進行しながら弾性支持スリーブを広げることにより、アセンブリパイプ自体によって作られる。
【0011】
本発明の別の構成は、収集軸へ向く支持スリーブの高さが、少なくとも支持スリーブの直径と同じか、好ましくはそれより大きいことから成る。この構成により、収集軸の軸に平行であるシールに対する十分な安定性と支持効果を保持したまま、簡単かつ容易に支持スリーブが半径方向に広がることが確実になる。
【0012】
支持スリーブは、ショアA硬度が60~120の範囲である材料から製造して設けることが好ましい。その際、どの支持スリーブを製造するかに応じて、ショアA硬度が90±5の材料から変化させることがより好ましい。
【0013】
使用目的にふさわしい支持スリーブを選択し、それを搬送ユニットに適合可能にするために、または摩耗した支持スリーブと簡単に交換可能にするために、本発明の好ましい変形例は、支持スリーブが、着脱可能な接続手段によって収集軸に保持されることを特徴とする。具体的には、そのような接続は、単に弾性支持スリーブと収集軸との静止摩擦によるものでも良い。交換が必要な際には、単に引き抜くか、収集軸に新しい支持スリーブを取り付ければ良い。支持スリーブの内径は一般的に、支持スリーブが設けられた位置の収集軸の外径よりも小さいため、静止摩擦によって定位置に保持される。
【0014】
シールが搬送ユニットによって支持されるように設けられた収集位置までコンベア装置でシールを搬送することを想定した、ケーブルにシールを組み付ける方法を用いても最初に明記した課題は解決される。その際、収集軸の前進ストロークの間、収集軸を好ましくはシールの中央空洞に導入して、その後、収集軸がアセンブリパイプ内に突出することにより、コンベア装置からシールが持ち上げられる。これにより、シールがアセンブリパイプ上にスライドする。そして、シールは、加工対象のケーブルと組み付けられる。
【0015】
上記課題を解決するため、本発明によるこの方法は、前段落のうちの1つに説明したとおりに構成される搬送ユニット内で、シールを収集し、弾性材料で作られた、シールと対向する端面が平坦である支持スリーブにシールが支持されることを特徴とする。
【0016】
この方法は、収集軸に向かうアセンブリパイプの相対運動中に、アセンブリパイプが収集軸から離れるように支持スリーブを持ち上げ、支持スリーブの幅を広げ、収集軸と支持スリーブとの間を押し進むことをさらに特徴とすることが好ましい。
【0017】
本方法の別の有利な変形例の特徴は、収集軸から離れるアセンブリパイプの相対運動中に、アセンブリパイプが支持スリーブと収集軸との間の中間部空間から後退し、その後、支持スリーブが再び収集軸をすきまなく取り囲むことである。
【0018】
本発明のさらなる利点、構成、および詳細については、以下の記載にて説明し、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。その際、請求項と明細書に挙げる各構成は、個別にまたはそれらを組み合わせて、本発明の目的に不可欠な構成として良い。
【0019】
符号のリストは、本開示の一部である。図面は、相互に関連して連続し、ある図面の構成は、また別の図面にも当てはまる場合がある。同一の構成要素は、同じ符号で特定され、添字が異なる符号は、機能的に同等または同様の構成要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】ケーブルにシールを組み付ける作業の流れを示す図である。
【
図2】持ち上げられたシールを有する収集軸を拡大した図である。
【
図3】シール拡張ジョーが貫通する直前の収集軸の位置を示す図である。
【
図4】支持スリーブに対してシールが押し上げられ、シール拡張ジョーが開いた状態で、アセンブリパイプに収集軸の一部が挿入された状態を示す図である。
【
図5】アセンブリパイプが、支持スリーブとアセンブリパイプのシールの下へ前進した状態の収集軸を示す図である。
【
図6】従来の剛性支持スリーブを用いた場合の、支持スリーブの入り口領域を拡大した収集軸の断面を示す図である。
【
図7】本発明による支持スリーブを用いた場合の、支持スリーブの入り口領域を拡大した収集軸の断面を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ケーブルKにシール1を組み付ける作業の流れを左から右へ示す図である。シール1、つまり、弾性ケーブル支持スリーブまたは別のケーブルアセンブリコンポーネントは、収集軸2を手段としてコンベアレール3から持ち上げられ、2段階の垂直移動でアセンブリパイプ4に搬送される。収集軸2は、2段階の垂直移動を行う。
【0022】
第1段階において、
図2に示される状態の収集軸2は、
図3の下向き矢印に示されるように、シール拡張ジョー5を貫通する。シール拡張ジョー5は、弾性インサートが取り付けられているため、中央には穿孔を有する。収集軸2はシール拡張ジョー5を貫通する一方、収集軸2のシール1は、支持スリーブ6に対して押し付けられる。シール1が支持スリーブ6の端面6bに達する直前に、シール拡張ジョー5が、例えばカム制御などによって開かれるため、シール1はそれ以上押されたり、圧縮されたりしない。この位置は、
図4に示され、シール拡張ジョー5はすでに開いた状態である。それと同時またはその直後に、収集軸2の先端部がアセンブリパイプ4内に突出したことも理解されるであろう。収集軸2とアセンブリパイプ4は互いに接近するため、シール1はアセンブリパイプ4に押し付けられる。この位置は、
図5に示される。アセンブリパイプ4が支持スリーブ6内の皿穴6aに前進中、シール1は、アセンブリパイプ4と支持スリーブ6との間で押しつぶされ、またはせん断され、破損するおそれがある。
【0023】
図6は、前端部に皿穴6aを有する従来の金属の支持スリーブ6の状態を示す。この皿穴6aは、アセンブリパイプ4が一定のすきまを有する状態で、支持スリーブ6内に嵌合可能かつ突出可能な大きさおよび深さに穴が開けられる。最終的に、アセンブリパイプ4は支持スリーブ6に向くシール1の端部を超えて約0.5~1.5mm突出して、支持スリーブ6の下に挿入される。支持スリーブ6の端面6bの残りの部分は、支持面として機能し、これによりシール1はアセンブリパイプ4に安全に押し付けられる。
【0024】
これに対し、
図7は本発明による弾性支持スリーブ6の状態を示し、弾性支持スリーブ6は完全にすきまなく収集軸2を囲むことが好ましい。この支持スリーブ6は、アセンブリパイプ4の材料より弾性的な材料から製造され、収集軸2の材料よりも弾性的であることが好ましい。支持スリーブ6の材料は、ショアA硬度が60~120の範囲内、特に、ショアA硬度が90±5であることが好ましい。
【0025】
特に、シール1が非常に小型、柔軟、薄肉、もしくは大きく末広がりである場合、または他に特別な特徴がある場合、アセンブリパイプ4と(すでに不要な)支持スリーブ6の端面6bの皿穴6aとの間にシール1が閉じ込められないようにすることによって、シール1の破損を防ぐ助けとなり得る。本発明による支持スリーブ6と収集軸2の外側との間に空隙がない代わりに、弾性支持スリーブ6は軸封のように収集軸2を取り囲む。アセンブリパイプ4が支持スリーブ6内に前進する際、支持スリーブ6は、自体の弾性を利用して、アセンブリパイプ4によって半径方向のみに広げられる。シール1がスライドしても大きな負荷はこの方向に発生しないため、軸方向に大幅に圧縮されない。
【0026】
しかし、このプロセスにおいて、もはやシール1はアセンブリパイプ4と収集軸2との間に入ることは不可能である。代わりに、シール1は、アセンブリパイプ4を破損することなく弾性支持スリーブ6によって軸方向に押され、シール1は圧縮、せん断、他の形態の破損を受けることはない。
【符号の説明】
【0027】
1 シール、2 収集軸、3 コンベアレール、4 アセンブリパイプ、5 シール拡張ジョー、6 支持スリーブ、6a 皿穴、6b 端面、K ケーブル。