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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】ミキサ車
(51)【国際特許分類】
   B60P 3/16 20060101AFI20220302BHJP
   B28C 5/42 20060101ALI20220302BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
B60P3/16 Z
B28C5/42
B60R11/02 W
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2017236786
(22)【出願日】2017-12-11
(65)【公開番号】P2019104308
(43)【公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木本 恵介
【審査官】諸星 圭祐
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-049499(JP,A)
【文献】特開2011-170550(JP,A)
【文献】特開2010-032470(JP,A)
【文献】特開2001-101281(JP,A)
【文献】実開平03-080622(JP,U)
【文献】特開2017-042960(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0080600(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60P 3/16
B28C 5/42
B60R 9/00-11/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者が搭乗するキャビンと、
外部に配置され、ミキサ車の情報を外部機器に送信する情報端末と、
車体上に回転自在に搭載されたミキサドラムと、を備え、
前記情報端末は、
無線通信が可能な通信部と、
前記通信部の上方を覆うカバーと、を有し、
前記カバーには、中央が上方に膨出するように湾曲した湾曲部が設けられる
ことを特徴とするミキサ車。
【請求項2】
請求項1に記載のミキサ車において、
前記湾曲部の断面形状は、円弧状である
ことを特徴とするミキサ車。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のミキサ車において、
前記カバーは、前記ミキサドラムの回転軸に沿うように傾けられている
ことを特徴とするミキサ車。
【請求項4】
請求項3に記載のミキサ車において、
前記カバーの前記湾曲部は、前記ミキサドラムに近づくにしたがって高さが大きくなるように傾斜している
ことを特徴とするミキサ車。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載のミキサ車において、
前記情報端末は、前記通信部が実装される基板が固定され、ボルトによって前記カバーに取り付けられる底板を有し、
前記カバーには、前記ボルトが前記カバーの底面側から装着されるインサートナットが設けられている
ことを特徴とするミキサ車。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のミキサ車において、
前記情報端末は、前記キャビンと前記ミキサドラムとの間に配置される
ことを特徴とするミキサ車。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のミキサ車において、
原動機の動力によって回転する流体圧モータと、
車両の前進方向に対して前下がり姿勢で設けられ、前記流体圧モータの回転を減速して前記ミキサドラムに伝達する減速機と、をさらに備え、
前記情報端末は、前記減速機の上方に配置される
ことを特徴とするミキサ車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミキサ車に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、道路を走行して目的地に向かう自車両の現在位置を確認し、この位置情報を車両運行管理センタに無線で送信する車載無線通信制御装置を有するミキサ車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-101281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のミキサ車では、車載無線通信制御装置及びGPS電波受信機がキャビン上部に配置されている。しかしながら、これらの装置の上面が平坦になっているため、雪、雨、洗浄水などが付着して、車載無線通信制御装置及びGPS電波受信機の無線通信状態が不安定になることがある。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、安定した無線通信を行うことのできるミキサ車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の発明は、ミキサ車であって、情報端末は、外部に配置され、無線通信が可能な通信部と、通信部の上方を覆うカバーと、を有し、カバーには、中央が上方に膨出するように湾曲した湾曲部が設けられることを特徴とする。
【0007】
第1の発明では、情報端末のカバーの中央が上方に膨出するように湾曲した湾曲部を設けるので、カバーに雪、雨水、洗浄水などが付着した場合でも、雪などを積極的に落とし、安定した通信をすることができる。
【0008】
第2の発明は、湾曲部の断面形状が、円弧状であることを特徴とする。
【0009】
第2の発明では、円弧状の湾曲部の表面に沿って、雪、雨水、洗浄水などを落とすことができる。
【0010】
第3の発明は、カバーが、ミキサドラムの回転軸に沿うように傾けられていることを特徴とする。
【0011】
第3の発明では、ミキサドラムの回転軸に沿って、雪、雨水、洗浄水などを落とすことができる。さらに、ミキサドラムが前下がり姿勢で配置される場合、制動時の慣性力によってカバー上部に付着しているもの(特に雪)がカバーから落ちやすくなる。そのため、カバー上部に付着しているものをより少なくできるので、より安定した無線通信を行うことができる。
【0012】
第4の発明は、カバーの湾曲部が、ミキサドラムに近づくにしたがって高さが大きくなるように傾斜していることを特徴とする。
【0013】
第4の発明では、ミキサドラムから離れる方向(すなわち車両の前方)に向かって、雪、雨水、洗浄水などを落とすことができる。さらに、湾曲部がミキサドラムに近づくにしたがって高さが大きくなるように傾斜しているので、制動時の慣性力によってカバー上部に付着しているもの(特に雪)がカバーから落ちやすくなる。そのため、カバー上部に付着しているものをより少なくできるので、より安定した無線通信を行うことができる。
【0014】
第5の発明は、情報端末が、通信部が実装される基板が固定され、ボルトによってカバーに取り付けられる底板を有し、カバーには、ボルトがカバーの底面側から装着されるインサートナットが設けられていることを特徴とする。
【0015】
第5の発明では、インサートナット及びボルトが雪、雨水、洗浄水などに晒されることがなく、インサートナット及びボルトの腐食を防止できる。
【0016】
第6の発明は、情報端末がキャビンとミキサドラムとの間に配置されることを特徴とする。
【0017】
第6の発明では、情報端末が、ミキサ車において上方が開放された場所であるキャビンとミキサドラムとの間に配置されるので、ミキサ車の構造物により、無線通信が遮断されることが回避される。
【0018】
第7の発明は、原動機の動力によって回転する流体圧モータと、車両の前進方向に対して前下がり姿勢で設けられ、流体圧モータの回転を減速してミキサドラムに伝達する減速機と、をさらに備え、情報端末が、減速機の上方に配置されることを特徴とする。
【0019】
第7の発明では、減速機が、前下がり姿勢であるため、減速機の上方に情報端末を配置するだけで、情報端末も前下がり姿勢に配置される。そのため、雪、雨水、洗浄水などが付着した場合でも、雪などを積極的に落とし、安定した通信をすることができる。さらに、カバーの湾曲部が、ミキサドラムに近づくにしたがって高さが大きくなるように傾斜している場合は、カバーの湾曲部がより前下がり姿勢になるため、より効果が高まる。さらに、前下がり姿勢にすることで、制動時の慣性力によってカバー上部に付着しているもの(特に雪)がカバーから落ちやすくなる。そのため、カバー上部に付着しているものをより少なくできるので、より安定した無線通信を行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、安定した無線通信を行うことのできるミキサ車を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施形態に係るミキサ車の平面図である。
図2】本発明の実施形態に係るミキサ車の側面図である。
図3A】情報端末の斜視図である。
図3B】情報端末のカバーと支持部の断面図である。
図4】カバーを取り外した情報端末の斜視図であり、ケースの内部構造を示す。
図5】カバーを底面から見た模式図である。
図6】本発明の実施形態の変形例に係るケースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係るミキサ車について説明する。
【0023】
ミキサ車100は、車体上に回転自在に搭載されたミキサドラム(以下、「ドラム」と称する。)103にモルタル、レディミクストコンクリート等のいわゆる生コンクリート(以下、「生コン」と称する。)を内容物として積載して運搬する。説明の便宜上、図示するように、ミキサ車100の前後左右および上下方向を規定する。
【0024】
図1及び図2に示すように、ミキサ車100(以下、「車両」とも称する。)は、自走可能な車体と、車体を構成する車体フレーム8の前部に設けられたキャビン9と、車体フレーム8の後部に設けられたドラム装置102と、を備える。
【0025】
キャビン9は、金属製のキャブフレームを有し、キャブフレームによって運転室が画成される。運転室は、運転者が搭乗して各種の操作が行われる作業空間である。
【0026】
ドラム装置102は、車体フレーム8に固定され車両の前後方向に延在する支持フレーム6と、支持フレーム6によって回転自在に支持されるドラム103と、ドラム103を回転駆動する駆動装置4と、を備える。なお、図2では、駆動装置4の構成の一部の図示を省略している。
【0027】
駆動装置4は、駆動源としてのエンジン141と、エンジン141の動力によって回転し、作動油を吐出する可変容量型の油圧ポンプ142と、油圧ポンプ142から吐出される作動油により回転する可変容量型の油圧モータ143と、油圧モータ143の回転を減速してドラム103に伝達する減速機144と、を有する。
【0028】
ドラム装置102は、ドラム103の回転軸C1がミキサ車100の前後方向に沿うように車体フレーム8に配置される。ドラム103は、後端が開口端部として形成された筒状の容器である。
【0029】
ドラム103の後部外周には円環状のローラリング7が設けられる。ドラム103の前部は、減速機144を介して、支持フレーム6の前部支持部161によって下方から支持される。ドラム103の後部は、ローラリング7を介して、支持フレーム6の後部支持部162によって下方から支持される。
【0030】
ドラム103は、その回転軸C1がミキサ車100の後方に向かって徐々に高くなるように、前方よりも後方が持ち上げられた前下がり姿勢で支持フレーム6によって支持される。
【0031】
減速機144の回転軸は、ドラム103の回転軸C1に平行となるように配置される。つまり、減速機144は、ドラム103と同様、車両の前進方向に対して前下がり姿勢で配設される。
【0032】
ドラム103の駆動軸は、減速機144を介して油圧モータ143に連結される。ドラム103は、駆動装置4の油圧モータ143によって正回転または逆回転する。
【0033】
ドラム103内には、ドラムブレード(不図示)がドラム103の内周面に沿って螺旋状に配設される。ドラム103が正回転する場合には、ドラムブレード(不図示)は、ドラム103内の生コンを攪拌しながら前方に移動させる。生コンを攪拌させることにより、生コンの凝縮が抑制される。
【0034】
ドラム103が逆回転する場合には、ドラムブレード(不図示)は、生コンを攪拌しながら後方に移動させる。ドラム103を逆回転させることにより、ドラム103の開口端部から生コンを排出することができる。ドラム103から排出された生コンは、ミキサ車100の後方下部に旋回自在に設けられたシュート106を通じて所定位置に誘導される。
【0035】
図2に示すように、ミキサ車100は、ドラム103の動作を制御するコントローラ180と、コントローラ180に接続され、ミキサ車100の状態情報を収集し、収集した情報を車外に設置される外部機器に送信する情報端末110と、を備える。
【0036】
コントローラ180は、前部支持部161の右側側部に取り付けられる。コントローラ180は、エンジン141(図1参照)の回転速度に応じてドラム103が目標回転状態となるように油圧ポンプ142及び油圧モータ143の動作を制御する。コントローラ180には、ドラム103の回転方向及び回転速度を検出する回転センサが接続され、回転センサで検出された回転情報が入力される。コントローラ180には、シュート洗浄用の水を貯留する水タンク107(図1参照)に出入りする水量を検出する水量センサが接続され、水量センサで検出された水量情報が入力される。
【0037】
コントローラ180は、回転情報、水量情報及び車両毎に定められた識別情報が記憶される記憶装置を有する。コントローラ180は、識別情報とともに回転情報及び水量情報を含むミキサ車100の状態情報を所定の制御周期で情報端末110に出力する。
【0038】
情報端末110は、通信ネットワーク(不図示)を介して、生コンプラントの管理センタ内のサーバ(外部機器)、及び、作業員が有する携帯情報端末(外部機器)と通信することができる。通信ネットワークは、無線LAN、3G等の無線通信網と、無線LANのアクセスポイントと、携帯電話網の基地局と、インターネットと、を有する。
【0039】
情報端末110は、加速度センサ(不図示)と、角度センサ(不図示)と、コントローラ180から出力されるミキサ車100の状態情報、並びに、加速度センサ及び角度センサで検出された検出情報を送信する通信ユニット112(図4参照)と、を有する。
【0040】
図4に示すように、通信ユニット112は、無線通信が可能な複数の通信部113と、通信部113を制御する情報制御部114と、通信部113及び情報制御部114が実装される基板115と、通信部113及び情報制御部114が実装された基板115を収容するケース116(図3A図3B及び図5参照)と、を有する。
【0041】
図4に示すように、本実施形態では、複数の通信部113として、Wi-Fi(登録商標)等の無線LANに対応する無線通信部113a、第三世代移動通信(3G)等の携帯電話通信網に対応する無線通信部113b、及び、グローバル・ポジショニング・システム(Global Positioning System)から地球上の現在位置情報を受信するGPS受信機113cを有する。
【0042】
GPS受信機113cは、GPS衛星から現在位置情報(位置座標)を取得する。情報制御部114は、コントローラ180、加速度センサ(不図示)及び角度センサ(不図示)、GPS受信機113cから情報を取得し、取得した情報の送信の開始、停止等を制御する。
【0043】
図1及び図2を参照して、情報端末110の取り付け位置について説明する。
【0044】
情報端末110は、金属製のキャブフレームによって外郭が形成されるキャビン9内に配置されると、通信部113による無線通信状態が不安定になることがある。このため、情報端末110はキャビン9の外部に配置される。本実施形態では、情報端末110はキャビン9とドラム103との間に配置される。キャビン9とドラム103との間は、ミキサ車100を構成する構造物によって囲まれていない開放された場所である。したがって、ミキサ車100を構成する構造物により、無線通信が遮断されることが回避され、情報端末110は、安定した無線通信を行うことができる。
【0045】
本実施形態では、情報端末110は、減速機144の上方に配置される。減速機144は、ミキサ車100の左右幅方向の略中心であって、車体フレーム8から所定高さだけ高い位置に配置される。ミキサ車100は、標準仕様車に対して種々の付属設備が増設された特別仕様車として用いられることがある。特別仕様車では、減速機144の左右の車体フレーム8上の空きスペースを利用して付属設備が取り付けられるのに対し、減速機144の上方に付属設備が取り付けられることは少ない。このため、減速機144の上方に情報端末110が配置されていても、付属設備の取り付けの妨げになることがない。つまり、本実施形態によれば、ミキサ車100の構造物のレイアウトへの影響が小さい、汎用性の高いミキサ車100を提供することができる。
【0046】
図2に示すように、コントローラ180と情報端末110とはハーネス199により接続される。ハーネス199は、防水性を確保するため、ホース内に配設される。減速機144を支持する前部支持部161にコントローラ180が取り付けられ、減速機144の上方に情報端末110が取り付けられるため、情報端末110をキャビン9内やミキサ車100の後部に配置する場合に比べて、コントローラ180と情報端末110とを接続するハーネス199の経路長を短くすることができる。
【0047】
図3A図3B図4及び図5を参照して、情報端末110のケース116の構成について詳しく説明する。なお、図3Bでは、ケース116の内部に搭載される基板115、ハーネス199等の部品の図示を省略している。
【0048】
ケース116は、カバー118と、カバー118が固定支持される支持部117と、を有する。カバー118は、通信部113及び情報制御部114が実装された基板115の上方及び側方を覆う。支持部117は金属製であり、カバー118は電波を透過する樹脂製である。
【0049】
支持部117は、基板115がネジ等により固定される矩形平板状の底板171と、底板171から垂直に立ち上がる隔壁172aと、を有する。隔壁172aの先端部は、後述するカバー118の湾曲部183(図3A参照)の内周面に沿って円弧状に形成される。
【0050】
減速機144(図2参照)のギアケースの上部には、矩形枠状または矩形箱状のブラケット145が配置される。底板171には、ブラケット145に取り付けるための取付片171dが設けられており、情報端末110は、ブラケット145にボルト、ナット等の締結部材146により3点で締結される。減速機144に直接ブラケット145を取り付けることで、情報端末110を設置する専用の載置台を設ける必要がなく、省スペース化及び低コスト化を図ることができる。
【0051】
図3A及び図5に示すように、カバー118は、底面側を開口とする箱状に形成され、上面板181と、左側板182Lと、右側板182Rと、前側板182Fと、後側板182Bと、を有する。左側板182L、右側板182R、前側板182F及び後側板182Bについては、総称して側板182とも記す。各側板182は、それぞれ底板171と直交するように形成される。
【0052】
上面板181には、左右中央が上方に膨出するように湾曲した湾曲部183と、湾曲部183の左端部と左側板182Lの上端部との間の左縁部184Lと、湾曲部183の右端部と右側板182Rの上端部との間の右縁部184Rと、が設けられる。左縁部184L及び右縁部184Rは、側板182と直交するように設けられる。湾曲部183を形成することにより、上面板181全体を平板状に形成する場合に比べて剛性を高めることができ、カバー118の薄肉化を図ることができる。また、カバー118を薄肉化しても高い剛性を確保することができるので、少ない製品重量でカバー118の剛性を高めることができる。さらに、カバー118に湾曲部183が設けられているので、外部からカバー118に荷重が作用したときに、外部からの荷重を効率よく支持部117に伝えることができる。したがって、本実施形態では、荷重に対してケース116の重量を抑えた構造にできる。
【0053】
湾曲部183は、前側板182Fに平行な仮想平面で切断したときの断面形状が円弧状を呈する。これにより、雪、雨水、洗浄水などがカバー118に付着した場合でも、雪などを円弧状の湾曲部183の表面に沿って、左右方向に積極的に落とすことができ、カバー118の上部に雪などが溜まることが抑制される。その結果、雪などがカバー118の上部に溜まることに起因した通信状態の悪化を防止できる。湾曲部183により雪などを積極的に落とすために、左縁部184Lと右縁部184Rの表面積は、湾曲部183の表面積よりも小さく設定することが好ましい。
【0054】
図2に示すように、カバー118は、ドラム103の回転軸C1に沿うように、水平面に対して所定角度で傾けられている。本実施形態では、底板171、左側板182L及び右側板182R並びに左縁部184L及び右縁部184Rが、ドラム103の回転軸C1に平行となるように配置される。減速機144が、前下がり姿勢であるため、減速機144の上方に情報端末110を配置するだけで、情報端末110も前下がり姿勢に配置される。このように、情報端末110を前下がり姿勢で配置することにより、雪などは左右方向だけでなく、前方へも流れやすくなり、カバー118を水平に配置する場合に比べて、雪などが上部に溜まることを効果的に抑制できる。
【0055】
図2及び図3A図3Bに示すように、湾曲部183は、後側に設けられる円筒部183aと、円筒部183aの前端から前側板182Fの上端に亘って設けられる傾斜部183bと、を有する。
【0056】
図3A及び図3Bに示すように、傾斜部183bは、前部における底板171からの垂直方向の高さH1に比べて、後部における底板171からの垂直方向の高さH2が大きくなるように傾斜している。つまり、傾斜部183bは、ドラム103に近づくにしたがって、底板171からの垂直高さが大きくなるように傾斜している。このため、雪などがより前方に流れやすくなり、傾斜部183bを形成しない場合に比べて、雪などが上部に溜まることを効果的に抑制できる。
【0057】
このように、情報端末110のカバー118の上面板181を後部から前部に向かって下方に傾斜させることで、車両の制動時の慣性力によってカバー上部に付着しているもの(特に雪)を前方に向かって効果的にカバーから落とすことができる。したがって、カバー118の上面を傾斜させない場合に比べて、カバー上部に付着しているものを少なくできるので、より安定した無線通信を行うことができる。
【0058】
湾曲部183の断面形状が円弧状とされ、図2に示すように、カバー118がドラム103の回転軸C1に沿うように傾けられているので、カバー118の外観を樽状のドラム103の外観に調和させることができ、ミキサ車100としての外観性を向上できる。さらに、カバー118が湾曲して形成されるとともに傾斜して配置されているので、ドラム103の洗浄、メンテナンス等の際にカバー118が踏み台として利用されることを防止できる。
【0059】
図5に示すように、カバー118には、上面板181から底板171に向かって延在する枠部185が設けられる。枠部185は、底面側から見たときに略矩形状を呈する。枠部185は、たとえば、内側枠板185iと、内側枠板185iの外側に所定の間隔をあけて設けられる外側枠板185oと、内側枠板185iと外側枠板185oとを連結する連結板185bと、により構成される。枠部185の先端部には、シール溝185aが設けられ、シール溝185aにゴム製のシール部材186が装着される。シール溝185aは、底板171側から上面板181側に向かって窪む凹部であり、その底部(連結板185b)の肉厚は、湾曲部183の肉厚よりも厚く形成される。カバー118に矩形状の枠部185を形成し、枠部185のシール溝185aの底部(連結板185b)の肉厚を厚くすることにより、カバー118の剛性を高めることができるので、湾曲部183の肉厚を薄くして、カバー118の軽量化を図ることができる。
【0060】
基板115が固定される底板171は、ボルト147によってカバー118に取り付けられる。カバー118には、ボルト147がカバー118の底面側から装着されるインサートナット189が複数設けられている。図5に示すカバー118は、図4に示す底板171に固定された基板115を覆うように配置され、底板171に形成された複数の貫通孔171bに挿通されたボルト147が、インサートナット189にねじ込まれることにより支持部117に取り付けられる。
【0061】
インサートナット189は、カバー118に埋め込まれ、底面側のみが露出しており、外側には露出していない。このため、インサートナット189及びボルト147が雪、雨水、洗浄水などに晒されることがなく、インサートナット189及びボルト147の腐食を防止できる。さらに、カバー118の外側からインサートナット189及びボルト147が視認されないので、情報端末110の外観性を向上できる。
【0062】
図5に示すように、カバー118には、上面板181から所定の距離だけ底板171に向かって延在する一対のリブ187a,187bが設けられる。一対のリブ187a,187bは、枠部185の左端部から右端部に亘って左右に延びている。一対のリブ187a,187bが設けられることにより、カバー118の剛性が向上する。
【0063】
図3Bに示すように、カバー118が支持部117に取り付けられると、底板171から垂直に立ち上がる隔壁172aの先端部が、一対のリブ187a,187b間に配置される。なお、隔壁172aは、先端部によってカバー118の円筒部183aの内周面を内側から支持する構成としてもよい。
【0064】
ケース116には、枠部185と上面板181と底板171とによって、内部空間190が画成される。シール部材186は、底板171の外周部(図4の二点鎖線で囲まれるハッチング領域参照)171cに密着するように配置され、カバー118の外周部を構成する枠部185と、底板171の外周部との間がシール部材186によってシールされる。
【0065】
ケース116の内部空間190は、隔壁172aによってハーネス収容室191と基板収容室192に区画される。図4に示すように、ハーネス収容室191には、コントローラ180に接続されるハーネス199の入口となる開口部171aが設けられる。隔壁172aには、ハーネス収容室191と基板収容室192とを連通する開口部172cが設けられる。図3Bに示すように、開口部172cには、ハーネス199が開口部172cに接触して断線することを防止するとともに、ハーネス199と開口部172cとの間の隙間を通じて水や粉塵が出入りすることを防止するゴム製のグロメット198が設けられる。
【0066】
図4に示すように、基板収容室192には、上述の基板115が収容される。ハーネス199は、隔壁172aの開口部172cを通って、情報制御部114に接続される。ハーネス収容室191は、底板171から上面板181までの高さが、基板収容室192よりも大きいので、ハーネス199の経路に自由度を持たせることができる。基板収容室192では、底板171から上面板181までの高さは、前部に比べて後部の方が大きい。ハーネス199が接続される情報制御部114は、後部に配置されているので、ハーネス199の引き回しスペースを確保できる。
【0067】
内部空間190を二重構造とすることにより、開口部171aから侵入した塵、水等が、そのまま基板収容室192に入ることが防止される。開口部171aから侵入した塵、水等は、ハーネス収容室191によって捕捉され、底板171に溜まった塵、水等は、開口部171aを通じて外部に排出される。このため、塵、水等の侵入に起因する各種基板実装部品(情報制御部114及び通信部113等)の劣化及び損傷を防止できる。
【0068】
上述した実施形態によれば、次の作用効果を奏する。
【0069】
情報端末110は、キャビン9とドラム103との間に配置されている。キャビン9とドラム103との間は、電波を遮断するような構造物によって囲まれた空間ではなく、上方に開放された空間である。このため、キャビン9とドラム103との間に配置された情報端末110の上方には、ミキサ車100の構造物が存在していない。したがって、本実施形態によれば、ミキサ車100を構成する構造物により、無線通信が遮断されることが回避され、情報端末110は、安定した無線通信を行うことができる。
【0070】
情報端末110は、外部に配置されるため、雪、雨水、洗浄水などに晒される。本実施形態では、カバー118には、中央が上方に膨出するように湾曲した湾曲部183が設けられる。このため、カバー118に雪、雨水、洗浄水などが付着した場合に、雪などを積極的に落とすことができる。その結果、情報端末110は、安定した無線通信を行うことができる。
【0071】
さらに、湾曲部183を設けることで、カバー118にかかる荷重を湾曲部183を介して車体側に逃がすことができるので、高い剛性を確保でき、カバー118を薄肉化して重量を抑えることができる。
【0072】
次のような変形例も本発明の範囲内であり、変形例に示す構成と上述の実施形態で説明した構成を組み合わせたり、以下の異なる変形例で説明する構成同士を組み合わせたりすることも可能である。
【0073】
(変形例1)
ケース116の形状は、上記実施形態で説明した形状に限定されない。たとえば、ケース216は、一方向に対して湾曲部の断面形状(円弧状)が同じになるかまぼこ形状に形成してもよい。
【0074】
(変形例2)
ケース316の形状は、図6に示す形状としてもよい。図6に示すように、支持部317は、矩形平板状に形成され基板115(図6において不図示)が固定される底部317aと、底部317aの外縁から垂直に立ち上がる周壁部317bと、底部317aの平面を二分するように周壁部317bと同じ方向に底部317aから垂直に立ち上がる隔壁172aと、を有する。
【0075】
周壁部317bは先端において外側に向かって折り曲げられており、これにより周壁部317bの先端には底部317aと略平行に延びる押圧部317cが形成される。押圧部317cは、枠部385のシール溝385aとでシール部材186を圧縮する。シール部材186によって、支持部317とカバー318との間の隙間が封止されるため、カバー318と支持部317との間の隙間を通じて水や粉塵がケース316の内部に侵入することが、シール部材186によって防止される。
【0076】
(変形例3)
上記実施形態では、情報端末110が減速機144の上方に配置される例について説明したが、本発明はこれに限定されない。情報端末110の上方に電波を遮る構造物が配置されなければ、種々の場所に情報端末110を配置することができる。たとえば、支持フレーム6に支持される水タンク107の上方に情報端末110を配置してもよい。ただし、この場合、作業者は、水タンク107への注水時に水がかからないように配慮する必要がある。油タンクの近くに情報端末110を配置する場合、情報端末110に対する熱影響を抑制するために、断熱材等を設けることが好ましい。配管及びバルブ類の近くに情報端末110を配置する場合、配管及びバルブ類に対するメンテナンスの妨げとならない場所に情報端末110を配置する必要がある。
【0077】
(変形例4)
無線通信により送信する情報は、上記実施形態で説明した情報に限定されない。たとえば、通信部113は、温度センサにより検出された生コンの温度に関する情報を無線通信により送信してもよい。
【0078】
(変形例5)
無線通信に用いる通信規格は、上記実施形態で説明した規格に限定されない。たとえば、DSRC(Dedicated Short Range Communication)、Bluetooth(登録商標)、4G(第4世代移動通信方式)、LTE(Long Term Evolution)、WiMAX(Worldwide Interoperability for Microwave Access)等、種々の通信規格に対応する無線通信により、情報を送信することができる。
【0079】
(変形例6)
上記実施形態では、カバー118が、樹脂により形成される例について説明したが、樹脂に代えてガラスによりカバー118を形成してもよい。カバー118の材料には、電波を透過する種々の材料を採用することができる。
【0080】
(変形例7)
エンジン141の動力により油圧モータ143を回転させることにより、ドラム103を回転させる例について説明したが、本発明はこれに限定されない。油圧ポンプ142及び油圧モータ143に代えて、作動流体を水とした流体圧ポンプ及び流体圧モータである水圧ポンプ及び水圧モータを採用してもよい。また、エンジン141に代えて、原動機として電動モータを備えてもよい。ミキサ車100が小型であれば、油圧ポンプ142及び油圧モータ143を省略し、電動モータにより直接、ドラム103を回転させてもよい。
【0081】
(変形例8)
上記実施形態では、情報端末110を前下がり姿勢で配設する例について説明したが、本発明はこれに限定されない。情報端末110を水平に配設してもよい。
【0082】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0083】
ミキサ車100は、運転者が搭乗するキャビン9と、外部に配置され、ミキサ車100の情報を外部機器に送信する情報端末110と、車体上に回転自在に搭載されたミキサドラム103と、を備え、情報端末110は、無線通信が可能な通信部113と、通信部113の上方を覆うカバー118と、を有し、カバー118には、中央が上方に膨出するように湾曲した湾曲部183が設けられる。
【0084】
この構成では、情報端末110のカバー118の中央が上方に膨出するように湾曲した湾曲部183を設けるので、カバー118に雪、雨水、洗浄水などが付着した場合でも、雪などを積極的に落とすことができる。したがって、安定した無線通信を行うことのできるミキサ車100を提供することができる。
【0085】
ミキサ車100は、湾曲部183の断面形状が、円弧状である。
【0086】
この構成では、円弧状の湾曲部183の表面に沿って、雪、雨水、洗浄水などを落とすことができる。
【0087】
ミキサ車100は、カバー118が、ミキサドラム103の回転軸C1に沿うように傾けられている。
【0088】
この構成では、ミキサドラム103の回転軸C1に沿って、雪、雨水、洗浄水などを落とすことができる。さらに、ミキサドラム103が前下がり姿勢で配置される場合、制動時の慣性力によってカバー上部に付着しているもの(特に雪)がカバー118から落ちやすくなる。そのため、カバー上部に付着しているものをより少なくできるので、より安定した無線通信を行うことができる。
【0089】
ミキサ車100は、カバー118の湾曲部183が、ミキサドラム103に近づくにしたがって高さが大きくなるように傾斜している。
【0090】
この構成では、ミキサドラム103から離れる方向(すなわち車両の前方)に向かって、雪、雨水、洗浄水などを落とすことができる。さらに、湾曲部183がミキサドラム103に近づくにしたがって高さが大きくなるように傾斜しているので、制動時の慣性力によってカバー上部に付着しているもの(特に雪)がカバー118から落ちやすくなる。そのため、カバー上部に付着しているものをより少なくできるので、より安定した無線通信を行うことができる。
【0091】
ミキサ車100は、情報端末110が、通信部113が実装される基板115が固定され、ボルト147によってカバー118に取り付けられる底板171を有し、カバー118には、ボルト147がカバー118の底面側から装着されるインサートナット189が設けられている。
【0092】
この構成では、インサートナット189及びボルト147が雪、雨水、洗浄水などに晒されることがなく、インサートナット189及びボルト147の腐食を防止できる。
【0093】
ミキサ車100は、情報端末110がキャビン9とミキサドラム103との間に配置される。
【0094】
この構成では、情報端末110が、ミキサ車100において上方が開放された場所であるキャビン9とミキサドラム103との間に配置されるので、ミキサ車100の構造物により、無線通信が遮断されることが回避される。
【0095】
ミキサ車100は、エンジン141の動力によって回転する油圧モータ143と、車両の前進方向に対して前下がり姿勢で設けられ、油圧モータ143の回転を減速してミキサドラム103に伝達する減速機144と、をさらに備え、情報端末110が、減速機144の上方に配置される。
【0096】
この構成では、減速機144が、前下がり姿勢であるため、減速機144の上方に情報端末110を配置するだけで、情報端末110も前下がり姿勢に配置される。そのため、雪、雨水、洗浄水などが付着した場合でも、雪などを積極的に落とし、安定した通信をすることができる。さらに、カバー118の湾曲部183が、ミキサドラム103に近づくにしたがって高さが大きくなるように傾斜している場合は、カバー118の湾曲部183がより前下がり姿勢になるため、より効果が高まる。さらに、前下がり姿勢にすることで、制動時の慣性力によってカバー上部に付着しているもの(特に雪)がカバー118から落ちやすくなる。そのため、カバー上部に付着しているものをより少なくできるので、より安定した無線通信を行うことができる。
【0097】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0098】
9・・・キャビン、100・・・ミキサ車、103・・・ドラム、110・・・情報端末、113・・・通信部、115・・・基板、118・・・カバー、141・・・エンジン(原動機)、143・・・油圧モータ(流体圧モータ)、144・・・減速機、147・・・ボルト、171・・・底板、183・・・湾曲部、189・・・インサートナット、C1・・・回転軸
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5
図6