(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】抗PD-L1抗体及びその診断上の使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20220302BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20220302BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20220302BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20220302BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20220302BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20220302BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20220302BHJP
G01N 33/536 20060101ALI20220302BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220302BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220302BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220302BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20220302BHJP
A61K 45/06 20060101ALI20220302BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C07K16/18
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
G01N33/53 D
G01N33/536 C
G01N33/53 Y
A61K45/00
A61P35/00
A61P43/00 111
A61K39/395 E
A61K39/395 T
A61K45/06
A61P35/02
(21)【出願番号】P 2017501231
(86)(22)【出願日】2015-05-29
(86)【国際出願番号】 US2015033395
(87)【国際公開番号】W WO2016007235
(87)【国際公開日】2016-01-14
【審査請求日】2018-05-29
(32)【優先日】2014-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511286517
【氏名又は名称】ヴェンタナ メディカル システムズ, インク.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ヴェンナプサ, バラシィ
(72)【発明者】
【氏名】リャオ, チミン
(72)【発明者】
【氏名】コワネッツ, マルチン
(72)【発明者】
【氏名】ボイド, ザカリー
(72)【発明者】
【氏名】ケッペン, ハルトムート
(72)【発明者】
【氏名】ロッシュ, パトリック シー.
(72)【発明者】
【氏名】チュー, イーフェイ
【審査官】松田 芳子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/173223(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/181342(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/181343(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の超可変領域(HVR):
(a)SNGLT(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHVR-H1;
(b)TINKDASAYYASWAKG(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR-H2;
(c)IAFKTGTSI(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHVR-H3;
(d)QASESVYSNNYLS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR-L1;
(e)LASTLAS(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR-L2;及び
(f)IGGKSSSTDGNA(配列番号11)のアミノ酸配列を含むHVR-L3、
を含む、PD-L1に特異的に結合する単離された抗体。
【請求項2】
次の重鎖可変ドメイン及び/または軽鎖可変ドメインフレームワーク領域(FR):
(a)QSLEESGGRLVKPDETLTITCTVSGIDLS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むFR-H1;
(b)WVRQAPGEGLEWIG(配列番号6)のアミノ酸配列を含むFR-H2;
(c)RLTISKPSSTKVDLKITSPTTEDTATYFCGR(配列番号7)のアミノ酸配列を含むFR-H3;及び
(d)WGPGTLVTVSS(配列番号8)のアミノ酸配列を含むFR-H4;及び/または
(e)AIVMTQTPSPVSAAVGGTVTINC(配列番号12)のアミノ酸配列を含むFR-L1;
(f)WFQQKPGQPPKLLIY(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR-L2;
(g)GVPSRFKGSGSGTQFTLTISGVQCDDAATYYC(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR-L3;及び
(h)FGGGTEVVVR(配列番号15)のアミノ酸配列を含むFR-L4、
を更に含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項3】
(a)配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列;または(b)配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列を含み、置換、挿入、または欠失は、フレームワーク領域で発生する、請求項1に記載の抗体。
【請求項4】
配列番号16のVH配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項5】
配列番号17のVL配列を含む、請求項1に記載の抗体。
【請求項6】
配列番号16のVH配列及び配列番号17のVL配列を含む、請求項1または2に記載の抗体。
【請求項7】
モノクローナル抗体である、請求項1~6のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項8】
モノクローナル抗体が、ウサギモノクローナル抗体である、請求項7に記載の抗体。
【請求項9】
IgG抗体である、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項10】
PD-L1に特異的に結合する抗体断片である、請求項1~8のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項11】
抗体断片が、Fab、単鎖可変断片(scFv)、Fv、Fab′、Fab′-SH、F(ab′)
2、及びダイアボディからなる群から選択される、請求項10に記載の抗体。
【請求項12】
ヒトPD-L1ポリペプチド(配列番号1)のアミノ酸残基279~290を含むエピトープに結合する、請求項1~11のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の単離された抗体をコードする、単離された核酸。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のベクターを含む、宿主細胞。
【請求項16】
請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体を含む、イムノコンジュゲート。
【請求項17】
生体試料中のPD-L1の存在または発現レベルの検出に使用するための、請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項18】
検出が、免疫組織化学法(IHC)、免疫蛍光法(IF)、フローサイトメトリー、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、またはイムノブロッティングによる、請求項17に記載の抗体。
【請求項19】
試料が固定組織を含む、請求項17または18に記載の抗体。
【請求項20】
固定組織が、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である、請求項19に記載の抗体。
【請求項21】
試料が、がんまたは免疫機能不全を有するか、またはその危険性がある対象からのものである、請求項17~20のいずれか1項に記載の抗体。
【請求項22】
免疫機能不全がT細胞機能不全障害である、請求項21に記載の抗体。
【請求項23】
T細胞機能不全障害が、未解決の急性感染、慢性感染、または腫瘍免疫である、請求項22に記載の抗体。
【請求項24】
対象からの生体試料中のPD-L1の存在または発現レベルの検出方法であって、生体試料を請求項1~12のいずれか1項に記載の抗体と接触させることと、結合抗体の存在を検出することとを含む、方法。
【請求項25】
検出が、IHC、IF、フローサイトメトリー、ELISA、またはイムノブロッティングによる、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
試料が固定組織を含む、請求項24または25に記載の方法。
【請求項27】
固定組織がFFPE組織である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
試料が、がんまたは免疫機能不全を有するか、またはその危険性がある対象からのものである、請求項24~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
免疫機能不全がT細胞機能不全障害である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
T細胞機能不全障害が、未解決の急性感染、慢性感染、または腫瘍免疫である、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
試料が、がんを有する対象からのものである、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
がんが、非小細胞肺がん、扁平上皮細胞がん、小細胞肺がん、腹膜のがん、肝細胞がん、消化管がん、膵臓がん、神経膠腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、肝細胞腫、乳がん、結腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜または子宮がん腫、唾液腺がん腫、腎臓がん、肝臓がん、前立腺がん、外陰部がん、甲状腺がん、肝がん腫、白血病、及び頭頸部がんからなる群から選択される、請求項28、
または31
に記載の方法。
【請求項33】
がんが非小細胞肺がん(NSCLC)である、請求項
32に記載の方法。
【請求項34】
NSCLCが、肺の腺がん腫または肺の扁平上皮がん腫である、請求項
33に記載の方法。
【請求項35】
試料が、腫瘍試料である、請求項28および31~
34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
腫瘍試料が、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、間質細胞、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項
35に記載の方法。
【請求項37】
腫瘍試料が、面積にして腫瘍試料の1%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内で、PD-L1の検出可能な発現レベルを有する、請求項
36に記載の方法。
【請求項38】
腫瘍試料が、面積にして腫瘍試料の5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内で、PD-L1の検出可能な発現レベルを有する、請求項
37に記載の方法。
【請求項39】
腫瘍試料が、面積にして腫瘍試料の10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内で、PD-L1の検出可能な発現レベルを有する、請求項
38に記載の方法。
【請求項40】
腫瘍試料が、腫瘍試料中の腫瘍細胞の1%以上において、PD-L1の検出可能な発現レベルを有する、請求項
35~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
腫瘍試料が、腫瘍試料中の腫瘍細胞の5%以上において、PD-L1の検出可能な発現レベルを有する、請求項
40に記載の方法。
【請求項42】
腫瘍試料が、腫瘍試料中の腫瘍細胞の10%以上において、PD-L1の検出可能な発現レベルを有する、請求項
41に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2014年7月11日出願の米国仮出願第62/023,741号の出願日の利益を主張し、この開示は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、抗プログラム死リガンド1(PD-L1)抗体、及びその使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
プログラム死リガンド1(PD-L1)は、慢性感染、妊娠、組織同種移植片、自己免疫疾患、及び癌における免疫系応答の抑制に関係があるとされているタンパク質である。PD-L1は、T細胞、B細胞、及び単球の表面上に発現される、プログラム死1(PD-1)として知られる阻害受容体に結合することにより免疫応答を調節する。PD-L1は、別の受容体、B7.1(別名B7-1またはCD80)との相互作用によっても、T細胞機能を負に調節する。PD-L1/PD-1及びPD-L1/B7.1複合体の形成は、T細胞受容体のシグナル伝達を負に調節し、その後、T細胞活性化の下方調節、及び抗腫瘍免疫活性の抑制をもたらす。PD-L1は、膀胱腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、肺腫瘍、黒色腫腫瘍、卵巣腫瘍、唾液腫瘍、胃腫瘍、及び甲状腺腫瘍などの幅広い種々の固形腫瘍を含む多くの癌において過剰発現される。腫瘍細胞内のPD-L1の過剰発現は、腫瘍浸潤を進める可能性があり、しばしば予後不良に関連付けられる。
【0004】
癌発症及び免疫系調節におけるPD-L1の役割を考慮すると、例えば診断及び/または患者選択を目的とした、PD-L1の存在を検出するための追加のツールが、望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、抗プログラム死リガンド1(PD-L1)抗体、及びその使用方法に関する。
【0006】
一態様において、本発明は、PD-L1に特異的に結合する単離抗体を特徴とし、該抗体は、ヒトPD-L1 ポリペプチドのアミノ酸残基279~290(配列番号1)を含むエピトープに結合する。いくつかの実施形態において、本抗体は、次の超可変領域(HVR):(a)SNGLT(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)TINKDASAYYASWAKG(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)IAFKTGTSI(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、次の重鎖可変ドメインフレームワーク領域(FR):(a)QSLEESGGRLVKPDETLTITCTVSGIDLS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むFR-H1、(b)WVRQAPGEGLEWIG(配列番号6)のアミノ酸配列を含むFR-H2、(c)RLTISKPSSTKVDLKITSPTTEDTATYFCGR(配列番号7)のアミノ酸配列を含むFR-H3、及び(d)WGPGTLVTVSS(配列番号8)のアミノ酸配列を含むFR-H4を更に含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、次のHVR:(a)QASESVYSNNYLS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)LASTLAS(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)IGGKSSSTDGNA(配列番号11)のアミノ酸配列を含むHVR-L3を更に含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、次の軽鎖可変ドメインFR:(a)AIVMTQTPSPVSAAVGGTVTINC(配列番号12)のアミノ酸配列を含むFR-L1、(b)WFQQKPGQPPKLLIY(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR-L2、(c)GVPSRFKGSGSGTQFTLTISGVQCDDAATYYC(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR-L3、及び(d)FGGGTEVVVR(配列番号15)のアミノ酸配列を含むFR-L4を更に含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、(a)配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVH配列、(b)配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも95%の配列同一性を有するVL配列、または(c)(a)にあるようなVH配列及び(b)にあるようなVL配列を含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号16のVH配列を含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号17のVL配列を含む。
【0007】
他の実施形態において、本抗体は、次のHVR:(a)QASESVYSNNYLS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)LASTLAS(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)IGGKSSSTDGNA(配列番号11)のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、次の軽鎖可変ドメインFR:(a)AIVMTQTPSPVSAAVGGTVTINC(配列番号12)のアミノ酸配列を含むFR-L1、(b)WFQQKPGQPPKLLIY(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR-L2、(c)GVPSRFKGSGSGTQFTLTISGVQCDDAATYYC(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR-L3、及び(d)FGGGTEVVVR(配列番号15)のアミノ酸配列を含むFR-L4を更に含む。
【0008】
別の態様において、本発明は、PD-L1に特異的に結合する単離抗体を特徴とし、該抗体は、次のHVR:(a)SNGLT(配列番号2)のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)TINKDASAYYASWAKG(配列番号3)のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)IAFKTGTSI(配列番号4)のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)QASESVYSNNYLS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)LASTLAS(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)IGGKSSSTDGNA(配列番号11)のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、次の重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインFR:(a)QSLEESGGRLVKPDETLTITCTVSGIDLS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むFR-H1、(b)WVRQAPGEGLEWIG(配列番号6)のアミノ酸配列を含むFR-H2、(c)RLTISKPSSTKVDLKITSPTTEDTATYFCGR(配列番号7)のアミノ酸配列を含むFR-H3、(d)WGPGTLVTVSS(配列番号8)のアミノ酸配列を含むFR-H4、(e)AIVMTQTPSPVSAAVGGTVTINC(配列番号12)のアミノ酸配列を含むFR-L1、(f)WFQQKPGQPPKLLIY(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR-L2、(g)GVPSRFKGSGSGTQFTLTISGVQCDDAATYYC(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR-L3、及び(h)FGGGTEVVVR(配列番号15)のアミノ酸配列を含むFR-L4を更に含む。いくつかの実施形態において、本抗体は、配列番号16のVH配列及び配列番号17のVL配列を含む。
【0009】
別の態様において、本発明は、PD-L1への結合に対して、前述の抗体のうちのいずれか1つと競合する、単離抗体を特徴とする。
【0010】
別の態様において、本発明は、前述の抗体のうちのいずれか1つと同じエピトープに結合する、単離抗体を特徴とする。
【0011】
いくつかの実施形態において、前述の抗体のうちのいずれか1つは、モノクローナル抗体であり得る。いくつかの実施形態において、該モノクローナル抗体は、ウサギモノクローナル抗体であり得る。
【0012】
いくつかの実施形態において、前述の抗体のうちのいずれか1つは、IgG抗体(例えば、IgG1抗体)であり得る。
【0013】
いくつかの実施形態において、前述の抗体のうちのいずれか1つは、PD-L1に特異的に結合する抗体断片であり得る。いくつかの実施形態において、本抗体断片は、Fab、単鎖可変断片(scFv)、Fv、Fab′、Fab′-SH、F(ab′)2、及びダイアボディからなる群から選択される。
【0014】
別の態様において、本発明は、前述の抗体のうちのいずれか1つを含む免疫複合体を特徴とする。
【0015】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載の抗体のうちのいずれかをコードする単離核酸を特徴とする。別の態様において、本発明は、抗体を発現させるための核酸を含むベクター(例えば、発現ベクター)を特徴とする。別の態様において、本発明は、前述の核酸及び/またはベクターを含む宿主細胞を特徴とする。
【0016】
いくつかの態様において、前述の抗体のうちのいずれか1つは、生体試料中のPD-L1の存在または発現レベルの検出に使用するためのものであり得る。いくつかの実施形態において、検出は、免疫組織化学法(IHC)、免疫蛍光法(IF)、フローサイトメトリー、ELISA、または免疫ブロットによる。いくつかの実施形態において、検出は、IHCによる。いくつかの実施形態において、試料は、固定組織を含む。いくつかの実施形態において、固定組織は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織である。いくつかの実施形態において、試料は、癌または免疫機能不全を有するか、またはその危険性がある対象からのものである。いくつかの実施形態において、免疫機能不全は、T細胞機能不全障害である。いくつかの実施形態において、T細胞機能不全障害は、未解決の急性感染、慢性感染、または腫瘍免疫である。
【0017】
本発明の更なる態様は、生体試料中のPD-L1の存在または発現レベルの検出方法であって、生体試料を前述の抗体のうちのいずれか1つと接触させることと、結合抗体の存在を検出することと、を含む方法である。いくつかの実施形態において、検出は、IHC、IF、フローサイトメトリー、ELISA、または免疫ブロットによる。いくつかの実施形態において、検出は、IHCによる。いくつかの実施形態において、試料は、固定組織を含む。いくつかの実施形態において、固定組織は、FFPE組織である。いくつかの実施形態において、試料は、癌または免疫機能不全を有するか、またはその危険性がある対象からのものである。いくつかの実施形態において、免疫機能不全は、T細胞機能不全障害である。いくつかの実施形態において、T細胞機能不全障害は、未解決の急性感染、慢性感染、または腫瘍免疫である。いくつかの実施形態において、試料は、癌を有する対象からのものである。いくつかの実施形態において、試料中のPD-L1の存在または発現レベルが、対象が抗癌療法を用いた治療に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの実施形態において、試料中のPD-L1の存在または発現レベルが、対象が抗癌療法を用いた治療に応答する可能性がより高いことを示す。いくつかの実施形態において、試料中のPD-L1の存在または発現レベルが、対象が抗癌療法を用いた治療による有益性を示す可能性があることを示す。いくつかの実施形態において、本方法は、試料中のPD-L1の存在または発現レベルに基づいて、対象のための抗癌療法を選択することを更に含む。いくつかの実施形態において、本方法は、治療有効量の抗癌療法を対象に施すことを更に含む。いくつかの実施形態において、癌は、非小細胞肺癌、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌、膵臓癌、神経膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌腫、白血病、及び頭頸部癌からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)である。いくつかの実施形態において、NSCLCは、肺の線癌腫または肺の扁平上皮癌腫である。いくつかの実施形態において、試料は、腫瘍試料である。いくつかの実施形態において、腫瘍試料は、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、間質細胞、またはこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、腫瘍試料は、面積にして腫瘍試料の約1%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内で、PD-L1の検出可能な発現レベルを有する。いくつかの実施形態において、腫瘍試料は、面積にして腫瘍試料の約5%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内で、PD-L1の検出可能な発現レベルを有する。いくつかの実施形態において、腫瘍試料は、面積にして腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内で、PD-L1の検出可能な発現レベルを有する。いくつかの実施形態において、腫瘍試料は、腫瘍試料中の腫瘍細胞の約1%以上において、PD-L1の検出可能な発現レベルを有する。いくつかの実施形態において、腫瘍試料は、腫瘍試料中の腫瘍細胞の約5%以上において、PD-L1の検出可能な発現レベルを有する。いくつかの実施形態において、腫瘍試料が、腫瘍試料中の腫瘍細胞の約10%以上において、PD-L1の検出可能な発現レベルを有する。いくつかの実施形態において、抗癌療法は、PD-1軸結合アンタゴニストを含む。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、B7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1及びB7-1の両方への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの実施形態において、本抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A(アテゾリズマブ(atezolizumab))、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ(durvalumab))、及びMSB0010718C(アベルマブ(avelumab))からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD L1への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD L2への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1及びPD-L2の両方への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの実施形態において、本抗体は、MDX1106(ニボルマブ(nivolumab))、MK-3475(ペンブロリズマブ(pembrolizumab))、CT-011(ピディリズマブ(pembrolizumab))、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、Fc融合タンパク質である。いくつかの実施形態において、Fc融合タンパク質は、AMP-224である。いくつかの実施形態において、本方法は、有効量の第2の治療剤を患者に投与することを更に含む。いくつかの実施形態において、第2の治療剤は、細胞毒性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、血管新生阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、対象は、ヒトである。
【0018】
本出願ファイルは、カラーで制作された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を備えた本特許または特許出願の複製は、要請、及び必要手数料の支払いに応じて、特許庁により提供されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】SP142抗PD-L1抗体に関する一般的な抗体作製プロセスを示す概略図である。
【
図2A-2D】
図2Aは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、空ベクター(陰性対照)でトランスフェクトされたホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)HEK-293細胞上の免疫組織化学法(IHC)の結果を示す画像である。
図2Bは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE DOR-13細胞(低~中発現)上のIHCの結果を示す画像である。
図2Cは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE結腸癌腫RKO細胞(中発現)上のIHCの結果を示す画像である。
図2Dは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、全長ヒトPD-L1でトランスフェクトされたFFPE HEK-293細胞(高発現)上のIHCの結果を示す画像である。
【
図3A-3C】
図3Aは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE胎盤組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図3Bは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE扁桃腺組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図3Cは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPEホジキン(HK)リンパ腫患者組織切上のIHCの結果を示す画像である。
【
図4】抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE NIH H820肺腺癌腫細胞株(高発現)、Karpas299T細胞リンパ腫細胞株(中程度の発現)、及びCalu-3肺腺癌腫細胞株(陰性対照)からの、細胞可溶化物中のPD-L1発現を示すウェスタンブロットである。
【
図5A-5J】
図5Aは、0.11μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE胎盤組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図5Bは、0.44μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体E1L3N FFPE胎盤組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図5Cは、1.75μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE胎盤組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図5Dは、7.0μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE胎盤組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図5Eは、28.0μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE胎盤組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図5Fは、0.11μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE胎盤組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図5Gは、0.44μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE胎盤組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図5Hは、1.75μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE胎盤組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図5Iは、7.0μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE胎盤組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図5Jは、28.0μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE胎盤組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
【
図6A-6T】
図6Aは、0.11μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE胃上皮組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Bは、0.44μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE胃上皮組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Cは、1.75μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE胃上皮組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Dは、7.0μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE胃上皮組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Eは、28.0μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE胃上皮組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Fは、0.11μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE神経組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Gは、0.44μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE神経組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Hは、1.75μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE神経組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Iは、7.0μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE神経組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Jは、28.0μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE神経組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Kは、0.11μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE胃上皮組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Lは、0.44μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE胃上皮組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Mは、1.75μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE胃上皮組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Nは、7.0μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE胃上皮組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Oは、28.0μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE胃上皮組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Pは、0.11μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE神経組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Qは、0.44μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE神経組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Rは、1.75μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE神経組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Sは、7.0μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE神経組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図6Tは、28.0μg/mlの濃度で抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE神経組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
【
図7A-7J】
図7Aは、抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE胃上皮組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図7Bは、抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE腎臓組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図7Cは、抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE膀胱移行細胞癌腫(TCC)組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図7Dは、抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE乳管癌腫(Ca)組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図7Eは、抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE肺扁平上皮細胞癌腫組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図7Fは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE胃上皮組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図7Gは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE腎臓組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図7Hは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE膀胱移行細胞癌腫(TCC)組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図7Iは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE乳管癌腫(Ca)組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図7Jは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE肺扁平上皮細胞癌腫組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
【
図8A-8L】
図8Aは、抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE扁桃腺組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図8Bは、抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE子宮頸部扁平上皮細胞癌腫(SCC)組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図8Cは、抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPEホジキンリンパ腫(HKリンパ腫)組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図8Dは、抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE膵臓腺癌腫組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図8Eは、抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE前立腺腺癌腫組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図8Fは、抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、FFPE皮膚SCC組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図8Gは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE扁桃腺組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図8Hは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE子宮頸部扁平上皮細胞癌腫(SCC)組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図8Iは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPEホジキンリンパ腫(HKリンパ腫)組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図8Jは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE膵臓腺癌腫組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図8Kは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE前立腺腺癌腫組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図8Lは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、FFPE皮膚SCC組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
【
図9A-9J】
図9Aは、抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、NSCLC患者からのFFPE組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図9Bは、抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、NSCLC患者からのFFPE組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図9Cは、抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、NSCLC患者からのFFPE組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図9Dは、抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、NSCLC患者からのFFPE組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図9Eは、抗PD-L1抗体E1L3Nを使用した、NSCLC患者からのFFPE組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図9Fは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、NSCLC患者からのFFPE組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図9Gは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、NSCLC患者からのFFPE組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図9Hは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、NSCLC患者からのFFPE組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図9Iは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、NSCLC患者からのFFPE組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
図9Jは、抗PD-L1抗体SP142を使用した、NSCLC患者からのFFPE組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。
【
図10】抗PD-L1抗体SP142を使用した、NSCLC患者からのFFPE組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。画像は、腫瘍間質中に凝集体として存在するPD-L1陽性腫瘍浸潤免疫細胞(IC、濃褐色染色)を示す。組織片をヘマトキシリン(青色)で対比染色した。
【
図11】抗PD-L1抗体SP142を使用した、NSCLC患者からのFFPE組織切片におけるIHCの結果を示す画像である。画像は、PD-L1陽性腫瘍細胞(TC)染色を示す。PD-L1シグナルは、濃褐色で示される。組織片をヘマトキシリン(青色)で対比染色した。
【
図12A-12C】
図12Aは、H&E染色NSCLC腫瘍切除試験片における間質の領域及び腫瘍面積を示す画像である。矢印は、腫瘍周囲間質、腫瘍細胞塊、及び腫瘍内間質を示す。黒色の線は、腫瘍面積の縁の外形を示す。画像は、より高い拡大率で撮られた。
図12B~12Cは、NSCLC切除試験片の腫瘍面積を示す画像である。腫瘍試験片の連続切片を、H&Eで(
図12B)、またはSP142抗体を使用してPD-L1 IHCにより(
図12C)染色した。
図12CのPD-L1シグナルは、濃褐色として示される。青色の線は、腫瘍面積の外形を示す(実施例5を参照されたい)。これらの画像は、
図12Aで示される同じ試験片に対応するが、より低い拡大率で撮られた。
【
図13】PD-L1陽性腫瘍浸潤免疫細胞により覆われた腫瘍面積の割合(IC%)を決定するための、例となる作業フローを示す概略図である。この実施例において、IC%は、視覚的に10%と推測された。
【
図14A-14B】PD-L1陽性IC凝集体染色パターンを有するPD-L1 IHCのための、例となる点数化方法を示す。
図14Aは、PD-L1陽性IC凝集体(濃褐色のシグナル)が、可能な限り綿密に視覚的に取り囲まれ、各PD-L1陽性IC凝集体(青色の外形)の外形が生成されたことを示す。これらの領域を組み合わせて、この組み合わせた面積を、腫瘍面積の割合として推測した(
図14B)。
図14Bにおいて、腫瘍面積を1/10(ボックス)に分割し、
図14AのPD-L1陽性IC凝集体の外形を組み合わせた。外形がボックスのうちの1つを埋めたため、この実施例において、PD-L1陽性ICにより覆われた腫瘍面積の割合を、10%と推測した。画像は、抗PD-L1抗体SP142を使用した、NSCLC患者からのFFPE組織切片に対するIHCの結果を示す。
【
図15A-15B】単一細胞の広がりでのPD-L1陽性IC染色パターンを有する画像を示す。この実施例において、この画像を、参照画像との比較した単一細胞の広がりの密度に基づいて点数化した(例えば、
図16を参照されたい)。
図15Aは、単一細胞の広がりでのPD-L1陽性ICの細胞密度が1%であった画像を示す。
図15Bは、単一細胞の広がりでのPD-L1陽性ICの細胞密度が5%であった画像を示す。画像は、抗PD-L1抗体SP142を使用した、NSCLC患者からのFFPE組織切片に対するIHCの結果を示す。
【
図16A-16H】示されたPD-L1 ICの発現カットオフにおける単一細胞の広がりでのPD-L1陽性IC染色パターンに関する、例となる参照画像を示す。画像は、抗PD-L1抗体SP142を使用した、NSCLC患者からのFFPE組織切片に対するIHCの結果を示す。
図16A~16Bは、PD-L1陽性IC%が1%未満であった画像を示す。
図16C~16Dは、PD-L1陽性IC%が1%以上~5%未満であった画像を示す。
図16E~16Fは、PD-L1陽性IC%が5%以上~10%未満であった画像を示す。
図16G-16Hは、PD-L1陽性IC%が10%以上であった画像を示す。
【
図17A】H&E染色されたか(上)、または抗PD-L1抗体SP142を使用してIHCに対して処理された(下)、NSCLC患者からのFFPE組織連続切片の画像を示す。この実施例において、H&E染色切片中で腫瘍内ICは検出されず、強いTC PD-L1染色がIHCにより検出された。ICを間質において点数化した(矢印)。
【
図17B】H&E染色されたか(上)、または抗PD-L1抗体SP142を使用してIHCに対して処理された(下)、NSCLC患者からのFFPE組織連続切片の画像を示す。この実施例において、H&E染色切片中で腫瘍内ICが検出され、弱~中程度のTC PD-L1染色がIHCにより検出された。ICを、間質及び腫瘍細胞群の両方において点数化した。
【
図17C】H&E染色されたか(上)、または抗PD-L1抗体SP142を使用してIHCに対して処理された(下)、NSCLC患者からのFFPE組織連続切片の画像を示す。この実施例において、この実施例において、H&E染色切片中で腫瘍内ICは検出されず、粒状のPD-L1 TC染色がIHCにより検出された。粒状の染色を、その染色が線状の様式で(すなわち、細胞膜の外形に沿って)配置される限り、PD-L1陽性TCとして点数化した。
【
図18A-18F】示されたPD-L1 TC%のカットオフにおけるPD-L1陽性TC染色パターンに関する、例となる画像を示す。画像は、抗PD-L1抗体SP142を使用した、NSCLC患者からのFFPE組織切片に対するIHCの結果を示す。
図18A~18Bは、TC%が5%未満であった画像を示す。
図18C~18Dは、TC%が5%以上~50%未満であった画像を示す。
図18E~18Fは、TC%が50%以上であった画像を示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
I.定義
用語「about」は、本明細書で使用される場合、当業者にとって容易に既知であるそれぞれの値に対する通常の誤差範囲を指す。本明細書で「about」の値またはパラメータを参照することは、その値またはパラメータをそれ自体で対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。例えば、「about X」を参照する記述は、「X」の記述を含む。
【0021】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)及びその結合パートナー(例えば、抗原)の単結合部位間の総計の非共有相互作用の強度を指す。別途示されない限り、本明細書で使用される場合、「結合親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は概して、解離定数(Kd)により表わされ得る。親和性は、本明細書に記載されるものを含む、当技術分野で既知の一般的な方法により測定され得る。結合親和性を測定するための具体的で、例示的な、かつ例となる実施形態は、以下に記載される。
【0022】
「親和性成熟」抗体は、1つ以上の超可変領域(HVR)内に1つ以上の改変を有する抗体を、かかる改変を保有しない親抗体と比較して指し、かかる改変は、抗原に対する抗体の親和性における改善をもたらす。
【0023】
用語「アネルギー」は、T細胞受容体を介して伝えられた不完全または不十分なシグナルにより生じる抗原刺激に対する無応答の状態を指す(例えば、ras活性化の不在下での細胞内Ca+2の増加)。T細胞アネルギーは、共刺激の不在下での抗原の刺激からも生じ得、これは、共刺激との関連においてでさえ抗原によるその後の活性化に対して不応性になる細胞をもたらす。無応答状態はしばしば、インターロイキン2の存在により覆され得る。アネルギー性T細胞は、クローン増殖を経ず、かつ/またはエフェクター機能を取得しない。
【0024】
用語「抗癌療法」は、癌を治療において有用な治療を指す。抗癌療法剤の例には、細胞毒性剤、化学療法剤、成長阻害剤、放射線療法で使用される薬剤、抗血管新生剤、アポトーシス剤、抗チューブリン剤、及び癌を治療するための他の薬剤、例えば次の標的PDGFR-β、BlyS、APRIL、BCMA受容体(複数可)、TRAIL/Apo2、他の生理活性及び有機化学薬剤などのうちの1つ以上に結合するPD-1軸結合アンタゴニスト、抗CD20抗体、血小板由来成長因子阻害剤(例えば、GLEEVEC(商標)(イマチニブメシル酸塩))、COX-2阻害剤(例えば、セレコキシブ)、インターフェロン、サイトカイン、アンタゴニスト(例えば、中和抗体)が含まれるが、これらに限定される。これらの組み合わせも、本発明に含まれる。
【0025】
用語「抗PD-L1抗体(anti-PD-L1 antibody)」、「抗PD-L1抗体(anti-PD-L1 antibody)」、「PD-L1に特異的に結合する抗体」、及び「PD-L1に結合する抗体」は、抗体がPD-L1を標的とする上で診断剤及び/または治療剤として有用になるように、十分な親和性でPD-L1に結合することができる抗体を指す。一実施形態において、抗PD-L1抗体の、無関係の非PD-L1タンパク質への結合の程度は、例えば放射免疫アッセイ(RIA)により測定されたときに、抗体の、PD-L1への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態において、PD-L1に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態において、抗PD-L1抗体は、異なる種由来のPD-L1の間で保存されているPD-L1のエピトープに結合する。
【0026】
用語「抗PD-1抗体」及び「PD-1に結合する抗体」は、抗体がPD-1を標的とする上で診断剤及び/または治療剤として有用になるように、十分な親和性でPD-1に結合することができる抗体を指す。一実施形態において、抗PD-1抗体の、無関係の非PD-1タンパク質への結合の程度は、例えば放射免疫アッセイ(RIA)により測定されたときに、抗体の、PD-1への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態において、PD-1に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態において、抗PD-1抗体は、異なる種由来のPD-1の間で保存されているPD-1のエピトープに結合する。例となる抗PD-1抗体には、MDX1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、及びCT-011(ピディリズマブ)が含まれるが、これらに限定されない。
【0027】
本明細書の用語「抗体」は、最も広範な意味で使用され、様々な抗体構造を包含し、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多重特異性抗体(例えば二重特異性抗体)、及び抗体断片を、それらが所望の抗原結合活性を示す限り含むが、これらに限定されない。
【0028】
「抗体断片」は、無傷抗体が結合する抗原に結合する、無傷抗体の一部を含む無傷抗体以外の分子を指す。抗体断片の例には、Fv、Fab、Fab′、Fab′-SH、F(ab′)2;ダイアボディ;線状抗体;単鎖抗体分子(例えばscFv);及び抗体断片から形成される多重特異性抗体が含まれるが、これらに限定されない。
【0029】
抗体のパパイン消化は、「Fab」断片と呼称される2つの同一の抗原結合断片を作製し、各々が、単一の抗原結合部位、及び残留「Fc」断片を有し、その名称は、容易に結晶化するその能力を反映する。ペプシン処理は、F(ab′)2断片を生成し、これは、2つの抗原結合部位を有し、依然として抗原を架橋することができる。
【0030】
「Fv」は、完全な抗原結合部位を含有する最小抗体断片である。一実施形態において、2つの鎖のFv種は、密接した非共有会合における1つの重鎖及び1つの軽鎖可変ドメインの二量体からなる。単鎖Fv(scFv)種において、1本重鎖及び1本軽鎖可変ドメインは、軽鎖及び重鎖が、2本鎖Fv種におけるものに類似した「二量体」構造において会合し得るように、柔軟性ペプチドリンカーにより共有結合的に連結され得る。各可変ドメインの3つのHVRが相互作用してVH-VL二量体の表面上で抗原結合部位を規定するのは、この構成においてである。まとめると、6つのHVRは、抗原結合特異性を抗体に与える。しかし、単一の可変ドメイン(または、抗原に対して特異的なわずか3つのHVRを含む半分のFv)でさえ、全体の結合部位よりも低い親和性ではあるものの、抗原を認識及び結合する能力を有する。
【0031】
Fab断片は、重及び軽鎖可変ドメインを含有し、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)も含有する。Fab′断片は、重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端で、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含むいくつかの残基の追加により、Fab断片とは異なる。Fab′-SHは、定常ドメインのシステイン残基(複数可)が遊離チオール基を有するFab’に関しての本明細書における名称である。F(ab′)2抗体断片は元々、Fab′断片の対で、それらの間にヒンジシステインを有する対として作製された。抗体断片の他の化学結合も既知である。
【0032】
「単鎖Fv」または「scFv」抗体断片は、抗体のVH及びVLドメインを含み、ここで、これらのドメインは、ポリペプチド単鎖内に存在する。概して、scFvポリペプチドは、VHドメインとVLドメインとの間に、scFvが抗原結合にとって所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーを更に含む。scFvの概説に関して、例えばPluckthun,in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore 編.,(Springer-Verlag,New York,1994),pp.269-315を参照されたい。
【0033】
用語「ダイアボディ」は、2つの抗原結合部位を有する抗体断片を指し、その断片は、同じポリペプチド鎖(VH-VL)内で軽鎖可変ドメイン(VL)に結びつく重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上で2つのドメイン間の対を可能にするには短すぎるリンカーを使用することにより、ドメインは、別の鎖の相補的ドメインと対にされ、2つの抗原結合部位を創出する。ダイアボディは、二価または二重特異性であって良い。ダイアボディは、例えばEP404,097、WO1993/01161、Hudsonら,Nat.Med.9:129-134(2003)、及びHollingerら,Proc.Natl.Acad.Sci.USA90:6444-6448(1993)でより完全に記載される。トリアボディ及びテトラボディもまた、Hudsonら,Nat.Med.9:129-134(2003)に記載される。
【0034】
参照抗体と「同じエピトープに結合する抗体」は、競合アッセイにおいて、参照抗体のその抗原への結合を50%以上遮断する抗体を指し、逆に言えば、参照抗体は、競合アッセイにおいて、本抗体のその抗原への結合を50%以上遮断する。例となる競合アッセイは、本明細書で提供される。
【0035】
「自己免疫疾患」は、個体自身の組織若しくは臓器から起こり、かつそれを攻撃する疾患若しくは障害、またはその共分離若しくは徴候、またはそれによる結果としての病態である。自己免疫疾患は、臓器特異的疾患(すなわち、免疫応答が、内分泌系、造血系、皮膚、心肺系、消化管及び肝臓系、腎臓系、甲状腺、耳、神経筋系、中枢神経系などの臓器系に特異的に指向する)、または多臓器系に影響を及ぼし得る全身性疾患(例えば、全身性エリテマトーデス(SLE)、リウマチ性関節炎(RA)、多発性筋炎など)であり得る。非限定的な例となる自己免疫疾患には、自己免疫リウマチ障害(例えば、RA、シェーグレン症候群、強皮症、SLE及びループス腎炎などのループス、多発性筋炎皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、抗リン脂質抗体症候群、ならびに乾癬性関節炎など)、自己免疫消化管及び肝臓障害(例えば、炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病)、自己免疫胃炎及び悪性貧血、自己免疫肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、ならびにセリアック病など)、脈管炎(例えば、チャーグストラウス脈管炎を含むANCA陰性脈管炎及びANCA関連脈管炎、ウェゲナー肉芽腫症、ならびに顕微鏡的多発血管炎など)、自己免疫神経障害(例えば、多発性硬化症、オプソクローヌスミオクローヌス症候群、重症筋無力症、視神経脊髄炎、パーキンソン病、アルツハイマー病、及び自己免疫多発ニューロパチーなど)、腎臓障害(例えば、糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、及びベルガー病など)、自己免疫皮膚科学的障害(例えば、乾癬、じんま疹、皮疹、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、及び皮膚エリテマトーデスなど)、血液障害(例えば、血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、輸血後紫斑病、及び自己免疫溶血性貧血など)、アテローム性動脈硬化症、ブドウ膜炎、自己免疫聴覚疾患(例えば、内耳疾患及び聴覚損失など)、ベーチェット病、レイノー症候群、臓器移植、ならびに自己免疫内分泌障害(例えば、インスリン依存性糖尿病(IDDM)などの糖尿病関連自己免疫疾患、アジソン病、及び自己免疫甲状腺疾患(例えば、グレーブス病及び甲状腺炎)など)が含まれる。より好ましいかかる疾患には、例えばRA、潰瘍性大腸炎、ANCA関連脈管炎、ループス、多発性硬化症、シェーグレン症候群、グレーブス病、IDDM、悪性貧血、甲状腺炎、及び糸球体腎炎が含まれる。
【0036】
句「based on」は、本明細書で使用されるとき、1つ以上のバイオマーカー(例えば、PD-L1)に関しての情報が、例えば治療決定、添付文書上で提供される情報、またはマーケティング/宣伝指針を伝えるために使用されることを意味する。
【0037】
「生体試料」による意味は、対象または患者から取得した類似細胞の採集物である。生体試料は、組織または細胞試料であり得る。組織または細胞試料の供給源は、新鮮、凍結、及び/または保管された、臓器または組織試料または生体組織または吸引液;血液または任意の血液組成成分;脳脊髄液、羊膜液、腹腔液、または組織液などの体液;対象の妊娠期間または発育における任意の時期の細胞からの固形組織であって良い。生体試料は、インビトロ組織または細胞培養物からも取得され得る。組織試料は、防腐剤、抗凝血剤、緩衝剤、固定剤、栄養剤、抗生物質、またはそれらに類するものなどの、本質的に組織と自然に入り混じらない化合物を含有して良い。本明細書の生体試料の例には、腫瘍生体組織、循環腫瘍細胞、血清または血漿、循環血漿タンパク質、腹水、腫瘍に由来するかまたは腫瘍の様な特性を示す初代細胞培養物または細胞株、ならびにホルマリン固定パラフィン包埋腫瘍試料または凍結腫瘍試料などの保管された腫瘍試料が含まれるが、これらに限定されない。
【0038】
用語「バイオマーカー」は、本明細書で使用される場合、例えば予測、診断、及び/または予後の指標を指し、例えばPD-L1は、試料中で検出され得る。バイオマーカーは、ある特定の分子的、病理学的、組織学的、及び/または臨床的特徴を特徴とする疾患または障害(例えば、癌)の特定のサブタイプの指標としての役割を果たして良い。いくつかの実施形態において、バイオマーカーは、遺伝子である。バイオマーカーには、ポリヌクレオチド(例えば、DNA及び/またはRNA)、ポリヌクレオチドコピー数の改変(例えば、DNAコピー数)、ポリペプチド、ポリペプチド及びポリヌクレオチド修飾(例えば、翻訳後修飾)、炭水化物、ならびに/または糖脂質系分子マーカーが含まれるが、これらに限定されない。
【0039】
「遮断」抗体または「アンタゴニスト」抗体は、それが結合する抗原の生物学的活性を阻害または低減するものである。好ましい遮断抗体またはアンタゴニスト抗体は、抗原の生物学的活性を実質的にまたは完全に阻害する。
【0040】
用語「癌」及び「癌性」は、非調節の細胞成長/増殖を典型的には特徴とする哺乳動物の生理的状態を指すか、または説明する。癌の例には、癌腫、リンパ腫(例えば、ホジキン及び非ホジキンリンパ腫)、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれるが、これらに限定されない。かかる癌のより特定な例には、非小細胞肺癌(NSCLC)(肺の腺癌腫及び肺の扁平上皮癌腫を含む)、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌、膵臓癌、神経膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌腫、白血病及び他のリンパ増殖性障害、ならびに様々な型の頭頸部癌が含まれる。特定の実施形態において、癌は、NSCLCである。いくつかの実施形態において、NSCLCは、肺の線癌腫または肺の扁平上皮癌腫である。NSCLCは、扁平上皮NSCLCまたは非扁平上皮NSCLCである。
【0041】
「化学療法剤」は、癌の治療において有用な化学化合物である。化学療法剤の例には、チオテパ及びCYTOXAN(登録商標)シクロスホスファミド(cyclosphosphamide)などのアルキル化薬剤;ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファンなどのアルキルスルホネート;ベンゾドパ(benzodopa)、カルボコン、メツレドパ(meturedopa)、及びウレドパ(uredopa)などのアジリジン;アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド(trietylenephosphoramide)、トリエチレンチオホスホルアミド(triethiylenethiophosphoramide)、及びトリメチローロメラミン(trimethylolomelamine)を含むエチレンイミン及びメチルアメラミン(methylamelamine);アセトゲニン(特にブラタシン及びブラタシノン);デルタ-9-テトラヒドロカンナビノール(ドロナビノール、MARINOL(登録商標));ベータ-ラパコン;ラパコール;コルヒチン;ベツリン酸;カンプトテシン(合成アナログトポテカン(HYCAMTIN(登録商標))、CPT-11(イリノテカン、CAMPTOSAR(登録商標))、アセチルカンプトテシン、スコポレクチン(scopolectin)、及び9-アミノカンプトテシンを含む);ブリオスタチン;カリスタチン;CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びビゼレシン合成アナログを含む);ポドフィロトキシン;ポドフィリン酸;テニポシド;クリプトフィシン(特にクリプトフィシン1及びクリプトフィシン8);ドラスタチン;デュオカルマイシン(合成アナログ、KW-2189及びCB1-TM1を含む);エリュテロビン;パンクラチスタチン;サルコジクチイン;スポンジスタチン;クロラムブシル、クロルナファジン(chlornaphazine)、コロホスファミド(cholophosphamide)、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシド塩酸塩、メルファラン、ノベムビシン(novembichin)、フェネステリン、プレドニムスチン、トロホスファミド、ウラシルマスタードなどの窒素マスタード;カルムスチン、クロロゾトシン、ホテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムヌスチン(ranimnustine)などのニトロスレア;エンジイン抗生物質(例えば、カリケアミシン、特にカリケアミシンγ1I及びカリケアミシンω1I(例えば、Nicolaouら,.Angew.Chem Intl.版.Engl.,33:183-186(1994)を参照されたい)などの抗生物質;ダイネミシンAを含むダイネミシン;エスペラミシン;ならびにネオカルジノスタチンクロモフォア及び関連クロモタンパク質エンジイン抗オビオティッククロモフォア)、アクラシノマイシン(aclacinomysins)、アクチノマイシン、オースラマイシン(authramycin)、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン(carabicin)、カルミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニ(chromomycini)、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN(登録商標)ドキソルビシン(モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン、及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン(esorubicin)、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシンCなどのマイトマイシン、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポトフィロマイシン(potfiromycin)、ピューロマイシン、ケラマイシン(quelamycin)、ロドルビシン(rodorubicin)、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;メソトレキセート及び5-フルオロウラシル(5-FU)などの抗代謝剤;デノプテリン、メソトレキセート、プテロプテリン、トリメトレキサートなどの葉酸アナログ;フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなどのプリンアナログ;アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなどのピリミジンアナログ;カルステロン、プロピオン酸ドロスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなどのアンドロゲン;アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなどの抗副腎;フロリン酸などの葉酸補液;アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル(bestrabucil);ビスアントレン;エダトラキセート;デフォファミン(defofamine);デメコルシン;ジアジクオン;エルフォルニチン;エリプチニウム酢酸塩;エポチロン;エトグルシド;ガリウム硝酸塩;ヒドロキシウレア;レンチナン;ロニダイニン(lonidainine);マイタンシン及びアンサマイトシンなどのマイタンシノイド;ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダンモール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;2-エチルヒドラジド(ethylhydrazide);プロカルバジン;PSK(登録商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,OR);ラゾキサン;リゾキシン;シゾフィラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2′,2′′-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン(特に、T-2 毒素、ベラクリン(verracurin)A、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン(ELDISINE(登録商標)、FILDESIN(登録商標));ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン(gacytosine);アラビノシド(「Ara-C」);チオテパ;タキソイド、例えばTAXOL(登録商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、パクリタキセルのABRAXANE(商標)クレモフォール不含のアルブミン遺伝子操作されたナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners,Schaumberg,Illinois)、及びTAXOTERE(登録商標)ドセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France)を含むタキサン;クロランブシル(chloranbucil);ゲムシタビン(GEMZAR(登録商標));6-チオグアニン;メルカプトプリン;メソトレキセート;シスプラチン及びカルボプラチンなどのプラチナアナログ;ビンブラスチン(VELBAN(登録商標));プラチナ;エトポシド(VP-16);イホスファミド;ミトキサントロン;ビンクリスチン(ONCOVIN(登録商標));オキサリプラチン;ロイコボビン;ビノレルビン(NAVELBINE(登録商標));ノバントロン;エダトレキサート;ダウノマイシン;アミノプテリン;イバンドロネート;トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000;ジフルオロメトルヒロルニチン(DMFO);レチノイン酸などのレチノイド;カペシタビン(XELODA(登録商標));薬学上許容される塩、酸、または上記のうちのいずれかの誘導体;ならびにシクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、及びプレドニゾロンが組み合わされた治療の略語であるCHOP、また5-FU及びロイコボリンと組み合わされたオキサリプラチン(ELOXATIN(商標))を用いた治療レジメンの略語であるFOLFOXなどの上記の2つ以上の組み合わせが含まれる。追加の化学療法剤には、例えばマイタンシノイド(例えば、DM1)、ならびにオーリスタチンMMAE及びMMAFなどの抗体薬物複合体として有用な細胞毒性剤が含まれる。
【0042】
「化学療法剤」には、癌の成長を促進し得るホルモンの有効性を調節、低減、遮断、または阻害するために作用し、しばしば全身性または体全体の治療の形態にある「抗ホルモン薬剤」または「内分泌治療剤」も含まれる。それらは、それら自体がホルモンであって良い。例には、例えばタモキシフェン(NOLVADEX(登録商標)タモキシフェンを含む)、EVISTA(登録商標)ラロキシフェン、ドロロキシフェン、4-ヒドロキシタモキシフェン、トリオキシフェン、ケオキシフェン、LY117018、オナプリストン、及びFARESTON(登録商標)トレミフェンを含む抗エストロゲン及び選択的エストロゲン受容体修飾薬(SERM);抗プロゲステロン;エストロゲン受容体下方調節薬(ERD);卵巣を抑制するかまたは閉鎖させるように機能する薬剤、例えばLUPRON(登録商標)及びELIGARD(登録商標)ロイプロリド酢酸塩、ゴセレリン酢酸塩、ブセレリン酢酸塩、ならびにトリプテレリンなどの黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アゴニスト;フルタミド、ニルタミド、及びビカルタミドなどの他の抗アンドロゲン;更に例えば、4(5)-イミダゾール、アミノグルテチミド、MEGASE(登録商標)メゲストロール酢酸塩、AROMASIN(登録商標)エキセメスタン、ホルメスタイン、ファドロゾール、RIVISOR(登録商標)ボロゾール、FEMARA(登録商標)レトロゾール、及びARIMIDEX(登録商標)アナストロゾールなどの、副腎内のエストロゲン産生を調節する酵素アロマターゼを阻害するアロマターゼ阻害剤が含まれる。加えて、化学療法剤のかかる定義には、クロドロネート(例えば、BONEFOS(登録商標)またはOSTAC(登録商標))、DIDROCAL(登録商標)エチドロネート、NE-58095、ZOMETA(登録商標)ゾレドロン酸/ゾレドロネート、FOSAMAX(登録商標)アレンドロネート、AREDIA(登録商標)パミドロネート、SKELID(登録商標)チルドロネート、またはACTONEL(登録商標)リセドロネートなどのビスホスホネート;ならびにトロキサシタビン(1,3-ジオキソランヌクレオシドシトシンアナログ);アンチセンスオリゴヌクレオチド、特に、例えばPKC-アルファ、Raf、H-Ras、及び表皮成長因子受容体(EGFR)などの異所(abherant)細胞増殖に関係があるとされるシグナル伝達系路における遺伝子の発現を阻害するもの;THERATOPE(登録商標)ワクチン及び遺伝子治療ワクチン、例えばALLOVECTIN(登録商標)ワクチン、LEUVECTIN(登録商標)ワクチン、及びVAXID(登録商標)ワクチンなどのワクチン;LURTOTECAN(登録商標)トポイソメラーゼ1阻害剤;ABARELIX(登録商標)rmRH;ジトシル酸ラパチニブ(別名GW572016、ErbB-2及びEGFR二重チロシンキナーゼ小分子阻害剤);更に薬学上許容される塩、酸、または上記のうちのいずれかの誘導体が含まれる。
【0043】
用語「キメラ」抗体は、重及び/または軽鎖の一部が、特定の供給源または種に由来するが、一方で残りの重及び/または軽鎖が異なる供給源または種に由来する抗体を指す。
【0044】
抗体の「クラス」は、その重鎖により保有される定常ドメインまたは定常領域の型を指す。抗体の5つの主なクラスには:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMがあり、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2に更に分割されて良い。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼称される。
【0045】
「相関させる」または「相関させること」による意味は、任意の方法で、第1の分析またはプロトコルの能力及び/または結果を、第2の分析またはプロトコルの能力及び/または結果と比較することである。例えば、第1の分析若しくはプロトコルの結果は、第2のプロトコルを行う上で使用されても良く、かつ/または第1の分析若しくはプロトコルの結果は、第2の分析若しくはプロトコルを実施すべきかどうかを決定するために使用されて良い。ポリペプチド分析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリペプチド発現分析またはプロトコルの結果は、特異的治療レジメンを実施すべきかどうかを決定するために使用されて良い。ポリヌクレオチド分析またはプロトコルの実施形態に関して、ポリヌクレオチド発現分析またはプロトコルの結果は、特異的治療レジメンを実施すべきかどうかを決定するために使用されて良い。
【0046】
用語「細胞毒性剤」は、本明細書で使用される場合、細胞機能を阻害若しくは防止し、かつ/または細胞死若しくは破壊を引き起こす物質を指す。細胞毒性剤には、放射性同位体(例えば、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体);化学療法剤または薬物(例えば、メソトレキセート、アドリアミシン、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビンブラスチン、エトポシド)、ドキソルビシン、メルファラン、マイトマイシンC、クロラムブシル、ダウノルビシン、または他の挿入剤);成長阻害剤;核酸分解酵素などの酵素及びこれらの断片;抗生物質;細菌、真菌、植物、または動物起源の小分子毒素または酵素活性毒素などの、これらの断片及び/または変異体を含む毒素、ならびに以下で開示される様々な抗腫瘍または抗癌剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0047】
用語「検出する」は、直接的及び間接的検出を含む一切の検出の意味を含む。
【0048】
用語「診断」は、分子的または病理学的状態、疾患、または状態(例えば、癌)の特定または分類を指すために本明細書で使用される。例えば、「診断」は、癌の特定の型の特定を指して良い。「診断」は、例えば病理組織的基準によるか、または分子特徴により癌の特定のサブタイプの分類も指して良い(例えば、バイオマーカーのうちの1つまたは組み合わせの発現を特徴とするサブタイプ(例えば、特定の遺伝子、または該遺伝子によりコードされるタンパク質))。
【0049】
「障害」は、哺乳動物が問題の障害に罹る病理学的健康状態を含む慢性及び急性障害または疾患を含むが、これらに限定されない、治療により有益性を受けるであろう任意の状態である。
【0050】
「エフェクター機能」は、抗体のFc領域を原因とするそれらの生物学的活性を指し、それは、抗体アイソタイプと共に変化する。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞傷害(CDC)、Fc受容体結合、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)、食作用、細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体)の下方調節、ならびにB細胞活性化が含まれる。
【0051】
本明細書の用語「Fc領域」は、定常領域の少なくとも一部を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を規定するために使用される。本用語は、ネイティブ配列Fc領域及び変異体Fc領域を含む。一実施形態において、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226からかまたはPro230から、重鎖のカルボキシル末端まで延在する。しかし、Fc領域のC末端リジン(Lys447)は、存在しても、しなくても良い。本明細書で別途指定がない限り、Fc領域または定常領域内のアミノ酸残基の番号付けは、KabatらSequences of Proteins of Immunological Interest.第5版.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されるような、EU指数とも呼称されるEUの番号付け方式に従う。
【0052】
「フレームワーク」または「FR」は、超可変領域残基(HVR)以外の可変ドメイン残基を指す。可変ドメインのFRは概して、4つのFRドメイン:FR1、FR2、FR3、及びFR4からなる。したがって、HVR及びFR配列は概して、VH(またはVL)内の次の配列に現れる:FR1-H1(L1)-FR2-H2(L2)-FR3-H3(L3)-FR4。
【0053】
用語「全長抗体」、「無傷抗体」、及び「全抗体」は、ネイティブ抗体構造に実質的に類似する構造を有するか、または本明細書で定義されるようなFc領域を含有する重鎖を有する抗体を指すために相互変換可能に本明細書で使用される。
【0054】
用語「発現のレベル」または「発現レベル」は概して、相互変換可能に使用され、概して、生体試料中のポリヌクレオチド、mRNA、またはアミノ酸産物若しくはタンパク質の量を指す。「発現」は概して、プロセスを指し、これにより、遺伝子コードされた情報は、細胞内に存在し、作動する構造体内に転換される。よって、本発明によると、遺伝子(例えば、PD-L1遺伝子)の「発現」は、ポリヌクレオチドへの転写、タンパク質への翻訳、または更にタンパク質の翻訳後修飾を指して良い。転写されたポリヌクレオチドの断片、翻訳されたタンパク質、または翻訳後修飾されたタンパク質も、それらが、代替的なスプライシングにより生成された転写産物、または劣化した転写産物、または例えば、タンパク質分解によるタンパク質の翻訳後処理を起源とするかどうかにかかわらず、発現されたと見なされよう。いくつかの実施形態において、「発現レベル」は、免疫組織化学法(IHC)、免疫ブロット(例えば、ウェスタンブロッティング)、免疫蛍光法(IF)、フローサイトメトリー、例えば蛍光活性化細胞分取(FACS(商標))、または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を含むが、これらに限定されない、当該技術分野で既知であるか、または本明細書に記載される方法を使用して決定された生体試料中のタンパク質(例えば、PD-L1)の量を指す。
【0055】
「増加した発現」、「増加した発現レベル」、「増加したレベル」、「上昇した発現」、「上昇した発現レベル」、または「上昇したレベル」は、疾患若しくは障害(例えば、癌)を患っていない個体(複数可)または内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)などの対照に対する、個体におけるバイオマーカーの増加した発現または増加したレベルを指す。
【0056】
「低下した発現」、「低下した発現レベル」、「低下したレベル」、「低減した発現」、「低減した発現レベル」、または「低減したレベル」は、疾患若しくは障害(例えば、癌)を患っていない個体(複数可)または内部対照(例えば、ハウスキーピングバイオマーカー)などの対照に対する、個体におけるバイオマーカーの低下発現または低下したレベルを指す。いくつかの実施形態において、低減した発現は、ほとんど発現がないか、まったくない。
【0057】
用語「宿主細胞」、「宿主細胞株」、及び「宿主細胞培養物」は、相互変換可能に使用され、外因性核酸が導入された細胞を、かかる細胞の子孫を含めて指す。宿主細胞は、初代形質転換細胞及び継代数にかかわらずそれに由来する子孫を含む、「形質転換体」及び「形質転換された細胞」を含む。子孫は、核酸含有量が親細胞と完全に同一でなくても良いが、突然変異を含有しても良い。元の形質転換された細胞においてスクリーニングされたか、または選択されたのと同じ機能または生物学的活性を有する変異体子孫が、本明細書に含まれる。
【0058】
「ヒト抗体」は、アミノ酸配列を保有するものであり、それは、ヒト若しくはヒト細胞により産生されたか、またはヒト抗体レパートリー若しくは他のヒト抗体コード配列を活用する非ヒト供給源に由来する抗体のそれに対応する。このヒト抗体の定義は具体的には、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を除く。
【0059】
「ヒトコンセンサスフレームワーク」は、ヒト免疫グロブリンVLまたはVHフレームワーク配列の選択において、最も一般的に発生するアミノ酸残基を表すフレームワークである。概して、ヒト免疫グロブリンVLまたはVH配列の選択は、可変ドメイン配列のサブグループからである。概して、配列のサブグループは、Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest.Fifth Edition,NIH Publication 91-3242,Bethesda MD,Vols.1-3,1991にあるようなサブグループである。一実施形態において、VLに関して、サブグループは、上記Kabatら,にあるようなサブグループカッパIである。一実施形態において、VHに関して、サブグループは、上記Kabatら,にあるようなサブグループIIIである。
【0060】
「ヒト化」抗体は、非ヒトHVRからのアミノ酸残基及びヒトFRからのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を指す。ある特定の実施形態において、ヒト化抗体は、少なくとも1つ及び典型的には2つの可変ドメインを実質的に全て含み、ここでは、HVR(例えば、CDR)の全てまたは実質的に全てが、非ヒト抗体のそれらに対応し、FRの全てまたは実質的に全てが、ヒト抗体のそれらに対応する。ヒト化抗体は任意選択で、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んで良い。抗体の「ヒト化形態」、例えば非ヒト抗体は、ヒト化を経た抗体を指す。
【0061】
用語「超可変領域」または「HVR」は、本明細書で使用される場合、配列中で超可変(「相補性決定領域」または「CDR」)であり、かつ/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成し、かつ/または抗原接触残基(「抗原接触体」)を含有する、抗体可変ドメインの領域の各々を指す。概して、抗体は、3つはVH(H1、H2、H3)にあり、3つはVL(L1、L2、L3)にある、6つのHVRを含む。本明細書の例となるHVRには、
(a)アミノ酸残基26~32(L1)、50~52(L2)、91~96(L3)、26~32(H1)、53~55(H2)、及び96~101(H3)で発生する超可変ループ(ChothiaらJ.Mol.Biol.196:901-917,1987)、
(b)アミノ酸残基24~34(L1)、50~56(L2)、89~97(L3)、31~35b(H1)、50~65(H2)、及び95~102(H3)で発生するCDR(Kabatら,Sequences of Proteins of Immunological Interest.第5版.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991)、
(c)アミノ酸残基27c~36(L1)、46~55(L2)、89~96(L3)、30~35b(H1)、47~58(H2)、及び93~101(H3)で発生する抗原接触体(MacCallumらJ.Mol.Biol.262: 732-745,1996)、ならびに
(d)HVRアミノ酸残基46~56(L2)、47~56(L2)、48~56(L2)、49~56(L2)、26~35(H1)、26~35b(H1)、49~65(H2)、93~102(H3)、及び94~102(H3)を含む(a)、(b)、及び/または(c)の組み合わせを含む。別途示されない限り、可変ドメイン内のHVR残基及び他の残基(例えば、FR残基)は、上記Kabatら,に従って本明細書で番号付けされる。
【0062】
「免疫機能不全」は、免疫系に影響を及ぼす障害または状態であり、例えば自己免疫疾患及びT細胞機能不全障害を含む。
【0063】
本明細書で使用される場合、用語「免疫アドヘシン」は、異種タンパク質(「アドヘシン」)の結合特異性を免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能と組み合わせた抗体の様な分子を表す。構造的に、免疫アドヘシンは、抗体の抗原認識及び結合部位以外である所望の結合特異性(すなわち、「異種」である)を有するアミノ酸配列、及び免疫グロブリン定常ドメイン配列の融合物を含む。免疫アドヘシン分子のアドヘシン部分は典型的に、受容体またはリガンドの少なくとも結合部位を含む近接するアミノ酸配列である。免疫アドヘシン中の免疫グロブリン定常ドメイン配列は、IgG1、IgG2(IgG2A及びIgG2Bを含む)、IgG3、またはIgG4サブタイプ、IgA(IgA1及びIgA2を含む)、IgE、IgD、またはIgMなどの任意の免疫グロブリンから取得されて良い。Ig融合物は好ましくは、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の場所において本明細書に記載されるポリペプチドまたは抗体のドメインの置換を含む。特に好ましい実施形態において、免疫グロブリン融合は、ヒンジ、CH2、及びCH3、またはIgG1分子のヒンジ、CH1、CH2、及びCH3領域を含む。免疫グロブリン融合物の作製に関して、米国特許第5,428,130号も参照されたい。例えば、本明細書で治療にとって有用な薬品として、有用な免疫アドヘシンは、免疫グロブリン配列の定常ドメインに融合される、PD-L1若しくはPD-L2の細胞外ドメイン(ECD)若しくはPD-1結合部分、またはPD-1の細胞外若しくはPD-L1若しくはPD-L2結合部分、例えばそれぞれPD-L1 ECD-Fc、PD-L2 ECD-Fc、及びPD-1 ECD-Fcを含むポリペプチドを含む。細胞表面受容体のIgFc及びECDの免疫アドヘシンの組み合わせは時に、可溶性受容体と呼ばれる。
【0064】
「融合タンパク質」及び「融合ポリペプチド」は、共有結合的に一つに連結された2つの部分を有するポリペプチドを指し、ここで、部分の各々は、異なる特性を有するポリペプチドである。この特性は、インビトロまたはインビボでの活性などの生物学的特性であって良い。この特性はまた、標的分子への結合、反応の触媒作用などの単純な化学的または物理的特性であって良い。2つの部分は、単一のペプチド結合により、またはペプチドリンカーを介して直接的に連結されて良いが、互いに読み枠内にある。
【0065】
「免疫複合体」は、細胞毒性剤を含むが、これに限定されない1つ以上の異種分子(複数可)に複合された抗体である。
【0066】
「単離」抗体は、その自然環境の構成成分から分離されているものである。いくつかの実施形態において、抗体は、例えば電気泳動的(例えば、SDS-PAGE、等電点電気泳動(IEF)、キャピラリー電気泳動)、またはクロマトグラフ的(例えば、イオン交換または逆相HPLC)により決定される95%超または99%純度まで精製される。抗体純度の評価のための方法の概説に関して、例えばFlatmanらJ.Chromatogr.B.848:79-87,2007を参照されたい。
【0067】
「単離」核酸は、その自然環境の構成成分から分離されている核酸分子を指す。単離核酸は、核酸分子を通常含有する細胞内に含有される核酸分子を含むが、核酸分子は、染色体外か、またはその天然染色体上の箇所とは異なる染色体上の箇所に存在する。
【0068】
「抗PD-L1抗体をコードする単離核酸」は、単一のベクターまたは分離ベクター中のかかる核酸分子(複数可)、及び宿主細胞内の1つ以上の箇所に存在するかかる核酸分子(複数可)を含む、抗体重及び軽鎖(またはこれらの断片)をコードする1つ以上の核酸分子を指す。
【0069】
単語「標識」は、本明細書で使用されるとき、ポリヌクレオチドプローブなどの試薬または抗体に直接的または間接的に複合または融合され、試薬に複合または融合して試薬の検出を容易にする化合物または組成物を指す。標識は、それ自身が検出可能であって良い(例えば、放射性同位標識または蛍光標識)か、または酵素標識の場合、検出可能である基質化合物若しくは組成物の化学改変を触媒化して良い。この用語は、検出可能物質をプローブまたは抗体に結合すること(すなわち、物理的に連結すること)によるプローブまたは抗体の直接的標識化、ならびに直接的に標識化される別の試薬との反応性によるプローブまたは抗体の間接的標識化を包含することを意図する。間接的標識化の例には、蛍光標識化された二次抗体を使用した一次抗体の検出、及び、それが蛍光標識化されたストレプトアビジンを用いて検出され得るようなビオチンを有するDNAプローブの末端標識化が含まれる。
【0070】
用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用される場合、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を指し、すなわちその集団を含む個別の抗体が、同一であり、かつ/または、例えば自然発生する突然変異を含有するか、若しくはモノクローナル抗体調製物の作製中に起こる、変異体抗体の可能性のあるものを除いた同じエピトープに結合し、かかる変異体は、概してわずかな量で存在する。異なる決定要因(エピトープ)に指向する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体の調製物と対照的に、モノクローナル抗体調製物の各モノクローナル抗体は、抗原における単一の決定要因に指向する。よって、修飾物質「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られているような抗体の特質を示し、任意の特定の方法により抗体の作製を必要とすると解釈されるべきではない。例えば、本発明に従って使用されるモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン座の全てまたは部分を含有する遺伝子組換え動物を活用する方法、またはこれらの組み合わせを含むが、これらに限定されない種々の技法により作製されて良い。
【0071】
参照ポリペプチド配列に関する「アミノ酸配列同一性パーセント(%)」は、最大パーセント配列同一性を達成するために必要に応じて配列を整列させ間隙を導入した後の、参照ポリペプチド配列中のアミノ酸残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合と定義され、いずれの保存的置換も配列同一性の部分として見なされない。アミノ酸配列同一性パーセントを決定することを目的とした整列は、当業者が備えている技能の範囲内である様々な方法、例えばBLAST、BLAST-2、ALIGN、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアなどの公に利用可能なコンピューターソフトウェアを使用して達成され得る。当業者は、比較されている配列の全長を上回る最大限の整列を達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、配列を整列させるための適切なパラメータを決定し得る。しかし、本明細書の目的に関して、アミノ酸配列同一性%値は、配列比較コンピュータープログラムALIGN-2を使用して生成される。ALIGN-2配列比較コンピュータープログラムは、Genentech,Inc.,により著され、ソースコードは、米国著作権局、Washington D.C.,20559内に利用者文書と共に登録されており、そこでは、それは、米国著作権登録番号TXU510087として登録されている。ALIGN-2プログラムは、Genentech,Inc.,South San Francisco,Californiaより公に利用可能であるか、またはソースコードから収集されて良い。ALIGN-2プログラムは、デジタルUNIX V4.0Dを含むUNIX作動システムで使用するために収集されるべきである。全ての配列比較パラメータは、ALIGN-2プログラムにより設定され、変化しない。
【0072】
ALIGN-2がアミノ酸配列比較のために利用される状況において、供されたアミノ酸配列Bに対して、ついて、または比べて供されたアミノ酸配列Aのアミノ酸配列同一性%(代替的に、供されたアミノ酸配列Bに対して、ついて、または比べてある特定のアミノ酸配列同一性%を有するかまたは含む供されたアミノ酸配列Aと表現され得る)は、次のように計算される。
100×分率X/Y
式中、Xは、そのプログラムのA及びBの整列内における配列整列プログラムALIGN-2により同一マッチとして点数化されたアミノ酸残基の数であり、Yは、Bにおけるアミノ酸残基の総数である。アミノ酸配列Aの長さがアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、AのBに対するアミノ酸配列同一性%は、BのAに対するアミノ酸配列同一性%と等しくならないことが理解されるであろう。別途具体的に記述されない限り、本明細書で使用される全てのアミノ酸配列同一性%値は、直前の段落に記載されるように、ALIGN-2コンピュータープログラムを使用して取得される。
【0073】
用語「医薬製剤」は、有効的になるようにそこに含有される活性成分の生物学的活性を許可するようなかかる形態であり、製剤が投与されるであろう対象にとって許容できないほどの毒性がある追加の構成成分を含有しない調製物を指す。
【0074】
「薬学上許容される担体」は、対象にとって非毒性である、活性成分以外の医薬製剤における成分を指す。薬学上許容される担体には、緩衝剤、賦形剤、安定剤、または防腐剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0075】
用語「プログラム細胞死1リガンド1」、「PD-L1」、「プログラム死リガンド1」、「分化抗原群274」、「CD274」、または「B7相同体1」は、本明細書で使用される場合、別途示されない限り霊長類などの哺乳動物(例えば、ヒト)及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)を含む、任意の脊椎動物供給源からの任意のネイティブPD-L1を指す。この用語は、「全長」で未処理のPD-L1、ならびに細胞内における処理により生じるPD-L1の任意の形態を包含する。PD-L1は、膜貫通型タンパク質としてか、または可溶性タンパク質として存在し得る。この用語は、PD-L1の自然発生する変異体、例えばスプライス変異体またはアレリック変異体も包含する。PD-L1の基本的な構造は、4つのドメイン:細胞外Igの様なV型及びIgの様なC2型ドメイン、膜貫通型ドメイン、ならびに細胞質ドメインを含む。ゲノムDNA配列を含むヒトPD-L1遺伝子における追加の情報は、NCBI遺伝子番号29126で見ることができる。ゲノムDNA配列を含むマウスPD-L1遺伝子における追加の情報は、NCBI遺伝子番号60533で見ることができる。例となる全長ヒトPD-L1タンパク質のアミノ酸配列は、配列番号18で示される。例となる全長ヒトPD-L1タンパク質のアミノ酸配列は、例えばNCBI受託番号NP_001254653またはユニットプロット受託番号Q9NZQ7で見ることができるが、一方で例となる全長マウスPD-L1タンパク質配列は、例えばNCBI受託番号NP_068693またはユニットプロット受託番号Q9EP73で見ることができる。
【0076】
用語「PD-1軸結合アンタゴニスト」は、PD-1シグナル伝達軸におけるシグナル伝達から生じるT細胞機能不全を除去し、結果として、T細胞機能を復元するか、または高めるような(例えば、増殖、サイトカイン産生、及び/または標的細胞殺滅)、PD-1軸結合パートナーとその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用を阻害する分子を指す。本明細書で使用される場合、PD-1軸結合アンタゴニストには、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストが含まれる。
【0077】
本明細書で使用される場合、「PD-L1結合アンタゴニスト」は、PD-L1と、PD-1及び/またはB7-1などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、無効化、または妨害する分子である。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1及び/またはB7-1への結合を阻害する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体及びこれらの抗原結合断片、免疫アドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、小分子アンタゴニスト、ポリヌクレオチドアンタゴニスト、ならびにPD-L1と、PD-1及び/またはB7-1などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、無効化、または妨害する他の分子を含む。一実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1またはPD-1を介したシグナル伝達により媒介されるTリンパ球及び他の細胞上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される、負のシグナルを低減し、これにより、機能不全のT細胞の機能不全状態を軽減する。いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。具体的な態様において、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70である。別の具体的な態様において、抗PD-L1抗体は、MDX-1105である。更に別の具体的な態様において、抗PD-L1抗体は、MPDL3280A(アテゾリズマブ)である。更に別の具体的な態様において、抗PD-L1抗体は、MEDI4736(デュルバルマブ)である。更に別の具体的な態様において、抗PD-L1抗体は、MSB0010718C(アベルマブ)である。MDX-1105、別名BMS-936559は、WO2007/005874に記載される抗PD-L1抗体である。抗体YW243.55.S70は、WO2010/077634及びUS8,217,149に記載される抗PD-L1抗体であり、これらの各々の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0078】
本明細書で使用される場合、「PD-1結合アンタゴニスト」は、PD-1と、PD-L1及び/またはPD-L2などのその結合パートナーのうちの1つ以上との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、無効化、または妨害する分子である。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、その結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1及び/またはPD-L2への結合を阻害する。例えば、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体及びこれらの抗原結合断片、免疫アドヘシン、融合タンパク質、オリゴペプチド、小分子アンタゴニスト、ポリヌクレオチドアンタゴニスト、ならびにPD-1と、PD-L1及び/またはPD-L2との相互作用から生じるシグナル形質導入を低下、遮断、阻害、無効化、または妨害する他の分子を含む。一実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1またはPD-L1を介したシグナル伝達により媒介される、Tリンパ球及び他の細胞上で発現される細胞表面タンパク質によりまたはそれを介して媒介される、負のシグナルを低減し、これにより、機能不全のT細胞の機能不全状態を軽減する。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、抗PD-1抗体である。具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、MDX-1106(ニボルマブ)である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、MK-3475(ペンブロリズマブ)である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、CT-011(ピディリズマブ)である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、MEDI-0680(AMP-514)である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、PDR001である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、REGN2810である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、BGB-108である。別の具体的な態様において、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。MDX-1106、別名MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、またはニボルマブは、WO2006/121168に記載される抗PD-1抗体である。AMP-224、別名B7-DCIgは、WO2010/027827及びWO2011/066342に記載されるPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
【0079】
「参照試料」、「参照細胞」、「参照組織」、「対照試料」、「対照細胞」、または「対照組織」は、本明細書で使用される場合、比較目的のために使用される試料、細胞、組織、標準、またはレベルを指す。一実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、同じ対象または個体の身体の健康及び/または非疾患部分(例えば、組織または細胞)から取得される。例えば、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、疾患細胞または組織に隣接する健康及び/または非疾患細胞または組織(例えば、腫瘍に隣接する細胞または組織)であって良い。別の実施形態において、参照試料は、同じ対象または個体の身体の治療されていない組織及び/または細胞から取得される。更に別の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、その対象またはその個体ではない、個体の身体の健康及び/または非疾患部分(例えば、組織または細胞)から取得される。更に別の実施形態において、参照試料、参照細胞、参照組織、対照試料、対照細胞、または対照組織は、その対象または個体ではない、個体の身体の治療されていない組織及び/または細胞から取得される。
【0080】
「個体応答」または「応答」は、(1)減速及び完全阻止を含む疾患進行(例えば、癌進行)のある程度の阻害、(2)腫瘍サイズの低減、(3)隣接する末梢臓器及び/若しくは組織への癌細胞浸潤の阻害(すなわち、低減、減速、または完全停止)、(4)メタタシスの阻害(すなわち、低減、減速、または完全停止)、(5)疾患若しくは障害(例えば、癌)に関連する1つ以上の症状のある程度の軽減、(6)全生存期間及び無増悪生存期間を含む生存期間の長さの増加若しくは延長、ならびに/または(9)治療後の所定の時点における低下した死亡率を限定することなく含む、個体への有益性を示す任意のエンドポイントを使用して評価され得る。
【0081】
薬品を用いた治療に対する患者の「有効な応答」または患者の「応答性」及び類似の単語は、癌などの疾患若しくは障害の危険性があるか、またはそれを患う患者に付与される臨床的または治療的有益性を指す。一実施形態において、かかる有益性には、生存期間(全生存期間及び無増悪生存期間を含む)を延長すること、客観的奏効(完全奏効または部分奏効を含む)をもたらすこと、または癌の徴候若しくは症状を改善することのうちのいずれか1つ以上が含まれる。一実施形態において、バイオマーカー(例えばIHCを使用して決定される、例えばPD-L1発現)は、バイオマーカーを発現しない患者に対して、薬品を用いた治療(例えば、抗癌療法を含む治療)に応答する可能性が増加していると予測される患者を特定するために使用される。一実施形態において、バイオマーカー(例えばIHCを使用して決定される、例えばPD-L1発現)は、同じレベルでバイオマーカーを発現しない患者に対して、薬品を用いた治療(例えば、抗癌療法)に応答する可能性が増加していると予測される患者を特定するために使用される。一実施形態において、バイオマーカーの存在は、バイオマーカーの存在を有しない患者に対して、薬品を用いた治療に応答する可能性がより高い患者を特定するために使用される。別の実施形態において、バイオマーカーの存在は、患者が、バイオマーカーの存在を有しない患者に対して、薬品を用いた治療から有益性を被る可能性が増加していることを決定するために使用される。
【0082】
「客観的奏効」は、完全奏効(CR)または部分奏効(PR)を含む測定可能な応答を指す。いくつかの実施形態において、「客観的奏効率(ORR)」は、完全奏効(CR)率及び部分奏効(PR)率の合計を指す。
【0083】
「完全奏効」または「CR」により、治療に対する応答において、癌の全ての徴候の消滅(例えば、全ての標的病巣の消滅)が意図される。これは、必ずしも癌が治癒されたことを意味しない。
【0084】
「持続奏効」は、治療中断後の腫瘍成長の低減における持続した有効性を指す。例えば、腫瘍サイズは、投与期の始まりのサイズと比較したときに同じままか、またはより小さくて良い。いくつかの実施形態において、持続奏効は、治療期間と少なくとも同じか、治療期間の長さの少なくとも1.5X、2.0X、2.5X、若しくは3.0Xか、またはそれ以上の期間を有する。
【0085】
本明細書で使用される場合、「癌の再発を低減または阻害すること」は、腫瘍若しくは癌の再発または腫瘍若しくは癌の進行を低減または阻害することを意味する。本明細書で開示されるように、癌の再発及び/または癌の進行には、癌転移が限定されることなく含まれる。
【0086】
本明細書で使用される場合、「部分奏効」または「PR」は、治療に対する応答において、1つ以上の腫瘍若しくは病巣のサイズ、または身体内の癌の範囲の低下を指す。例えば、いくつかの実施形態において、PRは、標的病巣の最長径の合計(SLD)において、少なくとも30%の低下を指し、これは参照ベースラインSLDとされる。
【0087】
本明細書で使用される場合、「安定疾患」または「SD」は、PRと言えるほどの十分な標的病巣の収縮も、PDと言えるほどの十分な増加もないことを指し、これは治療開始以来の参照最小SLDとされる。
【0088】
本明細書で使用される場合、「進行性疾患」または「PD」は、治療開始以来記録された参照最小SLDとされる、標的病巣のSLDにおいて少なくとも20%の増加または1つ以上の新たな病巣の存在を指す。
【0089】
用語「生存期間」は、患者が生存していることを指し、全生存期間、ならびに無増悪生存期間を含む。
【0090】
本明細書で使用される場合、「無増悪生存期間」(PFS)は、治療中及び治療後の時間の長さを指し、その間、治療されている疾患(例えば、癌)は悪化しない。無増悪生存期間は、患者が完全奏効または部分奏効を経験した時間量、ならびに患者が安定疾患を経験した時間量を含んで良い。
【0091】
本明細書で使用される場合、「全生存期間」(OS)は、特定の期間後に生きている可能性が高い、群における個体の割合を指す。
【0092】
「生存延長」による意味は、治療されていない患者に対して(すなわち、薬品で治療されていない患者に対して)、または指定されたレベルでバイオマーカーを発現しない患者に対して、及び/または承認済み抗腫瘍剤で治療された患者に対して、治療された患者における全生存期間または無増悪生存期間が増加することである。
【0093】
本明細書の目的に関して、組織試料の「切片」は、組織試料の単一の部分または片、例えば組織試料(例えば、腫瘍試料)から切り取られた組織または細胞の薄切片を意味する。組織試料の複数の切片が取られて分析にかけられて良いことを理解されたいが、但し、組織試料の同じ切片が、形態及び分子レベルの両方で分析されるか、またはポリペプチド(例えば、免疫組織化学法による)及び/若しくはポリヌクレオチド(例えば、原位置ハイブリッド形成法による)に関して分析されて良いことが理解されることを条件とする。
【0094】
本明細書で使用される場合、用語「~に特異的に結合する」または「~に対して特異的な」は、標的と抗体との間の結合などの測定可能及び再生可能な相互作用を指し、それは、生体分子を含む分子の不均一な集団の存在下で標的の存在を確定させる。例えば、標的(エピトープ、例えばヒトPD-L1のアミノ酸残基279~290(配列番号1)であり得る)に特異的に結合する抗体は、それが他の標的に結合するより大きな親和性、結合活性を以って、より容易に、及び/またはより長期間この標的に結合する抗体である。一実施形態において、抗体の、無関係の標的への結合の程度は、例えば放射免疫アッセイ(RIA)により測定されたときに、抗体の標的への結合の約10%未満である。ある特定の実施形態において、標的に特異的に結合する抗体は、≦1μM、≦100nM、≦10nM、≦1nM、または≦0.1nMの解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態において、抗体は、異なる種由来のタンパク質の間で保存されるタンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態において、特異的な結合は、排他的な結合を含み得るが、これを必要とはしない。
【0095】
「対象」または「個体」は、哺乳動物である。哺乳動物には、飼育動物(例えば、雌ウシ、ヒツジ、ネコ、イヌ、及びウマ)、霊長類(例えば、ヒト及びサルなどの非ヒト霊長類)、ウサギ、及び齧歯類(例えば、マウス及びラット)が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態において、個体または対象は、ヒトである。
【0096】
用語「substantially the same」は、本明細書で使用される場合、当業者が、該値(例えば、Kd値または発現レベル)により測定される生物学的特質の文脈において、2つの値の間にある差異を生物学的及び/または統計学的に重要性が殆どないか、まったくないと見なすような、2つの数値間の十分に程度の高い類似性を意味する。該2つの値の間にある差異は、参照/比較値の関数として、例えば約50%未満、約40%未満、約30%未満、約20%未満、及び/または約10%未満である。
【0097】
句「実質的に異なる」、本明細書で使用される場合、当業者が、該値(例えば、Kd値または発現レベル)により測定される生物学的特質の文脈において、2つの値の間にある差異を統計学的に重要性があると見なすような、2つの数値間の十分に程度の高い差異を意味する。該2つの値の間にある差異は、参照/比較分子に対する値の関数として、例えば約10%超、約20%超、約30%超、約40%超、及び/または約50%超である。
【0098】
「T細胞機能不全障害」は、抗原刺激に対する増加または低下した応答性を特徴とするT細胞の障害または状態である。特定の実施形態において、T細胞機能不全障害は、PD-1/PD-L1及び/またはPD-L1/B7.1を介した不適切な増加シグナル伝達に特異的に関連する障害である。別の実施形態において、T細胞機能不全障害は、T細胞が、アネルギー性であるか、またはサイトカインを分泌するか、増殖するか、若しくは細胞溶解活性を実行する能力を低下させている状態である。別の実施形態において、T細胞機能不全は、T細胞の消耗が多くの慢性感染及び癌において発生する持続TCRシグナル伝達により起こる状態である。それは、アネルギーとは区別され、この場合、それは、不完全または不足したシグナル伝達によるのではなく、持続シグナル伝達から起こる。それは、乏しいエフェクター機能、阻害受容体の持続発現、及び機能的エフェクターまたはメモリーT細胞のとは異なる転写状態により定義される。消耗は、感染及び腫瘍の最適な制御を防止する。消耗は、外因性負調節系路(例えば、免疫調節性サイトカイン)、ならびに細胞固有の負調節(共刺激)系路(PD-1、B7-H3、B7-H4など)の両方から生じ得る。具体的な態様において、低下した応答性は、免疫原を発現する病原体または腫瘍の無効な制御をもたらす。T細胞機能不全を特徴とするT細胞機能不全障害の例には、未解決の急性感染、慢性感染、及び腫瘍免疫が含まれる。
【0099】
本明細書で使用される場合、「治療」(及び「治療する」または「治療している」などの、これの文法上の変化形)は、治療されている個体の自然経過を改変する試みにおける臨床措置を指し、予防のためか、または臨床病理学の経過中のどちらかで実施され得る。治療の望ましい有効性には、疾患の発生または繰り返しを予防すること、症状の緩和、疾患の任意の直接的または間接的病理学的結果の減弱、転移を予防すること、疾患進行の速度を低下させること、疾患状態の向上または寛解、及び緩解または改善された予後が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、抗体(例えば、抗PD-1抗体及び/または抗PD-L1抗体)は、疾患の進展を遅らせるか、または疾患の進行を減速させるために使用される。
【0100】
用語「腫瘍」は、本明細書で使用される場合、悪性または良性にかかわらず全ての腫瘍性細胞の成長及び増殖、ならびに全ての前癌状態及び癌状態の細胞及び組織を指す。用語「癌」、「癌状態」、及び「腫瘍」は、本明細書で言及されるように相互排他的ではない。
【0101】
「腫瘍浸潤免疫細胞」は、本明細書で使用される場合、腫瘍またはこれらの試料中に存在する任意の免疫細胞を指す。腫瘍浸潤免疫細胞には、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周囲免疫細胞、他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)、またはこれらの任意の組み合わせが含まれるが、これらに限定されない。かかる腫瘍浸潤免疫細胞は、例えばTリンパ球(CD8+Tリンパ球及び/またはCD4+Tリンパ球など)、Bリンパ球、または顆粒球(例えば、好中球、好酸球、及び好塩基球)、単球、マクロファージ、樹状細胞(例えば、互いに組み合う樹状細胞)、組織球、及びナチュラルキラー細胞を含む他の骨髄系細胞であり得る。
【0102】
「腫瘍細胞」は、本明細書で使用される場合、腫瘍またはこれらの試料中に存在する任意の腫瘍細胞を指す。腫瘍細胞は、当技術分野で既知であり、かつ/または本明細書に記載される方法を使用して腫瘍試料中に存在し得る他の細胞、例えば間質細胞及び腫瘍浸潤免疫細胞と区別されて良い。
【0103】
「腫瘍免疫」は、腫瘍が、免疫認識及び排除を回避するプロセスを指す。よって、治療概念として、腫瘍免疫は、かかる回避が減衰され、腫瘍が免疫系により認識及び攻撃されるときに「治療される」。腫瘍認識の例には、腫瘍結合、腫瘍収縮、及び腫瘍排除が含まれる。
【0104】
「治療有効量」は、哺乳動物において疾患または障害を治療または予防するための治療剤の量を指す。癌の場合、治療有効量の治療剤は、癌細胞の数を低減、原発腫瘍サイズを低減、末梢臓器への癌細胞浸潤を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍転移を阻害(すなわち、ある程度の減速及び好ましくは停止)、腫瘍成長のある程度の阻害、及び/または障害に関連する症状のうちの1つ以上をある程度軽くして良い。薬物が存在する癌細胞の成長を予防し、かつ/またはそれらを殺滅する限りにおいて、それは、細胞増殖抑制性及び/または細胞毒性であって良い。癌治療に関して、インビボでの有効度は、例えば生存期間、疾患進行までの期間(TTP)、奏効率(例えば、CR及びPR)、奏効期間、及び/または生活の質を評価することにより測定され得る。
【0105】
用語「可変領域」または「可変ドメイン」は、抗体の抗原への結合に伴われる、抗体重鎖または軽鎖のドメインを指す。ネイティブ抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれ、VH及びVL)は概して、類似の構造を有し、各ドメインは4つの保存されたフレームワーク領域(FR)及び3つの超可変領域(HVR)を含む。例えば、KindtらKuby Immunology.第6版,page 91,W.H.Freeman and Co.,2007を参照されたい。単一のVHまたはVLドメインは、抗原結合特異性を与えるのに十分であり得る。更に、特定の抗原に結合する抗体は、抗原に結合して相補的VLまたはVHドメインのライブラリーをスクリーニングする抗体から、それぞれVHまたはVLドメインを使用して単離され得る。例えば、PortolanoらJ.Immunol.150:880-887,1993及びClarksonらNature.352:624-628,1991を参照されたい。
【0106】
用語「Kabatにあるような可変ドメイン残基番号付け」または「Kabatにあるようなアミノ酸位置番号付け」、及びこれらの変化形は、上記Kabatら,にある抗体の収集の重鎖可変ドメインまたは軽鎖可変ドメインに関して使用される番号付け方式を指す。この番号付け方式を使用して、実際の線状アミノ酸配列は、可変ドメインのFRまたはHVRの短縮、またはこれへの挿入に対応するより少ないかまたは追加のアミノ酸を含有して良い。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後に単一のアミノ酸挿入断片(Kabatによる残基52a)、及び重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによる残基82a、82b、及び82cなど)を含んで良い。残基のKabat番号付けは、抗体の配列と「標準」Kabat番号付け配列との相同関係の領域における整列により供された抗体に関して決定されて良い。
【0107】
Kabat番号付け方式は概して、可変ドメイン(およそ軽鎖の残基1~107及び重鎖の残基1~113)内の残基に言及するときに使用される(例えば、Kabatら,Sequences of Immunological Interest.5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health、Bethesda、Md.(1991))。「EU番号付け方式」または「EU指数」は概して、免疫グロブリン重鎖定常領域内の残基に言及するときに使用される(例えば、上記Kabatら,で報告されるEU指数)。「KabatのEU指数」は、ヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けを指す。
【0108】
用語「ベクター」は、本明細書で使用される場合、それが連結される別の核酸を増やすことができる核酸分子を指す。この用語は、自己複製核酸構造としてのベクター、ならびにベクターが導入された宿主細胞のゲノムに組み込まれたベクターを含む。ある特定のベクターは、それらが作動可能に連結される核酸の発現を指示することができる。かかるベクターは、本明細書中で「発現ベクター」と称される。
【0109】
「成長阻害剤」は、本明細書で使用されるとき、インビトロまたはインビボのどちらかで細胞(例えば、成長が、PD-L1発現に依存する細胞)の成長及び/または増殖を阻害する化合物または組成物を指す。よって、成長阻害剤は、S相における細胞の割合を著しく低減するものであって良い。成長阻害剤の例には、G1阻止剤及びM相阻止剤を含む薬剤などの細胞周期進行を(S相以外の場所で)遮断する薬剤が含まれる。従来のM相遮断剤には、アントラサイクリン抗生物質ドキソルビシン((8S-シス)-10-[(3-アミノ-2,3,6-トリデオキシ-α-L-リキソ-ヘキサピラノシル)オキシ]-7,8,9,10-テトラヒドロ-6,8,11-トリヒドロキシ-8-(ヒドロキシアセチル)-1-メトキシ-5,12-ナフタセンジオン)、エピルビシン、ダウノルビシン、エトポシド、及びブレオマイシンなどのビンカ(ビンクリスチン及びビンブラスチン)、タキサン、及びトポイソメラーゼII阻害剤が含まれる。G1を阻止するこれらの薬剤は、S相阻止剤、例えばタモキシフェン、プレドニゾン、ダカルバジン、メクロレタミン、シスプラチン、メソトレキセート、5-フルオロウラシル、及びara-CなどのDNAアルキル化薬剤中に溢流もする。更なる情報は、“The Molecular Basis of Cancer,”Mendelsohn and Israel, eds.,Chapter 1,entitled“Cell cycle regulation,oncogenes,and antineoplastic drugs” by Murakamiら(WB Saunders:Philadelphia,1995)、特にp.13で見ることができる。タキサン(パクリタキセル及びドセタキセル)は両方とも、イチイの木に由来する抗癌薬物である。ヨーロッパイチイに由来するドセタキセル(TAXOTERE(登録商標)、Rhone-Poulenc Rorer)は、パクリタキセル(TAXOL(登録商標)、Bristol-Myers Squibb)の半合成アナログである。パクリタキセル及びドセタキセルは、チューブリン二量体からの微小管の組み立てを促進し、脱重合を防止することにより微小管を安定させ、これは、細胞内の有糸分裂の阻害をもたらす。
【0110】
「放射線療法」による意味は、細胞に十分な損害を誘発するために、指向性ガンマ線またはベータ線を使用することであり、これにより、その通常に機能する能力を限定するかまたは細胞をまとめて破壊させる。用量及び治療の期間を決定するための、当技術分野で既知の多くの方法があることが理解されるであろう。典型的な治療は、単回投与及び1日10~200単位(Grays)の範囲の典型的な用量として与えられる。
【0111】
本明細書で使用される場合、用語「患者」または「対象」は、相互変換可能に使用され、治療が所望される任意の単一の動物、より好ましくは哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウサギ、動物園の動物、雌ウシ、ブタ、ヒツジ、及び非ヒト霊長類などのかかる非ヒト動物を含む)を指す。特定の実施形態において、本明細書の患者は、ヒトである。
【0112】
本明細書で使用される場合、「投与すること」は、対象(例えば、患者)への化合物(例えば、抗癌療法剤)または薬学的組成物(例えば、抗癌療法剤を含む薬学的組成物)の用量の供与方法を意味する。投与することは、非経口的、肺内、及び鼻腔内、ならびに局所的治療が所望される場合は、病変内投与を含む任意の好適な手段によることができる。非経口的注入には、例えば筋肉内、静脈内、動脈内、腹腔内、または皮下投与が含まれる。投薬は、任意の好適な経路により、例えば投与が短時間であるかそれとも慢性的であるかに部分的に応じた、静脈内注射または皮下注射などの注射により、行うことができる。単回投与、または様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むが、これらに限定されない様々な投薬スケジュールが、本明細書に企図される。
【0113】
用語「同時に」は、少なくとも投与の部分が時間的に重複している、2つ以上の治療剤の投与を指すために本明細書で使用される。したがって、同時投与は、1つ以上の薬剤(複数可)の投与が、1つ以上の他の薬剤(複数可)の投与の中止後に続くときの投薬レジメンを含む。
【0114】
II.組成物及び方法
本発明は、PD-L1に結合する新規の抗体を提供する。本発明の抗体は、例えばPD-L1の存在またはPD-L1の発現レベルを(例えば、腫瘍試料を含む生体試料中で)検出するために有用である。
【0115】
A.例となる抗PD-L1抗体
本発明は、例えば診断用途(例えば、免疫組織化学法(IHC)、免疫蛍光法(IF)、及び免疫ブロット(例えば、ウェスタンブロット))のために有用な抗PD-L1抗体を提供する。一例において、本発明は、PD-L1のアミノ酸残基279~290を含むエピトープ(例えば、ヒトPD-L1 SKKQSDTHLEET(配列番号1)のアミノ酸残基279~290)に結合する抗PD-L1抗体を提供し、それは、ヒトPD-L1のN末端細胞質領域の部分である。PD-L1上のエピトープは、コンフォメーション依存性またはコンフォメーション非依存性である手法で認識されて良い。
【0116】
いくつかの事例において、PD-L1のアミノ酸残基279~290に結合する抗PD-L1抗体は、(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される、少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つのHVRを含む。例えば、いくつかの事例において、抗PD-L1抗体は、(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む。いくつかの事例において、抗PD-L1抗体は、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。
【0117】
抗PD-L1抗体がPD-L1のアミノ酸残基279~290に結合し、かつ(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む、いくつかの事例において、抗PD-L1抗体は、次の重鎖可変ドメインフレームワーク領域(FR):(a)QSLEESGGRLVKPDETLTITCTVSGIDLS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むFR-H1、(b)WVRQAPGEGLEWIG(配列番号6)のアミノ酸配列を含むFR-H2、(c)RLTISKPSSTKVDLKITSPTTEDTATYFCGR(配列番号7)のアミノ酸配列を含むFR-H3、または(d)WGPGTLVTVSS(配列番号8)のアミノ酸配列を含むFR-H4を更に含む。抗PD-L1抗体がPD-L1のアミノ酸残基279~290に結合し、かつ(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-H3を含む、いくつかの事例において、抗PD-L1抗体は、次の重鎖可変ドメインフレームワーク領域(FR):(a)QSLEESGGRLVKPDETLTITCTVSGIDLS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むFR-H1、(b)WVRQAPGEGLEWIG(配列番号6)のアミノ酸配列を含むFR-H2、(c)RLTISKPSSTKVDLKITSPTTEDTATYFCGR(配列番号7)のアミノ酸配列を含むFR-H3、及び(d)WGPGTLVTVSS(配列番号8)のアミノ酸配列を含むFR-H4を更に含む。
【0118】
抗PD-L1抗体がPD-L1のアミノ酸残基279~290に結合するいくつかの事例において、該抗体は、(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)QASESVYSNNYLS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)LASTLAS(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)IGGKSSSTDGNA(配列番号11)のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの事例において、これらの抗PD-L1抗体は、次のFR:(a)QSLEESGGRLVKPDETLTITCTVSGIDLS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むFR-H1、(b)WVRQAPGEGLEWIG(配列番号6)のアミノ酸配列を含むFR-H2、(c)RLTISKPSSTKVDLKITSPTTEDTATYFCGR(配列番号7)のアミノ酸配列を含むFR-H3、及び(d)WGPGTLVTVSS(配列番号8)のアミノ酸配列を含むFR-H4を含み、追加的または代替的に、(e)AIVMTQTPSPVSAAVGGTVTINC(配列番号12)のアミノ酸配列を含むFR-L1、(f)WFQQKPGQPPKLLIY(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR-L2、(g)GVPSRFKGSGSGTQFTLTISGVQCDDAATYYC(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR-L3、及び(h)FGGGTEVVVR(配列番号15)のアミノ酸配列を含むFR-L4を含んで良い。
【0119】
いくつかの事例において、PD-L1のアミノ酸残基279~290に結合する抗PD-L1抗体は、配列番号16のアミノ酸配列に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、または89%)、少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%)、または少なくとも95%(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%)の配列同一性またはその配列を有する重鎖可変ドメイン(VH)配列も含んで良い。ある特定の実施形態において、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVH配列は、参照配列(配列番号16)に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗PD-L1抗体は、PD-L1に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態において、総計1~10個のアミノ酸(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸)が、配列番号16において置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外の領域(すなわち、FR内)で発生する。任意選択で、抗PD-L1抗体は、配列番号16におけるVH配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて、含む。特定の実施形態において、VHは、(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H2、及び(c)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-H3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0120】
いくつかの事例において、PD-L1のアミノ酸残基279~290に結合する抗PD-L1抗体は、配列番号17のアミノ酸配列に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、または89%)、少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%)、または少なくとも95%(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%)の配列同一性またはその配列を有する軽鎖可変ドメイン(VL)も含んで良い。ある特定の実施形態において、少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、または99%の同一性を有するVL配列は、参照配列(配列番号17)に対して、置換(例えば、保存的置換)、挿入、または欠失を含有するが、その配列を含む抗PD-L1抗体は、PD-L1に結合する能力を保持する。ある特定の実施形態において、総計1~10個のアミノ酸(例えば、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、または10個のアミノ酸)が、配列番号17において置換、挿入、及び/または欠失されている。ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、HVRの外の領域(すなわち、FR内)で発生する。任意選択で、抗PD-L1抗体は、配列番号17におけるVL配列を、その配列の翻訳後修飾も含めて、含む。特定の実施形態において、VLは、(a)配列番号9のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(b)配列番号10のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(c)配列番号11のアミノ酸配列を含むHVR-L3から選択される1つ、2つ、または3つのHVRを含む。
【0121】
いくつかの事例において、PD-L1のアミノ酸残基279~290に結合する抗PD-L1抗体は、配列番号16及び17のアミノ酸配列に対して少なくとも80%(例えば、少なくとも81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、または89%)、少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、92%、93%、または94%)、または少なくとも95%(例えば、少なくとも96%、97%、98%、または99%)の配列同一性またはそれらの配列をそれぞれ有する、VH及びVL配列の両方を含み、それらの配列の翻訳後修飾を含んでも、含まなくても良い。
【0122】
他の事例において、本発明は、PD-L1に特異的に結合する抗体を提供し、ここで、該抗体は、(a)配列番号2のアミノ酸配列を含むHVR-H1、(b)配列番号3のアミノ酸配列を含むHVR-H2、(c)配列番号4のアミノ酸配列を含むHVR-H3、(d)QASESVYSNNYLS(配列番号9)のアミノ酸配列を含むHVR-L1、(e)LASTLAS(配列番号10)のアミノ酸配列を含むHVR-L2、及び(f)IGGKSSSTDGNA(配列番号11)のアミノ酸配列を含むHVR-L3を含む。いくつかの事例において、これらの抗PD-L1抗体は、次のFR:(a)QSLEESGGRLVKPDETLTITCTVSGIDLS(配列番号5)のアミノ酸配列を含むFR-H1、(b)WVRQAPGEGLEWIG(配列番号6)のアミノ酸配列を含むFR-H2、(c)RLTISKPSSTKVDLKITSPTTEDTATYFCGR(配列番号7)のアミノ酸配列を含むFR-H3、及び(d)WGPGTLVTVSS(配列番号8)のアミノ酸配列を含むFR-H4を含み、追加的または代替的に、(e)AIVMTQTPSPVSAAVGGTVTINC(配列番号12)のアミノ酸配列を含むFR-L1、(f)WFQQKPGQPPKLLIY(配列番号13)のアミノ酸配列を含むFR-L2、(g)GVPSRFKGSGSGTQFTLTISGVQCDDAATYYC(配列番号14)のアミノ酸配列を含むFR-L3、及び(h)FGGGTEVVVR(配列番号15)のアミノ酸配列を含むFR-L4を含んで良い。いくつかの実施形態において、例えば抗PD-L1抗体は、配列番号16及び17のアミノ酸配列の配列をそれぞれ含むVH及びVL配列の両方を含み、翻訳後修飾を含んでも、含まなくても良い。
【0123】
例えば、本発明は、抗PD-L1抗体SP142などの、以下の重及び軽鎖可変領域配列を有する抗PD-L1抗体を特徴とする。
【0124】
SP142の重鎖可変領域のアミノ酸配列は、次の通りである。
【0125】
SP142の軽鎖可変領域のアミノ酸配列は、次の通りである。
【0126】
いくつかの事例において、本発明の抗PD-L1抗体は、PD-L1への結合に対して、上述の抗PD-L1抗体のうちのいずれか1つ以上と競合する抗体である。いくつかの事例において、本発明の抗PD-L1抗体は、上述の抗PD-L1抗体のうちのいずれか1つ以上と同じエピトープまたは実質的に同じエピトープに結合する抗体である。
【0127】
いくつかの事例において、上記の実施形態のうちのいずれかによる抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体であって良く、キメラ、ヒト化、またはヒト抗体を含む。一実施形態において、抗PD-L1抗体は、抗体断片、例えばFv、Fab、Fab′、scFv、ダイアボディ、またはF(ab′)2断片である。別の実施形態において、抗体は、全長抗体、例えば無傷のIgG抗体(例えば、無傷のIgG1抗体)、または本明細書で定義されるような他の抗体クラス若しくはアイソタイプである。
【0128】
本発明の抗PD-L1抗体は、以下の実施例により例証されるように生体試料中のPD-L1の存在または発現レベルの検出にとって有用であるが、治療用途のためにも使用されるかまたは適合されて良いことを理解されたい。
【0129】
更なる態様において、上記の実施形態のうちのいずれかによる抗PD-L1抗体は、以下の項1~5に記載されるような特徴のうちのいずれかを、単独でまたは組み合わせて組み込んで良い。
【0130】
1.抗体親和性
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、≦1μΜ、≦100nΜ、≦10nΜ、≦1nM、≦0.1nM、≦0.01nM、または≦0.001nM(例えば、10-8M以下、例えば、10-8M~10-13M、例えば、10-9M~10-13M)の解離定数(Kd)を有する。
【0131】
一実施形態において、Kdは、次のアッセイにより記載されるように、目的の抗体及びその抗原のFabバージョンで実施される放射標識化抗原結合アッセイ(RIA)により測定される。抗原に対するFabの溶液結合親和性は、標識化されていない抗原の滴定シリーズの存在下で、(125I)標識化抗原の最小濃度でFabを平衡化することにより測定され、次いで、抗Fab抗体コート板と結合した抗原を捕捉する(例えば、ChenらJ.Mol.Biol.293:865-881,1999を参照されたい)。アッセイのための条件を確立するために、MICROTITER(登録商標)多坑井型板(Thermo Scientific)が、50mMの炭酸ナトリウム(pH9.6)中の5μg/mlの捕捉抗Fab抗体(Cappel Labs)で一晩コーティングされ、その後、室温(およそ23℃)で2~5時間、PBS中2%(w/v)のウシ血清アルブミンで遮断される。非吸着性の板(Nunc#269620)において、100pMまたは26pM[125I]抗原は、目的のFabの連続希釈液と混合される(例えば、PrestaらCancer Res.57:4593-4599,1997の抗VEGF抗体、Fab-12の評価と一致する)。次いで、目的のFabは、一晩温置されるが、平衡状態に到達したことを確実にするために、温置をより長時間の間(例えば、約65時間)続けて良い。その後、混合物は捕捉板に移されて、室温で(例えば、1時間)温置される。次いで、溶液は除去され、板は、PBS中0.1%のポリソルベート20(TWEEN-20(商標))で8回洗浄される。板が乾燥すると、150μl/ウェルのシンチラント(MICROSCINT-20(商標);Packard)が追加され、板は、10分間TOPCOUNT(商標)ガンマ計数器(Packard)で数えられる。最大限の結合の20%以下を供する各Fabの濃度が、競合結合アッセイでの使用のために選ばれる。
【0132】
別の実施形態に従って、Kdは、25℃で、約10の応答単位(RU)で固定化抗原CM5チップを用いて、BIACORE(登録商標)-2000またはBIACORE(登録商標)-3000(BIAcore,Inc.,Piscataway,NJ)を使用した表面プラズモン共鳴アッセイを使用して測定される。要するに、カルボキシメチル化デキストランバイオセンサーチップ(CM5,BIAcore Inc.)は、供給者の指示書に従ってN-エチル-N′-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸塩(EDC)及びN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)で活性化される。抗原は、pH4.8の10mMの酢酸ナトリウムで5μg/ml(約0.2μΜ)に希釈され、結合したタンパク質のおよそ10の応答単位(RU)を達成するように5μl/分の流量で投入される。抗原の投入後、反応していない群を遮断するために1Mのエタノールアミンが投入される。動態測定のために、2倍に連続希釈したFab(0.78nM~500nM)が、25℃でおよそ25μl/分の流量で0.05%のポリソルベート20(TWEEN-20(商標))界面活性剤(PBST)を有するPBS中に投入される。会合速度(kon)と解離速度(koff)は、会合及び解離のセンサーグラムを同時に適合させることにより、単純一対一ラングミュア結合モデル(BIACORE(登録商標)評価ソフトウェアバージョン3.2)を使用して計算される。平衡状態解離定数(Kd)は、koff/kon比として計算される。例えば、ChenらJ.Mol.Biol.293:865-881,1999を参照されたい。上記の表面プラズモン共鳴アッセイにより結合速度が106M-1s-1を超える場合、結合速度は、ストップフローを備えた分光光度計(Aviv Instruments)または撹拌キュベットを備えた8000シリーズSLM-AMINCO(商標)分光光度計(ThermoSpectronic)などの分光計で測定される、増加濃度の抗原の存在下で、pH7.2のPBS中、25℃における、20nMの抗抗原抗体(Fab型)の蛍光発光強度(励起=295nM、発光=340nM、16nMの帯域通過)における増加または減少を測定する蛍光消光技術を使用することにより、決定され得る。
【0133】
2.抗体断片
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、抗体断片である。抗体断片には、Fab、Fab′、Fab′-SH、F(ab′)2、Fv、及びscFv断片、ならびに以下に記載される他の断片が含まれるが、これらに限定されない。ある特定の抗体断片の概説に関して、HudsonらNat.Med.9:129-134,2003を参照されたい。scFv断片の概説に関して、例えばPluckthun.The Pharmacology of Monoclonal Antibodies.Vol.113,pp.269-315,Rosenburg and Moore 編.Springer-Verlag,New York,1994を参照されたく、またWO93/16185、ならびに米国特許第5,571,894号及び同第5,587,458号も参照されたい。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、インビボ半減期を増加させるFab及びF(ab′)2断片の考察に関して、米国特許第5,869,046号を参照されたい。
【0134】
ダイアボディは、二価または二重特異性であって良い、2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404,097、WO1993/01161、HudsonらNat.Med.9:129-134,2003、及びHollingerらProc.Natl.Acad.Sci.USA.90:6444-6448,1993を参照されたい。トリアボディ及びテトラボディもまた、HudsonらNat.Med.9:129-134,2003に記載される。
【0135】
単一ドメイン抗体は、抗体の重鎖可変ドメインの全て若しくは一部、または軽鎖可変ドメインの全て若しくは一部を含む抗体断片である。ある特定の実施形態において、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.,Waltham,MA;例えば、米国特許第6,248,516号を参照されたい)。
【0136】
抗体断片は、本明細書に記載されるような、無傷抗体のタンパク質消化、ならびに組換え宿主細胞による産生(例えば大腸菌またはファージ)を含むが、これらに限定されない様々な技法により作製され得る。
【0137】
3.キメラ及びヒト化抗体
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、キメラ抗体である。ある特定のキメラ抗体は、例えば米国特許第4,816,567号、及びMorrisonらProc.Natl.Acad.Sci.USA.81:6851-6855,1984に記載される。一例において、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、または非ヒト霊長類、例えばサル、由来の可変領域)及びヒト定常領域を含む。更なる例において、キメラ抗体は、クラスまたはサブクラスが親抗体のそれから変化した「クラスが転換された」抗体である。キメラ抗体は、それらの抗原結合断片を含む。
【0138】
ある特定の実施形態において、キメラ抗体は、ヒト化抗体である。典型的に、非ヒト抗体は、親の非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持しながら、ヒト化されてヒトに対する免疫原性を低減する。概して、ヒト化抗体は、HVR、例えばCDR(またはこれらの部分)が、非ヒト抗体に由来し、FR(またはこれらの部分)が、ヒト抗体配列に由来する、1つ以上の可変ドメインを含む。ヒト化抗体は任意選択で、ヒト定常領域の少なくとも一部も含むであろう。いくつかの実施形態において、ヒト化抗体中のいくつかのFR残基は、非ヒト抗体(例えば、HVR残基の由来となる抗体)からの対応する残基で置換されて、例えば抗体の特異性または親和性を復元または改善する。
【0139】
ヒト化抗体及びそれらの作製方法は、例えば、AlmagroらFront.Biosci.13:1619-1633,2008で概説され、また、例えば、RiechmannらNature.332:323-329,1988、QueenらProc.Natl.Acad.Sci.USA.86:10029-10033,1989、米国特許第5,821,337号、同第7,527,791号、同第6,982,321号、及び同第7,087,409号、KashmiriらMethods.36: 25-34, 2005(SDR(a-CDR)グラフティングを記載する)、Padlan.Mol.Immunol.28: 489-498, 1991(「リサーフェイシング」を記載する)、DaU′AcquaらMethods.36: 43-60, 2005(「FRシャフリング」を記載する )、ならびにOsbournらMethods 36: 61-68、2005及びKlimkaらBr.J.Cancer.83: 252-260, 2000(「誘導選択(guided selection)」アプローチを記載する)に更に記載される。
【0140】
ヒト化のために使用されて良いヒトフレームワーク領域は、「最良適合」方法を使用して選択されるフレームワーク領域(例えば、Simsら J.Immunol.151:2296,1993を参照されたい)、軽または重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、CarterらProc.Natl.Acad.Sci.USA.89:4285,1992及びPrestaらJ.Immunol.151:2623,1993を参照されたい)、ヒト成熟(体細胞的に突然変異した)フレームワーク領域またはヒト生殖系フレームワーク領域(例えば、AlmagroらFront.Biosci.13:1619-1633,2008を参照されたい)、及びスクリーニングFRライブラリーに由来するフレームワーク領域(例えば、BacaらJ.Biol.Chem.272:10678-10684,1997及びRosokらJ.Biol.Chem.271:22611-22618,1996を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。
【0141】
4.多重特異性抗体
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体である。多重特異性抗体は、少なくとも2つの異なる部位に対して結合特異性を有するモノクローナル抗体である。ある特定の実施形態において、結合特異性のうちの1つは、PD-L1に関し、他のものは、任意の他の抗原に関する。ある特定の実施形態において、二重特異性抗体は、PD-L1の2つの異なるエピトープに結合して良い。二重特異性抗体は、PD-L1を発現させる細胞に細胞毒を局所化するためにも使用されて良い。二重特異性抗体は、全長抗体または抗体断片として調製され得る。
【0142】
多重特異性抗体を作製するための技法には、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖対の組換え共発現(MilsteinらNature.305:537, 1983、WO 93/08829、及びTrauneckerらEMBO J.10: 3655, 1991), and 「knob-in-hole」 engineering(例えば、米国特許第5,731,168号を参照されたい)が含まれるが、これらに限定されない。多重特異性抗体は、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するために静電式ステアリング効果を遺伝子操作すること(WO2009/089004A1)、2つ以上の抗体または断片を架橋すること(例えば、米国特許第4,676,980号及びBrennanらScience.229:81,1985を参照されたい)、二重特異性抗体を作製するためのロイシンジッパーを使用すること(例えば、KostelnyらJ.Immunol.148(5):1547-1553,1992を参照されたい)、二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術を使用すること(例えば、HollingerらProc.Natl.Acad.Sci.USA.,90:6444-6448,1993を参照されたい)、及び単鎖Fv(sFv)二量体を使用すること(例えば、GruberらJ.Immunol.152:5368,1994を参照されたい)、ならびに例えば、TuttらJ.Immunol.147:60,1991に記載されるような三重特異性抗体を調製することによっても作製されて良い。
【0143】
「オクトパス抗体」を含む、3つ以上の機能抗原結合部位を有する遺伝子操作された抗体も、本明細書に含まれる(例えば、US2006/0025576A1を参照されたい)。
【0144】
本明細書の抗体または断片は、PD-L1、ならびに別の異なる抗原に結合する抗原結合部位を含む「二重作用FAb」または「DAF」も含む(例えば、US2008/0069820を参照されたい)。
【0145】
5.抗体変異体
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体のアミノ酸配列変異体が企図される。例えば、抗体の結合親和性及び/または他の生物学的特性を改善することが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列変異体は、抗体をコードするヌクレオチド配列に適切な修飾を導入することによるか、またはペプチド合成により調製されて良い。かかる修飾には、例えば抗体のアミノ酸配列からの残基の欠失、及び/またはアミノ酸配列中への残基の挿入、及び/またはアミノ酸配列中の残基の置換が含まれる。欠失、挿入、及び置換の任意の組み合わせは、最終構築物を達成するようになされ得るが、但し、最終構築物は所望の特質、例えば抗原結合性を保有することを条件とする。
【0146】
a)置換、挿入、及び欠失変異体
ある特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸置換を有する抗体変異体が、提供される。置換変異誘発のための目的の部位は、HVR及びFRを含む。保存的置換を表1の見出し「好ましい置換」の下に示す。より実質的な変化は表1の見出し「例となる置換」の下に提供され、アミノ酸側鎖クラスに関連して、以下で更に記載される。アミノ酸置換は、目的の抗体中に導入され得、産物は、所望の活性、例えば保持/改善された抗原結合、低下された免疫原性、または改善されたADCC若しくはCDCに関してスクリーニングされる。
表1.例となる、かつ好ましいアミノ酸置換
アミノ酸は共通の側鎖特性に従ってグループ化されて良い:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln、
(3)酸性:Asp、Glu、
(4)塩基性:His、Lys、Arg、
(5)鎖の配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro、
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスと交換することを伴うであろう。
【0147】
置換変異体の1つのタイプは、親抗体(例えば、ヒト化抗体またはヒト抗体)の1つ以上の超可変領域残基を置換することを伴う。概して、更なる研究のために選択された変異体(複数可)は、親抗体に対してある特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)における修飾(例えば、改善)を有し、かつ/または親抗体のある特定の生物学的特性を実質的に保持するであろう。例となる置換変異体は、親和性成熟抗体であり、それは、例えば本明細書で記載されるものなどのファージディスプレイに基づく親和性成熟法を使用して簡便に生成されて良い。要するに、1つ以上のHVR残基は、突然変異され、変異体抗体は、ファージ上に表示され、特定の生物学的活性(例えば、結合親和性)に関してスクリーニングされる。
【0148】
改変(例えば、置換)は、例えば抗体親和性を改善するためにHVR内で行われて良い。かかる改変は、HVR「ホットスポット」、すなわち体細胞成熟プロセスの間、高頻度で突然変異を経験するコドンによりコードされる残基(例えば、Chowdhury.Methods Mol.Biol.207:179-196,2008を参照されたい)、及び/またはSDR(a-CDR)において行われて良く、得られた変異体VHまたはVLは結合親和性に関して試験される。二次ライブラリーからの構築及び再選択による親和性成熟が、例えばHoogenboomらMethods in Molecular Biology.178:1-37,O’Brienらeds.,Human Press,Totowa,NJ,2001に記載されている。親和性成熟法のいくつかの実施形態において、多様性は、種々の方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、またはオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のうちのいずれかにより、成熟させるために選ばれた可変遺伝子中に導入される。次いで、二次ライブラリーが創出される。次いで、ライブラリーは、所望の親和性を有する任意の抗体変異体を特定するためにスクリーニングされる。多様性を導入するための別の方法はHVR指向アプローチを伴い、その方法では、いくつかのHVR残基(例えば、一度に4~6個の残基)がランダム化される。抗原結合で伴われるHVR残基は、例えばアラニンスキャニング変異誘発またはモデリングを使用して、特異的に特定され得る。特にHVR-H3及びHVR-L3がしばしば標的とされる。
【0149】
ある特定の実施形態において、置換、挿入、または欠失は、かかる改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低減しない限り、1つ以上のHVR内で起こって良い。例えば、結合親和性を実質的に低減しない保存的改変(例えば、本明細書で提供される保存的置換)は、HVR内で行われて良い。かかる改変は、HVR「ホットスポット」またはSDRの外であって良い。上記で提供された変異体VH及びVL配列のある特定の実施形態において、各HVRは改変されていないか、または1個、2個、若しくは3個以下のアミノ酸置換を含有するかのどちらかである。
【0150】
変異誘発の標的となって良い抗体の残基または領域の特定にとって有用な方法は、CunninghamらScience.244:1081-1085,1989により記載される「アラニンスキャニング変異誘発」と呼称される。この方法において、残基または標的残基のグループ(例えば、Arg、Asp、His、Lys、及びGluなどの荷電残基)は、特定され、かつ中性または負に荷電されたアミノ酸(例えば、アラニンまたはポリアラニン)により交換されて、抗体と抗原との相互作用が影響を受けたかどうかを決定する。更なる置換が、初期置換に対して機能感受性を示すアミノ酸箇所に導入され得る。代替的に、または追加的に、抗原-抗体の結晶構造抗体は、抗体と抗原との間の接触点を特定するために複雑になる。かかる接触残基及び隣接残基は、置換のための候補として標的とされ得るか、または消去され得る。変異体は、それらが所望の特性を含有するかどうかを決定するためにスクリーニングされて良い。
【0151】
アミノ酸配列の挿入は、長さにおいて1個の残基から100個以上の残基を含有するポリペプチドに及ぶアミノ末端及び/またはカルボキシル末端融合物、ならびに単一または複数のアミノ酸残基の配列間挿入を含む。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体は、抗体の血清半減期を増加させる酵素(例えば、ADEPTのための)またはポリペプチドへの、抗体のN末端またはC末端への融合を含む。
【0152】
b)グリコシル化変異体
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化される程度に増加または低下させるために改変される。グリコシル化部位の抗体への追加または欠失は、1つ以上のグリコシル化部位が創出または除去されるように、アミノ酸配列を改変することにより簡便に果たされて良い。
【0153】
抗体がFc領域を含む場合、そこに付着する炭水化物は、改変されて良い。哺乳動物細胞により産生されるネイティブ抗体は典型的に、概してN連鎖によりFc領域のCH2ドメインのAsn297へ付着する分岐状の二分岐のオリゴ糖を含む。例えば、WrightらTIBTECH.15:26-32,1997を参照されたい。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えばマンノース、Nアセチルグルコサミン(GlcNAc)、ガラクトース、及びシアル酸、ならびに二分岐のオリゴ糖構造体の「幹」にあるGlcNAcに付着するフコースを含んで良い。いくつかの実施形態において、本発明の抗体内のオリゴ糖の修飾は、ある特定の改善された特性を有する抗体変異体を創出するために行われて良い。
【0154】
一実施形態において、Fc領域に(直接的または間接的に)付着するフコースが欠如している炭水化物構造を有する抗体変異体が提供される。例えば、かかる抗体内のフコースの量は、1%~80%、1%~65%、5%~65%、または20%~40%であって良い。フコースの量は、例えばWO2008/077546に記載されるように、MALDI-TOF質量分光分析により測定されるAsn297に付着する全てのグリコ構造体(例えば、複合、混成、及び高マンノース構造体)の合計に対する、Asn297における糖鎖内のフコースの平均量を計算することにより決定される。Asn297は、Fc領域内の位置297(Fc領域残基のEU番号付け)周辺箇所にあるアスパラギン残基を指すが、Asn297は、抗体のわずかな配列変形に因り、位置297の約±3のアミノ酸上流または下流、すなわち294~300の箇所にもあって良い。かかるフコシル化変異体は、ADCC機能を改善して良い。例えば、米国特許公開第US2003/0157108号及び同第US2004/0093621号を参照されたい。「脱フコシル化」または「フコース欠損」抗体変異体に関連する刊行物の例としては、US2003/0157108、WO2000/61739、WO2001/29246、US2003/0115614、US2002/0164328、US2004/0093621、US2004/0132140、US2004/0110704、US2004/0110282、US2004/0109865、WO2003/085119、WO2003/084570、WO2005/035586、WO2005/035778、WO2005/053742、WO2002/031140、OkazakiらJ.Mol.Biol.336:1239-1249, 2004、及びYamane-OhnukiらBiotech.Bioeng.87: 614, 2004が含まれる。脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例には、タンパク質フコシル化が不足するLecl3 CHO細胞(RipkaらArch.Biochem.Biophys.249:533-545,1986、US2003/0157108、及びWO2004/056312、特に実施例11)、及びアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(例えば、Yamane-OhnukiらBiotech.Bioeng.87:614,2004、KandaらBiotechnol.Bioeng.94(4):680-688,2006、及びWO2003/085107を参照されたい)が含まれる。
【0155】
二分されたオリゴ糖を有する抗体変異体が更に提供され、例えばここでは、抗体のFc領域に付着する二分岐のオリゴ糖は、GlcNAcにより二分される。かかる抗体変異体は、フコシル化及び/または改善されたADCC機能を低減して良い。かかる抗体変異体の例は、例えばWO2003/011878、米国特許第6,602,684号、及びUS2005/0123546に記載される。Fc領域に付着するオリゴ糖中で少なくとも1つのガラクトース残基を有する抗体変異体も、提供される。かかる抗体変異体は、CDC機能を改善して良い。かかる抗体変異体は、例えばWO1997/30087、WO1998/58964、及びWO1999/22764に記載される。
【0156】
c)Fc領域変異体
ある特定の実施形態において、1つ以上のアミノ酸修飾は、本明細書で提供される本発明の抗PD-L1抗体(例えば、SP142)のFc領域中に導入されて良く、それにより、Fc領域変異体を生成する。Fc領域変異体は、1つ以上のアミノ酸位置でアミノ酸修飾(例えば、置換)を含むヒトFc領域配列(例えば、ヒトIgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4Fc領域)を含んで良い。
【0157】
ある特定の実施形態において、本発明は、いくつかではあるが全てではないエフェクター機能を保有する抗体変異体を企図し、それにより、インビボでの抗体の半減期は重要ではあるが、ある特定のエフェクター機能(補体及びADCCなどの)が不要または有害である用途において、それが望ましい候補になる。インビトロ及び/またはインビボ細胞毒性アッセイが、CDC及び/またはADCC活性の低減/減損を確認するために実施され得る。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイが、抗体はFcyR結合が欠如している(つまり、ADCC活性が欠如している可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持していることを確実にするために実施され得る。ADCCを媒介するための初代細胞、NK細胞は、FcyRIIIのみを発現するが、一方で単球は、FcyRI、FcyRII、及びFcyRIIIを発現する。造血細胞上でのFcR発現は、RavetchらAnnu.Rev.Immunol.9:457-492,1991のページ464の表3にまとめられる。目的の分子のADCC活性を評価するためのインビトロアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号及び同第5,821,337号、HellstromらProc.Natl.Acad.Sci.USA.83:7059-7063,1986、HellstromらProc.Natl Acad.Sci.USA.82:1499-1502,1985、ならびにBruggemannらJ.Exp.Med.166:1351-1361,1987に記載される。代替的に、非放射性アッセイが利用されて良い(例えば、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞毒性アッセイ(CellTechnology,Inc.Mountain View,CA、及びCytoTox96(登録商標)非放射性細胞毒性アッセイ(Promega,Madison,WI)を参照されたい。かかるアッセイにとって有用なエフェクター細胞は、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞を含む。代替的に、または追加的に、目的の分子のADCC活性は、インビボ、例えばClynesらProc.Natl.Acad.Sci.USA.95:652-656,1998で開示されるものなどの動物モデルにおいて評価されて良い。C1q結合アッセイが、抗体はC1qに結合することができず、つまりCDC活性が欠如していることを確認するために行われても良い。例えば、WO2006/029879及びWO2005/100402のC1q及びC3c結合ELISAを参照されたい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイが実施されて良い(例えば、Gazzano-SantoroらJ.Immunol.Methods.202:163,1996、CraggらBlood.101:1045-1052,2003、及びCraggらBlood 103:2738-2743,2004を参照されたい。FcRn結合及びインビボ排除/半減期の決定は、当技術分野で既知の方法を使用しても実施され得る(例えば、PetkovaらIntl.Immunol.18(12):1759-1769,2006を参照されたい)。
【0158】
低減したエフェクター機能を有する抗体は、Fc領域残基238、265、269、270、297、327、及び329のうちの1つ以上の置換を有するものを含む(米国特許第6,737,056号)。かかるFc突然変異体は、アラニンに対して残基265及び297の置換を有する所謂「DANA」Fc突然変異体を含む、アミノ酸位置265、269、270、297、及び327のうちの2つ以上で置換を有するFc突然変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。
【0159】
FcRsへの改善されたまたは減弱された結合を有するある特定の抗体変異体が、記載される。例えば、米国特許第6,737,056号、WO2004/056312、及びShieldsらJ.Biol.Chem.9(2):6591-6604,2001を参照されたい。
【0160】
ある特定の実施形態において、抗体変異体は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えばFc領域の位置298、333、及び/または334(残基のEU番号付け)における置換を有するFc領域を含む。
【0161】
いくつかの実施形態において、改変は、例えば米国特許第6,194,551号、WO99/51642、及びIdusogieらJ.Immunol.164:4178-4184,2000に記載されるような、改変された(すなわち、改善されたかまたは減弱されたかのどちらか)C1q結合及び/または補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらすFc領域内でなされる。
【0162】
胎児への母性IgGsの移動を引き起こす、増加した半減期及び改善された新生児Fc受容体(FcRn)への結合を有する抗体(GuyerらJ.Immunol.117:587,1976及びKimら,J.Immunol.24:249,1994)は、米国特許出願第2005/0014934号に記載される。これらの抗体は、Fc領域をそこにある1つ以上の置換と共に含み、それは、Fc領域の、FcRnへの結合を改善する。かかるFc変異体は、Fc領域残基:238、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、または434のうちの1つ以上における置換、例えばFc領域残基434の置換を有するものを含む(米国特許第7,371,826号)。Fc領域変異体の他の例に関する、DuncanらNature.322:738-740,1988、米国特許第5,648,260号及び同第5,624,821号、ならびにWO94/29351も参照されたい。
【0163】
d)システイン遺伝子操作された抗体変異体
ある特定の実施形態において、抗体の1個以上の残基がシステイン残基で置換される、システイン遺伝子操作された抗体、例えば「チオMAb」を創出することが望ましい場合がある。特定の実施形態において、置換された残基は、抗体の採取可能な部位で発生する。これらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基はそれにより、抗体の採取可能な部位に位置され、本明細で更に記載されるように、薬物部分またはリンカー薬物部分などの他の部分に抗体を複合するために使用され、免疫複合体を創出して良い。ある特定の実施形態において、次の残基のうちのいずれか1つ以上は、システインで置換されて良い:軽鎖のV205(Kabat番号付け)、重鎖のA118(EU番号付け)、及び重鎖Fc領域のS400(EU番号付け)。システイン遺伝子操作された抗体は、例えば米国特許第7,521,541号に記載されるように生成されて良い。
【0164】
e)抗体誘導体
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される本発明の抗PD-L1抗体(例えば、SP142)は、当技術分野で既知であり、容易に利用可能である追加の非タンパク質性部分を含有するために更に修飾されて良い。抗体の誘導化にとって好適な部分には、水溶性ポリマーが含まれるが、これらに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマーまたはランダムコポリマーのどちらか)、及びデキストランまたはポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロプロピレングリコールホモポリマー、プロリプロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えば、グリセロール)、ポリビニルアルコール、ならびにこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、その水中での安定性に因り、製造において有益性を有して良い。ポリマーは、任意の分子量であって良く、分岐状または非分岐状であって良い。抗体に付着するポリマーの数は、変化して良く、1つを超えるポリマーが付着する場合、それらは、同じかまたは異なる分子であり得る。概して、誘導化のために使用されるポリマーの数及び/または型は、改善される抗体の特定の特性または機能、抗体誘導体が定義された条件の下、治療で使用されるかどうかなどが含まれるが、これらに限定されない考慮に基づいて決定され得る。
【0165】
別の実施形態において、放射線に曝露されることにより選択的に加熱されて良い抗体及び非タンパク質性部分の複合体が、提供される。一実施形態において、非タンパク質性部分は、カーボンナノチューブである(KamらProc.Natl.Acad.Sci.USA.102:11600-11605,2005)。放射線は、任意の波長であって良く、通常の細胞に害を与えないが抗体非タンパク質性部分に近位の細胞が殺滅される温度まで非タンパク質性部分を加熱する波長を含むが、これらに限定されない。
【0166】
B.組換え方法及び組成物
抗体は、例えば米国特許第4,816,567号に記載されるように組換え方法及び組成物を使用して作製されて良い。一実施形態において、本明細書に記載される抗PD-L1抗体(例えば、SP142)をコードする単離核酸が、提供される。かかる核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/またはVHを含むアミノ酸配列をコードして良い(例えば、抗体の軽及び/または重鎖)。更なる実施形態において、かかる核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が、提供される。更なる実施形態において、かかる核酸を含む宿主細胞が、提供される。1つのかかる実施形態において、宿主細胞は、(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗体のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター及び抗体のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクターを含む(例えば、これらで形質転換されている)。一実施形態において、宿主細胞は、真核細胞性、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞またはリンパ球細胞(例えば、Y0、NSO、Sp20細胞)である。一実施形態において、抗PD-L1抗体の作製方法が提供され、ここで本方法は、抗体の発現にとって好適な条件下で、上記で提供されるように、抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養すること、及び任意選択で、宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から抗体を回復することを含む。
【0167】
抗PD-L1抗体(例えば、SP142)の組換え作製に関して、例えば上述のような抗体をコードする核酸が単離され、宿主細胞内での更なるクローニング及び/または発現のために1つ以上のベクター中に挿入される。かかる核酸は、従来の手順を使用して容易に単離及び配列されて良い(例えば、抗体の重及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することにより)。
【0168】
抗体コードベクターのクローニングまたは発現にとって好適な宿主細胞には、本明細書に記載される原核生物細胞または真核生物細胞が含まれる。例えば、抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要ではないときに細菌中で産生されて良い。細菌中の抗体断片及びポリペプチドの発現に関して、例えば米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照されたい。また、大腸菌内の抗体断片の発現を記載する、Charlton.Methods in Molecular Biology.Vol.248,pp.245-254,B.K.C.Lo,版,Humana Press,Totowa,NJ,2003も参照されたい。発現後、抗体は、可溶性画分中の細菌細胞ペーストから単離されて良く、更に精製され得る。
【0169】
原核生物に加えて、グリコシル化系路が「ヒト化」されている菌類及び酵母菌株を含む糸状菌類または酵母などの真核微生物は、抗体コードベクターにとって好適なクローニングまたは発現宿主であり、それらは、部分的または完全にヒトグリコシル化されたパターンを有する抗体の作製をもたらす。Gerngross.Nat.Biotech.22:1409-1414,2004、及びLiらNat.Biotech.24:210-215,2006を参照されたい。
【0170】
グリコシル化された抗体の発現にとって好適な宿主細胞は、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)にも由来する。無脊椎動物細胞の例には、植物及び昆虫細胞が含まれる。昆虫細胞と併せて使用されて良い多数のバキュロウイルス菌株は、特にスポドプテラフルギペルダ細胞のトランスフェクションのために特定されている。
【0171】
植物細胞培養物も、宿主細胞として活用され得る。例えば米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号を参照されたい(遺伝子組換え植物内で抗体を作製するためのPLANTIBODIES(商標)技術を記載する)。
【0172】
脊椎動物細胞も、宿主として使用されて良い。例えば、混濁液中で成長するように適合される哺乳動物細胞株は、有用である場合がある。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40により形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胚性腎臓株(例えば、GrahamらJ.Gen Virol.36:59,1977に記載されるような293または293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えば、Mather.Biol.Reprod.23:243-251,1980に記載されるようなTM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌腫細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK、バッファローラット肝臓細胞(BRL 3 A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝臓細胞(Hep G2)、マウス乳房腫瘍(MMT 060562)、例えばMatherらAnnals N.Y.Acad.Sci.383:44-68,1982に記載されるようなTRI細胞、MRC5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR」CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(UrlaubらProc.Natl.Acad.Sci.USA.77:4216,1980)、ならびにY0、NS0、及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体作製にとって好適なある特定の哺乳動物宿主細胞株の概説に関して、例えばYazakiらMethods in Molecular Biology.Vol.248,pp.255-268,B.K.C.Lo,編,Humana Press,Totowa,NJ,2003を参照されたい。
【0173】
C.アッセイ
本明細書で提供される抗PD-L1抗体は、当技術分野で既知の様々なアッセイにより、それらの物理的/化学特性及び/または生物学的活性に関して特定されるか、スクリーニングされるか、またはそれらを特徴として良い。
【0174】
1.結合アッセイ及び他のアッセイ
一態様において、本発明の抗体は、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、免疫ブロット(例えば、ウェスタンブロッティング)、フローサイトメトリー(例えば、FACS(商標))、免疫組織化学法、免疫蛍光法などの既知の方法によりその抗原結合活性に関して試験される。
【0175】
別の態様において、競合アッセイは、PD-L1に結合するための本発明の抗体のうちのいずれか1つ(例えば、抗PD-L1抗体SP142)と競合する抗体を特定するために使用されて良い。ある特定の実施形態において、かかる競合抗体は、本発明の抗体のうちのいずれか1つ(例えば、抗PD-L1抗体SP142)により結合される同じエピトープ(例えば、線状またはコンフォメーションエピトープ)に結合する。抗体が結合するエピトープをマッピングするための例となる方法の詳細は、Morris“Epitope Mapping Protocols,”in Methods in Molecular Biology Vol.66(Humana Press,Totowa,NJ,1996)で提供される。
【0176】
例となる競合アッセイにおいて、固定化PD-L1は、PD-L1に結合する第1の標識化抗体(例えば、抗PD-L1抗体SP142)、及びPD-L1に結合することに関して第1の抗体と競合するその能力に関して試験されている第2の非標識化抗体を含む溶液中に温置される。第2の抗体は、ハイブリドーマ上清中に存在し得る。対照として、固定化PD-L1は、第2の非標識化抗体ではなく第1の標識化抗体を含む溶液中に温置される。第1の抗体をPD-L1に結合するのに許容的な条件下で温置後、過剰非結合抗体は除去され、固定化PD-L1に関連する標識の量が測定される。固定化PD-L1に関連する標識の量は、対照試料に対して試験試料中で実質的に低減され、次いでそれは、第2の抗体が、PD-L1に結合するために第1の抗体と競合していることを示す。例えば、HarlowらAntibodies:A Laboratory Manual.Ch.14(Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,NY,1988)を参照されたい。
【0177】
2.検出アッセイ
一態様において、アッセイは、例えば免疫組織化学法(IHC)、免疫蛍光法(IF)、免疫ブロット(例えば、ウェスタンブロッティング)、フローサイトメトリー(例えば、FACS(商標))、または酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)アッセイにおいてPD-L1の存在を検出するために有用な抗PD-L1抗体を特定するために提供される。ある特定の実施形態において、本発明の抗体は、かかる活性に関して試験される。
【0178】
D.免疫複合体
本発明は、放射性同位体などの、1つ以上の標識及び/または薬剤に複合する本明細書の抗PD-L1抗体を含む免疫複合体も提供する。
【0179】
一実施形態において、免疫複合体は、放射性原子に複合されて放射性複合体を形成する、本明細書に記載される抗体を含む。種々の放射性同位体が、放射性複合体の作製のために利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体が挙げられる。放射性複合体が検出のために使用されるとき、それは、シンチグラフィー研究のための放射性原子、例えばtc99m若しくはI123、または核磁気共鳴(NMR)画像法(別名、磁気共鳴画像法、MRI)のためのスピン標識、例えば、再びヨード-123、ヨード-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、若しくは鉄を含んで良い。
【0180】
抗PD-L1抗体及び標識または薬剤の複合体は、N-サクシニミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸塩(SPDP)、サクシニミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボン酸塩(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(アジプイミド酸ジメチルHClなど)、活性エステル(スベリン酸ジサクシニミジルなど)、アルデヒド(グルタルアルデヒドなど)、ビス-アジド化合物(ビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミンなど)、ビス-ジアゾニウム誘導体(ビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミンなど)、ジイソシアネート(トルエン2,6-ジイソシアネートなど)、及びビス活性フッ素化合物(1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼンなど)などの種々の二官能性タンパク質結合薬剤を使用して作製されて良い。例えば、リシン免疫毒素は、Vitettaら,Science238:1098(1987)に記載されるように調製され得る。炭素-14-標識化1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドの、抗体への複合のための例となるキレート剤である。WO94/11026を参照されたい。リンカーは、標識または薬剤の放出を容易にする「解離性リンカー」であって良い。例えば、酸不安定性リンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、またはジスルフィド含有リンカー(Chariら,Cancer Res.52:127-131(1992)、米国特許第5,208,020号)が、使用されて良い.
【0181】
本明細書のイムヌオ複合体は、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、ならびに市販されるSVSB(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aからの)(サクシニミジル-(4-ビニルスルホン)安息香酸塩)が含まれるが、これらに限定されない架橋剤試薬で調製されたかかる複合体を明白に企図するが、これらに限定されない。
【0182】
E.診断及び検出のための方法及び組成物
ある特定の実施形態において、本明細書で提供される抗PD-L1抗体(例えば、上記の項Aの例えば「例となる抗PD-L1抗体」に記載されるSP142または任意の他の抗PD-L1抗体)は、生体試料中のPD-L1の存在を検出するために有用である。用語「検出する」は、本明細書で使用される場合、量的または質的検出を包含する。
【0183】
一事例において、診断または検出方法で使用するための抗PD-L1抗体(例えば、SP142)が、提供される。別の事例において、本発明は、診断または検出方法で使用するための試薬の製造における抗PD-L1抗体(例えば、SP142)の使用を提供する。一事例において、例えば以下に記載される生体試料中のPD-L1の存在の検出方法が、提供される。ある特定の実施形態において、本方法は、抗PD-L1抗体をPD-L1に結合するのに許容的な条件下で、生体試料を本明細書に記載される抗PD-L1抗体と接触させることと、複合体が抗PD-L1抗体とPD-L1との間で形成されているかどうかを検出することと、を含む。かかる方法は、インビトロまたはインビボ方法であって良い。本発明の抗PD-L1抗体(例えば、SP142)が、例えば免疫組織化学法(IHC)、免疫蛍光法(IF)、免疫ブロット(例えば、ウェスタンブロッティング)、フローサイトメトリー(例えば、FACS(商標))、及び酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を含む、例えば免疫アッセイで使用され得る。一実施形態において、抗PD-L1抗体は、例えばPD-L1が患者の選択のためのバイオマーカーである、抗PD-L1抗体を用いた治療に適格な対象を選択するために使用される。本発明は、障害(例えば、癌または免疫機能不全)を患う対象の診断方法における抗PD-L1抗体の使用を更に提供し、本方法は、試料を本発明の抗PD-L1抗体(例えば、SP142)と接触させることにより、対象から取得した試料中のPD-L1の存在または発現レベルを決定することと、結合抗体の存在を検出することと、を含む。
【0184】
例えば、本方法は、癌を患う対象の診断方法における抗PD-L1抗体の使用を提供し、本方法は、試料を本発明の抗PD-L1抗体(例えば、SP142)と接触させることにより、対象から取得した試料中のPD-L1の存在または発現レベルを決定することと、結合抗体の存在を検出することと、を含む。いくつかの事例において、試料は、組織試料、全血試料、血清試料、及び血漿試料からなる群から選択される。いくつかの事例において、組織試料は、腫瘍試料である。いくつかの事例において、腫瘍試料は、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、間質細胞、及びこれらの任意の組み合わせを含む。
【0185】
本発明は、障害(例えば、癌または免疫機能不全)を患う対象の診断方法で使用するための試薬の製造における抗PD-L1抗体の使用をなおも更に提供し、本方法は、試料を本発明の抗PD-L1抗体(例えば、SP142)と接触させることにより、対象から取得した試料中のPD-L1の存在または発現レベルを決定することと、結合抗体の存在を検出することと、を含む。
【0186】
例えば、本方法は、癌を患う対象の診断方法で使用するための試薬の製造における抗PD-L1抗体の使用を提供し、本方法は、試料を本発明の抗PD-L1抗体(例えば、SP142)と接触させることにより、対象から取得した試料中のPD-L1の存在または発現レベルを決定することと、結合抗体の存在を検出することと、を含む。いくつかの事例において、試料は、組織試料、全血試料、血清試料、及び血漿試料からなる群から選択される。いくつかの事例において、組織試料は、腫瘍試料である。いくつかの事例において、腫瘍試料は、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、間質細胞、及びこれらの任意の組み合わせを含む。
【0187】
別の事例において、本発明は、治療に応答する可能性が高い、障害(例えば、癌または免疫機能不全)を患う対象を特定するための方法を提供し、本方法は、試料を本発明の抗PD-L1抗体(例えば、SP142)と接触させることにより、対象から取得した試料中のPD-L1の存在または発現レベルを決定することと、結合抗体の存在を検出することと、を含み、ここで、試料中のPD-L1の存在または発現レベルは、対象が治療に応答する可能性が高いことを示す。
【0188】
例えば、本発明は、抗癌療法を用いた治療に応答する可能性が高い、癌を患う対象を特定するための方法を提供し、本方法は、試料を本発明の抗PD-L1抗体(例えば、SP142)と接触させることにより、対象から取得した試料中のPD-L1の存在または発現レベルを決定することと、結合抗体の存在を検出することと、を含み、ここで、試料中のPD-L1の存在または発現レベルは、対象が抗癌療法を用いた治療に応答する可能性が高いことを示す。いくつかの事例において、試料は、組織試料、全血試料、血清試料、及び血漿試料からなる群から選択される。いくつかの事例において、組織試料は、腫瘍試料である。いくつかの事例において、腫瘍試料は、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、間質細胞、及びこれらの任意の組み合わせを含む。
【0189】
更に別の事例において、本発明は、障害(例えば、癌または免疫機能不全)を患う個体の、治療への応答性を予測するための方法を提供し、本方法は、試料を本発明の抗PD-L1抗体(例えば、SP142)と接触させることにより、対象から取得した試料中のPD-L1の存在または発現レベルを決定することと、結合抗体の存在を検出することと、を含み、ここで、試料中のPD-L1の存在または発現レベルは、対象が治療に応答する可能性がより高いことを示す。
【0190】
例えば、本発明は、癌を患う個体の、抗癌療法を用いた治療への応答性を予測するための方法を提供し、本方法は、試料を本発明の抗PD-L1抗体(例えば、SP142)と接触させることにより、対象から取得した試料中のPD-L1の存在または発現レベルを決定することと、結合抗体の存在を検出することと、を含み、ここで、試料中のPD-L1の存在または発現レベルは、対象が抗癌療法を用いた治療に応答する可能性がより高いことを示す。いくつかの事例において、試料は、組織試料、全血試料、血清試料、及び血漿試料からなる群から選択される。いくつかの事例において、組織試料は、腫瘍試料である。いくつかの事例において、腫瘍試料は、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、間質細胞、及びこれらの任意の組み合わせを含む。
【0191】
更に別の事例において、本発明は、障害(例えば、癌または免疫機能不全)を患う対象が治療による有益性を示すであろう可能性があることを決定するための方法を提供し、本方法は、試料を本発明の抗PD-L1抗体(例えば、SP142)と接触させることにより、対象から取得した試料中のPD-L1の存在または発現レベルを決定することと、結合抗体の存在を検出することと、を含み、ここで、試料中のPD-L1の存在または発現レベルは、対象が治療を用いた治療による有益性を示すであろう可能性があることを示す。
【0192】
例えば、本発明は、癌を患う対象が抗癌療法を用いた治療による有益性を示すであろう可能性があることを決定するための方法を提供し、本方法は、試料を本発明の抗PD-L1抗体(例えば、SP142)と接触させることにより、対象から取得した試料中のPD-L1の存在または発現レベルを決定することと、結合抗体の存在を検出することと、を含み、ここで、試料中のPD-L1の存在または発現レベルは、対象が抗癌療法を用いた治療による有益性を示すであろう可能性があることを示す。いくつかの事例において、試料は、組織試料、全血試料、血清試料、及び血漿試料からなる群から選択される。いくつかの事例において、組織試料は、腫瘍試料である。いくつかの事例において、腫瘍試料は、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、間質細胞、及びこれらの任意の組み合わせを含む。
【0193】
別の事例において、本発明は、障害(例えば、癌または免疫機能不全)を患う対象のための治療を選択するための方法を提供し、本方法は、試料を本発明の抗PD-L1抗体(例えば、SP142)と接触させることにより、対象から取得した試料中のPD-L1の存在または発現レベルを決定することと、結合抗体の存在を検出することと、試料中のPD-L1の存在または発現レベルに基づいて、対象のための抗癌療法を選択することと、を含む。
【0194】
例えば、本発明は、癌を患う対象のための治療を選択するための方法を提供し、本方法は、試料を本発明の抗PD-L1抗体(例えば、SP142)と接触させることにより、対象から取得した試料中のPD-L1の存在または発現レベルを決定することと、結合抗体の存在を検出することと、試料中のPD-L1の存在または発現レベルに基づいて、対象のための抗癌療法を選択することと、を含む。いくつかの事例において、試料は、組織試料、全血試料、血清試料、及び血漿試料からなる群から選択される。いくつかの事例において、組織試料は、腫瘍試料である。いくつかの事例において、腫瘍試料は、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、間質細胞、及びこれらの任意の組み合わせを含む。
【0195】
前述の方法のうちのいずれにおいても、腫瘍試料は、例えば面積にして、腫瘍試料の約1%以上(例えば、約1%以上、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、または約99%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内で、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。例えば、いくつかの事例において、腫瘍試料は、例えば面積にして、腫瘍試料の約1%~約99%未満(例えば、約1%~約95%未満、約1%~約90%未満、約1%~約85%未満、約1%~約80%未満、約1%~約75%未満、約1%~約70%未満、約1%~約65%未満、約1%~約60%未満、約1%~約55%未満、約1%~約50%未満、約1%~約40%未満、約1%~約35%未満、約1%~約30%未満、約1%~約25%未満、約1%~約20%未満、約1%~約15%未満、約1%~約10%未満、約1%~約5%未満、約5%~約95%未満、約5%~約90%未満、約5%~約85%未満、約5%~約80%未満、約5%~約75%未満、約5%~約70%未満、約5%~約65%未満、約5%~約60%未満、約5%~約55%未満、約5%~約50%未満、約5%~約40%未満、約5%~約35%未満、約5%~約30%未満、約5%~約25%未満、約5%~約20%未満、約5%~約15%未満、約5%~約10%未満、約10%~約95%未満、約10%~約90%未満、約10%~約85%未満、約10%~約80%未満、約10%~約75%未満、約10%~約70%未満、約10%~約65%未満、約10%~約60%未満、約10%~約55%未満、約10%~約50%未満、約10%~約40%未満、約10%~約35%未満、約10%~約30%未満、約10%~約25%未満、約10%~約20%未満、約10%~約15%未満)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内で、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。例えば、いくつかの事例において、腫瘍は、例えば面積にして、腫瘍試料の約1%以上~5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内で、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。他の事例において、腫瘍は、例えば面積にして、腫瘍試料の約5%以上~10%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内で、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。他の事例において、腫瘍は、例えば面積にして、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内で、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。
【0196】
前述の方法のうちのいずれにおいても、腫瘍試料は、腫瘍試料中の腫瘍細胞の約1%以上(例えば、約1%以上、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、または約99%以上)において、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。例えば、いくつかの事例において、腫瘍試料は、腫瘍試料中の腫瘍細胞の約1%~約99%未満(例えば、約1%~約95%未満、約1%~約90%未満、約1%~約85%未満、約1%~約80%未満、約1%~約75%未満、約1%~約70%未満、約1%~約65%未満、約1%~約60%未満、約1%~約55%未満、約1%~約50%未満、約1%~約40%未満、約1%~約35%未満、約1%~約30%未満、約1%~約25%未満、約1%~約20%未満、約1%~約15%未満、約1%~約10%未満、約1%~約5%未満、約5%~約95%未満、約5%~約90%未満、約5%~約85%未満、約5%~約80%未満、約5%~約75%未満、約5%~約70%未満、約5%~約65%未満、約5%~約60%未満、約5%~約55%未満、約5%~約50%未満、約5%~約40%未満、約5%~約35%未満、約5%~約30%未満、約5%~約25%未満、約5%~約20%未満、約5%~約15%未満、約5%~約10%未満、約10%~約95%未満、約10%~約90%未満、約10%~約85%未満、約10%~約80%未満、約10%~約75%未満、約10%~約70%未満、約10%~約65%未満、約10%~約60%未満、約10%~約55%未満、約10%~約50%未満、約10%~約40%未満、約10%~約35%未満、約10%~約30%未満、約10%~約25%未満、約10%~約20%未満、約10%~約15%未満)において、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。例えば、いくつかの事例において、腫瘍試料は、腫瘍試料中の腫瘍細胞の約1%以上~5%未満において、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。他の事例において、腫瘍は、腫瘍試料中の腫瘍細胞の約5%以上~10%未満において、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。他の事例において、腫瘍は、腫瘍試料中の腫瘍細胞の約10%以上において、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。
【0197】
前述の方法のうちのいずれにおいても、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)、扁平上皮細胞癌(肺の腺癌腫及び肺の扁平上皮癌腫を含む)、小細胞肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌、膵臓癌、神経膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌腫、白血病、及び頭頸部癌であって良い。いくつかの事例において、癌は、NSCLCである。いくつかの実施形態において、NSCLCは、肺の線癌腫または肺の扁平上皮癌腫である。いくつかの実施形態において、NSCLCは、扁平上皮NSCLCまたは非扁平上皮NSCLCである。
【0198】
前述の方法のうちのいずれかの有益性及び/または応答は、当技術分野で既知であり、かつ/または本明細書に記載される任意の、例えば(1)減速及び完全阻止を含む疾患進行(例えば、癌進行)のある程度の阻害、(2)腫瘍サイズの低減、(3)隣接する末梢臓器及び/若しくは組織への癌細胞浸潤の阻害(すなわち、低減、減速、または完全停止)、(4)メタタシスの阻害(すなわち、低減、減速、または完全停止)、(5)疾患若しくは障害(例えば、癌)に関連する1つ以上の症状のある程度の軽減、(6)全生存期間及び無増悪生存期間を含む生存期間の長さの増加若しくは延長、ならびに/または(9)治療後の所定の時点における低下した死亡率であって良い。いくつかの事例において、かかる有益性には、生存期間(全生存期間及び無増悪生存期間を含む)を延長すること、客観的奏効(完全奏効または部分奏効を含む)をもたらすこと、または癌の徴候若しくは症状を改善することのうちのいずれか1つ以上が含まれる。
【0199】
前述の方法のうちのいずれも、試料中のPD-L1の発現レベルに基づいて、治療有効量の抗癌療法を対象に施すことを更に含んで良い。いくつかの事例において、抗癌療法は、PD-1軸結合アンタゴニストを含む。PD-1軸結合アンタゴニストは、当該技術分野で既知であるか、または本明細書に記載される任意のPD-1軸結合アンタゴニストであって良い。
【0200】
例えば、いくつかの事例において、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニスト、PD-1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストからなる群から選択される。いくつかの事例において、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L1結合アンタゴニストである。いくつかの事例において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。他の事例において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1への結合を阻害する。更に他の事例において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、B7-1への結合を阻害する。いくつかの事例において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、PD-1及びB7-1の両方への結合を阻害する。いくつかの事例において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの実施形態において、本抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A(アテゾリズマブ(atezolizumab))、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ(durvalumab))、及びMSB0010718C(アベルマブ(avelumab))からなる群から選択される。
【0201】
いくつかの事例において、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-1結合アンタゴニストである。例えば、いくつかの事例において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、そのリガンド結合パートナーのうちの1つ以上への結合を阻害する。いくつかの事例において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1への結合を阻害する。他の事例において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L2への結合を阻害する。更に他の事例において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、PD-L1及びPD-L2の両方への結合を阻害する。いくつかの事例において、PD-1結合アンタゴニストは、抗体である。いくつかの事例において、抗体は、MDX1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、CT-011(ピディリズマブ)、MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される。いくつかの事例において、PD-1結合アンタゴニストは、Fc融合タンパク質である。例えば、いくつかの事例において、Fc融合タンパク質は、AMP-224である。
【0202】
いくつかの事例において、本方法は、有効量の第2の治療剤を患者に投与することを更に含む。いくつかの事例において、第2の治療剤は、細胞毒性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、血管新生阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0203】
前述の実施形態のうちのいずれかで使用される試料は、以下の項Fの「生体試料」で記載されるようであって良い。いくつかの実施形態において、腫瘍試料は、腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、間質細胞、またはこれらの任意の組み合わせを含む。前述の実施形態のうちのいずれにおいても、腫瘍試料は、ホルマリン固定及びパラフィン包埋(FFPE)腫瘍試料、保管用腫瘍試料、新鮮腫瘍試料、または凍結腫瘍試料であって良い。
【0204】
ある特定の実施形態において、試料中のPD-L1の存在及び/または発現レベル/量は、IHC及び染色プロトコルを使用して決定されて良い。組織切片のIHC染色は、試料中のタンパク質の存在を決定または検出する信頼できる方法であると示されている。一実施形態において、PD-L1の発現レベルは、(a)本発明の抗PD-L1抗体、例えばSP142を用いた、試料(対象から取得した腫瘍試料など)のIHC分析を実施することと、(b)試料中のPD-L1の存在及び/または発現レベルを決定することと、を含む方法を使用して決定される。いくつかの実施形態において、IHC染色強度は、参照に対して、決定される。いくつかの実施形態において、参照するのは、参照値である。いくつかの実施形態において、参照するのは、参照試料である(例えば、対照細胞株染色試料、非癌状態患者からの組織試料、PD-L1発現の定められたレベルを有することで知られる参照試料(例えば、定義されたIC%またはTC%を有する参照試料)、またはPD-L1陰性腫瘍試料)。
【0205】
IHCは、形態的染色及び/または原位置ハイブリッド形成法(例えば、FISH)などの追加の技法と組み合わせて実施されて良い。IHCの2つの一般的な方法、直接的及び間接的アッセイが、利用可能である。第1のアッセイに従って、抗体の、標的抗原への結合が、直接的に決定される。この直接的アッセイは、更なる抗体相互作用無しに視覚化され得る、蛍光性タグまたは酵素標識化一次抗体などの標識化試薬を使用する。典型的な間接的アッセイにおいて、非複合一次抗体は、抗原に結合し、次いで標識化二次抗体が、一次抗体に結合する。二次抗体が、酵素標識に複合する場合、発色性または蛍光発生基質が、抗原の視覚化を提供するために追加される。いくつかの二次抗体が一次抗体上で異なるエピトープと反応して良いため、シグナル増幅が発生する。IHCのために使用される一次及び/または二次抗体は典型的に、検出可能部分で標識化されるであろう。概して次の部類にグループ化される多数の標識が、利用可能である:(a)35S、14C、1251、3H、及び131Iなどの放射性同位体、(b)コロイド金粒子、(c)希土キレート(ユーロピウムキレート)、Texas Red、ローダミン、フルオレセイン、ダンシル、リサミン、ウンベリフェロン、フィコクリセリン(phycocrytherin)、フィコシアニン、若しくはSPECTRUM ORANGE7及びSPECTRUM GREEN7などの市販されるフルオロフォア、ならびに/または上記のうちのいずれか1つ以上の誘導体を含むが、これらに限定されない蛍光標識、(d)様々な酵素基質標識が、利用可能であり、米国特許第4,275,149号が、これらのいくつかの概説を提供する。酵素標識の例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ;例えば、米国特許第4,737,456号を参照されたい)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)などのペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖質オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環式オキシダーゼ(ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなど)、ラクトペルオキシダーゼ、マイクロペルオキシダーゼなどが含まれる。
【0206】
酵素-基質の組み合わせの例には、例えば基質として水素ペルオキシダーゼを有するホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRPO)、発色基質としてパラ-ニトロフェニルリン酸塩を有するアルカリホスファターゼ(AP)、及び発色基質(例えば、p-ニトロフェニル-β-D-ガラクトシダーゼ)または蛍光発生基質(例えば、4-メチルアンベリフェリル-β-D-ガラクトシダーゼ)を有するβ-D-ガラクトシダーゼ(β-D-Gal)が含まれる。これらの遺伝子的概説に関して、例えば米国特許第4,275,149号及び同第4,318,980号を参照されたい。
【0207】
試験片は、例えば手動で、または自動化染色装置(例えば、VentanaベンチマークXTまたはベンチマークULTRA装置)を使用して調製されて良い。つまり、調製された試験片は、乗せられてカバーガラスをかぶせられて良い。次いで、スライド評価を、例えば顕微鏡を使用して決定し、当技術分野で日常的に使用される染色強度基準を利用して良い。一実施形態において、腫瘍からの細胞及び/または組織を、IHCを使用して調査するとき、染色は概して、(試料中に存在し得る間質または周辺組織と対照的に)腫瘍細胞(複数可)及び/または組織において決定または評価されることを理解されたい。いくつかの実施形態において、腫瘍からの細胞及び/または組織を、IHCを使用して調査するとき、染色は、腫瘍内免疫細胞または腫瘍周囲免疫細胞を含む腫瘍浸潤免疫細胞において決定することか、または評価することを含むことが理解される。いくつかの実施形態において、PD-L1の存在は、IHCにより、試料の>0%、試料の少なくとも1%、試料の少なくとも5%、試料の少なくとも10%、試料の少なくとも15%、試料の少なくとも15%、試料の少なくとも20%、試料の少なくとも25%、試料の少なくとも30%、試料の少なくとも35%、試料の少なくとも40%、試料の少なくとも45%、試料の少なくとも50%、試料の少なくとも55%、試料の少なくとも60%、試料の少なくとも65%、試料の少なくとも70%、試料の少なくとも75%、試料の少なくとも80%、試料の少なくとも85%、試料の少なくとも90%、試料の少なくとも95%以上で検出される。試料を、本明細書に記載される、例えば病理学者による基準のうちのいずれかを使用して、または自動化画像分析を使用して点数化して良い。
【0208】
前述の方法のうちのいずれかのいくつかの実施形態において、PD-L1の発現レベルは、例えばIHCを使用して腫瘍細胞、腫瘍浸潤免疫細胞、またはこれらの組み合わせにおいて検出される。腫瘍浸潤免疫細胞には、腫瘍内免疫細胞、腫瘍周囲免疫細胞、またはこれらの任意の組み合わせ、及び他の腫瘍間質細胞(例えば、線維芽細胞)が含まれるが、これらに限定されない。かかる腫瘍浸潤免疫細胞は、Tリンパ球(CD8+Tリンパ球及び/またはCD4+Tリンパ球など)、Bリンパ球、または顆粒球(好中球、好酸球、好塩基球)、単球、マクロファージ、樹状細胞(例えば、互いに組み合う樹状細胞)、組織球、及びナチュラルキラー細胞を含む他の骨髄系細胞であり得る。いくつかの実施形態において、PD-L1に対する染色は、膜染色、細胞質染色、及びこれらの組み合わせとして検出される。他の実施形態において、PD-L1の不在は、試料中の染色の不在、または染色がないこととして検出される。いくつかの実施形態において、本方法は、例えば本明細書に記載されるような(例えば、実施例5に記載されるようなIC%を参照されたい)、検出可能な量のPD-L1を発現する腫瘍浸潤免疫細胞により覆われた腫瘍面積の割合を決定することを含む。いくつかの実施形態において、本方法は、例えば本明細書に記載されるような(例えば、実施例5を参照されたい)、腫瘍試料中の検出可能な量のPD-L1を発現する腫瘍細胞の割合を決定することを含む。
【0209】
ある特定の事例において、標識化抗PD-L1抗体が、提供される。標識には、直接的に検出される標識または部分(蛍光性、発色性、高電子密度性、化学発光性、及び放射標識など)、ならびに例えば、酵素反応または分子相互作用を介して間接的に検出される、酵素またはリガンドなどの部分が含まれるが、これらに限定されない。例となる標識には、放射性同位体32P、14C、125I、3H、及び131I、希土キレートまたはフルオレセイン及びその誘導体などのフルオロフォア、ローダミン及びその誘導体、ダンシル、ウンベリフェロン、ルセリフェラーゼ(luceriferase)、例えばホタルルシフェラーゼ及び細菌ルシフェラーゼ(米国特許第4,737,456号)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖質オキシダーゼ、例えばグルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、及びグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ、HRP、ラクトペルオキシダーゼ、またはマイクロペルオキシダーゼなどの、過酸化水素を利用して染料前駆体を酸化させる酵素と共役させた、ウリカーゼ及びキサンチンオキシダーゼなどの複素環式オキシダーゼ、ビオチン/アビジン、スピン標識、バクテリオファージ標識、安定フリーラジカルなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0210】
診断及び/または検出のための上記の方法のうちのいずれかが、非複合抗PD-L1抗体の代わりに、またはそれに加えて上述のような本発明の免疫複合体を使用して行われて良いことも理解される。
【0211】
F.生体試料
ある特定の実施形態において、本発明の抗PD-L1抗体(例えば、上記の項Aの例えば「例となる抗PD-L1抗体」に記載されるSP142または任意の他の抗PD-L1抗体)は、当該技術分野で既知であるか、または本明細書に記載される方法を使用して、生体試料中のPD-L1の存在を検出するために使用され得る。
【0212】
いくつかの事例において、生体試料は、組織または細胞試料を含む。例えば、生体試料には、例えば乳房、結腸、肺、腎臓、骨、脳、筋肉、胃、膵臓、膀胱、卵巣、子宮の正常及び癌状態組織などの正常または癌患者からの細胞または組織、ならびに心臓、胚性、及び胎盤組織が含まれて良い。
【0213】
ある特定の事例において、組織または細胞試料の供給源は、新鮮、凍結、及び/または保管された臓器または組織試料または生体組織または吸引液;血液または任意の血液組成成分;脳脊髄液、羊膜液、腹腔液、または組織液などの体液;対象の妊娠期間または発育における任意の時期の細胞からの固形組織であって良い。いくつかの実施形態において、生体試料は、インビトロ組織または細胞培養物から取得される。本明細書の生体試料の例には、腫瘍生体組織、循環腫瘍細胞、血清または血漿、循環血漿タンパク質、腹水、腫瘍に由来するかまたは腫瘍の様な特性を示す初代細胞培養物または細胞株、ならびにホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)腫瘍試料または凍結腫瘍試料などの保管された腫瘍試料が含まれるが、これらに限定されない。
【0214】
いくつかの実施形態において、生体試料は、防腐剤、抗凝血剤、緩衝剤、栄養剤、抗生物質、またはそれらに類するものなどの、本質的に組織と自然に入り混じらない化合物を含有する。ある特定の実施形態において、生体試料は、1つ以上の固定剤に曝露されており、かつ/またはそれを含有する。本発明の方法及び組成物と共に使用され得る固定剤には、ホルマリン、グルタルアルデヒド、オスミウムテトラオキシド、酢酸、エタノール、アセトン、ピクリン酸、クロロホルム、重クロム酸カリウム及び塩化第二水銀、ならびに/またはマイクロ波加熱若しくは凍結により安定させることが含まれる。
【0215】
いくつかの実施形態において、生体試料は、免疫機能不全を有するか、その素因があるか、またはそれに関して検査されている対象からのものである。ある特定の実施形態において、免疫機能不全は、T細胞機能不全障害である。いくつかの実施形態において、T細胞機能不全障害は、未解決の急性感染、慢性感染、または腫瘍免疫である。ある特定の実施形態において、免疫機能不全は、自己免疫疾患である。いくつかの実施形態において、自己免疫疾患は、自己免疫リウマチ障害(リウマチ性関節炎、シェーグレン症候群、強皮症、SLE及びループス腎炎などのループス、多発性筋炎皮膚筋炎、クリオグロブリン血症、抗リン脂質抗体症候群、ならびに乾癬性関節炎を含む)、自己免疫消化管及び肝臓障害(炎症性腸疾患(例えば、潰瘍性大腸炎及びクローン病)、自己免疫胃炎及び悪性貧血、自己免疫肝炎、原発性胆汁性肝硬変、原発性硬化性胆管炎、ならびにセリアック病を含む)、脈管炎(チャーグストラウス脈管炎を含むANCA陰性脈管炎及びANCA関連脈管炎、ウェゲナー肉芽腫症、ならびに顕微鏡的多発血管炎を含む)、自己免疫神経障害(多発性硬化症、オプソクローヌスミオクローヌス症候群、重症筋無力症、視神経脊髄炎、パーキンソン病、アルツハイマー病、及び自己免疫多発ニューロパチーを含む)、腎臓障害(糸球体腎炎、グッドパスチャー症候群、及びベルガー病を含む)、自己免疫皮膚科学的障害(乾癬、じんま疹、皮疹、尋常性天疱瘡、水疱性類天疱瘡、及び皮膚エリテマトーデスを含む)、血液障害(血小板減少性紫斑病、血栓性血小板減少性紫斑病、輸血後紫斑病、及び自己免疫溶血性貧血を含む)、アテローム性動脈硬化症、ブドウ膜炎、自己免疫聴覚疾患(内耳疾患及び聴覚損失を含む)、ベーチェット病、レイノー症候群、臓器移植、または自己免疫内分泌障害(インスリン依存性糖尿病(IDDM)などの糖尿病関連自己免疫疾患、アジソン病、及び自己免疫甲状腺疾患(グレーブス病及び甲状腺炎を含む)を含む)である。
【0216】
他の実施形態において、生体試料は、癌を有するか、その素因があるか、またはそれに関して検査されている対象からのものである。ある特定の実施形態において、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)(肺の腺癌腫及び肺の扁平上皮癌腫を含む)、癌腫、リンパ腫(ホジキン及び非ホジキンリンパ腫を含む)、芽細胞腫、肉腫、白血病、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌、膵臓癌、神経膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜若しくは子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌腫、白血病及び他のリンパ増殖性障害、または様々な型の頭頸部癌である。特定の実施形態において、癌は、NSCLCである。いくつかの実施形態において、NSCLCは、肺の線癌腫または肺の扁平上皮癌腫である。いくつかの実施形態において、NSCLCは、非扁平上皮NSCLCまたは扁平上皮NSCLCである。
【0217】
G.PD-L1の存在及び/または発現レベルに基づく治療方法
本発明は、本発明の抗PD-L1抗体を使用して決定されるような、対象から取得した試料中のPD-L1の存在及び/または発現レベルに基づいて、障害(例えば、癌または免疫機能不全)を患う対象の治療方法を提供する。いくつかの場合、本方法は、本発明の抗PD-L1抗体を使用して決定されるような、対象から取得した試料中のPD-L1の存在及び/または発現レベルに基づいて、治療(例えば、抗癌療法)を施すことを伴う。いくつかの事例において、治療方法は、本発明の抗PD-L1抗体を使用して決定されるような、PD-L1の存在及び/または発現レベルを、例えば本明細書に記載されるように、対象が抗癌療法から有益性を被るか、またはそれに応答する可能性と相関させることを伴う。
【0218】
本方法は、障害(例えば、癌または免疫機能不全)を患う対象の治療方法を提供し、本方法は、試料を本発明の抗PD-L1抗体(例えば、SP142)と接触させることにより、対象から取得した試料中のPD-L1の存在または発現レベルを決定することと、結合抗体の存在を検出することと、治療有効量の治療を対象に施すことと、を含む。
【0219】
例えば、本方法は、癌を患う対象の治療方法を提供し、本方法は、試料を本発明の抗PD-L1抗体(例えば、SP142)と接触させることにより、対象から取得した試料中のPD-L1の存在または発現レベルを決定することと、結合抗体の存在を検出することと、治療有効量の抗癌療法を対象に施すことと、を含む。いくつかの事例において、試料は、組織試料、全血試料、血清試料、及び血漿試料からなる群から選択される。いくつかの事例において、組織試料は、腫瘍試料である。いくつかの事例において、腫瘍試料は、腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍細胞、間質細胞、及びこれらの任意の組み合わせを含む。前述の方法のうちのいずれにおいても、腫瘍試料は、例えば面積にして、腫瘍試料の約1%以上(例えば、約1%以上、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、または約99%以上)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内で、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。例えば、いくつかの事例において、腫瘍試料は、例えば面積にして、腫瘍試料の約1%~約99%未満(例えば、約1%~約95%未満、約1%~約90%未満、約1%~約85%未満、約1%~約80%未満、約1%~約75%未満、約1%~約70%未満、約1%~約65%未満、約1%~約60%未満、約1%~約55%未満、約1%~約50%未満、約1%~約40%未満、約1%~約35%未満、約1%~約30%未満、約1%~約25%未満、約1%~約20%未満、約1%~約15%未満、約1%~約10%未満、約1%~約5%未満、約5%~約95%未満、約5%~約90%未満、約5%~約85%未満、約5%~約80%未満、約5%~約75%未満、約5%~約70%未満、約5%~約65%未満、約5%~約60%未満、約5%~約55%未満、約5%~約50%未満、約5%~約40%未満、約5%~約35%未満、約5%~約30%未満、約5%~約25%未満、約5%~約20%未満、約5%~約15%未満、約5%~約10%未満、約10%~約95%未満、約10%~約90%未満、約10%~約85%未満、約10%~約80%未満、約10%~約75%未満、約10%~約70%未満、約10%~約65%未満、約10%~約60%未満、約10%~約55%未満、約10%~約50%未満、約10%~約40%未満、約10%~約35%未満、約10%~約30%未満、約10%~約25%未満、約10%~約20%未満、約10%~約15%未満)を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内で、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。例えば、いくつかの事例において、腫瘍は、例えば面積にして、腫瘍試料の約1%以上~5%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内で、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。他の事例において、腫瘍は、例えば面積にして、腫瘍試料の約5%以上~10%未満を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内で、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。他の事例において、腫瘍は、例えば面積にして、腫瘍試料の約10%以上を構成する腫瘍浸潤免疫細胞内で、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。
【0220】
前述の方法のうちのいずれにおいても、腫瘍試料は、腫瘍試料中の腫瘍細胞の約1%以上(例えば、約1%以上、約2%以上、約3%以上、約4%以上、約5%以上、約10%以上、約15%以上、約20%以上、約25%以上、約30%以上、約35%以上、約40%以上、約50%以上、約55%以上、約60%以上、約65%以上、約70%以上、約80%以上、約85%以上、約90%以上、約95%以上、または約99%以上)において、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。例えば、いくつかの事例において、腫瘍試料は、腫瘍試料中の腫瘍細胞の約1%~約99%未満(例えば、約1%~約95%未満、約1%~約90%未満、約1%~約85%未満、約1%~約80%未満、約1%~約75%未満、約1%~約70%未満、約1%~約65%未満、約1%~約60%未満、約1%~約55%未満、約1%~約50%未満、約1%~約40%未満、約1%~約35%未満、約1%~約30%未満、約1%~約25%未満、約1%~約20%未満、約1%~約15%未満、約1%~約10%未満、約1%~約5%未満、約5%~約95%未満、約5%~約90%未満、約5%~約85%未満、約5%~約80%未満、約5%~約75%未満、約5%~約70%未満、約5%~約65%未満、約5%~約60%未満、約5%~約55%未満、約5%~約50%未満、約5%~約40%未満、約5%~約35%未満、約5%~約30%未満、約5%~約25%未満、約5%~約20%未満、約5%~約15%未満、約5%~約10%未満、約10%~約95%未満、約10%~約90%未満、約10%~約85%未満、約10%~約80%未満、約10%~約75%未満、約10%~約70%未満、約10%~約65%未満、約10%~約60%未満、約10%~約55%未満、約10%~約50%未満、約10%~約40%未満、約10%~約35%未満、約10%~約30%未満、約10%~約25%未満、約10%~約20%未満、約10%~約15%未満)において、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。例えば、いくつかの事例において、腫瘍試料は、腫瘍試料中の腫瘍細胞の約1%以上~5%未満において、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。他の事例において、腫瘍は、腫瘍試料中の腫瘍細胞の約5%以上~10%未満において、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。他の事例において、腫瘍は、腫瘍試料中の腫瘍細胞の約10%以上において、PD-L1の検出可能な発現レベルを有し得る。
【0221】
前述の方法のうちのいずれにおいても、癌は、非小細胞肺癌(NSCLC)(肺の腺癌腫及び肺の扁平上皮癌腫を含む)、扁平上皮細胞癌、小細胞肺癌、腹膜の癌、肝細胞癌、消化管癌、膵臓癌、神経膠腫、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、肝細胞腫、乳癌、結腸癌、結腸直腸癌、子宮内膜または子宮癌腫、唾液腺癌腫、腎臓癌、肝臓癌、前立腺癌、外陰部癌、甲状腺癌、肝癌腫、白血病、及び頭頸部癌であって良い。いくつかの事例において、癌は、NSCLCである。いくつかの実施形態において、NSCLCは、肺の線癌腫または肺の扁平上皮癌腫である。いくつかの実施形態において、NSCLCは、非扁平上皮NSCLCまたは扁平上皮NSCLCである。
【0222】
前述の方法のうちのいずれにおいても、抗癌療法は、PD-1軸結合アンタゴニストを含んで良い。いくつかの事例において、本方法は、腫瘍試料中の腫瘍細胞及び/または腫瘍浸潤免疫細胞内のPD-L1の発現レベルに基づいて、治療有効量のPD-1軸結合アンタゴニストを患者に投与することを含んで良い。PD-1軸結合アンタゴニストは、当該技術分野で既知であるか、または本明細書に記載される任意のPD-1軸結合アンタゴニストであって良い。
【0223】
例えば、いくつかの事例において、PD-1軸結合アンタゴニストには、PD-1結合アンタゴニスト、PD-L1結合アンタゴニスト、及びPD-L2結合アンタゴニストが含まれる。PD-1(プログラム死1)は、当技術分野で「プログラム細胞死1」、「PDCD1」、「CD279」、及び「SLEB2」とも称される。例となるヒトPD-1は、ユニットプロットKB/スイスプロット受託番号Q15116に示される。PD-L1(プログラム死リガンド1)は、当技術分野で「プログラム細胞死1リガンド1」、「PDCD1LG1」、「CD274」、「B7-H」、及び「PDL1」とも称される。例となるヒトPD-L1は、ユニットプロットKB/スイスプロット受託番号Q9NZQ7.1に示される。PD-L2(プログラム死リガンド2)は、当技術分野で「プログラム細胞死1リガンド2」、「PDCD1LG2」、「CD273」、「B7-DC」、「Btdc」、及び「PDL2」とも称される。例となるヒトPD-L2は、ユニットプロットKB/スイスプロット受託番号Q9BQ51に示される。いくつかの実施形態において、PD-1、PD-L1、及びPD-L2は、ヒトPD-1、PD-L1、及びPD-L2である。
【0224】
いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、PD-1の、そのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様において、PD-1リガンド結合パートナーは、PD-L1及び/またはPD-L2である。別の実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、PD-L1の、その結合リガンドへの結合を阻害する分子である。具体的な態様において、PD-L1結合パートナーは、PD-1及び/またはB7-1である。別の実施形態において、PD-L2結合アンタゴニストは、PD-L2の、そのリガンド結合パートナーへの結合を阻害する分子である。具体的な態様において、PD-L2結合リガンドパートナーは、PD-1である。アンタゴニストは、抗体、これらの抗原結合断片、免疫アドヘシン、融合タンパク質、またはオリゴペプチドであって良い。
【0225】
いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、例えば以下で記載されるような、抗PD-1抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、MDX-1106(ニボルマブ)、MK-3475(ペンブロリズマブ)、CT-011(ピディリズマブ)MEDI-0680(AMP-514)、PDR001、REGN2810、及びBGB-108からなる群から選択される。MDX-1106、別名MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、またはニボルマブは、WO2006/121168に記載される抗PD-1抗体である。MK-3475、別名ペンブロリズマブまたはランブロリズマブは、WO2009/114335に記載される抗PD-1抗体である。CT-011、別名hBAT、hBAT-1、またはピディリズマブは、WO2009/101611に記載される抗PD-1抗体である。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、免疫アドヘシン(例えば、定常領域(例えば、免疫グロブリン配列のFc領域)に融合するPD-L1またはPD-L2の細胞外またはPD-1結合部分を含む免疫アドヘシンである。いくつかの実施形態において、PD-1結合アンタゴニストは、AMP-224である。AMP-224、別名B7-DCIgは、WO2010/027827及びWO2011/066342に記載されるPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。
【0226】
いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、MDX-1106である。「MDX-1106」に対する代替的な名称には、MDX-1106-04、ONO-4538、BMS-936558、及びニボルマブが含まれる。いくつかの実施形態において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(CAS登録番号:946414-94-4)である。
【0227】
いくつかの実施形態において、PD-1軸結合アンタゴニストは、PD-L2結合アンタゴニストである。いくつかの実施形態において、PD-L2結合アンタゴニストは、抗PD-L2抗体(例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体、またはキメラ抗体)である。いくつかの実施形態において、PD-L2結合アンタゴニストは、免疫アドヘシンである。
【0228】
いくつかの実施形態において、PD-L1結合アンタゴニストは、抗PD-L1抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、PD-L1とPD-1及び/またはPD-L1とB7-1との間の結合を阻害することができる。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、モノクローナル抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、Fab、Fab′-SH、Fv、scFv、及び(Fab′)2断片からなる群から選択される抗体断片である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、ヒト化抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、ヒト抗体である。いくつかの実施形態において、抗PD-L1抗体は、YW243.55.S70、MPDL3280A(アテゾリズマブ(atezolizumab))、MDX-1105、MEDI4736(デュルバルマブ(durvalumab))、及びMSB0010718C(アベルマブ(avelumab))からなる群から選択される。抗体YW243.55.S70は、WO2010/077634及び米国特許第8,217,149号に記載される抗PD-L1であり、これらの各々の全体が参照により本明細書に組み込まれる。MDX-1105、別名BMS-936559は、WO2007/005874に記載される抗PD-L1抗体である。MEDI4736は、WO2011/066389及びUS2013/034559に記載される抗PD-L1モノクローナル抗体である。本発明の方法にとって有用な抗PD-L1抗体の例、及びこれらを作製するための方法は、PCT特許出願WO2010/077634、WO2007/005874、WO2011/066389、米国特許第8,217,149号、及びUS2013/034559に記載され、これらの各々の全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0229】
前述の実施形態のうちのいずれにおいても、単離抗PD-L1抗体は、ヒトPD-L1、例えばユニットプロットKB/スイスプロット受託番号Q9NZQ7.1に示されるヒトPD-L1、またはこれらの変異体に結合し得る。
【0230】
更に別の実施形態において、本明細書に記載の抗体のうちのいずれかをコードする単離核酸が提供される。いくつかの実施形態において、核酸は、前述の抗PD-L1抗体のうちのいずれかをコードする核酸の発現にとって好適なベクターを更に含む。更に別の具体的な態様において、ベクターは、核酸の発現にとって好適な宿主細胞内にある。更に別の具体的な態様において、宿主細胞は、真核生物細胞または原核生物細胞である。更に別の具体的な態様において、真核生物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞などの哺乳動物細胞である。
【0231】
抗体またはこれらの抗原結合断片は、例えばかかる抗体または断片を作製するのに好適な条件下で、発現にとって好適な形態にある前述の抗PD-L1抗体または抗原結合断片のうちのいずれかをコードする核酸を含有する宿主細胞を培養することと、抗体または断片を回復することと、を含む方法により、当技術分野で既知の方法を使用して作製されて良い。上記で列挙される実施形態のうちのいずれかで使用するためのかかるPD-1軸結合アンタゴニスト抗体(例えば、抗PD-L1抗体、抗PD-1抗体、及び抗PD-L2抗体)、または本明細書に記載される他の抗体(例えば、PD-L1の発現レベルの検出のための抗PD-L1抗体)は、項Aの「例となる抗PD-L1抗体」の1~5の小節に記載される特徴のうちのいずれかを、単独でまたは組み合わせて有して良いことが明白に企図される。
【0232】
いくつかの事例において、前述の方法のうちのいずれも、有効量の第2の治療剤を患者に投与することを更に含む。いくつかの事例において、第2の治療剤は、細胞毒性剤、成長阻害剤、放射線療法剤、血管新生阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0233】
本明細書に記載される方法で活用される組成物(例えば、抗癌療法剤)は、例えば静脈内に、筋肉内に、皮下に、皮内に、経皮的に、動脈内に、腹腔内に、病変内に、頭蓋内に、関節内に、前立腺内に、胸膜内に、気管内に、くも膜下腔内に、鼻腔内に、腟内に、直腸内に、局所的に、腫瘍内に、腹膜に、結膜下に、肺胞内に、粘膜に、心膜内に、臍帯内に、眼内に、眼窩内に、経口的に、局所的に、経皮的に、硝子体内に(例えば、硝子体内注射)、点眼により、吸入により、注射により、移植により、注入により、継続的注入により、標的細胞を直接的に浸す局所灌流により、カテーテルにより、洗浄により、クリームに入れて、または脂質組成物に入れて、を含む任意の好適な方法により投与され得る。本明細書に記載される方法で活用される組成物は、全身的にまたは局所的にも投与され得る。投与方法は、様々な因子(例えば、投与されている化合物または組成物、及び治療されている状態、疾患、または障害の深刻度)に応じて変化し得る。いくつかの実施形態において、抗癌療法(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト)は、静脈内に、筋肉内に、皮下に、局所的に、経口的に、経皮的に、腹腔内に、眼窩内に、移植により、吸入により、くも膜下腔内に、脳室内に、または鼻腔内に投与される。投薬は、任意の好適な経路により、例えば投与が短時間であるかそれとも慢性的であるかに部分的に応じた、静脈内注射または皮下注射などの注射により、行うことができる。単回投与、または様々な時点にわたる複数回投与、ボーラス投与、及びパルス注入を含むが、これらに限定されない様々な投薬スケジュールが、本明細書に企図される。
【0234】
本明細書に記載される治療剤(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト(例えば、抗体、結合ポリペプチド、及び/または小分子))は、良質な医療のための原則と一致する形で、製剤、投薬、投与されて良い。この文脈において考慮される因子には、治療されている特定の障害、治療されている特定の哺乳動物、各患者の臨床状態、障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、投与スケジュール、及び医師に既知の他の因子が含まれる。治療剤(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト)は、問題の障害を予防するかまたは治療するために現在使用される1つ以上の薬剤である必要はないが、任意選択でそれらと共に製剤され、かつ/またはそれらと同時に投与される。かかる他の薬剤の有効量は、製剤中に存在する治療剤(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト)の量、障害または治療の型、及び上記で考察される他の因子に応じる。これらは概して、本明細書に記載されるのと同じ用量及び投与経路で、または本明細書に記載される用量の約1~99%か、または適切であると実証的/臨床的に決定された任意の用量及び任意の経路により使用される。
【0235】
癌(例えば、非小細胞肺癌)を予防するかまたは治療するために、本明細書に記載される治療剤(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト)の適切な用量は(1つ以上の他の追加の治療剤と単独または組み合わせて使用されるとき)、治療される疾患の型、疾患の深刻度及び経過、治療剤(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト)が予防目的で投与されるのかまたは治療目的で投与されるのかどうか、以前の治療、患者の臨床歴及び治療剤(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト)に対する応答、ならび主治医の裁量に応じるであろう。治療剤(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト)は好適に、一度にまたは連続した治療にわたって患者に投与される。1つの典型的な一日の用量は、上述の因子に応じて約1μg/kg~100mg/kg以上の範囲であろう。数日またはそれ以上にわたって反復される投与に関して、治療は概して、状態に応じて、疾患症状の所望の抑制が発生するまで持続されるであろう。かかる用量は、断続的に、例えば毎週または3週間毎で(例えば、患者が、治療剤(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト)の用量を、例えば約2回~約20回、または例えば約6回受けるように)投与されて良い。初期のより高い投入用量の後に、1回以上のより低い用量が、投与されて良い。しかしながら、他の投薬レジメンが有用であって良い。この治療の進行は、従来の技法及びアッセイにより容易に監視される。
【0236】
例えば、一般的な提案として、ヒトに投与される治療有効量のアンタゴニスト抗体(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト抗体)は、1回以上の投与によるかどうかにかかわらず、患者の体重の約0.01~約50mg/kgの範囲であろう。いくつかの実施形態において、例えば毎日、毎週、2週間毎、3週間毎、または毎月に投与される、使用される本抗体は、約0.01mg/kg~約45mg/kg、約0.01mg/kg~約40mg/kg、約0.01mg/kg~約35mg/kg、約0.01mg/kg~約30mg/kg、約0.01mg/kg~約25mg/kg、約0.01mg/kg~約20mg/kg、約0.01mg/kg~約15mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.01mg/kg~約5mg/kg、または約0.01mg/kg~約1mg/kgである。いくつかの実施形態において、本抗体は、15mg/kgで投与される。しかしながら、他の投薬レジメンが有用であって良い。一実施形態において、本明細書に記載されるアンタゴニスト抗体(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト抗体)は、21日周期(3週間毎、q3w)の1日目に約100mg、約200mg、約300mg、約400mg、約500mg、約600mg、約700mg、約800mg、約900mg、約1000mg、約1100mg、約1200mg、約1300mg、約1400mg、約1500mg、約1600mg、約1700mg、または約1800mgの用量でヒトに投与される。用量は、注入物などの、単回用量としてまたは複数回の用量(例えば、2回または3回の用量)として投与されて良い。治療と組み合わせて投与される抗体の用量は、単一の治療と比較して低減されて良い。この治療の進行は、従来の技法により容易に監視される。
【0237】
いくつかの実施形態において、本方法は、有効量の第2の治療剤を患者に投与することを更に伴う。いくつかの実施形態において、第2の治療剤は、細胞毒性剤、化学療法剤、成長阻害剤、放射線療法剤、血管新生阻害剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。いくつかの実施形態において、治療剤(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト)は、化学療法または化学療法剤と併せて投与されて良い。いくつかの実施形態において、治療剤(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト)は、放射線療法剤と併せて投与されて良い。いくつかの実施形態において、治療剤(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト)は、標的治療または標的治療剤と併せて投与されて良い。いくつかの実施形態において、治療剤(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト)は、免疫療法または免疫療法剤、例えばモノクローナル抗体と併せて投与されて良い。
【0238】
上述のかかる治療の組み合わせは、組み合わされた投与(2つ以上の治療剤が、同じかまたは分離した製剤中に含まれる)、ならびに治療剤(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト)の投与が、追加の治療剤または薬剤の投与の前、投与と同時に、及び/または投与の後に発生し得る、分離された投与を包含する。一実施形態において、治療剤(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト)の投与及び追加の治療剤の投与は、互いに約1か月以内、または約1週間、2週間、若しくは3週間以内、または約1日、2日、3日、4日、5日、若しくは6日以内に発生する。
【0239】
本発明に従って使用される治療剤(例えば、PD-1軸結合アンタゴニスト)の治療製剤は、所望の純度を有するアンタゴニストを、凍結乾燥された製剤または水溶液の形態にある任意選択の薬学上許容される担体、賦形剤、または安定剤と混合することにより、保管のために調製される。製剤に関する一般情報に関して、を参照されたい。例えばGilmanら(編) The Pharmacological Bases of Therapeutics, 8th Ed., Pergamon Press, 1990、A.Gennaro(編), Remington′s Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, Mack Publishing Co., Pennsylvania, 1990、Avisら(編) Pharmaceutical Dosage Forms: Parenteral Medications Dekker, New York, 1993;Liebermanら(eds.) Pharmaceutical Dosage Forms: Tablets Dekker, New York, 1990、Liebermanら(編), Pharmaceutical Dosage Forms: Disperse Systems Dekker, New York, 1990、及びWalters(編) 皮膚科学的 and Transdermal 製剤(薬物 and the Pharmaceutical Sciences), Vol 119, Marcel Dekker, 2002を参照されたい。
【0240】
許容される担体、賦形剤、または安定剤は、受容者に対し、利用される用量及び濃度で非毒性であり、リン酸塩、クエン酸塩、及び他の有機酸などの緩衝剤;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;防腐剤(オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム;塩化ヘキサメトニウム;塩化ベンザルコニウム;塩化ベンゼトニウム;フェノール、ブチル、またはベンジルアルコール;メチルまたはプロピルパラベンなどのアルキルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾールなど);低分子量(約10残基未満)ポリペプチド;血清アルブミン、ゼラチン、若しくは免疫グロブリンなどのタンパク質;ポリビニルピロリドンなどの親水性ポリマー;グリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、若しくはリジンなどのアミノ酸;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、若しくはデキストリンを含む他の炭水化物;EDTAなどのキレート剤;ショ糖、マンニトール、トレハロース、若しくはソルビトールなどの糖;ナトリウムなどの塩形成対イオン;金属錯体(例えば、Zn-タンパク質錯体);ならびに/またはTWEEN(商標)、PLURONICS(商標)、若しくはポリエチレングリコール(PEG)などの非イオン性界面活性剤を含む。
【0241】
本明細書の製剤は、1つを超える活性化合物、好ましくは、互いに影響を不利に及ぼさない相補的活性を有するものも含有して良い。かかる薬品の型及び有効量は、例えば製剤中に存在するアンタゴニストの量及び型、ならびに対象の臨床的パラメータに応じる。
【0242】
活性成分はまた、例えばコアセルベーション技法または界面重合により調製されたマイクロカプセル、例えばそれぞれヒドロキシメチルセルロース若しくはゼラチン-マイクロカプセル及びポリ-(メチルメタチレート)マイクロカプセル中に、コロイド薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンマイクロスフェア、マイクロ乳濁液、ナノ粒子、及びナノカプセル)中に、またはマクロ乳濁液中に取り込まれて良い。かかる技法は、Remington’s Pharmaceutical Sciences 16th edition,Osol,A.版(1980)で開示される。
【0243】
持続放出調製物が、調製されて良い。持続放出調製物の好適な例には、アンタゴニストを含有する固体の疎水性ポリマーの半透性マトリクスが含まれ、そのマトリクスは、成形品、例えばフイルムまたはマイクロカプセルの形態にある。持続放出マトリクスの例には、ポリエステル、ヒドロゲル(例えば、ポリ(2-ヒドロキシエチル-メタクリレート)、またはポリ(ビニルアルコール))、ポリラクチド(米国特許第3,773,919号)、L-グルタミン酸とγエチル-L-グルタメートとのコポリマー、非分解性エチレン酢酸ビニル、例えばLUPRON DEPOT(商標)などの分解性の乳酸-グリコール酸コポリマー(乳酸-グリコール酸コポリマー及び酢酸ロイプロリドから構成される注射可能なマイクロスフェア)、ならびにポリ-D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸が含まれる。
【0244】
インビボ投与のために使用される製剤は、無菌であるべきである。これは、無菌ろ過膜によるろ過により容易に果たされる。
【0245】
上記の製品のうちのいずれも、抗体、例えば抗PD-L1抗体または抗PD-1抗体の代わりに、またはそれに加えて本明細書に記載される免疫複合体を含んで良いことを理解されたい。
【0246】
III.実施例
以下は、本発明の方法及び組成物の実施例である。様々な他の実施形態が、上記で提供された一般的な記述に基づいて実践され得ることが理解される。
【0247】
実施例1.抗PD-L1抗体の生成
図1に概して描写されるように、抗PD-L1ウサギモノクローナル抗体を生成した。要するに、ヒトPD-L1(SKKQSDTHLEET;配列番号1)のN末端細胞質領域(アミノ酸残基279~290)のペプチド断片を合成した。免疫化が意図される12個のアミノ酸断片を、抗体作製を介して実質的な免疫応答を刺激するための広範囲にわたって使用される担体タンパク質である、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)に複合した。配列の自然発生するN-末端に2個のアミノ酸(Cys-Gly)を付加することは、担体タンパク質KLHへの複合を可能にした。ニュージーランドシロウサギを完全フロイント補助剤で乳化されたKLH複合PD-L1抗原で、その後、不完全フロイント補助剤で乳化された一連のPD-L1抗原効能促進剤で免疫化した。抗体発現細胞を、PD-L1抗原を使用して酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によりスクリーニングした。全てのELISA陽性クローンを免疫組織化学法(IHC)により更にスクリーニングし、最も高い特異性を有する抗体を産生するクローンを選択した。抗PD-L1抗体の組換え作製のために、抗体の重鎖及び軽鎖配列に関してコードするcDNAをクローン化し、コトランスフェクションにより発現させ、IHCによりPD-L1(配列番号1)への結合に関してスクリーニングした。抗PD-L1モノクローナル抗体(SP142)を、これらの方法を使用して作製し、その後、タンパク質A親和性クロマトグラフィーにより精製した。SP142抗体の重及び軽鎖可変領域配列は、次の通りである。
重鎖可変領域:
軽鎖可変領域:
【0248】
実施例2.抗PD-L1抗体の診断用途
SP142抗PD-L1抗体を、更なるIHC及びウェスタンブロット分析で使用した。IHC分析に関して、組織切片をSP142で16分間温置し、続いて、標準洗浄し、ヤギ抗ウサギビオチン化抗体を用いた二次検出を行った。SP142の特異性を、異なるPD-L1発現レベル(対照(陰性)としての空ベクターでトランスフェクトされたヒト胚性腎臓HEK-293細胞、ならびにDOR-13(低~中発現)、結腸癌腫RKO細胞(中発現)、及びPD-L1にトランスフェクトされた293細胞(高発現);
図2A~2Dを参照されたい)を有するか、または異なる組織型(胎盤組織、扁桃腺組織、及びホジキン(HK)リンパ腫;
図3A~3Cを参照されたい)からのホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)細胞で評価した。SP142の特異性を更に決定するために、ウェスタンブロット分析を、異なるPD-L1発現レベルを有する細胞株(NIH H820肺腺癌腫細胞株(高発現)、Karpas299T細胞リンパ腫細胞株(中程度の発現)、及びCalu-3肺腺癌腫細胞株(陰性対照);
図4を参照されたい)の細胞可溶化物で実施した。
【0249】
実施例3.SP142抗PD-L1抗体とE1L3N抗PD-L1抗体との比較
SP142抗PD-L1抗体を、非小細胞肺癌腫(NSCLC)患者からの組織を含む、正常及び腫瘍組織片のIHC分析において抗PD-L1抗体E1L3N(細胞シグナル伝達技術)と比較した。要するに、IHC実験に関して、SP142及びE1L3N抗PD-L1抗体の両方を連続的に希釈した(0.11~28μg/ml)。組織切片のスライドを、キシレン代替物及び段階的アルコールを使用して脱パラフィンした。EDTA緩衝剤(pH8.0)中で10分間組織切片を煮沸し、続いて、20分間室温で冷却することにより、抗原修復を達成した。組織切片を、SP142またはE1L3Nのどちらかで10分間温置し、続いて、標準洗浄し、15分間ヤギ抗ウサギ抗体を用いた二次検出を行った。レポーター分子3,3′-ジアミノベンジジン(DAB)を用いた最終温置を、10分間実施した。感受性を評価するために、異なる濃度のE1L3N及びSP142を、胎盤組織のFFPE組織切片で比較した(
図5A~5Jを参照されたい)。E1L3N及びSP142の特異性を、正常及び腫瘍組織型(胃上皮組織、神経組織、腎臓組織、膀胱移行細胞癌腫(TCC)、乳管癌腫(Ca)、及び肺扁平皮細胞癌腫(肺SCCa);
図6A~6T及び
図7A~7Jを参照されたい)を使用して決定した。IHC分析は、E1L3NまたはSP142のどちらかで染色された異なるFFPE組織型の切片上(扁桃腺組織、子宮頸部扁平上皮細胞癌腫(SCC)、ホジキンリンパ腫(HKリンパ腫)、膵臓腺癌腫、前立腺腺癌腫、及び皮膚SCC;
図8A~8Lを参照されたい)においても実施した。
【0250】
次いで、E1L3N及びSP142を用いたPD-L1発現の検出を、NSCLSC患者からのFFPE組織切片において比較した。E1L3Nは、PD-L1状況に関して事前に決定されていない119個のNSCLC試料から50個のPD-L1陽性症例を検出し、SP142は、58個のPD-L1陽性症例を検出し、ここで、陽性に染色された腫瘍細胞の5%以上を、PD-L1陽性症例を示すと見なした。これらの抗体を用いたPD-L1の検出を更に評価するために、NSCLC患者からのFFPE組織切片を、E1L3N及びSP142の両方で順次に染色した(
図9A~9J)。次いで、膜免疫反応性の程度(すなわち、H点数)を、E1L3NまたはSP142で染色された119個のNSCLC患者の組織切片に関して計算した。PD-L1に関するH点数を、次の式、すなわち:H点数=3(強く染色した膜の割合)+2(適度に染色した膜の割合)+1(弱く染色した膜の割合)を用いて計算し、それにより0~300の範囲のH点数を供した。これらの119個のNSCLC症例からの平均H点数は、E1L3N(56±8)に関して、SP142(100±11)より著しく低かった。これらの収集データは、SP142が、E1L3Nより感受性があり、かつ特異的であることを示す。
【0251】
実施例4.IHC分析における抗PD-L1抗体SP142の使用は、免疫細胞(IC)及び腫瘍細胞(TC)内のPD-L1染色を示す。
抗PD-L1抗体SP142は、非小細胞肺癌(NSCLC)、子宮頸部扁平上皮細胞癌腫、HKリンパ腫、膵臓腺癌腫、前立腺腺癌腫、及び皮膚扁平上皮細胞癌腫を含むが、これらに限定されない、試験した全ての癌の型(およそ、28~30個の型)における代表症例の腫瘍浸潤免疫細胞(IC)及び腫瘍細胞内でPD-L1発現を検出した(例えば、
図8A~8L、9A~9J、10、11、15A~15B、16A~16H、及び18A~18Fを参照されたい)。
【0252】
免疫細胞(IC)
免疫細胞(IC)は、リンパ球、マクロファージ、樹状細胞、及び網状形態を有する細胞を含む、形態的に不均一である集団の細胞の型を含む腫瘍内間質及び近接する腫瘍周囲間質に存在する腫瘍浸潤免疫細胞である。腫瘍組織切片のIHC分析を、SP142抗体を使用して実施した。腫瘍組織片において、PD-L1陽性ICはしばしば、リンパ球に関して濃褐色の点状または非継続的な膜染色を示した(
図10)。PD-L1陽性ICは典型的に、腫瘍内間質及び腫瘍周囲間質における凝集体として、ならびに/または腫瘍細胞群(腫瘍切片内の箇所に基づく腫瘍細胞の群化間の単一細胞若しくはびまん性の広がりとして観察された。PD-L1陽性IC染色は、腫瘍-間質境界面でも観察され、三次リンパ球構造において網状染色としても観察された。
【0253】
腫瘍細胞(TC)
上述のPD-L1陽性ICに加えて、SP142抗体を使用したIHC分析において、PD-L1陽性腫瘍細胞(TC)も腫瘍試料中に存在することを決定した。PD-L1陽性TCは典型的に、細胞質染色に時に関連する膜染色を特徴とした(
図11)。
【0254】
結果は、SP-142抗体を、PD-L1発現のIHC分析で使用するとき、感受性があり、かつ特異的な腫瘍組織切片のPD-L1染色を取得するために使用し得ることを示し、腫瘍組織片中のPD-L1陽性IC、ならびにPD-L1陽性TCの存在を更に明らかにした。
【0255】
材料及び方法
FFPE組織切片を脱パラフィンし、EDTA抗原修復緩衝剤中で加熱した後に、ウサギ抗ヒトPD-L1(SP142)モノクローナル抗体を組織片に添加した。IHCを自動染色システム(ベンチマークULTRA,Roche)または半自動染色システム(オートステイナー,Thermo Scientific)で処理した。表2は、ベンチマークULTRAシステムに関して使用されたプロトコルを示す。
表2.SP142を使用したベンチマークULTRAシステムのためのIHCプロトコル
【0256】
実施例5.IC、TC、及びこれらの組み合わせにおけるPD-L1陽性の決定
抗PD-L1抗体(例えば、本発明の抗PD-L1抗体のうちのいずれか、例えばSP142)で染色された組織を、異なるカットオフ(例えば、1%、5%、10%など)を使用して、PD-L1陽性IC、TC、またはIC及びTCの組み合わせの存在に関して点数化し得る。これらの異なるカットオフを、患者層別化、例えば特定の抗癌療法(例えば、PD-1軸結合アンタゴニストを含む抗癌療法)に応答する可能性が高い患者の選択のために使用し得る。
【0257】
免疫細胞の点数化方法
任意の強度のPD-L1陽性ICで覆われる腫瘍面積の割合(本明細書では、「IC%」と称される)に基づいて、ICをPD-L1発現に関して点数化し得る。腫瘍面積は、本明細書で使用される場合、腫瘍細胞、ならびにそれらに伴う腫瘍内間質及び近接する腫瘍周囲間質により占有された面積(例えば、腫瘍切片の面積)を指す(
図12A~12C)。ICが間質内に存在しただけでなく、いくつかの症例においては、腫瘍細胞内で単一細胞としてまたはびまん性の広がりを有して存在したため、腫瘍面積をこの点数化アプローチにおける共通因子として選んだ。以下で記載されるように、いくつかの事例において、ICは、腫瘍切片内で凝集体として観察されたが、一方で他の事例において、ICは、腫瘍切片にわたって広がった1つまたは数個の細胞の増殖巣として観察された。
【0258】
腫瘍試料のIC%を決定するための例となる作業フローは、
図13に示される。いくつかの事例において、腫瘍試料の連続切片を、上述のようにH&Eまたは抗PD-L1抗体(例えば、SP142)のどちらかで染色した。この作業フローの第1のステップは、腫瘍、壊死、及び/またはICの存在を決定するためにH&E染色スライドを精査することであった。次に、例えば顕微鏡を使用して、対応するPD-L1染色スライドを、低拡大率(例えば、2xまたは4xの対物レンズ;20x~40xの総拡大)を用いて調査し、全体的なPD-L1染色パターンを評価する。例えば、腫瘍組織切片が、IC、TC、IC及びTCの両方においてPD-L1染色を示すかどうか、または腫瘍組織切片が、実質的なPD-L1染色を示さないかどうかの決定がなされて良い。次に、PD-L1染色スライドを、より高拡大率(例えば、10xまたは20xの対物レンズ、100x~200xの拡大)で調査し、IC染色に関して間質及び腫瘍細胞群を調査した。より高拡大率の使用は、弱い染色ICの確認、ならびに中間の強さのTC染色におけるICを区別することを可能にした。最後に、PD-L1染色スライドを、PD-L1陽性IC割合(任意の強度における、PD-L1陽性ICで覆われた腫瘍面積の割合)を決定するか、または推測するためにより低い拡大率(例えば、2xまたは4xの対物レンズ;20~40xの総拡大)で調査した。
【0259】
例えば
図14に示されるように、より高い拡大で染色を精査及び確認した後に、任意の強度のPD-L1染色を有するPD-L1陽性ICで覆われた腫瘍面積の割合を、より低い拡大率(例えば、2xまたは4xの対物レンズ;20~40xの総拡大率)で決定し得る。IC染色パターンが単一細胞の広がりを特徴とする場合、IC染色の特定の範囲(例えば、1%、5%、10%)に関する参照画像は、任意の強度のPD-L1染色を有するPD-L1陽性ICで覆われた腫瘍面積の割合を推測または決定するための比較目的で使用されて良い(例えば
図15A及び15B、ならびに16A~16Hを参照されたい)。
【0260】
腫瘍細胞点数化方法
腫瘍細胞(TC)を、任意の強度の任意の認識できる膜PD-L1染色を示す腫瘍細胞の総数の割合(本明細書では「TC%」とも称される)に基づいて、PD-L1発現に関して点数化し得る。TCは、H&E及びIHC染色スライド中の細胞形態に基づいて、ICから容易に区別可能である。例えば、
図17A~17Cを参照されたい。膜染色は、粒状感を伴ったとしても、線状染色(すなわち、細胞膜の外形に沿って線状に並んでいる)として可視であるはずである。
図18A~18Fは、TC PD-L1染色の特定の範囲(すなわち、<5%、≧5~<50%、または≧50%のTC%)を示したPD-L1染色NSCLC腫瘍組織切片の例を示す。
【0261】
他の実施形態
前述の発明は、明確な理解を目的として例示及び実施例の方法で詳細に説明されているが、説明及び実施例は、本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。本明細書で説明される全ての特許及び科学文献の開示は、参照することによりそれらの全体が明白に組み込まれる。
【配列表】