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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/127 20060101AFI20220302BHJP
   A01F 12/60 20060101ALI20220302BHJP
   A01D 41/12 20060101ALI20220302BHJP
   A01D 69/00 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
A01D41/127 120
A01F12/60
A01D41/12 B
A01D41/127
A01D69/00 301
A01D69/00 302H
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018006702
(22)【出願日】2018-01-18
(65)【公開番号】P2019122338
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石橋 俊之
(72)【発明者】
【氏名】木村 敦
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-289712(JP,A)
【文献】特開2008-182945(JP,A)
【文献】特開2017-121201(JP,A)
【文献】特開2008-161085(JP,A)
【文献】特開2004-061784(JP,A)
【文献】特開2016-186518(JP,A)
【文献】特開2015-005860(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/127
A01F 12/60
A01D 41/12
A01D 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱穀部から揚穀装置を介して排出する穀粒を貯留するグレンタンクと、レンズ駆動装置を備えてグレンタンク内を撮影するカメラと、カメラで撮影した画像を表示するモニタと、グレンタンク内の穀粒の貯留高さに基づいてレンズ駆動装置を作動させてカメラのフォーカス調節を行う映像コントローラとを備え
前記映像コントローラは、コンバインに備えた穀粒貯留高さセンサを用いて検出したグレンタンク内の穀粒の貯留高さから推定される撮影距離テーブルを備え、この撮影距離テーブルから得られた値をレンズ駆動装置に与えてフォーカス調節を行うコンバイン。
【請求項2】
前記映像コントローラは、マニュアルフォーカス指令が出された際には、撮影距離テーブルから得られた値を補正し、この補正値をレンズ駆動装置に与えてフォーカス調節を行う請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記映像コントローラは、撮影距離テーブルから得られた値を補正値に置き換えて、以後のフォーカス調節を行う請求項2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記映像コントローラは、グレンタンク内の穀粒の貯留高さをモニタに表示させると共に、グレンタンク内に穀粒が満杯になるとブザーを作動させて報知する請求項1乃至請求項3の何れか1つに記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自脱型や汎用型のコンバインに係り、詳しくは、カメラでグレンタンク内を撮影してモニタに映像(画像、動画)を表示するコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
稲麦や大豆等を刈取って収穫するコンバインは、収穫した穀粒を揚穀装置を介して機体に搭載するグレンタンクに排出(放出)し、一時的に穀粒をグレンタンクに貯留する。また、グレンタンクに穀粒が満杯になると、例えば、トラックの荷台に設けるコンテナ等に排出オーガーを用いて穀粒を排出し、その後、刈取り収穫作業を再開する。
【0003】
そして、この場合、グレンタンクに貯留する穀粒には、整粒と共に未熟粒が混じり、また、脱穀選別工程で取り除くことが出来なかった枝梗や藁屑、或いは石等の夾雑物が混ざることがある。また、このように穀粒中に未熟粒や夾雑物が混ざると、その後の乾燥作業において詰まりや、乾燥ムラ、或いは乾燥後の水分変化を発生させるという問題があり、できるだけコンバインでこれらを取り除くことが要望される。
【0004】
そこで、グレンタンク内をカメラにより撮影して、その撮影した映像をモニタを通して視認することにより、グレンタンク内の穀粒の堆積状況や選別状況を容易に確認することができて、穀粒の堆積状況や選別状況に不具合があれば、速やかに適切な対応が採れるようにすることが提案されている(特許文献1参照)。また、穀粒の状態又は異物の混入などを収穫中に検査し、その検査結果によって異物の混入を無くすように選別装置を制御することが提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-335742号公報
【文献】特開2013-27341号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のようにコンバインでは、一時的にグレンタンクに貯留して最終的にコンテナ等に排出する穀粒に、未熟粒や夾雑物が混じらないようにすることが望ましい。そこで、特許文献1のように、グレンタンク内をカメラにより撮影して、そのモニタを通して穀粒の貯留状態を確認し、仮にグレンタンク内に貯留する穀粒に未熟粒が多ければ、作業を中止して刈り取り適期まで作業を延期したり、夾雑物が多ければ選別装置を適切に調節したりすることは有用な技術である。
【0007】
ところで、前述のグレンタンクからコンテナ等に穀粒を排出する作業は、刈取り収穫作業を中断して行うことから、コンバインの作業能率を向上させるためには、上記穀粒の排出作業頻度や排出時間を少なくする必要がある。そこで、一般的にグレンタンクの穀粒の貯留量を増大させて排出作業頻度を減らしたり、排出速度を速くすることが行われている。
【0008】
しかし、グレンタンクの穀粒の貯留量(容積)を増大させるためにグレンタンクを大型にし、また、グレンタンク内をカメラにより撮影しようとすると、グレンタンクの底部に貯留する低位の穀粒と、グレンタンクに満杯近くになる高位の穀粒を、その上方側から撮影した場合、カメラの撮影距離は、例えば、2メートルから10センチメートル以下となり、撮影距離(フォーカス範囲)にかなりの幅があることが分かる。
【0009】
また、グレンタンク内に貯留する穀粒に未熟粒や夾雑物が混入していないか調べるためには、穀粒の鮮明な画像が必要となり、グレンタンク内を単に撮影する特許文献1では、穀粒の貯留量が何れかになった際に、レンズが合焦して鮮明な画像が得られるかもしれないが、それ以外はボケた画像しか得られず、夾雑物の有無等を調べることができない虞がある。
【0010】
そこで、この対策のためにデジタルカメラのようにオートフォーカス付きのカメラを用いることも考えられる。しかし、刈取り収穫作業中にオートフォーカス付きのカメラで撮影すると、揚穀装置から放出する穀粒や浮遊する藁屑等にフォーカスが当たって、そのままフォーカス調節が行われると、グレンタンク内に貯留する静止した穀粒等を鮮明に撮影することができない虞がある。
【0011】
一方、特許文献2のように、案内板によって層厚を薄くした穀粒を載置板に供給しながらカメラで撮像すると、適切な焦点を設定してシャッタスイッチに基づいて鮮明な画像を撮影することができる。しかし、このように鮮明な画像を撮影するために案内板等からなるバイパス路を設けると安価に撮影装置を構成することが出来なくなると共に、グレンタンクの穀粒の貯留量を撮影装置に阻害されて減少させる虞がある。また、このものでは表示部の映像によって滑落中の穀粒の鮮明な映像をリアルタイムに見ることができるか疑問が残る。
【0012】
そこで、本発明は、前述のような問題点に鑑み、グレンタンク内を撮影するカメラと、カメラで撮影した映像を表示するモニタを設けるコンバインにあって、貯留量の多い大型のグレンタンクになして貯留する穀粒との撮影距離の幅が大きくなっても、穀粒等をカメラで適切に撮影し、モニタにこれを鮮明に表示することができる、コンバインを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、上記課題を解決するため第1に、脱穀部から揚穀装置を介して排出する穀粒を貯留するグレンタンクと、レンズ駆動装置を備えてグレンタンク内を撮影するカメラと、カメラで撮影した画像を表示するモニタと、グレンタンク内の穀粒の貯留高さに基づいてレンズ駆動装置を作動させてカメラのフォーカス調節を行う映像コントローラとを備え、前記映像コントローラは、コンバインに備えた穀粒貯留高さセンサを用いて検出したグレンタンク内の穀粒の貯留高さから推定される撮影距離テーブルを備え、この撮影距離テーブルから得られた値をレンズ駆動装置に与えてフォーカス調節を行うコンバインとなす。
【0015】
本発明は、第に、前記映像コントローラは、マニュアルフォーカス指令が出された際には、撮影距離テーブルから得られた値を補正し、この補正値をレンズ駆動装置に与えてフォーカス調節を行うコンバインとなす。
【0016】
本発明は、第に、前記映像コントローラは、撮影距離テーブルから得られた値を補正値に置き換えて、以後のフォーカス調節を行うコンバインとなす。
【0017】
本発明は、第に、前記映像コントローラは、グレンタンク内の穀粒の貯留高さに基づいて穀粒の貯留量をモニタに表示させると共に、グレンタンク内に穀粒が満杯になるとブザーを作動させて報知するコンバインとなす。
【発明の効果】
【0018】
本発明のコンバインによれば、脱穀部から揚穀装置を介して排出する穀粒を貯留するグレンタンクと、レンズ駆動装置を備えてグレンタンク内を撮影するカメラと、カメラで撮影した映像を表示するモニタと、グレンタンク内の穀粒の貯留高さに基づいてレンズ駆動装置を作動させてカメラのフォーカス調節を行う映像コントローラとを備えるから、貯留量の多い大型のグレンタンクになして貯留する穀粒との撮影距離の幅が大きくなっても、穀粒等をフォーカス調節したカメラで適切に撮影し、モニタにこれを鮮明に表示することができる。
【0019】
また、カメラはコンバインに備えた穀粒貯留高さセンサを用いて検出したグレンタンク内の穀粒の貯留高さに基づいてフォーカス調節するから、例えば、デジタルカメラで撮影する場合のように、揚穀装置から放出する穀粒や浮遊する藁屑等にフォーカスが当たって、グレンタンク内に貯留する静止した穀粒等を鮮明に撮影することができないといった不具合を生ずることなく、静止した穀粒等にフォーカスして鮮明に撮影することができる。
【0020】
しかも、フォーカス調節のために赤外線や超音波などを照射し、その反射波が戻るまでの時間や照射角度により撮影距離を検出したり、或いは位相差検出方式やコントラスト検出方式によって撮影距離を検出する必要がなく、また、先行技術文献のように特別なバイパス路を設けてグレンタンクの穀粒の貯留量を減少させるといった虞もなく、比較的簡単・安価に穀粒等の映像システムを構築することができる。
【0021】
さらに、揚穀装置は穀粒をグレンタンク内に均平に排出するわけではなく、揚穀装置によって排出された穀粒は、例えば、グレンタンクの中央に塊りを作りながら、徐々に周囲に崩れて堆積する。そのため、穀粒の貯留高さはグレンタンク内で均等ではなく、フォーカスする箇所によって撮影距離も変化する。従って、穀粒等とカメラの撮影距離を穀粒の貯留高さから単純に計算して求めてもあまり意味をなさない。
【0022】
そこで、映像コントローラは、コンバインに備えた穀粒貯留高さセンサを用いて検出したグレンタンク内の穀粒の貯留高さから推定される撮影距離テーブルを備え、この撮影距離テーブルから得られた値をレンズ駆動装置に与えてフォーカス調節を行うと、実際に即した撮影距離で穀粒等を撮影して、鮮明な映像をモニタに表示することができる。
【0023】
即ち、撮影距離テーブルは、例えば、穀粒の貯留高さを穀粒検出センサによって構成する場合、予め各穀粒検出センサが穀粒を検出した際に、被写体(穀粒等)とカメラとの間の撮影距離を実測して作成する。そして、実作業において各穀粒検出センサが穀粒を検出した際に、この撮影距離テーブルを参照して撮影距離を推定すれば、実際に即した撮影距離で被写体を撮影することができる。
【0024】
また、映像コントローラは、マニュアルフォーカス指令が出された際には、撮影距離テーブルから得られた値を補正し、この補正値をレンズ駆動装置に与えてフォーカス調節を行うと、作業者は手動でフォーカスを調節することができる。即ち、刈取り条件や材料条件等によってグレンタンクの穀粒堆積状態は変化し、各穀粒検出センサが穀粒を検出した際にも被写体とカメラとの間の撮影距離は微妙に変化する。
【0025】
そこで、作業者がモニタに表示される映像に基づいてフォーカスがあまいと感ずる場合には、手動操作でフォーカスを調節することによって、ボケのない鮮明な映像を得ることができる。また、映像コントローラは、撮影距離テーブルから得られた値を補正値に置き換えて、以後のフォーカス調節を行うと、穀粒が満杯になってコンテナ等に排出したのち作業を再開した場合に、前回の作業者が手動でフォーカス調節した値に基づいてフォーカス調節が行われ、作業者は再び手動でフォーカス調節することなく鮮明な映像を見ることができる。
【0026】
また、映像コントローラは、グレンタンク内の穀粒の貯留高さに基づいて穀粒の貯留量をモニタに表示させると共に、グレンタンク内に穀粒が満杯になるとブザーを作動させて報知すると、カメラのフォーカス調節情報と穀粒の貯留量情報と満杯情報を、穀粒の貯留高さを検出する、例えば、穀粒検出センサによって得ることができるため、夫々の情報を別個のセンサを用いて得るものに対してコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】コンバインの正面図である。
図2】コンバインの左側面図である。
図3】コンバインの右側面図である。
図4】操縦部の平面図である。
図5】モニタの表示画面である。
図6】映像システムのブロック図である。
図7】グレンタンクの斜視図である。
図8】フォーカス制御のフローチャートである。
図9】カメラに切り替えたモニタの表示画面である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1乃至図3に示すように稲や麦を刈取りながら脱穀する自脱型のコンバイン1は、矩形状になす機体フレーム2の下部に走行装置3を設け、この走行装置3は左右の走行フレーム4にクローラ5を巻回し、トランスミッションによってこれを駆動するクローラ式走行装置となす。また、機体の前進方向からみて機体フレーム2の右側前部には、キャビン6によって覆う操縦部Aを設ける。さらに、機体フレーム2の左側前部から操縦部Aの前方にかけて刈取部Bを油圧シリンダ7によって昇降自在に設ける。
【0029】
また、刈取部B後方の機体フレーム2の左側に脱穀部Cを設けると共に、脱穀部Cの右側にグレンタンク8と、このグレンタンク8に貯留した穀粒を機外に排出する排出オーガ9を設ける。そして、脱穀部Cとグレンタンク8の後方にカッター10を設ける。さらに、操縦部Aとグレンタンク8との間には、走行装置3、刈取部B、脱穀部C、排出オーガ9、及びカッター10等を駆動するディーゼルエンジン等から構成する原動部Dを設ける。
【0030】
そして、前記刈取部Bは、その前端下部に設ける分草板11とナローガイド12によって、圃場の立毛穀稈を刈取穀稈と未刈取穀稈とに区分けし、左右の分草板11の間に入った刈取穀稈を引起装置13の爪によって引起し、その後、掻込み装置14で掻込みながら穀稈の株元を刈刃15によって切断する。さらに、掻込み装置14によって後方に掻込んだ穀稈を、揚上搬送装置16を構成する左右及び中央の掻込み搬送チェン及び穂先搬送チェンによって合流させ、また、合流させた穀稈を扱深さ搬送チェン17によって扱深さを調節しながら脱穀部Cに搬送する。
【0031】
また、前記脱穀部Cは、前後壁と左右の側壁と上方を覆うシリンダーカバー18等からなる機枠の上部に扱室を形成し、この扱室に刈取部Bから搬送されてきた穀稈を扱口に沿って挟持搬送する脱穀フイードチェン19及びシリンダカバー18に設ける挟持レール20と、周囲に多数植設する扱歯を備える第1扱胴と受網を設ける。また、扱室内で脱粒処理しきれなかった穀粒の混ざった藁屑等を処理する処理室を、第1扱胴の後端穂先側より機体の後方に向けて並列して設け、この処理室に第2扱胴と受網を設ける。さらに、第1及び第2扱胴の下方に受網より漏下した穀粒等を選別処理する揺動選別体及び選別風路等よりなる選別室を設ける。
【0032】
そして、前記脱穀部Cで脱穀・選別処理された穀粒は、グレンタンク8に揚穀装置21を介して移送し、このグレンタンク8は穀粒を一時的に貯留し、その後、排出オーガ9はグレンタンク8に堆積する穀粒を機外のコンテナ等に放出する。なお、排出オーガ9は、その基部側の縦ラセン筒9aを油圧モータによって旋回可能になすと共に、先端側の縦ラセン筒9bを油圧シリンダによって上下揺動自在になし、機体に収納する姿勢から機体の後方に向く排出姿勢に変更することができる。
【0033】
さらに、脱穀部Cで発生する藁屑及び塵埃等の排塵は、選別室に設けた排塵ファンで吸引し、その排塵口より脱穀部Cの後方に排出する。また、脱穀処理を完了して扱室より排出される排稈は、排藁搬送装置によってカッター10に向けて搬送し、さらに、ディスク型カッター10は、排藁搬送装置で搬送されてきた排稈を細断して刈取跡地に切藁として放出する。
【0034】
次に、操縦部Aについて説明すると、図3及び図4に示すように操縦部Aは、機体フレーム2の前部に設ける運転フレーム22の上面にフロア23を設け、このフロア23の前部側左右と左側にレバーフレームを立設し、この前部側の左右レバーフレームに、フロントカバー24とリヤカバー25と樹脂製の上部カバー26を取付ける。また、前部側の左レバーフレームと左側レバーフレームに、サイドカバー27と上部カバー28を取付ける。
【0035】
そして、前部側の上部カバー26の右側寄りには、機体の旋回や刈取部Bの昇降を行うマルチステアリングレバー29を設ける。また、中央寄りにタッチパネル付きの液晶モニタ30と数個の押しボタン(スイッチ)31を併設して設ける。なお、係る液晶モニタ30は、例えば、図5に示すように、エンジン回転数、車速、燃料、穀粒タンク籾量(グレンタンク貯留量)、エンジン負荷率等を表示したり、各種自動制御の設定情報、或いは、グレンタンク内を撮影した映像を表示し、そのタッチパネル32或いは押しボタン31の操作によって表示内容を切り替えることができる
【0036】
さらに、元に戻って、前部側の上部カバー26の左側寄りには、スイッチケース33を取付け、このスイッチケース33に刈取りクラッチと脱穀クラッチを断続するパワークラッチスイッチ34と、エンジン回転数を設定するエンジン回転自動ダイヤル35と、扱深さ自動制御を入り切りする扱深さ自動スイッチ36等の各種操作具を設ける。また、スイッチケース33の後方には、機体の走行変速を行う主変速レバー37と副変速レバー38、及びライティングスイッチとフラッシャスイッチとホーンスイッチを備えるコンビネーションスイッチ39を設ける。
【0037】
また、左側の上部カバー28には、旋回モード設定ダイヤル40と唐箕風量設定ダイヤル41と選別ダイヤル42等を設け、この内、旋回モード設定ダイヤル40は、機体の旋回方法をブレーキターン、減速ターン、或いはフルモードターンから設定する。また、唐箕風量設定ダイヤル41は脱穀部Cの唐箕ファンの風量を設定する。また、選別ダイヤル42は、選別自動制御の入り・切りと、選別自動制御における稲と麦等の材料条件を設定する。
【0038】
なお、フロア23の後方には、エンジンカバーフレームを立設し、このエンジンカバーフレームの周囲に複数のカバー43を取付け、その内部をエンジンルームに構成する。そして、前部側のエンジンカバーフレームに、運転席44をブラケットを介して前後動・上下動調節自在に取付け、操縦部Aを構成する。また、キャビン6は、フロントウィンドウ45、ドア46、リヤウィンドウ47、サイドウィンドウ48、ルーフ49等を備える。さらに、操縦部Aには図示しないオーガ操作リモコンを設け、このオーガ操作リモコンによって排出オーガ9を上下・旋回作動させたり、グレンタンク8から穀粒を排出させることができるようにしている。
【0039】
次に、前述の液晶モニタ30にグレンタンク8内を撮影した映像を表示する映像システムについて説明すると、この映像システムは、図6に示すようにグレンタンク8内を撮影するカメラ50と、映像コントローラ51と、液晶コントローラ(モニタECU)52と、液晶モニタ30等によって構成する。また、その内、カメラ50はフォーカスレンズ50aを備えたレンズ50bと、カメラボディ50cに内蔵するイメージセンサ50d、画像処理LSI50e、ステッピングモータ50f、及び駆動制御回路50g等を備える。
【0040】
また、映像コントローラ51は、マイコンやデジタル回路、A/D変換回路等から構成する電子制御ユニットによって構成し、グレンタンク8内に設ける複数の穀粒検出センサ53a~53eによって構成する穀粒貯留高さセンサ53や、タッチパネル32及び押しボタン(スイッチ)31の信号を受付け、また、ブザー54を作動させたり、外部記憶装置55との間で読み書きを行う他、コンバイン1の各部を駆動制御するその他の電子制御ユニット56とコントロールエリアネットワーク(CAN)で相互通信可能に結ぶ。
【0041】
そして、前記映像コントローラ51は、グレンタンク8内をカメラ50で撮影する際に、そのグレンタンク8内に貯留する穀粒等をモニタ30に鮮明に表示することを目的に、カメラ50のフォーカスレンズ50aを、その駆動装置(ステッピングモータ50f、駆動制御回路50g)によって作動させてフォーカス調節を行う。また、フォーカス調節を行うに当たり、映像制御ユニット51は、グレンタンク8内の穀粒の貯留高さ53に基づいてフォーカス調節を行う。
【0042】
より詳しく説明すると、図7に示すようにグレンタンク8は、前壁57aと後壁57bと右側壁57cと左側壁57dと天井壁57eで略直方体状に形成する上部側の貯留部57と、この貯留部57の下方にあって前壁58aと後壁58bと傾斜底壁58c、58dで漏斗状に形成する下部側の樋部58を一体に連結して穀粒を貯留する箱状のタンクに構成する。なお、傾斜底壁はV字状に傾斜する右側壁58cと左側壁58dで構成する。
【0043】
また、グレンタンク8は、その樋部58の下部に前後方向となる横ラセン59を横設し、横ラセン59の下流側に排出オーガ9の縦ラセン筒9a、9bに内装する縦ラセンを結合する。さらに、横ラセン59の上方に山形状の流板60を設け、横ラセン59に大きな穀粒圧が加わることを防止する(図9参照)。
【0044】
そして、グレンタンク8の左側壁57dの上部寄りに設ける開口57fは、揚穀装置21の籾排出口21aに臨み、脱穀部Cで選別された穀粒は、籾排出口21aに設けるラセンの掻出板によってグレンタンク8内に排出される。また、グレンタンク8から穀粒を機外に排出する際には、横ラセン59をエンジンの動力によって回転させて、最終的に排出オーガ9の縦ラセン筒9bの先端に設ける排出口9cから排出する。
【0045】
さらに、グレンタンク8の天井壁57eに点検口57gを設け、この点検口57gを透明なプレート61を備える開閉自在なカバー62で蓋をする。また、前壁57aの上部寄りの傾斜面に点検口57hを設け、この点検口57hを透明で開閉自在なプレート63で蓋をする。そして、点検口57hの左側のグレンタンク8の角部に撮影口57iを設け、この撮影口57iを透明で開閉自在なプレート64で蓋をし、係るプレート64の外側から撮影口57iを通してグレンタンク8内を撮影するようにカメラ50を設置する。
【0046】
なお、前壁57aに設置するカメラ50のレンズの光軸は斜め下方で、樋部58の下部に設ける横ラセン59の下流側に設定する。さらに、グレンタンク8の後壁58b、57bにマイクロスイッチから構成する穀粒検出センサ53a~53eを上下に間隔を隔てて複数(5個)設けると共に、グレンタンク8の天井壁57eに穀粒満杯センサ65を設ける。
【0047】
一方、前記映像コントローラ51が実行するフォーカス制御について、図9に示すフローチャートに基づいて説明する。なお、このフォーカス制御は、映像コントローラ51やカメラ50に電源が供給された後、図5に示す液晶モニタ30が表示する「カメラ」を指定して、タッチパネル32がこれを認識した際に実行される。
【0048】
そして、フォーカス制御において、映像コントローラ51は、先ず穀粒検出センサ53a~53eが全てオフとなっているか、穀粒を検出してオンとなっている貯留高さ情報(0~5)から現在の貯留高さを変数iに代入する(ステップs1)。また、変数iが4以上であれば穀粒検出センサ53eがオンとなっており、グレンタンク8は満杯状態であるからブザー54を介して「満杯警報」を出して作業者に警告する(ステップs2、s3)。
【0049】
さらに、図9に示す「カメラ」に切り替えた液晶モニタ30の表示画面において、遠距離側、又は近距離側のボタンL1、L2が押されたことをタッチパネル32が認識した際には(ステップs4)、マニュアル操作がなされたとして、それが遠距離側であれば(ステップs5)、現在の貯留高さに対する撮影距離テーブルの値T(i)をインクルメントする(ステップs6)。また、近距離側であれば(ステップs7)、撮影距離テーブルの値T(i)をデクレメントする(ステップs8)。
【0050】
次に、カメラ50の撮影距離として現在の貯留高さに対する撮影距離テーブルの値T(i)を代入する(ステップs9)。また、この得られた撮影距離をカメラ50の駆動制御回路50gに与え、これによりステッピングモータ50fはフォーカスレンズ50aを指定された撮影距離に一致するように駆動してフォーカス調節を行う。それと同時に液晶モニタ30の表示画面における貯留量表示(こく粒タンクのバーグラフ表示L2)を変数iに基づいて更新する(ステップs10)。
【0051】
そして、液晶モニタ30の表示画面において書換ボタンL4が押されて書換指示が出された場合には(ステップs11)、撮影距離テーブルの値T(i)、或いは撮影距離テーブルの全値Tを不揮発性の外部記憶装置55に書換えて記憶させ(ステップs12)、最後に復帰する。
【0052】
なお、映像コントローラ51は、その初期設定において外部記憶装置55から撮影距離テーブルを取得し、また、この撮影距離テーブルに収められた各貯留高さに対する撮影距離は、予め穀粒検出センサ53a~53eがオンとなった際に、被写体(穀粒)とカメラ50との間の撮影距離を実測した結果に基づいて決定することができる。
【0053】
さらに、グレンタンク8内の穀粒の貯留高さ(i)として、マイクロスイッチから構成する穀粒検出センサ53a~53eを用いたが、例えば、連続レベル測定可能な静電容量式のレベルセンサを用いたり、貯留する穀粒の重量を計測する重量センサとその水分含有率を検出する水分計から体積を求めて貯留高さを推定したり、或いは、揚穀装置21の籾排出口21aから排出される穀粒量を衝撃センサによって検出し、この穀粒量を積算して堆積量を求め、これから貯留高さを推定することができ、必ずしもスイッチ測定方式に限るものではない。
【0054】
以上、グレンタンク8内を撮影する映像システムの概要について説明したが、刈取り脱穀作業においてこのシステムを使用する場合、作業者は液晶モニタ30の表示をカメラに切り替えてグレンタンク8内を表示させる。そして、作業当初はグレンタンク8内の穀粒はあまり貯まっていないから、カメラ50はグレンタンク8内の底部にフォーカス調節され、穀粒が徐々に貯まるにつれて近距離側にフォーカス調節される。
【0055】
また、一概に言えないが揚穀装置21は横ラセン59の下流側、即ちグレンタンク8の後部側に向けて穀粒を排出し、穀粒は後部側の樋部58並びにその上方の貯留部57に山状の塊りを作りながら、徐々に周囲並びに前部側に崩れて堆積する。そのため、カメラ50はグレンタンク8の前部側の上方から、斜め下方の樋部58の後部側(横ラセン59の下流側)に光軸が向くように取付け、常に揚穀装置21から排出直後に堆積して静止しようとする穀粒を撮影する。
【0056】
そのため、作業者はフォーカス調節されて鮮明に映し出された排出直後の穀粒の状態を観察して、例えば、穀粒に未熟粒が多ければ作業を中止して刈り取り適期まで作業を延期したり、枝梗が多ければ送塵弁(不図示)の調節を行って扱胴での処理時間を長くしてこれを減らしたり、藁屑の混入が多ければ唐箕風量設定ダイヤル41によって唐箕ファンの風量を多くしてこれを減らすといった調節を速やかに行うことができる。
【0057】
なお、液晶モニタ30の表示画面において拡大のボタンL5を押すと、液晶コントローラ52はカメラ50が撮影した画像の一部をデジタルズームして表示する。また、画像の拡大エリアをタッチパネル32の手で触れた位置情報から選択できるようにする。さらに、遠距離側又は近距離側のボタンL1、L2を押すと、マニュアルフォーカス調節することができ、また、今後のためにマニュアルフォーカス情報を維持したい場合は、書換ボタンL4を押して残すことができる。
【0058】
また、液晶モニタ30に映し出した映像は、作業者が運転席から立ち上がって後ろを向いてリヤウィンドウ47を越しに点検口57hからグレンタンク8内を見下ろした画像に近いから分かり易く、また、揚穀装置21の籾排出口21aから排出される穀粒と略同方向を向いて、あまりこれらが映り込まないから穀粒の状態を確認し易い。なお、カメラ50はグレンタンク8の外に設置するが、グレンタンク8内に同様に光軸を設定して設置した場合、カメラ50に籾排出口21aから排出される穀粒が当たらないから、カメラ50の耐久性を向上させることができる。
【0059】
さらに、グレンタンク8内の穀粒の貯留高さを5個の穀粒検出センサ53a~53eを用いて6つの領域(0~5)に区分けして検出し、これに基づいて被写体との撮影距離を6個用意してカメラ50のフォーカス調節を行う。そして、この際の各撮影距離における被写界深度は穀粒の貯留高さ領域をカバーするから、全領域に亘ってボケを生じない映像となる。
【0060】
但し、穀粒が満杯近くなる最至近距離では被写界深度が浅くなり、また、カメラ50のフォーカス範囲の制約から鮮明な映像とならない虞がある。そこで、穀粒検出センサ53a~53eの数を増やして撮影距離数を多くしたり、広角レンズから近接撮影用レンズに変更したり、望遠レンズを用いたりして、できるだけフォーカス範囲を広げる対策を行うことが望ましい。
【0061】
なお、前記実施形態において、カメラ50をグレンタンク8の前壁57aの略中央上方寄りに設ける点検口57hからグレンタンク8内を撮影するように取付けたり、グレンタンク8の天井壁57eに設ける点検口57gのカバー62にカメラ50を真下を向くように設置してもよい。また、カメラ50によってカラー映像を得るが、モノクロ映像であったり、カメラ50にズームレンズを備えて、撮影距離に応じてズーム調節させることもでき、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0062】
1 コンバイン
8 グレンタンク
21 揚穀装置
30 液晶モニタ(モニタ)
32 タッチパネル
50 カメラ
50a フォーカスレンズ
50f ステッピングモータ
50g 駆動制御回路
51 映像コントローラ
52 液晶コントローラ
53 穀粒貯留高さセンサ(穀粒検出センサ)
A 操縦部
B 刈取部
C 脱穀部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9