IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社コーセーの特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】皮膚外用剤又は化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/86 20060101AFI20220302BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20220302BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20220302BHJP
   A61K 8/92 20060101ALI20220302BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20220302BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
A61K8/86
A61K8/34
A61K8/49
A61K8/92
A61Q19/00
A61Q19/10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018015152
(22)【出願日】2018-01-31
(65)【公開番号】P2019131507
(43)【公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-10-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000145862
【氏名又は名称】株式会社コーセー
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】特許業務法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】服部 祐子
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-178789(JP,A)
【文献】特開2002-212053(JP,A)
【文献】特表2003-502435(JP,A)
【文献】特開2007-176813(JP,A)
【文献】特開2013-095721(JP,A)
【文献】特開2012-197250(JP,A)
【文献】特開2013-032319(JP,A)
【文献】特開2011-153122(JP,A)
【文献】特開平06-107531(JP,A)
【文献】Red Treatment Mask, Rohto Pharmaceutical,Mintel GNPD [online],2017年03月,[検索日 2021.07.02], インターネット: <URL:https://www.gnpd.com>,ID#:4707823
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A61K 9/06
A61K 9/10
A61P 17/00
CAplus/REGISTRY(STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)~(E):
(A)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル
(B)ニコチン酸アミド 1~10質量%
(C)エタノール 5質量%以上
(D)IOBが0~0.5である油剤
(E)水
を含有し、前記成分(B)と、前記成分(A)の含有質量割合(B)/(A)が4~800であることを特徴とする皮膚外用剤又は化粧料。
【請求項2】
前記成分(B)と、前記成分(D)の含有質量割合(B)/(D)が10~1200であることを特徴とする請求項に記載の皮膚外用剤又は化粧料。
【請求項3】
前記成分(A)がポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテルであることを特徴とする請求項1又は2に記載の皮膚外用剤又は化粧料。
【請求項4】
前記成分(C)の含有量が7~15質量%であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の皮膚外用剤又は化粧料。
【請求項5】
15℃において粘度が3000~14000mPa・sであることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の皮膚外用剤又は化粧料。
【請求項6】
可溶化型であることを特徴とする請求項1~のいずれかに記載の皮膚外用剤又は化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制に優れる皮膚外用剤又は化粧料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
皮膚は加齢やストレスなどの内的要因や、紫外線や空気の乾燥などの外的要因により、しみやシワ、たるみ、色素沈着等を生じる。中でもシワやたるみといった形態的変化は、外観の印象を大きく左右するため改善を望む人は多い。それらシワ・たるみを予防・改善するために多くの薬剤が提案されている。このような中でも、ニコチン酸アミドはビタミン類であって安全性が高く、荒れ肌改善効果、角質改善効果を有し、肌のハリ・弾力を向上させることが知られている(特許文献1、2、3)。
化粧品においては、肌や髪への水分による保湿効果と油分によるエモリエント効果の両立が求められるため、水系と油系をバランスよく供給する必要がある。そのため化粧品製剤としては水分と油分を様々な界面活性剤を使用して、安定かつ優れた官能を与える処方が検討されている。特に化粧水は一般的にみずみずしい感触と保湿感が求められており、それらをかなえる界面活性剤の一つとして、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルが汎用されている。特にポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルはエタノールを含有する系において、優れた保存安定性を有し、さらさら感および清涼感に優れることが知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-130135号公報
【文献】特開2012-041302号公報
【文献】特表2003-502435号公報
【文献】特開2017-203000号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献2、3の技術では、ニコチン酸アミドは特有のべたつき感を有しており、多量に含有するとべたつき感が大きいなどの使用性が望ましくない場合があった。
また、特許文献4の技術では、荒れ肌改善効果などの肌効果が不十分であり、さらに、特にエタノールが多い場合において、水性成分の揮発が早いために、製剤の渇き際のべたつき感に優れないなどの使用性が望ましくない場合があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、エタノール 5質量%以上、水を含有する組成物は、エタノールが多く清涼感に優れるものの、水性成分の揮発が早いために、渇き際のべたつき感の無さに優れないという場合があった。また、ニコチン酸アミドは特有のべたつき感を有しているにも関わらず、本発明者は、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、エタノール 5質量%以上、水を含有する組成物に、さらに、ニコチン酸アミド 1~10質量%を配合したところ、予想外なことに、組成物全体として、渇き際のべたつき感の無さが良好になることを見出した。
さらに発明者は、エモリエント効果向上のために、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ニコチン酸アミド 1~10質量%、エタノール 5質量%以上、水と、さらに油剤を配合することを試みたところ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制に優れない場合があった。特に、経時での結晶析出抑制が優れない場合として、組成物を瓶などの容器から吐出した後、室温に一週間程度、放置した際、その瓶口において、水性成分などの揮発に起因して、ニコチン酸アミド由来と思われる結晶が経時で析出するなど、著しく使用性が悪い場合があった。
本発明者は、鋭意検討した結果、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ニコチン酸アミド 1~10質量%、エタノール 5質量%以上、水を含有する組成物に、さらに、IOBが0~0.5である油剤を含有した際に、渇き際のべたつき感の無さがより改善され、さらに、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制にも優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明は、次の成分(A)~(E):
(A)ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル
(B)ニコチン酸アミド 1~10質量%
(C)エタノール 5質量%以上
(D)IOBが0~0.5である油剤
(E)水
を含有する皮膚外用剤又は化粧料を提供するものである。
【0007】
本発明は、前記成分(B)と、前記成分(A)の含有質量割合(B)/(A)が4~800であることを特徴とする皮膚外用剤又は化粧料を提供するものである。
【0008】
本発明は、前記成分(B)と、前記成分(D)の含有質量割合(B)/(D)が10~1200であることを特徴とする皮膚外用剤又は化粧料を提供するものである。
【0009】
本発明は、前記成分(A)がポリオキシエチレンポリオキシプロピレンデシルテトラデシルエーテルであることを特徴とする皮膚外用剤又は化粧料を提供するものである。
【0010】
本発明は、前記成分(C)の含有量が7~15質量%であることを特徴とする皮膚外用剤又は化粧料を提供するものである。
【0011】
本発明は、15℃において粘度が3000~14000mPa・sであることを特徴とする皮膚外用剤又は化粧料を提供するものである。
【0012】
本発明は、可溶化型であることを特徴とする皮膚外用剤又は化粧料を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明の皮膚外用剤又は化粧料は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制に優れるものである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。
【0015】
成分(A):ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル
本発明で用いられる成分(A)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、アルコールにオキシエチレン(酸化エチレン)とオキシプロピレン(酸化プロピレン)を付加重合等することで得られるものであり、医薬、食品、化粧料または皮膚外用剤又は化粧料への添加物として許容されるものであれば特に制限なく使用できる。
【0016】
ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルにおけるポリオキシエチレン(以下、「POE」と略す場合がある)鎖の平均付加モル数は、特に限定されないが、好ましくは1~60、より好ましくは8~50、さらにより好ましくは10~45である。また、ポリオキシプロピレン(以下、「POP」と略す場合がある)鎖の平均付加モル数は、特に限定されないが、好ましくは1~60、より好ましくは1~40、さらにより好ましくは2~20である。これらPOEとPOPの含有モル比率としては、1:10~10:1が好ましい。さらに該成分のアルキル基としては、炭素数8~28の範囲が好ましく、10~26がより好ましく、この範囲であると界面の安定性がより優れ、経時での油滴粒子の安定性がより向上する。なおアルキル基は、飽和、不飽和いずれでもよく、また直鎖であっても、分岐していてもよいが、なかでも油剤の安定な配合の観点から、分岐鎖が好ましい。特に限定されないが、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルに用いられるアルキル基の例としては、デシル、セチル、デシルテトラデシル、イソデシル、オレイル、トリデシル、べべニル、ラウリル、ステアリル等を挙げることができる。
【0017】
以下に成分(A)の具体例を挙げるが、特に限定されない。また、POE、POPの後の( )内の数字は、それぞれの平均付加モル数を指す。成分(A)は、具体的には、POE(1)POP(1)セチルエーテル、POE(5)POP(1)セチルエーテル、POE(10)POP(1)セチルエーテル、POE(10)POP(2)セチルエーテル、POE(5)POP(2)セチルエーテル、POE(1)POP(2)セチルエーテル、POE(20)POP(2)セチルエーテル、POE(20)POP(2)セチルエーテル、POE(20)POP(1)セチルエーテル、POE(1)POP(4)セチルエーテル、POE(5)POP(4)セチルエーテル、POE(10)POP(4)セチルエーテル、POE(20)POP(4)セチルエーテル、POE(20)POP(5)セチルエーテル、POE(1)POP(8)セチルエーテル、POE(5)POP(8)セチルエーテル、POE(10)POP(8)セチルエーテル、POE(20)POP(8)セチルエーテル、POE(2)POP(2)ブチルエーテル、POE(4)POP(4)ブチルエーテル、POE(5)POP(5)ブチルエーテル、POE(10)POP(7)ブチルエーテル、POE(9)POP(10)ブチルエーテル、POE(12)POP(12)ブチルエーテル、POE(20)POP(15)ブチルエーテル、POE(17)POP(17)ブチルエーテル、POE(35)POP(28)ブチルエーテル、POE(30)POP(30)ブチルエーテル、POE(45)POP(33)ブチルエーテル、POE(36)POP(36)ブチルエーテル、POE(37)POP(38)ブチルエーテル、POE(5)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(10)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(12)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(15)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(25)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(30)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(3)POP(2)デシルエーテル、POE(5)POP(2)デシルエーテル、POE(7)POP(2)デシルエーテル、POE(10)POP(2)デシルエーテル、POE(12)POP(2)デシルエーテル、POE(15)POP(2)デシルエーテル、POE(20)POP(2)デシルエーテル、POE(30)POP(2)デシルエーテル、POEPOPステアリルエーテル、POEPOPトリメチロールプロパン、POEPOPペンタエリスリトールエーテル、POEPOPミリスチルエーテル、POEPOPラノリン等が挙げられる。
べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性に優れる点から、好ましくは、POE(10)POP(4)セチルエーテル、POE(20)POP(4)セチルエーテル、POE(1)POP(8)セチルエーテル、POE(20)POP(8)セチルエーテル、POE(12)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(30)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(20)POP(15)ブチルエーテルから選ばれる1種または2種以上であり、より好ましくはPOE(10)POP(4)セチルエーテル、POE(12)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテルから選ばれる1種または2種以上であり、さらにより好ましくはPOE(12)POP(6)デシルテトラデシルエーテル、POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテルから選ばれる1種または2種以上である。
【0018】
成分(A)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルは、特に限定されないが、市販されているものを利用することができる。例えば、ペポール BEP-0115(東邦化学社製)、ユニセーフ10P-4、10P-8、20P-4、20P-8、5P-4、5P-8、34S-23、ユニルーブ20MT-2000B、10MS-250KB、50MB-168、50MB-26、70DP-950B、(以上、日油社製)、ファインサーフNDB-1400(青木油脂工業社製)、NIKKOL PEN-4612、4620、4630、NIKKOL PBC-31、33、34、41、44(以上、日光ケミカルズ社製)、EMALEX DAPE-0203、0205、0207、0210、0212、0215、0220、0230(以上、日本エマルジョン社製)等が挙げられる。
【0019】
また、特に限定されないが、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制に優れる点で、成分(A)のHLBは好ましくは8以上、より好ましくは8~12、さらにより好ましくは10~11.5である。
【0020】
ここで、本発明におけるHLB(Hydphile-Lipophile Balance)とは、親水性-親油性のバランスを示す指標であり、小田・寺村らによる下記(式1)で計算されるものである。
HLB=(Σ無機性値/Σ有機性)×10・・・(式1)
ここで、Σ無機性値/Σ有機性は、IOB(Inorganic-Organicbalance)と呼ばれ、各種原子及び官能基毎に設定された「無機性値」、「有機性値」に基づいて、界面活性剤等の有機化合物を構成する原子及び官能基の「無機性値」、「有機性値」を積算することにより算出することができる(甲田善生著、「有機概念図-基礎と応用-」、11~17頁、三共出版、1984年発行参照)。
【0021】
本発明で用いられる成分(A)のポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルの含有量は、特に限定されないが、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性に優れる点から、皮膚外用剤又は化粧料全量中、好ましくは0.01~0.5質量%(以下、質量%は単に、「%」と略す)、さらにより好ましくは0.05~0.3%である。
【0022】
成分(B):ニコチン酸アミド
本発明における成分(B)ニコチン酸アミドは、ニコチン酸(ビタミンB3/ナイアシン)のアミド化合物である。ニコチン酸アミドは水溶性ビタミンで、ビタミンB群の一つである公知の物質であり、天然物(米ぬかなど)から抽出されたり、あるいは公知の方法によって合成することができる。具体的には、第15改正日本薬局方2008に収載されているものを用いることが出来る。
【0023】
本発明において成分(B)の含有量は、特に限定されないが、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制に優れる点で、皮膚外用剤又は化粧料全量中、1~10%が好ましく、さらに好ましくは2~8%である。成分(B)の含有量は、皮膚外用剤又は化粧料全量中、1%未満であると、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性に優れない。成分(B)の含有量は、皮膚外用剤又は化粧料全量中、10%を超えると、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制に優れない。
【0024】
成分(C):エタノール
本発明に用いられる成分(C)は、エタノールである。本発明においては、通常化粧料に用いられるものであれば、特に限定されるものではない。例えば95度未変性エタノール、種々の変性エタノール等の市販されているものでよい。
【0025】
本発明において成分(C)の含有量は、皮膚外用剤又は化粧料全量中、5%以上である。成分(C)の含有量が、皮膚外用剤又は化粧料全量中、5%未満であると、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性に優れない場合がある。成分(C)の含有量は、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制に優れる点で、皮膚外用剤又は化粧料全量中、6~25%が好ましく、7~15%がより好ましい。
【0026】
成分(D):IOBが0~0.5である油剤
本発明の皮膚外用剤又は化粧料中の成分(D)はIOBが0~0.5である油剤である。通常、化粧料等に用いることができるものであれば、特に限定されるものではないが、これらから選ばれる1種又は2種以上のものを使用することができる。皮膚外用剤又は化粧料全量中、成分(D)を含有しないと、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制に優れない場合がある。
【0027】
成分(D)のIOBが0~0.5である油剤としては、特に限定されないが、具体例を挙げると、スクワラン(IOB=0.00)、ホホバ油(IOB=0.07)、エチルヘキサン酸セチル(IOB=0.13)、ミリスチン酸イソプロピル(IOB=0.18)、酢酸トコフェロール(IOB=0.23)、オクチルドデカノール(IOB=0.26)、オレイルアルコール(IOB=0.28)、トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル(IOB=0.33)、PPG-52ブチル(IOB=0.36)、リノール酸(IOB=0.43)、カンファー(IOB=0.47)、等の油剤が挙げられる。
【0028】
成分(D)のIOBとしては、0~0.5の範囲であれば特に限定されないが、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性が優れる点で、0~0.4が好ましく、0~0.26がより好ましい。
【0029】
成分(D)の含有量は、特に限定されるものではないが、べたつき感の無さ、経時での結晶析出抑制が優れる点で、皮膚外用剤又は化粧料全量中、0.001~1%が好ましく、0.0065~0.2%がより好ましく、0.008~0.1%がさらにより好ましい。
【0030】
成分(E):水
本発明に用いる成分(E)の水は、化粧料に一般に用いられるものであれば、特に制限されないが、具体的には、精製水、温泉水、深層水、或いは植物の水蒸気蒸留水を用いることができ、必要に応じて1種または2種以上を適宜選択することもできる。また含有量は、特に限定されず、適宜、他の成分量に応じて含有することができ、皮膚外用剤又は化粧料全量中、30~95%が好ましく、60~90%がより好ましい。
【0031】
成分(B)と、成分(A)は適宜含有させることができるが、成分(B)と、成分(A)の含有質量割合(B)/(A)は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制に優れる点で、好ましくは4~800であり、さらに好ましくは40~100であり、さらに特にべたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性に優れる点で、10~80がより好ましく、30~50が特にさらに好ましい。
【0032】
成分(B)と、成分(D)は適宜含有させることができるが、成分(B)と、成分(D)の含有質量割合(B)/(D)は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制に優れる点で、好ましくは10~1200であり、より好ましくは20~1000であり、さらに特にべたつき感の無さ、経時での結晶析出抑制に優れる点で、40~500がより好ましく、300~450が特にさらに好ましい。
【0033】
本発明の皮膚外用剤又は化粧料の15℃においての粘度は、特に限定されないが、べたつき感の無さに優れる点で、3000~14000mPa・s、より好ましくは5000~10000mPa・sである。この範囲であると、皮膚外用剤又は化粧料を塗布する際の膜厚感と成分(C)の揮発速度のバランスが好適であり、水性成分の揮発に伴う渇き際のべたつき感の無さが良好である。また、本発明における粘度は、ブルックフィールド型粘度計を用いた化粧品原料基準・粘度測定法第二法に従って測定される。
【0034】
本発明の皮膚外用剤又は化粧料は、特に限定されず、いずれの剤型においても効果を得ることができるものであり、具体的には、水性、可溶化型、水中油型、油中水型、水中油中水型、油中水中油型、多価アルコール中油型、油中多価アルコール型などを挙げることができるが、べたつき感の無さに優れる点から好ましくは、可溶化型である。本発明の皮膚外用剤又は化粧料における油滴粒子の平均粒径は、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制に優れる点から、好ましくは5~300nmであり、より好ましくは10~150nmであり、さらにより好ましくは10~100nmであり、さらに特に好ましくは10~50nmである。なお、本発明の皮膚外用剤又は化粧料における油滴粒子の平均粒径は、レーザー回折・散乱法による粒度分布測定装置(例えば、サブミクロン粒子アナライザー N5 (BECKMAN COULTER社製))を用いて測定することができる。
【0035】
本発明の皮膚外用剤又は化粧料の製造方法は、公知の方法であれば特に限定されることなく製造可能である。具体的には、可溶化法、分散乳化法、転相乳化法、転相温度乳化法等が挙げられるが、べたつき感の無さに優れる点から好ましくは、可溶化法である。
【0036】
本発明の皮膚外用剤又は化粧料には、上記成分の他に、本発明の効果を妨げない範囲で通常の化粧料に含有される成分(A)~(E)以外の任意成分、すなわち、成分(A)~(E)以外の、低級アルコール、水性成分、油性成分、粉体、水溶性高分子、皮膜形成剤、界面活性剤、油溶性ゲル化剤、有機変性粘土鉱物、樹脂、着色剤、紫外線吸収剤、防腐剤、抗菌剤、香料、酸化防止剤、pH調整剤、キレート剤、美容成分等を含有することができる。
【0037】
本発明の皮膚外用剤又は化粧料は、他の成分との併用により種々の剤型とすることもできる。具体的には、液状、ゲル状、ペースト状、クリーム状、固形状等、種々の剤型にて実施することができる。
【0038】
本発明の皮膚外用剤又は化粧料は、特に限定されないが、リニメント剤、ローション剤、軟膏剤等の皮膚外用剤を例示することができ、また、化粧水、クリーム、乳液、美容液等の基礎化粧料や、シャンプー、リンス、トリートメント等の頭髪化粧料や、リキッドファンデーション、下地乳液等のメイクアップ化粧料や、日焼け止め化粧料等の化粧料(医薬部外品を含む)を例示することができる。
【実施例
【0039】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明はこれによりなんら限定されるものではない。含有量は特記しない限り、その成分が含有される系に対する質量%で示す。
【0040】
実施例1~17、比較例1~10:化粧水
下記表1~3に示す処方の化粧水を調製し、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制について下記の方法により評価した。その結果も併せて表1~3に示す。
【0041】
【表1】
【表2】
【表3】
【0042】
(製造方法)
A:成分(1)~(6)、成分(10)~(15)を均一に混合溶解する。
B:成分(7)~(9)、成分(16)~(19)を均一に混合溶解する。
C:BにAを添加混合することで化粧水を得た。
【0043】
(評価項目)
(イ)べたつき感の無さ
(ロ)経時での油滴粒子の安定性
(ハ)経時での結晶析出抑制
【0044】
(評価方法)
((イ)べたつき感の無さ(官能評価))
20代~40代の女性で官能評価の訓練を受け、一定の基準で評価が可能な専門パネルを10名選定した。各試料について専門パネルが皮膚に塗布した後の渇き際のべたつき感の無さを下記絶対評価基準にて5段階に評価し評点を付け、各試料ごとにパネル全員の評点合計から、その平均値を算出し、下記4段階判定基準により判定した。
【0045】
絶対評価基準
(評点):(評価)
5点:べたつきを感じない
4点:ほとんどべたつきを感じない
3点:ややべたつきを感じる
2点:べたつきを感じる
1点:非常にべたつきを感じる
4段階判定基準
(判定):(評点の平均点)
◎ :4点を超える :非常に良好
○ :3点を超える4点以下 :良好
△ :2点を超える3点以下 :やや不良
× :2点以下 :不良
【0046】
((ロ)経時での油滴粒子の安定性)
組成物調製後、50℃で1ヶ月保存した際の外観性状を目視にて評価し、下記3段階判定基準により判定した。
3段階判定基準
(判定):(評価)
◎ : 初期状態から変化なし :非常に良好
○ : 初期状態から変化(透明性の低下)はあるが、分離はしていない :良好
× : 初期状態から変化(透明性の低下)があり、分離が発生している :不良
【0047】
((ハ)経時での結晶析出抑制)
結晶析出抑制の評価については、ドクターブレードにて試料をガラス板の上に膜厚800μmで塗布し、20℃で15分風乾させ、各試料を光学顕微鏡観察40倍にて偏光フィルターで観察し、下記4段階判定基準により判定した。
4段階判定基準
(判定):(評価)
◎ :結晶の析出が全く見られない :非常に良好
○ :結晶の析出がほとんど見られない :良好
△ :結晶の析出がわずかに見られる :やや不良
× :結晶の析出が明らかに見られる :不良
【0048】
表1~3の結果から明らかなように、実施例1~17の化粧水は、比較例1~10の化粧水に比べ、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制の全てにおいて優れたものであった。
成分(A)ではなく、他の界面活性剤を含有する比較例1~3は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制が劣っていた。
成分(B)の量が10%を超える比較例4は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制が劣っていた。成分(B)の量が1%未満である比較例5は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性が劣っていた。
成分(B)ではなく、他の極性物質を含有する比較例6は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性が劣っていた。成分(B)の量が1%未満であり、かつ、他の極性物質を含有する比較例7は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性が劣っていた。
成分(C)の量が5%未満である比較例8は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制が劣っていた。
成分(D)ではなく、他の油剤を含有する比較例9、10は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制が劣っていた。
【0049】
実施例18:皮膚外用剤(ローション剤)
(成分) (質量%)
1.ニコチン酸アミド 6.0
2.精製水 残量
3.POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテル
0.1
4.POE(40)硬化ヒマシ油 0.2
5.イソステアリン酸POE(50)硬化ヒマシ油 0.5
6.エタノール 10.0
7.オレイルアルコール(IOB=0.26) 0.05
8.酢酸DL‐α‐トコフェロール (IOB=0.23) 0.05
9.アスタキサンチン 0.0001
10.セラミド2 0.0001
11.パラオキシ安息香酸メチル 0.05
12.トリ(カプリル/カプリン酸)グリセリル(IOB=0.33) 0.05
13.カルボマー 0.15
14.水酸化ナトリウム 0.004
15.キサンタンガム 0.1
【0050】
(製造方法)
A:成分(1)と成分(2)の内の90%を均一に混合溶解する。
B:成分(3)~(12)を混合溶解する。
C:AにBを添加する。
D:Cに成分(13)~(15)と成分(2)の内の10%を添加混合し、皮膚外用剤(ローション剤)を得た。
【0051】
実施例18の皮膚外用剤(ローション剤)は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制の全てにおいて優れたものであった。
【0052】
実施例19:クレンジングローション
(成分) (質量%)
1.トリイソステアリン酸POE(20)グリセリル 0.1
2.ジプロピレングリコール 12.0
3.1,3-ブチレングリコール 5.0
4.POP(10)メチルグルコシド 5.0
5.PEG-8(平均分子量400) 5.0
6.ニコチン酸アミド 6.0
7.クエン酸 0.001
8.クエン酸ナトリウム 0.1
9.POE(12)POP(6)デシルテトラデシルエーテル
0.1
10.カンファー(IOB=0.47) 0.02
11.ミリスチン酸イソプロピル(IOB=0.18) 0.01
12.エタノール 7.0
13.精製水 残量
14.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.1
15.水酸化ナトリウム 0.03
16. ヒドロキシプロピルメチルセルロース 0.2
17.香料 0.001
【0053】
(製造方法)
A:成分(9)~(12)を均一に混合溶解する。
B:成分(13)の内の90%にAを添加し可溶化する。
C:Bに成分(1)~(8)を添加混合する。
D:Cに成分(13)の内の10%と成分(14)~(17)を添加混合してクレンジングローションを得た。
【0054】
実施例19のクレンジングローションは、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制の全てにおいて優れたものであった。
【0055】
実施例20:ジェル状保湿化粧水
(成分) (質量%)
1.エタノール 40.0
2.ホホバ油(IOB=0.07) 0.1
3.POE(20)POP(6)デシルテトラデシルエーテル
0.2
4.オレイルアルコール(IOB=0.26) 0.01
5.リノール酸(IOB=0.43) 0.01
6.アスタキサンチン 0.0005
7.ビタミンEニコチネート 0.01
8.グリセリン 5.0
9.POE(26)グリセリン 2.0
10.ニコチン酸アミド 6.0
11.エデト酸二ナトリウム 0.4
12.精製水 残量
13.アクリル酸・メタクリル酸アルキル共重合体 0.3
14.2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール 0.1
15.キサンタンガム 0.1
16.加水分解ヒアルロン酸 0.01
17.加水分解コラーゲン(注1) 0.01
18.加水分解エラスチン(注2) 0.005
19.ヒアルロン酸酵母発酵液 0.1
20.月桃葉エキス 0.01
21.水酸化ナトリウム 0.05
(注1)コラーゲンP-03(PF) 新田ゼラチン社製
(注2)SEALASTIN 寿ケミカル社製
【0056】
(製造方法)
A:成分(1)~(9)を均一に混合する。
B:成分(10)~(20)を均一に混合し、その後成分(21)を添加し、均一に混合溶解する。
C:BにAを添加し可溶化し、ジェル状保湿化粧水を得た。
【0057】
実施例20のジェル状保湿化粧水は、べたつき感の無さ、経時での油滴粒子の安定性、経時での結晶析出抑制の全てにおいて優れたものであった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、皮膚外用剤又は化粧料等に適用できる。