(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】車両の操舵支援装置
(51)【国際特許分類】
B62D 6/00 20060101AFI20220302BHJP
B62D 5/04 20060101ALI20220302BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20220302BHJP
B62D 101/00 20060101ALN20220302BHJP
B62D 113/00 20060101ALN20220302BHJP
B62D 117/00 20060101ALN20220302BHJP
B62D 119/00 20060101ALN20220302BHJP
B62D 137/00 20060101ALN20220302BHJP
【FI】
B62D6/00 ZYW
B62D5/04
G08G1/16 C
B62D101:00
B62D113:00
B62D117:00
B62D119:00
B62D137:00
(21)【出願番号】P 2018051120
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2021-02-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005348
【氏名又は名称】株式会社SUBARU
(74)【代理人】
【識別番号】110002907
【氏名又は名称】特許業務法人イトーシン国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100076233
【氏名又は名称】伊藤 進
(74)【代理人】
【識別番号】100101661
【氏名又は名称】長谷川 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100135932
【氏名又は名称】篠浦 治
(72)【発明者】
【氏名】金井 聡吾
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特許第5800971(JP,B1)
【文献】国際公開第2018/047591(WO,A1)
【文献】特開2017-013579(JP,A)
【文献】特開2006-182051(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0066472(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 6/00
B62D 5/04
G08G 1/16
B62D 101/00- 137/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライバのハンドル保持を前提として操舵装置を介した操舵支援制御を行う車両の操舵支援装置であって、
前記操舵装置を介した前記操舵支援制御における目標出力の変化率を算出する目標出力変化率算出部と、
前記目標出力又は前記目標出力の変化率に基づいて、前記ドライバが前記ハンドルを保持していないハンドル手放し状態を判定するための閾値を、ハンドル手放し状態と判定され易くなる方向に修正する手放し判定閾値修正部と
を備えることを特徴とする車両の操舵支援装置。
【請求項2】
前記手放し判定閾値修正部は、前記目標出力が路面側から前記操舵装置に伝達される外力の大きさを考慮して設定される閾値以上に大きい場合、又は前記目標出力の変化率が路面側から前記操舵装置に伝達される外力の変化速度を考慮して設定される閾値以上に大きい場合、前記ハンドル手放し状態を判定するための閾値を、通常走行時の値よりも大きくすることを特徴とする請求項1に記載の車両の操舵支援装置。
【請求項3】
前記目標出力は、自車両が走行する目標経路に追従走行するための目標操舵角であることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の操舵支援装置。
【請求項4】
前記目標出力は、前記操舵装置の操舵トルクに対する指示トルクであることを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の操舵支援装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドライバのハンドル保持を前提として操舵装置を介した操舵支援制御を行う車両の操舵支援装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両においては、電動モータを介して操舵角を制御可能な電動パワーステアリング装置等の操舵装置を備え、カメラやレーダ装置等によって認識した車両周囲の外部環境に基づいて、操舵装置を介してドライバの操舵操作を支援する操舵支援制御が知られている。
【0003】
このような操舵支援制御は、ドライバがハンドルを保持していることを前提として実行されるものが多く、ドライバがハンドルから手を放した場合には、ハンドル手放し状態と判定して警告を行うようになっている。
【0004】
このため、ハンドル手放し状態を精度良く判定する必要があり、例えば、特許文献1には、直進路を検出した場合、直進路を検出していない場合に比べ、手放し状態と判定しにくくなるように判定の閾値を決定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されるような従来のハンドル手放し判定では、走行路のカーブの形状によっては十分な判定精度を得られない場合があり、また、横風や道路の横断勾配等の外乱に対して、判定精度を確保することは困難である。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、ドライバのハンドル保持を前提として操舵支援制御を実行する際に、走行路の形状や外乱の影響を排除してハンドル手放し判定の精度を確保することのできる車両の操舵支援装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様による車両の操舵支援装置は、ドライバのハンドル保持を前提として操舵装置を介した操舵支援制御を行う車両の操舵支援装置であって、前記操舵装置を介した前記操舵支援制御における目標出力の変化率を算出する目標出力変化率算出部と、前記目標出力又は前記目標出力の変化率に基づいて、前記ドライバが前記ハンドルを保持していないハンドル手放し状態を判定するための閾値を、ハンドル手放し状態と判定され易くなる方向に修正する手放し判定閾値修正部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ドライバのハンドル保持を前提として操舵支援制御を実行する際に、走行路の形状や外乱の影響を排除してハンドル手放し判定の精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1において、符号1は、ドライバによる操舵操作と独立してアクチュエータを介して操舵角を制御可能な操舵装置としての電動パワーステアリング(EPS;Electric Power Steering)装置を示す。このEPS装置1においては、図示しない自動車等の車両の車体フレームに、ステアリング軸2がステアリングコラム3を介して回動自在に支持されている。
【0012】
ステアリング軸2の一端は運転席側へ延出され、他端がエンジンルーム側へ延出されている。ステアリング軸2の運転席側端部には、ステアリングホイール(ハンドル)4が固設され、ハンドル4が結合されるステアリング軸2の外周側に、舵角センサ21が配設されている。
【0013】
舵角センサ21は、例えば、その内部に検知ギヤに内蔵された磁石の回転を検知する磁気抵抗素子を二組備えて構成されている。この舵角センサ21は、ハンドル4の基準となる回転位置(例えば、車両直進状態におけるハンドル4上部の回転位置)を予め設定しておき、検知ギヤが回転することで生じる磁気変化に基づいて、予め設定した固定の基準位置からの回転角(操舵角)及び回転方向(操舵方向)を検出する。
【0014】
また、ステアリング軸2の中途には、トーションバー2aが介装され、エンジンルーム側に延出される端部に、ピニオン軸5が連設されている。トーションバー2aの外周側には、トルクセンサ22が配設されている。トルクセンサ22は、トーションバー2aの捩れによってステアリング軸2の軸周りに生じるハンドル4側とピニオン軸5側との変位を検出することにより、ドライバの操作による操舵トルクを検出する。
【0015】
一方、エンジンルーム内には、車幅方向へ延出するステアリングギヤボックス6が配設されており、このステアリングギヤボックス6にラック軸7が往復移動自在に挿通支持されている。ラック軸7に形成されたラック(図示せず)には、ピニオン軸5に形成されたピニオンが噛合され、ラックアンドピニオン式の操舵機構が形成されている。
【0016】
また、ラック軸7の左右両端はステアリングギヤボックス6の端部から各々突出されており、その端部に、タイロッド8を介してフロントナックル9が連設されている。このフロントナックル9は、操舵輪としての左右輪10L,10Rを回動自在に支持すると共に、車体フレームに転舵自在に支持されている。ハンドル4を操作し、ステアリング軸2、ピニオン軸5を回転させると、このピニオン軸5の回転によりラック軸7が左右方向へ移動し、その移動によりフロントナックル9がキングピン軸(図示せず)を中心に回動して、左右輪10L,10Rが左右方向へ転舵される。
【0017】
また、ピニオン軸5に、ウォームギヤ等の減速ギヤ機構からなるアシスト伝達機構11を介して、ドライバの操舵操作に対するアシスト及び自動操舵を可能とするアクチュエータとしての電動パワーステアリングモータ(EPSモータ)12が連設されている。EPSモータ12は、例えばケースに固定されたステータとステータの内部で回転するロータとを有するDCブラシレスモータからなる電動モータであり、この電動モータのロータの回転がアシスト伝達機構11を介してラック軸7の軸方向の動きに変換される。
【0018】
EPSモータ12は、操舵制御装置50によって駆動制御される。操舵制御装置50は、マイクロコンピュータを中心として構成される制御ユニットであり、モータ駆動部20を介してEPSモータ12を駆動制御する。操舵制御装置50には、舵角センサ21、トルクセンサ22、その他、車速を検出する車速センサ24、車両の鉛直軸回りの回転速度すなわちヨーレートを検出するヨーレートセンサ25等のセンサ類や図示しないスイッチ類からの信号が入力される。
【0019】
また、操舵制御装置50は、車内ネットワークを形成する通信バス200に接続されている。通信バス200には、車両の外部環境を認識して走行環境情報を取得する外部環境認識装置150をはじめとして、その他、図示しないエンジン制御装置、変速機制御装置、ブレーキ制御装置等の他の制御装置が接続され、各制御装置が通信バス200を介して互いに制御情報を交換することができる。
【0020】
外部環境認識装置150は、前方認識用のカメラやミリ波レーダ、側方認識用のサイドカメラや側方レーダ等の各種デバイスによる自車両周囲の物体の検出情報、路車間通信や車車間通信等のインフラ通信によって取得した交通情報、GPS衛星等からの信号に基づく自車両位置の測位情報、道路の曲率、車線幅、路肩幅等の道路形状データや、道路方位角、車線区画線の種別、レーン数等の走行制御用データを含む高精細の地図情報等により、自車両周囲の外部環境を認識する。
【0021】
本実施の形態においては、外部環境認識装置150は、車載のカメラ及び画像認識装置による自車両の前方環境の認識を主として行い、前方認識用のカメラとしては、同一対象物を異なる視点から撮像する2台のカメラで構成されるステレオカメラを用いる。このステレオカメラを構成する2台のカメラは、CCDやCMOS等の撮像素子を有するシャッタ同期のカメラであり、例えば、車室内上部のフロントウィンドウ内側のルームミラー近傍に所定の基線長で配置されている。
【0022】
ステレオカメラからの画像データの処理は、例えば以下のように行われる。まず、ステレオカメラで撮像した自車両の進行方向の1組のステレオ画像対に対し、対応する位置のずれ量から距離情報を有する距離画像を生成し、この距離画像の距離情報を用いて、白線等の車線区画線の認識、先行車両や対向車両等の立体物の認識処理を行う。
【0023】
白線等の車線区画線の認識では、車線区画線は道路面と比較して高輝度であるという特徴に基づき、道路の幅方向の輝度変化を評価して、画像平面における左右の車線区画線の位置を画像平面上で特定する。この車線区画線の実空間上の位置(x,y,z)は、画像平面上の位置(i,j)とこの位置に関して算出された視差とに基づいて、すなわち、距離情報に基づいて、周知の座標変換式より算出される。
【0024】
外部環境認識装置150による外部環境の認識結果は、操舵制御装置50や他の制御装置に送信される。操舵制御装置50は、自車両の自動運転やドライバの操舵操作を支援する操舵支援制御を実行する。この操舵支援制御としては、自車両を車線の中央位置に維持する車線維持制御、先行車両に追従して走行する先行車追従制御、自車両の車線からの逸脱を防止する車線逸脱防止制御等がある。
【0025】
尚、目標経路は、操舵制御装置50ではなく、外部環境認識装置150等の他の制御装置で設定するようにしても良い。
【0026】
このような操舵支援制御は、ドライバがハンドル4を把持して所定の保舵力をかけている状態(ハンドル保持状態)を前提として実行される。操舵支援制御を実行中に、ドライバがハンドル4から手を放す等して保舵力が小さくなると、ハンドル手放し状態と判定され、操舵支援制御が解除される。
【0027】
保舵力の大小は、トルクセンサ22によって検出したトルク値(トルクセンサ値)を閾値と比較することによって判断される。トルクセンサ22のトルクセンサ値が閾値以上の場合、「ハンドル保持状態」と判定され、トルクセンサ値が閾値未満の状態が一定時間以上継続した場合、「ハンドル手放し状態」と判定される。
【0028】
この場合、操舵支援制御は、様々な走行環境下で実行されるため、道路の曲率や外乱(横風、道路の横断勾配等)により、後述する目標出力が急激に変化したり、所定以上の大きな出力となる場合がある。このような場合、路面側から伝達される外力によってトーションバー2aに捩れが発生し、ドライバがハンドル4を把持していなくてもトルクセンサ値が変動して閾値以上となってしまい、ハンドル手放し状態を正しく判定できない虞がある。
【0029】
このため、操舵制御装置50は、
図2に示すように、操舵支援制御を実行する操舵支援制御部51に対して、路面側からの外力の影響を排除してハンドル手放し状態を正しく判定するための機能部として、目標出力変化率算出部52、手放し判定閾値修正部53、ハンドル手放し判定部54を備えている。
【0030】
操舵支援制御部51は、外部環境認識装置150からの情報や、各センサ(舵角センサ21、車速センサ24、ヨーレートセンサ25)からの検出情報に基づいて、車線維持制御、先行車追従制御、車線逸脱防止制御等の操舵支援制御を実行する。この操舵支援制御は、ドライバがハンドル4を把持してトルクセンサ22のトルクセンサ値が閾値以上の「ハンドル状態」と判定されている場合に実行され、トルクセンサ値が閾値未満の「ハンドル手放し状態」と判定された場合には、解除される。
【0031】
操舵支援制御部51による操舵支援制御において、車線維持制御と先行車追従制御は基本的に同様の制御であり、外部環境の認識結果に基づいて追従走行の対象となる目標点の軌跡から目標経路を設定し、この目標経路に追従する制御として実行される。追従走行の対象となる目標点は、例えば、車線維持制御では、車線区画線としての左右の白線の道路幅方向の中央位置、先行車追従制御では、先行車両の車幅方向の中央位置に設定され、このような目標点の軌跡を算出して目標経路とする。
【0032】
操舵支援制御部51は、目標経路に追従するための目標操舵角を算出し、この目標操舵角に対応する指示トルクをEPS装置1に出力する。EPS装置1は、指示トルクに相当する操舵トルクが得られるよう、モータ駆動部20を介してEPSモータ12の駆動電流を制御する。これにより、自車両の実操舵角が目標操舵角に収束するよう制御され、目標経路に追従走行するための操舵支援制御が実現される。
【0033】
また、車線逸脱防止制御においては、操舵支援制御部51は、自車両の進行方向が逸脱方向を向いている車線に対して、自車両が逸脱方向の車線を跨ぐまでの時間を推定し、推定した時間が設定値以下の場合、車線逸脱防止制御を実行する。具体的には、操舵支援制御部51は、車線からの逸脱を防止するための目標旋回量となる目標ヨーレートを算出し、この目標ヨーレートに対応する目標操舵トルクをEPS装置1に対する指示トルクとして出力する。
【0034】
EPS装置1は、操舵トルクが目標操舵トルクとなるようEPSモータ12の駆動電流を制御し、自車両のヨーレートが目標ヨーレートとなるように制御する。これにより、自車両に目標ヨーレートに対応する旋回挙動が発生し、車線からの逸脱を防止する車線逸脱防止制御が実現される。
【0035】
目標出力変化率算出部52は、操舵支援制御部51による操舵支援制御の目標出力TGTを読み込み、この目標出力TGTの所定時間当たりの変化率(目標出力変化率)ΔTGTを算出して手放し判定閾値修正部53に送る。操舵支援制御の目標出力TGTとしては、上述した目標操舵角、目標ヨーレート、EPS装置1への指示トルクの少なくとも1つを用いる。
【0036】
手放し判定閾値修正部53は、操舵支援制御部51の目標出力TGT、又は目標出力変化率算出部52で算出した目標出力変化率ΔTGTに基づいて、操舵支援制御中のハンドル手放し状態を判定するための閾値Dthを修正する。具体的には、通常走行におけるハンドル手放し判定の閾値Dthを予め固定値として設定しておき、目標出力TGTと出力閾値TGTthとの比較、目標出力変化率ΔTGTと変化率閾値ΔTGTthとの比較により、通常の閾値Dthを修正する。
【0037】
この場合の出力閾値TGTthは、例えば、目標出力TGTをEPS装置1への指示トルクとする場合、通常の直線路を走行する場合の指示トルクを基準として、基準値に対する所定倍率のトルクとして設定される。基準となる指示トルクに対する倍率は、トルクセンサ22が配設されるトーションバー2aに捩れを発生させる路面側からの外力の大きさの要因、例えば、走行路の曲率の大きさ、横風や道路の横断勾配等の外乱の大きさに対して、必要とされるハンドル保舵力を考慮し、車両重量やタイヤサイズ、操舵機構の特性に応じて設定される。
【0038】
また、変化率閾値ΔTGTthは、例えば、目標出力TGTを目標経路に追従するための目標操舵角とする場合、通常の直線路を走行する場合の舵角の変化速度を基準として、基準値に対する所定倍率の変化速度として設定される。基準となる変化速度に対する倍率は、トルクセンサ22が配設されるトーションバー2aに捩れを発生させる路面側からの外力の変化速度、例えば、走行路の曲率変化、横風や道路の横断勾配等の外乱の変化速度に対して、必要とされるハンドル保舵力を考慮し、車両重量やタイヤサイズ、操舵機構の特性に応じて設定される。
【0039】
そして、目標出力TGTが出力閾値TGTth未満、且つ目標出力変化率ΔTGTが変化率閾値ΔTGTth未満の場合には、通常の値の閾値Dthをハンドル手放し判定部54に送る。一方、目標出力TGTが出力閾値TGTthより大きい場合、又は目標出力変化率ΔTGTが変化率閾値ΔTGTthより大きい場合には、閾値Dthを通常の値よりも大きくして「ハンドル手放し状態」と判定されやすくなる方向に修正する。
【0040】
この閾値Dthに対する修正は、予め設定した一定値だけ通常の値よりも大きくする修正としても良く、また、走行路の曲率や横断勾配、推定される横風の強さに応じた修正としても良い。例えば、外部環境認識装置150や地図情報から得られる走行路の曲率が大きくなる程、ハンドル手放し判定の閾値Dthを通常の値よりも大きくし、横断勾配が大きくなる程、閾値Dthを通常の値よりも大きくする。また、横風の強さを、例えば目標出力の局部的な変化の大きさから推定し、横風が強くなる程、閾値Dthを通常の値よりも大きくする。
【0041】
ハンドル手放し判定部54は、トルクセンサ22からのトルクセンサ値Tsenと手放し判定閾値修正部53からの閾値Tthとを比較し、ドライバによるハンドル4の把持状態が「ハンドル保持状態」か「ハンドル手放し状態」かを判定する。トルクセンサ値Tsenが閾値Tth以上の場合、「ハンドル保持状態」と判定し、トルクセンサ値Tsenが閾値Tth未満の状態が一定時間以上継続した場合、「ハンドル手放し状態」と判定する。
【0042】
ハンドル手放し判定部54の判定結果は、操舵支援制御部51に送られる。操舵支援制御部51は、ハンドル手放し状態と判定されたとき、操舵支援制御を解除し、ドライバにハンドル4を確実に保舵するよう表示や警報音等によって警告する。
【0043】
次に、以上の操舵制御装置50におけるハンドル手放し判定処理について、
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0044】
最初のステップS1において、操舵制御装置50は、操舵支援制御における目標出力TGTを取得する。次にステップS2へ進み、目標出力TGTの制御周期(処理周期)当たりの変化率を、目標出力変化率ΔTGTとして算出する。
【0045】
その後、ステップS3へ進み、目標出力TGTと出力閾値TGTthとを比較し、目標出力TGTが閾値以上に大きくなったか否かを調べる。目標出力TGTが出力閾値TGTth以上となった場合、ステップS3からステップS5へ進んでハンドル手放し判定の閾値Dthを通常の値よりも大きくして、ステップS6へ進む。
【0046】
一方、ステップS3において目標出力TGTが出力閾値TGTth未満の場合には、ステップS3からステップS4へ進み、目標出力変化率ΔTGTと変化率閾値ΔTGTthを比較する。その結果、目標出力変化率ΔTGTが変化率閾値ΔTGTth以上になった場合には、ステップS4から前述のステップS5を経てステップS6へ進み、目標出力変化率ΔTGTが変化率閾値ΔTGTth未満の場合、ハンドル手放し判定の閾値Dthを通常の値として、ステップS6へ進む。
【0047】
ステップS6では、トルクセンサ22で検出したトルク(トルクセンサ値)Tsenを閾値Tthと比較し、ハンドル手放し判定を行う。トルクセンサ値Tsenが閾値Tth以上の場合、「ハンドル保持状態」と判定して操舵支援制御の実行を許可し、トルクセンサ値Tsenが閾値Tth未満の状態が一定時間以上継続した場合には、「ハンドル手放し状態」と判定し、ハンドルを確実に保持するようドライバに警告する。
【0048】
このように本実施の形態においては、走行路の曲率、横風や道路の横断勾配等の外乱が大きいと判断される場合には、ハンドル手放し判定の閾値Tthを通常の値よりも大きくするので、路面側からの外力によってトーションバー2aに捻れが発生しても、誤判定を防止してハンドル手放し状態を精度良く判定することが可能となる。
【符号の説明】
【0049】
1 電動パワーステアリング(EPS)装置
2a トーションバー
4 ハンドル
12 EPSモータ
15 操舵支援制御装置
20 モータ駆動部
21 舵角センサ
22 トルクセンサ
24 車速センサ
25 ヨーレートセンサ
50 操舵制御装置
51 操舵支援制御部
52 目標出力変化率算出部
53 手放し判定閾値修正部
54 ハンドル手放し判定部
150 外部環境認識装置