(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】流体漏れ検出システム
(51)【国際特許分類】
G01M 3/26 20060101AFI20220302BHJP
G01M 3/02 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
G01M3/26 R
G01M3/02 J
(21)【出願番号】P 2018093345
(22)【出願日】2018-05-14
【審査請求日】2020-11-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岩本 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭太郎
(72)【発明者】
【氏名】菊池 貴好
(72)【発明者】
【氏名】高橋 佑介
【審査官】瓦井 秀憲
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-054021(JP,A)
【文献】特開平10-115568(JP,A)
【文献】特開2014-139548(JP,A)
【文献】特開2013-178933(JP,A)
【文献】特開2012-088322(JP,A)
【文献】特開平06-160253(JP,A)
【文献】特開2001-344674(JP,A)
【文献】特開2008-286765(JP,A)
【文献】特開2006-257937(JP,A)
【文献】特開2017-207078(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0167614(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 3/00- 3/40
G01N 27/00
F16J 15/3296
F15B 15/14
F15B 20/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブから延出するピストンロッドと、前記ピストンロッドが挿通し前記シリンダチューブに設けられるシリンダヘッドと、を有する流体圧シリンダにおいて前記ピストンロッドと前記シリンダヘッドとの間の隙間を通じた作動流体の漏れを検出するための流体漏れ検出システムであって、
前記流体圧シリンダに設けられ、前記ピストンロッドと前記シリンダヘッドとの間の前記隙間を通じて漏れる作動流体の状態量を測定する測定ユニットと、
前記測定ユニットの測定結果を取得するコントローラと、
時間を計測するタイマーと、を備え、
前記測定ユニットは、
前記シリンダヘッドに設けられ前記ピストンロッドと前記シリンダヘッドとの間の前記隙間を封止するロッドシールと、
前記ロッドシールから漏れる作動流体が導かれる検出空間と、
前記検出空間における作動流体の前記状態量の測定と測定結果の出力とを所定の作動条件で実行する測定部と、を有し、
前記コントローラは、
外部から入力される変更信号を取得する信号取得部と、
前記測定部に対して前記作動条件を指令する指令信号を出力して前記作動条件を変更する条件設定部と、を有し、
前記指令信号には、
第1作動条件で前記測定部を作動させる第1指令信号と、
前記第1作動条件よりも作動頻度が高い第2作動条件で前記測定部を作動させる第2指令信号と、を含み、
前記条件設定部は、前記信号取得部が取得する前記変更信号に応じて、前記第1指令信号又は前記第2指令信号を出力し、
前記タイマーは、前記第2指令信号の出力から所定時間が経過すると前記変更信号を出力し、
前記条件設定部は、前記信号取得部が前記タイマーから前記変更信号を取得すると、前記第1指令信号を出力する流体漏れ検出システム。
【請求項2】
シリンダチューブから延出するピストンロッドと、前記ピストンロッドが挿通し前記シリンダチューブに設けられるシリンダヘッドと、を有する流体圧シリンダにおいて前記ピストンロッドと前記シリンダヘッドとの間の隙間を通じた作動流体の漏れを検出するための流体漏れ検出システムであって、
前記流体圧シリンダに設けられ、前記ピストンロッドと前記シリンダヘッドとの間の前記隙間を通じて漏れる作動流体の状態量を測定する測定ユニットと、
前記測定ユニットの測定結果を取得するコントローラと、を備え、
前記測定ユニットは、
前記シリンダヘッドに設けられ前記ピストンロッドと前記シリンダヘッドとの間の前記隙間を封止するロッドシールと、
前記ロッドシールから漏れる作動流体が導かれる検出空間と、
前記検出空間における作動流体の前記状態量の測定と測定結果の出力とを所定の作動条件で実行する測定部と、を有し、
前記コントローラは、
外部から入力される変更信号を取得する信号取得部と、
前記測定部に対して前記作動条件を指令する指令信号を出力して前記作動条件を変更する条件設定部と、を有し、
前記指令信号には、
第1作動条件で前記測定部を作動させる第1指令信号と、
前記第1作動条件よりも作動頻度が高い第2作動条件で前記測定部を作動させる第2指令信号と、を含み、
前記条件設定部は、前記信号取得部が取得する前記変更信号に応じて、前記第1指令信号又は前記第2指令信号を出力し、
前記測定部は、前記検出空間の温度を測定可能に構成され、
前記コントローラは、前記測定部が測定する温度に基づき、前記信号取得部に復帰信号を出力する温度判定部をさらに有し、
前記条件設定部は、前記信号取得部が前記温度判定部から前記復帰信号を取得すると、前記第1指令信号を出力することを特徴とする流体漏れ検出システム。
【請求項3】
シリンダチューブから延出するピストンロッドと、前記ピストンロッドが挿通し前記シリンダチューブに設けられるシリンダヘッドと、を有する流体圧シリンダにおいて前記ピストンロッドと前記シリンダヘッドとの間の隙間を通じた作動流体の漏れを検出するための流体漏れ検出システムであって、
前記流体圧シリンダに設けられ、前記ピストンロッドと前記シリンダヘッドとの間の前記隙間を通じて漏れる作動流体の状態量を測定する測定ユニットと、
前記測定ユニットの測定結果を取得するコントローラと、を備え、
前記測定ユニットは、
前記シリンダヘッドに設けられ前記ピストンロッドと前記シリンダヘッドとの間の前記隙間を封止するロッドシールと、
前記ロッドシールから漏れる作動流体が導かれる検出空間と、
前記検出空間における作動流体の前記状態量の測定と測定結果の出力とを所定の作動条件で実行する測定部と、を有し、
前記コントローラは、
外部から入力される変更信号を取得する信号取得部と、
前記測定部に対して前記作動条件を指令する指令信号を出力して前記作動条件を変更する条件設定部と、を有し、
前記指令信号には、
第1作動条件で前記測定部を作動させる第1指令信号と、
前記第1作動条件よりも作動頻度が高い第2作動条件で前記測定部を作動させる第2指令信号と、を含み、
前記条件設定部は、前記信号取得部が取得する前記変更信号に応じて、前記第1指令信号又は前記第2指令信号を出力し、
前記測定部は、前記第1作動条件と前記第2作動条件とにおいて共通の方法により前記状態量を測定し、所定の測定時間を有し所定の時間間隔で繰り返される測定サイクルごとに、所定のサンプリング周期によって前記状態量を測定すると共に、測定結果を蓄積して蓄積されたデータ量が所定の送信容量に達すると蓄積された測定結果を前記コントローラに対して送信し、
前記条件設定部によって変更される前記作動条件には、前記測定サイクルの前記測定時
間、前記サンプリング周期、及び前記送信容量の少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする流体漏れ検出システム。
【請求項4】
シリンダチューブから延出するピストンロッドと、前記ピストンロッドが挿通し前記シリンダチューブに設けられるシリンダヘッドと、を有する流体圧シリンダにおいて前記ピストンロッドと前記シリンダヘッドとの間の隙間を通じた作動流体の漏れを検出するための流体漏れ検出システムであって、
前記流体圧シリンダに設けられ、前記ピストンロッドと前記シリンダヘッドとの間の前記隙間を通じて漏れる作動流体の状態量を測定する測定ユニットと、
前記測定ユニットの測定結果を取得するコントローラと、
作業者によって操作される操作部と、を備え、
前記測定ユニットは、
前記シリンダヘッドに設けられ前記ピストンロッドと前記シリンダヘッドとの間の前記隙間を封止するロッドシールと、
前記ロッドシールから漏れる作動流体が導かれる検出空間と、
前記検出空間における作動流体の前記状態量の測定と測定結果の出力とを所定の作動条件で実行する測定部と、を有し、
前記コントローラは、
外部から入力される変更信号を取得する信号取得部と、
前記測定部に対して前記作動条件を指令する指令信号を出力して前記作動条件を変更する条件設定部と、を有し、
前記指令信号には、
第1作動条件で前記測定部を作動させる第1指令信号と、
前記第1作動条件よりも作動頻度が高い第2作動条件で前記測定部を作動させる第2指令信号と、を含み、
前記条件設定部は、前記信号取得部が取得する前記変更信号に応じて、前記第1指令信号又は前記第2指令信号を出力し、
前記測定部は、前記第1作動条件と前記第2作動条件とにおいて共通の方法により前記状態量を測定し、
前記信号取得部は、作業者による前記操作部の操作に応じて前記変更信号を取得することを特徴とする流体漏れ検出システム。
【請求項5】
前記測定部は、前記状態量を測定した測定結果を蓄積し、蓄積されたデータ量が所定のデータ量に達すると蓄積された測定結果を前記コントローラに対して送信することを特徴とする
請求項1から4のいずれか一つに記載の流体漏れ検出システム。
【請求項6】
前記第1作動条件では、前記測定部は、間欠的に前記検出空間の作動流体の前記状態量を測定し、
前記第2作動条件では、前記測定部は、連続的に前記検出空間の作動流体の前記状態量を測定することを特徴とする請求項1から5のいずれか一つに記載の流体漏れ検出システム。
【請求項7】
前記第1作動条件では、前記測定部は、間欠的に測定結果を前記コントローラに送信し、
前記第2作動条件では、前記測定部は、連続的に測定結果を前記コントローラに送信することを特徴とする請求項1から6のいずれか一つに記載の流体漏れ検出システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体漏れ検出システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、流体圧装置に供給される作動流体の状態を検出する流体検出器として、作動流体の圧力を検出する圧力検出器が開示されている。このような圧力検出器は、作動流体に接触する検出部と、検出部で検出された値を外部に出力する出力部と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流体圧シリンダにおいて、ピストンロッドの外周のシール部材を通じた流体漏れを検出するために、特許文献1に開示されるような流体検出器を用いて漏れ出した流体を検出することが考えられる。この場合には、例えば、検出器による検出間隔が短いほど、早期かつ確実に流体漏れを検出できる。その一方、検出間隔が短いと、例えば、流体圧シリンダが作動していない状態のデータなど、不要なデータを収集することがある。よって、検出器の最適な作動条件を設定することが困難である。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、流体圧シリンダにおいて効率よく流体漏れを検出できる流体漏れ検出システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、流体漏れ検出システムであって、流体圧シリンダに設けられ、ピストンロッドとシリンダヘッドとの間の隙間を通じて漏れる作動流体の状態量を測定する測定ユニットと、測定ユニットの測定結果を取得するコントローラと、を備え、測定ユニットは、シリンダヘッドに設けられピストンロッドとシリンダヘッドとの間の隙間を封止するロッドシールと、ロッドシールから漏れる作動流体が導かれる検出空間と、検出空間における作動流体の状態量の測定と測定結果の出力とを所定の作動条件で実行する測定部と、を有し、コントローラは、外部から入力される変更信号を取得する信号取得部と、測定部に対して作動条件を指令する指令信号を出力して作動条件を変更する条件設定部と、を有し、指令信号には、第1作動条件で測定部を作動させる第1指令信号と、第1作動条件よりも作動頻度が高い第2作動条件で測定部を作動させる第2指令信号と、を含み、条件設定部は、信号取得部が取得する変更信号に応じて、第1指令信号又は第2指令信号を出力し、タイマーは、第2指令信号の出力から所定時間が経過すると変更信号を出力し、条件設定部は、信号取得部がタイマーから変更信号を取得すると、第1指令信号を出力する。
【0007】
本発明は、流体漏れ検出システムであって、流体圧シリンダに設けられ、ピストンロッドとシリンダヘッドとの間の隙間を通じて漏れる作動流体の状態量を測定する測定ユニットと、測定ユニットの測定結果を取得するコントローラと、を備え、測定ユニットは、シリンダヘッドに設けられピストンロッドとシリンダヘッドとの間の隙間を封止するロッドシールと、ロッドシールから漏れる作動流体が導かれる検出空間と、検出空間における作動流体の状態量の測定と測定結果の出力とを所定の作動条件で実行する測定部と、を有し、コントローラは、外部から入力される変更信号を取得する信号取得部と、測定部に対して作動条件を指令する指令信号を出力して作動条件を変更する条件設定部と、を有し、指令信号には、第1作動条件で測定部を作動させる第1指令信号と、第1作動条件よりも作動頻度が高い第2作動条件で測定部を作動させる第2指令信号と、を含み、条件設定部は、信号取得部が取得する変更信号に応じて、第1指令信号又は第2指令信号を出力し、測定部は、検出空間の温度を測定可能に構成され、コントローラは、測定部が測定する温度に基づき、信号取得部に復帰信号を出力する温度判定部をさらに有し、条件設定部は、信号取得部が温度判定部から復帰信号を取得すると、第1指令信号を出力する。
【0008】
これらの発明では、外部から条件設定部に変更信号が入力されることで、作動頻度が相対的に低い第1作動条件と相対的に高い第2作動条件との間で測定部の作動条件が切り換わる。よって、状況に応じて最適な作動条件で測定ユニットを作動させることができる。また、測定部を第2作動条件とした後、作業者が第1作動条件に戻すことを忘れた場合であっても、タイマーや温度判定部からの信号により測定部の作動条件は第1作動条件に変更される。よって、不要なデータの収集や電力消費を抑制することができる。
【0009】
本発明は、流体漏れ検出システムであって、流体圧シリンダに設けられ、ピストンロッドとシリンダヘッドとの間の隙間を通じて漏れる作動流体の状態量を測定する測定ユニットと、測定ユニットの測定結果を取得するコントローラと、を備え、測定ユニットは、シリンダヘッドに設けられピストンロッドとシリンダヘッドとの間の隙間を封止するロッドシールと、ロッドシールから漏れる作動流体が導かれる検出空間と、検出空間における作動流体の状態量の測定と測定結果の出力とを所定の作動条件で実行する測定部と、を有し、コントローラは、外部から入力される変更信号を取得する信号取得部と、測定部に対して作動条件を指令する指令信号を出力して作動条件を変更する条件設定部と、を有し、指令信号には、第1作動条件で測定部を作動させる第1指令信号と、第1作動条件よりも作動頻度が高い第2作動条件で測定部を作動させる第2指令信号と、を含み、条件設定部は、信号取得部が取得する変更信号に応じて、第1指令信号又は第2指令信号を出力し、測定部は、第1作動条件と第2作動条件とにおいて共通の方法により状態量を測定し、所定の測定時間を有し所定の時間間隔で繰り返される測定サイクルごとに、所定のサンプリング周期によって状態量を測定すると共に、測定結果を蓄積して蓄積されたデータ量が所定の送信容量に達すると蓄積された測定結果をコントローラに対して送信し、条件設定部によって変更される作動条件には、測定サイクルの測定時間、サンプリング周期、及び送信容量の少なくともいずれか一つを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明は、流体漏れ検出システムであって、流体圧シリンダに設けられ、ピストンロッドとシリンダヘッドとの間の隙間を通じて漏れる作動流体の状態量を測定する測定ユニットと、測定ユニットの測定結果を取得するコントローラと、作業者によって操作される操作部と、を備え、測定ユニットは、シリンダヘッドに設けられピストンロッドとシリンダヘッドとの間の隙間を封止するロッドシールと、ロッドシールから漏れる作動流体が導かれる検出空間と、検出空間における作動流体の状態量の測定と測定結果の出力とを所定の作動条件で実行する測定部と、を有し、コントローラは、外部から入力される変更信号を取得する信号取得部と、測定部に対して作動条件を指令する指令信号を出力して作動条件を変更する条件設定部と、を有し、指令信号には、第1作動条件で測定部を作動させる第1指令信号と、第1作動条件よりも作動頻度が高い第2作動条件で測定部を作動させる第2指令信号と、を含み、条件設定部は、信号取得部が取得する変更信号に応じて、第1指令信号又は第2指令信号を出力し、測定部は、第1作動条件と第2作動条件とにおいて共通の方法により状態量を測定し、信号取得部は、作業者による操作部の操作に応じて変更信号を取得する。
【0011】
この発明では、作業者が任意のタイミングで測定部の作動条件を変更できる。
【0012】
本発明は、測定部が、状態量を測定した測定結果を蓄積し、蓄積されたデータ量が所定のデータ量に達すると蓄積された測定結果をコントローラに対して送信することを特徴とする。
【0013】
本発明は、第1作動条件では、測定部が、間欠的に検出空間の作動流体の状態量を測定し、第2作動条件では、測定部が、連続的に検出空間の作動流体の状態量を測定することを特徴とする。
【0014】
本発明は、第1作動条件では、測定部が、間欠的に測定結果をコントローラに送信し、第2作動条件では、測定部が、連続的に測定結果をコントローラに送信する。
【0015】
これらの発明では、測定部の作動条件を作動頻度が高い第2作動条件とすることで、流体漏れの検出精度を大きく向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、流体漏れ検出システムによる流体漏れの検出が効率化される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る流体漏れ検出システムの構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る油圧シリンダの一部断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る油圧シリンダの拡大断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る流体漏れ検出システムの測定ユニットを示すブロック図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る流体漏れ検出システムの制御ユニットを示すブロック図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る流体漏れ検出システムの測定部の第1作動条件を説明するための模式的なグラフ図であり、縦軸がデータ保管部に蓄積されるデータ容量、横軸が時間を示す。
【
図7】本発明の実施形態に係る流体漏れ検出システムの変形例に係る制御ユニットを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る流体漏れ検出システム100について説明する。
【0019】
まず、
図1を参照して、流体漏れ検出システム100を備える流体圧システム101の全体構成について説明する。
【0020】
流体圧システム101は、流体圧駆動機械としての建設機械、特に油圧ショベルに用いられる。流体圧システム101は、複数の流体圧シリンダに給排される作動流体の流れを制御して、流体圧シリンダを駆動させる。
【0021】
流体圧システム101は、
図1に示すように、ブーム,アーム,及びバケットといった駆動対象(図示省略)を駆動する流体圧シリンダとしての油圧シリンダ1と、油圧シリンダ1に給排される作動油(作動流体)を制御して油圧シリンダ1の作動を制御する流体圧制御装置102と、油圧シリンダ1に設けられるシール部材としてのロッドシール11(
図3参照)を通じた油漏れを検出する流体漏れ検出システム100と、を備える。
【0022】
図2に示すように、油圧シリンダ1は、筒状のシリンダチューブ2と、シリンダチューブ2に挿入されるピストンロッド3と、ピストンロッド3の基端に設けられるピストン4と、を備える。ピストン4は、シリンダチューブ2の内周面に沿って摺動自在に設けられる。シリンダチューブ2の内部は、ピストン4によってロッド側室(流体圧室)2aと反ロッド側室2bとに区画される。
【0023】
ピストンロッド3は、先端がシリンダチューブ2の開口端から延出している。図示しない油圧源からロッド側室2a又は反ロッド側室2bに選択的に作動油が導かれると、ピストンロッド3は、シリンダチューブ2に対して移動する。これにより、油圧シリンダ1は伸縮作動する。
【0024】
シリンダチューブ2の開口端には、ピストンロッド3が挿通するシリンダヘッド5が設けられる。シリンダヘッド5は、複数のボルト6を用いてシリンダチューブ2の開口端に締結される。
【0025】
流体圧制御装置102は、公知の構成を採用できるため、詳細な図示及び説明を省略する。流体圧制御装置102は、油圧ポンプ(油圧源)から各油圧シリンダ1に導かれる作動油の流れを制御して、各油圧シリンダ1を作動させる。
【0026】
次に、流体漏れ検出システム100について、具体的に説明する。
【0027】
流体漏れ検出システム100は、油圧シリンダ1において、ロッド側室2aからピストンロッド3の外周面とシリンダヘッド5の内周面との間を通じて作動油が漏れ出す油漏れ(流体漏れ)の発生を検出する。
【0028】
流体漏れ検出システム100は、主に
図1,3に示すように、油圧シリンダ1に設けられピストンロッド3の外周面とシリンダヘッド5の内周面との間の環状の隙間(以下、「環状隙間8」と称する。)から漏れ出す作動油の状態量を測定する測定ユニット10と、測定ユニット10の測定結果に基づき油圧シリンダ1における油漏れの発生を判定する制御ユニット70と、作業者によって操作される操作部90(
図5参照)と、を備える。
【0029】
測定ユニット10は、
図3に示すように、シリンダヘッド5に設けられピストンロッド3の外周面とシリンダヘッド5の内周面との間の環状隙間8を封止するロッドシール11と、ロッド側室2aからロッドシール11を超えて漏れる作動油が導かれる検出空間20と、シリンダヘッド5に設けられて環状隙間8を封止し、ロッドシール11と共に検出空間20を区画する検出シール12と、検出空間20に連通する連通路21と、連通路21の圧力がリリーフ圧に達すると開弁して連通路21の圧力を逃がすリリーフ弁30と、ロッドシール11を超えて検出空間20に漏れ出した作動油の状態量を測定する測定部50と、リリーフ弁30及び測定部50を収容するハウジング40と、を備える。
【0030】
シリンダヘッド5の内周には、ロッドシール11、ブッシュ13、検出シール12、ダストシール14が、基端側(
図3中右側)から先端側(
図3中左側)に向かってこの順で介装される。ロッドシール11、ブッシュ13、検出シール12、ダストシール14は、それぞれシリンダヘッド5の内周に形成される環状溝5a,5b,5c,5dに収容される。
【0031】
ブッシュ13がピストンロッド3の外周面に摺接することにより、ピストンロッド3がシリンダチューブ2の軸方向に移動するように支持される。
【0032】
ロッドシール11は、ピストンロッド3の外周とシリンダヘッド5の内周の環状溝5aとの間で圧縮されており、これにより環状隙間8を封止する。ロッドシール11は、ロッド側室2a(
図2参照)に臨んでおり、ロッドシール11によって、ロッド側室2a内の作動油が外部に漏れることが防止される。ロッドシール11は、いわゆるUパッキンである。
【0033】
ダストシール14は、シリンダチューブ2の外部に臨むようにシリンダヘッド5に設けられて、環状隙間8を封止する。ダストシール14は、ピストンロッド3の外周面に付着するダストをかき出して、外部からシリンダチューブ2内へのダストの侵入を防止する。
【0034】
検出シール12は、ロッドシール11と同様に、ピストンロッド3の外周とシリンダヘッド5の内周の環状溝5cとの間で圧縮されており、これにより環状隙間8を封止する。検出シール12は、ロッドシール11とダストシール14の間に設けられて、ロッドシール11と共に検出空間20を区画する。つまり、検出空間20は、ピストンロッド3、シリンダヘッド5、ロッドシール11、及び検出シール12(本実施形態では、これに加えてブッシュ13)によって区画される空間である。検出シール12は、ロッドシール11と同様、Uパッキンである。
【0035】
連通路21は、検出空間20に連通するように、シリンダヘッド5及びハウジング40にわたって形成される。連通路21は、シリンダヘッド5に形成され検出空間20に開口する第1連通路22と、ハウジング40に形成され第1連通路22に連通する第2連通路23と、を有する。連通路21には、ロッドシール11から漏れ出すロッド側室2aの作動油が環状隙間8及び検出空間20を通じて導かれる。
【0036】
リリーフ弁30は、第2連通路23における作動油の圧力が所定の圧力(リリーフ圧)に達すると開弁し、第2連通路23を通じて検出空間20内の作動油を外部に排出する。これにより、検出空間20内の圧力は、リリーフ弁30によってリリーフ圧に制限される。リリーフ弁30の構造は、公知の構成を採用することができるため、詳細な図示及び説明は省略する。
【0037】
ハウジング40は、シリンダヘッド5の端部に圧入により固定される。ハウジング40には、測定部50を収容するセンサ収容穴41と、リリーフ弁30を収容するバルブ収容穴42と、がさらに形成される。センサ収容穴41及びバルブ収容穴42は、それぞれ第2連通路23に連通し、バルブ収容穴42がセンサ収容穴41よりも第1連通路22側(上流側)において第2連通路23に連通している。
【0038】
測定部50は、作動油の状態量としての圧力の測定と制御ユニット70への測定結果の出力とを所定の作動条件により実行する。測定部50は、作動条件に基づいた作動頻度により、圧力の測定と測定結果の出力とを実行する。作動頻度とは、測定部50が圧力を測定する測定頻度と、測定部50から制御ユニット70へ測定結果が送信される送信頻度と、を含むものである。また、測定部50は、検出空間20内の温度も測定可能に構成される。
【0039】
測定部50は、
図4に示すように、圧力及び温度を測定可能な圧力温度センサであるセンサ部51と、センサ部51に指令信号を出力すると共にセンサ部51の測定結果を取得するセンサコントローラ60と、無線通信により制御ユニット70と信号の送受信を行う第1通信部52と、センサ部51、センサコントローラ60、及び第1通信部52の電源(動力源)であるバッテリ54と、を有する。
【0040】
測定部50は、センサ部51、センサコントローラ60、及びバッテリ54がそれぞれ同一の筐体内に組み込まれて構成されており、
図3に示すように、ハウジング40に形成されるセンサ収容穴41に一部が収容される。また、測定部50は、ハウジング40の第2連通路23に連通するねじ孔24に螺合により固定される。
【0041】
センサ部51は、検出空間20内の圧力及び温度を測定する。これにより、第1連通路22及び第2連通路23(
図3参照)を通じて検出空間20に導かれる作動油の圧力及び温度が、センサ部51によって測定される。センサ部51の作動については、後に詳細に説明する。
【0042】
バッテリ54は、センサコントローラ60、センサ部51、及び第1通信部52に電気的に接続される。センサコントローラ60、センサ部51、及び第1通信部52は、バッテリ54からの給電によりそれぞれ作動する。
【0043】
センサコントローラ60は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。センサコントローラ60は、複数のマイクロコンピュータで構成されてもよい。センサコントローラ60は、少なくとも、本明細書に記載されるセンサコントローラ60による制御のために必要な処理を実行可能となるようにプログラムされている。なお、センサコントローラ60は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、センサコントローラ60による各制御を当該複数の装置で分散処理するように構成されていてもよい。
【0044】
センサコントローラ60は、センサ部51に指令信号を出力する指令部61と、センサ部51の測定結果及びバッテリ54の電池残量を取得し蓄えるデータ保管部62と、を有する。
【0045】
指令部61からの指令信号に基づき、センサ部51は所定の作動条件(測定頻度)で作動して、検出空間20圧力及び温度を測定する。センサ部51の測定結果は、データ保管部62に入力される。
【0046】
データ保管部62は、センサ部51の測定結果とバッテリ54の電池残量を蓄積し、蓄積されたデータを所定の作動条件(送信頻度)で制御ユニット70に向け出力する。データ保管部62からデータを出力する送信頻度は、指令部61の指令信号に応じて変更可能である。
【0047】
第1通信部52は、センサコントローラ60に電気的に接続され、センサコントローラ60との間で信号の送受信を行う。また、第1通信部52は、制御ユニット70との間で無線通信可能に構成される。
【0048】
制御ユニット70は、例えば、建設機械の運転室(キャビン)内に配置される。制御ユニット70は、
図5に示すように、測定部50の第1通信部52と無線通信により信号の送受信を行う第2通信部71と、第2通信部71を通じて測定ユニット10の測定部50との間で信号の送受信が行われるコントローラ80と、時間を計測するタイマー75と、を備える。
【0049】
コントローラ80は、CPU(中央演算処理装置)、ROM(リードオンリメモリ)、RAM(ランダムアクセスメモリ)、及びI/Oインターフェース(入出力インターフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。RAMはCPUの処理におけるデータを記憶し、ROMはCPUの制御プログラム等を予め記憶し、I/Oインターフェースは接続された機器との情報の入出力に使用される。コントローラ80は、複数のマイクロコンピュータで構成されてもよい。コントローラ80は、少なくとも、本明細書に記載されるコントローラ80による制御のために必要な処理を実行可能となるようにプログラムされている。なお、コントローラ80は一つの装置として構成されていても良いし、複数の装置に分けられ、本実施形態における各制御を当該複数の装置で分散処理するように構成されていてもよい。
【0050】
コントローラ80は、測定部50の測定結果を取得し、測定部50の測定結果に基づき油圧シリンダ1において油漏れが発生しているか否かを判定する。また、コントローラ80は、第2通信部71を通じて測定ユニット10の測定部50の作動条件を変更する。
【0051】
コントローラ80は、測定部50の測定結果を記憶する記憶部81と、測定部50の測定結果に応じて油漏れの発生の有無を判定する漏れ判定部82と、測定部50の作動条件を設定する条件設定部83と、外部から入力される変更信号を取得する信号取得部84と、を有する。
【0052】
測定部50のセンサコントローラ60から送信される情報(検出空間20の圧力及び温度、バッテリ54の電池残量)は、記憶部81に記憶されると共に、漏れ判定部82に入力される。
【0053】
漏れ判定部82は、測定ユニット10のセンサ部51が測定する状態量としての圧力に基づき、油圧シリンダ1において油漏れが発生しているか否かを判定する。漏れ判定部82は、測定ユニット10の測定結果が入力されるごとに油漏れの発生を判定する。
【0054】
条件設定部83は、第1,第2通信部52,71を通じて、センサコントローラ60の指令部61に対し、測定部50の作動条件を指令する指令信号を出力する。センサコントローラ60の指令部61は、条件設定部83から指令信号を受信すると、指令信号に対応した作動条件で作動するようにセンサ部51及び/又はデータ保管部62に信号を出力する。
【0055】
具体的には、条件設定部83は、指令信号として、第1作動条件で測定部50を作動させる第1指令信号と、第1作動条件よりも作動頻度が高い第2作動条件で測定部50を作動させる第2指令信号と、を出力する。
【0056】
信号取得部84は、作業者が操作部90を操作することにより出力される変更信号を取得する。条件設定部83は、信号取得部84が取得した変更信号に応じて、第1指令信号又は第2指令信号をセンサコントローラ60の指令部61に出力する。
【0057】
タイマー75は、開始信号を受信すると時間の計測を開始し、所定時間が経過すると終了信号を出力する。より具体的には、タイマー75は、測定部50が第2作動条件で作動している時間を計測する。
【0058】
操作部90は、運転室内に配置され作業者によって操作可能な操作ボタンである。操作部90は、測定部50を第1作動条件で作動させるための第1ボタン91と、測定部50を第2作動条件で作動させるための第2ボタン92と、を有する。第1ボタン91が作業者により押圧(操作)されると、操作部90から変更信号として第1変更信号がコントローラ80に出力される。信号取得部84が第1変更信号を取得すると、条件設定部83は第1指令信号を出力する。同様に、第2ボタン92が作業者により押圧されると、操作部90から変更信号として第2変更信号がコントローラ80に出力される。信号取得部84が第2変更信号を取得すると、条件設定部83は第2指令信号を出力する。
【0059】
次に、流体漏れ検出システム100の作用について説明する。
【0060】
まず、測定ユニット10の測定部50の作動について、具体的に説明する。
【0061】
測定部50は、相対的に作動頻度が低い第1作動条件と、相対的に作動頻度が高い第2作動条件と、により作動可能に構成される。
【0062】
第1作動条件では、センサ部51は、所定の時間長を有し所定の時間間隔で繰り返される測定サイクルごとに、所定のサンプリング周期によって圧力及び温度を測定する。データ保管部62は、蓄積されたデータ(センサ部51の測定結果及びバッテリ54の電池残量)が所定のデータ容量に達すると、第1通信部52を通じて制御ユニット70に蓄積されたデータを送信する。以下では、測定サイクルの時間長(測定サイクルの開始から終了までの時間)を「測定時間Td」、ある測定サイクルの開始から次回の測定サイクルの開始までの時間間隔を「サイクル間隔CT」とする。また、センサ部51のサンプリング周期を「サンプリング周期SC」、データ保管部62が測定結果を送信(出力)するまでに蓄積するデータ容量を「送信容量Dc」とする。
【0063】
図6は、時間とデータ保管部62に蓄積される測定結果のデータ容量との関係を示す模式的なグラフ図であり、測定部50が第1作動条件で作動する場合を示すものである。
図6に示すように、センサ部51は、測定時間Tdの間、サンプリング周期SCごとに検出空間20内の圧力及び温度を測定し、検出開始から測定時間Tdが経過すると、圧力及び温度の測定を終了する。圧力及び温度の測定の終了後は、センサ部51は、圧力及び温度を測定しない待機状態(スリープ状態)となる。
【0064】
センサ部51の測定結果は、データ保管部62に蓄積される。データ保管部62は、送信容量Dc分だけ測定結果が蓄積されるごとに、蓄積されたデータを第1通信部52に出力する。
図6では、5回分の測定結果のデータ容量が送信容量Dcに相当する。第1通信部52は、データ保管部62から出力されたデータをコントローラ80の第2通信部71に無線送信する。送信頻度は、測定部50におけるセンサコントローラ60のデータ保管部62からコントローラ80にデータが送信される送信容量Dcに応じて定められる。
【0065】
なお、
図6に示すように、データ保管部62は、蓄積されたデータを第1通信部52に出力するごとに蓄積されたデータを消去するが、これに限らず、データを蓄積し続けるものでもよい。
【0066】
このように、第1作動条件では、センサ部51は、検出空間20内の圧力及び温度を常時(連続的に)測定するのではなく、測定サイクルごとに間欠的に測定する。また、センサ部51の測定結果は、直ちにコントローラ80に送信されるものではなく、送信容量Dcだけデータ保管部62に蓄積されると、コントローラ80に送信される。つまり、センサ部51の測定結果は、間欠的にコントローラ80に送信される。第1作動条件では、センサ部51による測定とデータ保管部62からの測定結果の送信が、それぞれ間欠的に実行されるため、消費電力を低減することができる。
【0067】
第2作動条件では、センサ部51は、センサとしての最大のサンプリング周期により、圧力及び温度を測定する。つまり、第2作動条件では、第1作動条件のように測定サイクルが設定されず、連続的に圧力及び温度が測定される。別の言い方をすれば、第2作動条件では、第1作動条件における測定時間をサイクル周期と同じに設定(測定時間=サイクル周期)し、待機状態となることがないように設定された条件である。第2作動条件では、サンプリング周期に応じて圧力及び温度が測定されるたびに、データ保管部62を通じて制御ユニット70に測定結果が送信される。このように、第2作動条件は、センサ部51による圧力及び温度の測定と、測定結果の送信と、がそれぞれ常時(連続的に)実行されるものである。
【0068】
次に、コントローラ80による油漏れの判定について説明する。
【0069】
油圧シリンダ1のロッドシール11の劣化が進行すると、ロッド側室2aの油圧がロッドシール11を超えて検出空間20内に導かれる。よって、ロッドシール11の劣化に伴い検出空間20の圧力及び温度は上昇する。流体漏れ検出システム100では、検出空間20内の圧力及び温度を測定ユニット10の測定部50により測定し、測定結果に基づいて制御ユニット70のコントローラ80で油漏れの発生の有無を判定することにより、油圧シリンダ1における油漏れが検出される。なお、本明細書においては、ロッドシール11の「劣化」とは、摩耗及び損傷を含むものである。摩耗とは、ピストンロッド3の往復動等の定常的な負荷に起因するものであり、寿命による劣化を指すものである。損傷とは、アクシデントなどによる偶発的な負荷に起因する劣化を指すものである。
【0070】
油漏れの判定を具体的に説明すると、本実施形態では、検出空間20内の圧力に基づいて油漏れの判定が行われる。コントローラ80の漏れ判定部82は、センサコントローラ60のデータ保管部62からセンサ部51の測定結果が送信されるごとに、送信されたデータ群から圧力データとして最大圧力値を取得する。漏れ判定部82は、最大圧力値と予め定められる判定閾値とを比較し、最大圧力値が判定閾値以上であると油漏れが発生していると判定する。漏れ判定部82により油漏れが発生していると判定されると、判定結果が報知部(図示省略)に送信され、油漏れの発生が作業者に報知される。このようにして、油圧シリンダ1における油漏れが検出される。一方、最大圧力値が判定閾値よりも小さい場合には、漏れ判定部82は、油漏れが発生していないと判定する。
【0071】
なお、本明細書における「油漏れが発生していない」とは、厳密な意味ではなく、ロッドシール11を超えて作動油が検出空間20内に全く漏れ出していないことのみを意味するものではない。例えば、作動油がロッド側室2aから検出空間20内に漏れ出した場合であっても、ロッドシール11の劣化(摩耗・損傷)が許容される程度である場合には、漏れ判定部82は「油漏れが発生していない」と判定する。つまり、「油漏れが発生している」とは、ロッドシール11の劣化(摩耗・損傷)が許容範囲を超えた状態を指すものである。よって、判定閾値は、許容されるロッドシール11の劣化(摩耗・損傷)の程度に応じて設定される。
【0072】
また、油漏れの判定に使用する圧力データは、最大圧力値に限らず、その他のものでもよい。例えば、圧力データとして、最低圧力値や中央値など送信されるデータ群に含まれる一つの測定値であってもよいし、平均値のように測定値を演算して算出される値であってもよい。つまり、圧力データとは、センサ部51が測定した圧力の測定値そのもの、及び、測定値から得られる値も含むものである。
【0073】
次に、測定部50の作動条件の変更について説明する。
【0074】
センサ部51のサンプリング周期SC及びサイクル間隔CTが短く、測定時間Tdが長いほど、センサ部51の測定頻度は高くなる。これにより、圧力及び温度がより多く測定され、センサ部51により取得されるデータ容量が大きくなり、油漏れの検出精度が向上する。また、コントローラ80は、測定部50の測定結果が入力されるごとに油漏れの発生を判定するため、送信容量Dcが小さいほど、送信頻度が高くなる。送信頻度が高くなることにより、頻繁に油漏れの発生が判定されるため、油漏れの検出精度が向上する。このように、第2条件のように、測定部50の作動頻度(センサ部51の測定頻度及びデータ保管部62からの送信頻度)が大きいほど、流体漏れ検出システム100による油漏れの検出精度が向上する。
【0075】
反対に、サンプリング周期SC及びサイクル間隔CTが長く、測定時間Tdが短いほど、センサ部51の測定頻度が低く、測定される圧力及び温度のデータ容量は小さい。また、送信容量Dcが大きいほど送信頻度が低い。つまり、センサコントローラ60から測定結果が出力される回数が少ないため、コントローラ80により油漏れの発生が判定される回数が少ない。よって、第1作動条件のように、測定部50の作動頻度が低いと、油漏れの検出精度は低下するが、データの処理負荷は低減され、バッテリ54の消費電力を抑制することができる。
【0076】
このように、油漏れの検出精度を向上させるためには、測定部50の作動頻度(センサ部51の測定頻度とデータ保管部62からの送信頻度)が高いため、第1作動条件よりも第2作動条件のほうが好ましい。その一方で、測定部50の作動条件を相対的に作動頻度が高い第2作動条件とすると、例えば、建設機械や油圧シリンダ1が作動していない状態のデータなど、不要なデータを収集することがある。また、測定頻度や送信頻度が高いと、センサ部51、第1通信部52、及びセンサコントローラ60によるバッテリ54の消費電力も大きくなる。
【0077】
このため、流体漏れ検出システム100では、通常時においては、圧力及び温度の測定と測定結果の送信とをそれぞれ間欠的に実行する第1作動条件によって、測定部50を作動させる。これにより、油漏れの検出精度の確保とバッテリ54の消費電力の抑制とが両立される。
【0078】
一方、例えば、油圧シリンダ1において油漏れの兆候が表れた場合や油漏れが疑われるような場合には、油圧シリンダ1を作動させて油漏れが発生しているか否かを点検する点検作業が行われることがある。このような点検作業を実施する際、測定部50が間欠的に作動すると、効率よくデータを収集できない。つまり、測定部50が間欠的に作動する場合には、次の測定サイクルまで点検作業が行えないため、油圧シリンダ1における油漏れの発生を直ちに点検することができない。
【0079】
そこで、流体漏れ検出システム100では、作業者の所望のタイミングで測定部50の作動条件を変更可能に構成される。
【0080】
上記のような点検作業を行う際には、操作部90の第2ボタン92が作業者によって押圧される。これにより、操作部90から第2変更信号が出力され、コントローラ80の信号取得部84が第2変更信号を取得すると、条件設定部83からセンサコントローラ60の指令部61に第2指令信号が出力される。これにより、測定部50の作動条件が、通常時の第1作動条件から、第2作動条件に切り換わる。
【0081】
また、条件設定部83は、第2指令信号を出力するのと同時に、タイマー75に開始信号を出力する。タイマー75は、開始信号を取得すると時間の計測を開始する。つまり、タイマー75によって測定部50が第2作動条件に切り換わってからの作動時間が計測される。
【0082】
測定部50が第2作動条件で作動している間に、作業者によって第1ボタン91が押圧されると、操作部90から第1変更信号が出力され、信号取得部84に入力される。これにより、条件設定部83が指令部61に第1指令信号を出力し、測定部50の作動条件が第2作動条件から第1作動条件に切り換わる。
【0083】
また、タイマー75は、測定部50が第2作動条件に切り換わってから所定の時間が経過すると、変更信号として終了信号を出力する。信号取得部84が終了信号を取得すると、条件設定部83は第1指令信号を出力する。これにより、点検作業の終了時、作業者が第1ボタン91を押圧して測定部50の第2作動条件での作動を終了させることを忘れたとしても、自動的に作動条件が第1作動条件に切り換わる。よって、点検作業の終了後も作動頻度が高い第2作動条件で作動し続けることが防止され、不要なデータの収集と電力消費とが抑制される。
【0084】
以上のように、流体漏れ検出システム100では、作業者による操作部90の操作により、測定部50の作動条件が、相対的に作動頻度が低い第1作動条件と相対的に作動頻度が高い第2作動条件とで切り換えられる。このため、油漏れの検出を効率化することができる。
【0085】
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0086】
上記実施形態では、作業者による操作部90の操作により変更信号が出力され、測定部50の作動条件が切り換えられる。これに対し、その他の方法により変更信号が出力されるものでもよい。変更信号は、例えば、建設機械のイグニッションスイッチのオン信号や、タイマー75から出力される信号、建設機械(油圧シリンダ1)を作動させる操作レバーから出力される信号など、コントローラ80に外部から入力される任意の信号とすることができる。
【0087】
また、上記実施形態では、測定部50が第2作動条件に切り換わってから所定の時間が経過すると、タイマー75から変更信号として終了信号が出力されて、条件設定部83が第1指令信号を出力する。これにより、点検作業の終了時、作業者が第1ボタン91を押圧して測定部50の第2作動条件での作動を終了させることを忘れたとしても、自動的に作動条件が第1作動条件に切り換わる。これに対し、
図7に示すようにタイマー75に代えて、又は、タイマー75に加えて、点検作業終了後における作動条件の戻し忘れ防止機能(自動切換機能)を発揮するための構成として、コントローラ80が温度判定部85を有していてもよい。温度判定部85は、センサ部51が測定する温度に基づき、信号取得部84に復帰信号を出力して、測定部50の作動条件を第1作動条件にさせる。点検作業の終了後、油圧シリンダ1が作動しない状態が続くと、検出空間20の温度は低下する。よって、温度判定部85は、センサ部51が測定する温度が所定の温度閾値未満となると、点検作業が終了して油圧シリンダ1が作動していないと判定し、復帰信号を出力する。信号取得部84が復帰信号を取得すると、条件設定部83は第1指令信号を出力する。このような変形例によれば、測定部50の作動条件を第2作動条件として油圧シリンダ1を作動させる点検作業が終了した後、第1作動条件に戻すのを忘れたとしても、温度低下によって自動的に測定部50の作動条件が第1作動条件に変更される。よって、点検作業の終了後も作動頻度が高い第2作動条件で作動し続けることが防止され、不要なデータの収集と電力消費とが抑制される。
【0088】
また、上記実施形態では、センサ部51は、作動油の漏れの検出に用いられる状態量として圧力を測定する。コントローラ80の漏れ判定部82は、センサ部51が測定した圧力に基づいて、作動油の漏れを判定する。これに対し、センサ部51は、圧力以外の状態量を測定し、漏れ判定部82はセンサ部51が測定した状態量に基づき、作動油の漏れを判定するものでもよい。例えば、センサ部51は、検出空間20に導かれる作動油の誘電率を状態量として測定し、漏れ判定部82は、誘電率に基づいて作動油の漏れを判定してもよい。
【0089】
また、上記実施形態では、センサ部51は、圧力及び温度の両方を検出可能な圧力温度センサである。これに対し、センサ部51は、単に圧力のみを測定する圧力センサであってもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、第2作動条件は、センサ部51による測定と測定部50からコントローラ80への測定結果の出力とが、それぞれ連続的に行われる。これに対し、センサ部51による測定と測定結果の出力のいずれか一方が連続的に行われ、他方が間欠的に行われるものでもよい。また、第1作動条件よりも作動頻度が高いものであれば、第2作動条件は、測定センサによる測定と測定結果の出力がそれぞれ間欠的に実行されるものでもよい。なお、作動頻度が高いとは、コントローラ80が単位時間あたりに取得するデータ量が多いことを意味するものである。
【0091】
以上の実施形態によれば、以下に示す効果を奏する。
【0092】
流体漏れ検出システム100では、作業者による操作部90の操作により、測定部50の作動条件は、相対的に作動頻度が低い第1作動条件と、相対的に作動頻度が高い第2作動条件と、で切り換えられる。これにより、所望のタイミングで測定部50の作動条件を変更できるため、油漏れの検出が効率化される。
【0093】
また、流体漏れ検出システム100では、第2作動条件は、測定部50による圧力及び温度の測定と測定結果の出力とをそれぞれ連続的に実行するものである。このため、測定部50の作動条件を第2作動条件とすることで、油漏れの検出精度を大きく向上させることができる。
【0094】
また、流体漏れ検出システム100では、測定部50が第2作動条件で作動する時間が所定時間に達すると、タイマー75から作動条件を第1作動条件とする変更信号が出力される。これにより、作業者が第2作動条件から第1作動条件へと戻すことを忘れたとしても、作動頻度が相対的に高い第2作動条件が継続され続けることがない。よって、作業者の操作忘れによる不要なデータの収集や電力消費を抑制することができる。
【0095】
以下、本発明の実施形態の構成、作用、及び効果をまとめて説明する。
【0096】
シリンダチューブ2から延出するピストンロッド3と、ピストンロッド3が挿通しシリンダチューブ2に設けられるシリンダヘッド5と、を有する油圧シリンダ1においてピストンロッド3とシリンダヘッド5との間の環状隙間8を通じた作動油の漏れを検出するための流体漏れ検出システム100は、油圧シリンダ1に設けられピストンロッド3とシリンダヘッド5との間の環状隙間8を通じて漏れる作動油の状態量を測定する測定ユニット10と、測定ユニット10の測定結果を取得するコントローラ80と、を備え、測定ユニット10は、シリンダヘッド5に設けられピストンロッド3とシリンダヘッド5との間の環状隙間8を封止するロッドシール11と、ロッドシール11から漏れる作動油が導かれる検出空間20と、検出空間20の作動油の温度の測定と測定結果の出力とを所定の作動条件で実行する測定部50と、を有し、コントローラ80は、外部から入力される変更信号を取得する信号取得部84と、測定部50に対して作動条件を指令する指令信号を出力して作動条件を変更する条件設定部83と、を有し、指令信号には、第1作動条件で測定部50を作動させる第1指令信号と、第1作動条件よりも作動頻度が高い第2作動条件で測定部50を作動させる第2指令信号と、を含み、条件設定部83は、信号取得部84が取得する変更信号に応じて、第1指令信号又は第2指令信号を出力する。
【0097】
この構成では、外部から条件設定部83に変更信号が入力されることで、作動頻度が相対的に低い第1作動条件と相対的に高い第2作動条件との間で測定部50の作動条件が切り換わる。よって、状況に応じて最適な作動条件で測定ユニット10を作動させることができ、流体漏れ検出システム100による油漏れの検出が効率化される。
【0098】
また、流体漏れ検出システム100は、第1作動条件では、測定部50が、間欠的に検出空間20の作動油の圧力及び温度を測定し、第2作動条件では、測定部50が、連続的に検出空間20の作動油の状態量を測定する。
【0099】
また、流体漏れ検出システム100では、第1作動条件では、測定部50は、間欠的に測定結果をコントローラ80に送信し、第2作動条件では、測定部50は、連続的に測定結果をコントローラ80に送信する。
【0100】
これらの構成では、測定部50の作動条件を第2作動条件とすることで、油漏れの検出精度を大きく向上させることができる。
【0101】
また、流体漏れ検出システム100は、作業者によって操作される操作部90をさらに備え、信号取得部84は、作業者による操作部90の操作に応じて変更信号を取得する。
【0102】
この構成では、作業者が任意のタイミングで測定部50の作動条件を変更できるため、油漏れの検出をより一層効率化することができる。
【0103】
また、流体漏れ検出システム100は、時間を計測するタイマー75をさらに備え、タイマー75は、第2指令信号の出力から所定時間が経過すると変更信号を出力し、条件設定部83は、信号取得部84がタイマー75から変更信号を取得すると、第1指令信号を出力する。
【0104】
また、流体漏れ検出システム100は、測定部50が、検出空間20の温度を測定可能に構成され、コントローラ80は、測定部50が測定する温度に基づき、信号取得部84に復帰信号を出力する温度判定部85をさらに有し、条件設定部83は、信号取得部84が温度判定部85から復帰信号を取得すると、第1指令信号を出力する。
【0105】
これらの構成では、測定部50を第2作動条件とした後、作業者が第1作動条件に戻すことを忘れた場合であっても、タイマー75や温度判定部85からの信号により測定部50の作動条件は第1作動条件に変更される。よって、不要なデータの収集や電力消費を抑制することができる。
【0106】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【符号の説明】
【0107】
1…油圧シリンダ(流体圧シリンダ)、2…シリンダチューブ、3…ピストンロッド、5…シリンダヘッド、8…環状隙間(隙間)、10…測定ユニット、20…検出空間、50…測定部、54…バッテリ、75…タイマー、80…コントローラ、83…条件設定部、84…信号取得部、85…温度判定部、90…操作部、100…流体漏れ検出システム