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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】乗客コンベア
(51)【国際特許分類】
   B66B 23/12 20060101AFI20220302BHJP
   B66B 29/02 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
B66B23/12 D
B66B29/02 B
B66B23/12 G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018120629
(22)【出願日】2018-06-26
(65)【公開番号】P2020001854
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2020-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】内山 香緒利
(72)【発明者】
【氏名】宇津宮 博文
(72)【発明者】
【氏名】松尾 利昭
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】実開昭61-113779(JP,U)
【文献】特開2015-172157(JP,A)
【文献】特開昭60-262788(JP,A)
【文献】特開2003-095568(JP,A)
【文献】特開2001-089057(JP,A)
【文献】特開2014-162604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 21/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に乗客が載り、上階と下階との間を循環移動するステップを備え、
前記下階から前記上階に向く方向を前とし、前記上階から前記下階に向く方向を後とし、
前記ステップは、前記乗客が乗るクリートと、前記クリートの後端部から下方へ垂下するライザと、前記クリートの後端部である後側デマケーションと、を備え、
前記クリートは、前記ステップの移動方向に平行な複数の山部を備え、
前記後側デマケーションは、前記ライザと交わる角部での前記クリートの前記山部に凹凸部である滑落速度抑制構造を備え、
前記滑落速度抑制構造は、前記クリートの前記山部の上面と、前記クリートの前記山部の後面とに設けられており
前記後側デマケーションは、前記ライザと交わる角部に、前記ステップの前記上面に対して傾斜した面を備え、
前記傾斜した面は、前記クリートの前記山部に前記滑落速度抑制構造を備える、
ことを特徴とする乗客コンベア。
【請求項2】
前記後側デマケーションは、樹脂で構成されており、
前記滑落速度抑制構造は、前記樹脂に混ぜられたガラス繊維で構成されている、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項3】
前記後側デマケーションは、表面が塗料で塗布されており、
前記滑落速度抑制構造は、前記塗料に混ぜられた珪砂で構成されている、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項4】
前記滑落速度抑制構造は、前記クリートの前記山部に固着された樹脂製または金属製の粒子で構成されている、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【請求項5】
前記滑落速度抑制構造は、前記ステップの前記上面で前記滑落速度抑制構造を備えない部分よりも、摩擦係数が大きい、
請求項1に記載の乗客コンベア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エスカレータなどの乗客コンベアに関する。
【背景技術】
【0002】
駅や空港などに設置された乗客コンベアの一形態であるエスカレータには、多くの乗客がキャリーバッグなどの荷物と共に乗り込む。エスカレータに乗った乗客は、ステップ上に荷物を載置した後、荷物から手を離してしまうことがある。このような荷物は、不安定な置き方や他の乗客との接触などが原因で倒れ、横転と共にステップを滑落し、下方に位置する乗客に衝突することがあり、乗客が転倒するという事故が起こることがある。
【0003】
エスカレータなどの乗客コンベアにおいて、ステップ上の荷物の滑落を防止する技術として、特許文献1に記載されたものがある。特許文献1には、ローラおよびリンクを用いてステップの上面から突出可能であるとともに突出した状態から後退可能であるストッパをステップ毎に備える乗客コンベアが開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、エスカレータの踏段(ステップ)の角部に設ける衝撃吸収用クリートの材料およびその材料特性を選定し、乗客が転倒して踏段の角部に頭部が衝突しても怪我の重篤化を防ぐエスカレータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-3082号公報
【文献】特開2017-24893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載された技術では、ローラおよびリンクに駆動されるストッパをステップ毎に設ける。この技術には、ステップの構造が複雑になりコストが増加するとともに、既設のエスカレータに適用するには大掛かりな改修が必要となるという課題がある。
【0007】
また、特許文献2に記載された技術は、乗客の転倒時の負傷(特に頭部の負傷)を防止することに特化してステップの角部の材料およびその材料特性を選定するものであり、荷物のステップでの滑落に対するものではない。
【0008】
乗客コンベアにおいて、ステップ上に載置された荷物が横転し、下方に向かってステップを滑落したとしても、荷物が滑落する速度を抑制すれば、滑落した荷物に乗客が衝突することや、滑落した荷物に衝突した乗客が負傷することを防止でき、乗客の安全性を向上することができる。
【0009】
本発明の目的は、簡易な構造で荷物のステップでの滑落速度を抑制することができる乗客コンベアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による乗客コンベアは、上面に乗客が載り、上階と下階との間を循環移動するステップを備え、前記下階から前記上階に向く方向を前とし、前記上階から前記下階に向く方向を後とする。前記ステップは、前記乗客が乗るクリートと、前記クリートの後端部から下方へ垂下するライザと、前記クリートの後端部である後側デマケーションとを備える。前記クリートは、前記ステップの移動方向に平行な複数の山部を備える。前記後側デマケーションは、前記ライザと交わる角部での前記クリートの前記山部に凹凸部である滑落速度抑制構造を備える。
【発明の効果】
【0011】
本発明による乗客コンベアは、簡易な構造で荷物のステップでの滑落速度を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例による乗客コンベアであるエスカレータの構成を示す概略構成図である。
図2】エスカレータのステップの構成例を示す斜視図である。
図3】エスカレータにおいて、ステップに載置された荷物が滑落する状態を示す説明図である。
図4A】本発明の実施例1によるエスカレータのステップを示す図であり、図3のA部の断面図である。
図4B】本発明の実施例1によるエスカレータのステップの斜視図である。
図5A】本発明の実施例2によるエスカレータのステップを示す図であり、図3のA部の断面図である。
図5B】本発明の実施例2によるエスカレータのステップの斜視図である。
図6A】本発明の実施例3によるエスカレータのステップを示す図であり、図3のA部の断面図である。
図6B】本発明の実施例3によるエスカレータのステップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施例による乗客コンベアを、図面を参照して説明する。なお、以下の実施例では、乗客コンベアとして下階と上階とを接続するエスカレータを例示する。以下の実施例において、下階から上階に向く方向を「前」とし、上階から下階に向く方向を「後」とし、前後方向(エスカレータの進行方向、すなわちステップの移動方向)に対する左右方向を「幅方向」と呼ぶ。
【0014】
図1は、本発明の実施例による乗客コンベアであるエスカレータ1の構成を示す概略構成図である。図1では、右側が前方向であり、左側が後方向である。
【0015】
エスカレータ1は、建築物に設置され、枠体2と、ステップ5と、欄干6と、移動手摺7とを備える。枠体2は、強度部材で構成され、前後方向(長手方向)の一端部である上部水平枠2aと、他端部である下部水平枠2bと、上部水平枠2aと下部水平枠2bとを接続する中間傾斜部枠2cとを備える。ステップ5は、枠体2の前後方向の両端部に設けられた上部乗降床3と下部乗降床4との間で無端状に連結され、上部乗降床3と下部乗降床4との間を循環移動する。欄干6は、ステップ5の移動方向に対して左右一対に、ステップ5の移動方向に沿って枠体2に立設する。移動手摺7は、欄干6の周縁に無端状に設けられ、欄干6に案内されてステップ5と同期して循環移動する。上部水平枠2aと上部乗降床3は、上階に設けられ、下部水平枠2bと下部乗降床4は、下階に設けられる。
【0016】
エスカレータ1は、さらに、左右一対の無端状のステップ鎖8と、上部機械室9と、上部ターミナルスプロケット10と、下部機械室11と、下部ターミナルスプロケット12とを備える。一対のステップ鎖8は、上部ターミナルスプロケット10と下部ターミナルスプロケット12との間に巻き掛けられている。上部ターミナルスプロケット10は、上部機械室9内に軸支される。下部ターミナルスプロケット12は、下部機械室11内に軸支される。上部機械室9は、上部水平枠2aに設けられる。下部機械室11は、下部水平枠2bに設けられる。
【0017】
ステップ5は、幅方向の両側が一対のステップ鎖8に連結されている。ステップ5は、図示しない駆動装置によりステップ鎖8が駆動されると、上部乗降床3と下部乗降床4との間を循環移動する。ステップ5の上面には、乗客が載ったり荷物が載置されたりする。
【0018】
図2は、エスカレータ1のステップ5の構成例を示す斜視図である。
【0019】
ステップ5は、乗客が乗るクリート21と、クリート21の後端部(下階側の端部)から下方へ弧面を有して垂下するライザ22と、クリート21とライザ22とを接合する本体枠23とを備える。クリート21は、ステップ5の移動方向に平行な複数の山部と溝部とを備え、これらの山部と溝部が幅方向に交互に配置されている。クリート21の山部の上面は、ステップ5の上面を構成し、乗客が載ったり荷物が載置されたりする面である。
【0020】
さらに、ステップ5は、後側デマケーション24と、2つの側端デマケーション25と、前側デマケーション26とを備える。後側デマケーション24は、クリート21のライザ22側の端部、すなわちクリート21の後端部(下階側の端部)である。側端デマケーション25は、クリート21の幅方向の両端部である。前側デマケーション26は、クリート21のライザ22側と反対方向の端部、すなわちクリート21の前端部(上階側の端部)である。これらのデマケーション24、25、26は、識別性の高い色に着色されているのが好ましい。
【0021】
また、これらのデマケーション24、25、26は、クリート21とは別の部品を樹脂などで成形し、この部品をクリート21に設置することで構成してもよい。クリート21とは別の部品で構成されたデマケーション24、25、26は、クリート21と同様に、ステップ5の移動方向に平行な複数の山部と溝部とを備える。以下では、デマケーション24、25、26がクリート21とは別の部品で構成されている場合でも、デマケーション24、25、26の山部と溝部を、それぞれクリート21の山部と溝部と呼ぶ。
【0022】
図3は、エスカレータ1において、ステップ5に載置された荷物が滑落する状態を示す説明図である。図3では、右側が前方向であり、左側が後方向である。図3には、ステップ5aに載置された荷物27が、ステップ5aの下方に位置するステップ5b、5cに滑落した状態を示している。図3のA部は、ステップ5において、クリート21の後端部とライザ22の上端部が交わる角部である。
【0023】
乗客コンベアであるエスカレータ1は、ステップ5が傾斜した軌道を移動する。特に駅や空港などに設置されたエスカレータ1では、多くの乗客がキャリーバッグなどの荷物27と共に乗り込むが、ステップ5上に荷物27を載置した後、荷物27から手を離してしまう乗客が多い。荷物27のステップ5への置き方が不安定だったり、ステップ5上に載置した荷物27が他の乗客と接触したりすることなどにより、荷物27は、図3に示すように、倒れて下方に向かってステップ5を滑落することがある。
【0024】
本実施例による乗客コンベアであるエスカレータ1は、簡易な構造で荷物27のステップ5での滑落速度を抑制し、滑落した荷物27が下方に位置する乗客に衝突することを防止でき、滑落した荷物27に乗客が衝突したとしても乗客が負傷するのを防止できるので、乗客の安全性を向上させることができる。
【0025】
以下では、本実施例によるエスカレータ1について、荷物27のステップ5での滑落速度を抑制する構造である滑落速度抑制構造を説明する。本実施例によるエスカレータ1の滑落速度抑制構造は、ステップ5の、クリート21の後端部でライザ22と交わる角部でのクリート21の山部に、すなわち後側デマケーション24のライザ22と交わる角部でのクリート21の山部に設けられる。滑落速度抑制構造は、微細な凹凸を備える凹凸部であり、ステップ5の上面の他の部分よりも摩擦係数が大きい。
【実施例1】
【0026】
本発明の実施例1による乗客コンベアであるエスカレータ1を説明する。
【0027】
図4Aは、本発明の実施例1による乗客コンベアであるエスカレータ1のステップ5を示す図であり、図3のA部の断面図である。図4Bは、本発明の実施例1による乗客コンベアであるエスカレータ1のステップ5の斜視図である。
【0028】
ステップ5は、後側デマケーション24のライザ22と交わる角部でのクリート21の山部に滑落速度抑制構造を備える。滑落速度抑制構造は、クリート21の山部の上面21a(ステップ5の上面)に設ける。さらに滑落速度抑制構造をクリート21の山部の後面21bに設けると、荷物27の滑落速度を抑制する効果がより大きくなるので好ましい。
【0029】
滑落速度抑制構造は、微細な凹凸31を備える凹凸部であり、荷物27のステップ5での滑落時に荷物27と摺接し、荷物27との摩擦抵抗により荷物27の滑落速度を抑制する。微細な凹凸31は、荷物27と摺接して摩擦抵抗により荷物27の滑落速度を抑制することができれば、凹凸の形状や大きさが任意であり、凹凸の配置も任意である(すなわち、凹凸の配置が規則的でも不規則でもよい)。
【0030】
ステップ5の滑落速度抑制構造は、微細な凹凸31により、ステップ5の上面(クリート21の山部の上面21a)で滑落速度抑制構造を備えない部分よりも、摩擦係数が大きい。
【0031】
なお、図4Bでは4つのクリート21の山部に微細な凹凸31を設けた構成を示しているが、微細な凹凸31は、全てのクリート21の山部に設けるのが好ましい。
【0032】
微細な凹凸31は、例えば、後側デマケーション24の表面を任意の方法で加工して微細な凹凸の形状を設けるか、珪砂などが混ぜられた塗料を後側デマケーション24の表面に塗布することにより、クリート21の山部に設けることができる。また、後側デマケーション24が樹脂で構成される場合には、後側デマケーション24の成形時にガラス繊維などを樹脂に混ぜることで、微細な凹凸31をクリート21の山部に設けることができる。すなわち、滑落速度抑制構造である微細な凹凸31は、後側デマケーション24の表面の加工、樹脂に混ぜられたガラス繊維、及び塗料に混ぜられた珪砂などで構成することができる。
【0033】
ステップ5に載置された荷物27が倒れて下方へ滑落すると、多くの場合には、横倒しになった荷物27の側面がステップ5の後端の角部に当接する。すると、後側デマケーション24の微細な凹凸31は、荷物27の側面に摺接し、摩擦抵抗により荷物27の滑落速度を抑制する。
【0034】
本実施例によるエスカレータ1は、後側デマケーション24が滑落速度抑制構造として微細な凹凸31を備えるので、摩擦抵抗により荷物27の滑落速度を抑制し、滑落した荷物27が下方に位置する乗客に衝突することを防止でき、滑落した荷物27が下方に位置する乗客に衝突したとしても衝突の際の衝撃を弱めて乗客が負傷するのを防止できるので、乗客の安全性を向上させることができる。また、滑落速度抑制構造が後側デマケーション24に設けられた微細な凹凸31であるという簡易な構成であることから、低コストで荷物27の滑落速度を抑制することができる。
【0035】
さらに、後側デマケーション24がクリート21とは別の部品で構成されていてステップ5に対して脱着可能であれば、滑落速度抑制構造を既設のエスカレータに設ける場合には、既設のエスカレータの後側デマケーション24を、滑落速度抑制構造を備える後側デマケーション24に交換するだけでよい。このように、滑落速度抑制構造は、既設のエスカレータに対しても容易に設置できる。
【実施例2】
【0036】
本発明の実施例2による乗客コンベアであるエスカレータ1を説明する。以下では、実施例1と異なる点を主に説明する。
【0037】
図5Aは、本発明の実施例2による乗客コンベアであるエスカレータ1のステップ5を示す図であり、図3のA部の断面図である。図5Bは、本発明の実施例2による乗客コンベアであるエスカレータ1のステップ5の斜視図である。
【0038】
滑落速度抑制構造は、樹脂製または金属製の粒子32が、後側デマケーション24のライザ22と交わる角部でのクリート21の山部に固着されて形成された凹凸部である。この凹凸部は、粒子32で構成された微細な凹凸を備える。ステップ5に載置された荷物27が倒れて下方へ滑落しても、後側デマケーション24に設けられた粒子32が荷物27に摺接し、摩擦抵抗により荷物27の滑落速度を抑制する。樹脂製の粒子32としては、例えばアクリル粒子を用いることができる。金属製の粒子32としては、例えばアルミニウム粒子を用いることができる。
【0039】
ステップ5の滑落速度抑制構造は、粒子32により、ステップ5の上面(クリート21の山部の上面21a)で滑落速度抑制構造を備えない部分よりも、摩擦係数が大きい。
【0040】
なお、図5Bでは4つのクリート21の山部に粒子32を設けた構成を示しているが、粒子32は、全てのクリート21の山部に設けるのが好ましい。
【0041】
粒子32が樹脂製の場合には、樹脂製の粒子32を後側デマケーション24に溶射などで溶着することで、または樹脂製の粒子32を混ぜた塗料を後側デマケーション24に塗布することで、粒子32をクリート21の山部に固着させて微細な凹凸を構成することができる。
【0042】
粒子32が金属製の場合には、金属製の粒子32を後側デマケーション24に溶射などで溶着することで、粒子32をクリート21の山部に固着させて微細な凹凸を構成することができる。なお、後側デマケーション24が金属製の場合には、粒子32が金属製であるのが好ましい。
【0043】
本実施例によるエスカレータ1は、後側デマケーション24が滑落速度抑制構造として粒子32で構成された微細な凹凸を備えるので、実施例1によるエスカレータ1と同様の効果を得ることができる。すなわち、本実施例によるエスカレータ1は、摩擦抵抗により荷物27の滑落速度を抑制し、滑落した荷物27が下方に位置する乗客に衝突することを防止でき、滑落した荷物27が下方に位置する乗客に衝突したとしても衝突の際の衝撃を弱めて乗客が負傷するのを防止できるので、乗客の安全性を向上させることができる。
【実施例3】
【0044】
本発明の実施例3による乗客コンベアであるエスカレータ1を説明する。以下では、実施例1、2と異なる点を主に説明する。
【0045】
図6Aは、本発明の実施例3による乗客コンベアであるエスカレータ1のステップ5を示す図であり、図3のA部の断面図である。図6Bは、本発明の実施例3による乗客コンベアであるエスカレータ1のステップ5の斜視図である。
【0046】
本実施例によるエスカレータ1は、後側デマケーション24が、ライザ22と交わる角部に、ステップ5の上面に対して傾斜した面33を備える。傾斜した面33は、クリート21の山部に設けられ、後側デマケーション24のライザ22と交わる角部の面取りとなる面である。傾斜した面33は、クリート21の山部に滑落速度抑制構造である凹凸部を備える。すなわち、傾斜した面33は、実施例1で説明した微細な凹凸31、または実施例2で説明した粒子32を備える。図6A図6Bには、一例として、傾斜した面33が粒子32を備える構成を示している。
【0047】
滑落速度抑制構造である凹凸部(実施例1で説明した微細な凹凸31、または実施例2で説明した粒子32)は、傾斜した面33だけでなく、クリート21の山部の上面21aや後面21bに設けてもよい。
【0048】
なお、図6Bでは4つのクリート21の山部の傾斜した面33に粒子32を設けた構成を示しているが、粒子32は、全てのクリート21の山部の傾斜した面33に設けるのが好ましい。
【0049】
傾斜した面33の、ステップ5の上面に対する傾斜角α(図6A)は、任意に定めることができる。但し、傾斜角αは、エスカレータ1の傾斜角度(下階と上階とを接続する角度)と等しいのが好ましい。傾斜した面33の傾斜角αがエスカレータ1の傾斜角度と等しいと、ステップ5に載置された荷物27は、滑落したときにエスカレータ1の傾斜角度で滑落するので傾斜した面33と接触し、滑落速度抑制構造である凹凸部(微細な凹凸31または粒子32)と接触する面積が大きくなって凹凸部との摺接が増し、滑落速度がより抑制されるからである。
【0050】
本実施例によるエスカレータ1は、後側デマケーション24が傾斜した面33を備えるとともに傾斜した面33が滑落速度抑制構造である凹凸部を備え、ステップ5に載置された荷物27が滑落すると、傾斜した面33に荷物27が摺接する。荷物27は、傾斜した面33によって滑落速度抑制構造と接触する面積が大きくなる。すなわち、本実施例によるエスカレータ1では、荷物27と滑落速度抑制構造との摩擦抵抗をより大きくすることができ、荷物27の滑落速度を抑制する効果がより大きくなる。
【0051】
なお、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記の実施例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、本発明は、必ずしも説明した全ての構成を備える態様に限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能である。また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、削除したり、他の構成を追加・置換したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…エスカレータ、2…枠体、2a…上部水平枠、2b…下部水平枠、2c…中間傾斜部枠、3…上部乗降床、4…下部乗降床、5、5a、5b、5c…ステップ、6…欄干、7…移動手摺、8…ステップ鎖、9…上部機械室、10…上部ターミナルスプロケット、11…下部機械室、12…下部ターミナルスプロケット、21…クリート、21a…クリートの山部の上面、21b…クリートの山部の後面、22…ライザ、23…本体枠、24…後側デマケーション、25…側端デマケーション、26…前側デマケーション、27…荷物、31…微細な凹凸、32…粒子、33…傾斜した面。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B