(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】判定装置、判定方法、及び制御プログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 21/47 20060101AFI20220302BHJP
G07D 7/12 20160101ALN20220302BHJP
【FI】
G01N21/47 B
G07D7/12
(21)【出願番号】P 2018173362
(22)【出願日】2018-09-18
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】302062931
【氏名又は名称】ルネサスエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】坂本 祐之
【審査官】▲高▼場 正光
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-081892(JP,A)
【文献】特開2014-163723(JP,A)
【文献】特開2017-128434(JP,A)
【文献】米国特許第07635853(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00 - G01N 21/61
G01N 33/34
G07D 7/00 - G07D 7/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力データを用いて判定対象物の特徴量を算出して前記算出された特徴量に基づいて前記判定対象物の種類を判定する、ニューラルネットワークを含む判定部と、
発光部及び受光部を含み、前記発光部によって前記判定対象物における複数の部分領域のそれぞれに照射された光の反射光を前記受光部によって受光して、前記複数の部分領域のそれぞれの位置に対して、前記複数の部分領域についての表面特性に関する複数の表面特性パラメータ値を取得する取得部と、
前記取得された複数の特性パラメータ値が示す第1変動波形データの全部又は一部を前記入力データとして前記判定部へ出力する、データ出力部と、
を具備
し、
前記第1変動波形データは、前記判定対象物の端部に含まれる部分領域に対応するデータ、前記端部を除く中央部に含まれる部分領域に対応するデータ、及び、前記発光部によって前記判定対象物が照射されていないタイミングでの反射光に対応するデータを含み、
前記データ出力部は、
前記第1変動波形データにおいて前記端部に対応する第1データ範囲を特定する端部データ範囲特定部と、
前記第1変動波形データのうちで、前記特定された第1データ範囲と、前記第1データ範囲と連続し且つ前記中央部に対応する第2データ範囲と、前記第1データ範囲を挟んで前記第2データ範囲と反対側に位置して前記第1データ範囲と連続し且つ前記判定対象物が照射されていないタイミングでの反射光に対応する第3データ範囲のうちの一部とを、第1所望範囲の第1部分波形データとして選択し、前記選択された第1部分波形データを前記入力データとして前記判定部へ出力する出力制御部と、
を具備する、
判定装置。
【請求項2】
前記取得部は、厚み検出センサを含み、前記厚み検出センサによって検出された、前記判定対象物の厚みに関する厚みパラメータ値を取得し、
前記データ出力部は、前記取得された厚みパラメータ値を前記入力データとして前記判定部へさらに出力する、
請求項1記載の判定装置。
【請求項3】
前記発光部を並進又は回転させる駆動部を制御して、前記判定対象物の静止時に前記発光部による光の照射方向を前記複数の部分領域に順次向ける駆動制御部をさらに具備する、
請求項1記載の判定装置。
【請求項4】
前記駆動制御部は、前記駆動部を制御して、前記照射方向を前記判定対象物が存在していない領域から前記判定対象物が存在している領域に亘って移動させ、
前記判定装置は、前記発光部を制御して、前記判定対象物が存在していない領域に前記発光部による光の照射予定位置が在るタイミングから前記発光部による照射を開始させる発光制御部をさらに具備する、
請求項
3記載の判定装置。
【請求項5】
前記判定対象物を搬送する搬送部を制御して、前記発光部による光の照射予定位置に前記複数の部分領域を順次移動させる搬送制御部をさらに具備する、
請求項1記載の判定装置。
【請求項6】
前記発光部を制御して、前記判定対象物が前記照射予定位置に到達する前のタイミングから前記発光部による照射を開始させる発光制御部をさらに具備する、
請求項
5記載の判定装置。
【請求項7】
前記取得部は、厚み検出センサを含み、前記厚み検出センサによって検出された、複数の部分領域に対応する前記判定対象物の厚みに関する複数の厚みパラメータ値を取得し、
前記複数の厚みパラメータ値が示す第2変動波形データは、前記判定対象物の端部に含まれる部分領域に対応するデータ、前記端部を除く中央部に含まれる部分領域に対応するデータ、及び、前記厚み検出センサによって前記判定対象物の厚みが検出されていないタイミングで検出されたデータを含み、
前記データ出力部は、前記取得された複数の厚みパラメータ値が示す第2変動波形データのうちの第2所望範囲の第2部分波形データを選択して、前記選択された第2部分波形データを前記入力データとして前記判定部へさらに出力する、
請求項
1記載の判定装置。
【請求項8】
前記端部データ範囲特定部は、前記第2変動波形データにおいて前記端部に対応する第4データ範囲を特定し、
前記出力制御部は、前記第2変動波形データのうちで、前記特定された第4データ範囲と、前記第4データ範囲と連続し且つ前記中央部に対応する第5データ範囲と、前記第4データ範囲を挟んで前記第5データ範囲と反対側に位置して前記第4データ範囲と連続し且つ前記判定対象物の厚みが検出されていないタイミングに対応する第6データ範囲のうちの一部とを、前記第2所望範囲として、前記第2部分波形データを選択し、前記選択された第2部分波形データを前記入力データとして前記判定部へ出力する、
請求項
7記載の判定装置。
【請求項9】
発光部及び受光部を含む取得部とデータ出力部とニューラルネットワークを含む判定部とを具備する判定装置における判定方法であって、
前記取得部が、前記発光部によって判定対象物における複数の部分領域のそれぞれに照射された光の反射光を前記受光部によって受光して、前記複数の部分領域のそれぞれの位置に対して、前記複数の部分領域についての表面特性に関する複数の表面特性パラメータ値を取得
することと、
前記データ出力部が、前記取得された複数の表面特性パラメータ値が示す変動波形データの全部又は一部を入力データとして前記判定部へ出力
することと、
前記判定部が、前記入力データを用いて前記判定対象物の特徴量を算出して前記算出された特徴量に基づいて前記判定対象物の種類を判定
することと、
を含み、
前記変動波形データは、前記判定対象物の端部に含まれる部分領域に対応するデータ、前記端部を除く中央部に含まれる部分領域に対応するデータ、及び、前記発光部によって前記判定対象物が照射されていないタイミングでの反射光に対応するデータを含み、
前記変動波形データの全部又は一部を入力データとして前記判定部へ出力することは、
前記変動波形データにおいて前記端部に対応する第1データ範囲を特定することと、
前記変動波形データのうちで、前記特定された第1データ範囲と、前記第1データ範囲と連続し且つ前記中央部に対応する第2データ範囲と、前記第1データ範囲を挟んで前記第2データ範囲と反対側に位置して前記第1データ範囲と連続し且つ前記判定対象物が照射されていないタイミングでの反射光に対応する第3データ範囲のうちの一部とを、所望範囲の部分波形データとして選択し、前記選択された部分波形データを前記入力データとして前記判定部へ出力することと、
を含む、
判定方法。
【請求項10】
前記取得部は、厚み検出センサをさらに含み、
前記判定方法は、
前記取得部
が、前記厚み検出センサによって検出された、前記判定対象物の厚みに関する厚みパラメータ値を取得
することと、
前記データ出力部
が、前記取得された厚みパラメータ値を前記入力データとして前記判定部へさらに出力する
ことと、
を含む、
請求項
9記載の判定方法。
【請求項11】
発光部及び受光部を含む取得部とデータ出力部とニューラルネットワークを含む判定部とを具備する判定装置に、
前記取得部が、前記発光部によって判定対象物における複数の部分領域のそれぞれに照射した光の反射光を前記受光部によって受光して、前記複数の部分領域のそれぞれの位置に対して、前記複数の部分領域についての表面特性に関する複数の表面特性パラメータ値を取得
することと、
前記複数の表面特性パラメータ値が示す変動波形データの全部又は一部を入力データとして前記判定部へ出力
することと、
前記判定部が、前記入力データを用いて前記判定対象物の特徴量を算出して前記算出された特徴量に基づいて前記判定対象物の種類を判定する
ことと、
を含む処理を、実行させる
制御プログラムであって、
前記変動波形データは、前記判定対象物の端部に含まれる部分領域に対応するデータ、前記端部を除く中央部に含まれる部分領域に対応するデータ、及び、前記発光部によって前記判定対象物が照射されていないタイミングでの反射光に対応するデータを含み、
前記変動波形データの全部又は一部を入力データとして前記判定部へ出力することは、
前記変動波形データにおいて前記端部に対応する第1データ範囲を特定することと、
前記変動波形データのうちで、前記特定された第1データ範囲と、前記第1データ範囲と連続し且つ前記中央部に対応する第2データ範囲と、前記第1データ範囲を挟んで前記第2データ範囲と反対側に位置して前記第1データ範囲と連続し且つ前記判定対象物が照射されていないタイミングでの反射光に対応する第3データ範囲のうちの一部とを、所望範囲の部分波形データとして選択し、前記選択された部分波形データを前記入力データとして前記判定部へ出力することと、
を含む、
制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、判定装置、判定方法、及び制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、発光ダイオードが対象媒体へ照射した光の反射光の強度の平均値に基づいて対象媒体の種類を判別する判別手段を備えたインクジェットプリンタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の通り、特許文献1に開示されている技術では判定対象物の種別を判定するために用いるパラメータとして反射光の強度の平均値を用いている。しかしながら、本発明者は、このパラメータには判定対象物の特性が感度良く現れず、結果として、特許文献1に開示されている技術によっては、判定対象物の種類を精度良く判定できない可能性があることを見出した。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施の形態によれば、判定対象物における複数の部分領域のそれぞれの位置に対して該複数の部分領域の表面特性に関する複数の表面特性パラメータ値が示す変動波形データを、ニューラルネットワークへの入力データとして用いる。
【発明の効果】
【0007】
前記一実施の形態によれば、判定対象物の種類についての判定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の判定装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】第2実施形態の判定装置の一例を示すブロック図である。
【
図3】第2実施形態の判定装置によるデータ取得の説明に供する模式図である。
【
図4】第2実施形態のデータ出力部によって取得される変動波形データの説明に供する図である。
【
図5】第2実施形態の変形例1の発光制御部による制御の説明に供する図である。
【
図6】第2実施形態の変形例1のデータ出力部によって取得される変動波形データの説明に供する図である。
【
図7】第3実施形態の判定装置の一例を示すブロック図である。
【
図8】第3実施形態の判定装置によるデータ取得の説明に供する模式図である。
【
図9】他の実施形態<1>の判定装置の一例を示すブロック図である。
【
図10】他の実施形態<1>の変形例の判定装置の一例を示すブロック図である。
【
図11】他の実施形態<1>の変形例における第1データ範囲及び第4データ範囲の特定方法例の説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ、実施形態について説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、ハードウェア的には、CPU(Central Processing Unit)、メモリ、その他の回路で構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムなどによって実現される。また、様々な処理を行う機能ブロックとして図面に記載される各要素は、例えば、専用論理回路で構成されてもよい。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。なお、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0010】
また、上述したプログラムは、様々なタイプの非一時的なコンピュータ可読媒体を用いて格納され、コンピュータに供給することができる。非一時的なコンピュータ可読媒体は、様々なタイプの実体のある記録媒体を含む。非一時的なコンピュータ可読媒体の例は、磁気記録媒体(例えばフレキシブルディスク、磁気テープ、ハードディスクドライブ)、光磁気記録媒体(例えば光磁気ディスク)、CD-ROM(Read Only Memory)、CD-R、CD-R/W、半導体メモリ(例えば、マスクROM、PROM(Programmable ROM)、EPROM(Erasable PROM)、フラッシュROM、RAM(Random Access Memory))を含む。また、プログラムは、様々なタイプの一時的なコンピュータ可読媒体によってコンピュータに供給されてもよい。一時的なコンピュータ可読媒体の例は、電気信号、光信号、及び電磁波を含む。一時的なコンピュータ可読媒体は、電線及び光ファイバ等の有線通信路、又は無線通信路を介して、プログラムをコンピュータに供給できる。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の判定装置の一例を示すブロック図である。
図1に示す判定装置10は、例えばプリンタ装置やATM等の紙幣取扱装置等の紙葉類取扱装置であり、「判定対象物」の種類を判定する装置である。例えば判定装置10がプリンタ装置である場合、「判定対象物」は紙であり、判定装置10は、紙の種類を判定することになる。以下では、一例として判定装置10がプリンタ装置であり「判定対象物」が紙であることを前提として説明する。すなわち、「判定対象物」は、シート形状を有している。
【0012】
図1において判定装置10は、取得部11と、判定部12と、データ出力部(データ調整部)13とを有している。
【0013】
取得部11は、発光部11Aと、受光部11Bとを含んでいる。発光部11Aは、例えば発光ダイオードであり、受光部11Bは、例えばフォトトランジスタである。発光部11Aは、判定対象物の複数の「部分領域」に対して光(例えば、赤外光)を順次照射する。そして、受光部11Bは、発光部11Aによって上記の複数の部分領域に照射された光の反射光を受光する。これにより、取得部11は、上記の複数の部分領域のそれぞれの位置に対して、該複数の部分領域についての表面特性に関する複数の表面特性パラメータ値を取得することができる。なお、上記の複数の「部分領域」は、例えば、判定対象物の表面の一直線上に連続して並んでいてもよい。また、上記の複数の「部分領域」は、例えば、装置の構造に起因して同心円上に連続して並んでいてもよいし、蛇行した線上に並んでいてもよい。
【0014】
データ出力部13は、取得部11から、上記の複数の表面特性パラメータ値を取得する。これにより、データ出力部13は、上記の複数の表面特性パラメータ値が示す、「変動波形データ(時系列データ)」を取得することができる。ここで、「連続した領域から取得した変動波形データ」には、判定対象物である紙の種類(例えば、光沢紙、マット紙、普通紙等)に応じた表面特性が感度良く現れる。
【0015】
そして、データ出力部13は、取得した「変動波形データ(第1変動波形データ)」の全部又は一部を、判定部12の入力データとして判定部12へ出力する。
【0016】
判定部12は、ニューラルネットワーク12Aを含んでいる。ニューラルネットワーク12Aは、例えば畳み込みニューラルネットワーク(Convolutional Neural Network)である。ニューラルネットワーク12Aは、入力データである「変動波形データ」を用いて判定対象物の特徴量を算出して、算出された特徴量に基づいて、「判定対象物」の種類を判定する。なお、ニューラルネットワーク12Aの訓練時には、装置の周辺環境、発光部の製造ばらつき、センサの取り付けばらつき等を考慮して、訓練データを取得し、訓練を実施してもよい。
【0017】
以上のように第1実施形態によれば、判定装置10において取得部11は、判定対象物における複数の部分領域のそれぞれの位置に対して、該複数の部分領域についての表面特性に関する複数の表面特性パラメータ値を取得する。データ出力部13は、取得部11にて取得された複数の表面特性パラメータ値が示す、「変動波形データ」の全部又は一部を、判定部12の入力データとして判定部12へ出力する。そして、判定部12は、ニューラルネットワーク12Aを含み、入力データである「変動波形データ」を用いて判定対象物の特徴量を算出して、算出された特徴量に基づいて、「判定対象物」の種類を判定する。
【0018】
この判定装置10の構成により、判定対象物の特性が精度良く現れる「変動波形データ」を用いて、ニューラルネットワーク12Aを含む判定部12が判定対象物の種類を判定することができるので、判定対象物の種類についての判定精度を向上させることができる。
【0019】
なお、以上の説明では、一例として「判定対象物」がシート形状を有する紙であることを前提として説明を行ったが、「判定対象物」の種類及び形状は特に限定されるものではない。
【0020】
また、以上の説明では、単波長又は単色の光源(発光部11A)と、同じく単波長又は単色対応のセンサ(受光部11B)とを用いることを前提として説明したが、これに限定されるものではなく、光源及びセンサは、カメラを代表例とする多波長センサに置き換えてもよい。
【0021】
また、十分な明るさの環境光が得られるのであれば、判定装置10は発光部11Aを有していなくてもよい。
【0022】
また、以上の説明では、一例として、ニューラルネットワーク12Aが、局所性の抽出能力に優れる、畳み込みニューラルネットワークであるものとして説明したが、これに限定されるものではない。処理効率を重視しないのであれば、ニューラルネットワーク12Aは、畳み込みニューラルネットワーク以外のニューラルネットワークであってもよい。
【0023】
<第2実施形態>
第2実施形態は、判定部への入力データとして、2種類のパラメータを判定部へ入力する実施形態に関する。
【0024】
図2は、第2実施形態の判定装置の一例を示すブロック図である。
図3は、第2実施形態の判定装置によるデータ取得の説明に供する模式図である。
【0025】
図2において判定装置20は、判定部12と、取得部21と、搬送部22と、発光制御部23と、搬送制御部24と、データ出力部25とを有している。
【0026】
搬送部22は、給紙部(図示せず)から排出された、判定対象物である紙Qを、プリント位置まで搬送する。搬送部22は、例えば搬送ベルト及びローラ群を含んで構成されている。例えば、搬送部22は、ロータリーエンコーダ(図示せず)を含んでいてもよい。このロータリーエンコーダが、搬送部22が測定対象物を移動させた距離を測定し、取得部21が、該測定した距離を判定対象物の複数の「部分領域」の位置情報として取得してもよい。
【0027】
搬送制御部24は、搬送部22を制御して、発光部11Aによる光の照射予定位置Pに判定対象物である紙Qの複数の「部分領域」を順次移動させる。これにより、判定対象物である紙Qの複数の「部分領域」の表面特性パラメータを取得することができる。
【0028】
発光制御部23は、発光部11Aを制御して、照射予定位置Pに順々に移動してくる複数の「部分領域」に光を照射させる。
【0029】
取得部21は、発光部11Aと、受光部11Bと、厚み検出センサ21Aとを有している。
【0030】
厚み検出センサ21Aは、判定対象物である紙Qの厚みパラメータ値を検出する。厚み検出センサ21Aは、例えば静電容量式タッチセンサである。
【0031】
データ出力部25は、記録部25Aを有している。記録部25Aは、受光部11Bによって順次検出される複数の部分領域についての表面特性パラメータ値を記録する。これにより、上記の「変動波形データ(第1変動波形データ)」が形成される。また、記録部25Aは、厚み検出センサ21Aによって検出された厚みパラメータ値を記録する。そして、記録部25Aは、「変動波形データ」の一部又は全部及び厚みパラメータ値を、判定部12の入力データとして判定部12へ出力する。これにより、判定部12は種類の異なる複数のパラメータ値に基づいて判定対象物の種類を判定することができるので、判定対象物の種類についての判定精度をさらに向上させることができる。
【0032】
図4は、第2実施形態のデータ出力部によって取得される変動波形データの説明に供する図である。
図4における変動波形L1は、光沢紙に対応する変動波形の例であり、変動波形L2は、マット紙に対応する変動波形の例であり、変動波形L3は、普通紙に対応する変動波形の例である。
図4の横軸は、時間tであり、縦軸は、受光部11Bによって受光される光の強度である。上記の搬送部22によって一定の速さで紙Qが搬送される場合、時間tは、紙Q上の部分領域の位置を示すことになる。
【0033】
図4を見て分かるように、光沢紙に対応する変動波形L1は、ほとんど変動せずに、受光強度の値が略一定である。また、マット紙に対応する変動波形L2には、微細な変動が現れる。また、普通紙に対応する変動波形L3には、変動波形L1及び変動波形L2に比べて、激しい変動が現れる。このような変動波形L1,L2,L3に現れる違いは、光沢紙が平坦な表面を有しており、マット紙が微細な凸凹が存在する表面を有しており、普通紙が粗い繊維の大きな凸凹が存在する表面を有している、といった表面特性の違いに起因している。従って、変動波形データを判定部12へ入力することによって、判定対象物の種類を精度良く判定することができる。
【0034】
以上のように第2実施形態によれば、判定装置20において取得部21は、判定対象物における複数の部分領域のそれぞれの位置に対して、該複数の部分領域についての表面特性に関する複数の表面特性パラメータ値を取得する。また、取得部21は、厚み検出センサ21Aを含み、厚み検出センサ21Aによって検出された、判定対象物の厚みに関する厚みパラメータ値を取得する。そして、データ出力部25は、上記の「第1変動波形データ」の全部又は一部及び厚みパラメータ値を、判定部12の入力データとして判定部12へ出力する。
【0035】
この判定装置20の構成により、種類の異なる複数のパラメータ値に基づいて判定対象物の種類を判定することができるので、判定対象物の種類についての判定精度をさらに向上させることができる。
【0036】
以上で説明した判定装置20に対して次の様な変形を施してもよい。
【0037】
<変形例1>
例えば、上記の判定対象物の複数の部分領域は、判定対象物の「端部」に含まれる部分領域及び該端部を除く「中央部」に含まれる部分領域の両方が含まれていてもよい。例えば、
図5に示すように、発光制御部23が発光部11Aを制御して、判定対象物が照射予定位置に到達する前のタイミングから発光部11Aによる照射を開始させる。これにより、上記の複数の部分領域には、判定対象物の「端部」に含まれる部分領域及び「中央部」に含まれる部分領域の両方が確実に含まれるようになる。
図5は、第2実施形態の変形例1の発光制御部による制御の説明に供する図である。
【0038】
図6は、第2実施形態の変形例のデータ出力部によって取得される変動波形データの説明に供する図である。
図6における変動波形L11は、光沢紙に対応する変動波形の例であり、変動波形L12は、マット紙に対応する変動波形の例であり、変動波形L13は、普通紙に対応する変動波形の例である。
図6の横軸は、時間tであり、縦軸は、受光部11Bによって受光される光の強度である。
【0039】
図6を見て分かるように、判定対象物の「端部」に含まれる部分領域に対応する、変動波形の部分(つまり、変動波形L11,L12,L13の立ち上がり部分)には、判定対象物の種類に応じた特性(例えば厚みに応じた特性)が現れる。従って、判定対象物の「中央部」に含まれる部分領域の表面特性パラメータに加えて「端部」に含まれる部分領域の表面特性パラメータも含む変動波形データを判定部12へ入力することで、判定対象物の種類についての判定精度をさらに向上させることができる。
【0040】
<変形例2>
以上の説明では、「第1変動波形データ」及び厚みパラメータ値の両方を判定対象物の種類の判定に用いることを前提に説明を行ったが、これに限定されない。例えば、「第1変動波形データ」及び厚みパラメータ値のいずれか一方のみを、判定対象物の種類の判定に用いてもよい。厚みパラメータ値を判定対象物の種類の判定に用いない場合、判定装置20は、厚み検出センサ21Aを有していなくてもよい。
【0041】
<第3実施形態>
第3実施形態は、発光部を並進又は回転させて変動波形データを取得する実施形態に関する。
【0042】
図7は、第3実施形態の判定装置の一例を示すブロック図である。
図8は、第3実施形態の判定装置によるデータ取得の説明に供する模式図である。
【0043】
図7において判定装置30は、判定部12と、取得部31と、発光制御部32と、駆動制御部33とを有している。
【0044】
取得部31は、発光部11Aと、受光部11Bと、駆動部31Aとを有している。
【0045】
駆動部31Aは、発光部11Aを並進移動又は回転させて、発光部11Aによる光の照射方向を順次変えさせることにより、照射予定位置を順次移動させる。
図8には、駆動部31Aによって発光部11Aが回転されている様子が示されている。
【0046】
駆動制御部33は、駆動部31Aを制御して、判定対象物である紙Qの静止時に、発光部11Aによる光の照射方向を紙Qの複数の部分領域に順次向けさせる。これにより、判定対象物である紙Qの複数の部分領域の表面特性パラメータを取得することができる。ここで、判定対象物である紙Qの静止時とは、例えば、紙Qが給紙部(図示せず)に格納されている状態である。この場合、発光部11Aは、給紙部(図示せず)の近傍に配設される。
【0047】
発光制御部32は、順次移動される照射予定位置に存在する、判定対象物である紙Qの複数の部分領域に光を照射させる。
【0048】
以上で説明した判定装置30に対して次の様な変形を施してもよい。
【0049】
<変形例>
例えば、上記の判定対象物の複数の部分領域は、判定対象物の「端部」に含まれる部分領域及び該端部を除く「中央部」に含まれる部分領域の両方が含まれていてもよい。例えば、駆動制御部33が駆動部31Aを制御して発光部11Aによる光の照射方向(つまり、照射予定位置)を判定対象物である紙Qが存在していない領域から紙Qが存在している領域に亘って移動させる。そして、発光制御部32が発光部11Aを制御して、照射予定位置が紙Qの存在していない領域にあるタイミングから発光部11Aによる照射を開始させる。これにより、上記の複数の部分領域には、判定対象物の「端部」に含まれる部分領域及び「中央部」に含まれる部分領域の両方が確実に含まれるようになる。これにより、判定対象物の「中央部」に含まれる部分領域の表面特性パラメータに加えて「端部」に含まれる部分領域の表面特性パラメータも含む変動波形データを判定部12へ入力できるので、判定対象物の種類についての判定精度をさらに向上させることができる。
【0050】
<他の実施形態>
<1>上記の第2実施形態の<変形例1>及び第3実施形態の<変形例>では、変動波形データに、判定対象物の端部に含まれる部分領域に対応するデータ及び端部を除く中央部に含まれる部分領域に対応するデータの他に、発光部によって判定対象物が照射されていないタイミングでの反射光に対応するデータが多く含まれてしまう可能性がある。すなわち、実際の装置では、受光部11B及び厚み検出センサ21Aを、測定対象物の同一の位置のデータを取得できるように構成することは困難であり、非所望範囲のデータを含まない変動波形データを取得することは困難である。一方で、ニューラルネット12Aの訓練により、測定位置のずれを考慮した判定が可能である。しかしながら、判定部12を構成するための資源が増大してしまうので、資源効率の観点から好ましくない。そこで、第4実施形態では、データ出力部が変動波形データのうちの所望範囲の部分波形データを選択する。なお、該データ出力部は第2実施形態の判定装置及び第3実施形態の判定装置のいずれにも適用し得るが、ここでは、一例として、該データ出力部を第2実施形態の判定装置に適用した構成について説明する。
【0051】
図9は、他の実施形態<1>の判定装置の一例を示すブロック図である。
図9において判定装置40は、判定部12と、取得部21と、搬送部22と、発光制御部23と、搬送制御部24と、データ出力部41とを有している。
【0052】
第4実施形態の取得部21の厚み検出センサ21Aは、判定対象物の複数の部分領域に対応する判定対象物の厚みに関する複数の厚みパラメータ値を取得する。
【0053】
データ出力部41は、厚み検出センサ21Aによって検出された複数の厚みパラメータ値が示す「厚み変動波形データ(第2変動波形データ)」を取得する。この第2変動波形データは、判定対象物の端部に含まれる部分領域に対応するデータ、該端部を除く中央部に含まれる部分領域に対応するデータ、及び、厚み検出センサ21Aによって判定対象物の厚みが検出されていないタイミングで検出されたデータを含んでいる。すなわち、第2変動波形データは、非所望範囲のデータを含んでいる。
【0054】
また、データ出力部41は、上記の第1変動波形データを取得する。この第1変動波形データには、判定対象物の端部に含まれる部分領域に対応するデータ、該端部を除く中央部に含まれる部分領域に対応するデータ、及び、発光部11Aによって判定対象物が照射されていないタイミングでの反射光に対応するデータを含んでいる。すなわち、第1変動波形データは、非所望範囲のデータを含んでいる。
【0055】
データ出力部41は、第1変動波形データのうちの「第1所望範囲」の「第1部分波形データ」を選択して、選択された第1部分波形データを入力データとして判定部12へ出力する。また、データ出力部41は、第2変動波形データのうちの「第2所望範囲」の「第2部分波形データ」を選択して、選択された第2部分波形データを入力データとして判定部12へさらに出力する。これにより、第1変動波形データ及び第2変動波形データに非所望範囲のデータが含まれている場合でも、所望範囲のデータを選択的に判定部12へ出力することができる。この結果として、判定部12を構成するための資源の増大を回避することができる。
【0056】
以上で説明した判定装置40に対して次の様な変形を施してもよい。
【0057】
<変形例>
以上の説明では、「第1所望範囲」及び「第2所望範囲」が既知であることを前提として説明を行ったが、ここでは、既知でないケースに応用可能な判定装置の構成について説明する。
【0058】
図10は、他の実施形態<1>の変形例の判定装置の一例を示すブロック図である。
図10の判定装置40においてデータ出力部41は、記録部25Aと、端部データ範囲特定部41Aと、出力制御部41Bとを有している。
【0059】
端部データ範囲特定部41Aは、第1変動波形データにおいて判定対象物の端部に対応する「第1データ範囲」を特定する。また、端部データ範囲特定部41Aは、第2変動波形データにおいて判定対象物の端部に対応する「第4データ範囲」を特定する。
【0060】
「第1データ範囲」及び「第4データ範囲」の特定は、ニューラルネットワーク12A以外のニューラルネットワーク(図示せず)を用いて行われてもよい。すなわち、端部データ範囲特定部41Aは、ニューラルネットワーク12A以外のニューラルネットワーク(図示せず)を含んでいてもよい。
【0061】
又は、「第1データ範囲」及び「第4データ範囲」の特定は、閾値判定によって行われてもよい。すなわち、端部データ範囲特定部41Aは、閾値判定部(図示せず)を含んでいてもよい。
図11は、他の実施形態<1>の変形例における第1データ範囲及び第4データ範囲の特定方法例の説明に供する図である。端部データ範囲特定部41Aの閾値判定部(図示せず)は、第1変動波形データの変動波形が閾値Th1を横切るポイントP1を特定する。そして、端部データ範囲特定部41Aは、特定されたポイントP1を含む所定範囲を第1データ範囲として特定する。第4データ範囲の特定も同様である。すなわち、端部データ範囲特定部41Aの閾値判定部(図示せず)は、第2変動波形データの変動波形が閾値Th2を横切るポイントP2を特定する。そして、端部データ範囲特定部41Aは、特定されたポイントP2を含む所定範囲を第4データ範囲として特定する。なお、閾値Th1と閾値Th2とは、同じ値であってもよいし、異なる値であってもよい。
【0062】
出力制御部41Bは、
図11に示すように、第1変動波形データのうちで、特定された「第1データ範囲」と、第1データ範囲と連続し且つ判定対象物の中央部に対応する「第2データ範囲」の全部又は一部と、第1データ範囲を挟んで第2データ範囲と反対側に位置して第1データ範囲と連続し且つ判定対象物が照射されていないタイミングでの反射光に対応する「第3データ範囲」のうちの一部とを、上記の「第1所望範囲」として特定する。そして、出力制御部41Bは、第1変動波形データのうちで第1所望範囲の第1部分波形データを選択し、該選択された第1部分波形データを入力データとして判定部12へ出力する。
【0063】
また、出力制御部41Bは、
図11に示すように、第2変動波形データのうちで、特定された「第4データ範囲」と、第4データ範囲と連続し且つ判定対象物の中央部に対応する「第5データ範囲」の全部又は一部と、第4データ範囲を挟んで第5データ範囲と反対側に位置して第4データ範囲と連続し且つ判定対象物の厚みが検出されていないタイミングに対応する「第6データ範囲」のうちの一部とを、「第2所望範囲」として特定する。そして、出力制御部41Bは、第2変動波形データのうちで第2所望範囲の第2部分波形データを選択し、該選択された第2部分波形データを入力データとして判定部12へ出力する。
【0064】
以上で説明した、端部データ範囲特定部41A及び出力制御部41Bを含むデータ出力部41を有する判定装置40の構成により、端部に対応する「第1データ範囲」及び「第4データ範囲」を特定して、「第1所望範囲」及び「第2所望範囲」を設定することができる。これにより、第1変動波形データ及び第2変動波形データに非所望範囲のデータが含まれている場合でも、所望範囲のデータを選択的に判定部12へ出力することができる。この結果として、判定部12を構成するための資源の増大を回避することができる。
【0065】
<2>第1実施形態から第3実施形態及び他の実施形態<1>の判定装置10,20,30,40において取得部11,21,31及び搬送部22が配設される判定装置10,20,30,40の内部筐体(図示せず)には、判定対象物が出し入れされる挿入口及び排出口が設けられている。該挿入口及び排出口から内部筐体の内部に外光が入ってくると、該外光の影響によって、ニューラルネットワーク12Aによる訓練精度及び判定精度の低下を引き起こす可能性がある。そこで、内部筐体の内部へ入ってくる外光を抑止する遮光体(図示せず)が、挿入口及び排出口の周辺に、例えば庇のような形で、設けられてもよい。
【0066】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は既に述べた実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0067】
10,20,30,40 判定装置
11,21,31 取得部
11A 発光部
11B 受光部
12 判定部
12A ニューラルネットワーク
13,25,41 データ出力部(データ調整部)
13A,25A 記録部
21A 厚み検出センサ
22 搬送部
23 発光制御部
24 搬送制御部
31A 駆動部
32 発光制御部
33 駆動制御部
41A 端部データ範囲特定部
41B 出力制御部