(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】学習装置、推定装置、亀裂検出装置、亀裂検出システム、学習方法、推定方法、亀裂検出方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 25/72 20060101AFI20220302BHJP
G01J 5/48 20220101ALI20220302BHJP
【FI】
G01N25/72 K
G01J5/48 A
(21)【出願番号】P 2018195552
(22)【出願日】2018-10-17
【審査請求日】2020-10-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(73)【特許権者】
【識別番号】594126159
【氏名又は名称】神鋼検査サービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(72)【発明者】
【氏名】山根 佑之
(72)【発明者】
【氏名】岡本 陽
(72)【発明者】
【氏名】芦田 強
(72)【発明者】
【氏名】森本 勉
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 昇
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 英樹
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-031664(JP,A)
【文献】特開2008-008705(JP,A)
【文献】特許第6294529(JP,B1)
【文献】特開2013-224849(JP,A)
【文献】特開2012-098170(JP,A)
【文献】国際公開第2017/168737(WO,A1)
【文献】特開2017-168077(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 25/72
G01J 5/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物に沿って移動しながら赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像を取得する取得手段と、
熱画像を入力データとし、亀裂の有無の情報を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記取得手段により取得された前記複数の熱画像のそれぞれから前記構造物の亀裂の有無を推定する
とともに前記構造物に亀裂が有る確率を出力する推論手段と、
前記構造物に対する前記赤外線カメラの位置を表す位置情報を生成する生成手段と、
前記複数の熱画像のそれぞれについて、前記熱画像の撮影位置の位置情報と前記構造物の亀裂の有無の推定結果とを関連付ける関連付け手段と、
を備え
、
前記赤外線カメラの移動速度、前記熱画像を撮影する時間間隔、前記赤外線カメラの視野の前記構造物上における移動方向の長さ、及び前記構造物に亀裂が有る確率が閾値以上の前記熱画像が連続する数に基づいて、前記構造物の亀裂の長さを算出する算出手段をさらに備える、
亀裂検出装置。
【請求項2】
構造物に沿って移動しながら赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像を取得する取得手段と、
熱画像を入力データとし、亀裂の有無の情報を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記取得手段により取得された前記複数の熱画像のそれぞれから前記構造物の亀裂の有無を推定する
とともに前記構造物に亀裂が有る確率を出力する推論手段と、
前記構造物に対する前記赤外線カメラの位置を表す位置情報を生成する生成手段と、
前記複数の熱画像のそれぞれについて、前記熱画像の撮影位置の位置情報と前記構造物の亀裂の有無の推定結果とを関連付ける関連付け手段と、
を備え
、
前記構造物に亀裂が有る確率が閾値以上の前記熱画像が連続する数が所定以上である場合に、前記構造物に亀裂が有ると判定する判定部をさらに備える、
亀裂検出装置。
【請求項3】
前記複数の熱画像のそれぞれについての前記構造物の亀裂の有無の推定結果を、前記熱画像の撮影位置の位置情報に対応させて表示する表示制御手段をさらに備える、
請求項
1または2に記載の亀裂検出装置。
【請求項4】
前記表示制御手段は、前記複数の熱画像から得られる複数の画像片を、前記熱画像の撮影位置の位置情報に対応させて合成した合成画像を表示する、
請求項
3に記載の亀裂検出装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、ユーザの操作入力に応じて移動し、前記構造物の亀裂の有無の推定結果と前記合成画像の各部との対応関係を示すカーソルを表示する、
請求項
4に記載の亀裂検出装置。
【請求項6】
前記生成手段は、前記熱画像において前記構造物の基準対象が検出された後に撮影された前記熱画像の数に基づいて、前記構造物に対する前記赤外線カメラの位置を表す位置情報を生成する、
請求項
1ないし
5の何れかに記載の亀裂検出装置。
【請求項7】
赤外線カメラと、
前記赤外線カメラを構造物に沿って移動させる移動体と、
前記構造物に沿って移動しながら前記赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像を取得し、熱画像を入力データとし、亀裂の有無の情報を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記取得された熱画像から前記構造物の亀裂の有無を推定する
とともに前記構造物に亀裂が有る確率を出力し、前記構造物に対する前記赤外線カメラの位置を表す位置情報を生成し、前記複数の熱画像のそれぞれについて、前記熱画像の撮影位置の位置情報と前記構造物の亀裂の有無の推定結果とを関連付ける亀裂検出装置と、
を備え
、
前記亀裂検出装置は、前記赤外線カメラの移動速度、前記熱画像を撮影する時間間隔、前記赤外線カメラの視野の前記構造物上における移動方向の長さ、及び前記構造物に亀裂が有る確率が閾値以上の前記熱画像が連続する数に基づいて、前記構造物の亀裂の長さを算出する、
亀裂検出システム。
【請求項8】
赤外線カメラと、
前記赤外線カメラを構造物に沿って移動させる移動体と、
前記構造物に沿って移動しながら前記赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像を取得し、熱画像を入力データとし、亀裂の有無の情報を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記取得された熱画像から前記構造物の亀裂の有無を推定する
とともに前記構造物に亀裂が有る確率を出力し、前記構造物に対する前記赤外線カメラの位置を表す位置情報を生成し、前記複数の熱画像のそれぞれについて、前記熱画像の撮影位置の位置情報と前記構造物の亀裂の有無の推定結果とを関連付ける亀裂検出装置と、
を備え
、
前記亀裂検出装置は、前記構造物に亀裂が有る確率が閾値以上の前記熱画像が連続する数が所定以上である場合に、前記構造物に亀裂が有ると判定する、
亀裂検出システム。
【請求項9】
構造物に沿って移動しながら赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像を取得し、
熱画像を入力データとし、亀裂の有無の情報を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記複数の熱画像のそれぞれから前記構造物の亀裂の有無を推定
とともに前記構造物に亀裂が有る確率を出力し、
前記構造物に対する前記赤外線カメラの位置を表す位置情報を生成し、
前記複数の熱画像のそれぞれについて、前記熱画像の撮影位置の位置情報と前記構造物の亀裂の有無の推定結果とを関連付け
、
前記赤外線カメラの移動速度、前記熱画像を撮影する時間間隔、前記赤外線カメラの視野の前記構造物上における移動方向の長さ、及び前記構造物に亀裂が有る確率が閾値以上の前記熱画像が連続する数に基づいて、前記構造物の亀裂の長さを算出する、
亀裂検出方法。
【請求項10】
構造物に沿って移動しながら赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像を取得し、
熱画像を入力データとし、亀裂の有無の情報を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記複数の熱画像のそれぞれから前記構造物の亀裂の有無を推定
とともに前記構造物に亀裂が有る確率を出力し、
前記構造物に対する前記赤外線カメラの位置を表す位置情報を生成し、
前記複数の熱画像のそれぞれについて、前記熱画像の撮影位置の位置情報と前記構造物の亀裂の有無の推定結果とを関連付け
、
前記構造物に亀裂が有る確率が閾値以上の前記熱画像が連続する数が所定以上である場合に、前記構造物に亀裂が有ると判定する、
亀裂検出方法。
【請求項11】
構造物に沿って移動しながら赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像を取得する取得手段、
熱画像を入力データとし、亀裂の有無の情報を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記取得手段により取得された前記複数の熱画像のそれぞれから前記構造物の亀裂の有無を推定する
とともに前記構造物に亀裂が有る確率を出力する推論手段、
前記構造物に対する前記赤外線カメラの位置を表す位置情報を生成する生成手段、
前記複数の熱画像のそれぞれについて、前記熱画像の撮影位置の位置情報と前記構造物の亀裂の有無の推定結果とを関連付ける関連付け手段、
及び、
前記赤外線カメラの移動速度、前記熱画像を撮影する時間間隔、前記赤外線カメラの視野の前記構造物上における移動方向の長さ、及び前記構造物に亀裂が有る確率が閾値以上の前記熱画像が連続する数に基づいて、前記構造物の亀裂の長さを算出する算出手段、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【請求項12】
構造物に沿って移動しながら赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像を取得する取得手段、
熱画像を入力データとし、亀裂の有無の情報を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記取得手段により取得された前記複数の熱画像のそれぞれから前記構造物の亀裂の有無を推定する
とともに前記構造物に亀裂が有る確率を出力する推論手段、
前記構造物に対する前記赤外線カメラの位置を表す位置情報を生成する生成手段、
前記複数の熱画像のそれぞれについて、前記熱画像の撮影位置の位置情報と前記構造物の亀裂の有無の推定結果とを関連付ける関連付け手段、
及び、
前記構造物に亀裂が有る確率が閾値以上の前記熱画像が連続する数が所定以上である場合に、前記構造物に亀裂が有ると判定する判定部、
としてコンピュータを機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習装置、推定装置、亀裂検出装置、亀裂検出システム、学習方法、推定方法、亀裂検出方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、移動体に赤外線カメラを設置し、その赤外線カメラにより移動体が走行することにより応力変動が生じている構造物の車輪に対応する部分を含む視野を撮影して、構造物の表面の温度分布変動を熱画像として計測し、これにより構造物に存在する欠陥を検出することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載された欠陥検出方法は、熱画像から局所的に温度変化が急峻に変化している箇所を見出して、それを欠陥とみなすというものである。しかしながら、熱画像中の温度分布分解能の設定や急峻な温度変化とみなす閾値の設定などにより判定が左右されるため、必ずしも十分な欠陥検出精度が得られるとは限らない。また、十分な欠陥検出精度が得られない場合は当然、欠陥の位置把握や異なる画像間での欠陥位置補正の信頼性を損ねかねない。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、構造物の亀裂の推定精度を向上させることが可能な学習装置、推定装置、亀裂検出装置、亀裂検出システム、学習方法、推定方法、亀裂検出方法、及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明の一の態様の学習装置は、構造物に沿って移動しながら赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像、及び前記熱画像における前記構造物の亀裂の有無の情報を取得する取得手段と、前記熱画像を入力データとし、前記亀裂の有無の情報を教師データとして、熱画像から構造物の亀裂の有無を推定するための学習済みモデルを機械学習により構築する学習手段と、を備える。
【0007】
また、本発明の他の態様の推定装置は、構造物に沿って移動しながら赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像を取得する取得手段と、熱画像を入力データとし、亀裂の有無の情報を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記取得手段により取得された前記熱画像から前記構造物の亀裂の有無を推定する推論手段と、を備える。
【0008】
また、本発明の他の態様の亀裂検出装置は、構造物に沿って移動しながら赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像を取得する取得手段と、熱画像を入力データとし、亀裂の有無の情報を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記取得手段により取得された前記複数の熱画像のそれぞれから前記構造物の亀裂の有無を推定する推論手段と、前記構造物に対する前記赤外線カメラの位置を表す位置情報を生成する生成手段と、前記複数の熱画像のそれぞれについて、前記熱画像の撮影位置の位置情報と前記構造物の亀裂の有無の推定結果とを関連付ける関連付け手段と、を備える。
【0009】
また、本発明の他の態様の亀裂検出システムは、赤外線カメラと、前記赤外線カメラを構造物に沿って移動させる移動体と、前記構造物に沿って移動しながら前記赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像を取得し、熱画像を入力データとし、亀裂の有無の情報を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記取得された熱画像から前記構造物の亀裂の有無を推定する亀裂検出装置と、を備える。
【0010】
また、本発明の他の態様の学習方法は、構造物に沿って移動しながら赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像、及び前記熱画像における前記構造物の亀裂の有無の情報を取得し、前記熱画像を入力データとし、前記亀裂の有無の情報を教師データとして、熱画像から構造物の亀裂の有無を推定するための学習済みモデルを機械学習により構築する。
【0011】
また、本発明の他の態様の推定方法は、構造物に沿って移動しながら赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像を取得し、熱画像を入力データとし、亀裂の有無の情報を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記取得された熱画像から前記構造物の亀裂の有無を推定する。
【0012】
また、本発明の他の態様の亀裂検出方法は、構造物に沿って移動しながら赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像を取得し、熱画像を入力データとし、亀裂の有無の情報を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記複数の熱画像のそれぞれから前記構造物の亀裂の有無を推定し、前記構造物に対する前記赤外線カメラの位置を表す位置情報を生成し、前記複数の熱画像のそれぞれについて、前記熱画像の撮影位置の位置情報と前記構造物の亀裂の有無の推定結果とを関連付ける。
【0013】
また、本発明の他の態様のプログラムは、構造物に沿って移動しながら赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像、及び前記熱画像における前記構造物の亀裂の有無の情報を取得する取得手段、及び、前記熱画像を入力データとし、前記亀裂の有無の情報を教師データとして、熱画像から構造物の亀裂の有無を推定するための学習済みモデルを機械学習により構築する学習手段、としてコンピュータを機能させる。
【0014】
また、本発明の他の態様のプログラムは、構造物に沿って移動しながら赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像を取得する取得手段、及び、熱画像を入力データとし、亀裂の有無の情報を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記取得手段により取得された前記熱画像から前記構造物の亀裂の有無を推定する推論手段、としてコンピュータを機能させる。
【0015】
また、本発明の他の態様のプログラムは、構造物に沿って移動しながら赤外線カメラで撮影して得られる時系列の複数の熱画像を取得する取得手段、熱画像を入力データとし、亀裂の有無の情報を教師データとして機械学習により予め構築された学習済みモデルを用い、前記取得手段により取得された前記複数の熱画像のそれぞれから前記構造物の亀裂の有無を推定する推論手段、前記構造物に対する前記赤外線カメラの位置を表す位置情報を生成する生成手段、及び、前記複数の熱画像のそれぞれについて、前記熱画像の撮影位置の位置情報と前記構造物の亀裂の有無の推定結果とを関連付ける関連付け手段、としてコンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、構造物の亀裂の推定精度を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】ランウェイガーダの構成例を示す側面図である。
【
図3】ランウェイガーダに発生する亀裂を説明するための図である。
【
図4】実施形態に係る亀裂検出システムの構成例を示すブロック図である。
【
図5】学習フェーズの手順例を示すフロー図である。
【
図6】熱画像と亀裂有無ラベルとの対応例を示す図である。
【
図7】学習済みモデルの構築例を説明するための図である。
【
図8】推論フェーズの手順例を示すフロー図である。
【
図9】推定結果と位置情報との対応例を示す図である。
【
図10】表示画像の表示例を説明するための図である。
【
図12】熱画像の合成例を説明するための図である。
【
図13】亀裂長さの算出例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
[クレーン装置]
図1は、クレーン装置9の構成例を示す斜視図である。クレーン装置9は、例えばトロリ式天井クレーンであり、一対のランウェイガーダ91、一対のランウェイガーダ91に跨って配置された一対のクレーンガーダ92、及び一対のクレーンガーダ92に跨って配置されたクラブトロリ93を備えている。
【0020】
クレーンガーダ92は、ランウェイガーダ91の長手方向に沿って移動可能に設けられている。クレーンガーダ92の両端部には、不図示の車輪を有するサドル923が設けられている。サドル923は、ランウェイガーダ91上に載せられて、ランウェイガーダ91上を移動する。
【0021】
クラブトロリ93は、クレーンガーダ92の長手方向に沿って移動可能に設けられている。クラブトロリ93は、不図示の車輪を有しており、クレーンガーダ92上に載せられて、クレーンガーダ92上を移動する。クラブトロリ93にはフックブロック94が吊り下げられている。
【0022】
クレーンガーダ92の一方の端部には、足場96が設けられている。足場96は、ランウェイガーダ91の側方に位置するように、ランウェイガーダ91と同程度の高さに配置されている。足場96は、例えば運転室として用いられる。また、足場96は、後述する熱画像の撮影に用いられる。
【0023】
図2は、ランウェイガーダ91の構成例を示す側面図である。同図では、ランウェイガーダ91の長手方向と直交する幅方向(一対のランウェイガーダ91の離間方向)の内側側面を示している。ランウェイガーダ91は、例えばI字状ないしT字状の断面形状を有しており、幅方向に広がった板状の上部911を有している。
【0024】
ランウェイガーダ91の内側側面には、複数の三角リブ912が長手方向に所定の間隔で設けられている。三角リブ912は、上部911から下方に延び、下方に向かうに従って徐々に幅が狭まっている。また、ランウェイガーダ91の内側側面には、上下方向に延びる板状の補剛材913も設けられている。
【0025】
ランウェイガーダ91は、柱915によって支持されている。例えば、ランウェイガーダ91は複数の部材に分割されており、各々の部材の端部が柱915上に載せられている。
【0026】
ランウェイガーダ91は、上部911に載せられるサドル923から、クレーンガーダ92、クラブトロリ93、及びフックブロック94等の重さを含んだ荷重を受けるため、
図3に示すように、ランウェイガーダ91の長手方向に沿って亀裂Cが発生することがある。亀裂Cは、特に三角リブ912の下端を起点として発生しやすい。
【0027】
以下では、ランウェイガーダ91に発生した亀裂Cを検出するための亀裂検出システム100について説明する。
【0028】
[亀裂検出システム]
図4は、実施形態に係る亀裂検出システム100の構成例を示すブロック図である。亀裂検出システム100は、亀裂検出装置1及びクレーン装置9を備えている。亀裂検出装置1は、学習装置の一態様でもあり、推定装置の一態様でもある。
【0029】
クレーン装置9のクレーンガーダ92に設けられた足場96には、赤外線カメラ97及びランプ97が配置されている。赤外線カメラ97及びランプ97は、クレーンガーダ92とともにランウェイガーダ91の長手方向に移動する。ランプ97は、例えばハロゲンランプであり、ランウェイガーダ91の内側側面に光を照射する。
【0030】
赤外線カメラ97は、クレーンガーダ92とともにランウェイガーダ91の長手方向に移動しながら、ランウェイガーダ91の内側側面を撮影し、時系列の複数の熱画像を生成する。赤外線カメラ97により生成された時系列の複数の熱画像は、亀裂検出装置1の制御部10に供給される。
【0031】
時系列の複数の熱画像は、例えば動画データに含まれる複数の静止画像(フレーム)であってもよいし、所定の時間間隔で撮影して個別に生成された複数の静止画像であってもよい。
【0032】
赤外線カメラ97は、ランウェイガーダ91のうち、サドル923の下方の領域、すなわちサドル923によって荷重が加えられた領域を撮影する。赤外線カメラ97をクレーンガーダ92とともに移動させ、且つランウェイガーダ91に荷重を加えるサドル923は、「移動体」の一例である。
【0033】
本実施形態では、ランウェイガーダ91が亀裂検出対象の「構造物」の一例とされる。これに限らず、クレーンガーダ92を亀裂検出対象の「構造物」とし、赤外線カメラ97をクラブトロリ93とともに移動させ、クレーンガーダ92を撮影するように構成してもよい。
【0034】
亀裂検出装置1は、CPU、RAM、ROM、不揮発性メモリ及び入出力インターフェース等を含む制御部10を備えるコンピュータである。
【0035】
制御部10は、データベース2にアクセス可能である。データベース2は、亀裂検出装置1の内部に設けられてもよいし、亀裂検出装置1の外部に設けられ、例えばLAN等の通信ネットワークを介してアクセスされてもよい。
【0036】
制御部10には、操作部3及び表示部4が接続されている。操作部3、例えばキーボード、マウス、又はタッチパネル等である。表示部4は、例えば液晶表示ディスプレイ等である。
【0037】
制御部10は、画像取得部11、学習部12、推論部13、位置情報生成部14、関連付け部15、画像合成部16、長さ算出部17、及び表示制御部18を含んでいる。これらの機能部は、制御部10のCPUがROM又は不揮発性メモリからRAMにロードされたプログラムに従って情報処理を実行することによって実現される。
【0038】
プログラムは、例えば光ディスク又はメモリカード等の情報記憶媒体を介して供給されてもよいし、例えばインターネット等の通信ネットワークを介して供給されてもよい。
【0039】
なお、制御部10が実現する機能部の少なくとも一部(例えば学習部12)を、亀裂検出装置1とは別の装置(例えば1又は複数のサーバコンピュータ)で実現し、例えばインターネット等の通信ネットワークを介してデータを送受信してもよい。
【0040】
[学習フェーズ]
図4に示す制御部10が実現する機能部のうち、画像取得部11及び学習部12は、学習フェーズを実行するための機能部であり、学習装置の一態様に相当する。画像取得部11は取得手段の一例であり、学習部12は学習手段の一例である。
【0041】
画像取得部11は、赤外線カメラ97により生成された時系列の複数の熱画像を取得する。取得された熱画像は、構造物の亀裂の有無を表す亀裂有無ラベルと対応付けられてデータベース2に格納される。亀裂有無ラベルは、「亀裂の有無の情報」の一例である。
【0042】
学習部12は、データベース2から熱画像及びそれに対応付けられた亀裂有無ラベルを読み出し、熱画像を入力データとし、亀裂有無ラベルを教師データとして、熱画像から構造物の亀裂の有無を推定するための学習済みモデルを機械学習により構築する。
【0043】
なお、学習フェーズに用いられる熱画像は、必ずしもランウェイガーダ91を撮影して生成された熱画像に限られず、例えば他の構造物又は鋼材等を撮影して生成された熱画像であってもよい。
【0044】
図5は、学習フェーズの手順例を示すフロー図である。制御部10は、同図に示す情報処理をプログラムに従って実行することにより、画像取得部11及び学習部12として機能する。
【0045】
まず、制御部10は、熱画像及びそれに対応付けられた亀裂有無ラベルを取得する(S11、取得手段としての処理)。学習フェーズにおいては、熱画像及びそれに対応付けられた亀裂有無ラベルが予めデータベース2に格納され、必要に応じてデータベース2から読み出される。
【0046】
次に、制御部10は、複数用意された熱画像及びそれに対応付けられた亀裂有無ラベルの組から一部を機械学習用のトレーニングデータとして抽出し(S12)、抽出したトレーニングデータを用いて機械学習を実行する(S13、学習手段としての処理)。機械学習は、熱画像を入力データとし、亀裂有無ラベルを教師データとして行われる。これにより、熱画像から構造物の亀裂の有無を推定するための学習済みモデルが構築される。
【0047】
次に、制御部10は、複数用意された熱画像及びそれに対応付けられた亀裂有無ラベルの組からトレーニングデータとは別の一部をテストデータとして抽出し(S14)、抽出したテストデータを用いて学習済みモデルを評価する(S15)。その後、制御部10は、評価が所定以上であった学習済みモデルをデータベース2に保存し(S16)、学習フェーズを終了する。
【0048】
図6は、熱画像と亀裂有無ラベルとの対応例を示す図である。熱画像と亀裂有無ラベルとの対応関係は、同図に示すようなテーブルによって管理されている。「熱画像ID」は、熱画像の識別情報である。「亀裂有無ラベル」は、例えば熱画像を観察した人によって判断され、付与される。
【0049】
亀裂有無ラベルは、熱画像に亀裂が含まれる場合に「亀裂有り」と設定される。上述したように、ランウェイガーダ91には長手方向に沿って亀裂が発生しやすいことから、熱画像にランウェイガーダ91の長手方向(すなわち、赤外線カメラ97の移動方向)に延びる亀裂が含まれる場合に、亀裂有無ラベルは「亀裂有り」と設定される。
【0050】
亀裂有無ラベルは、熱画像に亀裂が含まれない場合に「亀裂無し」と設定される。このため、熱画像に亀裂以外のランウェイガーダ91の長手方向に延びる線が含まれる場合には、亀裂有無ラベルは「亀裂無し」と設定される。亀裂以外の線は、例えば水平に取り付けられた板材や水平に延びる溶接痕などである。
【0051】
なお、ランウェイガーダ91の長手方向に延びる亀裂の推定精度を向上させるために、ランウェイガーダ91の長手方向に延びる亀裂を含む熱画像に「亀裂有り」の亀裂有無ラベルを付与する一方で、それ以外の方向に延びる亀裂を含む熱画像の少なくとも一部に「亀裂無し」の亀裂有無ラベルを付与してもよい。
【0052】
図7は、学習済みモデルの構築例を説明するための図である。学習済みモデルは、例えば畳み込みニューラルネットワークであり、畳み込みフィルタ、プーリング層、全結合層、及び出力層を含んでいる。特には、ニューロンを多段に組み合わせたディープニューラルネットワークが好適である。
【0053】
熱画像Tにおける亀裂Cの有無を推定する場合、畳み込みニューラルネットワークの出力層は、例えば「亀裂有り」と「亀裂無し」の2要素とされ、亀裂Cの有無を分類するように構成される。また、出力層には、例えばソフトマックス関数が用いられ、出力値が亀裂Cの有無の確率として得られる。
【0054】
なお、図示の畳み込みニューラルネットワークはあくまでも一例であり、層構造はこれに限られず、畳み込みフィルタ、プーリング層、及び全結合層はそれぞれ複数層あってもよい。また、サポートベクタマシン、ガウス過程、決定木などのニューラルネットワーク以外の機械学習を用いてもよい。
【0055】
[推論フェーズ]
図4に示す制御部10が実現する機能部のうち、画像取得部11及び推論部13は、推論フェーズを実行するための機能部であり、推定装置の一態様に相当する。画像取得部11は取得手段の一例であり、推論部13は推論手段の一例である。また、位置情報生成部14は生成手段の一例であり、関連付け部15は関連付け手段の一例である。
【0056】
画像取得部11は、赤外線カメラ97を移動させながらランウェイガーダ91を撮影して得られた時系列の複数の熱画像を取得し、推論部13及び位置情報生成部14に出力する。推論フェーズにおいては、画像取得部11により取得された熱画像が推論部13に直接的に入力される。これに限らず、熱画像はデータベース2に一旦格納され、データベース2から読み出されてもよい。
【0057】
推論部13は、学習フェーズで構築された学習済みモデルを用いて、画像取得部11により取得された時系列の複数の熱画像のそれぞれからランウェイガーダ91の亀裂の有無を推定する。推論部13は、推定結果をランウェイガーダ91の亀裂発生確率として出力する。推論部13は、推定結果を関連付け部15に出力する。
【0058】
位置情報生成部14は、画像取得部11により取得された時系列の複数の熱画像を解析することにより、ランウェイガーダ91に対する赤外線カメラ97の位置を表す位置情報を生成する。赤外線カメラ97の位置は、ランウェイガーダ91の長手方向における位置である。位置情報生成部14は、生成した位置情報を関連付け部15に出力する。
【0059】
関連付け部15は、複数の熱画像のそれぞれについて、推論部13により推定された推定結果と、位置情報生成部14により生成された位置情報とを関連付けて、データベース2に格納する。
【0060】
図8は、推論フェーズの手順例を示すフロー図である。制御部10は、同図に示す情報処理をプログラムに従って実行することにより、画像取得部11、推論部13、位置情報生成部14、及び関連付け部15として機能する。
【0061】
まず、制御部10は、赤外線カメラ97により生成された時系列の複数の熱画像を取得する(S21、取得手段としての処理)。
【0062】
次に、制御部10は、取得された時系列の複数の熱画像を入力データとし、学習フェーズで作成された学習済みモデルを用いて、時系列の複数の熱画像のそれぞれについてランウェイガーダ91の亀裂発生確率を推定する(S22、推論手段としての処理)。
【0063】
次に、制御部10は、取得された時系列の複数の熱画像のそれぞれの撮影位置を表す位置情報を生成する(S23、生成手段としての処理)。位置情報は、例えば基準時点からの熱画像のフレーム数をカウントすることによって生成される。すなわち、位置情報は、熱画像のフレーム数によって表される。
【0064】
基準時点は、例えば熱画像の画像解析により、ランウェイガーダ91に含まれる例えば柱915(
図2参照)等の基準対象が検出された時点である。制御部10は、パターンマッチングにより基準対象を検出するためのパターンをメモリに予め保持している。
【0065】
具体的には、制御部10は、クレーンガーダ92が所定の移動速度vになり、且つ熱画像においてランウェイガーダ91の柱915等の基準対象を検出した時点から、熱画像のフレーム数のカウントを開始する。このとき、赤外線カメラ97は、所定の時間間隔tで連続的に熱画像を撮影する。
【0066】
位置情報は、熱画像のフレーム数に限らず、例えば熱画像のフレーム数に赤外線カメラ97の移動速度vと撮影の時間間隔tとを掛け合わせることによって得られる距離で表されてもよい。また、位置情報は、熱画像の画像解析に限らず、例えばレーザ変位計等により計測される距離で表されてもよい。
【0067】
次に、制御部10は、複数の熱画像のそれぞれについて、推定結果としての亀裂発生確率と熱画像の撮影位置を表す位置情報としてのフレーム数とを関連付けて、データベース2に格納する(S24、関連付け手段としての処理)。
【0068】
図9は、推定結果と位置情報との対応例を示す図である。推定結果と位置情報との対応関係は、同図に示すようなテーブルによって管理されている。「フレーム番号」は、ランウェイガーダ91の柱915(
図2参照)を検出した後に撮影された熱画像のフレーム数であり、熱画像の撮影位置を表す位置情報である。
【0069】
フレーム番号は、ランウェイガーダ91の柱915が検出されたときの熱画像が0と設定される。複数の熱画像Tにおいて柱915が検出された場合には、柱915が最も中央に近い位置で検出された熱画像が0と設定される。
【0070】
「亀裂発生確率」は、学習済みモデルを用いて得られた推定結果であり、亀裂有りの確率を百分率で表している。「閾値以上?」は、亀裂発生確率が予め定められた閾値以上であるか否かを表している。
【0071】
以上に説明した実施形態によれば、予め亀裂有りまたは亀裂無しと判定した熱画像を基に機械学習して作成された学習済みモデルを用いて、ランウェイガーダ91を撮影して得られる熱画像からランウェイガーダ91の亀裂の有無を推定するので、熱画像の分解能設定や急峻な温度変化割合などを潜在的に考慮した形で推定精度の向上を図ることができる。
【0072】
また、実施形態によれば、クレーンガーダ92とともに赤外線カメラ97を移動させながらランウェイガーダ91を撮影し、これにより得られた時系列の複数の熱画像から亀裂の有無を推定するので、例えば100~300m程度の長大なランウェイガーダ91であっても、亀裂の有無を迅速に推定することが可能となる。
【0073】
また、実施形態によれば、推定結果としての亀裂発生確率と熱画像の撮影位置を表す位置情報とが関連付けられてデータベース2に格納されるので、ランウェイガーダ91に発生した亀裂の位置を容易に特定することが可能となる。
【0074】
また、実施形態によれば、熱画像の画像解析により、ランウェイガーダ91に対する赤外線カメラ97の位置を表す位置情報を生成するので、レーザ変位計等を別途設ける場合と比較して装置コストを抑制することが可能となる。
【0075】
[表示制御]
図4に示す制御部10が実現する機能部のうち、画像合成部16、長さ算出部17、及び表示制御部18は、表示部4に表示する表示画像を生成するための機能部である。画像合成部16は合成手段の一例であり、長さ算出部17は算出手段の一例であり、表示制御部18は表示制御手段の一例である。
【0076】
図10は、表示画像Dの表示例を説明するための図である。表示画像Dは、表示制御部18により生成され、表示部4に出力される(
図4参照)。表示画像Dは、推定結果と位置情報との対応関係を表す推定結果画像PPと、複数の熱画像の各部を合成した合成画像STとを含んでいる。
【0077】
推定結果画像PPは、複数の熱画像のそれぞれについての亀裂発生確率を、熱画像の撮影位置を表すフレーム番号に対応させて表示したグラフであり、横軸はフレーム番号を表し、縦軸は亀裂発生確率を表している。推定結果画像PPを生成するための情報は、推定結果と位置情報との対応関係を管理するためのテーブル(
図9参照)から読み出される。
【0078】
推定結果画像PPには、亀裂の長さLを表す文字列が付加される。亀裂の長さLは、亀裂発生確率が閾値以上の熱画像が連続する数等に基づいて算出される。亀裂の長さLの算出については、詳細を後述する。亀裂の長さLは、長さ算出部17により算出され、表示制御部18に出力される(
図4参照)。
【0079】
合成画像STは、複数の熱画像から得られる複数の画像片TPを、熱画像の撮影位置を表すフレーム番号に対応させて合成した画像である。合成画像STの生成については、詳細を後述する。合成画像STは、推定結果画像PPとフレーム番号が対応するように、推定結果画像PPと上下に並んで配置される。合成画像STは、画像合成部16により生成され、表示制御部18に出力される(
図4参照)。
【0080】
表示画像D上には、ユーザの操作入力に応じて表示画像D上を移動するカーソルKが表示される。カーソルKは、推定結果画像PPの亀裂発生確率と合成画像STの各部との対応関係を示すように、推定結果画像PPと合成画像STとに跨って配置されている。具体的には、カーソルKは上下方向に延び、フレーム番号が共通する推定結果画像PPの部分と合成画像STの部分とに重なっている。
【0081】
図11は、表示制御の手順例を示すフロー図である。制御部10は、同図に示す情報処理をプログラムに従って実行することにより、画像合成部16、長さ算出部17、及び表示制御部18として機能する。
【0082】
まず、制御部10は、推定結果画像PPを生成する(S31)。具体的には、制御部10は、データベース2に格納されたテーブル(
図9参照)からフレーム番号と亀裂発生確率とを読み出して、推定結果画像PPを生成する。
【0083】
次に、制御部10は、複数の熱画像Tのそれぞれから一部を抽出し(S32,S33)、抽出したそれぞれの熱画像Tの一部を合成することで、合成画像STを生成する(S34)。
【0084】
図12は、合成画像STの合成例を説明するための図である。同図では、フレーム番号iの熱画像T
iから画像片TP
iを抽出し、合成画像STのi番目の要素として利用する例を示している。画像片TP
iは、熱画像T
iのうちの、赤外線カメラ97の移動方向(図の左右方向)の一部であり、それと直交する方向(図の上下方向)にライン状に延びている。
【0085】
表示画像D(
図10参照)において推定結果画像PPとフレーム番号を対応させて表示するには、熱画像T
iのうちの左右方向の中央部が画像片TP
iとして抽出されることが好ましい。
【0086】
また、画像片TPiの幅は、赤外線カメラ97の移動速度vと撮影の時間間隔tとを掛け合わせた距離vtであることが好ましい。これにより、画像片TPiを合成画像STに含めたときに、範囲の欠落や重複を抑制することができる。
【0087】
合成画像STでは、複数の画像片Tのそれぞれから抽出された画像片TPがフレーム番号順に並べられている。このように生成された合成画像STには、赤外線カメラ97により撮影したランウェイガーダ91の全体が現れている。
【0088】
合成画像STにおける各画像片TPの幅は、表示画像D(
図10参照)において推定結果画像PPとフレーム番号を対応させて表示するために、推定結果画像PPが示す棒グラフの棒幅に合わせることが好ましい。
【0089】
なお、それぞれの熱画像Tの一部を画像片TPとして抽出する態様に限らず、例えば複数の熱画像Tから領域の欠落や重複がないように間欠的に抜き出された幾つかの熱画像Tを繋げて合成画像STを生成してもよい。また、熱画像Tを水平方向に平均化することにより画像片TPを作成してもよい。
【0090】
図11の説明に戻り、次に、制御部10は、亀裂の長さLを算出する(S35)。亀裂Cの長さLは、赤外線カメラ97の移動速度v、熱画像を撮影する時間間隔t、赤外線カメラ97の視野のランウェイガーダ91上における移動方向の長さ、及び亀裂発生確率が閾値以上の熱画像が連続する数に基づいて算出される。
【0091】
図13は、亀裂の長さLの算出例を説明するための図である。以下に説明する例では、フレーム番号がiからjまでの熱画像T
i~T
jにおいて亀裂発生確率が閾値以上であったものとする(但し、i<j)。また、熱画像Tに含まれる亀裂Cは、フレーム番号の増加に伴って右方向にシフトするものとする(すなわち、赤外線カメラ97は、クレーンガーダ92に相対した状態で左方向に移動する)。
【0092】
撮影開始地点から亀裂までの距離Pは、下記数式1で表される。ここで、vは赤外線カメラ97の移動速度であり、tは撮影の時間間隔である。
【0093】
【0094】
図13(a)に示すように、フレーム番号iの熱画像T
iにおける亀裂Cの水平方向の長さ(赤外線カメラ97の移動方向の長さ)をX
1とする。具体的には、亀裂Cの右端から熱画像T
iの左端までの長さがX
1である。
【0095】
図13(b)に示すように、フレーム番号jの熱画像T
jにおける亀裂Cの水平方向の長さをX
2とする。bは、赤外線カメラ97の視野のランウェイガーダ91上における水平方向の長さである。
【0096】
具体的には、熱画像Tjの右端から亀裂Cの左端までの距離がX2である。亀裂Cの左端から熱画像Tjの左端までの距離がb-X2である。また、亀裂Cの右端から熱画像Tjの左端までの距離は、X1+(j-i)vtである。
【0097】
以上より、亀裂Cの長さLは、下記数式2で表される(但し、L>0)。
【0098】
【0099】
なお、長さX1は、1つ前のフレーム番号i-1の熱画像Ti-1で亀裂が検出されていないことから、距離vt以下であると考えられる。同様に、長さX2も、1つ後のフレーム番号j+1の熱画像Tj+1で亀裂が検出されていないことから、距離vt以下であると考えられる。このため、下記数式3が成り立つ。
【0100】
【0101】
当該数式3に基づき、X1+X2が2vtと略等しいとすると、上記数式2における亀裂Cの長さLは、下記数式4で表すことができる。
【0102】
【0103】
以上のようにして、亀裂Cの長さLは、赤外線カメラ97の移動速度v、熱画像を撮影する時間間隔t、赤外線カメラ97の視野のランウェイガーダ91上における水平方向の長さb、及び亀裂発生確率が閾値以上の熱画像が連続する数で表される。
【0104】
図11の説明に戻り、次に、制御部10は、上記S31で生成した推定結果画像PPと、上記S34で生成した合成画像STと、上記S35で算出した亀裂の長さLとを表示画像Dに含めて、表示部4に出力する(S36)。以上で表示制御の手順が終了する。
【0105】
以上に説明した実施形態によれば、推定結果と位置情報との対応関係を表す推定結果画像PPを表示するので、ランウェイガーダ91に発生した亀裂の位置を容易に特定することが可能となり、解析時間を短縮することが可能となる。
【0106】
また、実施形態によれば、推定結果画像PPとともに合成画像STを表示するので、ランウェイガーダ91に発生した亀裂を熱画像により確認することが可能となり、解析時間をさらに短縮することが可能となる。
【0107】
特に、推定結果画像PPと合成画像STとをフレーム番号が対応するように上下に並べて配置することで、ランウェイガーダ91に発生した亀裂を合成画像STにより迅速かつ容易に確認することが可能となる。
【0108】
また、実施形態によれば、カーソルKにより推定結果画像PPの亀裂発生確率と合成画像STの各部との対応関係を示すので、ランウェイガーダ91に発生した亀裂を合成画像STにより迅速かつ容易に確認することが可能となる。
【0109】
なお、カーソルKが指すフレーム番号の熱画像を読み出して表示画像Dに含めるようにしてもよい。これによれば、ランウェイガーダ91に発生した亀裂を単独の熱画像により詳細に確認することが可能となり、解析時間を短縮することが可能となる。
【0110】
また、実施形態によれば、亀裂の位置及び長さを算出するため、解析時間を短縮することが可能となる。特に、熱画像の画像解析により亀裂の位置及び長さを算出するため、レーザ変位計等を別途設ける場合よりも装置コストを抑制しつつ解析時間を短縮することが可能となる。
【0111】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が当業者にとって可能であることはもちろんである。
【0112】
例えば、亀裂検出装置1の制御部10は、亀裂発生確率が閾値以上の熱画像が連続する数が所定以上である場合に、ランウェイガーダ91に亀裂が発生していると判定する判定部をさらに備えてもよい。
【0113】
また、亀裂検出対象の構造物は、クレーン装置9のランウェイガーダ91やクレーンガーダ92に限らず、例えば橋梁や線路、ガードレール等であってもよい。特に、一方向に延びる長尺の構造物が好適である。
【符号の説明】
【0114】
1 亀裂検出装置、2 データベース、3 操作部、4 表示部、10 制御部、11 画像取得部、12 学習部、13 推論部、14 位置情報生成部、15 関連付け部、16 画像合成部、17 長さ算出部、18 表示制御部、9 クレーン装置、91 ランウェイガーダ、911 上部、912 三角リブ、913 補剛材、915 柱、92 クレーンガーダ、923 サドル、93 クラブトロリ、94 フックブロック、96 足場、97 赤外線カメラ、98 ランプ、100 亀裂検出システム、T 熱画像、C 亀裂、ST 合成画像、PP 推定結果画像、D 表示画像、K カーソル