IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ビルシステムの特許一覧 ▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

<>
  • 特許-防振ゴム振れ止め機構の組立方法 図1
  • 特許-防振ゴム振れ止め機構の組立方法 図2
  • 特許-防振ゴム振れ止め機構の組立方法 図3
  • 特許-防振ゴム振れ止め機構の組立方法 図4
  • 特許-防振ゴム振れ止め機構の組立方法 図5
  • 特許-防振ゴム振れ止め機構の組立方法 図6
  • 特許-防振ゴム振れ止め機構の組立方法 図7
  • 特許-防振ゴム振れ止め機構の組立方法 図8
  • 特許-防振ゴム振れ止め機構の組立方法 図9
  • 特許-防振ゴム振れ止め機構の組立方法 図10
  • 特許-防振ゴム振れ止め機構の組立方法 図11
  • 特許-防振ゴム振れ止め機構の組立方法 図12
  • 特許-防振ゴム振れ止め機構の組立方法 図13
  • 特許-防振ゴム振れ止め機構の組立方法 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】防振ゴム振れ止め機構の組立方法
(51)【国際特許分類】
   F16F 15/08 20060101AFI20220302BHJP
   F16B 37/06 20060101ALI20220302BHJP
   B66B 9/04 20060101ALN20220302BHJP
【FI】
F16F15/08 E
F16B37/06 A
B66B9/04 H
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018199711
(22)【出願日】2018-10-24
(65)【公開番号】P2020067125
(43)【公開日】2020-04-30
【審査請求日】2021-01-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(73)【特許権者】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 遼太郎
(72)【発明者】
【氏名】松本 達也
【審査官】後藤 健志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-184763(JP,A)
【文献】実開平01-070776(JP,U)
【文献】特開2000-130423(JP,A)
【文献】特開平07-042721(JP,A)
【文献】中国実用新案第206553019(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/02-15/08
F16B 37/06
B66B 9/04
B66B 11/04-11/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下ベースの下方に配置した連結ベースと、前記下ベースと前記連結ベースとの間に配置され、前記下ベースを支持する防振ゴム装置と、前記下ベース、前記防振ゴム装置、前記連結ベースのそれぞれに形成された複数の孔に挿入され、前記下ベース、前記防振ゴム装置、前記連結ベースを連結する振れ止めボルトとを備えた防振ゴム振れ止め機構の組立方法であって、
前記連結ベースの下面側にナットを配置し、前記連結ベースの孔にナット取付治具を挿入し、前記ナット取付治具の先端部に前記ナットを螺合させて前記ナットと前記連結ベースを固定する工程と、
前記ナットを前記連結ベースに固定した状態で前記ナットを前記連結ベースに溶接する工程と、
前記ナットを溶接固定後、前記ナット取付治具を取外す工程と、
前記連結ベースに前記防振ゴム装置を載置し、前記複数の孔に防振ゴム取付治具を挿入し、前記防振ゴム装置と前記連結ベースの位置決めを行う工程と、
前記防振ゴム装置と前記連結ベースを位置決めした状態で前記防振ゴム装置を前記連結ベースにボルト固定する工程と、
前記防振ゴム装置を前記連結ベースにボルト固定後、前記防振ゴム取付治具を取外す工程と、
前記振れ止めボルトを前記複数の孔に挿入し前記振れ止めボルトの先端部を前記ナットに螺合させる工程とを備えたことを特徴とする防振ゴム振れ止め機構の組立方法。
【請求項2】
請求項において、
前記ナット取付治具は、前記ナット取付治具の先端部より径が大きい位置決め径大部を備え
前記防振ゴム取付治具は、前記防振ゴム取付治具の先端部より径が大きい防振ゴム側位置決め経大部を備えたことを特徴とする防振ゴム振れ止め機構の組立方法。
【請求項3】
請求項において、
前記ナットを前記連結ベースに溶接する工程は点付け溶接であることを特徴とする防振ゴム振れ止め機構の組立方法。
【請求項4】
請求項において、
前記防振ゴム装置は、前記下ベースに結合される上端と、前記連結ベースに結合される下端と、前記上端と前記下端との間に配置されたゴム部材から構成されていることを特徴とする防振ゴム振れ止め機構の組立方法。
【請求項5】
下ベースの下方に配置した連結ベースと、前記下ベースと前記連結ベースとの間に配置され、前記下ベースを支持する防振ゴム装置と、前記下ベース、前記防振ゴム装置、前記連結ベースのそれぞれに形成された複数の孔に挿入され、前記下ベース、前記防振ゴム装置、前記連結ベースを連結する振れ止めボルトとを備えた防振ゴム振れ止め機構の組立方法であって、
前記連結ベースの下面側にナットを配置し、前記連結ベースの孔にナット取付治具を挿入し、前記ナット取付治具の先端部に前記ナットを螺合させて前記ナットと前記連結ベースを固定する工程と、
前記ナットを前記連結ベースに固定した状態で前記ナットを前記連結ベースに溶接する工程と、
前記ナットを溶接固定後、前記ナット取付治具を取外す工程と、
前記連結ベースに前記防振ゴム装置を載置し、前記複数の孔に前記ナット取付治具を挿入し、前記防振ゴム装置と前記連結ベースの位置決めを行う工程と、
前記防振ゴム装置と前記連結ベースを位置決めした状態で前記防振ゴム装置を前記連結ベースにボルト固定する工程と、
前記防振ゴム装置を前記連結ベースにボルト固定後、前記ナット取付治具を取外す工程と、
前記振れ止めボルトを前記複数の孔に挿入し前記振れ止めボルトの先端部を前記ナットに螺合させる工程とを備えたことを特徴とする防振ゴム振れ止め機構の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧エレベーター装置やエレベーター巻上機装置等で使用される防振ゴム振れ止め機構の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧エレベーター装置やエレベーター巻上機装置等には、地震動に備え、耐震構造が施されている。このような耐震構造では、上部プレートと下部プレートとの間に可撓性の防振体を配置して構成された防振部材をエレベーターの巻上機と機械台との間に介装し、上部プレートを巻上機に、下部プレートを機械台にそれぞれ固定している。上プレートと防振体のそれぞれには貫通穴を形成し、この貫通穴には、貫通穴の外周面との間に所定の間隙を持って筒状のスペーサが配置される。スペーサの一端は下プレートに着座し、スペーサの他端には上プレートと所定の間隙を隔てて対向するストッパ部材が重合されている。下プレートを機械台に固定する両ねじボルトが、ストッパ部材およびスペーサを挿通し、両ねじボルトの両端をナットで締め付けることによりストッパ部材およびスペーサを下プレートとともに機械台に締結している。このような技術として、例えば特許文献1に記載の技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2010-184763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された技術においては、ストッパ部材およびスペーサに両ねじボルトを挿入後、両ねじボルトの両端をナットで締め付ける必要があるので、現地における組立時の作業性が悪く、精度良く組み立てるために現地での調整作業が必要であった。特に油圧エレベーター装置やエレベーター巻上機装置等が設置される場所は、スペースが限られているため、ナットで締め付け作業や調整作業が困難である。
【0005】
そこで、本発明の目的は、組立時の作業性を向上させると共に、精度良く組み立てることができるようにした防振体振れ止め機構の組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明は、下ベースの下方に配置した連結ベースと、前記下ベースと前記連結ベースとの間に配置され、前記下ベースを支持する防振ゴム装置と、前記下ベース、前記防振ゴム装置、前記連結ベースのそれぞれに形成された複数の孔に挿入され、前記下ベース、前記防振ゴム装置、前記連結ベースを連結する振れ止めボルトとを備えた防振ゴム振れ止め機構の組立方法であって、前記連結ベースの下面側にナットを配置し、前記連結ベースの孔にナット取付治具を挿入し、前記ナット取付治具の先端部に前記ナットを螺合させて前記ナットと前記連結ベースを固定する工程と、前記ナットを前記連結ベースに固定した状態で前記ナットを前記連結ベースに溶接する工程と、前記ナットを溶接固定後、前記ナット取付治具を取外す工程と、前記連結ベースに前記防振ゴム装置を載置し、前記複数の孔に防振ゴム取付治具を挿入し、前記防振ゴム装置と前記連結ベースの位置決めを行う工程と、前記防振ゴム装置と前記連結ベースを位置決めした状態で前記防振ゴム装置を前記連結ベースにボルト固定する工程と、
前記防振ゴム装置を前記連結ベースにボルト固定後、前記防振ゴム取付治具を取外す工程と、前記振れ止めボルトを前記複数の孔に挿入し前記振れ止めボルトの先端部を前記ナットに螺合させる工程とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、組立時の作業性を向上させると共に、精度良く組み立てることができるようにした防振体振れ止め機構の組立方法を提供することにある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の第1実施例に係る油圧パワーユニット装置の正面図である。
図2】本発明の第1実施例に係る油圧パワーユニット装置の側面図である。
図3図1のIII部における拡大図である。
図4】本発明の第1実施例に係る前半のナット21を溶接する各工程を示す断面図である。
図5】本発明の第1実施例に係る前半のナット21を溶接する各工程を示す断面図である。
図6】本発明の第1実施例に係る前半のナット21を溶接する各工程を示す断面図である。
図7】本発明の第1実施例に係るナット21の固定方法を示すフローチャートである。
図8】本発明の第1実施例に係る防振ゴム装置13の取り付け時における初期状態を示す断面図である。
図9】本発明の第1実施例に係る防振ゴム装置13の取り付け時における中期状態を示す断面図である。
図10】本発明の第1実施例に係る防振ゴム装置13の取り付け時における完了状態を示す断面図である。
図11】本発明の第1実施例に係る後半の防振ゴム装置13の取り付け方法を示すフローチャートである。
図12】本発明の第2実施例に係る後半の防振ゴム装置13の取り付け時における初期状態を示す断面図である。
図13】本発明の第2実施例に係る後半の防振ゴム装置13の取り付け時における中期状態を示す断面図である。
図14】本発明の第2実施例に係る後半の防振ゴム装置13の取り付け時における完了状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は本発明の第1実施例に係る油圧パワーユニット装置の正面図であり、図2は本発明の第1実施例に係る油圧パワーユニット装置の側面図である。
【0011】
図1及び図2において、油圧ポンプ1は、継ぎ手2を介して電動機3に結合されている。油圧ポンプ1の吸い込み側4には配管5の一端が接続されており、この配管5の他端側はタンク6内の作動油内に位置するように挿入されている。油圧ポンプ1の吐出側7には、配管8を介して制御弁9が接続されている。
【0012】
パワーユニット装置における主要機器である油圧ポンプ1、電動機3および制御弁9などは、モータベース10に搭載されている。モータベース10の下方における床側には、奥行方向(図2の幅方向)に延びて、かつ、幅方向(図1)に所定の間隔を隔てて対向配置された一対の連結ベース11と、幅方向に延びて一対の連結ベース11上に跨がって載置され、かつ、奥行方向に所定の間隔を隔てて対向配置された一対の下ベース12が固定されている。
【0013】
モータベース10と連結ベース11間には、電動機3の軸方向(図1の幅方向)に所定距離を隔てて複数の防振ゴム装置13が配置されている。防振ゴム装置13の上部は下ベース12に固定され、防振ゴム装置13の下部は連結ベース11に固定されている。
【0014】
次に防振ゴム装置13の詳細について図3を用いて説明する。図3は、図1のIII部における拡大図であり、防振ゴム装置13の近傍を示している。
【0015】
防振ゴム装置13は、ゴム部材14と、ゴム部材14の上部に一体的に形成された上端15と、ゴム部材14の下部に一体的に形成された下端16を有している。上端15と下端16は例えば金属板で構成される。下ベース12の肉厚部と上端15の間は、上方からねじ込んだ複数本のボルト17によって結合されている。一方、連結ベース11と下端16の間には、ライナー18が介在された状態で上方からねじ込んだ他の複数本のボルト19と、その先端部側にそれぞれ螺合させたナット20によって結合されている。
【0016】
防振ゴム装置13の中央部には、下ベース12、上端15、ゴム部材14、下端16、ライナー18および連結ベース11を貫通する一連の孔が形成されている。この孔に対応する連結ベース11の下面側にはナット21が溶接されている。またこの孔に対応する各部の内壁面にはディスタントピース22が挿入されている。このディスタントピース22を利用して振れ止めボルト23が上方から挿入されており、その挿入側先端部はナット21に螺合されている。このとき振れ止めボルト23の頭部と下ベース12間には振れ止めワッシャー24が介在されている。
【0017】
次に、図3に示した防振ゴム装置13の組立方法について図4図7を用いて説明する。防振ゴム装置13の取り付け方法は、前半のナット21の溶接工程と、後半の防振ゴム装置13の取り付け工程とからなる。
【0018】
図4図5および図6は、本発明の第1実施例に係る前半のナット21を溶接する各工程を示す断面図である。また図7は、本発明の第1実施例に係るナット21の固定方法を示すフローチャートである。
【0019】
連結ベース11の底面部には予め孔25が形成されている。この孔25に対応した連結ベース11の下部側にナット21を溶接する工程では、ある程度の軸長を有するナット溶接用のナット取付治具26(取付治具)が使用される。ナット溶接用のナット取付治具26は、下方側先端部に形成されており孔25内に挿入されると共にナット21に螺合可能なねじ部27と、ねじ部27がナット21に所定位置まで螺合挿入されたときの位置決めとなる位置決め径大部28を有している。位置決め径大部28は、ナット取付治具26のねじ部27(先端部)より径が大きく形成されている。
【0020】
先ず、図7に示したステップS1では、ナット取付治具26を使用してナット21を連結ベース11に圧接し固定させる工程を行う。この工程は、図4に示すように連結ベース11の下部側にナット21を配置しながら、連結ベース11の上部側から孔25にナット取付治具26のねじ部27をその軸方向に挿入し、ねじ部27をナット21に螺合させて行われる。両者の螺合が完成されると、図5に示すようにナット取付治具26の位置決め径大部28が連結ベース11の上面側に圧接されると共に、ナット21が連結ベース11の下面側の所定位置に圧接される(連結ベース11の下面側にナット21を配置し、連結ベース11の孔25にナット取付治具26を挿入し、ナット取付治具26のねじ部27(先端部)にナット21を螺合させてナット21と連結ベース11を固定する工程)。
【0021】
次いで、図7に示したステップS2では、ナット21が連結ベース11の下面側に点付け溶接する工程を行う(ナット21を連結ベース11に固定した状態でナット21を連結ベース11に溶接する工程)。点付け溶接した部分には溶接部40が形成される。この工程は、図5に示すようにナット取付治具26によってナット21を連結ベース11の下面側に圧接させた状態で行われるので、ナット21を連結ベース11の下面側における所定の位置に確実に溶接することができる。
【0022】
その後、図7に示したステップS3では、ナット取付治具26を取り外す工程を実施する(ナット21を溶接固定後、前記ナット取付治具26を取外す工程)。この工程は、図6に示すように既に固定されているナット21から螺合を解く方向にナット取付治具26を回転して行われる。
【0023】
このように適度の軸長を有するナット溶接用のナット取付治具26を使用し、ナット取付治具26の挿入側先端部に形成されているねじ部27をナット21に螺合させることによって、ナット21の位置保持を行っている。このため、近傍に構造物が存在して狭隘作業となっても、ナット21の位置保持を簡単に精度良く行うことができる。また、ナット取付治具26によってナット21の位置を保持した状態で、ナット21を連結ベース11の下面側に溶接するため、ナット21を精度良く固定することができる。
【0024】
次に、上述した後半の防振ゴム装置13の組立方法について図8図11を用いて説明する。
【0025】
図8は本発明の第1実施例に係る防振ゴム装置13の取り付け時における初期状態を示す断面図、図9は本発明の第1実施例に係る防振ゴム装置13の取り付け時における中期状態を示す断面図、図10は本発明の第1実施例に係る防振ゴム装置13の取り付け時における完了状態を示す断面図である。また図11は本発明の第1実施例に係る後半の防振ゴム装置13の取り付け方法を示すフローチャートである。
【0026】
後半の工程では、防振ゴム装置13の高さ方向の寸法より長いある程度の軸長を有する防振ゴム用の防振ゴム取付治具29(取付治具)が使用される。防振ゴム用の防振ゴム取付治具29は、下方側先端部を孔25またはナット21内に挿入されて連結ベース11に対する位置決めを行う連結ベース側位置決め部30と、防振ゴム装置13の下端16に予め形成されている孔31には挿入されるが、連結ベース11に形成されている孔25には挿入されずに連結ベース11に対する防振ゴム装置13の相対的な位置決めを行う防振ゴム側位置決め径大部32(位置決め径大部)を有している。防振ゴム側位置決め径大部32は、防振ゴム取付治具29の連結ベース側位置決め部30より径が大きく形成されている。
【0027】
先ず、図11に示したステップS4では、防振ゴム取付治具29を使用して防振ゴム装置13と連結ベース11の位置決めを行う(連結ベース11に防振ゴム装置13を載置し、連結ベース11の孔に防振ゴム取付治具29を挿入し、防振ゴム装置13と連結ベース11の位置決めを行う工程)。この工程は、図8に示すように連結ベース11の上に防振ゴム装置13を搭載する。その後、防振ゴム取付治具29における連結ベース側位置決め部30側を下方にして配置し、図3で説明した一連の孔内に連結ベース側位置決め部30を挿入して行う。すると、図9に示すように連結ベース側位置決め部30が連結ベース11おける孔25に嵌合し、また防振ゴム側位置決め径大部32が防振ゴム装置13の下端16に予め形成されている孔31に嵌合される。
【0028】
防振ゴム取付治具29が正しく嵌合されない場合は、連結ベース11と防振ゴム装置13の相対的な位置関係がずれているので、両者の相対的な位置関係を調整して、防振ゴム取付治具29が正しく嵌合されるようにする。
【0029】
次に、図11に示したステップS5では、連結ベース11と防振ゴム装置13の相対的な位置決めを行っている状態で、防振ゴム装置13と連結ベース11間のボルト19にてボルト固定を行う(防振ゴム装置13と連結ベース11を位置決めした状態で防振ゴム装置13を連結ベース11にボルト19で固定する工程)。これは、図9に示すように防振ゴム取付治具29によって連結ベース11に対する防振ゴム装置13の相対的な位置が正しく調整された状態で、図3に示したボルト19を下端16と連結ベース11に予め形成されている挿入孔に上方から挿入し、ボルト19の挿入側先端部にナット20を螺合して行う。すると、防振ゴム装置13の下端16と連結ベース11間の結合が完成する。
【0030】
その後、図11に示したステップS6では、防振ゴム装置13と連結ベース11間をボルト19およびナット20によって固定した後、防振ゴム取付治具29を取り外す(防振ゴム装置13を連結ベース11にボルト19で固定後、防振ゴム取付治具29を取外す工程)。これは、図10に示すように防振ゴム取付治具29を上方に抜き取ることによって、簡単に行うことができる。
【0031】
後半の防振ゴム装置13の取り付け時においても、防振ゴム取付治具29を使用しているため、近傍に構造物が存在して狭隘作業となっても、防振ゴム取付治具29によって連結ベース11に対する防振ゴム装置13の相対的な位置関係を容易に、かつ精度良く決めることができる。
【0032】
その後、図3に示したように防振ゴム装置13の上端15と下ベース12間を複数本のボルト17によって結合し、ナット溶接用のナット取付治具26および防振ゴム用の防振ゴム取付治具29を仮配置していた一連の孔内に振れ止めボルト23を挿入し、振れ止めボルト23の挿入側先端部を既に溶接によって固定されているナット21に螺合させて、同部の取り付け方法を完了する(振れ止めボルト23を複数の孔(孔25、31、下ベース12の孔)に挿入し振れ止めボルト23の先端部をナット21に螺合させる工程)。
【0033】
第1実施例によれば、複数の孔の一部を利用して取付治具を取り付けると共に、連結ベースの下方に配置されたナットに螺合させて保持し、同状態でナットを溶接して固定することができ、また、固定したナットを利用して取り付け治具を取り付けて連結ベースと防振ゴム装置の相対的な位置調整における組立時の作業性を向上させると共に、精度良く行うことができる。さらに、この構成を利用して、振れ止めボルトを上部から既に固定されているナットに締付けるだけで連結ベースと防振ゴム装置間を精度良く固定することもできる。
【実施例2】
【0034】
次に本発明の第2実施例について、図12図14を用いて説明する。図12は本発明の第2実施例に係る後半の防振ゴム装置13の取り付け時における初期状態を示す断面図、図13は本発明の第2実施例に係る後半の防振ゴム装置13の取り付け時における中期状態を示す断面図、図14は本発明の第2実施例に係る後半の防振ゴム装置13の取り付け時における完了状態を示す断面図である。
【0035】
第1実施例では、連結ベース11に対する防振ゴム装置13の相対的な位置決めのために防振ゴム用の防振ゴム取付治具29を使用したが、第2実施例では図4図6で使用したナット溶接用のナット取付治具26を後半でも兼用して使用している。
【0036】
ナット溶接用のナット取付治具26は、図4で説明したように下方側先端部に形成されていて孔25内に挿入されると共に、ナット21に螺合可能なねじ部27と、ねじ部27がナット21に所定位置まで螺合挿入されたときの位置決めとなる位置決め径大部28を有している。位置決め径大部28は、ナット取付治具26のねじ部27(先端部)より径が大きく形成されている。ねじ部27は、防振ゴム用の防振ゴム取付治具29における連結ベース側位置決め部30と同様に、下方側先端部を孔25またはナット21内に挿入されて連結ベース11に対する位置決めを行う連結ベース側位置決め機能を有している。また位置決め径大部28は、防振ゴム取付治具29における防振ゴム側位置決め径大部32と同様に、防振ゴム装置13の下端16に予め形成されている孔31に挿入されるが、連結ベース11に形成されている孔25には挿入されずに連結ベース11に対する防振ゴム装置13の相対的な位置決めを行う防振ゴム側位置決め機能を有している。
【0037】
先ず、図11に示したステップS4では、ナット取付治具26を使用して防振ゴム装置13と連結ベース11の位置決めを行う(連結ベース11に防振ゴム装置13を載置し、連結ベース11の孔にナット取付治具26を挿入し、防振ゴム装置13と連結ベース11の位置決めを行う工程)。この工程は、図12に示すように連結ベース11の上に防振ゴム装置13を搭載する。その後、ナット取付治具26におけるねじ部27側を下方にして配置し、図3で説明した一連の孔内にねじ部27を挿入して螺合させる。すると、図13に示すようにねじ部27が連結ベース11における孔25通過するので、その後、ナット取付治具26を回転させてねじ部27を溶接されているナット21に螺合させる。
【0038】
ナット取付治具26が正しくナット21に螺合されない場合は、連結ベース11と防振ゴム装置13の相対的な位置関係がずれているので、両者の相対的な位置関係を調整する。
【0039】
次に、図11に示したステップS5では、連結ベース11と防振ゴム装置13の相対的な位置決めを行っている状態で、防振ゴム装置13と連結ベース11間をボルト19にてボルト固定を行う(防振ゴム装置13と連結ベース11を位置決めした状態で防振ゴム装置13を連結ベース11にボルト19で固定する工程)。これは、図13に示すようにナット取付治具26によって連結ベース11に対する防振ゴム装置13の相対的な位置が正しく調整された状態で、図3に示したボルト19を下端16と連結ベース11に予め形成されている挿入孔に上方から挿入し、ボルト19の挿入側先端部にナット20を螺合して行う。すると、防振ゴム装置13の下端16と連結ベース11間の結合が完成する。
【0040】
その後、図11に示したステップS6では、防振ゴム装置13と連結ベース11間をボルト19およびナット20によって固定した後、ナット取付治具26を取り外す(防振ゴム装置13を連結ベース11にボルト19で固定後、ナット取付治具26を取外す工程)。これは、図14に示すようにナット取付治具26を上方に抜き取ることによって、簡単に行うことができる。
【0041】
その後、図3に示したように防振ゴム装置13の上端15と下ベース12間を複数本のボルト17によって結合し、ナット溶接用のナット取付治具26および防振ゴム用の防振ゴム取付治具29を仮配置していた一連の孔内に振れ止めボルト23を挿入し、振れ止めボルト23の挿入側先端部を既に溶接によって固定されているナット21に螺合させて、同部の取り付け方法を完了する(振れ止めボルト23を複数の孔(孔25、31、下ベース12の孔)に挿入し振れ止めボルト23の先端部をナット21に螺合させる工程)。
【0042】
また、第2実施例によれば、ナット溶接用のナット取付治具26と防振ゴム用の防振ゴム取付治具29を使い分ける必要がなく、同じナット取付治具26を使用して、ナット21の取り付けと防振ゴム装置13の取り付けを行うことができる。特に、防振ゴム装置13の取り付け時においては、ナット取付治具26の挿入側先端部のねじ部27を連結ベース11に溶接したナット21に螺合させた状態で、連結ベース11と防振ゴム装置13の相対的な位置決めを行うことができる。このため、一層しっかりと固定されたナット溶接用のナット取付治具26を使用して、連結ベース11と防振ゴム装置13の相対的な位置調整を行うことができる。
【0043】
以上説明したように本発明に係る各実施例は、下ベース12の下方に配置した連結ベース11と、下ベース12と連結ベース11との間に配置され、下ベース12を支持する防振ゴム装置13と、下ベース12、防振ゴム装置13、連結ベース11のそれぞれに形成された複数の孔に挿入され、下ベース12、防振ゴム装置13、連結ベース11を連結する振れ止めボルト23とを備えた防振ゴム振れ止め機構の組立方法であって、連結ベース11の下面側にナット21を配置し、連結ベース11の孔に取付治具を挿入し、取付治具のねじ部27(先端部)にナット21を螺合させてナット21と連結ベース11を固定する工程と、ナット21を連結ベース11に固定した状態でナット21を連結ベース11に溶接する工程と、ナット21を溶接固定後、取付治具を取外す工程と、連結ベース11に防振ゴム装置13を載置し、複数の孔に取付治具を挿入し、防振ゴム装置13と連結ベース11の位置決めを行う工程と、防振ゴム装置13と連結ベース11を位置決めした状態で防振ゴム装置13を連結ベースにボルト19にて固定する工程と、防振ゴム装置13を連結ベース11にボルト19にて固定後、取付治具を取外す工程と、振れ止めボルト23を前記複数の孔に挿入し振れ止めボルト23のねじ部27(先端部)をナット21に螺合させる工程とを備えたことを特徴とする。
【0044】
このような本発明によれば、一連の孔の一部を利用してナット取付治具26を取り付けると共に、連結ベース11の下方に配置されたナット21に螺合させて保持し、同状態でナット21を溶接して固定することができ、また、固定したナット21を利用してナット取付治具26(防振ゴム取付治具29)を取り付けて連結ベース11と防振ゴム装置13の相対的な位置調整における組立時の作業性を向上させると共に、精度良く行うことができる。さらに、この構成を利用して、振れ止めボルト23を上部から既に固定されているナット21に締付けるだけで連結ベース11と防振ゴム装置13間を精度良く固定することもできる。
【0045】
また本発明に係る第2実施例では、ナット21の固定のために使用したナット取付治具26を、連結ベース11と防振ゴム装置13間の位置決め時にも同様に配置して使用したことを特徴とする。
【0046】
このような本発明によれば、各工程で同じナット取付治具26を使用しているため、使用する治具を少なくして、作業を簡単にすることができる。
【0047】
第1及び第2実施例では、油圧パワーユニット装置を例に挙げて説明したがこれに限定されるものではなく、エレベーター巻上機装置等で使用される防振ゴム振れ止め機構等にも用いることができる。
【0048】
なお、本発明は、上述した実施例に限定するものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上述した実施例は本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定するものではない。またある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
11…連結ベース、12…下ベース、13…防振ゴム装置、14…ゴム部材、15…上端、16…下端、17…ボルト、19…ボルト、21…ナット、22…ディスタントピース、23…振れ止めボルト、25…孔、26…ナット取付治具、27…ねじ部、28…位置決め径大部、29…防振ゴム取付治具、30…連結ベース側位置決め部、31…孔、32…防振ゴム側位置決め径大部、40…溶接部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14