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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】コンバインのDPF設置構造
(51)【国際特許分類】
   A01D 41/12 20060101AFI20220302BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20220302BHJP
   B60K 13/04 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
A01D41/12 H
F01N3/28 301V
B60K13/04 D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018228119
(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2020089300
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-05-31
(73)【特許権者】
【識別番号】000001878
【氏名又は名称】三菱マヒンドラ農機株式会社
(72)【発明者】
【氏名】坂上 拓磨
【審査官】田辺 義拓
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-178935(JP,A)
【文献】特開2013-138628(JP,A)
【文献】特開2014-193120(JP,A)
【文献】特開2017-225351(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0250864(US,A1)
【文献】特開2014-187984(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/00 - 41/16
A01D 47/00
A01F 12/60
F01N 3/28
B60K 13/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前処理部(5)を備える走行機台(4)の後方左側に脱穀部(6)を、右側に運転部(7)及びエンジンカバー(10)で囲われるエンジン(11)並びにグレンタンク(8)が配置され、且つ脱穀部(6)とグレンタンク(8)との間に形成される空間部(S)に、エンジン排気ガス浄化用のDPF(25)を前後方向に配置すると共に、該DPF(25)の外周に通気間隔を有して覆うカバー体(27)を設けるコンバインのDPF設置構造において、
前記DPF(25)の右側にカバー取付け用の支持部材(31)を走行機台(4)側から立設し、該支持部材(31)の上部にカバー支持腕(31a)をDPF(25)の上方に向け片持ち状に突出させると共に、その先端部にカバー体(27)の内面に沿って前後方向に接当するカバー受部材(32)を設けることにより、足載せ時にカバー体(27)に加わる荷重をDPF(25)にカバー受部材(32)を介して分担支持させることを特徴とするコンバインのDPF設置構造。
【請求項2】
前記カバー受部材(32)を帯状板にすると共に、該カバー受部材(32)の板前後長の下側面とDPF(25)との間に断熱可能な支持間隙(H)を形成して、カバー支持腕(31a)に支持する請求項1記載のコンバインのDPF設置構造。
【請求項3】
前記DPF(25)の前後部を、走行機台(4)側から前後方向の取付け間隔を有するDPF取付部材(29)を介して支持すると共に、該前後のDPF取付部材(29)に支持部材(31)を各立設し、そのカバー支持腕(31a)の上端をカバー受部材(32)によって各連結する請求項1又は2記載のコンバインのDPF設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバインのDPF設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、前処理部を備える走行機台の後方左側に脱穀部を、右側に運転部及びエンジンとグレンタンクが配置されて多条刈り作業をする大型のコンバインは、脱穀部とグレンタンクとの間に形成される空間部に、エンジンから排出される排気ガスを浄化するDPFを設置すると共に、走行機台側から支持されるカバー体によって、DPFの外周を通気間隔を有して覆うことにより、DPF装置を構成することが既に公知である。(例えば、特許文献1)
上記DPF装置のカバー体は、前後左右及び上下に各配設される多数の支持部材を枠組みして構成されるフレームの外周に対し、複数の側壁カバーを貼付けた状態で組み付けることによって、DPFの全周を多くの部材で囲うように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第5360615号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に示されるDPF装置は、DPFの全周を覆うカバー体の通気間隔内を流れる冷却風によってDPFの過度の加熱を防止できる利点がある。
然しながら、上記文献のDPF設置構造は、多くの支持部材を用いてその外周を複数のカバーによって囲うので、カバーユニットの構造が複雑化していると共に、メンテナンス作業側になる右側カバーは前後方向の中央部を支持しない軟弱覆い構造によって構成されている。
そして、この種コンバインでは、グレンタンクを外方に回動退避させて脱穀部の右側を広く開放して行うメンテナンス作業時に、機台上にいる作業者がカバー体の上部又は右側カバーの中央部に足を載せて乗りあがるような場合には、その足載せ荷重によってカバーが変形し通気間隔を狭め通気を妨げ、カバー体内に熱をこもらせ(以下単に熱こもりと言う)DPFやカバー等の過度の加熱を伴うと共に、カバー変形によってDPFの外周に設置されている温度等を検知するセンサやハーネス類を損傷させ易い等の足載せ(足踏み)トラブルを生ずる欠点がある。
つまり、この種DPF設置構造においては、前後の支持部材に取付けられる上部及び右側カバーの中途部は軟弱構造であるため、作業者が足載せすることは想定していないか又は禁止対応事項とされることから、このコンバインでは、足載せトラブルを回避する上でDPF装置には「足載せ厳禁」等の表示がなされることが通例になっている。
従って、メンテナンス作業時にグレンタンクを外方に回動退避させて機台上に乗りあがる作業者が、脱穀部の高所に位置する天板部等の清掃や点検を急に思いつくような場合には、上記注意書きは看過され易く、作業者は咄嗟にDPF装置のカバー体に乗りあがり足載せ姿勢で高所箇所のメンテナンス作業を行うことは避けられないことがある。
一方、上記注意書きを厳守して高所位置のメンテナンス作業を行う場合には、予め所定高さの踏み台を準備しながらの作業になるので、足載せトラブルの回避に注意と対策を講じながら行うメンテナンス作業は煩雑で非能率なものになる等の課題もある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため本発明は、第1に、前処理部5を備える走行機台4の後方左側に脱穀部6を、右側に運転部7及びエンジンカバー10で囲われるエンジン11並びにグレンタンク8が配置され、且つ脱穀部6とグレンタンク8との間に形成される空間部Sに、エンジン排気ガス浄化用のDPF25を前後方向に配置すると共に、該DPF25の外周に通気間隔を有して覆うカバー体27を設けるコンバインのDPF設置構造において、
前記DPF25の右側にカバー取付け用の支持部材31を走行機台4側から立設し、該支持部材31の上部にカバー支持腕31aをDPF25の上方に向け片持ち状に突出させると共に、その先端部にカバー体27の内面に沿って前後方向に接当するカバー受部材32を設けることにより、足載せ時にカバー体27に加わる荷重をDPF25にカバー受部材32を介して分担支持させることを特徴としている。
第2に、前記カバー受部材32を帯状板にすると共に、該カバー受部材32の板前後長の下側面とDPF25との間に断熱可能な支持間隙Hを形成して、カバー支持腕31aに支持することを特徴としている。
第3に、前記DPF25の前後部を、走行機台4側から前後方向の取付け間隔を有するDPF取付部材29を介して支持すると共に、該前後のDPF取付部材29に支持部材31を各立設し、そのカバー支持腕31aの上端をカバー受部材32によって各連結することを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に係る発明によれば、脱穀部とグレンタンクとの間に形成される空間部に、エンジン排気ガス浄化用のDPFを前後方向に配置すると共に、該DPFの外周に通気間隔を有して覆うカバー体を設けるコンバインのDPF設置構造において、前記DPFの右側にカバー取付け用の支持部材を走行機台側から立設し、該支持部材の上部にカバー支持腕をDPFの上方に向け片持ち状に突出させると共に、その先端部にカバー体の内面に沿って前後方向に接当するカバー受部材を設けることにより、
カバー体とDPFとの間に形成される通気間隔内に入り込む気流をカバー受部材が妨げることなく整流状態にして排出を促進すると共に、作業者がカバー体に足載せする際の荷重を、カバー受部材がカバー体の変形を防止しながらDPFに分担支持させるため、DPF装置を簡潔で安価な構成の剛体構造にできると共に、補強部を踏み台としても利用可能にすることができるので、脱穀部等の高所位置のメンテナンス作業を能率よく容易に行うことができる。
請求項2に係る発明によれば、前記カバー受部材を帯状板にすると共に、該カバー受部材の板前後長の下側面とDPFとの間に断熱可能な支持間隙を形成して、カバー支持腕に支持することにより、
DPFに対し支持間隙を有して設けられるカバー受部材は、直接的な熱伝導を規制してカバー体の過度の過熱を防止すると共に、足載せ時にはカバー体を介しカバー受部材の下側面をDPFに接当させて荷重分担をさせて支持することができる。
請求項3に係る発明によれば、前記DPFの前後部を、走行機台側から前後方向の取付け間隔を有するDPF取付部材を介して支持すると共に、該前後のDPF取付部材に支持部材を各立設し、そのカバー支持腕の上端をカバー受部材によって各連結することにより、
DPFの前後左右を走行機台に安定的に取付固定するDPF取付部材に、右側前後に立設する支持部材を強度を有して取付けた状態で、各支持部材のカバー支持腕を締結する片持ち状のカバー受部材が受ける足載せ荷重をDPFに分担支持するので、カバー体を安定よく支持するカバーユニットの構成を簡潔で軽量安価な構造にしながら、ユニット剛性を高めることができて、メンテナンス作業時の踏み台としての利用も可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】コンバインの右側面図である。
図2】コンバインのDPF設置構造の要部を示す背面図である。
図3】DPF装置の全体構造を示す後方斜視図である。
図4図3のカバー体を取外したDPF装置の構成を示す後方斜視図である。
図5】DPF装置の右側面図である。
図6】DPF装置の左側面図である。
図7】DPF装置を一部破断して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1図2において符号1は本発明に係わるDPF装置2の設置構造(DPF設置構造)を備えたコンバインである。
このコンバイン1は、クローラ式の走行装置3を有する走行機台4に、従来のものと同様に前処理部5と脱穀部6等の作業部を前後方向に配置し、脱穀部6の右側に運転部7とグレンタンク8を配置している。上記運転部7の運転座席9は走行機台4に箱枠状に構成されるエンジンカバー10上に設置している。
【0009】
この構成によりDPF装置2は、エンジンカバー10の後方において脱穀部6とグレンタンク8の間に形成される空間部Sに後述するDPF設置構造によって設置される。
エンジンカバー10は、走行機台4に搭載されるエンジン11を冷却風路を形成して囲うように構成され、これによるエンジンカバー10は、右側壁から吸気される冷却風を後方の空間部Sに向けて排出しながらエンジン冷却作用をする。
またエンジンカバー10側から送出されて空間部S内を通過する冷却風は、DPF装置2を冷却したのち後方排出される。
【0010】
上記構成によるコンバイン1は、前処理部5で刈り取った穀稈を脱穀部6に供給し、脱穀部6によって脱穀選別された穀粒を、右側脱穀部機壁6aに沿って立設される揚穀筒8aによって上部からグレンタンク8内に供給し収容する。
次いで、グレンタンク8に収容された穀粒を、穀粒排出オーガ13の操作作動によって機外に排出して一連のコンバイン作業を遂行する。
【0011】
上記運転部7は、運転部フロア7aの前側で横方向に立設される前部運転パネル部7bと、該前部運転パネル部7bに連なり運転部フロア7a及び運転座席9の左側で前後方向に立設される側部運転パネル部7cとを平面視でL字状に構成し、且つ運転座席9の後方に、穀粒排出オーガ13等を操作する排出オーガ操作部15を配置している。
【0012】
穀粒排出オーガ13は、グレンタンク8の後部で略グレンタンク高さとなし走行機台4に立設される縦オーガ16と、該縦オーガ16の上部に旋回傾動機構17を介して連結される横オーガ19とからなる。
そして、前記排出オーガ操作部15の操作に基づき旋回傾動機構17を介して横オーガ19を旋回及び傾動作動させることができ、所望位置での穀粒排出を各内装される螺旋体の回転によって行なうことができる。
【0013】
グレンタンク8は平面視方形状の箱型タンクであり、機体奥側(左側)の傾斜底壁20(図2参照)と右側のタンク傾斜底壁20aとによって漏斗状の樋部を集束形成し、その樋部内に沿って穀粒搬送オーガ21を軸装している。この穀粒搬送オーガ21は軸後端を縦オーガ16の基部に接続しており、軸前端に設けられる図示しない従動プーリをテンションクラッチ等を備えるベルト伝動装置によって伝動切換え可能に構成されている。
【0014】
またグレンタンク8は、後壁8b側を縦オーガ16に縦軸回動可能に取付けており、前記ベルト伝動装置とのベルト接続を解除した状態で、穀粒収容作業位置から縦オーガ16を中心に側方(右側)に回動退避させると、脱穀部6の右側を大きく解放させたメンテナンス作業位置に姿勢変更することができる。
つまり、グレンタンク8をメンテナンス作業姿勢にすると、脱穀部6及びエンジンカバー10から離間させて空間部S及び走行機台4の上方を大きく開放するため、右側脱穀部機壁6a側及び各種伝動機構6b並びにDPF装置2を露出させ、その点検修理や掃除等のメンテナンス作業に十分な作業スペースを形成することができる。
【0015】
次に、上記図1,図2で示すコンバイン1の構成において、空間部Sの走行機台6に設置されるDPF装置2の設置構造について図3図7を参照し説明する。
このDPF装置2は、空間部Sにおいて側面視で脱穀部6の前後長の略中間位置に、近隣のメンテナンス作業を容易に行うことができるように配置され、且つ高所メンテナンス作業時に踏み台としても利用可能に構成される。
【0016】
先ず、本実施形態で採用するDPF25は、トラックやトラクタ等で用いられるディーゼル微粒子除去装置と同様のフィルタ構造等を備えた横長円筒本体であり、エンジン11の上部で左側方から後方に延長されるエギゾーストマニホールド24に接続されて、排気ガスに含まれる粒子状物質を内部のフィルタに付着させながら燃焼し、クリーンな排気ガスとして後方から排出することができる。
またDPF25は円筒状本体ケースの右側面に対し、内部温度を各検知する前位置センサ25s、中位置センサ25s、後位置センサ25sと、本体ケース内部圧力を検知する圧力センサ等センサ類を集約状態で設置しており、上記複数のセンサ25s及び圧力センサ等のハーネス類はメンテナンス作業容易な右側ケース外方に設置される配線部25hに纏め、ここからコントロール部の制御機器に接続している。
【0017】
そして、上記センサ類は、後述する本発明に係るカバーユニット30の設置構造によって保護するようにしている。
尚、このコンバイン1は運転部7側のコントロール部に、エンジン11を随時操作によって強制的に高回転させる再生モードスイッチ(不図示)を有しており、エンジン11がアイドリング中である場合に、上記再生モードスイッチを操作してエンジン11を定格回転に制御するので、高温の排気ガスによってDPF25内の温度を上げてフィルタに付着する粒子状物質を随時燃やし、フィルタの目詰まりを防止し排気ガスの浄化処理性能を保持するようにしている。
【0018】
また上記DPF25は在来のものと同様に、エンジン11のエギゾーストマニホールド24に吸気パイプ24aを介して接続され、該DPF25の排気口26aに接続される排気パイプ26と、該DPF25の本体部を覆う屋根箱状のカバー体27と、該カバー体27を走行機台4側から取付支持するカバーフレーム28と、DPF25の前後部を走行機台6に取付支持するDPF取付部材29等から構成している。
【0019】
そして、踏み台(足場)として足載せ可能にするカバーユニット30は、カバーフレーム28に対し、右側カバー27aと左側カバー27bとからなるカバー体27を組付けて構成される。このカバー体27の右側カバー27aは、足載せ可能な前後幅と左右の斜面長を有する踏み台面になるように左側カバー27bの斜面長より大きくし、DPF25の上方側全体を後述する屋根箱体構造によって強度を有して覆うようにしている。
【0020】
次に、DPF25とDPF取付部材29とカバーユニット30の設置構造と組付けについて説明する。
先ず、図示例のDPF25は、円筒状のケース本体に対し複数の外周フレーム(補強枠)25aを前後方向に取付け間隔を有して嵌合状態で突設している。
DPF取付部材29は、図4,図7に示すような逆向き台形状の板状部材であり、板下部側に機台フレーム4aに立設状態に嵌合して取付けられる機体取付部と、上部側に外周フレーム25aをボルト固定可能にするケース取付部と、左右側にカバーユニット30を着脱可能に取付ける取付部29aとを形成している。(図7
【0021】
これによるDPF取付部材29は、前後で対をなして機台フレーム4aに立設された状態において、前後の外周フレーム25aを締結しDPF25を安定的に位置決め固定するベース機能と、左右の取付部29aにカバーユニット30の支持部材31と左側カバー27bを後述するように取付支持する支柱機能とを1部品で奏する構成にしたことにより、DPF装置2の構成と設置作業の簡潔化を図るようにしている。
【0022】
そして、カバーユニット30のカバーフレーム28は、各DPF取付部材29の右側取付部29aに立設される支持部材(脚支柱)31と、その上部に設けられてDPF25の外周上方に向け接線方向に延長されて右側カバー27aを支持するカバー支持腕31aと、前後のカバー支持腕31aの自由端側を前後方向に連結するカバー受部材32とから構成している。
【0023】
図示例のカバーフレーム28は、支持部材31の脚部になる断面L字状の脚支柱部の下部と上部にボルト挿入用の取付孔を設け、且つ脚支柱上部に形成されるカバー支持腕31aの端部に形成した取付部に、カバー前後長さを有して形成される帯状板又はパイプ材等からなるカバー受部材32をDPF側に向け下向きにして取付けることにより、全体として平面視方形状の枠体となる様に構成している。
【0024】
図示例のカバー受部材32は、前後方向に長い帯状板にしていると共に、DPF25の右外周面(メンテナンス作業正面側)の上部左右に集約して配置されている各センサ25sの上方近傍に位置するように、前後の支持部材31のカバー支持腕31aを介して、放射方向の縦向き姿勢(DPF25の中心軸線から放射状に伸びる方向)で設置している。これによるカバー受部材32は、カバー体27とDPF25との間に形成される通気間隔(風路)内に入り込む塵埃の下方落下を縦板面によって一時的に受けて落下を規制しながら、気流(風)による後方移動排出を促進し、センサ25s類に対するゴミ付着防止作用を効果的に行うことができる。
【0025】
この構成において後側のカバー支持腕31aは後位置センサ25sに後方から接近させ、前側のカバー支持腕31aは中位置センサ25sに後方から接近させることにより、カバー受部材32と各カバー支持腕31aとで形成される各コーナー部内に各センサ25sを保護可能に位置させている。
また前側のカバー支持腕31aから前方に離間して吸気パイプ24aの近傍に配設される前位置センサ25sには、カバー受部材32の前部を延長して接近させることにより、この延長部によってセンサ保護を図るようにしている。
これによるカバーユニット30は、例えば、過大な踏みつけ荷重や足載せ荷重及び器物の落下荷重によってカバー体27が凹入変形するような場合において、上記コーナー部を形成する部分のカバー受部材32とカバー支持腕31aがその近傍部の変形を僅少にして各センサ25sの保護を確実にすると共に、前位置センサ25sはカバー受部材32の延長部によってカバー変形を防止して保護される。
【0026】
そして、カバーユニット30は、前後のDPF取付部材29から各立設される支持部材31のカバー支持腕31aを、カバー受部材32によって連結するだけの簡潔で軽量安価なシンプル構造のカバーフレーム28にすることができると共に、センサ25sの損傷を確実に回避することができる等の利点がある。
尚、カバー受部材32の長さは、前側のカバー支持腕31aによる支持位置から前方に向けてより長くして設けることが望ましく、この場合には後方排気されるエンジン冷却風をDPF25のより前部位置で左右に仕分けて取り込み、帯板面によって整流状態に案内しながらDPF25を効率よく冷却しつつ後方排出を熱こもりなくスムーズにすることができる。
【0027】
上記構成されるカバーフレーム28は図4,図7に示すように、各支持部材31をDPF取付部材29にボルト締結によって立設するとき、カバー支持腕31aがDPF25の外周接線方向に通気間隔を有して沿う上向き姿勢となし、カバー受部材32の下側面を前記外周フレーム25aの上面に対し、足載せ時には後述するように外周フレーム25aに接当可能な距離として、数ミリ程度上方に離間させる支持間隙Hを形成した片持ち状態で支持するようにしている。
つまり、これによるカバーユニット30は、カバーフレーム28を取付けた通常時の使用状態において、カバー受部材32が外周フレーム25aから前記支持間隙Hを有して上方に離間するため、DPF25からの直接的な熱伝導が規制される結果、カバー体27の過度の過熱を簡単な構成によって効率よく防止することができる。
【0028】
そして、作業者がカバー体27に足を掛けて乗る場合には、その際に上方から加えられる荷重負荷によって、カバー体27及びカバー受部材32を介し片持ち状のカバー支持腕31aが、外周フレーム25aに接当する位置まで弾力的に撓み支持間隙Hをゼロにし、足載せ荷重をカバー受部材32とDPF25の外周フレーム25aとの直接接当によって分担支持するので、支持部材31及び左側カバー27b側への過大な負荷を軽減することができる。
【0029】
従って、カバーユニット30の構成を簡潔で軽量安価な構造にしながらユニット剛性を高めることができ、メンテナンス作業時における踏み台機能を十分に発揮するので、脱穀部6及びグレンタンク8等の高所位置のメンテナンス作業時に、別の踏み台をわざわざ用意する手間を省きながら能率よく行うことを可能にする。
またカバー受部材32を薄鉄板で製作する際には、帯状板の下端部をL字状又はコ字状に形成することが望ましく、この場合には足載せ時に下側面を広い平坦面積となし外周フレーム25aに面接当させ、応力集中させることなく安定支持することができる。
【0030】
一方、カバー体27は、右側カバー27aの下端を支持部材31の脚支柱上部に対しボルト締結し、且つ左側カバー27bの下端をDPF取付部材29の左側の取付部29aにボルト締結した状態で、両者の上端と正面側に屈曲形成される接続片を各突合せた状態で、複数のボルト33によって締結しカバー接続部27cを構成している。
これによるカバー体27は、カバーフレーム28に組付けられた状態では、右側カバー27aと左側カバー27bとが互いに接合されて支持し合う正面視で山形屋根状をなす剛体構造にすることができる。
【0031】
そして、右側カバー27aと左側カバー27bとは、略等しい安息角を有して塵埃の滑落を促し且つ屋根面への藁屑等の付着を防止することができ、且つDPF25の左右及び下方は開放状態になるため、DPF装置2のカバーユニット30内への熱の停滞による熱こもりを簡潔な構成によって防止することができる。
【0032】
またメンテナンス作業時に作業者が屋根幅の略中央を踏みつけて乗り上がる際には、右側カバー27aの面積が小さい場合であっても、少なくとも片足で靴の爪先側によって頂部のカバー接続部27cを踏みつけた状態で乗りあがることができ、次いで、作業者は例えば、上体を脱穀部6側に凭れかかった安定姿勢にすることによって、上位部の所望メンテナンス作業を能率よく行うことができる。
【0033】
即ち、このDPF装置2は、カバー接続部27cがリブ状に突出して剛体構造になること、及び近傍にあるカバー受部材32が荷重の大半を分担支持するため、カバー体27の踏圧部に変形を生ずることなく大きな荷重負荷にも耐えると共に、カバー接続部27cが靴裏の爪先側に滑りを防止する線状突起として接当するため、安息角を有する斜面でありながら踏み台機能を支障なく発揮する等の特徴がある。
【0034】
次に、以上のように構成されるDPF設置構造の使用態様及び作用について説明する。
このDPF装置2は、前記空間部Sに設置されるDPF25を取付けるDPF取付部材29の右側に支持部材31を立設すると共に、その上部でDPF25の外周接線方向に片持ち状に突出するカバー支持腕31aの先端部にカバー受部材32を設け、該カバー受部材32によってカバー体27の内面を前後向きにDPF25側から支持するカバーフレーム構造にしたことにより、エンジン11から送出される冷却風を前記通気間隔内をスムーズに通過させながら熱こもりを防止し、DPF25及びカバー体27の過度の過熱を防止すると共に、DPF設置構造を簡潔で安価な剛体構造にしながら踏み台としての利用も可能にする。
【0035】
そして、上記構成によるDPF装置2は、カバー受部材32を帯状板とし板前後長の下側面をDPF25の外周との間に断熱可能な数ミリ程度の支持間隙Hを保持するようにカバー支持腕31aに支持することにより、これによるDPF装置2は支持間隙H内の空気流によって直接的な熱伝導が規制されるので、カバー体27の過度の過熱を確実に防止することができる。
【0036】
また帯状板からなるカバー受部材32は、右側カバー27aとDPF25との間の通気間隔内に入り込む気流を上下方向に区画して整流状態にし易くしながら、侵入した塵埃を縦板面に沿って受けつつ後方への誘導排出を促しゴミ付着防止を確実にすると共に、DPF25の外周及びカバー体27の冷却を促進することができる。
尚、この際にカバー体27に降りかかり堆積しようとする藁屑等の塵埃は安息角と風流によって後方落下に向けて排出される。
【0037】
そして、グレンタンク8を回動退避した走行機台4上で行うメンテナンス作業時において、脱穀部6等の高所位置のメンテナンス作業を必要とする場合には、作業者は従来のもののように踏み台を準備することなく、即座にDPF装置2を踏み台にして片足又は両足を右側カバー27a側にかけることにより、所望高所位置のメンテナンス作業をDPF装置2の踏み台使用作業によって能率よく行うことができる。
【0038】
また上記踏み台使用作業においては、支持部材31から片持ち支持されるカバー受部材32が、右側カバー27aに加わる足載せ荷重によって支持間隙Hをゼロにし、この部の荷重を剛構造支持されているDPF25に直接的に伝え補強部として分担支持するので、カバー体27の変形を防止しながら安定作業姿勢によって所望のメンテナンス作業を能率よく行うことができる。
【0039】
尚、図示例のカバー受部材32は、軽量化を図るうえで鉄板製にしているが、これに限ることなくパイプ部材等によって構成してもよい。またカバー受部材32は、必要により外周フレーム25a側にボルト締結してもよく、この場合には右側カバー27aの内面側とカバー受部材32との間に断熱部材を介装することが好ましいものである。
【符号の説明】
【0040】
1 コンバイン
2 DPF装置
4 走行機台
5 前処理部
6 脱穀部
7 運転部
8 グレンタンク
10 エンジンカバー
11 エンジン
25 DPF
27 カバー体
29 DPF取付部材
31 支持部材
31a カバー支持腕
32 カバー受部材
H 支持間隙
S 空間部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7