(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】注入システムを運転する方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/168 20060101AFI20220302BHJP
【FI】
A61M5/168 502
A61M5/168 504
(21)【出願番号】P 2018529546
(86)(22)【出願日】2017-02-08
(86)【国際出願番号】 EP2017052716
(87)【国際公開番号】W WO2017137421
(87)【国際公開日】2017-08-17
【審査請求日】2020-01-28
(32)【優先日】2016-02-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】512070654
【氏名又は名称】ブラッコ・インジニアリング・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100113376
【氏名又は名称】南条 雅裕
(74)【代理人】
【識別番号】100179394
【氏名又は名称】瀬田 あや子
(74)【代理人】
【識別番号】100185384
【氏名又は名称】伊波 興一朗
(74)【代理人】
【識別番号】100137811
【氏名又は名称】原 秀貢人
(72)【発明者】
【氏名】シャソット ピエール イブ
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-167272(JP,A)
【文献】米国特許第4512764(US,A)
【文献】米国特許第4105028(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧ユニット(140)および前記加圧ユニットに医療流体を供給するための少なくとも1つの供給ステーション(105a;105b;105c)を備える注入システム(100;200)であって、
前記供給ステーションは:
-前記医療流体を含むための少なくとも1つのレセプタクル(110a;110b;110c);
-前記医療流体を患者に送達するための前記加圧ユニットおよび前記レセプタクルと流体連通している送達アレンジメント(135)、および
-前記送達アレンジメントを通る前記医療流体の流れを調節するための前記送達アレンジメントと関連するクランプ手段(300)、
を備え、
前記注入システムは:
-第一の注入手順が完了するまで前記加圧ユニットが運転され、
-次の注入手順が開始される前においてはスタンバイ状態で前記注入システムが維持され、
ここで、前記注入システムは、前記維持の間、注入するように運転されない、
および
-前記次の注入手順が完了するまで前記加圧ユニットは運転される、
ように構成されており、
ここで、スタンバイ状態における前記注入システムの維持には、前記送達アレンジメントをクランプ解除するために前記クランプ手段に対して作用することが含まれることを特徴とする、
注入システム。
【請求項2】
請求項1に記載の注入システム(100;200)であって、
前記送達アレンジメントをクランプ解除するための前記クランプ手段に対する作用は、所定のクランプ解除頻度で
行われる、
ように構成されている
注入システム。
【請求項3】
請求項1に記載の注入システム(100;200)であって、
前記送達アレンジメントをクランプ解除するための前記クランプ手段に対する作用は、次の注入手順の開始時間(t
ni)が所定のクランプ解除時間(t
d)よりも長い場合に作動される、
ように構成されている
注入システム。
【請求項4】
請求項3に記載の注入システム(100;200)であって、
次の注入手順の開始時間(t
ni)は、前記の第一の注入手順の完了から算出される、
ように構成されている
注入システム。
【請求項5】
請求項3に記載の注入システム(100;200)であって、
前記送達アレンジメントをクランプ解除するための前記クランプ手段に対する作用が、同一の前記維持の間に既に少なくとも1度以上作動されている場合には、次の注入手順の開始時間(t
ni)がリセットされ、前記クランプ手段に対する既に作動された最後の作用の完了から算出される、
ように構成されている
注入システム。
【請求項6】
請求項3に記載の注入システム(100;200)であって、
前記の所定のクランプ解除時間(t
d)は、1時間~4時間の範囲内で選択される、
ように構成されている
注入システム。
【請求項7】
請求項6に記載の注入システム(100;200)であって、
前記の所定のクランプ解除時間(t
d)は、2時間~3時間の範囲内で選択される、
ように構成されている
注入システム。
【請求項8】
請求項1に記載の注入システム(100;200)であって、
前記送達アレンジメントをクランプ解除するための前記クランプ手段に対する作用は、所定のクランプ解除持続時間
行われる、
ように構成されている
注入システム。
【請求項9】
請求項8に記載の注入システム(100;200)であって、
前記の所定のクランプ解除持続時間は、1秒~2秒の範囲内で選択される、
ように構成されている
注入システム。
【請求項10】
請求項1に記載の注入システム(100;200)であって、
スタンバイ状態における前記注入システムの維持には、前記送達アレンジメントをクランプするために前記クランプ手段に対して作用することが含まれる、
ように構成されている
注入システム。
【請求項11】
請求項10に記載の注入システム(100;200)であって、
前記送達アレンジメントをクランプするための前記クランプ手段に対する前記作用は、前記送達アレンジメントをクランプ解除するための前記クランプ手段に対する作用の後に
行われる、
ように構成されている
注入システム。
【請求項12】
請求項4に記載の注入システム(100;200)であって、
スタンバイ状態における前記注入システムの維持には、次の注入手順の開始時間(t
ni)を計算することが含まれる、
ように構成されている
注入システム。
【請求項13】
請求項12に記載の注入システム(100;200
)であって、
スタンバイ状態における前記注入システムの維持には、前記の計算から得られた次の注入手順の開始時間(t
ni)と、所定のクランプ解除時間(t
d)とを比較することが含まれる、
ように構成されている
注入システム。
【請求項14】
請求項1に記載の注入システム(100;200)であって、
前記送達アレンジメントをクランプ解除するための前記クランプ手段に対する作用および前記送達アレンジメントをクランプするための前記クランプ手段に対する作用は、自動的に
行われる、
ように構成されている
注入システム。
【請求項15】
請求項1に記載の注入システム(100;200)であって、
第一の供給ステーション(105a)および第二の供給ステーション(105b)をさらに備え、スタンバイ状態における前記注入システムの維持には:
-所定のクランプ解除頻度に従って、所定のクランプ解除持続時間、前記のそれぞれの送達アレンジメントのチュービング(141a)をクランプ解除するために、前記の第一の供給ステーションと関係がある前記クランプ手段をアクティブにすること、および
-前記の第一の供給ステーションと関係がある前記クランプ手段を連続してアクティブにすること、
がさらに含まれる、
ように構成されている
注入システム。
【請求項16】
請求項15に記載の注入システム(100;200)であって、
スタンバイ状態における前記注入システムの維持には:
-前記の所定のクランプ解除頻度に従って、所定のクランプ解除持続時間、前記のそれぞれの送達アレンジメントのチュービング(141b)をクランプ解除するために、前記の第二の供給ステーションと関係がある前記クランプ手段をアクティブにすること
ここで、前記の第二の供給ステーションと関係がある前記クランプ手段をアクティブにすることは、前記の第一の供給ステーションと関係がある前記クランプ手段をアクティブにする後に
行われる、
および
-前記の第二の供給ステーションと関係がある前記クランプ手段を連続してアクティブにすること、
が含まれる、
ように構成されている
注入システム。
【請求項17】
請求項16に記載の注入システム(100;200)であって、
スタンバイ状態における前記注入システムの維持には:
-前記の所定のクランプ解除頻度に従って、所定のクランプ解除持続時間、前記のそれぞれの送達アレンジメントのチュービング(141c)をクランプ解除するために、第三の供給ステーションと関係がある前記クランプ手段をアクティブにすること
ここで、前記の第三の供給ステーションと関係がある前記クランプ手段をアクティブにすることは、前記の第二の供給ステーションと関係がある前記クランプ手段をアクティブにする後に
行われる、
および
-前記の第三の供給ステーションと関係がある前記クランプ手段を連続してアクティブにすること、
が含まれる、
ように構成されている
注入システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、医療機器の分野に関する。より具体的には、本開示は、注入システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本開示の背景は、そのコンテキストに関する技術の議論とともに、これ以降導入される。しかしながら、この議論が、文献、行為、アーチファクトなどを指す場合さえも、議論される技術が従来技術の一部であること、または、本開示と関連する分野における共通の一般知識であることを示唆または表現しない。
【0003】
患者への流体の注入は、いくつかの医療手順においてありふれたことである。例えば、造影剤(または造影媒体)は、場合により生理食塩水とともに注入され得て、そのスキャン検査中の患者内での標的(体)の特性(例えば、ヒトの体の構造または臓器)のコントラストを増強する。特に、イメージング適用では(ここで、患者の内部の視覚表示は、外科的処置技術に頼らずに非侵襲的な方法で作られる)、造影剤の使用は、標的特性をよりはっきりと見えるようにさせる。結果として、他の方法では他の近くの特性(例えば、周囲組織)から区別可能でない標的特性が強調される。これは、診断適用、および特に、病変の識別および/または特性化、それらの進化または医学的処置に対する応答のモニタリングにおいて、臨床医のタスクを著しく促進する。例えば、ヨウ素に基づく造影剤(例えばイオパミドールを含む)は、コンピューター断層撮影(CT)適用(例えば血管造影検査)において一般に用いられる。
【0004】
造影剤は通常、患者の血管内に、(自動化)注入システムによって注入される。注入システムは、造影剤を加圧して、所定の注入条件下で、例えば、所定の流速および容量で、患者にそれを注入する。このようにして、造影剤は、制御された安全かつ効率的な様式で注入され得る。
【0005】
典型的に、造影剤は、(剛体の)ボトル内に提供される。したがって、注入システムは、対応するボトルから注入される造影剤をそれぞれ供給するための、1つまたは複数の供給ステーションが具備される。この目的のために、供給ステーションは、ボトル(逆さにひっくり返される)を所定の場所に保持して、造影剤を患者に最終的に送達するために送達アレンジメントにそれを接続する、ボトルホルダーを備える。典型的に、供給ステーションは、その上に保持されるボトルを外側の偶然的な衝撃から保護するように、ボトルホルダー上にマウントされる保護カバーも備える。
【0006】
ボトルホルダーおよび保護カバーは、(閉鎖された)チャンバーを規定し、それは、ボトルの断熱も提供し得る。これは、スキャン検査中に、注入される造影剤の標的温度を維持するのを促進する。実際に、造影剤は概して、相対的に高い粘性を有する。造影剤の粘性は、患者におけるその正確な注入に不利な影響を及ぼし得る(例えば、所望されるよりも低い流速で生じるので)。どのような場合においても、これは、相対的に高い圧力の適用を必要とする(複雑性が増大し、その結果、注入システムのコストが増大する)。さらに、高い圧力での高い粘性を有する造影剤の注入は、患者にとってかなり不快である。しかしながら、ほとんどの造影剤の粘性は、それらの温度を高くすることによって低減され得る。したがって、造影剤は通常、注入システムとは別個の専用機器(例えば加温器)を用いることによって、注入される前に事前に加温される。例えば、体温に近い標的温度(例えば35~37℃)に事前に加温された造影剤は、それらの粘性を半分にし得る。このようにして、より低い圧力(その結果、より低い複雑性および注入システムコスト)で、および、患者にとってより高い快適性で、造影剤を効率的に(例えば、所望の流速で)注入することがより簡単である。さらに、避けられない熱損失に起因する造影剤の冷却を緩和するために、一部の注入システムは、スキャン検査手順全体のあいだ標的温度(すなわち体温付近)でそれを維持するように、注入される造影剤を温めるように制御される加熱デバイスを備える。
【0007】
上述のように、注入システムは典型的に、医療流体(例えば、造影剤、生理食塩水またはそれらの混合物)を患者に注入するための、加圧ユニットおよび少なくとも1つの供給ステーションと流体連通して配置される送達アレンジメントを備える。送達アレンジメントは加圧ユニットの上流に配置されて、したがって、それは患者と直接接続していないので、相互汚染のリスクは実質的に無く、または非常に低く、一般に、送達アレンジメントは、定期的に(例えば、10または12時間ごとに)交換される使い捨て素子である。これは、新たな患者が検査を受ける場合に送達アレンジメントが交換されず、典型的に、送達アレンジメントのために設計された所定の期間が完全に経過するまで、多数回の連続する注入のあいだ、所定の位置に維持されることを意味する。
【0008】
注入システムの管理および運転と関連する全体的なコストを低減させるために、特に、注入システムの制限された使用のせいで十分に活用されていない注入器コンポーネントを捨てるのを避けるために(例えば、新たな送達アレンジメントのインストール後にたった1回または非常に少ない注入手順が行なわれている)、本出願人は、例えば、同一の注入器で検査される連続する患者間の相互汚染リスクの観点から、注入システム全体の安全性を損なわずに、公知で伝統的な送達アレンジメントに関してより長い時間用いることのできる送達アレンジメントを提供する必要性を認識している。
【0009】
さらに、使用時間の増大を確保することのできる送達アレンジメントの提供は、注入システムがインストールされる医療ユニット(例えば病院またはクリニック)の効率の観点からも明確に利点を示す。実際に、患者が病院の緊急治療室へ通されて、注入システムが用いられるCTスキャンのような緊急検査を必要とすることは珍しいことではない。緊急治療室にある注入システムは緊急のためにのみ予約されて、したがって、病院の日々の活動のプログラムされた患者のために用いられることは計画されていないことが明らかである。したがって、患者が以前に治療されたので緊急治療室の注入システムは注入する用意ができている(送達アレンジメントがインストールされている)が、送達アレンジメントの使用時間が既に経過しているときに連続する患者が通されるということが起こり得る。これは、緊急の状況では、オペレーターは、使用された送達アレンジメントを新たなものと交換しなければならず、それにより、それをインストールおよび注入器をプライムするために非常に重要な時間を費やし、患者の健康および生活を危険にさせることを意味する。
【0010】
本出願人は、したがって、24時間ごとに有利に交換され得る送達アレンジメントを設計および製造して、それにより、そのような使い捨て素子の使用時間を著しく(実に2倍)増大させた。
【0011】
しかしながら、本出願人は、送達アレンジメントの使用時間をそのような程度まで増大することによって、送達アレンジメントの許可された(および設計された)使用時間中にほんの数回のみ注入システムが用いられる場合に、いくつかの望ましくない技術的欠点が生じ得ることに気付いた。
【0012】
実際に、以下の本発明の説明によりよく説明されるように、自動化されたシリンジレス注入器の供給ステーションの所定のレセプタクル内に含まれる医療流体を適切に注入するためには、クランプ手段が、加圧ユニットおよびレセプタクルの両方と流体連結している送達アレンジメントと関連される。実際に、加圧ユニットと協調して、クランプ手段に対して適切に作用することによって、所望の量の医療流体が、所望の流速で、送達アレンジメントを通って流される。詳しくは、クランプ手段は、レセプタクルから出て加圧ユニットに入る送達アレンジメントチュービングの外部表面上に対して作用して、送達アレンジメントチュービングは、医療流体を患者内に注入するために、別個の患者送達セットチュービングに接続される。注入手順が開始されて医療流体がレセプタクルから流出されると、それぞれのクランプ手段はクランプ解除状態であり、それにより、医療流体が送達アレンジメントのチュービングを通って流れるのを可能にする。それとは逆に、注入手順が行なわれない、または、注入手順中に第二の医療流体が第二のレセプタクルから流出させられる場合は、第一のレセプタクルから出ている送達アレンジメントチュービングと関係があるクランプ手段はクランプ状態であり、チュービング流路断面は、(送達アレンジメントチュービングを通る)医療流体の流れが防止されるように低減される。
【0013】
したがって、送達アレンジメントの使用時間の増大は、第一の注入手順後に、注入システムがもはや運転されない場合、または、2つの連続する注入手順の間に長い休止時間を有してほんの数回のみ運転される場合、クランプ手段がクランプ状態である期間(およびしたがって、それは、インストールされた送達アレンジメントをクランプして医療流体の流れを止める)も潜在的に増大し得ることを暗示する。実際に、本出願人は、送達アレンジメントチュービングが長時間クランプされたままである場合、注入システムによってクランプ解除が適切に実行されないか、または、部分的に実行されることが、時々起こり得ることに気付いた。これは、チュービングが長期間押しつぶされたままである場合、チュービング壁の反対側表面(チュービングの内側通路を閉鎖して医療流体がその中に流れるのを防止するために、一方が他方に対して押されている)が互いにくっついて、チュービングは、その元の円柱状の形状を回復することができないという事実に起因する。注入システムの適切な機能は、クランプ手段が適切に運転されない場合は保証され得ないので、このイベントは明らかに望ましくない。クランプ手段が、注入手順の所定のステップにおいてクランプ解除機能でアクティブにされることが要求されて、そして、この作用が行なわれない(チュービング壁が完全に押しつぶされてくっついたままで、医療流体の正常な流れが実質的に妨げられるので)、または、部分的にのみ行われる(チュービング壁が部分的にくっついていて、医療流体の正常な流れが部分的に妨げられるので)、または、特定の遅延で行なわれる(チュービングが、その元の形状を完全に回復するのにより多くの時間を必要とするので)場合は、医療流体の流れは生じず、または、部分的にのみ生じて、所望の適切な注入手順は患者に提供されないことが明らかである。
【0014】
送達アレンジメントの使用時間の増大は、上述のように経済的および患者の安全性の両方の観点から有利な解決手段として明らかに考えられるので、本出願人は、新たな長い持続時間の送達アレンジメントの利益を取り消し得るくっつきの問題を克服することのできる技術的解決手段を見つける必要性を認識している。
【0015】
米国文献3,800,794は、医療流体の非経口投与のための方法および器具を開示し、ここで、通常は遮断されている静脈内供給チューブが、所定の頻度で選択的に開放されて、開放期間の持続時間は、デジタル制御システムによって自動的に制御されて、広範なダイナミックレンジにわたって任意の選択された速度で流体の流速を確立する。測定された、および、所望の流速は、デジタル電気信号に変換されて比較されて、電気的差異を用いて、供給チューブを開放するための部材を制御する送信パルスの幅を確立する制御電圧を変化させる。
【0016】
米国文献4,105,028は、医療流体の非経口投与のための方法および器具を開示し、静脈内供給チューブ上に、通常は閉鎖されたクランプを備え、それは、事前に選択されたドロップ頻度率で電磁気アクチュエーターを用いて開放されて、2つの対向電極間を通過するドロップによって確立される伝導パスによってドロップが検出されると閉鎖される。ドロップ計数電極を支配する電気的システムは、事前に選択されたドロップ頻度率を制御するように作用するドロップサイズ測定手段も具備し、ここで、所望の容積率が維持される。
【0017】
米国文献2012/0232383(同一出願人名称)は、造影媒体を注入するための医療機器を開示し、少なくとも2つの別個の容器、および容器の一方および/または両方の中の非混和性内容物、注入器、および、前記容器と前記注入器との間の交互の連通を確立するように配列された分配器を備え、前記医療機器は、前記の交互の連通を0.2~5Hzの頻度で提供するための手段を備えることを特徴とする。
【0018】
上記の従来技術文献は、注入手順の一部として、すなわち、その注入のあいだ、適切な速度および/または量の1つまたは複数の医療流体を注入するために行なわれるステップとして行なわれる、クランプおよびクランプ解除配列を開示することは、注目され得る。
【0019】
米国文献4,512,764は、静脈内供給カテーテルを通して複数の溶液を連続して分注するためのマニホルドを開示する。マニホルドは、投与されるそれぞれの溶液に接続された分注可能なチュービングマニホルドを備える。チュービングマニホルドの枝を通る溶液の流れは、それぞれの枝を係合するバルブによって止めることができる。分注される溶液の量は、容積測定の注入ポンプによって測定されて、バルブを個々に連続して開放および閉鎖することによって制御される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本開示の簡易化された要約が、その基礎的理解を提供するためにここに示されるが;この要約の唯一の目的は、本開示の一部の概念を、その以下のより詳細な説明に対する前置きとして簡易化された形で紹介することであり、その重要な素子の識別としてもその範囲の表現としても解釈されるべきでない。
【課題を解決するための手段】
【0021】
一般論として、本開示は、後者(latter)がスタンバイ状態(すなわち運転されない)である場合、送達アレンジメントのくっつきが実質的に防止されるような、注入システムを運転する方法に関する。
【0022】
特に、本開示の一態様は、注入システムがスタンバイ状態である場合に、所定のクランプ解除頻度でそのクランプ解除がアクティブにされるように、送達アレンジメントと関係があるクランプ手段に対して作用するステップを含む、注入システムを運転する方法を提供する。
【0023】
換言すれば、本出願人は、注入システムが、2つの連続する注入手順の間に生じるスタンバイ状態である場合に、送達アレンジメントに対して作用するクランプ手段のクランプ解除が一定時間間隔で行なわれるならば、送達アレンジメントのクランプされたチュービングのくっつきは、回避および実質的に防止され得ることを見いだした。
【0024】
より具体的には、参照により逐語的に本明細書中に組み込まれる全ての請求項の用語とともに(必要な変更を加えて全ての他の態様に適用する任意の特定の態様に関して提供される任意の有利な特性とともに)、本開示の1つまたは複数の態様は独立請求項に提示されて、それらの有利な特性が従属請求項に提示される。
【0025】
本開示の解決手段、ならびに、さらなる特性およびそれらの利点は、付随する図面とともに読まれるべき限定的でない示度として純粋に提供される以下のその詳細な説明を参照して最もよく理解される(ここで、簡易化のために、対応する素子は、同等または類似の参照により表示されて、それらの説明は繰り返されず、それぞれの物質の名称は、一般に、そのタイプおよびその属性の両方、例えば、値、含有量および表現を表示するために用いられる)。この点において、図は、縮尺どおり描かれる必要はないこと(一部の詳細は誇張され得て、および/または簡略化され得る)、および、別段の指示がない限り、それらは単に、概念的に本明細書において説明される構造および手順を示すために用いられることが、明示的に意図される。特に:
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本開示の実施態様に係る解決手段が適用され得る、注入システムの部分的な分解斜視図での図形表示を示す。
【
図2】本開示の実施態様に係る特定の注入システムの図形表示を示す。
【
図3】
図1に示される注入システムのそのクランプ解除状態におけるクランプ手段の図形表示を示す。
【
図4】
図1に示される注入システムのそのクランプ状態におけるクランプ手段の図形表示を示す。
【
図5】本開示の方法の簡略化されたフローチャートを示す。
【
図6】
図1の注入システムに関する本開示の方法の詳細なフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
特に
図1を参照して、本開示の実施態様に係る解決手段が適用され得る、注入システム100の部分的に分解された斜視図での図形表示が示される。
【0028】
注入システム100は、患者内に1つまたは複数の医療流体を注入するために用いられる(図に示されない)。特に、注入システム100は、(例えば、CTスキャンのようなX線撮影適用における)スキャン検査中に造影剤および生理食塩水を注入するために臨床医によって用いられる、自動シリンジレス注入器である。
【0029】
図1に示される注入システム100は、対応するレセプタクルから注入される医療流体を供給するための、第一の供給ステーション105a、第二の供給ステーション105bおよび第三の供給ステーション105cを備える。特に、供給ステーション105aおよび供給ステーション105bは、それぞれ、ボトル110aおよびボトル110b(すなわち、ガラスまたは硬質プラスチックから作られたコンテナ)から医療流体を供給する。一方で、供給ステーション105cは、ポーチ110c(すなわち、軟質プラスチックから作られたコンテナ)から医療流体を供給する。供給ステーション105a、105bは、それぞれ、1つまたは複数の造影剤(患者内の特定の体の特性のコントラストを高めるため)、または造影剤および生理食塩水(生理学的または等張溶液を含む)を供給するために用いられ得て、一方で、供給ステーション105は典型的に、生理食塩水を供給するために用いられ得る。例えば、CT適用では、造影剤は、ダイアトリゾエート、イオキサグレート、イオパミドール、イオヘキソール、イオキシラン、イオプロミドまたはイオジキサノールを含むヨウ素に基づく造影剤であってよく、生理食塩水は、塩化ナトリウムであってよい。イオパミドールを含む市販の造影剤の例は、Bracco Diagnostics Inc.(商標)製のISOVUEである。それぞれのボトル110a、110bは、単一または多数回の投与量(例えば、50~500ml)の異なる造影剤(第一のボトル内の第一の造影剤および第二のボトル内の第二の異なる造影剤、2つの造影剤は所定の順序で供給される)または同一の造影剤(スキャン検査の持続時間を増加させるために続けて供給される)を含んでよい。ポーチ110cは、一般に、造影剤の注入前(プレ-フラッシュ)、後(ポスト-フラッシュ)または間(間期)に、またはあるいは、造影剤との迅速な交互の連続で(心臓内などの患者の臓器内で造影剤および生理食塩水の混合物を得るため)、供給される生理食塩水のバルク(例えば、100~1,000ml)を含む。あるいは、上述のように、供給ステーション105aおよび105bは、それぞれ、造影剤および生理食塩水を供給するために用いられ得る。この後者の場合、供給ステーション105cは除去され得る。
【0030】
より具体的には、それぞれの供給ステーション105a、105bは(それぞれ)、ボトル110a、110bを格納および支持するためのボトルホルダー115a、115bを備える。保護カバー120a、120bは、ボトルホルダー115a、115b上にマウントされ得て、その上に保持される場合にボトル110a、110bを覆い、それにより、ボトル110a、110bを格納するための(閉鎖された)チャンバーを規定する。ボトルホルダー115a、115bおよび保護カバー120a、120bは、外側の偶然的な衝撃からボトル110a、110bを保護する。さらに、それらは断熱材料(例えば、ポリカーボネート)で作られて熱損失を低減させて、それにより、注入システムとは別個の専用機器(示されない)内で事前に加熱されたボトル110a、110b内に含まれる医療流体を温かく(例えば、だいたい体温で)維持するのを助ける。典型的に、供給ステーション105cは、その代わりに、単純に、ポーチ110cを吊るすためのフック125cを備える。
【0031】
注入システムは、レセプタクル110a、110b、110cから加圧ユニット140に医療流体を送達するための流体パスウェイを決定する送達アレンジメント135をさらに備える。
【0032】
この目的のために、それぞれの供給ステーション105a、105bにおいて、ボトルコネクター130a、130bが、ボトルホルダー115a、115bの接続ポート132a、132b内に配列される。ボトルコネクター130a、130bは、ボトル110a、110bに連結するためのスパイク、および、スパイクと流体連結した接続素子(例えば、セプタムまたは雄ルアーロックフィッティング)を備える。スパイクおよび接続素子は、ボトルコネクター130a、130bの逆の縦末端に位置する。典型的に、ボトルコネクター130a、130bは、そのスパイクと接続素子との間に、濾過ユニット(図に示されない)も備える。ボトルコネクター130a、130bは、単一のボトル110a、110bとの使用のための使い捨て可能な素子である(例えば、任意の偶然的なその再使用を防止するために、ボトルコネクター130a、130bが除去される場合に離脱してボトル110a、110bの内側に残るスパイクによる)。
【0033】
送達アレンジメント135(専門家によって「デイセット」または「トランスファーセット」としばしば示される)は、レセプタクル110a、110b、110cからの対応する医療流体を加圧ユニット140に移行させるために、全ての供給ステーション105a、105b、105cを加圧ユニット140に接続する。送達アレンジメント135は、それぞれの供給ステーション105a、105b、105cのための移行ラインを備える。それぞれの供給ステーション105a、105bの移行ラインは、(加圧ユニット140に対してその遠位端に)リザーバー(またはドリップチャンバー)142a、142bおよびボトルコネクター130a、130bの接続素子と嵌合するための接続素子143a、143bを具備するフレキシブルチュービング141a、141bを備える。例えば、接続素子143a、143bは、ボトルコネクター130a、130bの接続素子がセプタムである場合はスパイクであり、または、接続素子143a、143bは、ボトルコネクター130a、130bの接続素子が雄ルアーフィッティングである場合は雌ルアーロックフィッティングである。注入システム100の運転中、リザーバー142a、142bおよび接続素子143a、143bは、ボトルホルダー115a、115bの内側に配列される。供給ステーション105cの移行ラインは、(加圧ユニット140に対してその遠位端に)リザーバー(またはドリップチャンバー)142cおよびポーチ110cに接続するためのスパイク143cを具備するフレキシブルチュービング141cを備える。フレキシブルチュービング141a、141b、141cは全て、(加圧ユニット140に対してそれらの近位端で)T-コネクター144と連結されて、それは、加圧ユニット140の対応するポート内の挿入のためのプラグを備える。
【0034】
加圧ユニット140は、ぜん動ポンプの電気モーター(図では見えない)を備え、それは、医療流体(送達アレンジメント135を介してレセプタクル110a、110b、110cから受け取られる)を、患者へのそれらの注入のために加圧するために用いられる(例えば、8バールの圧力まで、または流速0.5~9.9ml/sで)。
【0035】
注入システム100は、加圧された医療流体をそれに送達するために加圧ユニット140を患者に接続する患者セット145をさらに備える。患者セット145は、フレキシブルチューブ146で作られた送達ラインを備え、それは(患者に対してその遠位端に)、ぜん動ポンプ147を具備する。後者(latter)は、加圧ユニット140内に提供された専用のポート中に導入されて、また、T-コネクター144とも流体連通する。ぜん動ポンプ147は、複数のスクイジングホイールを備えるローターを格納し、それの中に、フレキシブルチューブ146の対応する部分が挿入される。患者セット145が、単一の患者のみによる使用のための単回使用タイプである場合(
図1に示されない)、フレキシブルチューブはかなり長く(
図1に示されるフレキシブルチューブ146よりも著しく長い)、それは、(患者に対してその近位端に)、治療される患者の末梢静脈中に皮膚を通して挿入される末梢カテーテルのそれぞれの接続素子(例えばプラグ)と嵌合するための接続素子を具備する。その代わり、患者セット145が、多数の患者による使用のための多数使用タイプである場合(
図1に示される)、フレキシブルチューブ146(送達ライン)はかなり短く、その近位端に、長いフレキシブルチューブ151(部分的にのみ
図1に示される)で作られたさらなる患者ライン(患者ラインとも示される)の接続素子150と嵌合するための接続素子148を具備し、それは順々に、末梢カテーテルの接続素子と嵌合するための接続素子152で終わる(示されない)。患者セット145は使い捨て可能な素子であり、単回使用の場合は、完全に単一の患者での使用のためのものであり、一方で、多数回使用の場合は、単一の患者のみでの使用のためのさらなる患者ライン150~152(およびしたがって、新たな患者が処置されなければならない場合は破棄されて新たなものと交換される)を除き、定期的に(例えば、12時間ごとに)、交換される。また、フレキシブルチューブ146は、チューブをつまんで、さらなる患者ライン150~152のインストールまたはアンインストール中にラインを閉鎖する、クリップ154を具備してもよい。
【0036】
図1に示される実施態様によれば、注入システム100のそれぞれの供給ステーション105a、105b、105cは、送達アレンジメント135と係合して、したがって、その中に流れる医療流体の通路をブロックまたはブロック解除するための、クランプ手段300(
図3および
図4に詳細に示される)をさらに備える。特に、供給ステーション105a、105bのクランプ手段300は、ボトルホルダー115a、115bの内側に配置されて、一方で、供給ステーション105cのクランプ手段300は、注入器本体の前部に格納された専用シート153内に配置される。クランプ手段300は、第一のコンポーネント310から横に空間があけられた第二のコンポーネント320と協調して運転される、第一のコンポーネント310を備える。実際に、2つのコンポーネントを互いから離す空間は、それぞれ、送達アレンジメント135のフレキシブルチュービング141a、141b、141cを受け入れるのに適している。クランプ手段300は、フレキシブルチュービング141a、141b、141cに対して垂直に配置されて、第一のコンポーネント310は可動性であり、第二のコンポーネント320(それとは逆に、固定された(静的)位置である)に対して促す。
図3および
図4に示される実施態様によれば、第一のコンポーネント310は、フレキシブルチュービング141a、141b、141cの縦軸に対して、後者(latter)が適切に押しつぶされて(第一のコンポーネント310と第二のコンポーネント320との間)、その断面積を目立つほどに低減させて、そこを流れる医療流体の流れを妨げるように、実質的に垂直な方向に沿ってシフトする。任意選択で、第一のコンポーネント310はU形状であり、一方で、第二のコンポーネント320は、第一のコンポーネント310の開いた凹所と第二のコンポーネント320の円錐形の部分の相互作用が、フレキシブルチューブを曲げさせて、そして狭められて押しつぶされるように、V字形である。したがって、クランプ手段300は、フレキシブルチュービングの外側表面に対して作用して、第一および第二のコンポーネント310、320が相互作用する係合領域に対応してその断面積を低減させるように提供される。明確化のために、断面積の低減は、第一のコンポーネント310によって係合されるチューブ壁部分が、第二のコンポーネント320によって係合される正反対のチューブ壁部分と接触することを意味する。
【0037】
制御ユニット155は、注入システム100の運転を制御する。例えば、制御ユニット155は、マイクロプロセッサ、マイクロプロセッサによってワーキングメモリとして用いられるRAM、および、電源が切れた場合でさえ保存されるべき情報(特に、注入システム100の制御プログラム)を保存するフラッシュE2PROMを具備する(メインPCB)ボードを備える。さらに、制御ユニット155は、制御ユニット155と相互作用するためにオペレーターによって用いられるタッチスクリーンおよびいくつかのボタンを備える。
【0038】
クランプ手段300のアクティブ化(すなわちクランプおよびクランプ解除)は、注入器ソフトウェアによって自動的に制御されて、すなわち、それは注入器プログラムの一部であり、それはまた、プライミングステップ、ならびに、注入器によって行われ得る複数の注入ステップも含む(注入器に、典型的には、
図1に示されない注入器リモートコンソールに、ロードされる注入プロトコルに従う)。クランプ手段は、実際に、上述のように、注入器の通常の運転中に既に用いられている。しかしながら、本開示によれば、クランプ手段は、以前に明確に述べたくっつきの問題を克服するために、注入器がそのスタンバイ状態である場合にもアクティブにされる。あるいは、クランプ手段300のアクティブ化は、それぞれの供給ステーションに存在するボタンを押すことによって、オペレーターにより手作業で制御され得る。
【0039】
注入システム100は、スタンド160によって支持される。スタンド160は、注入システム100を動かすのを容易にするためのホイールを具備し;さらに、ホイールは、注入システム100を適所に固定するためのフットブレーキを備える。
【0040】
ここで
図2を参照して、本開示の実施態様に係る特定の注入システム200の図形表示が示される。
【0041】
注入システム200は、供給ステーション105aおよび供給ステーション105b内の、それぞれ、バッグ(またはポーチ)ホルダー205aおよびバッグ(またはポーチ)ホルダー205bの追加について、(
図1に関して)上述したものとは異なる。それぞれのバッグホルダー205a、205bは、図に示されないバッグ(すなわち、自立しない柔らかいコンテナ、例えば、ポリプロピレン製)を保持するために用いられる。この場合においても同様に、2つの供給ステーション105a、105bのバッグは、単回または多数回投与量の異なる造影剤または同一の造影剤を含んでよく、または、造影剤および生理食塩水をそれぞれ含んでよい。それぞれのバッグホルダー205a、205bは、ボトルホルダー105a、105b上にマウントされるように構成されて、その結果、保護カバー120a、120bがバッグホルダー205a、205b上にマウントされる。
【0042】
上述の解決手段は、注入システム200を非常に万能にさせる。実際に、注入システム200は、したがって、最も一般的な場合として、ボトル内(図に示されない)、または、それらの運搬/保管に関する費用を低減させるように、および、それらの破棄を容易にするように、またはそれらの任意の組み合わせのために、バッグ内に提供される、造影剤(または生理食塩水)とともに用いられ得る。さらに、この結果は、注入システム200に対していかなる(重大な)構造上の変更も伴わずに有利に達成されて;したがって、標準的な(伝統的な)注入システム(ボトル用に設計される)を、非常に単純でおよび費用対効果的な方法で改造することが可能である。
【0043】
操作において、それぞれのスキャン検査が行なわれるために、オペレーターは注入システム100を検査されるべき患者の近くに置いて、それから注入システムのスイッチを入れる。まだされていない場合は、オペレーターは、それぞれのリザーバー142a、142bおよび接続素子143a、143bを、(そのフラップを横切って)対応するボトルホルダー115a、115b内に挿入して、および、(例えば、スナップフィッティング機構を通して)それらをその中に開放可能にブロックすることによって、送達アレンジメント135をインストールする。ポーチ110c(生理食塩水を含む)がインストールされていない場合は、制御ユニット155は、そのスクリーン上に、オペレーターがそうするように促すメッセージを表示する。ポーチ110cが用いられる場合は、オペレーターは、スパイク143cを用いてポーチ110cのシールを貫通させて、フック125cからポーチ110cを吊るして、(繰り返し押しつぶすことによって)リザーバー142cを生理食塩水で完全に満たす。この時点で、オペレーターは、ポーチ110cの生理食塩水に関する特定の情報(例えば、その商標名および容量)を入力することによって制御ユニット155を(制御ユニット155で、または注入器リモートコンソールで)プログラムする。さもなければ、ポーチ110cが用いられない場合は、オペレーターは、対応するコマンドを制御ユニット155(またはリモートコンソール)に入力する。両方の場合において、ボトル110a(造影剤を含む)がインストールされていない場合は、制御ユニット155は、そのスクリーン上に、オペレーターがそうするように促すメッセージを表示する。それに応答して、オペレーターは、ボトル110aを別個の加温器(図に示されない)から取り、ここで、ボトル110aは、標的温度に事前に温められていて;標的温度は、造影剤を効率的に(例えば、所望の流速で)、患者にとって快適に注入するのを可能にするのに十分に高い値に設定されるが、患者にとって有害であるほど高くはない(例えば、32~37.5℃)。オペレーターは、ボトルコネクター130aのスパイクを用いてボトル110aのシールを貫通させる。オペレーターは、それから、ボトル110aの上下をひっくり返して(それに接続されたボトルコネクター130aとともに)、ボトルコネクター130aを接続ポート132a中に(その接続素子を接続素子143aに接続するように)挿入して、保護カバー120aをボトルホルダー115a上に(ボトル110aを安全に取り囲むように)マウントして、(リザーバー142aを繰り返し手で押しつぶすことによって)リザーバー142aを造影剤で完全に満たす。この時点で、オペレーターは、ボトル110aの造影剤に関する特定の情報(例えば、その商標名および容量)を入力することによって、制御ユニット155を(制御ユニット155で、または注入器リモートコンソールで)プログラムする。オペレーターは、(造影剤または生理食塩水を含む)ボトル110bをインストールするために、必要であれば、同じ操作を繰り返す。制御ユニット155は、ここで、そのスクリーン上に、患者セット145をインストールするようにオペレーターを促すメッセージを表示する。それに応答して、オペレーターは、ぜん動ポンプ147を加圧ユニット140の対応するポート中に挿入して、ぜん動ポンプ147をT-コネクター144に接続する。患者セット145が多数回使用のためのものである場合は、オペレーターは、患者ライン150~152の接続素子150を、送達ライン146~148の接続素子148にさらに接続する。オペレーターは、ここで、移行ライン141a~143a、141b~143bおよび141c~143c、送達ライン146~148および/または(ありうる)患者ライン150~152内に場合により存在する任意の気泡を取り除くように、制御ユニット155(またはリモートコンソール)上の対応するプライミング機能を選択することによって、移行ライン141a~143a、141b~143bおよび141c~143cのそれぞれを別々にプライムする。あるいはおよび好ましくは、プライイング段階は、オペレーターがそれを手作業で実行する必要なしに、注入システムによって有利に自動的に行なわれる。このプライミング段階が終了した時点で(もはや注入システム100内に感知される空気は存在しない)、オペレーターは、最終的に、接続素子152(または、単回使用の場合は患者ラインの接続素子)を、患者の血管内に既に導入されている末梢カテーテル(示されない)の接続素子に接続する。
【0044】
この時点で、オペレーターは、スキャン検査に関する情報(例えば、末梢カテーテルの針ゲージ、医療流体のタイプ、容量および流速によってそれぞれ規定される1つまたは複数の注入段階を含む注入プロトコル、場合により、異なるタイプのスキャン検査に関する事前に規定された注入プロトコルの中から選択される)を入力することによって、制御ユニット155(またはリモートコンソール)をプログラムする。
【0045】
検査される所定の患者に特有の注入プロトコル(注入段階の数、注入段階の順序、流速および持続時間のような注入パラメーター、造影剤および生理食塩水の詳細、針ゲージ)は、制御ユニット155(またはリモートコンソール)を通してオペレーターによって手作業で導入される。あるいは、オペレーターは、USBフラッシュドライブのようなリムーバブルメモリから注入プロトコルをダウンロードすることができる。あるいは、オペレーターは、注入プロトコル、ならびに関連のある患者のデータを、1つよりも多い注入システム100および念のため1つよりも多い臨床建物(clinical premises)も接続することができるサーバーから、ダウンロードすることができる。
【0046】
注入手順のこの時点で、オペレーターは、注入システムの機能をイメージングデバイスの機能と組み合わせるスキャン検査を開始することができ、後者は、スキャン手順中に用いられる造影剤の活性を提供する注入システムとともに運転される。スキャン検査の最後に、オペレーターは、注入システム100のスイッチを切って、患者セット145の送達/患者ラインを末梢カテーテルから切断して、それから、それを取り外して破棄する。したがって、所定の検査される患者の注入手順は、完了されたと考えられ得る。
【0047】
上述のように、送達アレンジメント135が24時間ごとに交換され得る使い捨て素子である(および、標準的な送達アレンジメントが用いられる場合に起きるように10時間または12時間ごとではない)場合は、注入手順の最後に、送達アレンジメント135は、その使用時間がまだ経過していない場合は破棄されずにインストールされたままであり、新たな患者に注入されるのに、すなわち、新たな注入手順が開始されるのに、準備ができている。
【0048】
図1の注入システム100(ならびに、
図2の注入システム200)は、3つの別個の供給ステーション105a、105、105cを備える。しかしながら、本開示は、単一の供給ステーションを具備する注入システムに適用され得る。同様に、本開示は、2つの別個の供給ステーションを具備する注入システムにも適用され得る。
【0049】
ここで
図5を参照して、本開示の実施態様に係る注入システムを運転する方法をよりよく説明するために、簡略化されたフローチャートが示される。
【0050】
詳しくは、ステップ510は、第一の患者に対する第一の注入手順が完了されていて、送達アレンジメント135は、まだその24時間の使用時間内であり破棄されないことを示す。
【0051】
以前に説明したように、注入システム100は、第一の患者に対する注入が完了した直後に、第二の患者を治療するように運転されないことが起こり得る。この状況は、病院の緊急治療室ならびに1日あたりのスキャン検査が非常に少なくあり得る小さな医療センターでかなり頻繁に起きる。
【0052】
したがって、この場合は、注入システムは、新たな注入手順が開始されるのを待っているスタンバイ状態で維持される(
図5においてステップ520によって表される)。
【0053】
本開示に係る方法は、第一の(すなわち前の)注入手順の最後(完了)から過ぎた期間tni(すなわち、次の注入までの時間)を評価、すなわち算出して、それから、得られた(算出された)時間の値tniを、上述のくっつきの問題を避けるのに適切と考えられる所定のクランプ解除時間の値tdと比較する。
【0054】
したがって、2つの異なる状況が生じ得る。
【0055】
第一の状況では、連続する(次の)注入手順は、所定のクランプ解除時間の値t
dが到達される前に(
図5においてステップ530によって表される、t
ni≦t
d)、開始される(
図5においてステップ540によって表わされる)。したがって、オペレーターは、注入システムを適切に運転して連続する治療されるべき患者のスキャン検査を行なうために、上述の全ての必要なステップを行なう。このさらなる注入手順も完了したら、注入システムは、以前に開示されたように新たなスタンバイ状態(ステップ520)に入り、システムは、送達アレンジメントの使用時間が経過して新たなものがインストールされることが必要とされるまで繰り返される。
【0056】
第二の状況では、連続する(次の)注入手順は、所定のクランプ解除時間の値t
dが到達される前に開始されない(
図5においてステップ550、t
ni>t
d)。したがって、本開示の方法によれば、注入システム100は、それぞれの供給ステーション105a、105b、105cの送達アレンジメント135と関係があるクランプ手段300を自動的にアクティブにして、所定のクランプ解除持続時間のあいだ、その元の形状を回復することができるように、送達アレンジメント135をクランプ解除する(ステップ560)。これは、スタンバイ状態のあいだ、クランプ状態で維持されていた(ステップ520)アレンジメント送達135が、そのクランプ(すなわち押しつぶされた)状態から自動的に解放されて、その元の円柱状の形状を回復することができることを意味する。所定のクランプ解除持続時間が完了した時点で、注入システム100は、クランプ手段300を自動的にアクティブにして送達アレンジメント135を再度クランプして(ステップ570)、注入システム100は、新たなスタンバイ状態を開始する(ステップ520)。新たなスタンバイ状態の開始は、注入システムが、最後の(すなわち前の)クランプ解除ステップ(560)の最後から過ぎた期間を評価する、すなわち算出するのを自動的に開始して(すなわち、次の注入までの時間t
niが計算される)、それから、以前に開示したように、この得られた(計算された)時間の値t
niを、前記の所定のクランプ解除時間の値t
dと比較することを意味する。
【0057】
ここで
図6を参照して、本開示の実施態様に係る注入システムを運転する方法をよりよく説明するためにフローチャートが示されて、ここで、注入システムは、
図1に示される3つの別個の供給ステーション105a、105b、105cを備える。
【0058】
明確化のために、
図5および
図6の両方に存在する同一の参照番号は、同一または同様のステップを示すために用いられる。
【0059】
詳しくは、ステップ510は、第一の患者に対する第一の注入手順が完了して、送達アレンジメント135は、まだその24時間の使用時間内であるので破棄されないことを示す。
【0060】
第一の注入手順が完了した直後に第二の患者を治療するために注入システム100が運転されない場合は、注入システムは、連続する注入手順が開始されるのを待っているスタンバイ状態(
図6の520)で維持される。
【0061】
この段階で、本開示に係る方法は、第一の(すなわち前の)注入手順の最後から過ぎた期間tni(すなわち、次の注入までの時間)を評価、すなわち算出して、それから、この得られた(計算された)時間の値を、上述のくっつきの問題を避けるのに適切な所定のクランプ解除時間の値tdと比較する。
【0062】
したがって、2つの異なる状況が生じ得る。
【0063】
第一の状況では、所定のクランプ解除時間の値t
dが到達される前に(
図6のステップ530、それによれば、条件t
ni≦t
dが満たされる)、連続する(第二の)注入手順が開始される(
図6のステップ540)。したがって、オペレーターは、再度、注入システムを適切に運転して第二の(連続する)患者のスキャン検査を実行するために、上述の全ての必要なステップを行なう。第二の注入手順も完了した時点で、注入システムは、以前に開示したように新たな(さらなる)スタンバイ状態(ステップ520)で維持される。
【0064】
第二の状況では、連続する(第二の)注入手順は、所定のクランプ解除時間の値t
dが到達される前に開始されない(
図6のステップ550、t
ni>t
d)。したがって、本開示の方法によれば、注入システム100は、第一の供給ステーション105aの送達アレンジメント135と関係があるクランプ手段300を自動的にアクティブにして、所定のクランプ解除持続時間のあいだ、その元の形状を回復することができるように、チュービング141aをクランプ解除する(ステップ560a)。所定のクランプ解除持続時間が完了した時点で、注入システム100は、クランプ手段300を自動的にアクティブにして、チュービング141aを再度クランプする(ステップ570a)。チュービング141aがクランプされた後に、注入システム100は、第二の供給ステーション105bの送達アレンジメント135と関係があるクランプ手段300を自動的にアクティブにして、所定のクランプ解除持続時間のあいだ、その元の形状を回復することができるように、チュービング141bをクランプ解除する(ステップ560b)。所定のクランプ解除持続時間が完了した時点で、注入システム100は、クランプ手段300を自動的にアクティブにして、チュービング141bを再度クランプする(ステップ570b)。最後に、チュービング141bがクランプされた後に、注入システム100は、第三の供給ステーション105cの送達アレンジメント135と関係があるクランプ手段300を自動的にアクティブにして、所定のクランプ解除持続時間のあいだ、その元の形状を回復することができるように、チュービング141cをクランプ解除する(ステップ560c)。所定のクランプ解除持続時間が完了した時点で、注入システム100は、クランプ手段300を自動的にアクティブにしてチュービング141cを再度クランプして(ステップ570c)、注入システムは、新たなスタンバイ状態を開始する(ステップ520)。新たなスタンバイ状態では(ステップ520)、注入システムは、最後の(すなわち前の)クランプ解除ステップ(560c)の終わりから過ぎた期間を評価、すなわち算出するのを、再度、自動的に開始して(すなわち、次の注入までの時間t
niを注入システムによって計算する)、それから、以前に開示されたように、この得られた(算出された)時間の値を、前記の所定のクランプ解除時間の値t
dと比較する。
【0065】
さらに、1つよりも多い供給ステーションが想定される場合は、供給ラインがクランプ解除される(および連続してクランプされる)順序と関係がないことが指摘され得る。上記の実施態様では、クランプ解除は、最初に、第一の供給ステーションと関係があるチュービングに対して行なわれて、それから、第二の供給ステーションと関係があるチュービングに対して行なわれて、最後に、第三の供給ステーションと関係があるチュービングに対して行なわれた。しかしながら、上記の順序に従う必要はなく、注入手順の最終的な成果を損なわずに任意の所望の順序に従うことができる。
【0066】
さらに、1つの供給ライン(チュービング)のクランプ解除が実行された後に、連続する供給ラインのクランプ解除を直ちに進める必要がないことに本出願人は気付いた。これは、連続するクランプ解除ステップの間に休止時間が存在してよいことを意味する(この休止時間は注入手順にネガティブに影響しないので)。しかしながら、この手順上のステップを完了するために、制限された期間内に必要とされるクランプ解除ステップの全てを実行することが好ましく、したがって、好ましくは、クランプ解除ステップは、実質的に連続する様式で行なわれる。
【0067】
したがって、一実施態様によれば、本開示は、加圧ユニット、および、加圧ユニットに医療流体を供給するための少なくとも1つの供給ステーションを備える、注入システムを運転する方法に関し、前記供給ステーションは:
-前記医療流体を含むための少なくとも1つのレセプタクル;
-医療流体を患者に送達するための加圧ユニットおよびレセプタクルと流体連通している送達アレンジメント、および
-送達アレンジメントを通る医療流体の流れを調節するための送達アレンジメントと関連するクランプ手段、を備え、
前記方法は:
-第一の注入手順が完了するまで加圧ユニットを運転するステップ;
-連続する(次の)注入手順が開始される前に、スタンバイ状態で注入システムを維持するステップ(注入システムは、前記の維持するステップ中は、注入するように運転されない)、および
-連続する(次の)注入手順が完了するまで、加圧ユニットを運転するステップ、を含み、
スタンバイ状態で注入システムを維持するステップは、送達アレンジメントをクランプ解除するために前記クランプ手段に対して作用するステップを含むことを特徴とする。
【0068】
本開示の一実施態様によれば、送達アレンジメントをクランプ解除するために前記クランプ手段に対して作用するステップは、所定のクランプ解除頻度で作動される。
【0069】
本開示の一実施態様によれば、スタンバイ状態で注入システムを維持するステップは、連続する(次の)注入手順中、前の(すなわち第一の)注入手順中に用いた送達アレンジメントを保存するステップを含む。
【0070】
本開示の一実施態様によれば、送達アレンジメントをクランプ解除するために前記クランプ手段に対して作用するステップは、連続する注入手順の開始時間が所定のクランプ解除時間よりも長い場合に作動される。
【0071】
送達アレンジメントをクランプ解除するために前記クランプ手段に対して作用するステップが、第一の時間、作動される場合は、連続する(すなわち第二の)注入手順の開始時間は、第一の注入手順の完了から算出される。
【0072】
それとは逆に、送達アレンジメントをクランプ解除するために前記クランプ手段に対して作用する少なくとも1つのステップが、同一の維持するステップ中に既に作動されている場合は、連続する注入手順の開始時間はリセットされて、前記クランプ手段に対して作用する少なくとも1つのステップの最終の完了から算出(計算)される。換言すれば、注入システムが長期間スタンバイ状態で維持されること、および、したがって、送達アレンジメントをクランプ解除するために前記クランプ手段に対して作用する1つよりも多いステップがこの長期間中に作動されることが起こり得る。したがって、この場合、連続する注入手順の開始時間は、クランプ手段に対して作用する最後のステップの終わりからスタートして算出(計算)される。
【0073】
本開示の一実施態様によれば、所定のクランプ解除時間は、1時間~4時間の範囲内で選択される。好ましくは、所定のクランプ解除時間は、2時間~3時間の範囲内で選択される。
【0074】
上述のように、送達アレンジメントをクランプ解除するためにクランプ手段に対して作用するステップは、所定のクランプ解除持続時間行なわれる。好ましくは、所定のクランプ解除持続時間は、1秒~2秒の範囲内で選択される。より好ましくは、所定のクランプ解除持続時間は、1秒である。
【0075】
一実施態様によれば、スタンバイ状態で注入システムを維持するステップは、送達アレンジメントをクランプするためにクランプ手段に対して作用するステップを含む。好ましくは、送達アレンジメントをクランプするためにクランプ手段に対して作用するステップは、送達アレンジメントをクランプ解除するためにクランプ手段に対して作用するステップの後に行なわれる。より好ましくは、送達アレンジメントをクランプするためにクランプ手段に対して作用するステップは、送達アレンジメントをクランプ解除するためにクランプ手段に対して作用するステップの直後に行なわれる。
【0076】
一実施態様によれば、スタンバイ状態で注入システムを維持するステップは、連続する注入手順の開始時間を算出(計算)するステップを含む。特に、スタンバイ状態で注入システムを維持するステップは、所定のクランプ解除時間を、計算するステップから得られた連続する注入手順の開始時間と比較するステップを含む。
【0077】
本開示によれば、送達アレンジメントをクランプ解除するために前記クランプ手段に対して作用するステップは、自動的に行われる。同様に、送達アレンジメントをクランプするために前記クランプ手段に対して作用するステップは、自動的に行われる。
【0078】
上述のように、注入システムが第一の供給ステーションおよび第二の供給ステーションを備える場合は、スタンバイ状態で注入システムを維持するステップは、所定のクランプ解除頻度に従って、所定のクランプ解除持続時間、それぞれの送達アレンジメントのチュービングをクランプ解除するために第一の供給ステーションと関係があるクランプ手段をアクティブにするステップ、および、第一の供給ステーションと関係があるクランプ手段を連続してアクティブにするステップを含む。さらに、スタンバイ状態で注入システムを維持するステップは、所定のクランプ解除頻度に従って、所定のクランプ解除持続時間、それぞれの送達アレンジメントのチュービングをクランプ解除するために第二の供給ステーションと関係があるクランプ手段をアクティブにするステップ(第二の供給ステーションと関係があるクランプ手段をアクティブにする前記ステップは、第一の供給ステーションと関係があるクランプ手段をアクティブにするステップの後に行なわれる)、および、第二の供給ステーションと関係があるクランプ手段を連続してアクティブにするステップを含む。さらに、スタンバイ状態で注入システムを維持するステップは、所定のクランプ解除頻度に従って、所定のクランプ解除持続時間、それぞれの送達アレンジメントのチュービングをクランプ解除するために第三の供給ステーションと関係があるクランプ手段をアクティブにするステップ(第三の供給ステーションと関係があるクランプ手段をアクティブにするステップは、第二の供給ステーションと関係があるクランプ手段をアクティブにするステップの後に行なわれる)、および、第三の供給ステーションと関係があるクランプ手段を連続してアクティブにするステップを含む。
【0079】
送達アレンジメントのチュービングは、プラスチック材料から作られる。好ましくは、送達アレンジメントのチュービングは、シリコーンから作られる。
【0080】
一実施態様によれば、本開示は、患者の血管系に注入される医療流体を供給するための少なくとも1つの供給ステーションを備える注入システムを運転する方法に関し、前記供給ステーションは:
-前記医療流体を含むための少なくとも1つのレセプタクル;
-医療流体を患者に送達するためのレセプタクルと流体連通している送達アレンジメント、および
-送達アレンジメントを通る医療流体の流れを調節するための送達アレンジメントと関連するクランプ手段、を備え、
前記方法は:
-第一の患者の血管系に、この第一の患者に予期される注入手順が完了するまで、医療流体を注入するステップ;
-第二の患者の血管系に医療流体を注入する前に、スタンバイ状態で注入システムを維持するステップ、および
-第二の患者の血管系に、第二の患者に予期される注入手順が完了するまで、医療流体を注入するステップ、を含み、
スタンバイ状態で注入システムを維持するステップは、送達アレンジメントをクランプ解除するために前記クランプ手段に対して作用するステップを含むことを特徴とする。
【実施例】
【0081】
実験的データ
本出願人は、注入器のクランプ手段のクランプ解除頻度(すなわちクランプ解除時間)、および開放時間(すなわちクランプ解除持続時間)の適切な値を規定するために、いくつかの試験を行なった。
【0082】
2つのCT Expres注入器(Bracco Injeneering S.A.製)(以下、注入器Aおよび注入器Bと呼ぶ)を、試験を行なうためにインストールした。注入器は、
図1に示されるように、2つの造影媒体供給ステーションおよび1つの生理食塩水供給ステーションを具備した。詳しくは、500mlのUltravist 300のボトルを2つと、500mlの生理食塩水バッグを1つ、インストールした。24時間の期間インストールされた状態を維持するのに適切な、新たな送達アレンジメントが提供された。送達アレンジメントのチュービング(141a、141b、141c)は、シリコーンで作られた。2つの注入器は、本開示の注入システムを運転する方法に従った(すなわち、24時間の使用時間を有する送達アレンジメントを用いた)ソフトウェア改変を含んだ。
【0083】
第一のステップとして(注入器の両方ともについて)、送達アレンジメントが気泡を含まないことを確認するために、自動的なプライミングステップを、造影剤を用いて行なった。それから、造影剤の3回の注入(それぞれ、生理食塩水のポスト-フラッシュ注入を続けた)を、100mLの造影剤および100mLの生理食塩水を用いて行なった。
【0084】
以下の試験は、異なるクランプ解除時間および異なるクランプ解除持続時間で行なわれた。
【表1】
【表2】
【0085】
表の「結果」カラム中、用語「ネガティブ」は、送達アレンジメントの少なくとも1つのチュービングが、クランプ手段の延長された作用に起因してくっついて、クランプ解除の作用が生じず、または部分的にのみ生じたことを意味し、一方で、用語「ポジティブ」は、送達アレンジメントがくっつきの問題を経験せず、クランプ解除が適切に行われたことを意味する。
【0086】
試験の結果は、1hr~4hrの範囲内に含まれるクランプ解除時間を選択することによって、注入システムが適切に(くっつきの問題がなく)運転されたことを明らかに示す。
【0087】
本出願人は、クランプ解除頻度(すなわちクランプ解除時間)が、注入システムを成功的に運転するための最も重大な因子であることに気付いた。
【0088】
したがって、この特有のパラメーター(すなわち、クランプ解除頻度またはクランプ解除時間)は、その結果、最も短い可能なクランプ解除持続時間として本出願人によって選択されたクランプ解除持続時間(クランプ解除ステップを、最小限の全体的な持続時間に維持するため)よりも、重要であると考えられた。
【0089】
改変
当然ながら、局所的および特定の要求を満たすために、当業者は、多くの論理的および/または物理的改変および変更を、本開示に適用し得る。より具体的には、本開示は、1つまたは複数のその実施態様に関して特定の程度の特殊性で説明されているが、形式および詳細における様々な省略、置換および変更ならびに他の実施態様が可能であることが理解されるべきである。特に、本開示の異なる実施態様は、より徹底的なその理解を提供するために前述の説明に示される特定の詳細(数値など)がない場合でさえも実施され得る。反対に、よく知られた特性は、不必要な詳細によって説明を曖昧にしないために、省略または簡略化されていてよい。さらに、本開示の任意の実施態様との関連で記載される特定の素子および/または方法ステップは、全般的な設計選択の事項として任意の他の実施態様に組み込まれ得ることが明示的に意図される。任意の場合において、数値はそれぞれ、用語「約」によって修飾されるものとして読まれるべきであり(すでになされていない限り)、数値の範囲はそれぞれ、その範囲内の連続体に沿った任意のあり得る数字を明示的に特定するものとして意図されるべきである(そのエンドポイントを含む)。さらに、順序または他の修飾語は、同じ名を持つ素子を区別するための単なるラベルとして用いられるが、それらによって、いかなる優先、先行または順序も含意しない。用語「含む(include)」、「含む(comprise)」、「有する(have)」、「含む(contain)」および「含む(involve)」(およびそれらの任意の形)は、オープンの、網羅的でない意味で意図されるべきであり(すなわち、列挙されたアイテムに制限されない)、用語「基づく(based on)」、「依存する(dependent on)」、「~による(according to)」、「~の機能(function of)」(およびその任意の形)は、網羅的でない関係として意図されるべきであり(すなわち、あり得るさらなる変動が含まれる)、用語「a/an」は、1つまたは複数のアイテムとして意図されるべきであり(明示的に別段の指示がない限り)、および、用語「~のための手段(means for)」(または任意の手段-プラス-機能の構築)は、関連のある機能を実施するために適用または構成される任意の構造として意図されるべきである。
【0090】
例えば、一実施態様は、注入システムを提供する。しかしながら、注入システムは、任意のタイプであってもよい(例えば、シリンジ注入器のような別の加圧システムを備え、イメージングスイートの天井上にマウントするためのシーリングマウントを備える)。
【0091】
一実施態様では、注入システムは、1つまたは複数の流体を患者内に注入するためのものである。しかしながら、流体は、(例えば、どのような医療流体が、薬物または体液のような診断または治療目的のための一般的な医薬用途において用いられようと、または、より一般的には、化粧目的のような任意の他の処置において用いられようと)任意の数および任意のタイプであってよく;さらに、流体は、任意の方法(例えば、動脈内)で任意の(ヒトまたは動物)患者に注入されてよい。
【0092】
一実施態様では、注入システムは、1つまたは複数の供給ステーションを備え、それぞれ、注入される流体の1つを提供するためのものである。しかしながら、注入システムは、同一または異なる流体を(任意の組み合わせで)供給するための任意の数(ただ1つに至るまで)の供給ステーションを備えてよい。
【0093】
一実施態様では、注入システムは、そのスキャン検査中に患者内へ流体を注入するためのものであり;流体は、造影剤および/または生理食塩水を含む1つまたは複数の医療流体である。しかしながら、注入システムは、任意のスキャン検査(例えば、MR、核または超音波イメージングの適用)のために用いられてよく;さらに、注入システムは、任意の造影剤(例えば、バリウムに基づく造影剤、例えば硫酸バリウム、ガドリニウム、放射性同位体、ガス充填微小気泡の懸濁液)、任意の生理食塩水(例えば、ブドウ糖が添加される)、それらの任意の組み合わせとともに、またはより一般的には、任意の医療流体(単数または複数)とともに用いられ得る。