(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】船舶、特に旅客船の飲料水の塩素消毒方法
(51)【国際特許分類】
C02F 1/50 20060101AFI20220302BHJP
C02F 1/76 20060101ALI20220302BHJP
B63B 1/00 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
C02F1/50 531P
C02F1/50 510A
C02F1/50 520B
C02F1/50 540B
C02F1/50 550L
C02F1/76 A
B63B1/00
(21)【出願番号】P 2018555567
(86)(22)【出願日】2017-05-09
(86)【国際出願番号】 IB2017052685
(87)【国際公開番号】W WO2017195101
(87)【国際公開日】2017-11-16
【審査請求日】2020-04-03
(31)【優先権主張番号】102016000048159
(32)【優先日】2016-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】514146829
【氏名又は名称】フィンカンティエリ ソチエタ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】パオロ・チェーレレ
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-060353(JP,A)
【文献】仏国特許出願公開第02467823(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00、50、76
B63B 1/00-85/00
B63J 1/00-99/00
A61L 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
再循環の分配ネットワーク、及び遊離塩素を水中で生じ得る少なくとも1つの塩素化合物を予め定められた投入点(IP)で前記分配ネットワークに投入するための装置を備える飲料水生産及び分配システムを有し、
少なくとも1つの前記塩素化合物が、前記分配ネットワークを無菌に保つように予め定められた前記投入点(IP)で循環経路に投入される塩素消毒のステップaを備えた、船舶の飲料水の塩素消毒方法であって、
前記塩素消毒方法は、
0.4~1.2mg/lの間で設定された前記投入点(IP)における遊離塩素の濃度のレジメン設定点(SET1)を定めるステップbと、
前記投入点(IP)に配置された少なくとも第1の検出プローブ(4)によって、前記投入点(IP)又は前記投入点(IP)の近傍の遊離塩素の前記濃度を測定するステップcと、
前記投入点(IP)から前記分配ネットワークの最遠位点(FP)までの遊離塩素の前記濃度を、前記最遠位点(FP)に配置された少なくとも第2の検出プローブ(40)によって連続的に測定するステップdとを備えており、
前記塩素消毒方法はさらに、投入の前記ステップaがレジメン塩素消毒のサブ・ステップa1を備えており、
レジメン塩素消毒の前記サブ・ステップa1では、前記分配ネットワーク内の前記投入点(IP)における遊離塩素の前記濃度を前記レジメン設定点(SET1)に保つように、前記分配ネットワーク内の前記塩素化合物の投入が行われ、
前記第2の検出プローブ(40)が、前記最遠位点(FP)における、前記レジメン設定点(SET1)に対する遊離塩素の前記濃度の変動を検出しないとき、
若しくは前記第2の検出プローブ(40)が、塩素消毒の基準に基づいて予め定められた安全制限(diff1)よりも低い実体、及び/又は塩素消毒の基準に基づいて予め定められた安全制限時間(Δt1)よりも短い持続時間を有する、前記レジメン設定点(SET1)に対する濃度の変動を検出するとき、
レジメン塩素消毒の前記サブ・ステップa1が行われ、
前記レジメン設定点(SET1)に対する前記最遠位点(FP)における遊離塩素の前記濃度の低下は、前記分配ネットワーク内に生物学的物質があることに直接起因し、また前記レジメン設定点(SET1)に関する塩素消毒のレベルが前記投入点(IP)において一時的に上昇する作用のトリガ条件として使用することに適する、塩素消毒方法。
【請求項2】
前記投入点(IP)における遊離塩素の前記濃度の前記レジメン設定点(SET1)は0.4~1.0mg/lの間で設定されている、請求項1に記載の塩素消毒方法。
【請求項3】
前記投入点(IP)における遊離塩素の前記濃度の前記レジメン設定点(SET1)は0.4~0.8mg/lの間で設定されている、請求項1に記載の塩素消毒方法。
【請求項4】
前記最遠位点(FP)における前記濃度の値の変動の予め定められた前記安全制限(diff1)は0.2mg/lより高くならない、請求項1~3のいずれかに記載の塩素消毒方法。
【請求項5】
前記最遠位点(FP)における前記濃度の値の変動の予め定められた前記安全制限(diff1)は
0.1mg/lに等しい、請求項1~3のいずれかに記載の塩素消毒方法。
【請求項6】
前記最遠位点(FP)における前記濃度の値の変動の予め定められた前記安全制限時間(Δt1)は30分~2時間の間で設定された範囲から選ばれる、請求項1~5のいずれかに記載の塩素消毒方法。
【請求項7】
前記最遠位点(FP)における前記濃度の値の変動の予め定められた前記安全制限時間(Δt1)は30分~1時間の間で設定された範囲から選ばれる、請求項1~5のいずれかに記載の塩素消毒方法。
【請求項8】
投入の前記ステップaは、前記飲料水生産及び分配システムの連続的な稼働時間よりも短期間で行われて、且つ前記分配ネットワーク内の前記投入点(IP)における遊離塩素の前記濃度が前記サブ・ステップa1のときの遊離塩素の前記濃度よりも高くなる短期高塩素消毒のサブ・ステップa2を備え、
前記サブ・ステップa2では、前記投入点(IP)における分配ネットワーク内の遊離塩素の前記濃度を、1.2mg/lより高い遊離塩素の濃度に対応する予め定められた高塩素消毒設定点(SET2)へ一時的に上昇させるように、前記分配ネットワーク内の前記塩素化合物の投入が行われ、
前記第2の検出プローブ(40)が、予め定められた前記安全制限(diff1)よりも高い実体、及び/又は予め定められた前記安全制限時間(Δt1)よりも長い持続時間を有する、前記レジメン設定点(SET1)に対する前記最遠位点(FP)における遊離塩素の濃度の変動を検出するとき、短期高塩素消毒の前記サブ・ステップa2が行われる、請求項1~7のいずれかに記載の塩素消毒方法。
【請求項9】
前記高塩素消毒設定点(SET2)は5.0mg/lを超えない遊離塩素の濃度の値で設定されている、請求項8に記載の塩素消毒方法。
【請求項10】
前記高塩素消毒設定点(SET2)は2.0~3.0mg/lの間で設定されている遊離塩素の濃度の値で設定されている、請求項8に記載の塩素消毒方法。
【請求項11】
前記高塩素消毒設定点(SET2)は2.5mg/lに等しい遊離塩素の濃度の値で設定されている、請求項8に記載の塩素消毒方法。
【請求項12】
短期高塩素消毒の前記サブ・ステップa2は、前記飲料水生産及び分配システムの連続的な稼働時間よりも短く、且つ前記分配ネットワーク内の前記投入点(IP)における遊離塩素の前記濃度が前記サブ・ステップa1のときの遊離塩素の前記濃度よりも高くなる予め定められた短期高塩素消毒期間(Δt2)で継続する、請求項8~11のいずれかに記載の塩素消毒方法。
【請求項13】
前記短期高塩素消毒期間(Δt2)は前記分配ネットワークの拡張に応じて設定されている、請求項12に記載の塩素消毒方法。
【請求項14】
前記短期高塩素消毒期間(Δt2)は2~12時間の間で設定された範囲から選ばれた持続時間を有する、請求項12又は13に記載の塩素消毒方法。
【請求項15】
前記短期高塩素消毒期間(Δt2)は2~6時間の間で設定された範囲から選ばれた持続時間を有する、請求項12又は13に記載の塩素消毒方法。
【請求項16】
短期高塩素消毒の前記サブ・ステップa2の終了時、塩素消毒方法は遊離塩素の前記濃度の安定化のステップeを備え、
前記ステップeでは、前記投入点(IP)における遊離塩素の前記濃度は、前記高塩素消毒設定点(SET2)から減少され、前記レジメン設定点(SET1)に達し、
安定化の前記ステップeの終了時、前記最遠位点(FP)において、前記レジメン設定点(SET1)に実質的に対応する遊離塩素の濃度が検出されるか否かに応じて、レジメン塩素消毒の前記サブ・ステップa1又は短期高塩素消毒の前記サブ・ステップa2は再度繰り返される、請求項8~15のいずれかに記載の塩素消毒方法。
【請求項17】
安定化の前記ステップeでは、前記塩素化合物の投入が停止し、
前記レジメン設定点(SET1)への到達を早めるために、還元物質が、遊離塩素を中和するように投入され、
又はいかなる介入もなしに前記レジメン設定点(SET1)に達するまで、遊離塩素の前記濃度が下がる、請求項16に記載の塩素消毒方法。
【請求項18】
塩素消毒方法が電子制御ユニット(50)によって自動的に行われることを特徴とする、請求項1~17のいずれかに記載の塩素消毒方法。
【請求項19】
飲料水生産及び分配システムを有する船舶であって、
再循環の分配ネットワークと、
遊離塩素を水中で生じ得る少なくとも1つの塩素化合物を予め定められた投入点(IP)で前記分配ネットワーク内に投入するための装置と、
前記投入点(IP)又は前記投入点(IP)の近傍の前記分配ネットワーク内の遊離塩素の少なくとも第1の検出プローブ(4)とを備え、
塩素の前記投入点(IP)から最遠位点(FP)までの、前記分配ネットワーク内の循環経路における遊離塩素の連続的な検出のための少なくとも第2のプローブ(40)、
及び塩素の前記投入点(IP)から前記最遠位点(FP)までの、前記第2のプローブ(40)によって検出された遊離塩素の濃度の値に基づいて、前記投入点(IP)における遊離塩素の濃度を変動させるために投入装置に作用するようにプログラムされた電子制御ユニット(50)を備えることを特徴とし、
前記第2のプローブ(40)が、レジメン設定点(SET1)に対する前記最遠位点(FP)における遊離塩素の前記濃度の変動を検出しないとき、
若しくは前記第2のプローブ(40)が、塩素消毒の基準に基づいて予め定められた安全制限(diff1)よりも低い実体、及び/又は塩素消毒の基準に基づいて予め定められた安全制限時間(Δt1)よりも短い持続時間を有する、前記レジメン設定点(SET1)に対する前記濃度の変動を検出するとき、
前記電子制御ユニット(50)が、前記分配ネットワーク内の前記投入点(IP)における遊離塩素の前記濃度を0.4~1.2mg/lの間で設定された遊離塩素の前記レジメン設定点(SET1)に保つために、前記投入装置を調整するようにプログラムされている、船舶。
【請求項20】
前記第2のプローブ(40)が、前記レジメン設定点(SET1)に対する前記最遠位点(FP)における遊離塩素の濃度の変動を検出するとき、
前記電子制御ユニット(50)が、前記分配ネットワーク内の前記投入点(IP)における遊離塩素の前記濃度を1.2mg/lより高い遊離塩素の濃度に対応する予め定められた高塩素消毒設定点(SET2)へ一時的に上昇させるために、前記投入装置を調整するようにプログラムされている、請求項19に記載の船舶。
【請求項21】
前記レジメン設定点(SET1)に対する前記最遠位点(FP)における遊離塩素の濃度の変動が、予め定められた前記安全制限(diff1)よりも高い実体、及び/又は予め定められた前記安全制限時間(Δt1)よりも長い持続時間を有するとき、
前記電子制御ユニット(50)が、前記分配ネットワーク内の前記投入点(IP)における遊離塩素の前記濃度を1.2mg/lより高い遊離塩素の濃度に対応する予め定められた高塩素消毒設定点(SET2)へ一時的に上昇させるために、前記投入装置を調整するようにプログラムされている、請求項19に記載の船舶。
【請求項22】
前記投入点(IP)における遊離塩素の前記濃度の前記レジメン設定点(SET1)は0.4~1mg/lの間である、請求項19~21のいずれかに記載の船舶。
【請求項23】
前記投入点(IP)における遊離塩素の前記濃度の前記レジメン設定点(SET1)は0.4~0.8mg/lの間である、請求項19~21のいずれかに記載の船舶。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶、特に旅客船、さらに具体的にはクルーズ船の飲料水の塩素消毒方法に関する。
【0002】
また、本発明は、船舶、特に旅客船上の飲料水生産及び分配システムに関する。
【背景技術】
【0003】
船舶、特に旅客船上の飲料水生産及び分配システムは、複数のサブ・システムに分割された複雑なシステムであり、生産装置、浄水装置及び濾過装置を備える。
【0004】
船舶、特に旅客船上の飲料水生産及び分配システムは、一般的に、蒸発性蒸留器のシステム、及び/又は逆浸透性蒸留器のシステム、及び/又はバンカーリング・システムによって供給されている。飲料水生産及び分配システムの性能は、貨物船の30t/日から、100000GRT(登録総トン数)の旅客船の500t/日まで様々である。生産された飲料水は異なるサービスに使用され、このサービスのために、非常に広大な分配ネットワークを形成しながら様々な流路に向けてパイプで送られる。これらのサービスは、食品への使用、入浴施設、洗濯、レクリエーション(水泳プール)、ケータリング及びホテル・サービスである。
【0005】
図1の簡略な線図に示すように、一般的に、旅客船の飲料水生産及び分配システムは、
二重底及び汚染領域から構造的に分離した複数の貯水タンク1と、
塩素消毒及び濾過機器5と、
引抜/ブースト/再循環ポンプ3,14と、
加熱器及び冷却器7,16,17と、
制御弁/逆止弁2,6,13,15と、
制御室30と、
主要な分配流路を形成し、船舶のデッキで分配ループを構成する、一般的にステンレス鋼から形成されたメイン・マニホールドと、
メイン・マニホールドから客室にいる旅客の利用者、またレストラン及びパブリック・エリアの利用者に水を分配する、樹脂又は鉄から形成されたセカンダリ・マニホールドとを備える。
【0006】
分配ネットワーク内の水温に応じて、2つの流路は、低温飲料水流路(符号1~13)及び高温飲料水流路(符号14~21)に分けられる。
【0007】
符号1~9は、飲料水貯蔵タンクから、旅客に供給を行うデッキP1のループ、及びレストランとパブリック・エリアのサービスの利用者に供給を行うデッキP2のループに水を運ぶメイン・マニホールドによって設けられるネットワークのブランチを示す。符号10~12は、デッキから流れる低温飲料水の再循環マニホールドを示す。符号13,18,19は高温飲料水の供給マニホールドを示す。符号20及び21は、デッキから流れる高温飲料水の再循環マニホールドを示す。
【0008】
塩素消毒機器、及び分配ネットワーク内の塩素の濃度の検出点は飲料水のために特に重要である。
【0009】
一般的に、塩素濃度の検出点は2箇所である。第1の検出点は、塩素消毒装置の近傍に位置し、投入点(IP)と呼ばれる。投入点における検出が、遊離塩素の濃度の検出プローブ4を使用して行われる。第2の検出点は、投入点から最も離れたネットワークのブランチに位置し、遠位点(FP)と呼ばれる。この第2の点は遊離塩素の濃度の測定のための水採取穴12で構成されている。
【0010】
船舶、特に旅客船では、飲料水の広大なネットワークは微生物がいないように保たれていることを保証することが必要である。この微生物は、微生物の発展に特に有利な環境に遭遇するとき、人間に危険なだけでなく、除去することが難しいコロニを形成する。これらの微生物は、酵母菌、黴、バクテリア、又は病原菌で構成されている。
【0011】
ネットワークの無菌性を保証するために、国際規則は、必ずではないが、一般的には塩素ベースの消毒薬製品の使用を規定している。塩素の有効比率、すなわち遊離残留塩素は、上述のプローブ4を使用して投入点において連続して測定されている。この遊離残留塩素は遊離塩素Cl2として存在する、若しくは次亜塩素酸HOClの2種類の状態に溶解されている、及び/又は次亜塩素酸塩OCl-としてイオンの状態に切り離されている。遠位点における濃度は、専用の穴12から試料を得ることで毎日確認されている。
【0012】
微生物がいないようにネットワークを保つために必要な塩素濃度の値のメンテナンスは投入装置によって行われる。この投入装置は、ネットワーク内の水の需要量を変動させることで定まる生理学的な流量の変動に応じて投入を調節することで、投入点における塩素濃度の値を予め定められた値(設定点)に調整する。この構想は
図2に示されている。
図2では、振動幅(±DIF)を下回るときに塩素の投入、又は振動幅(±DIF)を上回るときに中和剤の投入を行うことで、投入点における遊離塩素濃度の値は振動幅(±DIF)で変動することが具体的に示され得る。
【0013】
次亜塩素酸ナトリウムは液体であり、また透明な抗菌性化合物である。この次亜塩素酸ナトリウムは、非常に希薄な場合、分配システムとタンクと設備の消毒、及び利用者に分配されるときの浄水の両方のために、飲料水システムに使用されている。業務用に塩素化された次亜塩素酸ナトリウムの溶液は、容量に対して12~14%の割合を有し、活性塩素の重量に対して約10%に等しい。(一般的な漂白剤は5%を備える。)
【0014】
都市の分配ネットワークに適用される欧州規格805「給水システムの要件」は、水分配システムのための化学的消毒法において、次亜塩素酸ナトリウムを最大濃度が50mg/lとなるように含む。軽便性の制限の濃度をはるかに超えた、そのような高濃度の使用は、パイプライン及び分配ネットワーク部品のショック消毒を行うために、厳しい監視下で制限時間内に起こり得る。一般的な条件下では、消毒された設備から離れた飲料水は、最大で0.2mg/l(ppm)の残留塩素濃度を有する。
【0015】
海軍においては、高い人口密度とされる特にクルーズ船で、都市ネットワークで許容される遊離塩素のレベルよりも平均で高い、分配ネットワーク内の遊離塩素のレベルを与える規制を適用することで微生物の増殖力を制御するように、より厳しい基準が利用されている。
【0016】
海軍部門の浄水に関して、船舶における導水に対する国際基準として大凡扱われる、USPHS(米国公衆衛生局)の連邦規制が現在では広範に適用されている。
【0017】
遊離塩素の濃度の値が2mg/lよりも高い飲料水貯蔵タンクの例外として、USPHSの衛生規制は、残りの分配ネットワークでは、遠位点で、少なくとも0.2mg/l又はppmの最小濃度が保証されること、及びこのレベルに達するために、投入点において検出可能な最大で5ppmの濃度が許容されることを要求する。USPHSの米国衛生規制は、飲料水貯蔵タンクに詰め込まれた水が2.0~5.0ppmの間の塩素濃度で消毒されることを規定している。より具体的には、そのような規制は、タンク内の貯蔵の開始から30分以内に遊離塩素濃度が少なくとも2ppmまで上昇することをもたらす。
【0018】
一般的に、浄水のため、(業務用の希釈を考慮する)投入点における次亜塩素酸ナトリウムの濃度は約2mg/l(2ppm)に設定されている。溶液が細菌負荷を減少させながら、活性な塩素の滴定量を自然に減少させていること、そのため濃度の値がネットワーク内のいかなる点でもこの閾値より低くならないことを保証するために、0.2mg/lの閾値よりも高い濃度が使用されなければならないことが考慮されている。
【0019】
設定点における要因となる値の選択が、流路応答の直接の観測に基づいて、但し、とりわけ、投入点(IP)と遠位点(FP)との間の分配ネットワーク内の遊離塩素の濃度の低下に関する経験的判断に基づいて、規制によって与えられる広い範囲内で大抵行われている。
図5のグラフは、投入点IPと遠位点FPとの間の距離及び(投入点IPにおける)初期濃度に基づく遊離塩素濃度低下の傾向を示す。
【0020】
投入点IPにおいて保たれる塩素濃度の値に関する設定は、例えば要求された安全マージンを保証しなければならない。そのため、常に起こる濃度の低下を考慮することで、塩素濃度の値は、最遠位点FPにおいて、0.2ppmの濃度で設定された最小値を下回らない。チーフ・エンジニア、ホテル・マネージャ、又は船舶会社自体の判断によって示される主観的要素が関与し、経験的観測に基づいて得られることは安全マージンに関する。これにより、濃度のレベルはそのようなマージンを保証し得る。
【0021】
設定点の値の入力、及び流路応答に係る設定点の値の変動は、塩素消毒設備で直接作業する船舶上のクルーによって手動で常に行われ、有機材料による流路の汚染があるとき、塩素濃度のより大きな低下の原因となる。一般的に、船舶上の手順は、クルーのメンバが遠位点FPにおける水の試料を毎日得て、測色測定法を用いて、遊離塩素濃度のレベルを推定することを規定する。
【0022】
最小値の0.2ppmを下回ることに対する政府制御機関によって科される罰金が非常に高いため、マージンは十分とみなされない。このため、職員の作業に対して、作業計画の濃度は、保証される最小値である0.2ppmよりも高い大きさの次数に上がることで、2.0ppm周りの濃度の値に達する。このレベルのメンテナンスは、塩素濃度の非常に高い量の導入を要求する。
【0023】
別の規制上の要件を満たす必要がある水泳プールの塩素消毒は除外して、浄水システムは、投入点と遠位点との間の塩素濃度低下のレベルのフィード・バックに基づく制御システムによって自動的に管理されていない。現在まで、船舶上の塩素消毒システムは、遠位点(FP)におけるプローブによって検出される濃度の値に基づいて調整されず、従って、連続した測定を行っていない。つまり、ネットワーク内の飲料水に対する需要量の極端な変動は、塩素消毒設備と遠位点FPとの間の流量に連続した異なる時間をもたらし、事実上、遠位点FPにおいて検出される遊離塩素濃度の値のフィード・バック調整のロジックによる塩素投入の使用を妨げる。
【0024】
従来技術では、旅客船の飲料水システムの制御システムは、投入点に位置するプローブから受信データを得るだけで、施設を作動させるとき、遠位点の値を考慮しない。投入点における1.5ppm÷2.0ppmのレベルを十分に保つように、(投入点における)次亜塩素酸ナトリウムの投入だけが行われる。
【0025】
連続作動において、そのような高濃度における塩素の使用は、分配ネットワークに大きな悪影響がある。これらの濃度の値は、中長期的に、流路の構造に使用される多くの材料に不適切であり、広範な腐食現象の要因となる。水の供給管の腐食、及び結果として生じる貫通は、浸水被害、及び客室と機器室とパブリック・エリアの飲料水供給の途絶、またサービスを回復する作業コストの原因となる。
【0026】
従って、製品の消耗によって生じるシステマティック・コストを除いて、高濃度における塩素の使用は、分配ネットワークへの被害によって生じる著しい経済コストをもたらす。
【0027】
そのため、関連規制に完全に従って、船舶上の浄水の範囲で、船舶上の飲料水分配ネットワーク内の腐食現象の発生をなくす、又は少なくとも減少させる必要がある。これは上記ネットワークの無菌性を保証する。
【発明の概要】
【0028】
そのため、本発明の目的は、船舶、特に旅客船の飲料水の塩素消毒方法を提供することで、上述の従来技術の不利な点をなくす、又は軽減することである。この塩素消毒の方法は、ネットワーク自体の無菌性を保証し続けながら、分配ネットワーク内の腐食現象の発生をなくす、又は少なくとも減少させることができる。
【0029】
本発明のさらなる目的は、船舶、特に旅客船の飲料水の塩素消毒方法を提供することである。この塩素消毒の方法は、完全に自動化された方法で行う、及び管理することが容易である。
【0030】
本発明のさらなる目的は、船舶、特に旅客船の飲料水の塩素消毒方法を提供することである。この塩素消毒の方法は、複雑な自動制御システムを必要とせずに行われ得る。
【0031】
本発明のさらなる目的は、船舶上の飲料水の生産及び分配のためのシステムを提供することである。このシステムは、分配ネットワーク内の腐食現象の発生を減少させるロジックにより、同様に分配ネットワークの無菌状態を保つ水の塩素消毒の自動制御を可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0032】
本発明の技術的特徴は、上述の目的に応じて、以下の請求項の内容から明確に示され得る。そのため、利点は、添付の図面を参照し、非限定的な例として1つ以上の実施形態を示す以下の詳細な記載ですぐに明確になる。
【0033】
【
図1】
図1は、従来技術に係る旅客船の浄水システムの簡略化された機能体系を示す。
【0034】
【
図2】
図2は、
図1の浄水システムの制御のブロック図を示す。
【0035】
【
図3】
図3は、本発明に係る塩素消毒方法を行うように構築された旅客船の浄水システムの簡略化された機能体系を示す。
【0036】
【
図4】
図4は、本発明による飲料水の塩素消毒方法に係る、
図3の浄水システムの制御のブロック図を示す。
【0037】
【
図5】
図5は、作動状態において、従来技術により管理されている船舶の浄水システムの遠位点において検出される遊離塩素の濃度と比べた、投入点IPと遠位点FPとの間の距離に基づく遊離塩素の濃度の傾向のグラフを示す。
【0038】
【
図6】
図6は、作動状態下における、本発明の塩素消毒方法により管理されている船舶の浄水システムの遠位点において検出される遊離塩素の濃度と比べた、投入点IPと遠位点FPとの間の距離に基づく遊離塩素の濃度の傾向のグラフを示す。
【0039】
【
図7】
図7は、作動状態下における、従来技術により管理されている船舶の浄水システムの投入点IP及び遠位点FPにおける遊離塩素の濃度の時間的傾向のグラフを示す。
【0040】
【
図8】
図8は、作動状態下における、本発明の塩素消毒方法により管理されている船舶の浄水システムの投入点IP及び遠位点FPにおける遊離塩素の濃度の時間的傾向のグラフを示す。
【0041】
【
図9】
図9は、汚染のリスクを検出したことへのシステム応答に対応する一時的な状況で、本発明の塩素消毒方法により管理されている船舶の浄水システムの投入点IP及び遠位点FPにおける遊離塩素の濃度の時間的傾向のグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は、船舶、特に旅客船、さらに具体的にはクルーズ船の飲料水の塩素消毒方法に関する。
【0043】
図3に示すように、本発明に係る塩素消毒方法が、飲料水生産及び分配システムを備える船舶及び具体的には旅客船で行われる。
【0044】
この飲料水生産及び分配システムは再循環分配ネットワークを備える。
【0045】
また、この飲料水生産及び分配システムは、遊離塩素を水中で生じ得る少なくとも1つの塩素化合物を予め定められた投入点IPで分配ネットワークに投入するための装置を備える。
【0046】
「水中で活発な遊離塩素を生じ得る塩素化合物」は、具体的には、次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)、二酸化塩素(ClO2)、又は直接的に塩素ガス(Cl2)という化合物を示す。
【0047】
「遊離塩素」は、上述の化合物の水中における反応の生成物、すなわち遊離塩素(Cl2)、次亜塩素酸(HOCl)、及び次亜塩素酸イオン(OClー)を一般的に示す。
【0048】
本発明の一般的な実施形態によれば、先行技術の解決手段として、飲料水の塩素消毒方法は塩素消毒のステップaを備える。ステップaでは、少なくとも1つの上記塩素化合物が、遊離塩素を循環経路に放出することで分配ネットワークを無菌に保つように予め定められた投入点IPで循環経路に投入される。
【0049】
既に示したように、分配ネットワークは循環ネットワークである。これは、流路のさらに離れた端部における飲料水の停滞による遊離塩素の滴定量の自然な減少を防ぐことができる。
【0050】
図3に示すように、飲料水生産及び分配システムは、具体的には、再循環分配ネットワークに逆止弁2によって流体的に接続された飲料水貯蔵タンク1を備える。従って、再循環分配ネットワークは、飲料水貯蔵タンク1から得られる飲料水を供給されている。
【0051】
本発明の重要な第1の態様によれば、塩素消毒方法は以下の作動ステップを備える。
【0052】
[ステップb]
0.4~1.2mg/lの間で設定された投入点IPにおける遊離塩素の濃度のレジメン設定点SET1が定まる。
【0053】
[ステップc]
投入点IP又は投入点IPの近傍の遊離塩素の濃度が、投入点IPに配置された少なくとも第1の検出プローブ4によって測定される。
【0054】
[ステップd]
投入点IPから分配ネットワークの最遠位点又は遠位点FPまでの遊離塩素の濃度が、最遠位点又は遠位点FPに配置された少なくとも第2の検出プローブ40によって連続的に測定される。
【0055】
現在の塩素消毒方法と異なり、本発明に係る塩素消毒方法は、投入点IPだけでなく遠位点FPでも、遊離塩素の濃度の連続した測定に基づく。
【0056】
後述されることを見込んで、本発明に係る塩素消毒方法は、遠位点FPにおいて検出される遊離塩素の濃度に応じた投入点における遊離塩素の濃度の調整を備える。すなわち、この調整はフィード・バック調整である。
【0057】
本発明の重要な別の態様によれば、投入のステップaはレジメン塩素消毒のサブ・ステップa1を備える。レジメン塩素消毒のサブ・ステップa1では、分配ネットワーク内の投入点IPにおける遊離塩素濃度を上記レジメン設定点SET1に保つように、分配ネットワーク内の塩素化合物の投入が行われる。
【0058】
本発明によれば、以下の場合、レジメン塩素消毒の上記サブ・ステップa1が行われる。
【0059】
第2のプローブ40(すなわち遠位点FPの検出プローブ)が、レジメン設定点SET1に対する最遠位点又は遠位点FPにおける遊離塩素濃度の変動を検出しない。
【0060】
若しくは、第2のプローブ40が、予め定められた安全制限Diff1よりも低い実体、及び/又は予め定められた安全制限時間Δt1よりも短い持続時間を有する、上記レジメン設定点SET1に対する濃度変動を検出する。
【0061】
すなわち、本発明に係る塩素消毒方法は、従来技術によって想定される塩素のレベルよりもかなり低い、投入点における塩素のレベル(遊離塩素の濃度)を長期に渡って安定して保つことを想定する。また、このとき、塩素消毒の実質的に同じレベル(遊離塩素の濃度)は、すなわち変動を有さず、若しくは変動の実体、及び/又は上記変動の持続時間に関して予め定められた安全値内に収まる過渡変動を有して、遠位点FPにおいて検出される。
【0062】
つまり、本発明に係る塩素消毒方法は、(病原菌を含む)微生物のコロニをなくすために必要な遊離塩素に対する暴露時間と、ステンレス鋼の保護層に対して、又は必然的に腐食のトリガをもたらす、船舶の飲料水分配ネットワークの部品を一般的に形成する材料に対して、被害を生じるために必要な暴露時間との間に著しい差がある観測に基づく。
【0063】
0.4~1.2mg/lの間で設定されている塩素消毒のレベルは、遊離塩素の重要な化学反応を流路の材料で起こすことなく、水分配ネットワーク全体の無菌性を保証するのに十分である。
【0064】
この現象は、(クルーズ船上で実際に取られた一連の記録から得られた)
図6のグラフを
図5のグラフと比較することで評価され得る。
図5のグラフ(従来技術による塩素消毒)では、1.37mg/lの遊離塩素の濃度を投入点において有するように塩素消毒することで、ネットワークに沿って汚染がなくなる一方で(遠位点では、濃度が約0.64mg/lで安定している。)、1.37mg/lから0.64mg/lまでの遊離塩素の消費があることが示され得る。多種多様に、
図6のグラフ(本発明による塩素消毒)では、(ネットワークに沿って汚染がない同じ条件下で、遠位点では、濃度が約0.60mg/lで安定している。)遊離塩素の消費は大凡ないことが示され得る。つまり、濃度は、投入点における0.61mg/lから遠位点における0.58mg/lまで変動する。そのため、投入点と遠位点との間の遊離塩素の消費は、分配ネットワークの(鉄又は樹脂の)部品と塩素の反応に起因する。
【0065】
類似の考察が、
図7のグラフと
図8のグラフを比較することで得られてもよい。
図7のグラフと
図8のグラフは、(汚染のない)レジメン状態下で、従来技術により管理されている船舶の浄水システム、及び本発明に係る塩素消毒方法により管理されている船舶の浄水システム内の投入点IP及び遠位点FPそれぞれの遊離塩素の濃度の時間的傾向を示す。
【0066】
0.4~1.2mg/lの間で設定されている遊離塩素の濃度では、遊離塩素は生物学的物質とのあらゆる化学反応性を保つ。従って、これは分配ネットワークの無菌性を保証する。分配ネットワーク内に生物学的物質がないとき(すなわち、生物学的汚染がないとき)、短期的及び中期的に濃度を低下させる寄与を無視できるようにするために、流路材料(ステンレス鋼、金属、樹脂)との反応による遊離塩素の消費は(最小の0.4mg/lに近い濃度の値で)全くない、又は(最大の1.2mg/lに近い濃度で)著しく低下していくため、遊離塩素の濃度は、そのような塩素消毒のレベルで長期に渡って安定し続ける。
【0067】
このため、(投入点IPから遠位点FPまでの濃度減少によって検出可能な)遊離塩素の消費の検出は、流路内の一部の位置で生物学的物質の存在を示す。従って、分配ネットワーク内の水の循環を安全にするために、この作動状況は、塩素消毒レベルの一時的な増加のためのトリガ条件として制御に関して利用され得る。
【0068】
既に示したように、分配ネットワークは再循環ネットワークである。これは、流路のさらに離れた端部における飲料水の停滞による遊離塩素の滴定量の自然な減少を防ぐことができる。
【0069】
さらに、再循環分配ネットワークは、飲料水貯蔵タンクから得られる飲料水が供給されている。貯蔵タンクに貯められた飲料水は、いかなる微生物負荷もないようにする遊離塩素濃度を有する。上述したように、USPHSの米国衛生規制は、貯蔵タンクに詰め込まれた水が2.0~5.0ppmの間の塩素濃度で消毒されることを規定している。具体的に、そのような規制は、タンク内の貯蔵の開始から30分以内に遊離塩素濃度が少なくとも2ppmまで上昇することをもたらす。実質的に、微生物負荷は、そのような酸化能力に抵抗できない。結果として、微生物負荷(生物学的物質)を有さず、貯蔵タンクから引かれて、循環経路に配置された水は、生物学的物質の有機炭素への直接の作用によって塩素を消費できない。
【0070】
従って、本発明により、ネットワーク自体の無菌性を保証し続けながら、分配ネットワーク内の腐食現象の発生をなくす、又は少なくとも著しく減少させることができる。
【0071】
本発明に係る塩素消毒方法は電子制御ユニット50によって自動的に有利に行われ得る。以下の説明で明らかになるように、本発明により、完全自動塩素消毒制御システムを実装することができる。完全自動塩素消毒制御システムは、遊離塩素循環の低下及び遊離塩素循環を保つために必要なレベルについての主観的評価からクルーを効果的に解放する。
【0072】
投入点IPにおける遊離塩素の濃度の上記レジメン設定点SET1は、最小値が0.2mg/lではなく、0.4mg/lである範囲から選ばれる。一方、理論的には、遊離塩素の濃度が0.2mg/lであるとしても、無菌性は保証され得る。規制によって課されている0.2mg/lの制限に関して、0.2mg/lの代わりに0.4mg/lを最小作動値に選ぶことは、システムを制御可能にすること、及び生物学的物質によって汚染されるときに安全マージンをシステムに与えることに対して実用的である。実際には、(これに反して、)レジメン設定点が0.2mg/lに設定されるとした場合、安全マージンはなく、第2のプローブ40が投入点IPと遠位点FPとの間における濃度の低下を(最小であったとしても)検出する度に、レジメン塩素消毒のサブ・ステップa1は毎回中断される必要がある。これは、極小さな変動に対して、塩素消毒のレベルを上げることをシステムに強いる。設定点が0.2mg/lに設定される場合、分配ネットワークの腐食現象はなくなる。一方、上記ネットワークの無菌性を保証することはできない。さらに、システムの制御は、極めて難しく、利点を取り消すように作動時の変動を生じる。
【0073】
上述のように、遊離塩素の濃度は0.4~1.2mg/lの間で設定されている。この場合、流路材料(ステンレス鋼、金属、樹脂)との反応による遊離塩素の消費は全くない、又は範囲内の低い部分の濃度の値(すなわち最小の0.4mg/lに近い濃度の値)で非常に低く、さらに範囲内の高い部分の濃度の値(すなわち最大の1.2mg/lに近い濃度の値)で極めて著しく低下していく。
【0074】
好ましくは、腐食を減少させることに関して発明から利点を得るために、投入点IPにおける遊離塩素の濃度の上記レジメン設定点SET1は、1.2mg/lの上限から可能な限り離れた範囲から選ばれる。好ましくは、上記レジメン設定点SET1は、0.4~1mg/lの間の範囲で、さらに好ましくは0.4~0.8mg/lの間の範囲から選ばれる。レジメン設定点SET1の最も好ましい値は約0.6mg/lである。
【0075】
好ましい濃度の範囲から選ばれたレジメン設定点SET1は、腐食現象が実質的にない、又はいかなる場合でも極めて大きく減少することと、同時に優れた安全マージンと、生物由来の汚染があるときの介入の可能性とを保証する。
【0076】
上述のように、以下の場合、レジメン塩素消毒(すなわち、塩素消毒を「低い」レベル、すなわち0.4~1.2mg/lの間に保つこと)のサブ・ステップa1が行われる。
【0077】
[条件A]
第2のプローブ40(すなわち遠位点FPの検出プローブ)が、レジメン設定点SET1に対する遠位点FPにおける遊離塩素濃度の変動を検出しない。
【0078】
[条件B]
若しくは、第2のプローブ40が、予め定められた安全制限Diff1よりも低い実体、及び/又は予め定められた安全制限時間Δt1よりも短い持続時間を有する、上記レジメン設定点SET1に対する濃度変動を検出する。
【0079】
作動条件Bは、誤認警報に可能な限り介入されないシステムを形成するように有利に想定されている。この誤認警報は、例えば分配ネットワークのレジメン流量の変動に関連する、又は例えば利用者による飲料水の需要量の変動による分配ネットワークに沿った遊離塩素の濃度の生理学的振動からの濃度の過渡変動によって生じる。
【0080】
好ましくは、作動条件Bは、予め定められた安全制限Diff1よりも低い実体、及び/又は予め定められた安全制限時間Δt1よりも短い持続時間を有する、上記レジメン設定点SET1に対する濃度変動の検出として設定される。
【0081】
具体的には、変動の実体が上記安全制限Diff1よりも高い、又は変動の持続時間が上記安全制限時間Δt1よりも長いとき、作動条件Bは無効になる。
【0082】
別の条件として、上記安全制限時間Δt1に等しい、又は上記安全制限時間Δt1より長い持続時間を有する間隔で、上記安全制限Diff1に等しい、又は上記安全制限Diff1より高い実体を有する変動があるとき、作動条件Bが無効になることが想定され得る。
【0083】
好ましくは、最遠位点又は遠位点FPにおける濃度の変動の上記安全制限Diff1は0.2mg/lを超えない。さらに好ましくは、上記安全制限Diff1は約0.1mg/lである。
【0084】
好ましくは、最遠位点又は遠位点FPにおける濃度の持続時間の上記安全制限時間Δt1は、30分~2時間の間で設定された範囲から選ばれる。さらに好ましくは、上記安全制限時間Δt1は、30分~1時間の間で設定された範囲から選ばれる。
【0085】
好ましくは、レジメン設定点が0.4~1.2mg/lの一般的な範囲内からより高く選ばれるほど、安全制限時間Δt1はより長く選ばれる。また、介入の安全マージンはより広く有効になる。
【0086】
本発明の好ましい実施形態によれば、投入のステップaは短期高塩素消毒のサブ・ステップa2を備える。このサブ・ステップa2では、投入点IPにおける分配ネットワーク内の遊離塩素の濃度を、1.2mg/lより高い遊離塩素の濃度に対応する予め定められた高塩素消毒設定点SET2へ一時的に上昇させるように、分配ネットワーク内の塩素化合物の投入が行われる。
【0087】
一般的に、第2の検出プローブ40が、予め定められた上記安全制限Diff1よりも高い実体、及び/又は予め定められた上記安全制限時間Δt1よりも長い持続時間を有する、レジメン設定点SET1に対する最遠位点FPにおける遊離塩素の濃度の変動を検出するとき、短期高塩素消毒のサブ・ステップa2が行われ得る。
【0088】
上記安全制限Diff1よりも高い実体、及び/又は予め定められた上記安全制限時間Δt1よりも長い持続時間を有する、遠位点における濃度の変動の検出を高塩素消毒のサブ・ステップa2の開始の条件とすることは、例えば分配ネットワークのレジメン流量の変動に関連する濃度の過渡変動によって、又は例えば利用者による飲料水の需要量の変動による分配ネットワークに沿った遊離塩素の濃度の生理学的振動によって生じる誤認警報に可能な限り介入されないシステムを形成し得る。
【0089】
飲料水生産及び分配システムが稼働できるように、1.2mg/l(高塩素消毒)を超える値への遊離塩素の濃度の一時的な上昇は、分配ネットワーク内にあるすべての生物学的物質を破壊することを目的としている。また、この生物学的物質を破壊することは、レジメン塩素消毒のサブ・ステップa1の間、分配ネットワークに沿った遊離塩素の濃度の低下を定め得る。
【0090】
また、高塩素消毒設定点SET2の値は高塩素消毒の持続時間、すなわち実施される高塩素消毒の介入の強さに基づいて有利に調整され得る。
【0091】
好ましくは、高塩素消毒設定点SET2は、5.0mg/lを超えない遊離塩素の濃度の値で設定されている。
【0092】
完全に好ましい実施形態によれば、高塩素消毒設定点SET2は2.0~3.0mg/mlの間、及び好ましくは2.5mg/lの遊離塩素の濃度の値で設定される。そのような高塩素消毒の値で、高塩素消毒の持続時間を数時間に制限することができる。これは、一方で、生物学的物質の効率的な破壊を成し、同時に、水分配ネットワークの部品への必然的な腐食現象を制限する。
【0093】
短期高塩素消毒の上記サブ・ステップa2は、予め定められた短期高塩素消毒期間Δt2で有利に継続する。
【0094】
具体的には、上記短期高塩素消毒期間Δt2は、高塩素消毒がネットワーク全体に関与することを保証するように分配ネットワークの拡張に応じて設定されている。
【0095】
好ましくは、短期高塩素消毒期間Δt2の選択は、分配ネットワーク内のレジメン流量の評価と関係なく成される。つまり、ネットワーク内のレジメン流量の極端な変動は、ネットワーク内の水の流量のいかなる検出も本発明のために利用できないようにする。
【0096】
好ましくは、上記短期高塩素消毒期間Δt2は2~12時間、好ましくは2~6時間の間で設定された範囲から選ばれた持続時間を有する。
【0097】
短期高塩素消毒の上記サブ・ステップa2の終了時、この方法は遊離塩素の濃度の安定化のステップeを有利に備える。このステップeでは、投入点IPにおける遊離塩素の濃度は、高塩素消毒設定点SET2から減少され、レジメン設定点SET1に達する。
【0098】
安定化の上記ステップeの終了時、レジメン設定点SET1の値に実質的に対応する遊離塩素の濃度が遠位点FPにおいて検出されるか否かに応じて、すなわち遊離塩素の濃度が、遠位点FPにおいて、レジメン設定点SET1に対応する値に安定化するか否かに応じて、レジメン塩素消毒のサブ・ステップa1が実施される、又は短期高塩素消毒のサブ・ステップa2が繰り返される。「安定化」は、上述の条件A又はBで定まる状況の発生を示すとされている。
【0099】
本発明の好ましい実施形態によれば、安定化のステップeでは、塩素化合物の投入が停止する。また、レジメン設定点SET1の値への到達を早めるために、化学的還元剤が、遊離塩素を中和するように投入される。具体的には、メタ重亜硫酸ナトリウム(E223)が還元物質として用いられ得る。
【0100】
別の方法として、安定化のステップeでは、塩素化合物の投入が停止する。また、遊離塩素の濃度がレジメン設定点SET1の値まで介入なく下がる。
【0101】
図9は、投入点IP(曲線a)及び遠位点FP(曲線b)における、レジメン塩素消毒のサブ・ステップa1から短期高塩素消毒のサブ・ステップa2へ移行する作動状況の遊離塩素の濃度の時間的傾向を示す。
図9に示す例では、レジメン設定点は0.6mg/lに、安全制限Diff1は0.2mg/lに、安全制限時間Δt1は30分に、高塩素消毒設定点SET2は2.5mg/lに、そして短期高塩素消毒の持続時間Δt2は約2時間30分に設定されている。
【0102】
図9では、分配ネットワークの遊離塩素の分配時間に関する、曲線aに対する曲線bの応答の生理学的時間遅延が示されている。
【0103】
また、
図9では、曲線aの最大濃度と曲線bの最大濃度との間の濃度の差が示されている。
【0104】
濃度の差は、生物学的物質の破壊(高塩素消毒の所望の作用)及び分配ネットワークの部品に対する腐食攻撃(高塩素消毒の副作用)に関する遊離塩素の消費に起因する。
【0105】
この曲線aと曲線bの2つのグラフの右側では、短期高塩素消毒のサブ・ステップa2の終了時に、安定化のステップeが開始することが示されている。安定化のステップeは、遠位点における遊離塩素の濃度を、投入点における、レジメン設定点の値に実質的に対応する値に安定化させた後、レジメン塩素消毒の新しいサブ・ステップa1で終了する。
【0106】
図4は、本発明の好ましい実施形態による飲料水の塩素消毒方法に係る、船舶上の飲料水生産及び分配システムの制御システムのブロック図を示す。この例では、塩素消毒方法は、レジメン塩素消毒のサブ・ステップa1のとき、及び短期高塩素消毒のサブ・ステップa2の終了時の安定化のステップeのときの両方で、投入点における遊離塩素の濃度を調整するようにメタ重亜硫酸ナトリウムの投入を備える。
【0107】
好ましくは、
図2に示すように、振動幅を下回るときに塩素の投入、又はそのような振動幅を上回るときに中和剤の投入を行うことで、投入点における遊離塩素の濃度の値は、予め定められた設定点SET1の値の周りの振動幅(±diff2)で変動する。
【0108】
飲料水生産及び分配システムが稼働できるように、非常に希薄な次亜塩素酸ナトリウムの混合物が好ましくは投入に使用される。例として一部の値を示す以下の表1のように、この次亜塩素酸ナトリウムの混合物は、分配ネットワークで得られる遊離残留塩素の濃度に対応する体積の水に投入される。
【0109】
【0110】
また、本発明は、飲料水生産及び分配システムを船上に有する船舶、特に旅客船に関する。
【0111】
そのような船舶上の飲料水生産及び分配システムは、本発明に係る上述の塩素消毒方法を行うことに適切である。従って、塩素消毒方法に関して上述したことは生産及び分配システムにも直接当てはまる。記載を容易にするために、符号は、塩素消毒方法で上述した符号とする。これにより、無用な反復を可能な限り防ぐ。
【0112】
一般的な実施形態によれば、船舶上の上述の飲料水生産及び分配システムは、
再循環分配ネットワークと、
遊離塩素を水中で生じ得る少なくとも1つの塩素化合物を予め定められた投入点IPで分配ネットワーク内に投入するための装置5と、
投入点IP又は投入点IPの近傍の分配ネットワーク内の遊離塩素の第1の検出プローブ4とを備える。
【0113】
具体的には、飲料水生産及び分配システムは、再循環分配ネットワークに逆止弁2によって流体的に接続された飲料水貯蔵タンク1を備える。従って、再循環分配ネットワークは、飲料水貯蔵タンク1から得られる飲料水を供給されている。
【0114】
本発明の重要な第1の態様によれば、飲料水生産及び分配システムは、
塩素の投入点IPから最遠位点FPまでの、分配ネットワーク内の循環経路における遊離塩素の連続的な検出のための第2のプローブ40、
及び第2のプローブ40によって検出された、塩素の投入点IPから最遠位点(遠位点)FPまでの遊離塩素の濃度の値に基づいて、投入点IPにおける遊離塩素の濃度を変動させるために投入装置に作用するようにプログラムされた電子制御ユニット50を備える。
【0115】
すなわち、本発明に係るシステムは、第2のプローブ40によって遠位点FPにおいて検出された遊離塩素の濃度の値に基づいて、投入装置5の自動フィード・バック制御を行うように設計されている。
【0116】
本発明の重要な別の態様によれば、塩素消毒方法に関する作動ステップに関して上述したように、以下の条件が満足すれば、上記電子制御ユニット50が、分配ネットワーク内の投入点IPにおける遊離塩素の濃度を、0.2~1.2mg/lの間で設定された遊離塩素のレジメン設定点SET1に保つために投入装置を調整するようにプログラムされている。
【0117】
第2のプローブ40が、レジメン設定点SET1に対する遠位点FPにおける遊離塩素の濃度の変動(特に低下)を検出しない。
【0118】
若しくは、第2のプローブ40が、予め定められた安全制限Diff1よりも低い実体、及び/又は予め定められた安全制限時間Δt1よりも短い持続時間を有する、上記レジメン設定点SET1に対する濃度の変動(特に低下)を検出する。
【0119】
好ましくは、塩素消毒方法に関して上述したことに戻り、投入点IPにおける遊離塩素の濃度の上記レジメン設定点SET1は、0.2mg/lではなく0.4mg/lの最小値で選ばれる。すなわち、好ましくは、上記レジメン設定点SET1は0.4~1.2mg/lの間で設定されている。規制によって課されている0.2mg/lの制限に関して、0.2mg/lの代わりに0.4mg/lを最小作動値に選ぶことは、生物学的物質によって汚染されるときに安全マージンをシステムに与えることに対して実用的である。
【0120】
好ましくは、腐食現象を減少させることに関する本発明から最大の利点を得るために、上記レジメン設定点SET1は、0.4~1mg/lの間で設定された範囲、さらに好ましくは0.4~0.8mg/lの間で設定された範囲から選ばれる。レジメン設定点SET1の最も好ましい値は約0.6mg/lである。
【0121】
本発明の好ましい実施形態によれば、第2のプローブ40が、レジメン設定点SET1に対する遠位点FPにおける遊離塩素の濃度の変動(低下)を検出するとき、上記電子制御ユニット50が、分配ネットワーク内の投入点IPにおける遊離塩素の濃度を1.2mg/lより高い遊離塩素の濃度に対応する予め定められた高塩素消毒設定点SET2へ一時的に上昇させるために、投入装置5を調整するようにプログラムされている。
【0122】
好ましくは、塩素消毒方法に関して上述したように、第2のプローブ40が、予め定められた上記安全制限Diff1よりも高い実体、及び/又は予め定められた上記安全制限時間Δt1よりも長い持続時間を有する、レジメン設定点SET1に対する遠位点FPにおける遊離塩素の濃度の変動(低下)を検出するとき、上記電子制御ユニット50が、投入点IPにおける遊離塩素の濃度を予め定められた高塩素消毒設定点SET2へ一時的に上昇させるようにプログラムされている。
【0123】
塩素消毒方法に関して上述したように、上記電子制御ユニット50が、誤認警報に可能な限り介入されないシステムを形成し、容易であり、信頼性のある方法で管理され得る制御を形成するために、予め定められた上記安全制限Diff1よりも高い実体、及び/又は予め定められた上記安全制限時間Δt1よりも長い持続時間を有する、遠位点における濃度の変動(低下)の検出を、投入点における遊離塩素の濃度の上昇(高塩素消毒)の条件とするようにプログラムされている。
【0124】
上述のように、本発明に係る船舶上の飲料水生産及び分配システムは従来技術の解決手段と以下の点で異なる。
【0125】
本発明に係る船舶上の飲料水生産及び分配システムは、遠位点FPにおける遊離塩素の連続的な検出のための第2のプローブ40を備える。
【0126】
また、本発明に係る船舶上の飲料水生産及び分配システムは、(本発明に係る塩素消毒方法を示す)上述の制御ロジックによれば、上記第2のプローブ40によって遠位点FPにおいて検出された遊離塩素の濃度の値に基づいて、投入点IPにおける遊離塩素の濃度を変動させるために投入装置に作用するようにプログラムされた電子制御ユニット50を備える。
【0127】
重要な違いを除いて、本発明に係る船舶上の飲料水生産及び分配システムは、従来技術の類似の技術的なシステムと類似又は同一の構造を有してもよい。
【0128】
図3に示す具体的な実施形態によれば、好ましくは、再循環分配ネットワークを備える飲料水生産及び分配システムは、複数の船舶のデッキに配置されて並列に接続される2つ以上のループ流路上に構築されている。
図3は2つのデッキ、すなわち客室デッキP1及びサービス・デッキP2を概略的に示す。
【0129】
具体的には、
図3のシステムは、船舶の二重底及び汚染空間から構造的に分離した複数の貯水タンク1を備える。
図3のシステムは、蒸発性蒸留器のシステム、及び/又は逆浸透性蒸留器のシステム、及び/又はバンカーリング・システム(図示せず)によって供給され得る。
【0130】
図3のシステムは、具体的には濾過及び塩素消毒装置である水処理装置5を備える。
【0131】
上述したような本発明の目的のため、システムが装置5を備えることは、遊離塩素を水中で生じ得る少なくとも1つの塩素化合物を予め定められた投入点IPで分配ネットワーク内に投入するために必要である。
【0132】
分配ネットワークは、
分配流路を形成し、船舶のデッキで分配ループを構成する、必須ではないが一般的にステンレス鋼から形成されたメイン・マニホールドと、
メイン・マニホールドから客室にいる旅客の利用者、またレストラン及びパブリック・エリアの利用者に水を分配する、樹脂、ステンレス鋼、又は他の適切な材料から形成されたセカンダリ・マニホールドとから形成されている。
【0133】
分配ネットワークは、引抜/ブースト/再循環ポンプ3,14と、加熱器及び冷却器7,16,17と、制御弁/逆止弁2,6,13,15とを有利に備える。
【0134】
分配ネットワークは、低温飲料水流路(符号1~13)及び高温飲料水流路(符号14~21)に好ましくは分割されている。
【0135】
具体的には、符号1~9は、飲料水貯蔵タンク1から、旅客に供給を行うデッキP1のループ、及びレストランとパブリック・エリアのサービスの利用者に供給を行うデッキP2のループに水を運ぶメイン・マニホールドによって設けられるネットワークのブランチを示す。符号10,11,40はデッキから流れる低温飲料水の再循環マニホールドを示す。符号13,18,19は高温飲料水の供給マニホールドを示す。符号20及び21はデッキから流れる高温飲料水の再循環マニホールドを示す。
【0136】
図3のシステムは、
投入点IP又は投入点IPの近傍の分配ネットワーク内の遊離塩素の第1の検出プローブ4、
及び遠位点FPにおける遊離塩素の連続的な検出のための第2のプローブ40を備える。
【0137】
2つのプローブ4及び40は、好ましくは制御室30に配置される電子制御ユニット50にデータ伝送路41及び42によって接続される。電子制御ユニット50は、上記装置5を制御するために、第3のデータ伝送路43によって投入装置5に接続される。
【0138】
第1のプローブ4は同じ投入装置5に有利に組み込まれ得る。この場合、第1のプローブ4は投入点の上流に直接位置してもよく、流量計に機能的に取り付けられている。投入される塩素化合物の量は、遊離塩素の残留濃度、及び瞬間的な水の流量の現在値に基づいて計算される。
【0139】
別の構造として、第1のプローブ4は、上記投入装置のプローブに加えて、又は上記投入装置のプローブの代替として投入装置5の下流に直接位置し得る。
【0140】
投入装置5は中和物質、例えばメタ重亜硫酸ナトリウム(E223)の投入機器を有利に備えてもよい。
【0141】
飲料水生産及び分配システムは、
投入点IP又は投入点IPの近傍に両方とも位置する少なくとも2つの第1のプローブ4、
及び遠位点FPに両方とも位置する少なくとも2つの第2のプローブ40を有利に備えてもよい。
【0142】
投入点及び遠位点における2つのプローブ4又は40の配置は、検出された濃度の値を確認できるようにする。飲料水生産及び分配システムが稼働できるように、投入点IP又は遠位点FPにおける2つのプローブの間の想定される測定値の差は2つのプローブの内の1つの異常、及び/又は検出故障を強調する。従って、これは介入を可能にする。
【0143】
本発明は多くの利点を得ることができる。これらの利点の一部は上述している。
【0144】
本発明に係る船舶、特に旅客船上の飲料水の塩素消毒方法は、ネットワーク自体の無菌性を保証し続けながら、分配ネットワーク内の腐食現象の発生をなくす、又は少なくとも減少させることができる。
【0145】
つまり、本発明によって想定される、レジメン塩素消毒の状態における遊離塩素の値(0.4~1.2mg/l、好ましくは0.4~0.8mg/l)は、塩素化合物の消費のレベル、すなわち病原微生物から守るための適切なレベルが低いこと、流路の材料の経年劣化が減少すること、及びステンレス鋼の腐食がないことを同時に提供する。
【0146】
そのような「塩素消毒の低いレベル」の選択は、分配ネットワークの腐食現象に関する塩素の消費に介入されない制御システムを形成する。結果として、遠位点における濃度の減少は、分配ネットワーク内に生物学的物質があることに、より容易な相関があり、ネットワークを安全にするための塩素消毒レベルの一時的な増加のトリガ条件として捉えられ得る。これは、遠位点において検出される遊離塩素の濃度に応じてフィード・バック制御システムを実行することができる。
【0147】
従って、本発明に係る船舶の飲料水の塩素消毒方法は行うことが容易であり、完全に自動化された方法で有利に管理される。これは、遊離塩素の低下及び遊離塩素を保つために必要なレベルについての主観的評価からクルーを解放する。
【0148】
従って、本発明に係る飲料水の塩素消毒方法は、従来技術の方法と比べて、遠位点における検出プローブの取り付け、及び適切にプログラムされた電子制御ユニットだけを必要とするため、複雑な自動制御システムを必要とせずに行われ得る。
【0149】
水の汚染の場合、本発明のシステムは、規制によって課されている制限に対して安全マージンを保証することに対応できる。つまり、(複数のステップで繰り返し可能な)本発明の方法によって行われる短期高塩素消毒は両方の所望の状態、すなわち細菌フローラの破壊、及びステンレス鋼の保護を同時に保証することに適する。そのような高塩素消毒が腐食のリスクを不必要に増加させないために、必要な場合、すなわち流路に実際に汚染がある場合でのみ実質的に行われるように、本発明に係る塩素消毒方法は構築されている。
【0150】
また、そのような「塩素消毒の低いレベル」の選択は、人間の健康を保護する利点を有する。つまり、この最後の態様に関して、消毒目的の水に与えられた次亜塩素酸塩が人間の健康に悪影響を及ぼすようであるという関心の高まりが長年あることは撤回されるはずである。次亜塩素酸塩の副産物の分野は監視を受け、国際基準によって大抵制限される。この次亜塩素酸塩の副産物の一部は、総残留塩素(TRC)のパラメータ内に収まる。
【0151】
最後に、本発明に係る船舶上の飲料水生産及び分配システムは、腐食現象の発生を減少させ、分配ネットワークの無菌状態を同時に保つロジックに係る水の塩素消毒の自動制御を可能にする。
【0152】
従って、考案された本発明は、設定された目的に達する。
【0153】
本発明の実際の実施形態は、本発明の保護の領域内にありながら、上述と異なる形態及び構成を明らかに想定し得る。
【0154】
さらに、すべての詳細な部分は、技術的に同等の要素及び寸法によって置き換えられ得る。すなわち、形態及び使用される材料は必要に応じて、いかなるものであってもよい。