(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】表面マーカーを有するエキソソームの検出
(51)【国際特許分類】
C12N 5/09 20100101AFI20220302BHJP
G01N 33/48 20060101ALI20220302BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20220302BHJP
G01N 21/64 20060101ALI20220302BHJP
C07K 17/00 20060101ALI20220302BHJP
C07K 16/30 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
C12N5/09
G01N33/48 M
G01N21/27 A
G01N21/64 F
C07K17/00
C07K16/30
(21)【出願番号】P 2018560446
(86)(22)【出願日】2017-02-03
(86)【国際出願番号】 US2017016434
(87)【国際公開番号】W WO2017136676
(87)【国際公開日】2017-08-10
【審査請求日】2020-01-31
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518277077
【氏名又は名称】ナノビュー バイオサイエンシズ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100102118
【氏名又は名称】春名 雅夫
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ダーブール ジョージ
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン デービッド エス.
【審査官】太田 雄三
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/085096(WO,A1)
【文献】SENSORS,2015年07月20日,Vol. 15,p. 17649-17665,doi:10.3390/s150717649
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/09
G01N 33/00
C07K 17/00
C07K 16/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象から得た試料を基体の表面と接触させて、該試料中に存在する循環細胞外小胞を該基体の表面に結合する工程であって、それによって細胞外小胞を単離する、工程;ならびに
該基体の表面に結合した細胞外小胞を、干渉バイオセンシングを使用して検出する工程であって、該試料が分光反射率画像化システムを用いて評価され、該分光反射率画像化システムが、
第1の反射面と、第2の反射面を提供しかつ
40nm厚~
70nm厚である部分的に透明な層とを有する前記基体;
第2の反射面に結合している、1種または複数種の結合剤を含む、バイオレイヤー;
照射光源;および
基体の第2の反射面に向けられ、かつ第1の反射面によって反射された照射光源からの光と、第2の反射面によって反射された照射光源からの光と、第2の表面にある粒子による散乱光とを表す画像化信号を生成するように適合された、画像化装置
を備える、
工程
を含む、がん由来循環細胞外小胞を単離する方法。
【請求項2】
細胞外小胞がエキソソームである、請求項1記載の方法。
【請求項3】
1種または複数種の結合剤が、循環細胞外小胞の表面上に発現している1種または複数種のグリピカンに特異的である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
試料を1種または複数種の第2のマーカーと接触させる工程を含む、請求項1~3のいずれか一項記載方法。
【請求項5】
1種または複数種のグリピカンが、グリピカン-1、グリピカン-2、グリピカン-3、グリピカン-4、グリピカン-5、およびグリピカン-6からなる群より選択されるメンバーを含む、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
1種または複数種のグリピカンが、グリピカン-1を含むかまたはグリピカン-1である、請求項3~5のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
1種または複数種のグリピカンが、グリピカン-3を含むかまたはグリピカン-3である、請求項3~6のいずれか一項記載の方法。
【請求項8】
がんが腺がんを含む、請求項1~7のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
がんが肺がんを含む、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項10】
肺がんが非小細胞肺がんまたは小細胞肺がんを含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
がんが、食道がん、卵巣がん、結腸がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、気管がん、脳がん、肝臓がん、膀胱がん、胃がん、子宮がん、子宮頸がん、精巣がん、直腸がん、皮膚がん、および前立腺がんからなる群より選択されるメンバーを含む、請求項1~8のいずれか一項記載の方法。
【請求項12】
前記試料中の循環細胞外小胞のレベルを評価する工程をさらに含む、請求項1~11のいずれか一項記載の方法。
【請求項13】
前記試料中に存在するかまたは前記試料が得られた対象に存在する、基体の第2の反射面または基体の第2の反射面の予め決められた部分もしくは領域に結合した循環細胞外小胞の数を評価する工程をさらに含む、請求項1~12のいずれか一項記載の方法。
【請求項14】
前記試料中に存在するかまたは前記試料が得られた対象に存在する、基体の第2の反射面または基体の第2の反射面の予め決められた部分もしくは領域に結合した循環細胞外小胞の数に関連するパラメータの値を提供する工程を含む、請求項1~13のいずれか一項記載の方法。
【請求項15】
前記試料中に存在するかまたは前記試料が得られた対象に存在する、基体の第2の反射面または基体の第2の反射面の予め決められた部分もしくは領域に結合した循環細胞外小胞のサイズを計測する工程をさらに含む、請求項1~14のいずれか一項記載の方法。
【請求項16】
前記サイズが、基体の第2の反射面または基体の第2の反射面の予め決められた部分もしくは領域に結合した細胞外小胞の平均サイズである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
前記試料中に存在するかまたは前記試料が得られた対象に存在する、基体の第2の反射面または基体の第2の反射面の予め決められた部分もしくは領域に結合した細胞外小胞の直径に関連するパラメータ(サイズパラメータ)の値を提供する工程を含む、請求項1~16のいずれか一項記載の方法。
【請求項18】
存在量パラメータ、サイズパラメータ、またはサイズと存在量の両方に関連するパラメータの値を参照値と比較する工程を含む、請求項1~17のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
存在量パラメータ、サイズパラメータ、またはサイズと存在量の両方に関連するパラメータの1つまたは複数の値が参照値との予め決められた関係性を満たす場合、前記試料および/または対象を分類する工程を含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
存在量パラメータ、サイズパラメータ、またはサイズと存在量の両方に関連するパラメータの1つまたは複数の値が参照値より大きい場合、前記試料および/または対象を分類する工程を含む、請求項18または19記載の方法。
【請求項21】
参照値が、予め選択された障害を有さない対象について計測された値である、請求項18~20のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
参照値が、予め選択された障害を有さない対象に由来する、存在量パラメータ、直径パラメータ、または直径と存在量の両方に関連するパラメータの1つまたは複数の関数である、請求項18~21のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
存在量パラメータ、直径パラメータ、または直径と存在量の両方に関連するパラメータの1つまたは複数の値が参照値より大きく、対象が、膵臓がんのリスクがあるか、または膵臓がんを有すると分類される、請求項18~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
存在量パラメータ、直径パラメータ、または直径と存在量の両方に関連するパラメータの1つまたは複数の値が参照値より大きい場合、前記試料および/または対象を分類する工程を含む、請求項18~22のいずれか一項記載の方法。
【請求項25】
前記試料が、以下:
a)予め選択されたがんの非存在;
b)予め選択されたがんの存在;
c)予め選択された組織の非がん性障害の存在;または
d)予め選択された組織の予め選択された前がん性病変部の存在
のいずれか1つまたは組み合わせを示すものであるとして分類される、請求項1~24のいずれか一項記載の方法。
【請求項26】
対象が、以下:
a)予め選択されたがんを有さない;
b)予め選択されたがんを有する;
c)予め選択された組織の非がん性障害を有する;または
d)予め選択された組織の予め選択された前がん性病変部を有する
のいずれか1つまたは組み合わせの可能性が高いとして分類される、請求項1~25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
1種または複数種の結合剤が、抗体分子、核酸、ポリペプチド、およびアプタマーからなる群より選択されるメンバーを含む、請求項1~
26のいずれか一項記載の方法。
【請求項28】
抗体分子が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびその抗原結合断片からなる群より選択されるメンバーを含む、請求項
27記載の方法。
【請求項29】
抗体分子が、がん細胞の表面に見出される抗原に特異的に結合する、請求項
28記載の方法。
【請求項30】
基体の第2の反射面に結合する第1の結合剤が、循環細胞外小胞の表面にあるタンパク質に結合する前記1種または複数種の結合剤のうちの第2の結合剤と異なる、請求項
29記載の方法。
【請求項31】
循環細胞外小胞が膵臓がん細胞に由来する、請求項1~
30のいずれか一項記載の方法。
【請求項32】
循環細胞外小胞が乳がん細胞に由来する、請求項1~
30のいずれか一項記載の方法。
【請求項33】
前記試料が、血漿、血清、全血、唾液、脳脊髄液(CSF)、または尿を含む、請求項1~
32のいずれか一項記載の方法。
【請求項34】
第1の反射面がケイ素基体であり、部分的に透明な層が酸化ケイ素(SiO
2)である、請求項1~
33のいずれか一項記載の方法。
【請求項35】
分光反射率画像化システムが、
画像化装置に接続され、かつ、画像化信号を受信してプログラム制御下でバイオレイヤーおよび/または第2の反射面にある粒子の画像を生成するように適合された、画像取得および画像処理システム
をさらに備える、請求項1~
34のいずれか一項記載の方法。
【請求項36】
部分的に透明な層が、
60nm厚である、請求項1~
35のいずれか一項記載の方法。
【請求項37】
第2の反射面に循環細胞外小胞を結合するための結合剤を、基体の第2の反射面に提供する工程;
1つまたは複数の波長の光を実質的に中心とする光を、第2の反射面に照射する工程;
前記画像化装置を用いて、基体から反射または透過された光を画像化する工程;
基体の第2の反射面の分光反射率画像を生成する工程;および
画像上にある特徴を、第2の反射面にある別個の循環細胞外小胞と相関付ける工程
を含む、請求項1~
36のいずれか一項記載の方法。
【請求項38】
画像化装置が、開口数が大きな高倍率対物レンズを有するカメラを備える、請求項1~
37のいずれか一項記載の方法。
【請求項39】
光の各波長が別々の狭帯域光源によって生じる、請求項1~
38のいずれか一項記載の方法。
【請求項40】
部分的に透明な層が
60nm厚であり、かつ狭い周波数帯域の1つが420nmである、請求項
39記載の方法。
【請求項41】
画像化装置が単色CCDまたはCMOSカメラである、請求項1~
40のいずれか一項記載の方法。
【請求項42】
基体の第2の反射面に、標準的な明視野顕微鏡光学装置からの光源が照射され、反射光が接眼レンズに伝えられる、請求項1~
41のいずれか一項記載の方法。
【請求項43】
光の各波長が、異なる発光ピーク波長をそれぞれ有する別々の発光ダイオード(LED)によって生じ、画像化装置が単色カメラである、請求項1~
42のいずれか一項記載の方法。
【請求項44】
画像化装置が単色CCDまたはCMOSカメラである、請求項1~
43のいずれか一項記載の方法。
【請求項45】
第2の反射面が、Siウェーハ上に層状に重ねられた
30~100nmのSiO
2にある任意の場所を含む、請求項1~
44のいずれか一項記載の方法。
【請求項46】
第2の反射面が、Siウェーハ上に層状に重ねられた
60nmのSiO
2を含む、請求項1~
45のいずれか一項記載の方法。
【請求項47】
第2の反射面に白色光が照射され、画像化装置がカラーカメラを備える、請求項1~
46のいずれか一項記載の方法。
【請求項48】
第2の反射面にRGB(赤色緑色青色)LEDが照射され、画像化装置がカラーカメラを備える、請求項1~
47のいずれか一項記載の方法。
【請求項49】
第2の反射面に広帯域光源が照射される、請求項1~
48のいずれか一項記載の方法。
【請求項50】
カメラが、カメラの光軸上に空間フィルターをさらに備える、請求項1~
49のいずれか一項記載の方法。
【請求項51】
光が非干渉性である、請求項1~
50のいずれか一項記載の方法。
【請求項52】
光の各波長が、別々の狭帯域光源によってまたは広帯域光源によって生じる、請求項1~
51のいずれか一項記載の方法。
【請求項53】
光の各波長が、異なる発光ピーク波長をそれぞれ有する別々の発光ダイオード(LED)によって生じる、請求項1~
52のいずれか一項記載の方法。
【請求項54】
画像化装置が、単色CCDカメラ、CMOSセンサー、およびカラーカメラからなる群より選択されるメンバーを備える、請求項1~
53のいずれか一項記載の方法。
【請求項55】
カメラが、カメラの光軸上に空間フィルターをさらに備える、請求項
54記載の方法。
【請求項56】
粒子を検出する工程が、基体の第2の反射面上の粒子の結合を検出することを含む、請求項
55記載の方法。
【請求項57】
基体の第2の反射面が、予め規定された粒子を結合するための結合剤を含み、溶液が、少なくとも1つの予め規定された粒子を含む、請求項
56記載の方法。
【請求項58】
循環細胞外小胞を結合するための結合剤が表面に配置されている基体であって、
第1の反射面、および該第1の反射面と実質的に平行な第2の反射面を提供しかつ
40nm厚~
70nm厚である部分的に透明な層;ならびに
該結合剤を含む、該第2の反射面に結合しているバイオレイヤー
を含む、基体。
【請求項59】
前記結合剤に結合した循環細胞外小胞をさらに含む、請求項
58記載の基体。
【請求項60】
第1の反射面と、第2の反射面を提供しかつ
40nm厚~
70nm厚である薄い部分的に透明な層とを有する基体;
循環細胞外小胞を結合するための1種または複数種の結合剤を含む、第2の反射面に結合しているバイオレイヤー;
1つの狭い周波数帯域の光を供給しかつその周波数帯域の光を基体の第2の反射面に向ける少なくとも1つの光源を備える、照射光源;ならびに
基体の第2の反射面に向けられ、かつ第1の反射面および第2の反射面によって反射された照射光源からの光を表す画像化信号を生成するように適合された、画像化装置
を備える、分光反射率画像化システム。
【請求項61】
1種または複数種の結合剤の少なくとも1種が、グリピカンに特異的である、請求項
60記載の分光反射率画像化システム。
【請求項62】
第1の反射面がケイ素基体であり、薄い部分的に透明な層が酸化ケイ素(SiO
2)である、請求項
60または
61記載の分光反射率画像化システム。
【請求項63】
画像化装置に接続され、かつ、画像化信号を受信してプログラム制御下で基体の第2の反射面にあるバイオレイヤーの画像を生成するように適合された、画像取得および画像処理システム
をさらに備える、請求項
60~
62のいずれか一項記載の分光反射率画像化システム。
【請求項64】
照射光源が白色光を発生させ、前記システムが、基体の第2の反射面に向けられる少なくとも3つの狭い周波数帯域のうちの1つの光線をそれぞれ発生させる少なくとも1つのフィルターを有する色相環をさらに備える、請求項
60~
63のいずれか一項記載の分光反射率画像化システム。
【請求項65】
がん細胞の表面に見出される抗原に特異的な1種または複数種の結合剤が表面に配置されている基体を備える、請求項
60~
64のいずれか一項記載の分光反射率画像化システムによる分析のためのカセット。
【請求項66】
循環細胞外小胞と基体との結合を検出するための方法であって、
該基体が、第1の反射面と、該第1の反射面と実質的に平行な第2の反射面を提供しかつ
40nm厚~
70nm厚である部分的に透明な層とを有し、
方法が、
基体の第2の反射面に、基体の第2の反射面に結合している1種または複数種の結合剤を提供する工程;
1つまたは複数の波長を実質的に中心とする光を、第2の反射面に照射する工程;
画像化装置を用いて、基体から反射または透過された光を画像化する工程;
基体の表面の画像を生成する工程;および
画像上にある特徴を、第2の反射面にある別個の循環細胞外小胞バイオマーカーと相関付ける工程
を含む、方法。
【請求項67】
画像化装置が、開口数が大きな高倍率対物レンズを有するカメラを備える、請求項
66記載の方法。
【請求項68】
光の各波長が別々の狭帯域光源によって生じる、請求項
66または
67記載の方法。
【請求項69】
画像化装置が単色CCDまたはCMOSカメラである、請求項
66~
68のいずれか一項記載の方法。
【請求項70】
第2の反射面に、標準的な明視野顕微鏡光学装置からの光源が照射され、反射光が接眼レンズに伝えられる、請求項
66~
69のいずれか一項記載の方法。
【請求項71】
光の各波長が、異なる発光ピーク波長をそれぞれ有する別々の発光ダイオード(LED)によって生じ、画像化装置が単色カメラである、請求項
66~
70のいずれか一項記載の方法。
【請求項72】
画像化装置が単色CCDまたはCMOSカメラである、請求項
71記載の方法。
【請求項73】
部分的に透明な層がSiO
2であり、第1の反射面がSiである、請求項
66~
72のいずれか一項記載の方法。
【請求項74】
部分的に透明な層が、Siウェーハ上の
60nmのSiO
2である、請求項
66~
73のいずれか一項記載の方法。
【請求項75】
第2の反射面に白色光が照射され、画像化装置がカラーカメラを備える、請求項
66~
74のいずれか一項記載の方法。
【請求項76】
第2の反射面にRGB(赤緑青)LEDが照射され、画像化装置がカラーカメラを備える、請求項
66~
75のいずれか一項記載の方法。
【請求項77】
第2の反射面に広帯域光源が照射される、請求項
66~
76のいずれか一項記載の方法。
【請求項78】
カメラが、カメラの光軸上に空間フィルターをさらに備える、請求項
66~
77のいずれか一項記載の方法。
【請求項79】
基体の表面にある粒子を検出するための方法であって、
該基体が、第1の反射面と、該第1の反射面と実質的に平行な第2の反射面を提供しかつ
40nm厚~
70nm厚である部分的に透明な層とを有し、
方法が、
基体の第2の反射面に、結合剤を提供する工程;
エキソソームバイオマーカーを含む少なくとも1つの循環細胞外小胞を有する溶液を基体の第2の反射面と接触させる工程;
基体の第2の反射面に少なくとも1つの波長の光を照射する工程;
画像化装置を用いて、基体から反射または透過された光を画像化する工程;および
基体の第2の反射面の画像を生成して、基体の表面にある細胞外循環小胞を検出する工程
を含む、方法。
【請求項80】
結合剤が、1種または複数種のグリピカンに特異的な結合剤である、請求項
79記載の方法。
【請求項81】
1種または複数種のグリピカンが、グリピカン-1、グリピカン-2、グリピカン-3、グリピカン-4、グリピカン-5、およびグリピカン-6からなる群より選択されるメンバーを含む、請求項
80記載の方法。
【請求項82】
基体の部分的に透明な層が、第1の反射面上に層状に重ねられたSiO
2を含み、該第1の反射面がSi基体である、請求項
79~
81のいずれか一項記載の方法。
【請求項83】
光が非干渉性である、請求項
79~
82のいずれか一項記載の方法。
【請求項84】
光の各波長が別々の狭帯域光源によって生じる、請求項
79~
83のいずれか一項記載の方法。
【請求項85】
光の各波長が、異なる発光ピーク波長をそれぞれ有する別々の発光ダイオード(LED)によって生じる、請求項
84記載の方法。
【請求項86】
光の各波長が白色光源によって生じる、請求項
84記載の方法。
【請求項87】
光の各波長が標準的な明視野顕微鏡光学装置によって生じ、反射光が接眼レンズに伝えられる、請求項
84記載の方法。
【請求項88】
画像化装置が単色CCDカメラまたはカラーカメラである、請求項
79~
87のいずれか一項記載の方法。
【請求項89】
カラーカメラが3-D CCDカメラである、請求項
88記載の方法。
【請求項90】
画像化装置が、開口数が大きな高倍率対物レンズを有するカメラを備える、請求項
79~
87のいずれか一項記載の方法。
【請求項91】
カメラが、カメラの光軸上に空間フィルターをさらに備える、請求項
79~
90のいずれか一項記載の方法。
【請求項92】
粒子を検出する工程が、基体の第2の反射面上でのエキソソームナノ粒子の結合を検出することを含む、請求項
79~
91のいずれか一項記載の方法。
【請求項93】
後続の照射ごとに増大する波長で光を基体に連続照射する工程を含む、請求項
66~
92のいずれか一項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2016年2月6日に出願された米国特許出願第62/291,848号の恩典を主張する。米国特許出願第62/291,848号の開示は、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は概して、生体分子、例えばがん、例えば膵臓がんに関連する生体分子を含む粒子(例えばナノ粒子、例えばエキソソーム、例えば細胞外小胞)の検出に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
生物学的標的分子ならびにナノ分子粒子を検出する能力は、細胞生理学と疾患進行の両方の理解と、疾患の早期かつ迅速な評価、例えば、診断などの様々な応用例における使用の根底をなしている。対象において疾患を診断する、疾患をステージ分類する、または疾患のリスクを確定するために、高い感度および特異性でナノ分子粒子を検出するためのシステムおよび方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
エキソソームは、血中を循環する、大きさが約30~200nmの、脂質二重層で囲まれた小さな細胞外小胞である。エキソソームは、がん細胞を含む非常に多くの細胞タイプによって分泌される。がん細胞に由来するエキソソームは、グリピカンファミリーに由来するタンパク質の中でも特に細胞表面プロテオグリカンであるグリピカン-1(GPC1)が豊富にある。非侵襲的な評価、診断、およびスクリーニングツールとしてグリピカン陽性(例えば、GPC1陽性)濃縮エキソソームを使用する方法ならびにこのような方法を実施する装置が本明細書において説明される。例えば、本明細書に記載の方法および装置は、試料を評価する方法、対象を評価する方法、または対象を診断する方法を含み、本方法は、対象に由来する試料と、基体上に配置された、例えば本質的に平らな表面を備える基体上に配置された結合剤、例えばグリピカン-1に特異的な結合剤とを、試料中の循環細胞外小胞、例えばエキソソームと結合剤との結合に適した条件下で、接触させる工程;循環細胞外小胞、例えばエキソソーム、例えばグリピカン-1を含むエキソソームが結合剤に結合したかどうか確かめ、それによって、試料を評価するか、対象を評価するか、または対象を診断する工程を含む。
【0005】
ある特定の態様では、本明細書に記載の方法または装置は、照射光源としてLEDなどの非レーザー光源を用いて検出の干渉原理下で動作することができる。LEDは非常にコストが低く、コンパクトで頑強であり、診断用途および研究用途のための広範にわたる使用および配布に理想的である。本明細書に記載の、ある特定の態様は、基体マイクロアレイ画像化システムによって得られる定量的分子結合測定と、試料中に見出される1種類の生体分子標的を検出するための高倍率を可能にする低コストの非干渉性照射光源を使用する能力を取り入れている。
【0006】
基体強化マイクロアレイ画像化(substrate enhanced microarray imaging)には、生体分子と、表面にある何万個ものスポットとの結合を標識なしで同時に検出する能力がある。ある特定の態様では、本明細書に記載の装置は、検出および測定の干渉原理用の照射光源として利用することができる非干渉性光源、例えば発光ダイオード(LED)を備える。LEDは非常にコストが低く、コンパクトで頑強であり、従って、診断用途および研究用途のための広範にわたる使用および配布に理想的である。これらの装置および関連方法は、試料中にあるナノ粒子、例えば細胞外小胞、例えばバイオマーカーを含むエキソソームを検出および画像化するための高倍率態様を可能にする低コストの非干渉性照射光源を提供する。
【0007】
ある特定の態様では、本明細書に記載の装置は、表面に結合しているナノ粒子細胞外小胞、例えばエキソソームバイオマーカーを基体強化検出するためにLED照射を使用する方法を容易にする。一局面では、少なくとも1つの非干渉性照射光源の使用と、画像化装置による反射光または透過光の画像化を含む、基体表面全体の応答を同時に記録するための方法を容易にするハイスループット分光法装置が本明細書において説明される。ある特定の態様では、少なくとも1つの非干渉性照射光源は、本明細書において示されるようにおよそ420nmに集められる。ある特定の態様では、基体は、本明細書において示されるように60nm厚の透明な層を備える。
【0008】
一局面において、本発明は、がん由来循環細胞外小胞(例えば、エキソソーム)を単離する方法に関し、本方法は以下の工程を含む:対象から得た試料を基体の表面と接触させる工程であって、該試料中に存在する循環細胞外小胞と基体の表面が(例えば吸着を介して、例えば1種または複数種の結合剤を介して)(例えば非共有結合により、例えば共有結合により)結合するように、基体の表面が、循環細胞外小胞の表面に発現している1種または複数種のグリピカンに特異的な1種または複数種の結合剤を任意で含み、それによって細胞外小胞が単離される、工程;および基体の表面に結合した細胞外小胞を検出する工程。
【0009】
別の局面において、本発明は、循環細胞外小胞(例えば、がん由来循環細胞外小胞)(例えば、エキソソーム)を単離する方法に関し、本方法は以下の工程を含む:対象から得た試料を基体の表面と接触させる工程であって、該試料中に存在する循環細胞外小胞と基体の表面が(例えば吸着を介して、例えば1種または複数種の結合剤を介して)(例えば非共有結合により、例えば共有結合により)結合するように、基体の表面が、循環細胞外小胞の表面に発現している1種または複数種のグリピカンに特異的な1種または複数種の結合剤の第1のセットを任意で含み、それによって細胞外小胞が単離される、工程;(例えば、該試料中に存在する循環細胞外小胞と基体の表面が結合する前に)(例えば、該試料中に存在する循環細胞外小胞と基体の表面が結合した後に)該試料を1種または複数種の結合剤の第2のセットと接触させる工程;基体の表面に結合した細胞外小胞を検出する工程。
【0010】
ある特定の態様では、1種または複数種のグリピカンは、グリピカン-1、グリピカン-2、グリピカン-3、グリピカン-4、グリピカン-5、およびグリピカン-6からなる群より選択されるメンバーを含む。
【0011】
ある特定の態様では、1種または複数種のグリピカンは、グリピカン-1を含むかまたはグリピカン-1である。ある特定の態様では、1種または複数種のグリピカンは、グリピカン-3を含むかまたはグリピカン-3である。
【0012】
ある特定の態様では、がんは腺がんを含む。ある特定の態様では、がんは肺がんを含む。ある特定の態様では、肺がんは非小細胞肺がんまたは小細胞肺がんを含む。ある特定の態様では、がんは、食道がん、卵巣がん、結腸がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、気管がん、脳がん、肝臓がん、膀胱がん、胃がん、子宮がん、子宮頸がん、精巣がん、直腸がん、皮膚がん、および前立腺がんからなる群より選択されるメンバーを含む。
【0013】
ある特定の態様では、前記方法は、試料中にある循環細胞外小胞のレベル(例えば量、例えば数、例えば濃度)を評価する工程を含む。ある特定の態様では、前記方法は、試料中に存在するかまたは試料が得られた対象に存在する、基体または基体の予め決められた部分もしくは領域に結合した循環細胞外小胞の数を評価する工程を含む。
【0014】
ある特定の態様では、前記方法は、試料中に存在するかまたは試料が得られた対象に存在する、基体または基体の予め決められた部分もしくは領域に結合した循環細胞外小胞の数に関連するパラメータ(例えば、存在量(abundance)パラメータ)の値を提供する工程を含む。
【0015】
ある特定の態様では、前記方法は、試料中に存在するかまたは試料が得られた対象に存在する、基体または基体の予め決められた部分もしくは領域に結合した循環細胞外小胞のサイズ(例えば直径、例えば体積)を計測する工程を含む(例えば直径は、約10nm~約3100nm、例えば約50nm~約2000nm、例えば約50nm~約1000nm、例えば約20nm~約300nm、例えば約30nm~約100nm、例えば約50nm~約200nm、例えば約200nm~約3000nmである)。
【0016】
ある特定の態様では、サイズは、基体または基体の予め決められた部分もしくは領域に結合した細胞外小胞の平均サイズである。
【0017】
ある特定の態様では、前記方法は、試料中に存在するかまたは試料が得られた対象に存在する、基体または基体の予め決められた部分もしくは領域に結合した細胞外小胞の直径に関連するパラメータ(サイズパラメータ)の値を提供する工程を含む。
【0018】
ある特定の態様では、前記方法は、存在量パラメータ、サイズパラメータ(例えば直径パラメータ、例えば体積パラメータ)、またはサイズと存在量の両方に関連するパラメータの値を、参照値と比較する工程(例えばそれによって試料を評価する工程、例えばそれによって試料を特徴付ける工程、例えばそれによって対象を診断する工程)を含む。
【0019】
ある特定の態様では、存在量パラメータ、サイズパラメータ、またはサイズと存在量の両方に関連するパラメータの1つまたは複数の値が、参照値との予め決められた関係性を満たす場合、試料または対象を分類する。ある特定の態様では、存在量パラメータ、サイズパラメータ、またはサイズと存在量の両方に関連するパラメータの1つまたは複数の値が参照値より大きい場合、試料または対象を分類する、例えばがんのリスクがあるかまたはがんを有するとして対象を分類する。
【0020】
ある特定の態様では、参照値は、予め選択された障害、例えばがんを有さない対象について計測された値である。ある特定の態様では、参照値は、予め選択された障害、例えばがんを有さない対象に由来する、存在量パラメータ、直径パラメータ、または直径と存在量の両方に関連するパラメータの1つまたは複数の関数である。ある特定の態様では、存在量パラメータ、直径パラメータ、または直径と存在量の両方に関連するパラメータの1つまたは複数の値は参照値より大きく、対象は、膵臓がん、例えば膵臓腺がんのリスクがあるかまたは膵臓がん、例えば膵臓腺がんを有するとして分類される。ある特定の態様では、存在量パラメータ、直径パラメータ、または直径と存在量の両方に関連するパラメータの1つまたは複数の値が参照値より大きい場合、試料または対象を分類する、例えばがんのリスクがあるかまたはがんを有するとして対象を分類する。
【0021】
ある特定の態様では、試料は、以下のいずれか1つまたは組み合わせを示すものであると分類される:a)予め選択されたがん(例えば膵臓がん、例えば膵臓腺がん、例えば乳がん、例えば肺がん、例えば結腸がん、例えばグリア芽細胞腫、例えば卵巣がん)の非存在;b)予め選択されたがんの存在;c)予め選択された組織(例えば膵臓、例えば肺、例えば結腸、例えば乳房、例えば脳、例えば卵巣)の非がん性障害の存在;またはd)予め選択された組織の予め選択された前がん性病変部の存在。
【0022】
ある特定の態様では、対象は、以下のいずれか1つまたは組み合わせの可能性が高いと分類される:a)予め選択されたがんを有さない;b)予め選択されたがんを有する;c)予め選択された組織の非がん性障害を有する;またはd)予め選択された組織の予め選択された前がん性病変部を有する。
【0023】
ある特定の態様では、前記方法は、予め選択されたがんの進行または状態をモニタリングまたは評価する工程を含む。
【0024】
ある特定の態様では、存在量パラメータ、サイズパラメータ、またはサイズと存在量の両方に関連するパラメータの1つまたは複数の値が、予め選択されたがんの進行または状態と相関付けられる。
【0025】
ある特定の態様では、前記方法は、評価、分類、または診断に応じて、対象の治療オプションを選択する工程を含む。
【0026】
ある特定の態様では、前記方法は、対象を処置する工程、例えば、対象のがんを処置する工程を含む(例えばがんは、食道がん、卵巣がん、結腸がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、気管がん、脳がん、肝臓がん、膀胱がん、胃がん、子宮がん、子宮頸がん、精巣がん、直腸がん、皮膚がん、および前立腺がんからなる群より選択されるメンバーを含む)。
【0027】
ある特定の態様では、1種または複数種の結合剤は、抗体分子、核酸、ポリペプチド、およびアプタマーからなる群より選択されるメンバーを含む。
【0028】
ある特定の態様では、抗体分子は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびその抗原結合断片からなる群より選択されるメンバーを含む(例えば、1種または複数種の結合剤は、げっ歯類、ウサギ、マウス、またはラットの抗ヒト抗体またはその結合断片を含む)。
【0029】
ある特定の態様では、抗体分子は、がん細胞の表面に見出される抗原(例えば、グリピカン(例えば、グリピカンは、グリピカン-1、グリピカン-2、グリピカン-3、グリピカン-4、グリピカン-5、およびグリピカン-6からなる群より選択されるメンバーを含む))に特異的に結合する(例えば、抗体分子はグリピカンの細胞外部分に特異的に結合する)。
【0030】
ある特定の態様では、基体の表面に結合する第1の結合剤(例えば、グリピカン-1の細胞外部分に結合する第1の結合剤、例えば、グリピカン-3の細胞外部分を基体の表面に結合させる結合剤)は、循環細胞外小胞の表面にあるタンパク質に結合する(例えば、グリピカン-3の細胞外部分に結合する、例えば、グリピカン-1の細胞外部分に結合する)第2の結合剤と異なる(例えば、前記タンパク質は、CD63、CD81、CD9、フロチリン-1、マンノース結合レクチン、およびレクチンからなる群より選択されるメンバーを含む)(例えば、第2の結合剤はがん特異的または疾患特異的である)(例えば、第2の結合剤は、基体の表面に結合する前に循環細胞外小胞に結合する)(例えば、第2の結合剤に標識(例えばナノ粒子、例えばフルオロフォア)が付加されている)。
【0031】
ある特定の態様では、循環細胞外小胞は膵臓がん細胞に由来する。ある特定の態様では、循環細胞外小胞は乳がん細胞に由来する。
【0032】
ある特定の態様では、体液は、血漿、血清、全血、唾液、脳脊髄液(CSF)、または尿を含む。
【0033】
ある特定の態様では、試料は、反射率画像化システム、例えば本明細書に記載の画像化システムを用いて評価される。
【0034】
ある特定の態様では、分光反射率画像化システムは、第1の反射面と、第2の反射面を提供する部分的に透明な層とを有する基体;第2の反射面に結合している、1種または複数種の結合剤の第1のセットを含むバイオレイヤー(biolayer);照射光源、例えば、狭い周波数帯域の光を供給する少なくとも1つの光源を備え、この周波数帯域の光を基体に向ける照射光源(例えば、狭い周波数帯域の1つは、約300nm~約800nm、例えば約400nm~約600nm、例えば約405nm~約455nmの範囲の、例えば約420nmの波長を含む);ならびに基体の第2の反射面に向けられ、第1の反射面によって反射された照射光源からの光;第2の反射面によって反射された照射光源からの光;および第2の表面にある粒子による散乱光を表す画像化信号を生成するように適合された画像化装置を備える。
【0035】
ある特定の態様では、第1の反射面はケイ素基体であり、透明な層は酸化ケイ素(SiO2)である。
【0036】
ある特定の態様では、分光反射率画像化システムは画像取得および画像処理システムをさらに備え、画像取得および画像処理システムは、画像化装置に接続されており、かつ、画像化信号を受信して、プログラム制御下でバイオレイヤーおよび/または第2の反射面にある粒子の画像を生成するように適合されている。
【0037】
ある特定の態様では、透明な層は、約10nm厚~約100nm厚、例えば約40nm厚~約70nm厚、例えば約60ナノメートル厚)である。
【0038】
ある特定の態様では、前記方法は、循環細胞外小胞(例えば、グリピカンを含むエキソソーム)を結合するために、基体の第1の鏡面反射境界面に結合剤を提供する工程;第1の鏡面反射境界面に実質的に平行でありかつ第1の鏡面反射境界面の下に置かれた第2の鏡面反射境界面を提供する工程; 1つまたは複数の波長の光を実質的に中心とする光を表面に照射する工程;画像化装置を用いて、基体から反射または透過された光を画像化する工程;基体の表面の分光反射率画像を生成する工程;および画像上にある特徴(例えば、循環細胞外小胞の直径)を、表面にある別個の循環細胞外小胞と相関付ける(例えば、それによって、別個の循環細胞外小胞それぞれのサイズを評価する)工程を含む。
【0039】
ある特定の態様では、透明な層は約60nm厚であり、狭い周波数帯域の1つは420nmである(例えば、基体を水溶液に浸漬している間に画像化は行われる、例えば、基体を乾燥させた後に画像化は行われる)。
【0040】
ある特定の態様では、画像化装置は、開口数が大きな高倍率対物レンズを有するカメラを備える。
【0041】
ある特定の態様では、光の各波長は別々の狭帯域光源によって生じる。
【0042】
ある特定の態様では、画像化装置は単色CCDまたはCMOSカメラである。
【0043】
ある特定の態様では、表面は標準的な明視野顕微鏡光学装置からの光源によって照射され、反射光は接眼レンズに伝えられる。
【0044】
ある特定の態様では、光の各波長は、異なる発光ピーク波長をそれぞれ有する別々の発光ダイオード(LED)によって生じ、画像化装置は単色カメラである。
【0045】
ある特定の態様では、画像化装置は単色CCDまたはCMOSカメラである。
【0046】
ある特定の態様では、層状の基体は、Siウェーハ上に層状に重ねられた約30~100nm(例えば、約60nm)のSiO2にある任意の場所を含む。ある特定の態様では、表面に白色光が照射され、画像化装置はカラーカメラを備える。ある特定の態様では、表面にRGB(赤色緑色青色)LEDが照射され、画像化装置はカラーカメラを備える。ある特定の態様では、表面に広帯域光源が照射される。
【0047】
ある特定の態様では、カメラは、カメラの光軸上に空間フィルターをさらに備える。
【0048】
ある特定の態様では、光は非干渉性光である。
【0049】
ある特定の態様では、光の各波長は、別々の狭帯域光源によってまたは広帯域光源によって生じる。
【0050】
ある特定の態様では、光の各波長は、異なる発光ピーク波長をそれぞれ有する別々の発光ダイオード(LED)によって生じる。
【0051】
ある特定の態様では、画像化装置は、単色CCDカメラ、CMOSセンサー、およびカラーカメラからなる群より選択されるメンバーを備える。ある特定の態様では、カメラは、カメラの光軸上に空間フィルターをさらに備える。
【0052】
ある特定の態様では、粒子を検出する工程は、層状の基体の表面上での粒子の結合を検出する工程を含む。
【0053】
ある特定の態様では、層状の表面の表面は、予め規定された粒子を結合するための結合剤を含み、溶液は、少なくとも1つの予め規定された粒子を含む。
【0054】
別の局面において、本発明は、本明細書に記載の結合剤、例えばグリピカン(例えば、グリピカン-1、例えばグリピカン-2、例えばグリピカン-3、例えばグリピカン-4、例えばグリピカン-5、例えばグリピカン-6)に特異的な結合剤、例えば抗体分子が表面に配置されている基体、例えば本明細書に記載の基体に関する。ある特定の態様では、基体は、結合剤に結合している循環細胞外小胞(例えば、エキソソーム)を含む。
【0055】
別の局面において、本発明は、
第1の反射面と、第2の反射面を提供する薄い半透明層とを有する基体;グリピカン(例えばグリピカン-1、例えばグリピカン-2、例えばグリピカン-3、例えばグリピカン-4、例えばグリピカン-5、例えばグリピカン-6)に特異的な1種または複数種の結合剤を含む、第2の反射面に結合しているバイオレイヤー;1つの狭い周波数帯域の光を供給しかつその周波数帯域の光を基体に向ける少なくとも1つの光源を備える、照射光源;ならびに基体の第2の反射面に向けられ、かつ第1の反射面および第2の反射面によって反射された照射光源からの光を表す画像化信号を生成するように適合された、画像化装置
を備える、分光反射率画像化システムに関する。
【0056】
ある特定の態様では、第1の反射面はケイ素基体であり、半透明層は酸化ケイ素(SiO2)である。
【0057】
ある特定の態様では、前記システムは、画像取得および画像処理システムを備え、画像取得および画像処理システムは、画像化装置に接続されており、かつ、画像化信号を受信して、プログラム制御下で第2の反射面にあるバイオレイヤーの画像を生成するように適合されている。
【0058】
ある特定の態様では、照射光源は白色光を発生させ、前記システムは少なくとも1つのフィルターを有する色相環をさらに備え、各フィルターが、基体に向けられる少なくとも3つの狭い周波数帯域のうちの1つの光線を発生させる。
【0059】
別の局面において、本発明は、分光反射率画像化システムによって分析するためのカセットに関し、本カセットは、がん細胞の表面に見出される抗原(例えばグリピカン(例えばグリピカン-1、例えばグリピカン-2、例えばグリピカン-3、例えばグリピカン-4、例えばグリピカン-5、例えばグリピカン-6))に特異的な結合剤(例えば、抗体分子)が表面に配置されている基体(例えば、本明細書に記載の基体)を備える。
【0060】
別の局面において、本発明は、循環細胞外小胞(例えば、エキソソーム)と基体の表面との結合を検出するための方法に関し、本方法は、基体の第1の鏡面反射境界面に、1種または複数種の結合剤(例えばグリピカン(例えばグリピカン-1、例えばグリピカン-2、例えばグリピカン-3、例えばグリピカン-4、例えばグリピカン-5、例えばグリピカン-6)に特異的な結合剤)を提供する工程;第1の鏡面反射境界面に実質的に平行でありかつ第1の鏡面反射境界面の下に置かれた第2の鏡面反射境界面を提供する工程; 1つまたは複数の波長を実質的に中心とする光を表面に照射する工程;画像化装置を用いて、基体から反射または透過された光を画像化する工程;基体の表面の画像を生成する工程;および画像上にある特徴を、表面にある別個の循環細胞外小胞バイオマーカー(グリピカン(例えばグリピカン-1、例えばグリピカン-2、例えばグリピカン-3、例えばグリピカン-4、例えばグリピカン-5、例えばグリピカン-6))と相関付ける工程を含む。
【0061】
ある特定の態様では、画像化装置は、開口数が大きな高倍率対物レンズを有するカメラを備える。
【0062】
ある特定の態様では、光の各波長は別々の狭帯域光源によって生じる。
【0063】
ある特定の態様では、画像化装置は単色CCDまたはCMOSカメラである。
【0064】
ある特定の態様では、表面に、標準的な明視野顕微鏡光学装置からの光源が照射され、反射光は接眼レンズに伝えられる。
【0065】
ある特定の態様では、光の各波長は、異なる発光ピーク波長をそれぞれ有する別々の発光ダイオード(LED)によって生じ、画像化装置は単色カメラである。
【0066】
ある特定の態様では、画像化装置は単色CCDまたはCMOSカメラである。
【0067】
ある特定の態様では、層状の基体は、Siウェーハ上に層状に重ねられた30~100nmの範囲(例えば、60nm)のSiO2にある任意の場所を含む。
【0068】
ある特定の態様では、表面に白色光が照射され、画像化装置はカラーカメラを備える。
【0069】
ある特定の態様では、表面にRGB(赤色緑色青色)LEDが照射され、画像化装置はカラーカメラを備える。
【0070】
ある特定の態様では、表面に広帯域光源が照射される。
【0071】
ある特定の態様では、カメラは、カメラの光軸上に空間フィルターをさらに備える。
【0072】
別の局面において、本発明は、層状の基体の表面にある粒子を検出するための方法に関し、本方法は、層状の基体の表面に、結合剤、例えばグリピカン(例えばグリピカン-1、例えばグリピカン-2、例えばグリピカン-3、例えばグリピカン-4、例えばグリピカン-5、例えばグリピカン-6)に特異的な結合剤を提供する工程;エキソソームバイオマーカー(グリピカン(例えばグリピカン-1、例えばグリピカン-2、例えばグリピカン-3、例えばグリピカン-4、例えばグリピカン-5、例えばグリピカン-6))を含む少なくとも1つの循環細胞外小胞を有する溶液を基体の表面と接触させる工程;表面に少なくとも1つの波長の光を照射する工程;画像化装置を用いて、基体から反射または透過された光を画像化する工程;および基体の表面の画像を生成して、層状の基体の表面にある細胞外循環小胞(例えば、エキソソーム)を検出する工程を含む。
【0073】
ある特定の態様では、層状の基体は、Si基体上に層状に重ねられたSiO2を含む。
【0074】
ある特定の態様では、光は非干渉性光である。
【0075】
ある特定の態様では、光の各波長は別々の狭帯域光源によって生じる。
【0076】
ある特定の態様では、光の各波長は、異なる発光ピーク波長をそれぞれ有する別々の発光ダイオード(LED)によって生じる。ある特定の態様では、光の各波長は白色光源によって生じる。ある特定の態様では、光の各波長は標準的な明視野顕微鏡光学装置によって生じ、反射光は接眼レンズに伝えられる。
【0077】
ある特定の態様では、画像化装置は単色CCDカメラまたはカラーカメラである。ある特定の態様では、カラーカメラは3-D CCDカメラである。ある特定の態様では、画像化装置は、開口数が大きな高倍率対物レンズを有するカメラを備える。ある特定の態様では、カメラは、カメラの光軸上に空間フィルターをさらに備える。ある特定の態様では、粒子を検出する工程は、層状の基体の表面におけるエキソソームナノ粒子の結合を検出することを含む。
【0078】
ある特定の態様では、前記方法は、後続の照射ごとに増大する波長で光を基体に連続照射する工程を含む(例えば、複数の波長のうち後続のそれぞれの照射波長は、前回照射された波長より長い波長である)(例えば、複数の波長はそれぞれ、約500nm~約750nm、例えば約525nm~約700nmの範囲内である)(例えば、複数の波長のうちの第1の波長は約420nmであり、例えば、複数の波長のうちの第2の波長は約535nmである)。
【0079】
本発明の一局面(例えば、方法)に関与する態様の要素は、本発明の他の局面が関与する態様において適用することができ、逆もまた同じである。
[本発明1001]
対象から得た試料を基体の表面と接触させる工程であって、該試料中に存在する循環細胞外小胞と基体の表面が(例えば吸着を介して、例えば1種または複数種の結合剤を介して)(例えば非共有結合により、例えば共有結合により)結合するように、基体の表面が、循環細胞外小胞の表面に発現している1種または複数種のグリピカンに特異的な1種または複数種の結合剤を任意で含み、それによって細胞外小胞を単離する、工程;および
基体の表面に結合した細胞外小胞を検出する工程
を含む、がん由来循環細胞外小胞(例えば、エキソソーム)を単離する方法。
[本発明1002]
対象から得た試料を基体の表面と接触させる工程であって、該試料中に存在する循環細胞外小胞と基体の表面が(例えば吸着を介して、例えば1種または複数種の結合剤を介して)(例えば非共有結合により、例えば共有結合により)結合するように、基体の表面が、循環細胞外小胞の表面に発現している1種または複数種のグリピカンに特異的な1種または複数種の結合剤の第1のセットを任意で含み、それによって細胞外小胞を単離する、工程;
(例えば、該試料中に存在する循環細胞外小胞と基体の表面が結合する前に)(例えば、該試料中に存在する循環細胞外小胞と基体の表面が結合した後に)該試料を1種または複数種の結合剤の第2のセットと接触させる工程;
基体の表面に結合した細胞外小胞を検出する工程
を含む、循環細胞外小胞(例えば、がん由来循環細胞外小胞)(例えば、エキソソーム)を単離する方法。
[本発明1003]
1種または複数種のグリピカンが、グリピカン-1、グリピカン-2、グリピカン-3、グリピカン-4、グリピカン-5、およびグリピカン-6からなる群より選択されるメンバーを含む、本発明1001の方法。
[本発明1004]
1種または複数種のグリピカンが、グリピカン-1を含むかまたはグリピカン-1である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1005]
1種または複数種のグリピカンが、グリピカン-3を含むかまたはグリピカン-3である、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1006]
がんが腺がんを含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1007]
がんが肺がんを含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1008]
肺がんが非小細胞肺がんまたは小細胞肺がんを含む、本発明1007の方法。
[本発明1009]
がんが、食道がん、卵巣がん、結腸がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、気管がん、脳がん、肝臓がん、膀胱がん、胃がん、子宮がん、子宮頸がん、精巣がん、直腸がん、皮膚がん、および前立腺がんからなる群より選択されるメンバーを含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1010]
前記試料中の循環細胞外小胞のレベル(例えば量、例えば数、例えば濃度)を評価する工程をさらに含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1011]
前記試料中に存在するかまたは前記試料が得られた対象に存在する、基体または基体の予め決められた部分もしくは領域に結合した循環細胞外小胞の数を評価する工程をさらに含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1012]
前記試料中に存在するかまたは前記試料が得られた対象に存在する、基体または基体の予め決められた部分もしくは領域に結合した循環細胞外小胞の数に関連するパラメータ(例えば存在量パラメータ)の値を提供する工程を含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1013]
前記試料中に存在するかまたは前記試料が得られた対象に存在する、基体または基体の予め決められた部分もしくは領域に結合した循環細胞外小胞のサイズ(例えば直径、例えば体積)を計測する工程をさらに含む(例えば直径が、約10nm~約3100nm、例えば約50nm~約2000nm、例えば約50nm~約1000nm、例えば約20nm~約300nm、例えば約30nm~約100nm、例えば約50nm~約200nm、例えば約200nm~約3000nmである)、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1014]
前記サイズが、基体または基体の予め決められた部分もしくは領域に結合した細胞外小胞の平均サイズである、本発明1013の方法。
[本発明1015]
前記試料中に存在するかまたは前記試料が得られた対象に存在する、基体または基体の予め決められた部分もしくは領域に結合した細胞外小胞の直径に関連するパラメータ(サイズパラメータ)の値を提供する工程を含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1016]
存在量パラメータ、サイズパラメータ(例えば直径パラメータ、例えば体積パラメータ)、またはサイズと存在量の両方に関連するパラメータの値を参照値と比較する(例えばそれによって試料を評価する、例えばそれによって試料を特徴付ける、例えばそれによって対象を診断する)工程を含む、本発明1001~1015のいずれかの方法。
[本発明1017]
存在量パラメータ、サイズパラメータ、またはサイズと存在量の両方に関連するパラメータの1つまたは複数の値が参照値との予め決められた関係性を満たす場合、前記試料または対象を分類する、本発明1016の方法。
[本発明1018]
存在量パラメータ、サイズパラメータ、またはサイズと存在量の両方に関連するパラメータの1つまたは複数の値が参照値より大きい場合、前記試料または対象を分類する、例えば、がんのリスクがあるかまたはがんを有するとして対象を分類する、本発明1016または1017の方法。
[本発明1019]
参照値が、予め選択された障害、例えばがんを有さない対象について計測された値である、本発明1016~1018のいずれかの方法。
[本発明1020]
参照値が、予め選択された障害、例えばがんを有さない対象に由来する、存在量パラメータ、直径パラメータ、または直径と存在量の両方に関連するパラメータの1つまたは複数の関数である、本発明1016~1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
存在量パラメータ、直径パラメータ、または直径と存在量の両方に関連するパラメータの1つまたは複数の値が参照値より大きく、対象が、膵臓がん、例えば膵臓腺がんのリスクがあるか、または膵臓がん、例えば膵臓腺がんを有すると分類される、本発明1016~1020のいずれかの方法。
[本発明1022]
存在量パラメータ、直径パラメータ、または直径と存在量の両方に関連するパラメータの1つまたは複数の値が参照値より大きい場合、前記試料または対象を分類する、例えばがんのリスクがあるかまたはがんを有するとして対象を分類する、本発明1016~1020のいずれかの方法。
[本発明1023]
前記試料が、以下:
a)予め選択されたがん(例えば膵臓がん、例えば膵臓腺がん、例えば乳がん、例えば肺がん、例えば結腸がん、例えばグリア芽細胞腫、例えば卵巣がん)の非存在;
b)予め選択されたがんの存在;
c)予め選択された組織(例えば膵臓、例えば肺、例えば結腸、例えば乳房、例えば脳、例えば卵巣)の非がん性障害の存在;または
d)予め選択された組織の予め選択された前がん性病変部の存在
のいずれか1つまたは組み合わせを示すものであるとして分類される、本発明1001~1022のいずれかの方法。
[本発明1024]
対象が、以下:
a)予め選択されたがんを有さない;
b)予め選択されたがんを有する;
c)予め選択された組織の非がん性障害を有する;または
d)予め選択された組織の予め選択された前がん性病変部を有する
のいずれか1つまたは組み合わせの可能性が高いとして分類される、本発明1001~1023のいずれかの方法。
[本発明1025]
予め選択されたがんの進行または状態をモニタリングまたは評価する工程を含む、本発明1001~1024のいずれかの方法。
[本発明1026]
存在量パラメータ、サイズパラメータ、またはサイズと存在量の両方に関連するパラメータの1つまたは複数の値が、予め選択されたがんの進行または状態と相関付けられる、本発明1001~1025のいずれかの方法。
[本発明1027]
評価、分類、または診断に応じて、対象の治療オプションを選択する工程を含む、本発明1001~1026のいずれかの方法。
[本発明1028]
例えばがん(例えばがんが、食道がん、卵巣がん、結腸がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、気管がん、脳がん、肝臓がん、膀胱がん、胃がん、子宮がん、子宮頸がん、精巣がん、直腸がん、皮膚がん、および前立腺がんからなる群より選択されるメンバーを含む)について対象を処置する工程を含む、本発明1001~1027のいずれかの方法。
[本発明1029]
1種または複数種の結合剤が、抗体分子、核酸、ポリペプチド、およびアプタマーからなる群より選択されるメンバーを含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1030]
抗体分子が、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびその抗原結合断片からなる群より選択されるメンバーを含む(例えば、1種または複数種の結合剤が、げっ歯類、ウサギ、マウス、またはラットの抗ヒト抗体またはその結合断片を含む)、本発明1029の方法。
[本発明1031]
抗体分子が、がん細胞の表面に見出される抗原(例えば、グリピカン(例えば、グリピカンが、グリピカン-1、グリピカン-2、グリピカン-3、グリピカン-4、グリピカン-5、およびグリピカン-6からなる群より選択されるメンバーを含む))に特異的に結合する(例えば、抗体分子がグリピカンの細胞外部分に特異的に結合する)、本発明1030の方法。
[本発明1032]
基体の表面に結合する第1の結合剤(例えば、グリピカン-1の細胞外部分に結合する第1の結合剤、例えば、グリピカン-3の細胞外部分を基体の表面に結合させる結合剤)が、循環細胞外小胞の表面にあるタンパク質に結合する(例えば、グリピカン-3の細胞外部分に結合する、例えば、グリピカン-1の細胞外部分に結合する)第2の結合剤と異なる(例えば、該タンパク質が、CD63、CD81、CD9、フロチリン-1、マンノース結合レクチン、およびレクチンからなる群より選択されるメンバーを含む)(例えば、第2の結合剤ががん特異的または疾患特異的である)(例えば、第2の結合剤が、基体の表面に結合する前に循環細胞外小胞に結合する)(例えば、第2の結合剤に標識(例えばナノ粒子、例えばフルオロフォア)が付加されている)、本発明1031の方法。
[本発明1033]
循環細胞外小胞が膵臓がん細胞に由来する、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1034]
循環細胞外小胞が乳がん細胞に由来する、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1035]
体液が、血漿、血清、全血、唾液、脳脊髄液(CSF)、または尿を含む、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1036]
前記試料が、反射率画像化システム、例えば本明細書に記載の画像化システムを用いて評価される、前記本発明のいずれかの方法。
[本発明1037]
分光反射率画像化システムが、
第1の反射面と、第2の反射面を提供する部分的に透明な層とを有する基体;
第2の反射面に結合している、1種または複数種の結合剤の第1のセットを含む、バイオレイヤー;
照射光源、例えば、狭い周波数帯域の光を供給する少なくとも1つの光源を備えかつ該周波数帯域の光を基体に向ける照射光源(例えば、狭い周波数帯域の1つが、約300nm~約800nm、例えば約400nm~約600nm、例えば約405nm~約455nmの範囲の、例えば約420nmの波長を含む);ならびに
基体の第2の反射面に向けられ、かつ第1の反射面によって反射された照射光源からの光と、第2の反射面によって反射された照射光源からの光と、第2の表面にある粒子による散乱光とを表す画像化信号を生成するように適合された、画像化装置
を備える、本発明1036の方法。
[本発明1038]
第1の反射面がケイ素基体であり、透明な層が酸化ケイ素(SiO
2
)である、本発明1037の方法。
[本発明1039]
分光反射率画像化システムが、
画像化装置に接続され、かつ、画像化信号を受信してプログラム制御下でバイオレイヤーおよび/または第2の反射面にある粒子の画像を生成するように適合された、画像取得および画像処理システム
をさらに備える、本発明1037または1038の方法。
[本発明1040]
透明な層が、約10nm厚~約100nm厚、例えば約40nm厚~約70nm厚、例えば約60ナノメートル厚である、本発明1037~1039のいずれかの方法。
[本発明1041]
循環細胞外小胞(例えば、グリピカンを含むエキソソーム)を結合するために、基体の第1の鏡面反射境界面に結合剤を提供する工程;
第1の鏡面反射境界面に実質的に平行でありかつ第1の鏡面反射境界面の下に置かれた第2の鏡面反射境界面を提供する工程;
1つまたは複数の波長の光を実質的に中心とする光を、前記表面に照射する工程;
画像化装置を用いて、基体から反射または透過された光を画像化する工程;
基体の表面の分光反射率画像を生成する工程;および
画像上にある特徴(例えば、循環細胞外小胞の直径)を、該表面にある別個の循環細胞外小胞と相関付ける(例えば、それによって別個の循環細胞外小胞それぞれのサイズを評価する)工程
を含む、本発明1037~1040のいずれかの方法。
[本発明1042]
透明な層が約60nm厚であり、狭い周波数帯域の1つが420nmである(例えば、基体を水溶液に浸漬している間に画像化が行われる、例えば、基体を乾燥させた後に画像化が行われる)、本発明1037~1041のいずれかの方法。
[本発明1043]
画像化装置が、開口数が大きな高倍率対物レンズを有するカメラを備える、本発明1037~1042のいずれかの方法。
[本発明1044]
光の各波長が別々の狭帯域光源によって生じる、本発明1037~1042のいずれかの方法。
[本発明1045]
画像化装置が単色CCDまたはCMOSカメラである、本発明1037~1044のいずれかの方法。
[本発明1046]
前記表面に、標準的な明視野顕微鏡光学装置からの光源が照射され、反射光が接眼レンズに伝えられる、本発明1037~1045のいずれかの方法。
[本発明1047]
光の各波長が、異なる発光ピーク波長をそれぞれ有する別々の発光ダイオード(LED)によって生じ、画像化装置が単色カメラである、本発明1037~1046のいずれかの方法。
[本発明1048]
画像化装置が単色CCDまたはCMOSカメラである、本発明1037~1047のいずれかの方法。
[本発明1049]
層状の基体が、Siウェーハ上に層状に重ねられた約30~100nm(例えば、約60nm)のSiO
2
にある任意の場所を含む、本発明1037~1048のいずれかの方法。
[本発明1050]
前記表面に白色光が照射され、画像化装置がカラーカメラを備える、本発明1037~1049のいずれかの方法。
[本発明1051]
前記表面にRGB(赤色緑色青色)LEDが照射され、画像化装置がカラーカメラを備える、本発明1037~1050のいずれかの方法。
[本発明1052]
前記表面に広帯域光源が照射される、本発明1037~1051のいずれかの方法。
[本発明1053]
カメラが、カメラの光軸上に空間フィルターをさらに備える、本発明1037~1052のいずれかの方法。
[本発明1054]
光が非干渉性である、本発明1037~1053のいずれかの方法。
[本発明1055]
光の各波長が、別々の狭帯域光源によってまたは広帯域光源によって生じる、本発明1037~1054のいずれかの方法。
[本発明1056]
光の各波長が、異なる発光ピーク波長をそれぞれ有する別々の発光ダイオード(LED)によって生じる、本発明1037~1055のいずれかの方法。
[本発明1057]
画像化装置が、単色CCDカメラ、CMOSセンサー、およびカラーカメラからなる群より選択されるメンバーを備える、本発明1037~1056のいずれかの方法。
[本発明1058]
カメラが、カメラの光軸上に空間フィルターをさらに備える、本発明1057の方法。
[本発明1059]
粒子を検出する工程が、層状の基体の表面上の粒子の結合を検出することを含む、本発明1058の方法。
[本発明1060]
層状の表面の表面が、予め規定された粒子を結合するための結合剤を含み、溶液が、少なくとも1つの予め規定された粒子を含む、本発明1059の方法。
[本発明1061]
本明細書に記載の結合剤、例えばグリピカン(例えばグリピカン-1、例えばグリピカン-2、例えばグリピカン-3、例えばグリピカン-4、例えばグリピカン-5、例えばグリピカン-6)に特異的な結合剤、例えば抗体分子
が表面に配置されている基体、例えば本明細書に記載の基体。
[本発明1062]
前記結合剤に結合した循環細胞外小胞(例えば、エキソソーム)をさらに含む、本発明1061の基体。
[本発明1063]
第1の反射面と、第2の反射面を提供する薄い半透明層とを有する基体;
グリピカン(例えばグリピカン-1、例えばグリピカン-2、例えばグリピカン-3、例えばグリピカン-4、例えばグリピカン-5、例えばグリピカン-6)に特異的な1種または複数種の結合剤を含む、第2の反射面に結合しているバイオレイヤー;
1つの狭い周波数帯域の光を供給しかつその周波数帯域の光を基体に向ける少なくとも1つの光源を備える、照射光源;ならびに
基体の第2の反射面に向けられ、かつ第1の反射面および第2の反射面によって反射された照射光源からの光を表す画像化信号を生成するように適合された、画像化装置
を備える、分光反射率画像化システム。
[本発明1064]
第1の反射面がケイ素基体であり、半透明層が酸化ケイ素(SiO
2
)である、本発明1063の分光反射率画像化システム。
[本発明1065]
画像化装置に接続され、かつ、画像化信号を受信してプログラム制御下で第2の反射面にあるバイオレイヤーの画像を生成するように適合された、画像取得および画像処理システム
をさらに備える、本発明1063または1064の分光反射率画像化システム。
[本発明1066]
照射光源が白色光を発生させ、前記システムが、基体に向けられる少なくとも3つの狭い周波数帯域のうちの1つの光線をそれぞれ発生させる少なくとも1つのフィルターを有する色相環をさらに備える、本発明1063~1065のいずれかの分光反射率画像化システム。
[本発明1067]
がん細胞の表面に見出される抗原(例えばグリピカン(例えばグリピカン-1、例えばグリピカン-2、例えばグリピカン-3、例えばグリピカン-4、例えばグリピカン-5、例えばグリピカン-6))に特異的な結合剤(例えば、抗体分子)が表面に配置されている基体(例えば、本明細書に記載の基体)を備える、本発明1063~1066のいずれかの分光反射率画像化システムによる分析のためのカセット。
[本発明1068]
循環細胞外小胞(例えば、エキソソーム)と基体の表面との結合を検出するための方法であって、
基体の第1の鏡面反射境界面に、1種または複数種の結合剤(例えばグリピカン(例えばグリピカン-1、例えばグリピカン-2、例えばグリピカン-3、例えばグリピカン-4、例えばグリピカン-5、例えばグリピカン-6)に特異的な結合剤)を提供する工程;
第1の鏡面反射境界面に実質的に平行でありかつ第1の鏡面反射境界面の下に置かれた第2の鏡面反射境界面を提供する工程;
1つまたは複数の波長を実質的に中心とする光を、該表面に照射する工程;
画像化装置を用いて、基体から反射または透過された光を画像化する工程;
基体の表面の画像を生成する工程;および
画像上にある特徴を、該表面にある別個の循環細胞外小胞バイオマーカー(グリピカン(例えばグリピカン-1、例えばグリピカン-2、例えばグリピカン-3、例えばグリピカン-4、例えばグリピカン-5、例えばグリピカン-6))と相関付ける工程
を含む、方法。
[本発明1069]
画像化装置が、開口数が大きな高倍率対物レンズを有するカメラを備える、本発明1068の方法。
[本発明1070]
光の各波長が別々の狭帯域光源によって生じる、本発明1068または1069の方法。
[本発明1071]
画像化装置が単色CCDまたはCMOSカメラである、本発明1068~1070のいずれかの方法。
[本発明1072]
前記表面に、標準的な明視野顕微鏡光学装置からの光源が照射され、反射光が接眼レンズに伝えられる、本発明1068~1071のいずれかの方法。
[本発明1073]
光の各波長が、異なる発光ピーク波長をそれぞれ有する別々の発光ダイオード(LED)によって生じ、画像化装置が単色カメラである、本発明1068~1072のいずれかの方法。
[本発明1074]
画像化装置が単色CCDまたはCMOSカメラである、本発明1073の方法。
[本発明1075]
層状の基体が、Siウェーハ上に層状に重ねられた30~100nmの範囲(例えば、60nm)のSiO
2
にある任意の場所を含む、本発明1068~1074のいずれかの方法。
[本発明1076]
前記表面に白色光が照射され、画像化装置がカラーカメラを備える、本発明1068~1075のいずれかの方法。
[本発明1077]
前記表面にRGB(赤緑青)LEDが照射され、画像化装置がカラーカメラを備える、本発明1068~1076のいずれかの方法。
[本発明1078]
前記表面に広帯域光源が照射される、本発明1068~1077のいずれかの方法。
[本発明1079]
カメラが、カメラの光軸上に空間フィルターをさらに備える、本発明1068~1078のいずれかの方法。
[本発明1080]
層状の基体の表面にある粒子を検出するための方法であって、
層状の基体の表面に、結合剤、例えばグリピカン(例えばグリピカン-1、例えばグリピカン-2、例えばグリピカン-3、例えばグリピカン-4、例えばグリピカン-5、例えばグリピカン-6)に特異的な結合剤を提供する工程;
エキソソームバイオマーカー(グリピカン(例えばグリピカン-1、例えばグリピカン-2、例えばグリピカン-3、例えばグリピカン-4、例えばグリピカン-5、例えばグリピカン-6))を含む少なくとも1つの循環細胞外小胞を有する溶液を基体の表面と接触させる工程;
該表面に少なくとも1つの波長の光を照射する工程;
画像化装置を用いて、基体から反射または透過された光を画像化する工程;および
基体の表面の画像を生成して、層状の基体の表面にある細胞外循環小胞(例えば、エキソソーム)を検出する工程
を含む、方法。
[本発明1081]
層状の基体が、Si基体上に層状に重ねられたSiO
2
を含む、本発明1080の方法。
[本発明1082]
光が非干渉性である、本発明1080または1081の方法。
[本発明1083]
光の各波長が別々の狭帯域光源によって生じる、本発明1081~1082のいずれかの方法。
[本発明1084]
光の各波長が、異なる発光ピーク波長をそれぞれ有する別々の発光ダイオード(LED)によって生じる、本発明1083の方法。
[本発明1085]
光の各波長が白色光源によって生じる、本発明1083の方法。
[本発明1086]
光の各波長が標準的な明視野顕微鏡光学装置によって生じ、反射光が接眼レンズに伝えられる、本発明1083の方法。
[本発明1087]
画像化装置が単色CCDカメラまたはカラーカメラである、本発明1081~1086のいずれかの方法。
[本発明1088]
カラーカメラが3-D CCDカメラである、本発明1087の方法。
[本発明1089]
画像化装置が、開口数が大きな高倍率対物レンズを有するカメラを備える、本発明1081~1086のいずれかの方法。
[本発明1090]
カメラが、カメラの光軸上に空間フィルターをさらに備える、本発明1081~1089のいずれかの方法。
[本発明1091]
粒子を検出する工程が、層状の基体の表面上でのエキソソームナノ粒子の結合を検出することを含む、本発明1081~1090のいずれかの方法。
[本発明1092]
後続の照射ごとに増大する波長で光を基体に連続照射する工程を含む(例えば、複数の波長のうち後続のそれぞれの照射波長が、前回照射された波長より長い波長である)(例えば複数の波長がそれぞれ、約500nm~約750nm、例えば約525nm~約700nmの範囲内である)(例えば複数の波長のうちの第1の波長が約420nmであり、例えば複数の波長のうちの第2の波長が約535nmである)、本発明1068~1091のいずれかの方法。
【図面の簡単な説明】
【0080】
本開示の前述のおよび他の目的、局面、特徴、および利点は、添付の図面と共に考慮される以下の説明について言及することによって、さらに明らかになり、さらに深く理解される。
【0081】
【
図1】本発明の例示的な態様に従う、干渉測定を行うための分光反射率画像化システムの模式図を示す。
【
図2】本発明の例示的な態様に従う、本開示に従う画像化プラットフォームを用いた血漿からのGPC1エキソソームの直接検出を、走査型電子顕微鏡を用いた同じ試料の検出を横に並べて比較して示す。
【
図3】本発明の例示的な態様に従う、高倍率基体強化マイクロアレイ画像化を実行するのに望ましい、いくつかの特性を示す。
【
図4】本発明の例示的な態様に従う、高倍率基体強化マイクロアレイ画像化を実行するための選択肢として空間フィルターの使用を図示する。
【
図5】がん患者(膵臓がん患者、肺がん患者、または乳がん患者)から得た血漿中にあるエキソソーム上でのグリピカン-1およびグリピカン-3の表面発現を図示する。
【
図6】結合プローブによって機能付与された基体の模式図と、どのように、基体を照らす光が基体の2つの層からスペクトル的に反射されて、一方の基体表面に結合している粒子からの散乱光が干渉されるのかを示す。
【
図7】
図7Aは、本発明の例示的な態様に従う、基体を画像化するための機器の写真である。
図7Bは、本発明の例示的な態様に従う、分光反射率チップ(基体)の画像である。
図7Cは、本発明の例示的な態様に従う、試料が基体上を流れるのを可能にするマイクロ流体カセットの中に配置された分光反射率チップの画像である。
図7Dは、本発明の例示的な態様に従う、基体上にある結合プローブのアレイの図である。
【
図8A】
図8A~8Cは、本発明の例示的な態様に従って、物理的吸着または結合剤によってエキソソームなどの細胞外小胞をセンサーチップ上で単離できることを図示した模式図を示す。例えば、結合剤は、生体粒子表面電荷、グリコシル化、脂質組成物、および/または表面タンパク質を標的とすることができる。
図8Aは、本発明の例示的な態様に従って、結合剤または複数種の結合剤(例えば、タンパク質マーカー、例えば、抗CD63、抗CD9、抗CD81、Tim-4、および抗フロチリン-1;例えば、炭水化物結合レクチン、例えば、スノードロップ(Galanthus nivalis)レクチン(GNA))の組み合わせを用いて機能付与された基体の模式図を示す。
【
図8B】
図8Bは、本発明の例示的な態様に従って、マーカーの組み合わせを混合し、次いで、基体上に固定化できることを示した模式図を示す。基体には、一緒に混合した2種類以上の結合剤を用いて機能付与されている。
【
図8C】
図8Cは、本発明の例示的な態様に従って、細胞外小胞およびエキソソームを分離するために、試料を、機能付与された基体と接触させることを示した模式図を示す。捕獲された小胞の量は干渉バイオセンサー(例えば、SP-IRIS)を用いて定量することができる。
【
図9】本発明の例示的な態様に従って、基体上にある細胞外小胞(例えば、エキソソーム)を単離する方法の模式図を示す。細胞外小胞およびエキソソームを単離するために、試料を、機能付与された基体と接触させる。捕獲された小胞の量は、単離後または単離中にSP-IRISを用いて定量することができる。捕獲された細胞外小胞および/またはエキソソームを含有する基体を固定および透過処理する。捕獲された細胞外小胞および/またはエキソソームを二次マーカーで標識し、疾患特異的な可能性のある二次マーカー(例えば、グリピカン-1)を有する結合粒子の割合を測定することができる。
【
図10】本発明の例示的な態様に従って、基体上にある細胞外小胞(例えば、エキソソーム)を単離する方法の模式図を示す。
【
図11】ケイ素と半透明な二酸化ケイ素上層を備えるSP-IRIS基体に吸着された直径100nmのポリスチレンビーズからの信号をパーセントコントラストで示す。ナノ粒子は二酸化ケイ素上層に吸着される。様々な酸化物の厚さと照射波長についてパーセントコントラストを示した。
【
図12】40~220ナノメートルの範囲のナノ粒子直径の信号をパーセントコントラストで示す。様々な酸化物の厚さと照射波長について粒子コントラストをプロットした。
【
図13】本発明の例示的な態様に従う、がん由来循環細胞外小胞(例えば、エキソソーム)を単離する方法を示す。
【
図14】本発明の例示的な態様に従う、がん由来循環細胞外小胞(例えば、エキソソーム)を単離する方法を示す。
【
図15】本発明の例示的な態様に従う、循環細胞外小胞(例えば、エキソソーム)と基体の表面との結合を検出する方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0082】
詳細な説明
本明細書全体を通して、組成物が特定の成分を有するか、含む(including)か、もしくは含む(comprising)と述べられている、または方法が特定の工程を有するか、含む(including)か、もしくは含む(comprising)と述べられており、さらに、列挙された成分から本質的になる(consist essentially of)か、列挙された成分からなる(consist of)本発明の組成物があり、列挙された処理工程から本質的になるか、列挙された処理工程からなる本発明に従う方法があると意図される。
【0083】
工程の順序またはある特定の行為を実行するための順序は、本発明が実施可能である限り重要でないことが理解されるはずである。さらに、2つ以上の工程または行為が同時に行われてもよい。
【0084】
本明細書における、例えば背景のセクションにおける、どんな刊行物の言及も、この刊行物が、本明細書において示す任意の請求項について先行技術となることを認めるものではない。背景のセクションは、分かりやすくする目的で示され、どの請求項についても先行技術の説明であると意図されない。
【0085】
1つまたは複数の態様では、本発明は、ナノ粒子細胞外小胞、例えばエキソソームと、基体の表面にある結合剤との結合を検出することができる器具に関する。結合剤を、層状の基体表面に固定化することができ、層状の基体表面には、前記ナノ粒子が基体表面にある結合層上に固定化されると変化する分光反射率シグネチャーがある。特に、本明細書に記載のように、画像処理システムは、基体反射特性の変化の関数として細胞外小胞を検出し、画像処理システムは、細胞外小胞を正確に、かつ定量的に大きさで選別するフォワードモデル(forward model)を含む。特に、前記装置の好ましい態様は、粒子からの散乱光(光の散乱)による、結合層からの反射光の干渉/混合を測定するために単一の波長(帯域)の光を使用する。細胞外小胞が結合層に結合すると、これらの物体からの散乱光は、基体表面からの反射光に干渉し、それにより、細胞外小胞は画像化装置によって別個の物体(ドット)として観察可能になる。基体には1つ(または複数の)波長の光が照射され、試料中にある1つまたは複数の細胞外小胞物体が結合層に結合したら、ナノ粒子標的は1個の別個の物体として画像に現れ、それによって、ナノ粒子標的の1つ1つの結合を検出し、細胞外小胞を定量的に大きさで選別することが可能になる。この器具を用いると、ハイスループット用途のために表面の全視野を同時に画像化することが可能になる。この器具および方法には、低コストで、ハイスループットで、迅速に、かつ持ち運び可能に検出するなどの、いくつかの利点がある。
【0086】
様々な生体分子標的を検出するために前記装置を使用する方法も本明細書において説明される。一部の局面において、本明細書に記載の装置および方法は、非干渉性光を供給する光源を用いて少なくとも1つの波長をサンプリングする工程、および画像化装置を用いて反射光または透過光を画像化する工程を含む、基体表面全体の応答を同時に記録するためのハイスループット方法を提供する。前記装置は、検出の干渉原理のための照射光源として発光ダイオード(LED)を備えてもよい。干渉測定を用いると、光路長差(OPD)を用いて望ましい感度および分解能を得ることができる。
【0087】
従って、分子またはナノ粒子または細胞外小胞、例えばエキソソームと、基体の表面との結合を基体強化検出するための装置および方法が本明細書において説明される。前記装置は、例えば、LEDを用いて、基体に少なくとも1つの波長の光を照射し、画像化装置、例えば2-Dアレイピクセルカメラによって、反射率を記録することにより反射スペクトルをサンプリングする。このように、全視野の反射スペクトルが同時に記録される。この装置および方法を用いて、ハイスループットマイクロアレイ画像化を達成することができる。本発明はまた、30nm~数(2~3)ミクロンの範囲の生体分子ナノ粒子標的を検出するための高倍率画像化を提供することができる。このような高倍率検出は、例えば、捕捉表面にある1個の粒子を検出するのに使用することができる。
【0088】
前記機器およびプロセスはハイスループット分光法技法を提供し、少なくとも1つの波長のサンプリングはLEDなどの狭帯域光源を用いることによって実現し、反射光または透過光が単色CCDカメラなどの画像化装置に対して画像化され、従って、画像化された表面全体の応答が同時に記録される。マイクロアレイは、層状の基体の上に(例えば、Siウェーハ上に層状に重ねられた、数nmのSiO2から100nmのSiO2までの任意の場所)に作製することができる。好ましい態様は、緑色LED光源(535nm)と、Siウェーハ上に層状に重ねられた100nmのSiO2酸化物を含む。第2の好ましい態様は、紫外LED光源(420nm)と、Siウェーハ上に層状に重ねられた60nmのSiO2酸化物を含む。第3の好ましい態様は、複合媒体において画像化する時に使用する場合、紫外LED光源(420nm)と、Siウェーハ上に層状に重ねられた30~60nmのSiO2酸化物を含む。
【0089】
図1は、本発明の態様に従う分光反射率画像化システム100の模式図を図示する。システム100は、酸化物層124と、検出しようとする粒子126を有する基体122に光を向ける照射光源101、ならびに基体122、酸化物層124、および粒子126によって反射された光の画像を取り込むための画像化システム130を備えてもよい。システム100はまた、照射光源101を制御し、画像化システム130から画像化信号を受信するためのコンピュータシステム140も備えてもよい。好ましい態様では、照射光源101は、実質的に狭い帯域の波長を有する1つの波長で非干渉性光を供給する非干渉性光源(LED)102を備える。一部の態様では、照射光源101は、3つの異なる波長の非干渉性光を生じる3つ以上の非干渉性光源102、104、106を備えてもよい。発光ダイオード(LED)または同等の光源はそれぞれ、複数の波長のうちの1つの非干渉性光を提供する。一部の態様では、照射光源101は、同じ波長の光を供給し、幾何学的な(例えば、円形または長方形の)、不ぞろいの、または空間的にずらされたアレイの形で配置された1つまたは複数の照射要素を含む照射要素のアレイを備えてもよい。照射光源101からの光は、集光レンズ112および他の光学要素(例えば、偏光レンズ、フィルター、および光調節部品、図示せず)を通って、光を基体122、酸化物層124、および粒子126に向けるビームスプリッター114に向けられてもよい。層状の基体122の実質的に全ての表面に均一に照射するように光を調節する光学部品を設けてもよい。基体表面の画像を取り込むために、基体122、酸化物層124、および粒子126によって反射された光は、ビームスプリッター114およびイメージングレンズ134を通ってカメラ132に向けられてもよい。カメラ132は、例えばCCDカメラ(カラーまたは単色)でもよく、画像を表す画像信号を生じる。画像信号は無線接続または有線接続によってカメラ132からコンピュータシステム140に送られてもよい。
【0090】
コンピュータシステム140は、1つまたは複数の中央処理装置(CPU)および関連するメモリ(揮発性メモリおよび非揮発性メモリ、例えば、RAM、ROM、フラッシュメモリ、光学メモリ、および磁気メモリを含む)と、情報をユーザに示すためのディスプレイ146を備えてもよい。メモリは、画像データを記憶および処理し、基体表面の画像を生成するようにCPUが実行することができる1つまたは複数のコンピュータプログラムを記憶してもよい。画像データおよび画像を解析して、基体122の酸化物層124の表面にある干渉パターンおよび粒子126を検出するために、さらなるコンピュータプログラムが設けられてもよい。
【0091】
コンピュータプログラムは、干渉測定を行うことができる本発明の1つまたは複数の態様に従う方法を実行するようにコンピュータによって実行することができる。コンピュータプログラムは、層状の基体を照射するのに使用することができる1つ(または複数の)LEDを備える照射光源101を制御することができる。底面と上面との間の光路長差(OPD)によって干渉パターンが生じる。干渉パターンは、強度変化として、基体全体にわたりCCDカメラ132によって一度に画像化することができる。
【0092】
別の態様では、それぞれの非干渉性光源は、層状の基体122に光を向ける光ファイバー(図示せず)でもよい。層状の基体122の実質的に全ての表面に均一に照射するように光を調節するために光学部品が設けられてもよい。
【0093】
図2A~2Bは、本開示に従う画像化プラットフォームを用いた血漿からのGPC1エキソソームの直接検出を、走査型電子顕微鏡を用いた同じ試料の検出を横に並べて、比較して示す。
図2Aから分かるように、インキュベートしたPDAC患者試料を、本明細書において開示されたセンサープラットフォームを用いて画像化し、次いで、試料を四酸化オスミウム(脂質特異的染料)で染色して、
図2Bに示したように試料を電子顕微鏡で視覚化した。インキュベートしたPDAC患者試料をセンサープラットフォームを用いて画像化し、
図2Bにある電子顕微鏡からの画像と同様の領域を視覚化するために、
図2Aに示したようにトリミングした。横に並べた比較から分かるように、画像化された試料間の比較を容易にするために、試料からの共通する大きな特徴を赤色で強調した。緑色の丸は、画像化された小さなナノ粒子の一部を示す。
【0094】
図3は、高倍率基体強化マイクロアレイ画像化を実行するのに望ましい特性を証明する。高倍率画像化を行うためには、開口数(NA)が大きな対物レンズを使用しなければならない。光は広範囲の角度で集められるので、(図に示したように)光の大部分は平均される。薄い酸化物を光が通過する時には光の分散が小さくなるので、薄い酸化物を使用することでも空間分解能の限界が上がる。
【0095】
図4は、高倍率基体強化マイクロアレイ画像化を実行するための選択肢として空間フィルターの使用を図示する。単一粒子検出のための方位分解能と、反射率曲線のコントラストを維持するために、ある範囲の角度の反射光を除去する空間フィルターをコレクションパス(collection path)に配置することが望ましい場合がある。石けん泡の表面にある色を見ることで干渉を簡単に観察することができる。光干渉を用いた高精度測定の究極の例の1つは、アトメートル(attometer)能力のあるLIGOである。
【0096】
図5は、がん患者(膵臓がん患者、肺がん患者、または乳がん患者)から入手した血漿中にあるエキソソーム上でのグリピカン-1およびグリピカン-3の表面発現を図示する。測定は、ヒト血漿からグリピカン-1およびグリピカン-3を発現するエキソソームを計数するための分光反射率画像化技法を用いて行った。データから、がん患者ではグリピカン-1および/またはグリピカン-3の発現が高いことが分かる。
【0097】
図6は、ナノ粒子細胞外小胞、例えばエキソソームが、基体の表面にある結合剤に吸着された時の反射光の干渉散乱を図示する。ケイ素表面および二酸化ケイ素表面を含む異なる層からの反射は、結合剤によって捕獲されたナノ粒子から反射された光に干渉し、反射光の変化を引き起こす。反射光の変化は画像処理システムによって検出することができる。特に、基体表面の結合層にある前記ナノ粒子によって入射光の反射シグネチャーが変えられて、ケイ素表面および二酸化ケイ素表面から反射された光に干渉する。
図1の画像化システムは、ケイ素表面および二酸化ケイ素の反射特性と比較して、細胞外小胞からの反射の干渉を検出する。画像処理システムは、細胞外小胞を正確に、かつ定量的に大きさで選別するフォワードモデルを含む。画像化装置の好ましい態様は、粒子からの散乱光(光の散乱)による、結合層からの反射光の干渉/混合を測定するために単一の波長(帯域)の光を使用する。
【0098】
図7Aは、本明細書において説明するような、基体を画像化するための機器の写真である。
図7Bは、本明細書において説明するような分光反射率チップ(基体)の画像である。
図7Cは、試料が基体上を流れるのを可能にするマイクロ流体カセットの中に配置された分光反射率チップの画像である。
図7Dは、本明細書において説明するような、基体上にある結合プローブのアレイの図である。
【0099】
図8A~8Cは、本発明の例示的な態様に従って、物理的吸着または結合剤によってエキソソームなどの細胞外小胞をセンサーチップ上で単離できることを図示した模式図を示す。例えば、結合剤は、生体粒子表面電荷、グリコシル化、脂質組成物、および/または表面タンパク質を標的とすることができる。
【0100】
図8Aは、本発明の例示的な態様に従って、結合剤または複数種の結合剤(例えばタンパク質マーカー、例えば、抗CD63、抗CD9、抗CD81、Tim-4、および抗フロチリン-1;例えば炭水化物結合レクチン、例えばスノードロップレクチン(GNA))の組み合わせを用いて機能付与された基体の模式図を示す。
【0101】
図8Bは、
図8Aに図示した模式図の代わりとしてマーカーの組み合わせを混合し、次いで、基体上に固定化できることを示す。基体は、一緒に混合した2種類以上の結合剤を用いて機能付与されている。
【0102】
図8Cは、本発明の例示的な態様に従って、細胞外小胞およびエキソソームを単離するために、試料を、機能付与された基体と接触させることを示した模式図を示す。捕獲された小胞の量は干渉バイオセンシング(例えば、SP-IRIS)を用いて定量することができる。
【0103】
図9は、本発明の例示的な態様に従って、基体上にある細胞外小胞(例えば、エキソソーム)を単離する方法の模式図を示す。細胞外小胞およびエキソソームを単離するために、試料を、機能付与された基体と接触させる。捕獲された小胞の量は、単離後または単離中にSP-IRISを用いて定量することができる。捕獲された細胞外小胞および/またはエキソソームを含有する基体を、固定および透過処理する。捕獲された細胞外小胞および/またはエキソソームを二次マーカーで標識し、疾患特異的な可能性のある二次マーカー(例えば、グリピカン-1)を有する結合粒子の割合を測定することができる。
【0104】
図10は、本発明の例示的な態様に従って、基体上にある細胞外小胞(例えば、エキソソーム)を単離する方法の模式図を示す。
【0105】
図11は、ケイ素と半透明な二酸化ケイ素上層を備えるSP-IRIS基体に吸着された直径100nmのポリスチレンビーズからの信号をパーセントコントラストで示す。ナノ粒子は二酸化ケイ素上層に吸着されている。様々な酸化物の厚さと照射波長についてパーセントコントラストを示した。
【0106】
図12は、40~220ナノメートルの範囲のナノ粒子直径について信号をパーセントコントラストで示す。様々な酸化物の厚さと照射波長について粒子コントラストをプロットした。
【0107】
一部の態様では、発光ピーク波長が異なる3種類以上のLEDを光源として使用することができる。複数種の非干渉性光源が用いられる一部の態様では、使用される光源の波長の範囲は狭く、それぞれ個々の光源の波長間にある幅は狭い。一部の態様では、1種または2種類の光源が用いられる。
【0108】
本明細書に記載の一部の態様では、マイクロアレイまたは結合剤は、Siウェーハ上に層状に重ねられた数ナノメートル~100nmのSiO2の任意の場所を含む、層状の基体の上に作製される。一部の態様では、マイクロアレイまたは結合剤は、Siウェーハ上に層状に重ねられた95~100nmのSiO2を含む、層状の基体の上に作製される。一部の態様では、マイクロアレイまたは結合剤は、Siウェーハ上に層状に重ねられた30~60nmのSiO2を含む、層状の基体の上に作製される。好ましい態様は、緑色LED光源(ほぼ535nm)と、Siウェーハ上に層状に重ねられた100nmのSiO2酸化物を含む。第2の好ましい態様は、紫外LED光源(ほぼ420nm)と、Siウェーハ上に層状に重ねられた60nmのSiO2酸化物を含む。第3の好ましい態様は、複合媒体において画像化する時に使用する場合、紫外LED光源(ほぼ420nm)と、Siウェーハ上に層状に重ねられた30~60nmのSiO2酸化物を含む。本明細書に記載の装置および方法は、部分的には、例えば、高倍率干渉測定に使用することができるが、ある特定の試料中にある細胞外小胞、例えば、がんのエキソソームバイオマーカーを検出することに限定されない。
【0109】
本明細書において定義されるように「粒子」とは、半径が数ナノメートルから数ミクロンまでの、本明細書に記載の装置および方法によって検出される任意の標的を指す。
【0110】
高倍率干渉測定の使用は生体分子標的と粒子を検出するアプローチである。本明細書に記載の方法および装置は、開口数が大きな高倍率対物レンズによる画像化と、カメラの光軸上への空間フィルターの配置を提供する。開口数が大きな対物レンズは高倍率での画像化を可能にし、空間フィルターは、高角度またはある範囲の角度の入射光からの光を集めることだけで、層状の基体によって引き起こされた干渉のコントラストを維持するのに用いられる。記載の光学装置は、コントラストまたは方位分解能を失うことなくサブ波長構造の検出を可能にする。
【0111】
本明細書に記載の画像化装置を簡素化する別のアプローチは広帯域光源とカラーCCDカメラを使用するアプローチでもよく、この場合、スペクトルサンプリングは前記カメラによって行われる。別々の色を検出するように割り当てられたカメラのピクセルは、ある特定のスペクトルバンドに含まれる光の強度を抽出するのに使用することができ、従って、スペクトル検出スキームを可能にする。
【0112】
LED光源を用いる前記態様の利点の1つは、LEDをベースとする照射光源を用いると、画像化装置は頑丈になり、持ち運びできるようになり、従って、野外での適用が可能になることである。別の利点は、本発明の高倍率性能である。倍率が高いと、結合剤表面にある、たった1個の生体分子標的(例えば、長さまたは直径が>数nm)を検出することが可能になる。一部の態様では、白色光源またはRGB LEDと3CCDまたは他のカラーカメラを用いて、時間分解能を高めるために3つの別個の波長でスペクトル情報を取り込むことができる。これは、例えば、動的な生物学的相互作用を研究するのに有益である。
【0113】
本明細書に記載の装置は、表面に結合している試料中の細胞外小胞、例えばエキソソームバイオマーカーを基体強化検出するためにLED照射光源を使用する方法を容易にする。前記装置は、一局面では、基体表面全体の応答を同時に記録するためのハイスループット分光法を提供する。前記装置および方法は、任意のハイスループット用途において使用することができる。従って、本発明の一局面は、照射光源および画像化装置を含む、固体基体のハイスループット光センシング用のプラットフォームまたはシステムを提供する。
【0114】
一部の態様では、画像化装置はカメラである。前記装置は、基体上にある細胞外小胞、例えばエキソソームバイオマーカーの、多重化されかつ動的な検出に使用することができる。
【0115】
前記装置の全態様は、コンピュータ可読媒体に記録されたコンピュータで実行可能な命令を備え、実行された時にコンピュータが方法の工程を行うようにする機能モジュールとして説明することができる。分かりやすくするためにモジュールは機能によって分けることができる。しかしながら、モジュールはコードの別個のブロックに対応する必要はなく、様々な媒体に記憶され、何度も実行される様々なコード部分を実行することによって、説明された機能は行われてもよいことが理解されるはずである。
【0116】
一部の態様では、前記装置は、以下を備える、固体基体の光センシングに関するデータを得るためのシステムを提供する、a)光情報を計測するように構成されている計測モジュールであって、光情報が、狭帯域光源を用いて少なくとも1つの波長をサンプリングする工程を含む、計測モジュール;b)計測モジュールからのデータ出力を記憶するように構成されている記憶装置;c)記憶装置に記憶されたデータを対照データと比較するように適合されている比較モジュールであって、比較が検索された内容である、比較モジュール;およびd)ユーザに対して1ページ分の検索された内容をクライアントコンピュータに表示するためのディスプレイモジュールであって、検索された内容が基体の光吸収プロファイルであり、ある特定の光吸収プロファイルがエキソソームバイオマーカーの結合を示す、ディスプレイモジュール。
【0117】
一部の態様では、本発明は、方法をコンピュータで実行するために、計測モジュールおよび比較モジュールを含むソフトウェアモジュールを規定するためのコンピュータで読取り可能な命令が記録されている、コンピュータ可読媒体またはコンピュータ可読メモリを含むコンピュータプログラムを提供し、方法は以下の工程を含む:a)計測モジュールを用いて光情報を計測する工程であって、光情報が、狭帯域光源を用いて少なくとも1つの波長をサンプリングすることを含む、工程;b)計測モジュールからデータ出力を記憶する工程;c)比較モジュールを用いて、記憶装置に記憶されたデータを対照データと比較する工程であって、比較が、検索された内容である、工程、およびd)ユーザに対して1ページ分の検索された内容をクライアントコンピュータに表示する工程であって、検索された内容が固体基体の光吸収プロファイルであり、ある特定の光吸収プロファイルがエキソソームバイオマーカーの結合を示す、工程。
【0118】
「コンピュータ可読媒体」は、本発明の方法の工程を実施するためのデータおよびコンピュータで実行可能な命令を備えてもよい。適切なコンピュータ可読媒体には、フロッピーディスク、CD-ROM/DVD/DVD-ROM、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリ、ROM/RAM、磁気テープなどが含まれる。コンピュータで実行可能な命令は、適切なコンピュータ言語またはいくつかの言語の組み合わせで書くことができる。基本的な計算生物学方法は、例えば、Setubal and Meidanis et al. Introduction to Computational Biology Methods (PWS Publishing Company, Boston, 1997); Salzberg, Searles, Kasif, (Ed.), Computational Methods in Molecular Biology, (Elsevier, Amsterdam, 1998); Rashidi and Buehler, Bioinformatics Basics: Application in Biological Science and Medicine (CRC Press, London, 2000)、およびOuelette and Bzevanis Bioinformatics: A Practical Guide for Analysis of Gene and Proteins (Wiley & Sons, Inc., 2nd ed., 2001)に記載されている。
【0119】
一部の局面において、前記装置の態様の機能モジュールは、計測モジュール、記憶装置、比較モジュール、およびディスプレイモジュールを含む。計測モジュールは、光学機器を用いて光情報を計測および提供するための、コンピュータで実行可能な命令を含んでもよい。本明細書で使用する「光学機器」とは、観察のために画像を向上するために光波を処理するか、または多数の特徴的な光学特性のうちの1つを計測するために光波(もしくは光子)を分析する任意の機器を指す。
【0120】
光学特性を計測するための公知の計測モジュールには、例えば、顕微鏡、カメラ、干渉計(光波の干渉特性を測定する場合)、光度計(光強度を測定する場合);偏光計(偏光の分散または回転を測定する場合)、反射率計(表面または物体の反射率を測定する場合)、屈折計(様々な材料の屈折率を測定する場合)、分光計またはモノクロメーター(化学分析または材料分析の目的で光スペクトルの一部を作成または測定する場合)、オートコリメーター(角度ずれ(angular deflection)を測定するのに用いられる)、およびレンズ屈折計(vertometer)(ガラス、コンタクトレンズ、および拡大鏡レンズなどのレンズの屈折力を計測するのに用いられる)が含まれるが、これに限定されない。
【0121】
本明細書において定義される「スペクトルグラフ」または「分光計」は、電磁スペクトルの特定の部分にわたって光の特性を測定するのに用いられる光学機器、典型的には、材料を特定するために分光分析において用いられる光学機器である。測定される変数は最も頻繁には光の強度であるが、例えば、偏光状態の場合もある。通常、独立変数は光の波長であり、光の波長は普通、1メートルの何分の1で表されるが、波長と相互関係のある、光子エネルギーに正比例する単位、例えば、波数または電子ボルトで表される時もある。分光計は、スペクトル線を作成し、その波長および強度を測定するために分光法において用いられる。分光計とは、γ線およびX線から遠赤外線までの非常に広い範囲の波長にわたって動作する機器に適用される用語である。関心対象の領域が可視スペクトルの近くに制限されるのであれば、この研究は分光光度法と呼ばれる。
【0122】
分光光度法は分光光度計の使用を伴う。本明細書において定義される「分光光度計」とは、色の関数として、さらに具体的には色の波長の関数として強度を測定することができる光度計(光の強度を測定するための装置)である。多くの種類の分光光度計がある。分光光度計を分類するのに用いられる最も重要な違いの中には、分光光度計が扱う波長、分光光度計が用いる測定法、分光光度計がスペクトルを取得するやり方、および分光光度計が測定するように設計されている強度変化の原因がある。分光光度計の他の重要な特徴にはスペクトルバンド幅と線形範囲が含まれる。2つの主な種類の分光光度計;シングルビームとダブルビームがある。ダブルビーム分光光度計は、2つの異なる光路での光強度の比を測定し、シングルビーム分光光度計は絶対的な光強度を測定する。比の測定の方が簡単であり、一般的に安定性が高いが、シングルビーム機器には、例えば、ダブルビームよりも広い動的な範囲を有する可能性があり、コンパクトになり得るという利点がある。歴史的に見て、分光光度計は、スペクトルを分析するモノクロメーターを使用するが、光センサーのアレイを使用する分光光度計もある。特に赤外分光光度計については、フーリエ変換赤外線と呼ばれる技法においてスペクトル情報を素早く取得するためにフーリエ変換法を使用する分光光度計がある。分光光度計は定量的に物質)。分光光度計の最もよくある用途は光吸収の測定であるが、拡散反射または鏡面反射を測定するように設計することができる。厳密には、発光であってもルミネセンス機器の半分は一種の分光光度計である。
【0123】
計測モジュールにおいて計測された光情報は記憶装置に記憶装置に保存され、記憶装置によって読み取られる。本明細書で使用する「記憶装置」は、任意の適切な計算器具もしくは処理器具、またはデータもしくは情報を記憶するように構成もしくは適合されている他の装置を含むことが意図される。本発明との使用に適した記憶装置の例には、独立型の計算器具;ローカルエリアネットワーク(LAN)、広域ネットワーク(WAN)、インターネット、イントラネット、およびエキストラネットを含む通信ネットワーク;ならびに「クラウド」を含むローカル処理システムおよび分散処理システムが含まれる。記憶装置には、磁気記憶媒体、例えば、フロッピーディスク、ハードディスク記憶媒体、および磁気テープ;光学記憶媒体、例えば、コンパクトディスク;電子記憶媒体、例えば、RAM、ROM、EPROM、EEPROMなど;一般的なハードディスクおよびこれらのカテゴリーのハイブリッド、例えば、磁気記憶媒体/光学記憶媒体も含まれるが、これに限定されない。媒体は、配列情報または発現レベル情報が記録されるように適合または構成されている。データは、典型的には、例えば、インターネットを介して、ディスケット上で、または他の任意の形式の電子通信もしくは非電子通信を介して電子的に伝達し、読み取ることができるデジタル形式で提供される。
【0124】
本明細書で使用する「記憶された」とは、情報を装置から読み戻すことができるように情報を記憶装置に記憶するためのプロセスを指す。当業者は、配列情報または発現レベル情報を含む製品を作製するために情報を公知の媒体に記録するための現在公知の任意の方法を容易に採用することができる。
【0125】
様々なソフトウェアプログラムおよびフォーマットを用いて、光情報を記憶装置に記憶することができる。任意の数のデータプロセッサ構成フォーマット(例えば、テキストファイルまたはデータベース)を用いて、情報が記録されている媒体を入手または作成することができる。
【0126】
コンピュータで読取り可能な形で光情報を得ることによって、光情報を読取り可能な形で用いて、特定の光学プロファイルを、比較モジュールのデータベース内に記憶された光情報と比較することができる。例えば、ある特定の試料からの計測された光情報の直接比較を、対照データ光情報(例えば、対照試料から得たデータ)と比較することができる。コンピュータで読取り可能な形で行われた比較は、比較モジュールからの検索された内容であり、検索された内容は様々な手段によって処理することができる。
【0127】
次いで、検索された内容は「ディスプレイモジュール」によって表示することができる。
【0128】
本明細書で使用するカセットとは、ケイ素/二酸化ケイ素チップと、透明かつ高品質のイメージングウィンドウ(imaging window)(COPまたはポリカーボネート)と細い流体チャンネルを備えるように構成されていると定義される。
【0129】
本明細書において定義されるように「発光ダイオード(LED)」とは、半導体ダイオードに基づく電子光源である。ダイオードに順方向バイアスをかける(スイッチを入れる)と、電子はホールと再結合することができ、エネルギーは光の形で放出される。この効果はエレクトロルミネセンスと呼ばれ、光の色は半導体のエネルギーギャップによって決定される。組み込まれた光学部品が放射パターンを形作り、ある特定の溶液を通過した光の一部分の測定を助けるので、LEDは、通常、面積が小さい(1mm未満)。分光光度計では、ランプからの光は、連続スペクトルからある特定の波長の光を取り出すモノクロメーターを通って導かれる。この光は、測定されている試料を通過する。試料の後に、残った光の強度が光ダイオードまたは他の光センサーを用いて測定され、次いで、この波長の透過率が計算される。手短に言うと、分光光度計での事象の順序は以下の通りである。光源が試料を照らし、試料が光を吸収し、検出器が、試料が吸収した光の量を検出し、次いで、検出器は、試料が吸収した光の量を数値に変換し、この数値は、さらなる操作(例えば、曲線平滑化(curve smoothing)、ベースライン補正)のために比較モジュールに伝えられる。多くの分光光度計は、「ゼロイング(zeroing)」として知られる手順によって較正しなければならない。ある標準物質の吸光度がベースライン値として設定され、そのため、他の全ての物質の吸光度は、最初の「ゼロに設定された(zeroed)」物質と比べて記録される。次いで、分光光度計は%吸光度(最初の反射に対する吸収された光の量)を表示する。通常のダイオードと同様に、LEDは、p-n接合を作り出すために不純物が含浸またはドープされた半導体材料のチップからなる。他のダイオードと同様に、電流はp側すなわち陽極からn側すなわち陰極に簡単に流れるが、逆方向には流れない。電荷担体である電子とホールは様々な電圧で電極から接合に流入する。電子がホールと接触すると、低エネルギーレベルになり、光子の形でエネルギーを放出する。放出された光の波長、従って、光の色は、p-n接合を形成する材料のバンドギャップエネルギーに左右される。ケイ素ダイオードまたはゲルマニウムダイオードでは、これらが間接バンドギャップ材料であるので、電子とホールは、光を放出しない非放射遷移によって再結合する。LEDに用いられる材料は、近赤外光、可視光、または近紫外光に対応するエネルギーをもつ直接バンドギャップを有する。LEDは、通常、n型基板上に組み立てられ、電極は、その表面に配置されたp型層に取り付けられる。あまり一般的ではないがp型基板もある。多くの商用LED、特に、GaN/InGaNはサファイア基板も使用する。LED製造に用いられる、ほとんどの材料は屈折率が非常に高い。このことは、多くの光が反射されて、材料の材料/空気表面境界面に戻されることを意味する。本発明に用いられるLEDには以下が含まれるが、これに限定されない。
【0130】
本明細書において定義される基体表面は「鏡面反射境界面」を含んでもよい。このような鏡面反射境界面は、入射光が表面から「鏡面反射」、すなわち、鏡のような光反射(または時として他の種類の波)を受ける表面を指す。この場合、1つの入射方向からの光(1本の光線)が1つの出射方向に反射される。表面、基体、または境界面のこのような鏡面反射挙動は反射の法則によって説明される。反射の法則は、入射光(入射線)の方向と、反射された出射光(反射線)の方向が面法線(surface normal)に対して同じ角度をなし、従って、入射角が反射角に等しいことを示し、数式ではθi=θrと定義される。鏡面反射をよく表している第2の特徴は、入射方向、法線方向、および反射方向が同一平面上にあることである。鏡面反射は、例えば、光沢計を用いて正確に測定することができる。この測定は物体の屈折率に基づいている。本明細書に記載の局面の一部の態様では、鏡面反射境界面は、透明な誘電性の層を有する基体、例えば、ケイ素基体上にある酸化ケイ素(SiO2)層を含む。本明細書中の局面の一部の態様では、酸化ケイ素(SiO2)層には、その上に、ナノ粒子、例えば、エキソソームバイオマーカーに結合するための結合剤の層がある。一部の態様では、別の透明な誘電性の層、例えば、窒化ケイ素ならびに他のコーティングを、薄い透明な層または鏡面反射境界面層として使用することができる。
【0131】
センサーおよび方法の用途
試料中にある生物学的細胞外小胞、例えば、エキソソーム、例えば、エキソソームバイオマーカー、例えば、細胞表面バイオマーカーを含むエキソソームを検出する能力は、細胞生理学と疾患進行の両方の理解と、様々な応用例、例えば、早期かつ迅速な検出での使用の根底をなしている。研究および医学診断からがんの検出まで及ぶナノ粒子検出を伴う様々な用途に有用な、迅速な、高感度の、簡単に使える、かつ安価なバイオセンサーが本明細書において説明される。
【0132】
従って、一局面では、本明細書に記載の基体は、試料中にある細胞外小胞、例えば、エキソソーム、例えば、エキソソームバイオマーカー、例えば、細胞表面バイオマーカーを含むエキソソームと基体層との結合を検出するのに用いられる。この場合、試料中に存在するエキソソームバイオマーカーが基体層と接触して結合すると、試料の非存在下での光路長と比べて光路長が変化し、その結果、本明細書に記載の装置および方法によって干渉パターンが検出および測定される。一部の態様では、複数種の細胞外小胞が基体層に結合し、本明細書に記載の装置および方法によって検出されるように、基体と接触する試料には複数種の生体分子標的がある場合がある。
【0133】
前記装置および基体は、同時に、すなわち多重用途において1つの、または複数の特異的結合相互作用を研究するのに使用することができる。試料中にある1つまたは複数の特定の細胞外小胞と、それぞれの標的表面との結合を検出することができる。基体には光が照射され、試料中にある1種または複数種のナノ粒子標的が1種または複数種の標的に結合すれば、これらは別個の1つの物体として画像に現れ、これによりナノ粒子標的の個々の結合を検出することが可能になる。バイオセンサー基体表面が、1種または複数種の特定の標的を含む1つまたは複数の別個の標的場所のアレイを含む態様では、干渉パターンは基体のそれぞれ別個の場所から検出される。
【0134】
従って、一部の態様では、様々な特定の標的分子をアレイ形式で基体表面に固定化することができる。次いで、基体は、潜在的なナノ粒子標的、例えば、エキソソームバイオマーカーを含む関心対象の試験試料と接触される。標的表面に特異的に結合するエキソソームしか基体に結合しない。ハイスループット用途の場合、バイオセンサーを、アレイを並べた形で配置することができる。この場合、基体表面に、特定の結合分子標的のアレイを含むいくつかの基体をアレイの形で配置する。
【0135】
従って、前記装置および基体は、試料中に存在する複数種のナノ粒子標的の1つまたは複数と、複数種の固定化された標的分子の1つまたは複数が付加されているバイオセンサー基体層との結合を検出するのに用いられる。例えば、1つまたは複数の特定の固定化された分子を、基体層の表面にある1つまたは複数の別個の場所にアレイの形で配置することができる。1つまたは複数の別個の場所は、直径が約50~500ミクロンまたは約150~200ミクロンのマイクロアレイスポットを規定することができる。
【0136】
試料は、例えば、血液、血漿、血清、胃腸分泌液、組織または腫瘍のホモジネート、滑液、糞便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊髄液、腹水、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、前立腺液、または細胞溶解産物などの、生体分子標的を含有する任意の試料を指す。試料はまた、環境供給源、例えば、汚染された湖もしくは他の水域から得た水試料、または汚染されたと思われている食物供給源から得た液体試料から得られてもよい。
【0137】
本明細書で使用する「試料」または「生物学的試料」という用語は、細胞、生物、溶解された細胞、細胞抽出物、核抽出物、細胞または生物の成分、細胞外液、細胞が培養された培地、血液、血漿、血清、胃腸分泌液、組織または腫瘍のホモジネート、滑液、糞便、唾液、痰、嚢胞液、羊水、脳脊髄液、腹水、肺洗浄液、精液、リンパ液、涙、および前立腺液を含むが、これに限定されない任意の試料を意味する。さらに、試料は、ウイルス試料または細菌試料、環境供給源、例えば、汚染された水域から得た試料、空気試料、または土壌試料、ならびに食品産業試料でもよい。
【0138】
本明細書で使用する「標識」または「タグ」という用語は、アッセイ試料中の標的の存在を示す検出可能な信号を生じることができる組成物を指す。適切な標識には、放射性同位体、ヌクレオチド発色団、酵素、基質、蛍光分子、化学発光部分、磁性粒子、生物発光部分などが含まれる。従って、標識は、分光学的手段、光化学的手段、生化学的手段、免疫化学的手段、電気的手段、光学的手段、または化学的手段によって検出可能な任意の組成物である。
【0139】
冠詞「1つの(a)」および「1つの(an)」は、冠詞の文法上の目的語の1つまたは複数(すなわち、少なくとも1つ)を指すために本明細書において用いられる。例として、「要素」とは1つの要素または複数の要素を意味する。従って、本明細書および添付の特許請求の範囲において、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、特に文脈によってはっきりと示されていない限り複数の指示を含む。従って、例えば、「1つの薬剤」を含む薬学的組成物についての言及は2つ以上の薬剤についての言及を含む。
【0140】
本明細書で使用する「含む(comprising)」という用語は、示された定義された要素に加えて他の要素も存在し得ることを意味する。「含む(comprising)」の使用は、限定ではなく包含を示している。「からなる(consisting of)」という用語は、態様の説明において列挙されていない要素を除外した、本明細書において説明される組成物、方法、およびその各成分を指す。本明細書で使用する「から本質的になる」という用語は、ある特定の態様に必要とされる要素を指す。この用語は、本発明の態様の基本的な、かつ新規の特徴または機能的な特徴に実質的に影響を及ぼさない要素が存在することを可能にする。機能している実施例(operating example)を除き、または特に定めのない限り、本明細書において用いられる成分の量または反応条件を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語により修飾されていると理解しなければならない。「約」という用語はパーセントと共に用いられる場合、±1%を意味する場合がある。
【0141】
エキソソーム
エキソソームは、膜に結合している小さな小胞であり、大きさは40~150nmである(Pan et al, 1985; Trams et al, 1981)。エキソソームは、がん細胞、間葉系細胞、血小板(thrombocyte)(Kahlert and Kalluri, Exosomes in tumor microenvironment influence cancer progression and metastasis. J. Mol Med. (Berl), 91 :431-437, 2013; Heijnen et al, Activated platelets release two types of membrane vesicles: microvesicles by surface shedding and exosomes derived from exocytosis of multivesicular bodies and alpha-granules. Blood, 94:3791-3799, 1999; Raposo et al, B lymphocytes secrete antigen-presenting vesicles. The Journal of Experimental Medicine, 183: 1 161-1172, 1996)、免疫細胞(Thery et al, Exosomes: composition, biogenesis and function. Nat. Rev. Immunol, 2:569- 579, 2002)、血小板(platelet)(Janowska-Wieczorek et al, Microvesicles derived from activated platelets induce metastasis and angiogenesis in lung cancer. International Journal of Cancer, 1 13:752-760, 2005. Jazieh et al, The clinical utility of biomarkers in the management of pancreatic adenocarcinoma. Seminars in Radiation Oncology, 24:67-76, 2014)、および 内皮細胞(Hergenreider et al, Atheroprotective communication between endothelial cells and smooth muscle cells through miRNAs. Nature Cell Biology, 14:249-256, 2012)などの多くの異なる細胞タイプによって分泌される。エキソソーム生合成における第一段階は後期エンドソームの境界膜(limiting membrane)から内側に出芽することを伴う(Trajkovic et al, Ceramide triggers budding of exosome vesicles into multivesicular endosomes. Science, 319: 1244-1247, 2008)。このプロセスの間に、エキソソームには親細胞からRNA分子とタンパク質が詰め込まれる(Trams et al, Exfoliation of membrane ecto-enzymes in the form of micro-vesicles. Biochimica et Biophysica Acta, 645:63-70, 1981; Trajkovic Supra)。腫瘍由来エキソソームは細胞外空間に放出された後に、発がん活性を有するタンパク質とRNAをレシピエント細胞に移動させることができる(Grange et al, Microvesicles released from human renal cancer stem cells stimulate angiogenesis and formation of lung premetastatic niche. Cancer Research, 71 :5346-5356, 2011; Peinado et al, Melanoma exosomes educate bone marrow progenitor cells toward a pro- metastatic phenotype through MET. Nature Medicine, 18:883-891, 2012)。エキソソームは様々な条件下で非常に安定しているので、細胞外環境での分解および変性から生物学的カーゴ(cargo)を保護することができる(Taylor and Gercel-Taylor, Exosomes/microvesicles: mediators of cancer-associated immunosuppressive microenvironments. Seminars in Immunopathology, 33 :441-454, 2011)。循環中のゲノムDNAは主にエキソソームに含まれている(Kahlert et al, Identification of double-stranded genomic DNA spanning all chromosomes with mutated KRAS and p53 DNA in the serum exosomes of patients with pancreatic cancer. The Journal of Biological Chemistry, 289:3869-3875, 2014)。星状細胞およびグリア芽細胞腫細胞に由来するエキソソームはミトコンドリアDNAを運ぶ(Guescini et al, C2C12 myoblasts release micro-vesicles containing mtDNA and proteins involved in signal transduction. Experimental Cell Research, 316: 1977-1984, 2010)。さらに、グリア芽細胞腫細胞株に由来するエキソソームは少量の一本鎖DNAならびに高レベルの転位因子を含有することが示されている(Balaj et al., Tumour microvesicles contain retrotransposon elements and amplified oncogene sequences. Nature Communications, 2: 180, 2011)。
【0142】
エキソソームは、血清、唾液、脳脊髄液、骨髄吸引液、眼滲出液/涙、および腹水などのがん患者の全ての体液に見出される(Peinado, 前記; ; Lau et al, Role of Pancreatic Cancer-derived Exosomes in Salivary Biomarker Development. The Journal of Biological Chemistry, 288:26888-26897, 2013; Choi et al, Proteomic analysis of microvesicles derived from human colorectal cancer ascites. Proteomics, 1 1 :2745-2751, 2011)。従って、エキソソームはがんの有望な診断バイオマーカーおよび予測バイオマーカーである。しかしながら、がん患者からの循環DNAに関する遺伝子プロファイリング研究は、単離されたDNAが身体の細胞の全てに相当し、従って、変異および遺伝的欠陥が困難だという事実によって混乱に陥っている(Murtaza et al, Non- invasive analysis of acquired resistance to cancer therapy by sequencing of plasma DNA. Nature, 497; 108-1 12, 2013; Yong, Cancer biomarkers: Written in blood. Nature, 51 1 :524-526, 2014; Kirk, Breast cancer: Circulating tumour DNA the better of the blood biomarkers. Nature Reviews, Clinical Oncology, 10:247, 2013; Crowley et al, Liquid biopsy: monitoring cancer-genetics in the blood. Nature Reviews, Clinical Oncology, 10:472-484, 2013)。
【0143】
いくつかのエキソソームマーカーが提案されており、テトラスパニンファミリーのメンバー(CD9、CD63、CD81)、エンドソーム輸送選別複合体のメンバー(ESCRT; TSG101、Alix)、および熱ショックタンパク質(Hsp60、Hsp70、Hsp90)を含む(Taylor and Gercel-Taylor、前記)。上皮腫瘍細胞は、上皮細胞接着分子(EpCAM)を運んでいるエキソソームを分泌する(Taylor and Gercel-Taylor, 前記; Silva et al, Analysis of exosome release and its prognostic value in human colorectal cancer. Genes, Chromosomes & Cancer, 51:409-418, 2012; Runz et al., Malignant ascites-derived exosomes of ovarian carcinoma patients contain CD24 and EpCAM. Gynecologic Oncology, 107:563-571, 2007)。黒色腫由来エキソソームは腫瘍関連抗原Mart-1およびチロシナーゼ関連タンパク質-2(TYRP2)を含有する(Peinado, 前記; Mears et al, Proteomic analysis of melanoma-derived exosomes by two-dimensional polyacrylamide gel electrophoresis and mass spectrometry. Proteomics, 4:4019-4031, 2004; Andre et al, Malignant effusions and immunogenic tumour-derived exosomes. Lancet, 360:295-305, 2002)。胃がん、乳がん、および膵臓がんに由来するエキソソームはヒト上皮増殖因子受容体(HER)ファミリーのメンバーを運ぶ(Adamczyk et al, Characterization of soluble and exosomal forms of the EGFR released from pancreatic cancer cells. Life Sciences, 89:304-312, 2011; Baran et al, Circulating tumour-derived microvesicles in plasma of gastric cancer patients. Cancer Immunology, Immunotherapy: CII, 59:841-850, 2010; Ciravolo et al, Potential role of HER2-overexpressing exosomes in countering trastuzumab- based therapy. Journal of Cellular Physiology, 227:658-667, 2012)。
【0144】
本明細書で使用する「マイクロベシクル」および「エキソソーム」という用語は膜性粒子を指す。この場合、エキソソームの膜の少なくとも一部は細胞から直接得られる。最も一般的には、エキソソームのサイズ(平均直径)はドナー細胞のサイズの5%までである。従って、特に意図されるエキソソームには、細胞から脱落したエキソソームが含まれる。
【0145】
エキソソームは、例えば、体液などの任意の適切な試料タイプにおいて検出されてもよく、またはそこから単離されてもよい。本明細書で使用する「試料」という用語は、本発明によって提供される方法に適した任意の試料を指す。試料は、検出または単離に適したエキソソームを含む任意の試料でよい。試料の供給源には、血液、骨髄、胸膜液、腹水、脳脊髄液、尿、唾液、羊水、悪性腹水、気管支肺胞洗浄液、滑液、母乳、汗、涙、間接液、および気管支洗浄液が含まれる。一局面において、試料は、例えば、全血またはその任意の画分もしくは成分を含む血液試料である。本発明との使用に適した血液試料は、静脈、動脈、末梢、組織、臍帯などの、血球またはその成分を含む公知の任意の供給源から抽出することができる。例えば、試料は、周知の方法および日常的な臨床方法(例えば、全血を採取または処理する手順)を用いて入手または処理することができる。一局面において、例示的な試料は、がんにかかっている対象から採取された末梢血でもよい。
【0146】
エキソソームまた、組織試料、例えば、手術試料、生検試料、組織、糞便、および培養細胞から単離されてもよい。組織供給源からエキソソームを単離する時には、単一細胞懸濁液を得るために組織をホモジナイズした後に、細胞を溶解してエキソソームを放出することが必要な場合がある。組織試料からエキソソームを単離する時には、エキソソームを破壊しないホモジナイゼーションおよび溶解手順を選択することが重要である。本明細書において意図されるエキソソームは、好ましくは、生理学的に許容される溶液、例えば、緩衝食塩水、増殖培地、様々な水性媒体などに溶解した体液から単離される。
【0147】
エキソソームは新鮮に集められた試料から単離されてもよく、保存、凍結、または冷蔵されている試料から単離されてもよい。必須というわけではないが、液体試料から破片を除去するために、液体試料が清澄化された後に体積排除(volume-excluding)ポリマーを用いて沈殿されれば高純度のエキソソームが得られる場合がある。清澄化の方法には、遠心分離、超遠心、濾過、または限外濾過が含まれる。最も典型的には、エキソソームは当技術分野において周知の非常に多くの方法によって単離することができる。好ましい方法の1つは、体液または細胞培養上清からの分画遠心である。エキソソームを単離する例示的な方法は、(Losche et al, Platelet-derived microvesicles transfer tissue factor to monocytes but not to neutrophils, Platelets, 15: 109-1 15, 2004; Mesri and Altieri, Endothelial cell activation by leukocyte microparticles, J. Immunol, 161 :4382-4387, 1998; Morel et al, Cellular microparticles: a disseminated storage pool of bioactive vascular effectors, Curr. Opin. Hematol, 1 1 : 156-164, 2004)に記載されている。または、エキソソームはまた、(Combes et al. , A new flow cytometry method of platelet-derived microvesicle quantitation in plasma, Thromb. Haemost., 77:220, 1997)に記載のようにフローサイトメトリーを介して単離されてもよい。
【0148】
一般に認められているエキソソーム単離プロトコールの1つは超遠心を含み、これは、比較的低密度のエキソソームを浮かせるためにスクロース密度勾配またはスクロースクッション(sucrose cushion)と組み合わされることが多い。連続分画遠心によるエキソソームの単離は、他のマイクロベシクルまたは高分子複合体とサイズ分布が重複する可能性があることで複雑になる。さらに、遠心分離は、サイズに基づいて小胞を分離するには十分でない手段となる場合がある。しかしながら、連続遠心分離をスクロース勾配超遠心と組み合わせることでエキソソームを高度に濃縮することができる。
【0149】
グリピカン
グリピカンは、ヘパリン硫酸プロテオグリカン(heparin sulfate proteoglycan)の2つの主なファミリーうちの1つを構成する。他方の主なファミリーはシンデカンである。6種類のグリピカンが哺乳動物において特定されており、GPC1~GPC6と呼ばれる。6種類のグリピカンが哺乳動物において特定されているが、これらの異なるタンパク質間では、いくつかの特徴が首尾一貫してある。第1に、全グリピカンのコアタンパク質は、サイズがおよそ60~70kDaと似ている。さらに、アミノ酸配列の点から言うと14個のシステイン残基の場所が保存されている。グリピカンファミリーの全メンバーについて、タンパク質のC末端が、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して共有結合により細胞膜に結合している。GPIアンカーの付加を可能にするために、グリピカンにはタンパク質のC末端に疎水性ドメインがある。このGPIアンカーから50アミノ酸内でヘパラン硫酸鎖がタンパク質コアに付着している。グリピカンは発生における形態形成に決定的な関わりをもっており、WntおよびHedgehogを含む、いくつかの細胞シグナル伝達経路では制御因子として意味づけられてきた。グリピカンの異常発現は、卵巣がん、中皮腫、膵臓がん、神経膠腫、および乳がんを含む複数のタイプのがんにおいて認められている。
【0150】
グリピカン-1(GLPC1およびグリピカンプロテオグリカン1とも知られる)は、グリコシルホスファチジルイノシトール結合を介して細胞膜に固定されたコアタンパク質で構成される細胞表面ヘパラン硫酸プロテオグリカンである。アイソフォーム1(古典的配列)は、558アミノ酸および61.680kDa(UniProtKB Protein Symbol: P35052-GPC1_HUMAN; Protein Accession: P35052)である。グリピカン-1はがん細胞由来エキソソームと関連付けられている(WO2015085096; Melo et al. Glypican-1 identifies cancer exosomes and detects early pancreatic cancer (2015) Nature doi: 10.1038/nature14581)。グリピカン-2またはGPC2は、ムコ多糖症を含む疾患に関連する。このタンパク質は579アミノ酸および62830Da(UniProtKB Protein Symbol:Q8N158-GPC2_HUMAN; Protein Accession:Q8N158)である。グリピカン-3(GLPC3およびグリピカンプロテオグリカン3とも知られる)は、グリコシルホスファチジルイノシトール結合を介して細胞膜に固定されたコアタンパク質で構成される細胞表面ヘパラン硫酸プロテオグリカンである。アイソフォーム1(古典的配列)は580アミノ酸および65563Da(UniProtKB Protein Symbol:P51654-GPC3_HUMAN; Protein Accession:P51654)である。グリピカン-4は556アミノ酸および62412Da(Protein Symbol:O75487-GPC4_HUMAN; Protein Accession:O75487)である。GPC4遺伝子はGPC3の3'末端に隣接し、シンプソン・ゴラビ・ベーメル(Simpson-Golabi-Behmel)症候群においても役割を果たしている可能性がある。グリピカン-5は572アミノ酸長および63707Da(Protein Symbol:P78333-GPC5_HUMAN; Protein Accession:P78333)である。グリピカン-6は555アミノ酸長および62736Da(Protein Symbol:Q9Y625-GPC6_HUMAN; Protein Accession: Q9Y625)である。GPC6に関連する疾患はomodysplasia1およびomodysplasiaを含む。
【0151】
抗体
結合剤として抗体を使用することができる。例えば、表面に設けられた抗GLPC1を用いて、GLPC1を含むエキソソームを捕獲することができ、表面に設けられた抗GLPC3を用いて、GLPC3を含むエキソソームを捕獲することができる。本明細書で使用する「抗体」または「抗体分子」という用語は、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン(Ig)分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に特異的に結合する、例えば、抗原と免疫反応する抗原結合部位を含有する分子を指す。「特異的に結合する」または「免疫反応する」とは、抗体が望ましい抗原の1つまたは複数の抗原決定基と反応し、他のポリペプチドに対する親和性が低い、例えば、他のポリペプチドと反応しないことを意味する。
【0152】
「抗原結合部位」または「結合部分」という用語は、抗原結合に関与する免疫グロブリン(Ig)分子部分を指す。抗原結合部位は、重鎖(「H」)および軽鎖(「L」)のN末端可変(「V」)領域のアミノ酸残基によって形成される。超可変領域と呼ばれる、重鎖および軽鎖の可変領域内にある高度に多岐にわたる3つの領域が、「フレームワーク領域」または「FR」として知られる、超可変領域よりも保存されている隣接領域の間に置かれている。「FR」という用語は、免疫グロブリンにおいて超可変領域間に、かつ超可変領域に隣接して天然で見出されるアミノ酸配列を指す。抗体分子では、軽鎖の3つの超可変領域と、重鎖の3つの超可変領域が、抗原結合表面を形成するように三次元空間内に互いに関連して配置されている。抗原結合表面は、結合される抗原の三次元表面に相補的であり、重鎖および軽鎖のそれぞれの3つの超可変領域は「相補性決定領域」または「CDR」と呼ばれる。
【0153】
フレームワーク領域およびCDRの範囲は定義されている(例えば、Kabat, E.A., et al. (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242、およびChothia, C. et al. (1987) J. Mol. Biol. 196:901-917を参照されたい)。本明細書においてKabat定義が用いられる。それぞれのVHおよびVLは、典型的には、以下のアミノ酸順にアミノ末端からカルボキシ末端にかけて並べられた3つのCDRと4つのFR:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で構成される。
【0154】
態様では、抗体または抗体分子は完全長抗体および抗体断片を包含する。例えば、完全長抗体は、天然の免疫グロブリン(Ig)分子(例えば、IgG抗体)であるか、または正常な免疫グロブリン遺伝子断片組換えプロセスによって形成された免疫グロブリン(Ig)分子(例えば、IgG抗体)である。態様では、抗体または抗体分子は、免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な抗原結合部分、例えば、抗体断片を指す。
【0155】
抗体断片、例えば、機能的断片は、抗体の一部、例えば、F(ab')2、F(ab)2、Fab'、Fab、ドメイン抗体(dAb)、可変断片(Fv)、または単鎖可変断片(scFv)である。機能的な抗体断片は、インタクトな抗体によって認識されるものと同じ抗原と結合する。例えば、抗インシュリンモノクローナル抗体断片はインシュリンに結合する。「抗体断片」または「機能的断片」という用語は、可変領域からなる単離された断片、例えば、重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」断片、または軽鎖可変領域および重鎖可変領域がペプチドリンカーによって接続されている組換え単鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」)も含む。一部の態様では、抗体断片は、抗原結合活性を持たない抗体部分、例えば、Fc断片または1個のアミノ酸残基を含まない。抗体断片は機能的断片を含み、「抗体」または「抗体分子」という用語によって包含される。
【0156】
例示的な抗体分子には、完全長抗体および抗体断片、例えば、dAb(ドメイン抗体)、単鎖、Fab、Fab’、およびF(ab’)2断片、ならびに単鎖可変断片(scFv)が含まれる。
【0157】
scFvポリペプチド分子は、共有結合的に連結された可変重鎖(VH)::可変軽鎖(VL)ヘテロ二量体であり、ペプチドをコードするリンカーによって連結されたVHコード遺伝子およびVLコード遺伝子を含む遺伝子融合から発現させることができる。例えば、Huston et al. (1988) Proc Nat Acad Sci USA 85(16):5879-5883を参照されたい。VHドメインおよびVLドメインのN末端からC末端への方向は、どちらの方向でもよく、例えば、VH-VLまたはVL-VHでもよい。様々な標的分子に対する再編成された抗体遺伝子の供給源を提供するために大きなナイーブヒトscFvライブラリーが作り出されている。疾患特異的抗体を単離するために、ある特定の疾患にかかっている個体からライブラリーを構築することができる。例えば、Barbas et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:9339-43 (1992); および Zebedee et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:3175-79 (1992)を参照されたい。
【0158】
「ポリクローナル抗体」という用語は、抗原の複数の免疫原性決定基と反応する異なる抗体分子の混合物を指す。態様では、ポリクローナル抗体は哺乳動物の血液、分泌液、または他の流体から単離または精製されてもよく、卵から単離または精製されてもよい。他の態様では、ポリクローナル抗体は様々なモノクローナル抗体の混合物で構成される。他の態様では、ポリクローナル抗体は組換えポリクローナル抗体として産生されてもよい。
【0159】
本明細書で使用する「モノクローナル抗体」または「mAb」という用語は、ユニークな軽鎖遺伝子産物およびユニークな重鎖遺伝子産物からなる抗体分子のうち1種類の分子種しか含まない抗体分子集団を指す。特に、この集団の全分子においてモノクローナル抗体の相補性決定領域(CDR)は同一である。MAbは、抗原の特定のエピトープに対するユニークな結合親和性によって特徴付けられる、抗原の特定のエピトープと免疫反応することができる抗原結合部位を含有する。
【0160】
抗体融合タンパク質、例えば、同じまたは異なる特異性を有する同じまたは異なる単鎖抗体または抗体断片セグメントの1つまたは複数が連結されている、組換えにより生成された抗原結合分子も本明細書において提供される。抗体、例えば、融合抗体タンパク質の結合価は、1種類の抗原またはエピトープに対して、いくつの結合アーム(binding arm)または部位が抗体にあるのか、すなわち、一価、二価、三価、または多価を示す。抗体の多価性(multivalency)とは、抗原と結合する際に複数の相互作用を利用することができ、従って、抗原との結合のアビディティが大きいことを意味する。特異性とは、抗体が、いくつの抗原またはエピトープに結合できるか、すなわち、単一特異性、二重特異性、三重特異性、多重特異性を示す。例えば、天然抗体、例えば、IgGは2つの結合アームを有するので二価であるが、1種類のエピトープに結合するので単一特異性である。単一特異性の多価抗体、例えば、抗体融合タンパク質には、あるエピトープに対する複数の結合部位があるが、1種類のエピトープにしか結合しない。融合タンパク質は、1種類の抗体成分、異なる抗体成分の多価組み合わせもしくは多重特異性組み合わせ、または同じ抗体成分の複数のコピーを含んでもよい。さらに、融合タンパク質は抗体または抗体断片と治療剤を含んでもよい。このような融合タンパク質に適した治療剤の例には免疫調節剤および毒素が含まれる。例示的な毒素には、リボヌクレアーゼ(RNase)、例えば、組換えRNase、ジフテリア毒素、シュードモナス属(Pseudomonas)エキソトキシン、モノメチルアウリスタチンE、またはメルタンシン(mertansine)が含まれるが、これに限定されない。さらなる例示的な毒素が本明細書において説明される。態様では、抗体分子(例えば、抗体またはその機能的断片)と治療剤(例えば、毒素)が1種類の核酸分子によってコードされる。態様では、抗体分子(例えば、抗体またはその機能的断片)と治療剤(例えば、毒素)は同じポリペプチド上に配置される。他の態様では、抗体分子(例えば、抗体またはその機能的断片)と治療剤(例えば、毒素)は別々の核酸分子によってコードされる。態様では、抗体分子(例えば、抗体またはその機能的断片)と治療剤(例えば、毒素)は別々のポリペプチド上に配置される。様々なタンパク質またはペプチドエフェクターは融合タンパク質に組み込まれてもよい。毒素との結合体/融合が下記でさらに議論される。
【0161】
多重特異性抗体とは、構造が異なる少なくとも2種類の標的、例えば、2つの異なる抗原、同じ抗原上にある2つの異なるエピトープ、またはハプテンおよび/または抗原もしくはエピトープに同時に結合することができる抗体である。例えば、ある特異性がB細胞、例えば、インシュリン特異的B細胞上にあるインシュリン特異的BCRに対するものでもよく、他の特異性が、B細胞上にある異なる抗原に対するものでもよい。別の例では、他の特異性が、貪食している細胞、例えば、マクロファージ上にある受容体に対するものでもよい。別の例では、他の特異性は、樹状細胞上にある受容体に対するものでもよい。多重特異性の多価抗体は、複数の結合部位を有する構築物であり、これらの結合部位は特異性が異なる。
【0162】
ヒト化抗体分子、キメラ抗体分子、または完全ヒト抗体分子
ヒト化抗体分子、キメラ抗体分子、または完全ヒト抗体分子、例えば、完全長抗体、抗体断片、抗体融合もしくは抗体断片融合、または抗体結合体もしくは抗体断片結合体も本明細書において提供される。
【0163】
ヒト化抗体は、ある種、例えば、げっ歯類(例えば、ラットまたはマウス)抗体に由来する抗体に由来する相補性決定領域(CDR)が、げっ歯類抗体の重鎖可変鎖および軽鎖可変鎖からヒト重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインに移されている組換えタンパク質である。抗体分子の定常ドメインはヒト抗体のものに由来する。
【0164】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は当技術分野において説明されている。態様では、ヒト化抗体には、非ヒトの供給源に由来する1つまたは複数のアミノ酸残基が導入されている。これらの非ヒトアミノ酸残基は「移入(import)」残基と呼ばれることが多く、「移入(import)」残基は典型的には「移入」可変ドメインから選ばれる。ヒト化は、Winterおよび共同研究者の方法(Jones et al., Nature, 321: 522-525 (1986); Reichmann et al., Nature, 332: 323-327 (1988); Verhoeyen et al., Science, 239: 1534-1536 (1988))に従って、例えば、ヒト抗体の対応する配列の代わりに超可変領域配列を用いることによって行うことができる。従って、このような「ヒト化」抗体は、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に小さな配列が非ヒト種に由来する対応する配列で置換されているキメラ抗体(米国特許第4,816,567号)である。態様では、ヒト化抗体は、一部の超可変領域残基、場合によっては一部のFR残基がげっ歯類抗体の類似部位に由来する残基で置換された抗体である。
【0165】
ヒト化抗体の作製において用いられる、軽鎖および重鎖両方のヒト可変ドメインの選択が抗原性の低下において役割を果たす場合がある。一部の態様では、いわゆる「ベストフィット(best-fit)」法によれば、公知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対して、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列がスクリーニングされる。次いで、げっ歯類の配列に最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れられる(Suns et al., J. Immunol., 151: 2296 (1993); Chothia et al., J. Mol. Biol, 196: 901 (1987))。態様では、別の方法では、軽鎖または重鎖の特定のサブグループの全ヒト抗体のコンセンサス配列から得た特定のフレームワーク領域を使用する。いくつかの異なるヒト化抗体に同じフレームワークが用いられてもよい(Carter et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89: 4285 (1992); Presta et al., J. Immunol., 151: 2623 (1993))。
【0166】
態様では、抗原に対する高い親和性と他の好都合な生物学的特性を保持しながら抗体がヒト化される。この目的を果たすために、ある特定の態様では、ヒト化抗体は、親配列およびヒト化配列の三次元モデルを用いた親配列および様々な概念上のヒト化製品の分析プロセスによって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは一般に入手可能である。選択された候補免疫グロブリン配列の考えられる三次元コンホメーション構造を図で示し、表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらの表示を詳細に調べることによって、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の、可能性がある役割を分析することができる、例えば、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を及ぼす残基を分析することができる。このように、標的抗原に対する保存された、または高い親和性など望ましい抗体特徴が実現するように、レシピエント配列および移入配列からFR残基を選択し、組み合わせることができる。一般的に、超可変領域残基は、抗原結合に影響を及ぼすことに直接かつ最も大きく関与する。
【0167】
態様では、ヒト化抗体分子、例えば、本明細書に記載のヒト化抗体分子は1つまたは複数の非ヒト(例えば、マウス)CDRを含み、ヒトフレームワークおよび定常領域(例えば、ヒト免疫グロブリン、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、またはIgG4に由来するフレームワークおよび定常領域)を含む。
【0168】
抗体結合および親和性
本明細書で使用する、「エピトープ」という用語は、免疫グロブリン、抗体断片、例えば、本明細書に記載の抗体断片、またはB細胞受容体(BCR)(例えば、免疫グロブリンを含むBCR)に特異的結合することができる任意のタンパク質決定基を含む。エピトープ決定基は、通常、アミノ酸または糖側鎖などの分子の化学活性のある表面グループからなり、通常、特定の三次元構造特徴ならびに特定の電荷特徴を有する。例えば、抗体はポリペプチドのN末端ペプチドに対して作られてもよく、C末端ペプチドに対して作られてもよい。
【0169】
本明細書で使用する「免疫学的結合」、「免疫学的結合特性」、「特異的に結合する」、または「選択的に結合する」という用語は、免疫グロブリン分子と、免疫グロブリンが特異性を示す抗原との間で起こるタイプの非共有結合相互作用を指す。免疫学的結合相互作用の強度、すなわち親和性は、この相互作用の解離定数(Kd)で表すことができる。この場合、Kdが小さいほど親和性が大きくなる。選択されたポリペプチドの免疫学的結合特性は、当技術分野において周知の方法を用いて定量することができる。このような方法の1つは、抗原結合部位/抗原複合体の形成および解離の速度を測定することを伴い、これらの速度は、複合パートナーの濃度、相互作用の親和性、および両方向の速度に等しく影響を及ぼす幾何学的パラメータによって決まる。従って、濃度と、会合および解離の実際の速度を計算することによって、「オンレートコンスタント(on rate constant)」(kon)と「オフレートコンスタント(off rate constant)」(koff)の両方を求めることができる。例えば、Nature 361:186-87 (1993)を参照されたい。koff/konの比は、親和性に関連しない全パラメータの消去を可能にし、解離定数Kdに等しい(大まかには、Davies et al. (1990) Annual Rev Biochem 59:439-473を参照されたい)。
【0170】
一部の態様では、本明細書に記載の抗体分子は、例えば、放射性リガンド結合アッセイ、ELISA、表面プラズモン共鳴、平衡結合アッセイ、または当業者に公知の類似アッセイなどのアッセイによって測定された時に、平衡結合定数(Kd)が1μM未満もしくは1μM、例えば、100nM未満もしくは100nM、10nM未満もしくは10nM、100pM未満もしくは100pM、または約1pM未満もしくは約1pMである時に、抗原/エピトープ(例えば、自己抗原、例えば、膵島自己抗原、例えば、インシュリン;またはB細胞、例えば、自己抗原特異的B細胞、インシュリン特異的B細胞;または自己抗原::BCR複合体、例えば、インシュリン::BCR複合体)に特異的に結合する。
【0171】
抗体産生
本発明のタンパク質もしくはペプチド、またはその誘導体、断片、類似体、ホモログ、もしくはオルソログに対して作られた抗体分子、例えば、抗体またはその機能的断片を産生するために当技術分野において公知の様々な手順を用いることができる(例えば、参照により本明細書に組み入れられる、Antibodies: A Laboratory Manual, Harlow E, and Lane D, 1988, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.を参照されたい)。
【0172】
一部の態様では、自己抗原(例えば、膵島自己抗原、例えば、本明細書に記載の膵島自己抗原、例えば、インシュリン)、B細胞(例えば、自己抗原特異的B細胞、例えば、インシュリン特異的B細胞)、または自己抗原::B細胞受容体(BCR)複合体(例えば、インシュリン::BCR複合体)を、これらのタンパク質成分に免疫特異的に結合する抗体分子の作製における免疫原として利用することができる。
【0173】
抗体分子は、プロテインAまたはプロテインGを用いたアフィニティクロマトグラフィーなどの周知の技法によって精製することができる。例えば、プロテインGを用いたアフィニティクロマトグラフィーによって免疫血清のIgG画分が得られる。その後に、または代わりに、イムノアフィニティークロマトグラフィーによって免疫特異的抗体を精製するために、探索されている免疫グロブリンの標的である特異的抗原またはそのエピトープがカラムに固定化される場合がある。免疫グロブリンの精製は、例えば、D. Wilkinson(The Scientist, The Scientist, Inc.により出版, Philadelphia Pa., Vol. 14, No. 8 (Apr. 17, 2000), pp. 25-28)によって議論されている。
【0174】
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、例えば、Kohler and Milstein, Nature, 256:495 (1975)に記載のハイブリドーマ法を用いて調製することができる。ハイブリドーマ法では、典型的には、免疫化薬剤に特異的に結合する抗体を産生するか、または産生することができるリンパ球を誘発するために、マウス、ハムスター、または他の適切な宿主動物が免疫化薬剤を用いて免疫化される。または、リンパ球をインビトで免疫化することができる。
【0175】
態様では、免疫化薬剤には、タンパク質抗原、その断片、またはその融合タンパク質が含まれる。本明細書に記載の組成物および方法によれば、免疫化薬剤は、自己抗原、例えば、膵島自己抗原、例えば、本明細書に記載の膵島自己抗原、例えば、インシュリンを含む。一般的に、ヒト由来の細胞が望ましい場合、末梢血リンパ球が用いられる。または、非ヒト哺乳動物供給源が望ましい場合、脾臓細胞またはリンパ節細胞が用いられる。次いで、リンパ球は、適切な融合剤、例えば、ポリエチレングリコールを用いて不死化細胞株と融合されて、ハイブリドーマ細胞が形成される(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103)。不死化細胞株は、通常、形質転換された哺乳動物細胞、特に、げっ歯類、ウシ、およびヒトに由来する骨髄腫細胞である。態様では、ラットまたはマウスの骨髄腫細胞株が用いられる。ハイブリドーマ細胞は、好ましくは、融合しなかった不死化細胞の増殖または生存を阻害する1種または複数種の物質を含有する適切な培養培地中で培養することができる。例えば、親細胞に酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRTまたはHPRT)が無ければ、ハイブリドーマ用の培養培地は典型的にはヒポキサンチン、アミノプテリン、およびチミジン(「HAT培地」)を含み、これらの物質はHGPRT欠損細胞の増殖を阻止する。
【0176】
好ましい不死化細胞株は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高レベルの抗体発現を支持し、HAT培地などの培地に対して感受性のある不死化細胞株である。例示的な不死化細胞株は、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center, San Diego, Calif.およびAmerican Type Culture Collection, Manassas, Vaから入手することができるマウス骨髄腫株である。ヒトモノクローナル抗体産生についてはヒト骨髄腫細胞株およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞株も記載されている(Kozbor, J. Immunol., 133:3001 (1984); Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, (1987) pp. 51-63)を参照されたい)。
【0177】
次いで、抗原に対して作られたモノクローナル抗体が存在するかどうか、ハイブリドーマ細胞を培養した培養培地をアッセイすることができる。例えば、ハイブリドーマ細胞が産生したモノクローナル抗体の結合特異性は免疫沈降によって確かめられるか、またはインビトロ結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、フローサイトメトリー/FACS、もしくは表面プラズモン共鳴によって確かめられる。このような技法およびアッセイは当技術分野において公知である。モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson and Pollard, Anal. Biochem., 107:220 (1980)のスキャッチャード分析によって確かめることができる。態様では、モノクローナル抗体の治療用途では、標的抗原に対して高度の特異性および高い結合親和性を有する抗体を特定することが重要な場合がある。
【0178】
望ましいハイブリドーマ細胞を特定した後に、クローンを限界希釈手順によってサブクローニングし、標準的な方法によって増殖することができる(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, Academic Press, (1986) pp. 59-103を参照されたい)。この目的に適した培養培地には、例えば、ダルベッコ改変イーグル培地およびRPMI-1640培地が含まれる。または、ハイブリドーマ細胞をインビボで哺乳動物の中で腹水として増殖することができる。
【0179】
サブクローンが分泌したモノクローナル抗体は、例えば、プロテインA-Sepharose、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、またはアフィニティクロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製手順によって培養培地または腹水から単離または精製することができる。
【0180】
モノクローナル抗体はまた、組換えDNA法によって、例えば、米国特許第4,816,567号に記載の組換えDNA法によって作製することもできる。本明細書に記載のモノクローナル抗体をコードするDNAを、従来の手順を用いて(例えば、マウス抗体の重鎖をコードする遺伝子および軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを用いることによって)容易に単離および配列決定することができる。態様では、ハイブリドーマ細胞は、このようなDNAの供給源として役立つ。DNAを単離したら発現ベクターの中に配置し、次いで、発現ベクターを、トランスフェクションによって、宿主細胞、例えば、発現ベクターが無ければ免疫グロブリンタンパク質を産生しない、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、または骨髄腫細胞に導入して、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得ることができる。DNAはまた、例えば、相同マウスの配列の代わりにヒト重鎖定常ドメインおよび軽鎖定常ドメインのコード配列を用いることによって(米国特許第4,816,567号; Morrison, Nature 368, 812-13 (1994)を参照されたい)改変されてもよく、免疫グロブリンコード配列に、非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全てまたは一部を共有結合によりつなげることによって改変されてもよい。このような非免疫グロブリンポリペプチドは本発明の抗体の定常ドメインの代わりに用いられてもよく、キメラ二価抗体を作り出すために本発明の抗体の一方の抗原結合部位の可変ドメインの代わりに用いられてもよい。
【0181】
完全ヒト抗体は、CDRを含む、軽鎖と重鎖の両方の配列全体がヒト遺伝子に由来する抗体分子である。このような抗体は本明細書において「ヒト」抗体または「完全ヒト」抗体と呼ばれる。ヒトモノクローナル抗体は、トリオーマ(trioma)法;ヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor, et al., 1983 Immunol Today 4: 72を参照されたい);およびEBVハイブリドーマ法を用いてヒトモノクローナル抗体を産生することによって調製することができる(Cole, et al., 1985 In: Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96を参照されたい)。ヒトモノクローナル抗体が利用される場合があり、ヒトハイブリドーマを用いることによって産生されてもよく(Cote, et al., 1983. Proc Natl Acad Sci USA 80: 2026-2030を参照されたい)、インビトロでヒトB細胞をエプスタイン-バーウイルスで形質転換することによって産生されてもよい(Cole, et al., 1985 In: Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy, Alan R. Liss, Inc., pp. 77-96を参照されたい)。
【0182】
さらに、ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリーを含む、さらなる技法を用いて産生することもできる。(Hoogenboom and Winter, J. Mol. Biol., 227:381 (1991); Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581 (1991)を参照されたい)。同様に、ヒト抗体は、内因性免疫グロブリン遺伝子が部分的または完全に不活化されているトランスジェニック動物、例えば、マウスにヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによって作製することができる。曝露されると、遺伝子再編成、集合、および抗体レパートリーを含む全ての点でヒトにおいて見られるものとよく似ているヒト抗体産生が観察される。このアプローチは、例えば、米国特許出願第5,545,807号;同第5,545,806号;同第5,569,825号;同第5,625,126号;同第5,633,425号;同第5,661,016号、ならびにMarks et al., Bio/Technology 10, 779-783 (1992); Lonberg et al., Nature 368 856-859 (1994); Morrison, Nature 368, 812-13 (1994); Fishwild et al, Nature Biotechnology 14, 845-51 (1996); Neuberger, Nature Biotechnology 14, 826 (1996);およびLonberg and Huszar, Intern. Rev. Immunol. 13 65-93 (1995)に記載されている。
【0183】
さらに、ヒト抗体は、抗原による曝露に応答して、動物の内因性抗体ではなく完全ヒト抗体を産生するように改変されたトランスジェニック非ヒト動物を用いて産生される場合がある(PCT公報WO94/02602を参照されたい)。非ヒト宿主にある免疫グロブリンの重鎖をコードする内因性遺伝子および軽鎖をコードする内因性遺伝子は無能力にされており、ヒト免疫グロブリンの重鎖をコードする活性のある遺伝子座および軽鎖をコードする活性のある遺伝子座が宿主ゲノムに挿入される。ヒト遺伝子は、例えば、必要なヒトDNAセグメントを含有する酵母人工染色体を用いて組み込まれる。次いで、完全な改変より少ない改変を含む中間トランスジェニック動物を交雑することによって、望ましい改変を全て提供する動物が子孫として得られる。このような非ヒト動物の好ましい態様はマウスであり、PCT公報WO96/33735およびWO96/34096に開示されるようにゼノマウス(Xenomouse)(商標)と呼ばれる。この動物は、完全ヒト免疫グロブリンを分泌するB細胞を産生する。関心対象の免疫原で免疫化した後に、前記抗体を動物から直接、例えば、ポリクローナル抗体の調製物として入手することができるか、または動物に由来する不死化B細胞から、例えば、モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマから入手することができる。さらに、ヒト可変領域を有する免疫グロブリンをコードする遺伝子を回収し、発現させて、抗体を直接入手することができるか、またはヒト可変領域を有する免疫グロブリンをコードする遺伝子を、例えば、単鎖Fv(scFv)分子などの抗体の類似体または断片を得るようにさらに改変することができる。
【0184】
本明細書に記載の抗体、例えば、ヒト抗体を産生するための例示的な方法は米国特許第5,916,771号に開示される。この方法は、重鎖をコードするヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを、培養中の、ある哺乳動物宿主細胞に導入する工程と、軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含有する発現ベクターを別の哺乳動物の宿主細胞に導入する工程と、2種類の細胞を融合してハイブリッド細胞を形成する工程を含む。このハイブリッド細胞は、重鎖と軽鎖を含有する抗体を発現する。態様では、免疫原にある臨床上関連するエピトープを特定するための方法、および関連エピトープに免疫特異的に高親和性で結合する抗体を選択するための相互に関連する方法はPCT公報WO99/53049に開示される。
【0185】
ベクター
抗体分子は、抗体分子、例えば、本明細書に記載の抗体分子をコードするDNAセグメントを含有するベクターによって発現させることができる。
【0186】
これらには、ベクター、リポソーム、裸のDNA、アジュバント補助DNA(adjuvant-assisted DNA)、遺伝子銃、カテーテルなどが含まれ得る。ベクターには、標的化部分(例えば、細胞表面受容体に対するリガンド)および核酸結合部分(例えば、ポリリジン)を有する、WO93/64701に記載のような化学結合体、ウイルスベクター(例えば、DNAウイルスベクターまたはRNAウイルスベクター)、標的部分(例えば、標的細胞に特異的な抗体)および核酸結合部分(例えば、プロタミン)を含有する融合タンパク質である、PCT/US95/02140(WO95/22618)に記載のような融合タンパク質、プラスミド、ファージなどが含まれる。ベクターは染色体ベクターでもよく、非染色体ベクターでもよく、合成ベクターでもよい。
【0187】
例示的なベクターには、ウイルスベクター、融合タンパク質、および化学結合体が含まれる。レトロウイルスベクターにはモロニーマウス白血病ウイルスが含まれる。態様では、ウイルスベクターはDNAウイルスベクターである。例示的なDNAベクターには、ポックスベクター、例えば、オルトポックスベクターまたはアビポックスベクター、ヘルペスウイルスベクター、例えば、単純ヘルペスIウイルス(HSV)ベクター(Geller, A. I. et al., J. Neurochem, 64:487 (1995); Lim, F., et al., in DNA Cloning: Mammalian Systems, D. Glover, Ed. (Oxford Univ. Press, Oxford England) (1995); Geller, A. I. et al., Proc Natl. Acad. Sci.: U.S.A. 90:7603 (1993); Geller, A. I., et al., Proc Natl. Acad. Sci. USA 87:1149 (1990)を参照されたい)、アデノウイルスベクター(LeGal LaSalle et al., Science, 259:988 (1993); Davidson, et al., Nat. Genet 3:219 (1993); Yang, et al., J. Virol. 69:2004 (1995)を参照されたい)、およびアデノ随伴ウイルスベクター(Kaplitt, M. G. et al., Nat. Genet. 8:148 (1994)を参照されたい)が含まれる。
【0188】
ポックスウイルスベクターは遺伝子を細胞の細胞質に導入する。アビポックスウイルスベクターは核酸の短期発現しかもたらさない。態様では、核酸を細胞に導入するのに、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、および単純ヘルペスウイルス(HSV)ベクターが用いられる。アデノウイルスベクターを用いると、アデノ随伴ウイルス(約4ヶ月)よりも短期であり、その結果として、HSVベクターよりも短い発現(約2ヶ月)が起こる。選択される特定のベクターは、標的細胞と、処置されている状態によって決まる。導入は、標準的な技法、例えば、感染、トランスフェクション、形質導入、または形質転換によるものでもよい。遺伝子導入の方式の例には、例えば、裸のDNA、CaPO4沈殿、DEAEデキストラン、エレクトロポレーション、プロトプラスト融合、リポフェクション、細胞マイクロインジェクション、およびウイルスベクターが含まれる。
【0189】
ベクターは、本質的に任意の望ましい標的細胞を標的化するのに使用することができる。例えば、定位注射を用いてベクター(例えば、アデノウイルス、HSV)を望ましい場所に向けることができる。さらに、粒子を、ミニポンプ(minipump)注入システム、例えば、SynchroMed注入システムを用いた脳室内(icv)注入によって送達することができる。対流と呼ばれるバルクフロー(bulk flow)に基づく方法も、大きな分子を脳の広い領域に送達することに有効なことが分かっており、ベクターを標的細胞に送達するのに有用であるかもしれない(Bobo et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:2076-2080 (1994); Morrison et al., Am. J. Physiol. 266:292-305 (1994)を参照されたい)。使用することができる他の方法には、カテーテル、静脈内注射、非経口注射、腹腔内注射、および皮下注射、ならびに経口経路または他の公知の投与経路が含まれる。
【0190】
これらのベクターを用いて、抗体分子、例えば、本明細書に記載の抗体分子を発現させることができる。本発明の抗原性タンパク質に特異的な単鎖抗体を産生するように技法を合わせることができる(例えば、米国特許第4,946,778号を参照されたい)。さらに、タンパク質、またはその誘導体、断片、類似体、もしくはホモログに対して望ましい特異性を有するモノクローナルFab断片を迅速かつ効果的に特定するために、Fab発現ライブラリーを構築するように方法を合わせることができる(例えば、Huse, et al., 1989 Science 246: 1275-1281を参照されたい)。(i)抗体分子のペプシン消化によって生成されるF(ab')2断片;(ii)F(ab')2断片のジスルフィド結合を還元することによって作製されるFab断片;(iii)パパインおよび還元剤で抗体分子を処理することによって作製されるFab断片、ならびに(iv)Fv断片を含むが、これに限定されない、タンパク質抗原に対するイディオタイプを含有する抗体断片は当技術分野において公知の技法によって産生され得る。
【0191】
がん
本明細書で使用する「がん」、「腫瘍」、または「腫瘍組織」という用語は、過度の細胞分裂に起因する異常な組織塊、ある特定の場合では、過剰増殖細胞タンパク質を発現するか、過剰発現するか、または異常発現する細胞を含む組織を指す。がん、腫瘍、または腫瘍組織は、異常増殖特性があり、有用な身体機能がない新生細胞である「腫瘍細胞」を含む。がん、腫瘍、腫瘍組織、および腫瘍細胞は良性でもよく悪性でもよい。がん、腫瘍、または腫瘍組織はまた、「腫瘍関連非腫瘍細胞」、例えば、腫瘍または腫瘍組織を供給する血管を形成する血管細胞も含んでもよい。非腫瘍細胞は、腫瘍細胞によって、例えば、腫瘍または腫瘍組織における血管形成の誘導によって複製および発生するように誘導されることがある。
【0192】
がんの例には、がん腫、リンパ腫、芽腫、肉腫、および白血病またはリンパ系腫瘍が含まれるが、これに限定されない。このようながんのさらに具体的な例が以下で述べられ、扁平細胞がん(例えば、上皮扁平細胞がん)、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、肺の腺がん、および肺の扁平上皮がんを含む肺がん、腹膜のがん、肝細胞がん、胃腸がんを含む胃がん(gastric cancer)または胃がん(stomach cancer)、膵臓がん、グリア芽細胞腫、子宮頸がん、卵巣がん、肝臓がん、膀胱がん、ヘパトーム、乳がん、結腸がん、直腸がん、結腸直腸がん、子宮内膜がんまたは子宮がん、唾液腺がん、腎臓がん(kidney cancer)または腎臓がん(renal cancer)、前立腺がん、外陰がん、甲状腺がん、肝がん、肛門がん、陰茎がん、ならびに頭頸部がんを含む。「がん」という用語は、原発性の悪性細胞または悪性腫瘍(例えば、細胞が、最初の新生物または腫瘍の部位以外にある、対象の体内部位に移動していないもの)および二次性の悪性細胞または悪性腫瘍(例えば、最初の腫瘍の部位とは異なる二次部位への悪性細胞または腫瘍細胞の移動である転移から生じたもの)を含む。
【0193】
一部の態様では、がんは腺がんである。一部の態様では、がんは、乳房、肺、頭部または頸部、前立腺、食道、気管、脳、肝臓、膀胱、胃、膵臓、卵巣、子宮、子宮頸部、精巣、結腸、直腸、および皮膚より選択される。一部の態様では、がんは、乳房、肺、頭部または頸部、前立腺、食道、気管、脳、肝臓、膀胱、胃、膵臓、卵巣、子宮、子宮頸部、精巣、結腸、直腸、または皮膚の腺がんである。一部の態様において、がんは、膵臓、肺(例えば、小細胞または非小細胞)、および乳房より選択される。
【0194】
がんまたは悪性腫瘍の他の例には、急性小児リンパ芽球性白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、副腎皮質がん、成人(原発性)肝細胞がん、成人(原発性)肝臓がん、成人急性リンパ球性白血病、成人急性骨髄性白血病、成人ホジキン病、成人ホジキンリンパ腫、成人リンパ球性白血病、成人非ホジキンリンパ腫、成人原発性肝臓がん、成人軟部組織肉腫、AIDS関連リンパ腫、AIDS関連悪性腫瘍、肛門がん、星状細胞腫、胆管がん、膀胱がん、骨がん、脳幹神経膠腫、脳腫瘍、乳がん、腎盂および尿管のがん、中枢神経系(原発性)リンパ腫、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫、子宮頸がん、小児(原発性)肝細胞がん、小児(原発性)肝臓がん、小児急性リンパ芽球性白血病、小児急性骨髄性白血病、小児脳幹神経膠腫、小児小脳星状細胞腫、小児大脳星状細胞腫、小児頭蓋外胚細胞腫瘍、小児ホジキン病、小児ホジキンリンパ腫、小児視床下部・視経路神経膠腫、小児リンパ芽球性白血病、小児髄芽腫、小児非ホジキンリンパ腫、松果体腫瘍およびテント上小児原始神経外胚葉性腫瘍、小児原発性肝臓がん、小児横紋筋肉腫、小児軟部組織肉腫、視経路および視床下部の小児神経膠腫、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、結腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、内分泌膵臓膵島細胞がん、子宮内膜がん、上衣腫、上皮がん、食道がん、ユーイング肉腫および関連腫瘍、外分泌膵臓がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん、女性乳がん、ゴーシェ病、胆嚢がん、胃がん、胃腸カルチノイド腫瘍、胃腸腫瘍、胚細胞腫瘍、妊娠性トロホブラスト腫瘍、毛様細胞性白血病、頭頸部がん、肝細胞がん、ホジキン病、ホジキンリンパ腫、高ガンマグロブリン血症、下咽頭がん、腸がん、眼内黒色腫、膵島細胞がん、膵島細胞膵臓がん、カポジ肉腫、腎臓がん、喉頭がん、唇および口腔のがん、肝臓がん、肺がん、リンパ球増殖性障害、マクログロブリン血症、男性乳がん、悪性中皮腫、悪性胸腺腫、髄芽腫、黒色腫、中皮腫、転移性潜在性原発性頸部扁平上皮がん、転移性原発性頸部扁平上皮がん、転移性頸部扁平上皮がん、多発性骨髄腫、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、骨髄異形成症候群、骨髄性白血病(Myelogenous Leukemia)、骨髄性白血病(Myeloid Leukemia)、骨髄増殖性障害、鼻腔がんおよび副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽細胞腫、妊娠中の非ホジキンリンパ腫、非黒色腫皮膚がん、非小細胞肺がん、潜在性原発性転移性頸部扁平上皮がん、中咽頭がん、骨線維性/悪性線維性肉腫、骨肉腫/悪性線維性組織球腫、骨肉腫/骨の悪性線維性組織球腫、卵巣上皮がん、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度潜在的腫瘍(Ovarian Low Malignant Potential Tumor)、膵臓がん、パラプロテイン血症、紫斑病、副甲状腺がん、陰茎がん、クロム親和細胞腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫瘍/多発性骨髄腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性肝臓がん、前立腺がん、直腸がん、腎臓細胞がん、腎盂がんおよび尿管がん、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、類肉腫症、肉腫、セザリー症候群、皮膚がん、小細胞肺がん、小腸がん、軟部組織肉腫、頸部扁平上皮がん、胃がん、テント上原始神経外胚葉性腫瘍および松果体腫瘍、T細胞リンパ腫、精巣がん、胸腺腫、甲状腺がん、腎盂および尿管の移行上皮がん(Transitional Cell Cancer of the Renal Pelvis and Ureter)、腎盂および尿管の移行がん(Transitional Renal Pelvis and Ureter Cancer)、絨毛性腫瘍、尿管細胞および腎盂細胞のがん、尿道がん、子宮がん、子宮肉腫、腟がん、視覚路および視床下部の神経膠腫、外陰がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ウィルムス腫瘍、ならびに上記で列挙した臓器系にある、新形成以外の他の任意の過剰増殖疾患が含まれるが、これに限定されない。
【0195】
結合試薬
グリピカン-1は、当技術分野において公知のタンパク質レベルおよび本明細書に記載のタンパク質レベルを測定および/または検出するための様々な方法の状況において、本明細書に記載の試薬および当技術分野において公知の試薬などの任意の様々な結合試薬を用いて捕獲することができる。本明細書に記載のグリピカン-1糖タンパク質に特異的に結合することができるか、そうでなければグリピカン-1糖タンパク質を検出することができる任意の結合試薬が適切な結合試薬として意図される。例示的な結合試薬には、抗体(モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、二重特異性抗体、またはその抗原結合断片、およびScFv、F(ab)、F(ab’)2、Fvを含む抗体断片を含む)、同位体標識ペプチド、核酸プローブ、DNAアプタマーまたはRNAアプタマー(例えば、米国特許出願公開第20030219801号を参照されたい)、ならびに標的ガイド合成(target-guided synthesis)のためのクリック化学(click chemistry)の使用(Lewis et al., Angewandte Chemie-International Edition, 41, 1053-, 2002; Manetsch et al., J. Am. Chem. Soc. 126, 12809-12818, 2004; Ramstrom et al., Nature Rev. Drug Discov. 1, 26-36, 2002)、低分子化合物、ならびにポリマーが含まれるが、これに限定されない。
【0196】
前述の詳細な説明および以下の実施例は例示に過ぎず、本発明の範囲を限定するものであると解釈してはならないと理解される。開示された態様に対する様々な変更および修正が当業者に明らかであり、本発明の精神および範囲から逸脱することなく加えられ得る。さらに、特定された特許、特許出願、および刊行物は全て、説明および開示のために、例えば、本発明と共に用いられ得るこのような刊行物に記載の方法の説明および開示のために参照として本明細書にはっきりと組み入れられる。これらの刊行物は、本願の出願日前の刊行物の開示のためだけに提供される。この点に関して、先行発明に基づいて、または他の任意の理由により本発明者らがこのような開示に先行する権利がないと認められると解釈されるものは何もない。日付に関する全ての記載またはこれらの文書の内容に関する表記は出願人が入手可能な情報に基づくものであり、これらの文書の日付または内容の正確さに関する是認を構成するものではない。
【実施例】
【0197】
以下の実施例は例示的であることが意図され、限定するものであると少しも意図されない。
【0198】
実施例1. グリピカン-1およびグリピカン-3のエキソソーム表面発現
がんの無い健常対象、または膵臓がん、肺がん、もしくは乳がんを有する対象から得たヒト血漿を入手し、グリピカン-1またはグリピカン-3に対する抗体でコーティングしたセンサーチップ上に配置した。血漿は、チップ上に直接配置するか、または緩衝液で希釈してチップ上に配置した。
図5に示すように、がんを有する対象に由来する試料におけるグリピカン-1および/またはグリピカン-3を発現するエキソソームの発現は、がんの無いヒト対象に由来する血漿試料と比較して高かった。
【0199】
実施例2. 酸化物の厚さがおよそ60nmの基体に420nm波長の光を照射することによってナノ粒子検出を改善することができる。実施例は、コントラストを改善するために波長を連続して短くできないことを証明する。
【0200】
図11は、ケイ素と半透明な二酸化ケイ素上層を備えるSP-IRIS基体に吸着された直径100nmのポリスチレンビーズからの信号を、パーセントコントラストで示す。ナノ粒子は二酸化ケイ素上層に吸着されている。様々な酸化物の厚さと照射波長についてパーセントコントラストを示した。
【0201】
図12は、40~220ナノメートルの範囲のナノ粒子直径について信号をパーセントコントラストで示す。様々な酸化物の厚さと照射波長について粒子コントラストをプロットした。
【0202】
ある特定の態様では、酸化物の厚さが60nmの基体に420nmの光を照射すると、基体の表面にある、直径が300nm未満の別個の小さなナノ粒子を区別することができる。しかしながら、300nmより大きなナノ粒子はカメラを飽和させる可能性がある。この問題に対処するために、基体に、波長が420nmの光を照射した後に、基体に、波長が約535nm超~約700nmの光を連続照射して、もっと大きな粒子を視角化することができる。連続照射によって、さらなる粒子情報(例えば、ナノ粒子の大きさに基づく選別の範囲、例えば、物理的性質(例えば、屈折率、大きさに基づく選別のパラメータ))の抽出を改善することができる。
【0203】
参照による援用
本明細書において述べられた刊行物および特許は全て、それぞれ個々の刊行物または特許が参照として組み入れられるように詳細かつ個々に示されるように、その全体が参照により本明細書に組み入れられる。
【0204】
均等物
当業者は、本明細書に記載の本発明の特定の態様に対する多くの均等物を認めるか、または日常的な実験以上のものを用いることなく突き止めることができる。このような均等物は、以下の特許請求の範囲に含まれることが意図される。