(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】アルミニウム原子イオンを生成するための固体ヨウ化アルミニウム(ALI3)を用いた注入およびヨウ化アルミニウムとそれに関連付けられた副産物のインサイチュクリーニング
(51)【国際特許分類】
H01J 27/08 20060101AFI20220302BHJP
H01J 37/08 20060101ALI20220302BHJP
H01J 37/317 20060101ALI20220302BHJP
H01L 21/265 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
H01J27/08
H01J37/08
H01J37/317 Z
H01L21/265 603A
(21)【出願番号】P 2018563816
(86)(22)【出願日】2017-06-21
(86)【国際出願番号】 US2017038420
(87)【国際公開番号】W WO2017223130
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-05-26
(32)【優先日】2016-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505413587
【氏名又は名称】アクセリス テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】カメニツァ,デニス
(72)【発明者】
【氏名】ルゼスズット,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】シルヴァ,フェルナンド
(72)【発明者】
【氏名】ベリンガー,ジェイソン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シアンヤン
【審査官】大門 清
(56)【参考文献】
【文献】特開昭60-054150(JP,A)
【文献】特開平05-054812(JP,A)
【文献】特表2010-502833(JP,A)
【文献】特表2011-523764(JP,A)
【文献】特開2004-359985(JP,A)
【文献】特開2013-105798(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0255198(US,A1)
【文献】特開平09-055182(JP,A)
【文献】特開2015-095414(JP,A)
【文献】特開昭60-195853(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 27/08
H01J 37/08
H01J 37/317
H01L 21/265
C23C 16/00-16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン注入システムのためのイオン源であって、
固体のヨウ化アルミニウムを含む半導体材料ソースと、
前記ヨウ化アルミニウムを気化することで、気体状のヨウ化アルミニウムを規定する固体ソース気化器と、
電源と、
前記イオン源に水蒸気を供給する給水機器と、
前記気体状のヨウ化アルミニウムからプラズマを形成するアークチャンバと、
前記アークチャンバからイオンビームを引き出す1つ以上の引出電極と、を備えており、
前記電源からのアーク電流は、前記ヨウ化アルミニウムからアルミニウムイオンを解離させ、
前記イオンビームは、アルミニウムイオンによって構成されている、イオン源。
【請求項2】
前記固体ソース気化器は、前記ヨウ化アルミニウムを気化温度まで加熱する1つ以上の加熱素子を備えている、請求項1に記載のイオン源。
【請求項3】
前記固体ソース気化器は、前記ヨウ化アルミニウム
を90℃から100℃まで加熱する、請求項1に記載のイオン源。
【請求項4】
前記ヨウ化アルミニウムは、粉末状、粒状、およびバルク固体状のうちの1つ以上の形態をとっている、請求項1に記載のイオン源。
【請求項5】
前記1つ以上の引出電極に関連付けられた引出電源をさらに備えており、
前記1つ以上の引出電極は、引出開口を備えており、
前記引出電源からの引出電流は、前記引出開口を介して前記イオンビームを引き出す、請求項1に記載のイオン源。
【請求項6】
前記アークチャンバを選択的に十分に減圧排気する真空システムをさらに備えている、請求項1に記載のイオン源。
【請求項7】
前記プラズマの形成を補助するために前記アークチャンバに共ガスを供給する共ガスソースをさらに備えている、請求項1に記載のイオン源。
【請求項8】
前記共ガスは、アルゴンを含んでいる、請求項
7に記載のイオン源。
【請求項9】
イオン注入システムであって、
ヨウ化アルミニウムから
、アルミニウムイオンによって構成されているイオンビームを形成するイオン源と、
前記イオン注入システムに水蒸気を供給する給水機器と、
前記イオンビームを選択的に輸送するビームラインアセンブリと、
ワークピースにアルミニウムイオンを注入するために前記イオンビームを受け入れるエンドステーションと、を備えている、イオン注入システム。
【請求項10】
前記ワークピースは、シリコンカーバイドを含んでいる、請求項9に記載のイオン注入システム。
【請求項11】
前記イオン源は、
固体のヨウ化アルミニウムを含む半導体材料ソースと、
前記ヨウ化アルミニウムを気化することで、気体状のヨウ化アルミニウムを規定する固体ソース気化器と、
電源と、
前記気体状のヨウ化アルミニウムからプラズマを形成するアークチャンバと、
前記アークチャンバから前記イオンビームを引き出す1つ以上の引出電極と、を備えており、
前記電源からのアーク電流は、前記ヨウ化アルミニウムからアルミニウムイオンを解離させる、請求項10に記載のイオン注入システム。
【請求項12】
前記イオン注入システムの1つ以上の部分を十分に減圧排気する真空システムをさらに備えている、請求項10に記載のイオン注入システム。
【請求項13】
前記ヨウ化アルミニウムは、粉末状、粒状、およびバルク固体状のうちの1つ以上の形態をとっている、請求項10に記載のイオン注入システム。
【請求項14】
前記プラズマの形成を補助するために前記アークチャンバに共ガスを供給する共ガスソースをさらに備えている、請求項11に記載のイオン注入システム。
【請求項15】
前記共ガスは、アルゴンを含んでいる、請求項14に記載のイオン注入システム。
【請求項16】
ワークピースにアルミニウムイオンを注入するための方法であって、
固体のヨウ化アルミニウムのソース材料を気化することにより、気化したヨウ化アルミニウムのソース材料を規定する工程と、
前記気化したヨウ化アルミニウムのソース材料を、イオン注入システムのイオン源に供給する工程と、
前記イオン源の内部において前記ヨウ化アルミニウムのソース材料をイオン化する工程と、
前記イオン源からアルミニウムイオンを含有するイオンビームを引き出す工程と、
前記ワークピースに向かうように前記イオンビームを導くことにより、前記ワークピースに前記アルミニウムイオンを注入する工程と、
前記イオン注入システムの1つ以上の内部コンポーネント上に、残留ヨウ化アルミニウムおよびヨウ化水素酸のうちの1つ以上を形成する工程と、
前記イオン注入システムの前記1つ以上の内部コンポーネント上から、前記残留ヨウ化アルミニウムおよび前記ヨウ化水素酸のうちの1つ以上を洗浄する工程と、を含んで
おり、
前記残留ヨウ化アルミニウムおよび前記ヨウ化水素酸のうちの1つ以上を洗浄する工程は、
前記イオン注入システムの前記内部コンポーネントに水蒸気を供給する工程と、
前記イオン注入システムを減圧排気することにより、前記水蒸気と前記残留ヨウ化アルミニウムと前記ヨウ化水素酸とを十分に除去する工程とを含んでいる、方法。
【請求項17】
前記固体のヨウ化アルミニウムのソース材料は、初期状態では、粉末状、粒状、バルク固体状のうちの1つ以上の形態をとっている、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記イオン注入システムの前記内部コンポーネントに水蒸気を供給する工程は、
前記イオン注入システムの前記内部コンポーネントに、大気および気化した水のうちの1つ以上を供給する工程を含んでいる、請求項
16に記載の方法。
【請求項19】
前記水蒸気の供給および前記イオン注入システムの減圧排気を繰り返し実行する工程を含んでいる、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記水蒸気がインサイチュで供給される、請求項16に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔関連出願の参照〕
本願は、「アルミニウム原子イオンを生成するための固体ヨウ化アルミニウム(ALI3)を用いた注入およびヨウ化アルミニウムとそれに関連付けられた副産物のインサイチュクリーニング」(IMPLANTATION USING SOLID ALUMINUM IODIDE (ALI3) FOR PRODUCING ATOMICALUMINUM IONS AND IN SITU CLEANING OF ALUMINUM IODIDE AND ASSOCIATEDBY-PRODUCTS)というタイトルが付された米国仮出願No.62/352,673(2016年6月21日出願)の利益を主張する。当該出願の全体の内容は、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0002】
〔分野〕
本発明は、典型的にはイオン注入システムに関し、より具体的には、(i)ヨウ化アルミニウムのイオン源材料と、(ii)それに関連付けられた、イオン注入システムをインサイチュクリーニング(in-situ cleaning)するための機構を有するビームラインコンポーネントと、を使用してアルミニウムイオンを注入するためのイオン注入システムに関する。
【0003】
〔背景〕
半導体デバイスの製造において、イオン注入は、半導体および/またはウェハ材料にドーパントを選択的に注入するための物理プロセスである。そのため、注入操作は、ドーパントと半導体材料との間の化学的相互作用に依存しない。イオン注入において、イオン注入器のイオン源から発生するドーパント原子/分子は、イオン化され、加速され、イオンビームを形成するように変換され、分析され、そしてウェハと交わるように走査される。つまりウェハは、イオンビームを通過するように走査される。ドーパントイオンは、ウェハに物理的に衝突し、表面に侵入して、自身のエネルギーに関連する深さで表面内部に留まる。
【0004】
イオン注入器のイオン源は通常、アークチャンバにおけるソース材料をイオン化することでイオンビームを生成する。ソース材料のコンポーネントは、所望のドーパント成分であることが望ましい。所望のドーパント成分は、イオン化されたソース材料から、イオンビームの形態で引き出される。
【0005】
従来、アルミニウムイオンが所望のドーパント成分である場合、イオン注入用のアルミニウムイオンのソース材料として、窒化アルミニウム(AlN)およびアルミナ(Al2O3)等の材料が使用されてきた。窒化アルミニウムまたはアルミナは、固体の絶縁材料である。これらは、(上記イオン源内で)プラズマが形成されるアークチャンバ内に配置されることが一般的である。
【0006】
従来、ガス(例えば、フッ素)を供給(導入)することで、アルミニウムを含有した材料を化学エッチングしていた。この場合、ソース材料は、イオン化される。そして、アルミニウムは、引き出され、ビームラインに沿って、注入用のエンドステーション内に配置されたシリコンカーバイドのワークピースへと輸送される。例えば、アルミニウムを含有する材料は、アークチャンバ内のエッチャントガス(例として、BF3、PF3、NF3等)の一部の形態によって、アルミニウムイオンのソース材料として広く使用されている。しかしながら、これらの材料は、絶縁材料(例として、AlN、Al2O3等)を生成するという望ましくない副次的な悪影響をもたらす。当該絶縁材料は、アークチャンバから、目的物であるアルミニウムイオンと共に放出される。
【0007】
その後、絶縁材料は、引出電極等のイオン源の種々のコンポーネントを被覆する。そして、当該絶縁材料は、帯電し始め、引出電極の静電特性に悪影響を及ぼす。電荷が帯電した結果、引出電極に、アーク放電(arcing)または「グリッチ」(glitching)とも一般に称される挙動を引き起こされる。帯電した電荷は、他のコンポーネントおよび/または大地に対してアーク(電弧)を発するためである。極端な場合、引出電極用の電源の挙動が、変化させられ、阻害される。このことは、一般的に予測不能なビームの挙動をもたらす。このため、ビーム電流の低減が生じ、イオン源に関連付けられた種々のコンポーネントをクリーニング(洗浄)するための予防保全の頻度が増加してしまう。さらに、上記材料から生じた薄片および他の残留物が、アークチャンバ内に発生ししうる。このため当該アークチャンバの動作特性が変化させられ、さらに高頻度のクリーニングが必要となる。
【0008】
〔概要〕
本開示は、アルミニウム注入のためのイオン注入システムにおけるイオン源の性能を向上させ、かつ、当該イオン源の寿命を増加させるためのシステム、装置、および方法を提供する。そこで、以下では、本発明の一部の態様についての基本的な理解を提供するために、本開示についての簡略的な概要を示す。本概要は、本発明の広範囲に亘る総括ではない。本概要は、本発明の主要な点または重要な要素を特定することを意図しているわけではないし、本発明の範囲を規定することを意図しているわけでもない。本概要の目的は、後述するより詳細な説明の序文として、簡略化された形態によって、本発明の一部のコンセプトを示すことにある。
【0009】
本開示の各態様は、アルミニウムイオンをワークピースに注入するためのイオン注入プロセスを容易化する。一つの例示的な態様によれば、イオン注入システムのためのイオン源は、固体の(固体状の)(solid form)ヨウ化アルミニウムを含む半導体材料ソース(solid-statematerial source)を備えている。一例では、ヨウ化アルミニウムは、粉末状、粒子状、バルク固体状のうちの1つ以上の形態をとる。
【0010】
イオン注入システムは、例えば、イオンビームを選択的に輸送するように構成されたビームラインアセンブリをさらに備えている。エンドステーションは、ワークピース内にアルミニウムイオンを注入するためにイオンビームを受け入れるように構成されている。
【0011】
固体ソース気化器は、例えば、ヨウ化アルミニウムを気化させることにより、気体状のヨウ化アルミニウムを規定するように構成されている。電源は、気体状のヨウ化アルミニウムからプラズマを形成するように構成されたアークチャンバに操作可能に接続されていてもよい。電源から供給されるアーク電流は、ヨウ化アルミニウムからアルミニウムイオンを解離させるように構成されている。さらに、1つ以上の引出電極は、イオンビームをアークチャンバから引き出すように構成されていてよい。当該イオンビームは、アルミニウムイオンによって構成されている。
【0012】
一例によれば、固体ソース気化器は、ヨウ化アルミニウムを約90℃から100℃の気化温度まで加熱するように構成された1つ以上の加熱素子を備える。
【0013】
別の例によれば、引出電源がさらに提供される。当該引出電源は、1つ以上の引出電極に関連付けられている。1つ以上の引出電極は、例えば、引出開口を備える。引出電源からの引出電流は、引出開口を介してイオンビームを引き出すように設定されている。
【0014】
別の例によれば、真空システムは、イオン注入システムの1つ以上のコンポーネント(例:アークチャンバ)を選択的に十分に減圧排気するために提供および構成される。別の例によれば、給水機器(water introduction apparatus)が、イオン注入システムの1つ以上のコンポーネント(例:イオン源)に水蒸気を供給するために、さらに提供および構成される。しかし別の例では、プラズマの形成を補助するために、アークチャンバに共ガス(coガス)(co-gas)を供給するために、共ガスソースが提供および構成される。
【0015】
本開示の別の例示的な態様によれば、ワークピース内にアルミニウムイオンを注入するための方法が提供される。一例では、当該方法は、固体のヨウ化アルミニウムのソース材料を気化させる工程を含む。その結果、気化したヨウ化アルミニウムのソース材料を規定できる。気化したヨウ化アルミニウムのソース材料は、イオン注入システムのイオン源に供給される。そして、イオン源内において、ヨウ化アルミニウムのソース材料がイオン化される。さらに、アルミニウムイオンを含有したイオンビームは、イオン源から引き出され、ワークピースに向かうように導かれる。その結果、ワークピース内にアルミニウムイオンを注入できる。
【0016】
一例によれば、残留ヨウ化アルミニウムおよびヨウ化水素酸のうちの1つ以上が、イオン注入システムの1つ以上の内部コンポーネント上に形成され、その後当該コンポーネントから洗浄される。残留ヨウ化アルミニウムおよびヨウ化水素酸のうちの1つ以上を洗浄する工程は、例えば、イオン注入システムの内部コンポーネントに水蒸気を供給する工程を含む。イオン注入システムを減圧排気することで、水蒸気は、残留アルミニウムと反応し、ヨウ化水素酸を形成する。さらに、反応済みのヨウ化アルミニウムと未反応のヨウ化アルミニウムとは、真空システムを使用してイオン注入システムを減圧排気することで、イオン注入システムから除去される。水蒸気はインサイチュで(その場で)(in-situ)供給されてよい。残留アルミニウムとヨウ化水素酸とを取り除くために減圧排気されたシステムに、さらに水蒸気を繰り返し供給してもよい。
【0017】
別の例によれば、イオン注入システムに水蒸気を供給する工程とともに、シャットダウンビームが用いられる。シャットダウンビームの使用(シャットダウンビームを使用する工程)は、アークチャンバ内の活性アルゴンプラズマを維持する工程を含む。それにより、イオン注入システムをクールダウン(冷却)するとともに、非イオン化環境が生じることを十分に防止できる。
【0018】
上述の概要は、本開示の一部の実施形態の一部の構成を簡略化して概説することのみを目的としており、他の実施形態は、上述の構成に対する付加的な構成を有していてもよいし、当該構成とは別の構成を有してもよい。特に、本概要は、本願の範囲を限定することを意図しているものと解釈されるべきではない。そこで、上述の目的および関連する目的を達成するために、本開示は、以下に十分に説明され、かつ、特許請求の範囲において具体的に示された構成を備えている。以下の説明および添付の図面は、本開示の所定の例示的な実施形態を詳細に開示する。これらの実施形態は、本開示の原則において採用されうる様々な手法の一部を例示している。本開示の他の目的、利点、および新たな構成は、図面とともに考慮されることにより、以下の本開示の詳細な説明から、明確になるであろう。
【0019】
〔図面の簡単な説明〕
図1は、本開示の様々な態様に基づくヨウ化アルミニウムイオン源材料を利用した例示的な真空システムのブロック図である。
【0020】
図2は、本開示の別の態様に基づく例示的な気化器を示す。
【0021】
図3は、ソース材料としてヨウ化アルミニウムを用いて、アルミニウムイオンをワークピース内にイオン注入するための例示的な方法を示す。
【0022】
図4は、ソース材料としてヨウ化アルミニウムを用いて、イオン注入システムをクリーニングするための例示的な方法を示す。
【0023】
〔詳細な説明〕
本開示は、イオン注入システム、および、当該イオン注入システムに関連付けられたイオン源材料を全般的に対象としている。より具体的には、本開示は、1000℃までの種々の温度で、シリコン、シリコンカーバイド、または別の半導体基材(semiconductor substrate)を電気的にドープすることを目的として、アルミニウム原子イオンを生成するためにヨウ化アルミニウム(AlI3)の固体ソース材料を使用する、上記イオン注入システムにおけるコンポーネントを対象としたものである。さらに、本開示は、イオン注入プロセスの使用中および/または使用後に、ヨウ化アルミニウムとその副産物をインサイチュクリーニングする方法を提供する。
【0024】
そこで、図面を参照して本発明を説明する。同様の参照番号は、同様の部材を一貫して参照するために用いられてよい。様々な態様についての説明は単なる例示であると理解されるべきであり、限定的な意味合いで解釈されるべきではない。以下の記載では、説明のために、様々な具体的な細部が、本発明に対する十分な理解を与えるために開示されている。但し、本発明はこれらの具体的な細部がなくとも実施されてよいことは、当業者にとって明白であろう。さらに、本発明の範囲は、添付の図面を参照して以下に説明される実施形態または実施例に限定されることは意図されていない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
【0025】
また、図面は本開示の実施形態の様々な態様の例を与えるために提供されていることに留意されたい。このため、図面は単に概略的なものとみなされるべきである。特に、図面に示された各部材は必ずしも互いにスケール通りに描かれているわけではない。また、図面における様々な部材の位置は、各実施形態に対する明確な理解をもたらすために選択されたものである。このため、当該位置は、本発明の実施形態に係る実装における、様々な部材の実際の相対的な位置関係を必ずしも示しているわけではないと解釈されるべきである。さらに、本明細書において説明される様々な実施形態および実施例の構成は、特に明記されない限り、互いに組み合わせられてもよい。
【0026】
また、以降の説明において、図面に示されたまたは明細書において説明された機能ブロック、デバイス、部品、回路素子、またはその他の物理的または機能的なユニット間における任意の直接的な接続または連結は、間接的な接続または連結によって実現されてもよいと理解されるべきであることに留意されたい。さらに、図面における機能ブロックまたはユニットは、ある実施形態では、個別の構成または回路として実装されてよい。あるいは、当該機能ブロックまたはユニットは、別の実施形態では、全体的または部分的に、共通の構成または回路として実現されてもよい。例えば、一部の機能ブロックは、共通のプロセッサ(例:シグナルプロセッサ)上で動作するソフトウェアとして実施されてよい。さらに、以下の明細書において有線として記載されている任意の接続は、特に明示されない限り、無線通信として実施されてもよいことが理解されるべきである。
【0027】
図1は、本開示の一態様に基づく、例示的な真空システム100を示す。本実施例の真空システム100は、イオン注入システム101を備える。但し、様々な他のタイプの真空システム(例:プラズマ処理システムまたは他の半導体処理システム)を考慮してもよい。イオン注入システム101は、例えば、ターミナル102、ビームラインアセンブリ104、およびエンドステーション106を備える。
【0028】
一般的には、ターミナル102内のイオン源(イオンソース)108は、電源110に接続されている。イオン源108は、アークチャンバ114内のイオン源材料112をイオン化して複数のイオンを形成し、かつ、1つ以上の引出電極118を使用してイオンビーム116を形成し、当該引出電極から当該イオンビームを引き出すように構成されている。1つ以上の引出電極118は、例えば、引出開口119を備える。当該引出開口119を介して、イオンビーム116は、引き出され、かつ、画定される。引出電源120は、例えば、1つ以上の引出電極118と関連付けられている。引出電源120から1つ以上の引出電極118に供給された引出電流121は、例えば、引出開口119を通過させるようにイオンビーム116を引き出すように構成されている。引出開口119に近接している個々の電極122は、例えば、アークチャンバ114に近接した中性化電子(neutralizing electrons)の逆流、または、引出開口を通過する中性化電子の逆流を防ぐためにバイアスされてもよい。本開示の一態様に基づく、イオン源材料112は、イオン源108のアークチャンバ114内に設けられている。当該イオン源材料は、以下に述べるように、ヨウ化アルミニウム(AlI3)を含む。
【0029】
本実施例のイオンビーム116は、ビームステアリング装置124を通過して、開口126を出て、エンドステーション106に向かうように導かれる(方向付けられている)。エンドステーション106において、イオンビーム116は、ワークピース128(例:シリコンウェハ等の半導体、シリコンカーバイド、ディスプレイパネル、等)に衝突する。当該ワークピースは、チャック130(例:静電チャックまたはESC)に選択的にクランプまたは取付される。注入されたイオンがワークピース128の格子の内部に埋め込まれると、当該注入されたイオンは、ワークピースの物理的および/または化学的な特性を変化させる。このため、イオン注入は、材料科学の研究における様々な用途と同様に、半導体デバイスの製造および金属の仕上げ加工にも用いられている。
【0030】
本開示のイオンビーム116は、任意の形状(例:ペンシルビーム、スポットビーム、リボンビーム、スキャンビーム、または他の形状)を取りうる。これらの形状のイオンビーム内のイオンは、エンドステーション106に向けられる。これらの形状は全て、本開示の範囲に含まれると考慮される。
【0031】
1つの例示的な態様において、エンドステーション106は、プロセスチャンバ132(例:真空チャンバ134)を備える。プロセス環境136は、プロセスチャンバと関連付けられている。一般的に、プロセス環境136は、プロセスチャンバ132の内部に存在する。一例として、プロセス環境136は、真空システム138(例:真空ポンプ)によって生成された真空を含む。当該真空システムは、プロセスチャンバに接続されており、当該プロセスチャンバを十分に減圧排気(evacuate)するように構成されている。真空システム138は、真空システム100の種々の異なるコンポーネント(例:ターミナル102、ビームラインアセンブリ104、エンドステーション106に関連する任意のコンポーネント)を選択的に十分に減圧排気するように構成されてよい。例えば、真空システム138は、イオン源108のアークチャンバ114を十分に減圧排気するように有利に構成されてよい。さらに、真空システム100を全体的に制御するために、コントローラ140が設けられている。
【0032】
本開示では、シリコンカーバイドの半導体ベース(ソリッドステートベース)(solidstate based)のデバイスが上部に形成されたワークピース128は、シリコンベースのデバイスよりも優れた熱的特性および電気的特性を有していることが見出されたと考えている。例えば、潜在的に高い温度で比較的高い電圧を変換する用途において、シリコンカーバイドの半導体デバイスは、従来のシリコンの半導体デバイスに比べて優れた熱的特性および電気的特性を有している。例えば、シリコンカーバイドベースのデバイスは、高電圧および高温の装置(例:電気自動車など)において有利に使用されうる。
【0033】
但し、シリコンカーバイドを含むワークピース128へのイオン注入は、シリコンワークピースに対して使用される注入ドーパントとは異なるクラスのものが使用される。シリコンカーバイドを含むワークピース128内にイオンを注入する場合、例えば、アルミニウムおよび窒素の注入物が用いられることが多い。この場合、アルミニウムイオンと窒素イオンとは、ワークピースに別々に注入される。例えば、窒素は、気体としてイオン源108内に供給可能であるため、窒素の注入は、比較的簡単である。窒素注入物に関連付けられた窒素イオンをイオン化して引き出すことにより、比較的簡単な調整および洗浄(cleanup)等が可能である。しかしながら、アルミニウム注入物に関連付けられたアルミニウムイオンをイオン化して引き出すことは、より困難である。現時点では、アルミニウムを良好な気体のソース(gaseous source)とする公知の解決策が、わずかであるためである。
【0034】
そこで、本開示は、イオン源108内においてアルミニウム原子イオンを生成することを目的に、ヨウ化アルミニウム(AlI3)をイオン源材料112として用いることを考慮している。従来、ヨウ化アルミニウムは、イオン源材料112として用いられてこなかった。そして、現時点において、発明者らは、ヨウ化アルミニウムを用いることにより、絶縁材料および薄片等の形成(従来からアルミニウムイオン注入において直面してきた問題である)を低減できると考えている。そのため、ヨウ化アルミニウムがソース材料112として使用された場合、従来のアルミニウムイオン注入では見受けられていた絶縁材料は、生成されず、かつ、イオン源に関連付けられた種々のコンポーネント内または当該コンポーネント上にも蓄積されなかった。このように、ヨウ化アルミニウム(AlI3)をイオン源材料112として使用することで、(i)イオン源108と引出電極118との寿命を効果的に向上させることができ、(ii)イオン注入システム101の動作時に、より安定したイオンビーム116を生成でき、かつ、(iii)十分に高いビーム電流が許容される。
【0035】
創作的であることに、本開示は、イオン源108内におけるソース材料112として、ヨウ化アルミニウムが固体の形態で提供された場合に、単一原子のアルミニウムイオンが生成されうると考えている。そのため、室温から1000℃までの温度範囲で、シリコンカーバイド、シリコン、または別の材料を含むワークピース128を電気的にドープするために、アルムニウムイオンを使用することができる。そのため、ソース材料112としてヨウ化アルミニウム(AlI3)を使用することで、本開示は、既知の技術に対して、(i)イオン源108の寿命の改善、(ii)ビーム電流の改善、および、(iii)イオン注入システム101における種々のその他の動作特性の改善をもたらす。
【0036】
そのため本開示によれば、イオン注入システム101に関連付けられた固体ソース気化器144(例として、円筒型のオーブン)内に挿入される半導体材料ソース142として、ヨウ化アルミニウム(AlI3)が提供される。例えば、イオン注入システム101は、マサチューセッツ州のベバリーに拠点を置くアクセリステクノロジーズ社製の最適なイオン注入器を備えてもよい。例えば、ヨウ化アルミニウムは、固体ソース気化器144内に、粉末、粒状、バルク固体状のうちの1つ以上の形態として配置される。ヨウ化アルミニウムは、固体ソース気化器144内に挿入された後、気化温度(例:90~100℃)まで加熱され、プラズマを形成するためのソース材料112として、イオン源108のアークチャンバ114内に供給されるために十分な量の気体状態の材料へと変化する。プラズマの形成は、アークチャンバ114内におけるプラズマ形成の開始を補助するために、共ガス148(例:アルゴン)を用いて行われてもよいし、あるいは、当該共ガスを用いずに行われてもよい。例えば、固体ソース気化器144は、ヨウ化アルミニウムを蒸発温度まで加熱するように構成された加熱機器146(例として、1つ以上の加熱素子または加熱コイル)を備える。
【0037】
ヨウ化アルミニウムが、固体ソース気化器144内で適切な温度(例として、気化温度)に達した場合、ヨウ化アルミニウムのみによって、または共ガス148と組み合わせることによって、イオン源108のアークチャンバ114内でプラズマを安定して発生させることができるように、十分な材料を発生させることができる。そして、単一のアルミニウム原子イオンは、イオンビーム116を形成するために、引出電極118を介して静電的に引き出される。当該イオンビーム116は、さらに操作され、アルミニウムが注入される対象となるワークピース128に向けて輸送される。
【0038】
本開示は、シリコン、シリコンカーバイド、または別の半導体基材を含むワークピース128内に、アルミニウム原子イオンを注入するためのアルミニウムソース材料として、ヨウ化アルミニウム(AlCl3等)を使用することで、イオン源108および周囲の領域に由来するヨウ化アルミニウムおよびそのあらゆる副産物をインサイチュクリーニングする方法を、さらに提供する。
【0039】
上述のように、ヨウ化アルミニウムは、イオン注入システム101内の半導体材料ソース142から固体ソース気化器144に供給されてよい。ヨウ化アルミニウムは、例えば、固体ソース気化器144内において、当該ヨウ化アルミニウムを適切な温度まで加熱することで、気化させられる。その結果生成されたヨウ化アルミニウムの蒸気は、アルミニウム原子イオンを生成するために、イオン源108のアークチャンバ114内で解離され、その後イオン化される。当該アルミニウム原子イオンは、イオン注入プロセスのために、イオンビーム116の形態で引き出される。ヨウ化アルミニウムに関連付けられたイオン化されていない(例:分子または解離されていない)材料は、イオン注入システム101の内面上に蓄積しうる。または、当該材料は、様々な成分へと分解しうる。このような分解したヨウ化アルミニウムの主成分は、例えば、ヨウ化アルミニウム、アルミニウム、ヨウ素、およびヨウ化水素である。上述のように、アルミニウムは、イオン注入プロセスにおいてイオンビーム116を構成する好ましいターゲット材料である。また、ヨウ素は、イオン注入システム101全体に存在する場合、比較的不活性である。しかしながら、ヨウ化水素は、活性であり(反応性が高く)、化学的に分解してヨウ化水素酸を形成する傾向を有する。ヨウ化水素酸は、強い腐食性を有する酸である。
【0040】
大気中の水分とソース材料との反応を開始させないように、例えば、不活性環境(例として、アルゴン、窒素、または別の不活性ガス環境)内に、イオン源108に関連付けられた固体ソース気化器144には、半導体材料ソース142に由来するソース材料112(ヨウ化アルミニウム)が手動で装填されてもよい。例えば、固体ソース気化器144およびイオン源108のうちの1つ以上は、イオン注入システム101と離間させられてもよく、かつ、不活性環境内でソース材料112を手動装填するための「グローブボックス」(glove box)内に配置されてもよい。イオン源108および/または固体ソース気化器144は、イオン注入システム101内に再装着(re-installed)されてもよい。この場合、少なくともイオン源108は、イオン注入システムの動作圧力まで減圧排気される。
【0041】
ソース材料112(ヨウ化アルミニウム)は、例えば、固体ソース気化器144が蒸気(例:気相)を発生させるまで、当該固体ソース気化器内において加熱される。蒸気は、アークチャンバ114に移動する。または、当該蒸気は、別の方法で当該アークチャンバ内に供給される。上述したように、当該アークチャンバ内において、アルミニウムは、イオン化され、イオンビーム116として引き出され、そしてワークピース128に向けて輸送される。未反応のヨウ化アルミニウムは、より低温の面(温度が概ね90~100℃未満である面)上で再凝固しやすい傾向を有する。当該低温の面は、例えば、イオン源108に関連付けられた内面149である(別のビームラインコンポーネントについても同様)。ヨウ化アルミニウムは、当該ヨウ化アルミニウムの気化温度に起因して、より高温の面(温度が約90~100℃を越える表)上では再凝固しにくい傾向を有する。
【0042】
本開示では、水素、または水素を含有した化合物(例:水)との反応の副産物であるヨウ化水素が、イオン源108の(および別のビームラインコンポーネント)の内壁149に形成される、または別の方法で内壁149を被覆すると考えている。例えば、固体ソース気化器144内において、ヨウ化アルミニウム材料が使い果たされた場合、イオン源108は、イオン注入システム101から取り外されてよい。この場合、プロセスを継続するために、イオン源は、洗浄され、かつ、ヨウ化アルミニウムの再装填(再ローディング)が行われてよい。しかしながら、この時、イオン源108の内壁149上の未反応のヨウ化アルミニウムおよびヨウ化水素が、水分を含んだ空気に曝されうるため、付加的なヨウ化水素およびヨウ化水素酸が形成される場合がある。
【0043】
しかしながら、本開示では、有益であることに、次の通り考えている。ヨウ化アルミニウムがインサイチュで(その場で)(in-situ)水蒸気に露出された場合、液状の(liquid-like)残留物が形成されうる。この場合、当該液状の残留物を、真空システム138(例として、有毒ガスの排出システムまたは別の真空システム)を介して、排出して取り除くことが可能である。従って、本開示は、イオン源108および/またはイオン注入システム101の別のコンポーネントを水蒸気にインサイチュ露出(in-situ exposure)させ、当該コンポーネントの洗浄およびメンテナンスを補助することを考慮している。例えば、インサイチュ露出は、周期的であってよい(例:毎日の停止サイクル期間)。あるいは、インサイチュ露出は、イオン源108の寿命の終了時に、1回の一連の露出(例:パージとポンプとのサイクル)中に行われてもよい。代替的に、イオン源108の洗浄のために、個別かつ専用の容器が使用されてもよい。
【0044】
イオン源108の筐体(ハウジング)内の様々な部分に水蒸気を所定回数供給することは、ヨウ化水素およびヨウ化水素酸を有利に反応させる。これにより、当該ヨウ化水素およびヨウ化水素酸を真空システム138により除去することができ、かつ、塩基溶液(例:イソプロピルアルコール)またはより害の少ない別の溶剤で残留物を洗浄するために、あらゆる残留物を中和できる。水蒸気の供給により、例えば、より安全な方法で、ヨウ化アルミニウムの副産物の反応を制御でき、有害な化学反応および/または腐食の態様を最小化できる。
【0045】
本開示では、水を使用した上述のインサイチュクリーニングを行わない場合、内壁149上に形成されたかなりの量の未反応のヨウ化アルミニウムとヨウ化水素酸は、特別な汚染除去のプロトコル(方法)と処理との要因となりうると考えている。そのため、本開示は、水蒸気を真空システム100(あるいは、外部容器)内に導入するという取り組みを行い、(例:ガスを排出することで)ヨウ化アルミニウムの副産物の形成を意図的に許容し、かつ、真空システム138を使用してこれらの副産物を除去している。ヨウ化アルミニウムの副産物の除去は、例えば、スタンバイのビーム操作を利用して(例:夜間に)、定期的な機械のシャットダウン期間中に、インサイチュで実行されうる。あるいは、ヨウ化アルミニウムの副産物の除去は、一例の個別のパージ/ポンプサイクル、または、ポンプダウンサイクルに後続する1回のパージを用いて、イオン源108または気化器144の寿命の終了時に、インサイチュで実行されてもよい。本開示は、より高い圧力(例:大気圧)における排気(transpire)のためのパージ/ポンプまたは1回のパージを、さらに考慮している。専用の外部容器(不図示)が、上述のパージおよびポンプのためにさらに提供されてもよい。
【0046】
真空システム100への水または水蒸気の供給は、配水システム150によって実行されてよい。
図2には、例示的な配水システム150が示されている。ここでは、給水機器152(例:マサチューセッツ州のベバリーに拠点を置くアクセリステクノロジーズ社製の品番110126300)は、水または水蒸気を
図1の真空システム100にインサイチュ供給(in-situ introduction)できるように、水リザーバ154からの水を受容するように構成されている。
【0047】
このように、本開示は、粉末状またはその他の形態の固体ヨウ化アルミニウムを使用する。当該固体ヨウ化アルミニウムは、気化器144内に配置されており、かつ、(例えば、加熱装置146を用いて)気化温度まで加熱される。その結果、ヨウ化アルミニウムは、気化させられる。気化した材料は、イオン源108のアークチャンバ114へと移動させられる。当該気化した材料は、さらにイオン化され、ワークピース128内に注入されるためにビームラインに沿って輸送される。
【0048】
図3は、アルミニウムイオンをワークピースに注入するために提供される例示的な方法200を示す。ここで、本明細書において、例示的な方法が一連の操作または事象として図示および記載されているが、本発明は、そのような操作または事象の記載の順序によって限定されないことを理解されたい。本発明によれば、ある工程が、本明細書において図示および記載される以外に、異なる順序でおよび/または他の工程と同時に起こりうるからである。加えて、本発明に係る方法を実施するために、図示された工程の全てが必要となるわけではない。さらに、上記方法は、本開示において図示および記載されたシステムに関連して実施されてもよいとともに、図示しない他のシステムに関連して実施されてもよいことを理解されたい。
【0049】
図3に示されるように、方法200は、操作202から始まる。当該操作202では、固体のヨウ化アルミニウムソース材料を気化させることにより、気化したヨウ化アルミニウムソース材料が規定される。操作202において提供される固体のヨウ化アルミニウムソース材料は、例えば、初期状態では、粉末状、粒状、バルク固体状のうちの1つの形態をとる。
【0050】
操作204では、気化したヨウ化アルミニウムソース材料が、イオン注入システムのイオン源(
図1のイオン注入システム101のイオン源108)へと供給される。
図3の操作206では、イオン源の内部において、ヨウ化アルミニウム材料がイオン化される。操作208では、アルミニウムイオンを含有するイオンビームが、例えば
図1の1つ以上の電極118を介して、イオン源から引き出される。
図3の操作210では、イオンビームがワークピースに向かうように導かれる。その結果、ワークピース内にアルミニウムイオンが注入される。
【0051】
一例によれば、操作206、208、および210のうちの1つ以上を実行した場合に、残留ヨウ化アルミニウムおよびヨウ化水素酸のうちの1つ以上が、イオン注入システムの1つ以上の内部コンポーネント上に形成されうる。そして、残留ヨウ化アルミニウムおよびヨウ化水素酸のうちの1つ以上を、イオン注入システムの1つ以上の内部コンポーネントからさらに洗浄することができる。例えば、残留ヨウ化アルミニウムおよび残留ヨウ化水素のうちの1つ以上を洗浄する工程は、(i)水蒸気をイオン注入システムの内部コンポーネントに供給する工程と、(ii)イオン注入システムを減圧排気することにより、水蒸気と残留ヨウ化アルミニウムとヨウ化水素酸とを十分に除去する工程と、を含んでいてよい。
【0052】
別の例では、空気および気化させた水のうちの1つ以上を、イオン注入システムの内部コンポーネントに供給することによって、水蒸気が当該イオン注入システムの当該コンポーネントに供給されてもよい。
【0053】
本開示では、ヨウ化アルミニウムは、大気から水を吸収してヨウ化水素酸を形成する吸湿性の材料であるので、従来からハンドリングが難しい材料であるとさらに考えている。従って、ヨウ化アルミニウムとその副産物は、従来からハンドリングが困難であるので(例:不活性ガスを含むグローブボックスは、上記材料をハンドリングするために使用されることが一般的である)、上記副産物と接触したコンポーネントは、例えば使用後には、高頻度で念入りに洗浄される。しかしながら、本開示では、所望のプロセス温度(例として、90~100℃の温度範囲)で気化器内にヨウ化アルミニウムを供給することにより、イオン注入システム内におけるアルミニウムの注入のために、ヨウ化アルミニウムを使用することを考慮している。そのため、ヨウ化アルミニウムは、アルミナの使用時等において、従来見受けられていた絶縁性の副産物またはその他の有害な副産物を生成することなく、好適に作用する。
【0054】
任意のソース材料に関して、残留材料は、ヨウ化アルミニウムの使用後に残される。気体状のソース材料を使用して注入を行う場合、残留材料は、真空システムを介してシステムから排出されうる。しかしながら、固体のソース材料を使用して注入を行う場合、残留物は、通常、イオン源から発生するイオン化されなかった固体である。そのため、イオン化されなかった材料は、ビームラインに沿って遭遇する、近くの(next)冷却面(低温面)を覆う。ヨウ化アルミニウムを用いた場合、イオン化されていないヨウ化アルミニウムは、ビームラインに沿って、より低温のコンポーネントを覆いうる。さらに、ヨウ化アルミニウムは、吸湿性を有しているため、コンポーネントが取り外された後で、大気中の水蒸気に曝されると、クリーニングが困難となる可能性がある。しかしながら、本開示では、大気中の水蒸気を用いて、または活性水を流すことによって、固体材料のチャージの寿命の終了時に、水蒸気を意図的に(例:インサイチュで)供給し、真空システムを介して後の減圧排気のために、上記材料を意図的に液化させている。
【0055】
このように、本開示は、水または水蒸気を供給することで、(i)残留ヨウ化アルミニウムを液化または気化させ、続いて、(ii)標準的な減圧排気により当該液化または気化した材料を除去している。
図4は、このようなクリーニングの例示的な方法300をさらに図示している。本開示では、硬い堆積物を取り除くために、一部の手動クリーニングが依然として行われてもよいと考えている。しかし、ヨウ化アルミニウムの大部分は、水蒸気を用いて効果的に取り除かれる。また、手動クリーニングは、イソプロピルアルコールを用いてさらに行われてもよい。
【0056】
本開示の例示的な一態様によれば、方法300は、操作302において、ヨウ化アルミニウムをイオン化することによって、ワークピース内にアルミニウムイオンを注入する工程を含む。操作302におけるアルミニウムイオンの注入は、例えば、
図3の方法200を含んでいてもよい。
図4に示されるように、方法300は、アルミニウムイオンの注入後、操作304において、イオン注入システムに水蒸気を供給する工程が続く。操作304における水蒸気の供給により、操作306において、当該水蒸気を、イオン注入システムの1つ以上のコンポーネントの1つ以上の内部表面上に形成された、スパッタされた、または別の方法で堆積した残留ヨウ化アルミニウムと反応させる。操作306において水蒸気を残留ヨウ化アルミニウムと反応させることにより、1つ以上の生成物(例えば、ヨウ化水素酸および未反応の残留ヨウ化アルミニウム)が形成される。
【0057】
操作308では、イオン注入システムが減圧排気され、残留ヨウ化アルミニウムと水との反応により生成された1つ以上の生成物(例えば、反応済み残留ヨウ化アルミニウムと未反応の残留ヨウ化アルミニウムとヨウ化水素酸)が除去される。操作304、306、および308は、例えば、インサイチュで実行されてもよい。さらに、操作304における水蒸気の供給、操作306における水蒸気と残留ヨウ化アルミニウムとの反応操作、および操作308におけるイオン注入システムの減圧排気操作は、繰り返し実行されてもよい。
【0058】
操作304においてイオン注入システムに水蒸気を供給する工程は、水を気化する工程と、気化された水をイオン注入システムのイオン源に供給する工程とを含んでいてもよいことに留意されたい。従って、操作306では、水蒸気は、イオン注入システム内の冷却面上にスパッタされたヨウ化アルミニウムと反応する。
【0059】
さらに、アルゴンイオンビームは、操作304における水蒸気の供給とともに形成されてよく、それによりイオン注入システムの内部において温暖な環境を維持できることに留意されたい。例えば、アルゴンイオンビームは、シャットダウンビームであると考慮されてよい。この場合、アークチャンバ内において活性アルゴンのプラズマが維持される。これにより、イオン注入システムのクールダウン(冷却)とともに、非イオン化環境が生じることを十分に防止できる。
【0060】
別の例によれば、イオン源がクールダウンされている間に、水蒸気が供給される。さらに、少量の水蒸気が周期的に供給された場合、システムが動作している間、当該システムを継続的にして清浄な状態に維持でき、終了時における大規模な清浄化(cleanup)が不要となる。
【0061】
代替的に、ソース材料の使用完了時に、イオン注入システムの1つ以上のコンポーネントは、大量の水蒸気に曝されてもよい。この場合、システムをポンプダウンさせ、曝露は複数回繰り返されてもよい。低温における特性(low temperature characteristics)に起因して、温暖なコンポーネントは、材料の帯電(build-up)にあまり影響を受けず、当該帯電は多くの場合、非ビーム照射領域で生じると考えられる。
【0062】
一例では、固体ソース材料を使用する操業サイクルの終了(例:生産日の終了)時に、「シャットダウンビーム」(shut down beam)(例として、アルゴンビーム)を走査することで、アークチャンバ内の活性プラズマを維持しつつ、気化器の温度を下げて材料を冷却できる。このため、クールダウン時に非イオン化環境が生じることを十分に防止できる。このように、アルゴンビームは、コンポーネントを温暖な状態に維持する。そして、クールダウンの上記期間中に、量が制御された水蒸気が、日中の操業の最後の数時間において、システム内へと注入される。
【0063】
水蒸気をインサイチュ供給する代替的な方法として、より多量の水蒸気の曝露がシステムに提供され、続いて当該システムが空気に通気される。これにより、ヨウ化アルミニウムが液化または気化され、その後真空システムを介して排出される。
【0064】
本発明は特定の好適な1つ以上の実施形態に関して図示および説明されているが、上述の実施形態は本発明の一部の実施形態の実施に関する例としてのみの役割を果たしており、本発明の適用例はこれらの実施形態に限定されないことに留意されたい。特に、上述の部材(アセンブリ、デバイス、および回路等)によって実現される様々な機能に関して、これらの部材を説明するために使用される用語(「手段」(means)への言及を含む)は、特に明示されない限り、説明された部材の特定の機能を実現する任意の部材(つまり、機能的に等価である部材)に対応するものであると意図されている。このことは、例え当該任意の部材が、本明細書において、本発明の例示的な実施形態にて説明された機能を実現する開示された構造と、構造的に等価でない場合にも当てはまる。さらに、本発明の特定の構成は、複数の実施形態のうちの1つの実施形態のみに関して開示されている場合がある。但し、任意または特定の応用例について、望ましくかつ有益である場合には、このような構成は、他の実施形態の1つ以上の構成と組み合わせられてもよい。従って、本発明は、上述の実施形態に限定されるべきではない。本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によってのみ限定されることが意図されている。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【
図1】本開示の様々な態様に基づくヨウ化アルミニウムイオン源材料を利用した例示的な真空システムのブロック図である。
【
図2】本開示の別の態様に基づく例示的な気化器を示す。
【
図3】ソース材料としてヨウ化アルミニウムを用いて、アルミニウムイオンをワークピース内にイオン注入するための例示的な方法を示す。
【
図4】ソース材料としてヨウ化アルミニウムを用いて、イオン注入システムをクリーニングするための例示的な方法を示す。