(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】使い捨て装置、および、非無菌の再利用可能な装置を有する液体を無菌で適用するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
A61B 46/10 20160101AFI20220302BHJP
A61M 3/02 20060101ALI20220302BHJP
A61B 17/3205 20060101ALI20220302BHJP
A61B 17/322 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
A61B46/10
A61M3/02 110
A61B17/3205
A61B17/322
(21)【出願番号】P 2018566341
(86)(22)【出願日】2017-06-09
(86)【国際出願番号】 EP2017064094
(87)【国際公開番号】W WO2017216050
(87)【国際公開日】2017-12-21
【審査請求日】2020-06-09
(32)【優先日】2016-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518443188
【氏名又は名称】リノーヴァケア サイエンシズ コーポレーション
(73)【特許権者】
【識別番号】518443199
【氏名又は名称】ボールド,トーマス
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】特許業務法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボールド,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シューベルト,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ボーガル,ジャティンダー,エス.
【審査官】小河 了一
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0343454(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2008/0140088(US,A1)
【文献】特表2009-524442(JP,A)
【文献】特表2011-516120(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 46/10
A61M 3/02
A61B 17/3205
A61B 17/322
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非無菌の再利用可能な装置(2)を無菌でハンドリングするための使い捨て装置であって、
a)下側(8)および無菌の上側(7)を有するフィルム(3);および、
b)下側(12)および無菌の上側(11)を有する少なくとも1つのアダプタ(4)、を備え、前記アダプタ(4)の前記無菌の上側(11)は、無菌の適用デバイス(1)を受けるのに適しており、前記アダプタ(4)の前記下側(12)は、非無菌の再利用可能な装置(2)への可逆的で機械的な接続を確立するための少なくとも1つの固定点(9)を有し;
前記アダプタ(4)の前記下側(12)が、前記フィルム(3)の前記上側(7)と不可逆的で気密な接続(13)を形成するものにおいて、
前記アダプタは、無菌の適用デバイス(1)のためのマウント(5)を備える、または、のみからなり、前記マウント(5)は、シリンジマウント、及び/又は、スプレー液容器マウントである、
ことを特徴とする使い捨て装置。
【請求項2】
前記マウント(5)は、使い捨てシリンジのためのシリンジマウント、及び/又は、外科細胞スプレー機器のためのスプレー液容器
マウントである、
ことを特徴とする請求項1に記載の使い捨て装置。
【請求項3】
前記フィルム(3)は、平坦構造または管状構造を有する、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の使い捨て装置。
【請求項4】
前記フィルム(3)は、少なくともある領域において、前記上側(7)及び/又は前記下側(8)に、
a)自己粘着性の;及び/又は、
b)粘着性物質を備える;及び/又は、
c)折り畳まれた;
表面を有し、
自己粘着性の表面、粘着性物質を備える表面、及び/又は、折り畳まれた表面は、前記フィルム(3)の少なくとも1つの端(15)に、または、前記端(15)の隣に配置されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の使い捨て装置。
【請求項5】
前記フィルム(3)は、接続される前記非無菌の再利用可能な装置(2)の構成要素を指す少なくとも1つのマーキングポイントを有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の使い捨て装置。
【請求項6】
前記アダプタ(4)は、粘着接続(13)及び/又は溶接接合(13)を介して前記フィルム(3)に接続されている、
ことを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の使い捨て装置。
【請求項7】
前記アダプタ(4)の前記少なくとも1つの固定点(9)は、前記フィルム(3)の前記上側(7)から前記フィルム(3)の前記下側(8)へ前記フィルム(3)を通って突出している、
ことを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の使い捨て装置。
【請求項8】
前記固定点(9)は、前記非無菌の再利用可能な装置(2)の前記無菌の適用デバイス(1)との電気通信を可能にする少なくとも1つの電気端子を備える、
ことを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の使い捨て装置。
【請求項9】
前記フィルム(3)は、
a)1cm‐500cmの長さ;
b)1cm‐500cmの幅;及び/又は、
c)0.01mm‐2mmの厚さ、
を有する、
ことを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の使い捨て装置。
【請求項10】
前記フィルム(3)は、
ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリラクチド、セルロースアセテート、及び/又は、シリコーン、
を含む、または、のみからなる、
ことを特徴とする請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の使い捨て装置。
【請求項11】
無菌の適用のためのデバイスであって、
a)請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の使い捨て装置;
b)無菌の適用デバイス(1);
c)前記無菌の適用デバイス(1)を制御するための電気制御ユニット(6)を含む非無菌の再利用可能な装置(2);
を備える、または、のみからなり、
前記アダプタ(4)の前記上側(11)は、前記無菌の適用デバイス(1)に接続され、かつ、前記アダプタ(4)の前記下側(12)は、前記アダプタ(4)の前記少なくとも1つの固定点(9)を介して前記非無菌の再利用可能な装置(2)に接続されている、
ことを特徴とするデバイス。
【請求項12】
前記無菌の適用デバイス(1)は、液体を備える、
ことを特徴とする請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記非無菌の再利用可能な装置(2)の前記電気制御ユニット(6)は、前記無菌の適用デバイス(1)による液体の適用を制御するのに適している、
ことを特徴とする請求項11または請求項12に記載のデバイス。
【請求項14】
前記フィルム(3)は、前記非無菌の再利用可能な装置(2)によって占められた空間を、少なくとも部分的に囲む、
ことを特徴とする請求項11から請求項13のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項15】
前記使い捨て装置は、
a)前記フィルム(3)の自己粘着性の表面を介して、前記フィルム(3)の表面上の粘着物質を介して、及び/又は、折りを介して;及び/又は、
b)引張バンド(10)を介して;
前記非無菌の再利用可能な装置(2)に対してシールされた、前記無菌の適用デバイス(1)の汚染を回避するための閉鎖を形成する、
ことを特徴とする請求項11から請求項14のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記無菌の適用デバイス(1)は、
シリンジ、及び/又は、スプレー液容器を備える、または、のみからなる、
ことを特徴とする請求項11から請求項15のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項17】
前記非無菌の再利用可能な装置(2)は、前記無菌の適用デバイス(1)のための少なくとも1つの固定点(14)を備え、前記少なくとも1つの固定点(14)は、機械的な力を前記無菌の適用デバイス(1)に伝達するのに適切している、
ことを特徴とする請求項11から請求項16のいずれか1項に記載のデバイス。
【請求項18】
前記非無菌の再利用可能な装置(2)は、前記アダプタ(4)の少なくとも1つの固定点(9)へのロック接続を確立するのに適した少なくとも1つの固定点(16)を備える、
ことを特徴とする請求項11から請求項17のいずれか1項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明によれば、非無菌の再利用可能な装置を無菌でハンドリングするための使い捨て装置が提供される。使い捨て装置は、下側および無菌の上側を有するフィルムと、下側および無菌の上側を有する少なくとも1つのアダプタとを備え、アダプタの無菌の上側は、無菌の適用デバイスを受けるのに適している。本発明の装置は、アダプタの下側が、フィルムの上側と不可逆的で気密な接続を形成し、これは、フィルムの下側で生じる汚染物質によるフィルムの上側の汚染からの保護に適していることを特徴とする。重要なことに、アダプタの下側は、非無菌の再利用可能な装置への可逆的で機械的な接続を確立するための少なくとも1つの固定点を有する。本発明の装置は、非無菌の再利用可能な装置に接続されると、汚染物質がアダプタの無菌の上側およびフィルムの上側に到達することを防止する。したがって、アダプタを介して本発明の装置に接続された無菌の適用デバイスの汚染が防止される。さらに、無菌で適用するためのデバイス、および、非無菌の再利用可能な装置を無菌でカバーするための方法が提示される。
【背景技術】
【0002】
使い捨ての無菌(滅菌)のカバーは、電気部品、電気機械部品及び/又は電子部品を有する多くの革新的な医療機器にとって興味深い。バイオメディカル機器の無菌処理は、電気部品または電子部品を含む場合、これらが洗浄または無菌処理に使用される液体、蒸気及び/又は他の方法(熱効果)、または、洗浄または無菌処理に使用される物質にさらされてはならないため、難題となり得る。例えば、それは、以下の医療機器に関する:
a)創傷洗浄のための洗浄液をスプレーヘッドによって組織を保護する方法で散布するのを意図する機器(例えば、創傷を湿らせたままにするまたはそれを清潔にすることができる無菌の使い捨てスプレーヘッドを有する非無菌の医療用スプレー機器);
b)創傷デブリードマン(創傷切除)のためのデブリードマン溶液(切除溶液)を高圧のポンプによって創傷上に研磨するように適用するのを意図する装置(例えば、外科スプレーデブリードマンのための無菌の使い捨てスプレーヘッドを有する非無菌のポンプ装置、または、非無菌の駆動部および無菌の使い捨て切削構成要素を有する医療用スプリット皮膚製造のための切削機器);及び/又は、
c)溶液を医療用ルアーロックシリンジからモータ駆動ピストンポンプによって創傷に渡って均一に散布するのを意図するスプレー機器。
【0003】
関係する機器は、典型的には、無菌の手袋をつけたユーザによって保持および操作されなければならない使い捨て構成要素と、再利用のための構成要素(例えば、機器の主要な要素のような再利用可能な構成要素)とを備える。再利用可能な構成要素は、その内部に、電気部品、電子部品、または他の繊細な部品を含む。結果的に、それらの無菌処理は、これらの繊細な部品を不可逆的に破壊するリスクを伴う。
【0004】
細胞の噴霧は、特定の表面上(例えば、創傷組織上)での細胞懸濁液の散布にとって興味深い。細胞の噴霧は、例えば外科手術において損傷した組織を再生するために用いられる。皮膚弁移植は、皮膚欠損を治療する目的でこの分野に属する。一般に、このタイプの移植は、そのレシピエント?ドナー関係に従って特徴付けられる。最も頻繁に臨床的に使用される移植は「自己」移植であり、皮膚は、患者の身体の1つの領域から除去され、同じ患者の身体の別の領域に移される。次いで、当該身体に本来備わっている移植された組織は、ターゲット位置でそれ自身の血液供給を発達させ、最終的に移植部位の組織に接続される。現在、特に完全皮膚移植および分割皮膚移植およびメッシュ皮膚移植の中で、様々な異なる皮膚移植が用いられている。これらの移植方法は、それぞれ、特定の技術を用いて準備されなければならず、その暗黙の利点および欠点を有する。
【0005】
組織を得るための1つの方法は、細胞ベースの創傷カバー(「細胞シート」)のための表皮細胞のインビトロ(in vitro)培養である。最初に、自己由来と決定された例えば上皮細胞のような適切な皮膚成分が患者から得られ、その細胞はその後増加(再生)され、インビトロで調製される。このようにして培養された自己上皮細胞移植片は、コヒーレントに成長した細胞複合体(シート)で提供される。この開発は、かなり広い面積の皮膚創傷の、例えば熱傷のカバーにおける重要な追加事項を示す。この方法論の利点は、移植のためのいわゆる細胞シートとして適したコヒーレントな細胞複合体を達成する細胞の能力にある。従って、この方法論は、例えばドナー皮膚の必要性を減少させることによって、前記された「広範な」皮膚移植方法の多くの欠点を回避する。しかしながら、インビトロで培養されたこれらの細胞複合体は比較的ゆっくりと増殖し、これは、治療されるレシピエントの創傷エリアの、創傷をできるだけ迅速にカバーする要望に反する。
【0006】
代替案として、個々の細胞の使用、すなわち細胞複合体外の細胞の使用が記載される。これらの細胞は溶液中に懸濁して存在し、この懸濁液中で創傷皮膚に適用される。(Navarra et al. (2000) J. Burn Care & Rehabilitation, 21:513-518 and Wood et al. (2003) J. Wounds, 15:16-22を参照)。細胞懸濁液は、ピペッティングまたは滴下、注射器または類似の器具を介して、移植エリアに渡って少量で散布され得る。電気作動式および電子制御式スプレーデバイスは、対照的に、創傷表面への前記の細胞の制御された適用を可能にする。手動細胞噴霧器は、電気部品または電子部品を含まないので、困難なく無菌することができる。対照的に、自動細胞噴霧器は、モータドライブ、バッテリ、および類似の敏感な構成要素(例えば、電線)を有しており、これらは、水、消毒、及び/又は、熱の影響によって無菌処理プロセス中に不可逆的に損傷し得る。
【0007】
「手術無菌技術」では、蒸気無菌された外科用シートが装備の非無菌の部分に巻かれて、装置の使用者(例えば、外科医)は無菌の方法で当該シートを通して非無菌の装置を操作することができる。典型的には単にプラスチック材料チューブが装備の一部に押し付けられるだけであるが、装備の電子部分は外科医によって非無菌の方法でハンドリングされ、それによって、外科医の手術手袋は非無菌である。外科医の手術用手袋を無菌のままにするつもりであれば、上記の欠点がそれと関連してくるけれども、電子機器全体を手術前に無菌処理しなければならない。
【発明の開示】
【0008】
本発明の目的は、非無菌の再利用可能な装置を前もって無菌にする(滅菌する)必要なしに、非無菌の再利用可能な装置を無菌の方法でハンドリングするのを可能にする使い捨て装置および方法を提供することである。
【0009】
この目的は、請求項1に記載の使い捨て装置および請求項11に記載の無菌の適用のためのデバイスによって達成される。従属請求項は、有利な進歩を明らかにする。
【0010】
本発明によれば、非無菌の再利用可能な装置を無菌でハンドリングするための使い捨て装置が提供され、使い捨て装置は、
a)下側および無菌の上側を有するフィルム;および、
b)下側および無菌の上側を有する少なくとも1つのアダプタ、を備え、アダプタの無菌の上側は、無菌の適用デバイスを受けるのに適しており;
アダプタの下側は、フィルム(3)の上側(7)と不可逆的で気密な接続(13)を形成し、かつ、アダプタ(4)の下側(12)は、非無菌の再利用可能な装置への可逆的で機械的な接続を確立するための少なくとも1つの固定点を有することを特徴とする。
【0011】
使い捨て装置は、アダプタによって非無菌の再利用可能な装置に可逆的に接続され得る。当該2種類の装置を連結するとき、非無菌の再利用可能な装置は、使い捨て装置によって保護される。汚染要因(微生物およびウイルス)がフィルムの無菌の上側およびアダプタの無菌の上側に到達できないことが望まれる。アダプタの無菌の上側の、および、そこに接続された無菌の適用デバイスの可能性のある汚染はこうして防止される。「主要機器」としての再利用可能な装置は、非無菌のままであってよく、かつ、本発明に係る使い捨て装置の使用によって、たとえ先行する無菌処理(滅菌処理)がなくても、外科手術室において無菌の方法で使用可能である。したがって、「主要機器」の無菌処理は、もはや必要ない。
【0012】
「主要機器」の無菌処理に代えて「主要機器」のカバーとして使い捨て装置を使用することは、より時間効率が良く、無菌処理のためのエネルギーまたは化学物質を消費せず、しばしば高価な再利用可能な機器への損傷を回避する。その結果、本発明の使い捨て装置は、無菌処理よりも経済的で環境に優しい。本発明の使い捨て装置の無菌のフィルムは、操作者がフィルムの下側に位置する非無菌のアイテムを把持及び/又は操作することを可能にすることが好ましい。この点に関して、フィルムが可撓性フィルムであれば有益である。フィルムが可視光に対して少なくとも部分的に透明である場合も有益である。
【0013】
本発明に係る使い捨て装置は、アダプタが、無菌の適用デバイスのためのマウント、好ましくは、スプレーヘッドマウント、切削ヘッドマウント、シリンジマウント、及び/又は、スプレー液容器マウント、より好ましくは、外科スプレーデブリードマン機器のためのスプレーヘッドマウント、外科デルマトームのための切削ヘッドマウント、使い捨てシリンジのためのシリンジマウント、及び/又は、外科細胞スプレー機器のためのスプレー液容器、を備える、または、のみからなる、ことを特徴としてよい。
【0014】
使い捨て装置のフィルムは、平坦または管状構造を有してよい。任意で、それは、管状構造を有し、かつ、管の一側で、好ましくは管の前側で閉じられる。平坦構造では、フィルムが、接続される(およびカバーされる)非無菌の再利用可能な装置の高さの少なくとも2倍に相当する長さおよび幅を有することが好ましい。管状構造では、フィルムは、接続される(およびカバーされる)非無菌の再利用可能な装置を完全に囲むのに適した長さおよび幅を有する。
【0015】
好ましい実施形態において、フィルムは少なくともある領域において、上側及び/又は下側に、
a)自己粘着性の(すなわち、粘着性表面を有する);及び/又は、
b)粘着性物質を備える;及び/又は、
c)折り畳まれた、好ましくは扇状に折り畳まれた、
表面を有する。
【0016】
特に好ましくは、上述の自己粘着性の表面、及び/又は、粘着性物質を備える表面、及び/又は、折り畳まれた表面は、フィルムの少なくとも一端に配置されるか、またはそこに位置される。これにより、更なる閉鎖手段(例えば、ゴムバンド等)なしに、かつ、非無菌の再利用可能な装置との粘着性の相互作用なしに、非無菌の再利用可能な装置のフィルムでの無菌の閉鎖を容易な方法で可能にする。閉鎖の結果として、汚染物質はもはや、非無菌の再利用可能な装置から使い捨て装置を通過することができず、すなわち、非無菌の再利用可能な装置は汚染物質に対してシール状態で閉鎖される。
【0017】
使い捨て装置のフィルムは、接続される非無菌の再利用可能な装置の構成要素を指す少なくとも1つのマーキングポイントを有してもよい。マーキングポイントの助けにより、使い捨て装置のアダプタの正しい向きをチェックすることは不要であるため、使い捨て装置の非無菌の再利用可能な装置上への取り付けが簡略化される。
【0018】
使い捨てデバイスのアダプタは、粘着接続及び/又は溶接接合を介してフィルムに接続されてよい。接続は、汚染物質(微生物およびウイルス)がアダプタとフィルムとの間の接合部を通過できないような方法で行われることが重要である。
【0019】
アダプタの少なくとも1つの固定点は、フィルムの上側からフィルムの下側にフィルムを通って突出してよい。この実施形態では、フィルムは開口を有する。したがって、この開口にもかかわらず、フィルムとアダプタとの間の接合部が汚染物質に対してシールされることが重要である。例えば、これは、粘着接続及び/又は溶接接合によって保証されてよい。
【0020】
好ましい実施形態において、固定点は、非無菌の再利用可能な装置の無菌の適用デバイスとの電気通信を可能にする少なくとも1つの電気端子を備える。ここでの利点は、再利用可能な装置と適用デバイスとの間の機械連絡(例えば、再利用可能な装置(のスライド)から適用デバイス(のシリンジプランジャ)への力の伝達)が可能であるだけでなく、電気適用デバイスが直接的に制御もされ得る(例えば、再利用可能な装置のロータリースイッチを介した適用デバイスの切削ヘッドの制御)。
【0021】
フィルムは、
a)1cm‐500cm、好ましくは10cm‐200cm、より好ましくは20cm -100cm、さらに好ましくは40cm‐80cmの長さ;及び/又は、
b)1cm‐500cm、好ましくは10cm‐200cm、より好ましくは20cm‐100cm、さらに好ましくは40cm‐80cmの幅;及び/又は、
c)0.01‐2mm、好ましくは0.02mm‐1mm、より好ましくは0.05mm‐0.8mm、さらに好ましくは0.1‐0.5mmの厚さ、
を有してよい。
【0022】
大きな長さと幅(すなわち、大きな表面拡張)の利点は、大きな非無菌の再利用可能な装置さえも無菌の方法でカバーされ得ることである。薄い厚さを有することの利点は、使い捨て装置によってカバーされる再利用可能な装置の操作要素(例えば、ボタン及び/又はコントローラ)が、操作者によって困難なく視認され、操作され得ることである。さらに、薄い厚さは、使い捨て装置を最小の材料費で製造できることをもたらし、使い捨て装置の体積および重量が小さいことを証明する。
【0023】
フィルムは、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリラクチド、セルロースアセテート、及び/又は、シリコーン、を含んでよく、またはのみからなってよい。ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、およびそれらの混合物は、自己粘着特性を有するので、特に好ましい。すなわち、フィルムは、追加の閉鎖手段がなくても、非無菌の再利用可能な装置をカバーした後、汚染物質に対してシールされた方法で閉じられ得る。
【0024】
さらに、本発明によれば、無菌の適用のためのデバイスが提供され、当該デバイスは、
a)本発明に係る使い捨て装置;
b)無菌の適用デバイス;
c)無菌の適用デバイスを制御するための電気制御ユニットを含む非無菌の再利用可能な装置;
を備える、または、のみからなり、
アダプタの上側が無菌の適用デバイスに接続され、かつ、アダプタの下側がアダプタの少なくとも1つの固定点を介して非無菌の再利用可能な装置に接続される、
ことを特徴とする。
【0025】
無菌の適用デバイスは、液体、好ましくは細胞を含む液体、より好ましくは皮膚細胞を含む液体、さらに好ましくは自己移植の皮膚細胞を含む液体を備えてよい。
【0026】
非無菌の再利用可能な装置の電気制御は、無菌の適用デバイスによる液体の適用を制御するのに好適である。このような装置では、液体およびその中に溶解または懸濁された物質を、電気制御を介して、例えばヒトまたは動物の皮膚などの表面上に自動的に適用することが可能である。
【0027】
フィルムは、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、非無菌の再利用可能な装置によって占められた空間を囲んでよい。非無菌の再利用可能な装置によって占められた空間を完全に囲むことは、非無菌の再利用可能な装置がフィルムによって完全に囲まれる(封入される)ことを意味することが理解される。
【0028】
好ましくは、デバイスの使い捨て装置は、
a)フィルムの自己粘着性の表面を介して、フィルムの表面上の粘着物質を介して、及び/又は、折り、好ましくは扇状の折りを介して;及び/又は、
b)引張バンド、好ましくはゴムバンド、プラスチックバンド、及び/又は、粘着バンドを介して;
非無菌の再利用可能な装置に対してシールされた、無菌の適用デバイスの汚染を回避するための閉鎖を形成する。
【0029】
無菌の適用デバイスは、スプレーヘッド、切削ヘッド、シリンジ、及び/又は、スプレー液容器、好ましくは外科スプレーデブリードマン機器のためのスプレーヘッド、外科デルマトームのための切削ヘッド、使い捨てシリンジ、及び/又は、外科細胞スプレー機器のためのスプレー液容器を、備える、または、のみからなってよい。
【0030】
好ましい実施形態において、非無菌の再利用可能な装置は、無菌の適用デバイス(好ましくはスライド)に接続(および好ましくは固定)するための少なくとも1つの固定点を備え、少なくとも1つの固定点は、機械的な力を無菌の適用デバイスに伝達するのに適切しており、好ましくは電気制御ユニットによって制御される。
【0031】
さらに好ましい実施形態では、非無菌の再利用可能な装置は、アダプタの少なくとも1つの固定点へのロック接続を確立するのに適した少なくとも1つの固定点を備える。
【0032】
本発明によれば、さらに、非無菌の再利用可能な装置を無菌でカバーする方法が提供され、前記方法は、
a)フィルムの下側が非無菌の再利用可能な装置の方向に向けられ、かつ、非無菌の再利用可能な装置によって占められたスペースがフィルムによって完全に囲まれるように、本発明に係る使い捨て装置のフィルムを、非無菌の再利用可能な装置に渡って回し;
b)使い捨て装置のアダプタをアダプタの少なくとも1つの固定点を介して非無菌の再利用可能な装置に機械的に接続し;および、
c)使い捨て装置のフィルムを気密に閉じる、
ステップを備える。
【0033】
本発明に係る方法の場合、ステップa)がステップb)の前に実施されてよく、または、ステップb)がステップa)の前に実施されてもよい。
【0034】
本発明の主題は以下の図面および実施例を参照してより詳細に説明されるが、前記主題をここに示される特定の実施形態に限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明の使い捨て装置の一部を示す。
【
図4】
図4は、無菌の適用のための本発明のデバイスを示す。
【
図5】
図5は、無菌の適用のための本発明のデバイスを示す。
【
図6】
図6は、無菌の適用のための本発明のデバイスを示す。
【
図7】
図7は、無菌の適用のための本発明のデバイスを示す。
【
図8】
図8は、無菌の適用のための本発明のデバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は本発明の使い捨て装置の一部、すなわち、無菌の適用デバイスを受けるのに適したアダプタ4の図を示す。この実施形態では、アダプタ4は、マウント5を備えているので、無菌の適用デバイスを受けるのに適している。
【0037】
図2は、本発明の使い捨て装置の図を示す。本発明の使い捨て装置は、下側8および無菌の上側7を有するフィルム3を備える。アダプタ4は、無菌の適用デバイスをマウント5に接続することにより無菌の適用デバイスを受けるのに適している。
【0038】
図3は、非無菌の再利用可能な装置2の図を示し、本発明の使い捨て装置は、非無菌の再利用可能な装置への可逆的で機械的な接続を確立し得る。この実施形態では、非無菌の再利用可能な装置2は、機械的な力を本発明の使い捨て装置によって受けられた無菌の適用デバイスに加えるのに適したスライド14を装備している。非無菌の再利用可能な装置2は、無菌の適用デバイスを制御するための電気制御ユニット6を備える。
【0039】
図4は、無菌の適用のための本発明のデバイスの図を示す。本発明の使い捨て装置は、そのアダプタ4を介して、非無菌の再利用可能な装置2との可逆的で機械的な接続を形成し、本発明の使い捨て装置のマウント5は、無菌の適用デバイス1(ここではシリンジ)を受ける。非無菌の再利用可能な装置2は、無菌の適用デバイス1に機械的な力を加えるのに適したスライド14を装備し、無菌の適用デバイス1を制御するための電気制御ユニット6を備える。本発明の使い捨て装置の本質的な部分であるフィルムは、明瞭性の理由からこの図では省略されている。
【0040】
図5は、無菌の適用のための本発明のデバイスの側面図を示す。本発明の使い捨て装置は、非無菌の再利用可能な装置2に接続され(非無菌の再利用可能な装置2は破線で示される)、かつ、無菌の適用デバイス1を受ける構成にある。非無菌の再利用可能な装置2は、無菌の適用デバイス1に機械的な力を加えるのに適したスライド14を装備しており、無菌の適用デバイス1を制御するための電気制御ユニット6を備える。本発明の使い捨て装置は、下側8および無菌の上側7を有するフィルム3を備える。さらに、使い捨て装置は、下側および無菌の上側を有する少なくとも1つのアダプタ4を備え、アダプタ4の無菌の上側は、無菌の適用デバイス1を受けるのに適したマウント5を有する。アダプタ4の下側は、フィルム3の上側7と、汚染から保護するための不可逆的で気密な接続を形成し、すなわち、フィルム3とアダプタ4との間の接合部は汚染バリアとなる。
【0041】
図6は、無菌の適用のための本発明のデバイスの正面図を示す。本発明の使い捨て装置は、非無菌の再利用可能な装置2に接続され、無菌の適用デバイス1を受ける構成にある。使い捨て装置は、下側8および無菌の上側7を有するフィルム3を備える。さらに、使い捨て装置は、下側12および無菌の上側11を有する少なくとも1つのアダプタ4を備え、アダプタ4の無菌の上側11は、無菌の適用デバイス1を受けるのに適したマウント5を有する。アダプタ4の下側12は、フィルム3の上側7と、汚染から保護するための不可逆的で気密な接続13を形成し、すなわち、フィルム3とアダプタ4との間の接合部は汚染バリアとなる。さらに、使い捨て装置は、アダプタ4の下側12が非無菌の再利用可能な装置2の固定点16への可逆的で機械的な接続のための少なくとも1つの固定点9を有することを特徴とする。
【0042】
図7は、本発明に係る使い捨て装置および非無菌の再利用可能な装置2を備える、無菌の適用のための本発明のデバイスの図を示す。非無菌の再利用可能な装置2は、無菌の適用デバイス1を制御するための電気制御ユニット6を備える。アダプタ4の上側のマウント5は、無菌の適用デバイス1(ここでは、シリンジ)に接続されるように構成され、アダプタ4の下側は、アダプタ4の少なくとも1つの固定点を介して、非無菌の再利用可能な装置2に接続される。
【0043】
図8は、無菌の適用のための本発明のデバイスの図を示し、当該デバイスは、無菌の適用デバイス1(ここでは、シリンジ)および非無菌の再利用可能な装置2に接続されている本発明の使い捨て装置を備える。非無菌の再利用可能な装置2は、無菌の適用デバイス1に機械的な力を加えるのに適したスライド14を装備しており、無菌の適用デバイス1を制御するための電気制御ユニット6を備え、アダプタ4の少なくとも1つの固定点を介してアダプタ4の下側に接続される。本発明に係る使い捨て装置のフィルム3は、無菌の再利用可能な装置2を完全に囲み、囲まれたスペースは、フィルム3上で収縮する方法で作用する引張バンド10(例えば、ゴムバンドまたは粘着バンド)を介して、周囲に対して気密な方法で閉じられる。引張バンド10を介した気密な閉鎖は、非無菌の適用デバイス2による無菌の適用デバイス1の汚染を回避する。引張バンドに加えて、または、引張バンドの代わりに、フィルム3の下側8は、フィルム3の少なくとも1つの縁15に、または当該縁15の隣に、自己粘着性の表面、粘着物質、及び/又は、扇状の折りを備えてよい。
【0044】
実施例-本発明に係る使い捨て装置の使用
【0045】
一例として、本発明に係る無菌包装された使い捨て装置は、外科手術室において、「非無菌の」アシスタントから「無菌の」ユーザ(例えば、外科医)に渡される。次いで、無菌包装は、「無菌の」ユーザによって開けられ、使い捨て装置は、無菌の手術台に運ばれる。続いて、「非無菌」のアシスタントは、非無菌の再利用可能な装置(例えば、電気的に作動する洗浄噴霧器)を「無菌の」ユーザに提示する。無菌のユーザは、無菌の適用デバイスの少なくとも一部分、好ましくはすべての部分が無菌の方法で使い捨て装置のフィルムによって保護されるように、本発明に係る使い捨て装置(任意で、アダプタを介して無菌の適用デバイスに既に接続されている)を、非無菌の再利用可能な装置に渡って回す。その後、フィルムの厚さが薄いため、ユーザは、本発明の無菌の適用デバイスを、さらに、再利用可能な装置上の操作要素も操作することができる(例えば、フィルムを通して再利用可能な装置上のモータースイッチの作動)。このようにして、非無菌の再利用可能な装置(例えば、洗浄噴霧器)は、ユーザによって無菌の方法で操作され得る。