IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ マティアス・エンツェンホーファーの特許一覧

特許7033089湿度管理装置、飲料水生成システムおよび方法
<>
  • 特許-湿度管理装置、飲料水生成システムおよび方法 図1
  • 特許-湿度管理装置、飲料水生成システムおよび方法 図2
  • 特許-湿度管理装置、飲料水生成システムおよび方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】湿度管理装置、飲料水生成システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 3/14 20060101AFI20220302BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20220302BHJP
   B01D 1/20 20060101ALI20220302BHJP
   C02F 1/04 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
F24F3/14
B01D53/26 300
B01D1/20
C02F1/04 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018566413
(86)(22)【出願日】2017-06-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 EP2017065091
(87)【国際公開番号】W WO2017220580
(87)【国際公開日】2017-12-28
【審査請求日】2020-02-28
(31)【優先権主張番号】10201605165X
(32)【優先日】2016-06-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】518444163
【氏名又は名称】マティアス・エンツェンホーファー
【氏名又は名称原語表記】Matthias Enzenhofer
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】マティアス・エンツェンホーファー
【審査官】石田 佳久
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/063076(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0292176(US,A1)
【文献】特表2014-503782(JP,A)
【文献】特開2012-225551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 3/14
B01D 53/26
B01D 1/20
C02F 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲料水生成システムであって、
蒸発器ユニットと、
前記蒸発器ユニットと流体連通する凝縮器ユニットを備え、
前記蒸発器ユニットは、第1の端部に隣接して配置された空気入口および第2の端部に隣接して配置された空気出口を有する、チャンバと、前記第1の端部と前記第2の端部との間の空間内に原水を散布するように構成された、散布機構とを備え、
前記散布機構は、
前記第1の端部に向かって前記チャンバ内に前記原水の流れを供給するための、前記第2の端部に隣接して配置された液体入口と、
前記第1の端部に隣接して集められた前記原水の一部を運搬し、前記原水を前記第1の端部と前記第2の端部との間の前記空間内に再分配するように構成されたコンベヤであって、前記コンベヤは、細長いスリーブに少なくとも部分的に囲まれたアルキメディアンスクリューを備える、コンベヤと、
を備え、
前記空気入口は、第1の湿度レベルを有する流入空気の流れを受けるように構成され、
前記空気出口は、前記流入空気を引き込んで、前記原水と接触させて、それによって、前記チャンバを出る流出空気が前記第1の湿度レベルよりも高い第2の湿度レベルを有するように前記流入空気を加湿するように構成され
前記凝縮器ユニットは、前記蒸発器ユニットから前記流出空気を受け、前記流出空気から水分子を凝縮して、それによって飲料水を生成し、
前記凝縮器ユニットは、さらに、前記蒸発器ユニットからの流出空気を使用して、入ってくる冷たい原水を予熱するように構成され、
前記飲料水生成システムはさらに、前記凝縮器ユニットからの前記入ってくる原水を受け、前記蒸発器ユニットからの温かい原水を使用して、前記入ってくる原水をさらに予熱するよう構成された熱交換器をさらに含む
飲料水生成システム。
【請求項2】
前記熱交換器の下流に配置され、前記原水が前記蒸発器ユニットの前記チャンバに入る前に、前記入ってくる原水を所定の作業温度にさらに加熱するように構成された、加熱器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記作業温度は、50℃~70℃の範囲にある、請求項2に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、しかし限定するものではないが、湿度管理装置、飲料水生成システム、および原水から飲料水を生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
気体と液体媒体との接触は、例えば、気体と液体媒体とを混合するために使用することができる。実際には、例えば空気を加湿して、より快適な室内環境を実現することができる。逆に、湿度の高い空気は、湿度の高い空気から水分を除去することができる液体収着剤との接触によって除湿することができる。このような加湿および除湿は、所望の湿度および/または温度を有する空気を供給するために、暖房、換気、および空調(HVAC)システムまたは環境制御システムにおいて一般的に使用されている。
【0003】
室温において空気を十分に加湿するためには、一般的に大きな蒸発面が必要とされるが、これは通常入手可能ではない。さらに、液体収着剤を再加工して再利用するためには、かなりの量のエネルギーが必要とされる場合があり、その場合、システムのエネルギー効率が低下する。このことは、持続可能性および気候変動に対する意識の向上という点では望ましくない場合がある。
【0004】
エネルギー消費は、塩水や汽水などの原水から飲料水を生成する際の懸念事項でもある。淡水化システムは、消費および灌漑用の飲料水を生成するために使用されてきたが、そのようなシステムは高価で建設が複雑であるばかりでなく、例えば遠隔地または独立型住居における、小規模での運用にも適さない。
【0005】
したがって、上記の問題のうちの少なくとも一部に対処することができる装置、システム、および方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【0006】
本発明の第1の実施態様によれば、
第1の端部に隣接して配置された空気入口および第2の端部に隣接して配置された空気出口を有する、チャンバと、
第1の端部と第2の端部との間の空間内に調湿物質を散布するように構成された、散布機構であって、散布機構は、
第1の端部に向かってチャンバ内に調湿物質の流れを供給するための、第2の端部に隣接して配置された液体入口と、
第1の端部に隣接して集められた調湿物質の一部を運搬し、上記調湿物質を第1の端部と第2の端部との間の空間内に再分配するように構成されたコンベヤであって、コンベヤは、細長いスリーブに少なくとも部分的に囲まれたアルキメディアンスクリューを備える、コンベヤと、
を備える、散布機構と、
を備える、湿度管理装置であって、
空気入口は、第1の湿度レベルを有する流入空気の流れを受けるように構成され、
空気出口は、上記流入空気を引き込んで、調湿物質と接触させて、それによって、チャンバを出る流出空気が第1の湿度レベルとは異なる第2の湿度レベルを有するように上記流入空気の含水量を変えるように構成される、湿度管理装置が提供される。
【0007】
細長いスリーブは、円筒形の半径方向を向く表面であって、半径方向を向く表面は、複数の孔を有する、円筒形の半径方向を向く表面を有してもよい。
【0008】
湿度管理装置は、複数の中空管であって、各管は、管がスリーブと流体連通するように対応する孔に取り付けられる、複数の中空管をさらに備えてもよい。
【0009】
管のそれぞれが、調湿物質を担持することができる多孔質表面を備えてもよい。
【0010】
散布機構は、多孔質表面上に調湿物質を液膜として再分配するように構成されてもよい。
【0011】
散布機構は、第1の端部と第2の端部との間の空間内に調湿物質をミストとして再分配するように構成されてもよい。
【0012】
湿度管理装置は、コンベヤを駆動するために、コンベヤに結合されたアクチュエータをさらに備えてもよい。
【0013】
アクチュエータは、スリーブを回転させるために、スリーブにさらに結合されてもよい。
【0014】
湿度管理装置は、除湿器ユニットとして動作可能であってもよく、調湿物質は、第2の湿度レベルが第1の湿度レベル未満となるように、流入空気から水分を除去するように構成されてもよい。
【0015】
流入空気の温度は、調湿物質の温度よりも高くてもよい。
【0016】
湿度管理装置は、加湿器ユニットとして動作可能であってもよく、調湿物質は、第2の湿度レベルが第1の湿度レベルよりも高くなるように、流入空気中に水分を放出するように構成されてもよい。
【0017】
流入空気の温度は、調湿物質の温度よりも低くてもよい。
【0018】
本発明の第2の実施態様によれば、
蒸発器ユニットと、
蒸発器ユニットと流体連通する凝縮器ユニットと、
を備える、飲料水生成システムであって、
蒸発器ユニットは、
第1の端部に隣接して配置された空気入口および第2の端部に隣接して配置された空気出口を有する、チャンバと、第1の端部と第2の端部との間の空間内に原水を散布するように構成された、散布機構であって、散布機構は、
第1の端部に向かってチャンバ内に原水の流れを供給するための、第2の端部に隣接して配置された液体入口と、
第1の端部に隣接して集められた原水の一部を運搬し、上記原水を第1の端部と第2の端部との間の空間内に再分配するように構成されたコンベヤであって、コンベヤは、細長いスリーブに少なくとも部分的に囲まれたアルキメディアンスクリューを備える、コンベヤと、
を備える、散布機構と、を備え、
空気入口は、第1の湿度レベルを有する流入空気の流れを受けるように構成され、
空気出口は、上記流入空気を引き込んで、原水と接触させて、それによって、チャンバを出る流出空気が第1の湿度レベルよりも高い第2の湿度レベルを有するように上記流入空気を加湿するように構成され、
凝縮器ユニットは、蒸発器ユニットから流出空気を受け、上記流出空気から水分子を凝縮して、それによって飲料水を生成する、ように構成される、飲料水生成システムが提供される。
【0019】
凝縮器は、固定床凝縮器を含んでもよい。
【0020】
凝縮器は、加圧チャンバを含んでもよい。
【0021】
凝縮器ユニットは、蒸発器ユニットからの流出空気を使用して、入ってくる冷たい原水を予熱するようにさらに構成されてもよい。
【0022】
本システムは、凝縮器ユニットからの入ってくる原水を受け、蒸発器からの温かい原水を使用して、入ってくる原水をさらに予熱するように構成された、熱交換器をさらに備えてもよい。
【0023】
本システムは、熱交換器の下流に配置され、原水が蒸発器ユニットのチャンバに入る前に、入ってくる原水を所定の作業温度にさらに加熱するように構成された、加熱器をさらに備えてもよい。
【0024】
作業温度は、50℃~70℃の範囲にあってもよい。
【0025】
本発明の第3の実施態様によれば、原水から飲料水を生成するための方法が提供され、本方法は、
蒸発器ユニットに原水の流れを供給するステップであって、蒸発器ユニットは、第1の実施態様に記載の装置を含む、ステップと、
蒸発器ユニットに第1の湿度レベルを有する流入空気の流れを供給するステップと、
流入空気の流れを原水に接触させるように誘導して、それによって、蒸発器ユニットを出る流出空気が第1の湿度レベルよりも高い第2の湿度レベルを有するように、上記流入空気を加湿する、ステップと、
凝縮器ユニットに蒸発器ユニットからの流出空気を誘導して、上記流出空気から水分子を凝縮させ、それによって飲料水を生成する、ステップと、
を含む。
【0026】
蒸発器ユニットに原水の流れを供給するステップは、蒸発器ユニットからの流出空気との凝縮器ユニットでの熱交換、および/または蒸発器ユニットからの温かい原水との熱交換器における熱交換により原水を予熱するステップを含んでもよい。
【0027】
本発明の実施形態は、ほんの一例としての、以下の書面の説明を図面と共に読めば、当業者にはよりよく理解され容易に明らかとなるはずである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】例示的な実施形態による湿度管理装置を示す概略図である。
図2】例示的な実施形態による飲料水を生成するためのシステムを示す概略図である。
図3】例示的な実施形態による、原水から飲料水を生成するための方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、例示的な実施形態による湿度管理装置100の概略図を示している。湿度管理装置100は、下部セクション104(以下、交換可能に、第1の端部104という)と、中間セクション106と、上部セクション108(以下、交換可能に、第2の端部108という)と、を有する、ケーシングまたはチャンバ102を備える。図1に示すように、中間セクション106は、下部セクション104および上部セクション106に対して傾いている、または斜めになっている。しかしながら、他の実施形態では傾きは設けられずに、各セクションは、例えば略真っ直ぐ、または直立したチャンバを形成してもよいことが理解されよう。
【0030】
ケーシング102は、下部セクション104に隣接する1つ以上の気体入口110と、上部セクション108の上端部にある気体出口112と、をさらに備え、気体出口112には、ケーシングまたはチャンバ102の気体入口110から上部セクション108まで気体流、通常は空気流を発生するための換気装置114を組み付けことができる。湿度管理装置100はまた、第2の端部108に隣接する1つ以上の液体入口116を備える。使用時には、1つ以上の液体入口116は、液体の形態の調湿物質を受け、空気流と相互作用するようにチャンバ102内に調湿物質を散布して、それによって空気がチャンバ102を出る前に空気の湿度レベルを変える。
【0031】
複数の毛120を有するブラシ118が、中間セクション106において、1つ以上の液体入口116の下方に配置されて、1つ以上の液体入口116から散布される調湿物質、例えば、液体、水、または水系溶液が、ブラシ118の毛120を湿らせることができるようにする。毛120は、好ましくは弾性材料から作られ、好適には多孔質表面を有する。加えて、毛120は、より多くの調湿物質を担持し、チャンバ102内における調湿物質の通過時間を効果的に増加させるために、中空とすることができる。その結果、チャンバ102は、中間セクション106において導入された調湿物質により湿らされ、調湿物質のための接触面として機能することができる。重力の影響下で、調湿物質は、中間セクション106、例えば毛120の間を通って、またはケーシング102の内面に沿って流れ、下部セクション104に隣接するケーシング102の底部のリザーバ122に集められる。一部の実装形態では、湿度管理装置100は、リザーバ122から過剰な液体を排出するためにリザーバ122と流体連通する出口124をさらに備える。
【0032】
図1に示すように、調湿物質と空気流との間の相互作用を改善または強化するために、リザーバ122に集められた調湿物質のうちの少なくとも一部は、コンベヤを使用して上方に運搬され、中間セクション106の空間内に、例えばブラシ118の毛120の上で、再分配される。ここで、コンベヤは、中間セクション106の軸と平行に延びるアルキメディアンスクリュー126の形態をしている。アルキメディアンスクリュー126は、ループ130を収容するチューブ128と、モータ134の形態のアクチュエータによって駆動され、かつベアリング136に枢着されている、駆動軸132と、を備える。軸132を介して、ループ130は回転可能である。チューブ128の一方の端部138は、リザーバ122と流体連通し、他方、チューブ128の他方の端部140を含むチューブ128の残りの部分は、細長いスリーブ142によって囲まれている。モータ134に電力が供給されると、モータ134はループ130を回転させて、調湿物質の一部をリザーバ122からチューブ128の反対側の端部140に運搬し、そこで調湿物質が細長いスリーブ142の内部空間に流れ込む。
【0033】
例示的な実施形態では、細長いスリーブ142は、調湿物質を中間セクション106の空間にさらに効果的に再分配するのを助ける。例えば、細長いスリーブ142は、複数の孔を有する円筒形の半径方向を向く表面を有し、スリーブ142がモータ134によって回転されるときに、複数の孔を通って液体が排出される。好ましい実施形態では、複数の中空管144が孔に接続され、その際、各管は、管144がスリーブ142の内部空間と流体連通するように対応する孔に取り付けられる。中空管144は、典型的にはポリマー材料から作られ、調湿物質を担持することができる多孔質表面を備える。その結果、調湿物質は多孔質面上に液膜として再分配され得る。代替的または追加的に、調湿物質は、多孔質表面から中間セクション106の空間内にミストとして再分配されてもよく、そこで調湿物質は、ブラシ118の毛120上に集まってもよい。
【0034】
ここで、図1を参照して、湿度管理装置100の動作を説明する。典型的には、液体の形態の調湿物質が、1つ以上の第1の液体入口116を介してチャンバ102内に導入される。さらに、チャンバ102内で、下部セクション104に集められた液体は、アルキメディアンスクリュー126を使用することによって持ち上げられ、アルキメディアンスクリュー126の少なくとも一部を囲む細長いスリーブ142に運ばれる。スリーブ142は、液体を中間セクション106の空間に再分配し、液体は、重力によってチャンバ102の下部セクション104に戻される。アルキメディアンスクリューの回転運動のために、ブラシ118、スリーブ142、およびそれに接続された中空管144は同時に動く。加えて、換気装置114および気体入口110のために、気体入口110から上部セクション108への空気流が生じる。
【0035】
ブラシ118の個々の毛120の表面および中空管144の表面は、液体の調湿物質によって湿らされ、よって空気流が調湿物質と接触する十分な機会を提供する。スリーブ142の内側の液体の圧力は実質的に均一であるため、スリーブ142は、調湿物質をより効果的に再分配するのを助ける。換言すれば、スリーブ142は、調湿物質をその全長に亘って再分配するように作用し、よってリザーバ122に集められた液体のより効率的な再使用を提供する。ブラシ118およびスリーブ142の回転中に、調湿物質の微細な液滴ミストを生成して、液体の接触面を増やすことができる。換言すれば、空気流と液体との間の相互作用はより徹底的になり得る。空気流と接触した調湿物質は、重力によってチャンバ102の下部セクション104にあるリザーバ122内に流れて戻り、出口124を介して排出され得る。
【0036】
上述のように湿度管理装置100を使用して空気を除湿または加湿する場合、空気流と液体との間に温度差を導入することによって、空気流と液体の調湿物質との間の相互作用をさらに強化することができる。例えば、空気流からの水分の除去を促進するために、液体を冷却しながら、流入空気流を加熱することができる。逆に、液体から気流中への水の蒸発および放出を促進するために、流入空気流を冷却しながら液体を加熱することができる。
【0037】
図1の湿度管理装置100は、空調システムの除湿ユニットとして動作するように構成することができる。そのような用途では、気体入口110に供給される気体は典型的には湿度の高い流入空気であり、一方、入口116に供給される液体の調湿物質は、低水分の吸着剤または吸収剤である。チャンバ102内での湿度の高い空気と液体との間の接触を介して、換気装置114を出る流出空気が流入空気の湿度レベルより低い湿度レベルを有するように、水分が流入空気から除去される。好ましくは、流入空気の温度は液体の温度よりも高く、流出空気は液体収着剤と接触する結果として、部分的に冷却されてもよい。下部セクション104にあるリザーバ122に集められた高水分液体は、再処理後に排出または再利用することができる。
【0038】
反対に、図1の湿度管理装置100はまた、空調システムの加湿ユニットとして動作するように構成することができる。そのような用途では、気体入口110に供給される気体は典型的には乾燥した流入空気であり、他方、入口116に供給される液体の調湿物質は、水または水の混ざった液体である。チャンバ102内での乾燥空気と液体との間の接触を介して、換気装置114を出る流出空気が流入空気の湿度レベルより高い湿度レベルを有するように、水分が液体から除去され、空気流中に放出される。好ましくは、流入空気の温度は、液体から空気への水の蒸発および放出を促進するために、液体の温度よりも低い。
【0039】
図1の湿度管理装置100は、水の混ざった液体から水を抽出するための蒸発器ユニットとして動作するようにさらに構成することができる。そのような用途は、上述の加湿ユニットと同様であるが、蒸発器ユニットからの流出空気は、室内または快適な場所に提供される代わりに、典型的には水を生成するために使用される。ここでは、水の混ざった液体が液体入口116に供給され、チャンバ102を通過することによって、乾燥した流入空気と接触する。蒸発器ユニットを出る流出空気が水蒸気で比較的飽和しているように、水は、液体から除去される、例えば気化される。次いで、流出空気は、水が分離されて使用のために集められる凝縮器を通して流され得る。
【0040】
図2は、例示的な実施形態による、原水から飲料水を生成するためのシステム200を示し、そのような蒸発器ユニットを使用する、概略図を示す。汽水や塩水などの原水は、ポンプの使用によって提供されてもよく、約20~30℃の範囲の温度を有してもよい。典型的には、原水は、上述したのと同様に蒸発器ユニット202に供給され、その際、第1の湿度レベルを有する流入空気もまた同じ蒸発器ユニット202に供給されるが、原水の流れに対して逆方向に流れるように誘導される。例えば、原水の入口は、流入空気の入口の上方に配置される。流入空気は、上述のように原水と接触するように誘導され、蒸発器ユニット202を出る流出空気が第1の湿度レベルよりも高い第2の湿度レベルを有するように加湿される。換言すれば、流出空気は、原水からの水蒸気で実質的に飽和される一方、塩分子および他の不純物は水中に留まり、そして廃水は排出される。次いで、流出空気は、蒸発器ユニット202から凝縮器ユニット204に誘導されて、流出空気から水分子が凝縮されて、それによって飲料水が生成される。飲料水は使用のために集められ、他方、廃水は環境中に排出される。
【0041】
例えば、凝縮器ユニット204は、空気から水分子が凝縮する固定床凝縮シードを備えた固定床凝縮器であってもよい。さらに、凝縮プロセスを加速するために、凝縮器ユニット204は、過圧をもたらす加圧チャンバ(図示せず)を有してもよい。
【0042】
エネルギー効率を向上させるために、例示的な実施形態では、原水は、多段階で、流入空気の温度よりも高い温度に加熱されてもよい。まず、原水は、凝縮中の湿潤空気と物理的に接触することなく、凝縮器ユニット204に通されて、約30℃以上の温度に予熱される。次に、原水は、熱交換器206において、蒸発器ユニット202から排出された廃水と熱交換されて、30~70℃の範囲の温度になる。さらに、原水が蒸発器ユニット202に供給される前に、加熱器またはヒートポンプ208の形態の加熱手段を使用して、原水を約60~70℃の動作温度にさらに加熱する。ヒートポンプ208は、この目的のために他のシステムから回収された熱を利用することができる。
【0043】
説明したように、システム200は、エネルギー要件が緩和され得るように、利用可能な加熱/冷却能力を最大限使用する。さらに、環境に排出される、例えば海に戻される廃水は、生態系に悪影響を与えないであろう、約20~40℃の低温にされる。
【0044】
図3は、例示的な実施形態による、原水から飲料水を生成するための方法を示す流れ図300を示している。ステップ302において、原水の流れが、図1を参照して上述したように、蒸発器ユニットに供給される。ステップ304において、第1の湿度レベルを有する流入空気の流れが、蒸発器ユニットに供給される。ステップ306において、流入空気の流れは、原水と接触するように誘導され、それによって蒸発器ユニットを出る流出空気が第1の湿度レベルよりも高い第2の湿度レベルを有するように、前記流入空気を加湿する。ステップ308において、蒸発器ユニットからの流出空気は、凝縮器ユニットへ導かれて、前記流出空気から水分子を凝縮し、それによって飲料水を生成する。
【0045】
広く記載されている本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、特定の実施形態で示されている本発明に対して多数の変形および/または修正を行うことができることが当業者には理解されよう。したがって、本実施形態は、すべての点で例示的なものであり、限定するものではないとみなされるべきである。
図1
図2
図3