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特許7033096二酸化炭素を燃料前駆体に変換するためのバイオアシスト方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】二酸化炭素を燃料前駆体に変換するためのバイオアシスト方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20220302BHJP
   C12P 7/04 20060101ALI20220302BHJP
   C12P 7/06 20060101ALI20220302BHJP
   C12P 7/54 20060101ALI20220302BHJP
   C12P 7/16 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
C12N1/20 A
C12P7/04
C12P7/06
C12P7/54
C12P7/16
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019040822
(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公開番号】P2019170370
(43)【公開日】2019-10-10
【審査請求日】2019-03-06
(31)【優先権主張番号】201821008490
(32)【優先日】2018-03-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】515012077
【氏名又は名称】インディアン オイル コーポレーション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生
(72)【発明者】
【氏名】クマル, マノジ
(72)【発明者】
【氏名】サフー, プラカシュ シャンドラ
(72)【発明者】
【氏名】サンディパム スリカンス
(72)【発明者】
【氏名】プーリ, スレシュ クマル
(72)【発明者】
【氏名】ラマクマール, サンカラ スリ ヴェンカタ
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0058409(US,A1)
【文献】特表2002-520032(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0335473(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0037914(US,A1)
【文献】Sakimoto KK et al.,Science,2016年,Vol.351, No.6268,p.74-77, Supplementary Materials
【文献】Yang X et al.,Chemical Physical Letters,2016年,Vol.651,p.127-132
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
C12P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
COを還元して燃料前駆体にすることができる半導電性生体ハイブリッド触媒であって、
該触媒は、
(a電気活性微生物と、
(b)前駆体金属成分、2D材料および、電子促進剤を含む半導電性粒子と、からなり、
前記半導電性粒子が、前記電気活性微生物の細胞表面上に存在し
前記半導電性生体ハイブリッド触媒の前記電気活性微生物、前記前駆体金属成分、前記2D材料および前記電子促進剤ならびに前記燃料前駆体の組み合わせが、下記の(i)~(xv)からなる群から選択される、半導電性生体ハイブリッド触媒。
(i)前記電気活性微生物としてのエンテロバクター・アエロゲネスMTCC 25016、前記前駆体金属成分としてのZn(NO 、前記2D材料としてのgC 、前記電子促進剤としてのニュートラルレッド、前記燃料前駆体としてのメタノール、エタノールおよび酢酸;
(ii)前記電気活性微生物としてのシェワネラ属種MTCC 25020、前記前駆体金属成分としてのSnCl 、前記2D材料としてのMoS 、前記電子促進剤としての単層CNT、前記燃料前駆体としてのメタノール、エタノールおよび酢酸;
(iii)前記電気活性微生物としてのセラチア属種MTCC 25017、前記前駆体金属成分としてのZnCl 、前記2D材料としてのMoS 、前記電子促進剤としての多層CNT、前記燃料前駆体としてのメタノール、エタノール、酢酸および酪酸;
(iv)前記電気活性微生物としてのアルカリゲネス属種MTCC 25022、前記前駆体金属成分としてのCdCl およびZnCl 、前記2D材料としてのgC 、前記電子促進剤としてのニュートラルレッド、前記燃料前駆体としてのエタノール、酢酸、ブタノール、酪酸およびカプロン酸;
(v)前記電気活性微生物としてのシュードモナス・エルギノーザMTCC 1036、前記前駆体金属成分としてのCdCl 、前記2D材料としてのgC 、前記電子促進剤としてのナノTiC、前記燃料前駆体としてのメタノール、酢酸、イソプロパノール、酪酸およびカプロン酸;
(vi)前記電気活性微生物としてのオクロバクテリウム・アンスロピMTCC 9026、前記前駆体金属成分としてのCdCl 、前記2D材料としてのグラフェンナノ粒子およびナノTiC、前記電子促進剤としてのルテニウム錯体、前記燃料前駆体としての酢酸、ブタノール、イソプロパノール、酪酸およびカプロン酸;
(vii)前記電気活性微生物としてのシュードモナス・アルカリフィラMTCC 6724、前記前駆体金属成分としてのGaCl 、前記2D材料としてのWS 、前記電子促進剤としてのルテニウム錯体、前記燃料前駆体としてのメタノール、エタノール、酢酸およびブタノール;
(viii)前記電気活性微生物としてのオクロバクテリウム・アンスロピATCC 49188、前記前駆体金属成分としてのInCl およびZnCl 、前記2D材料としてのSnS 、前記電子促進剤としてのCu(II)イミダゾール錯体、前記燃料前駆体としてのエタノール、酢酸、ブタノールおよび酪酸;
(ix)前記電気活性微生物としてのオクロバクテリウム・アンスロピATCC 49188、前記前駆体金属成分としてのSnCl およびFeCl 、前記2D材料としてのボロフェン、前記電子促進剤としての鉄ポルフィリン錯体、前記燃料前駆体としての酢酸、ブタノール、イソプロパノール、酪酸およびカプロン酸;
(x)前記電気活性微生物としてのエンテロバクター・アエロゲネスMTCC 25016、前記前駆体金属成分としてのFe 、ZnOおよびCdO、前記2D材料としてのボロフェン、前記電子促進剤としての多層CNT、前記燃料前駆体としてのエタノール、酢酸、ブタノール、酪酸およびカプロン酸;
(xi)前記電気活性微生物としてのエンテロバクター・アエロゲネスMTCC 25016、前記前駆体金属成分としてのIn 、前記2D材料としてのMoS およびWS 、前記電子促進剤としてのシッフ塩基錯体、前記燃料前駆体としてのエタノール、酢酸、ブタノール、酪酸およびカプロン酸;
(xii)前記電気活性微生物としてのシュードモナス・エルギノーザMTCC 1036、前記前駆体金属成分としてのZnO、前記2D材料としてのフォスフォレンおよびSnS 、前記電子促進剤としてのシッフ塩基錯体、前記燃料前駆体としてのメタノール、酢酸、イソプロパノール、酪酸およびカプロン酸;
(xiii)前記電気活性微生物としてのアルカリゲネス属種MTCC 25022、前記前駆体金属成分としてのZnBr 、前記2D材料としてのMoS 、前記電子促進剤としてのシッフ塩基錯体およびルテニウム錯体、前記燃料前駆体としてのエタノール、酢酸、ブタノール、酪酸およびカプロン酸;
(xiv)前記電気活性微生物としてのアルカリゲネス属種MTCC 25022、前記前駆体金属成分としてのSnO、前記2D材料としての多孔質グラフェン、前記電子促進剤としてのCd(II)イミダゾール錯体および鉄ポルフィリン錯体、前記燃料前駆体としてのエタノール、酢酸、ブタノール、酪酸およびカプロン酸;
(xv)前記電気活性微生物としてのセラチア属種MTCC 25017、前記前駆体金属成分としてのCdCl 、前記2D材料としてのグラフェンナノ粒子およびナノTiC、前記電子促進剤としてのルテニウム錯体、前記燃料前駆体としてのメタノール、エタノールおよび酢酸。
【請求項2】
請求項1に記載の半導電性生体ハイブリッド触媒を用いてCOを燃料前駆体にバイオアシスト変換するための方法であって、
該方法は、
(a)請求項1に記載の半導電性生体ハイブリッド触媒を透明なリアクター内の培養培地に添加するステップと、
(b)前記培養培地中にCOを吹き込み、前記透明なリアクターを>400nmの波長を有する光源で照射するステップと、
(c)前記燃料前駆体を前記培養培地から回収するステップと、を含み、
前記燃料前駆体が、メタノール、エタノール、酢酸、ブタノール、イソプロパノール、酪酸、およびカプロン酸からなる群から選択される、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の半導電性生体ハイブリッド触媒を用いてバイオガスを燃料前駆体にバイオアシスト変換するための方法であって、
該方法は、
(a)請求項1に記載の半導電性生体ハイブリッド触媒をガラスカラム内の培養培地に添加するステップと、
(b)前記培養培地にバイオガスを吹き込み、前記ガラスカラムを>400nmの波長を有する光源で照射するステップと、
(c)前記燃料前駆体を前記培養培地から回収するステップと、を含み、
前記燃料前駆体が、メタノール、エタノール、および酢酸の混合物を含む、方法。
【請求項4】
半導性生体ハイブリッド触媒を合成するための方法であって、
該方法が、
(a)電気活性微生物を選択的に培養するステップと、
(b)少なくとも1種の前駆体金属成分、少なくとも1種の2D材料、および電子促進剤を表面指向剤の存在下で混合して、半導電性ハイブリッド溶液を得るステップと、
(c)ステップ(b)の半導電性ハイブリッド溶液をステップ(a)の電気活性微生物の培養物に添加して、イニシエーター培養物を得るステップと、
(d)対イオン前駆体をステップ(c)のイニシエーター培養物に供給するステップと、
(e)前記半導性生体ハイブリッド触媒を前記培養物から分離するステップと、を含み
記表面指向剤が、Tween、ラウリル硫酸ナトリウム、p-172、ラウリルジメチルアミンオキシド、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ポリエトキシル化アルコール、ポリオキシエチレンソルビタン、オクトキシノール(Triton X100)、N,N-ジメチルドデシルアミン-N-オキシド、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ポリオキシル10ラウリルエーテル、Brij 721、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ポリオキシルヒマシ油(Cremophor)、ノニルフェノールエトキシレート(Tergitol)、シクロデキストリン、レシチン、および塩化メチルベンゼトニウム(Hyamine)からなる群から選択され、
前記対イオン前駆体が、気体材料または有機硫黄化合物であり、
前記半導電性生体ハイブリッド触媒の前記電気活性微生物、前記前駆体金属成分、前記2D材料および前記電子促進剤の組み合わせが、下記の(i)~(xv)からなる群から選択される、方法。
(i)前記電気活性微生物としてのエンテロバクター・アエロゲネスMTCC 25016、前記前駆体金属成分としてのZn(NO 、前記2D材料としてのgC 、前記電子促進剤としてのニュートラルレッド;
(ii)前記電気活性微生物としてのシェワネラ属種MTCC 25020、前記前駆体金属成分としてのSnCl 、前記2D材料としてのMoS 、前記電子促進剤としての単層CNT;
(iii)前記電気活性微生物としてのセラチア属種MTCC 25017、前記前駆体金属成分としてのZnCl 、前記2D材料としてのMoS 、前記電子促進剤としての多層CNT;
(iv)前記電気活性微生物としてのアルカリゲネス属種MTCC 25022、前記前駆体金属成分としてのCdCl およびZnCl 、前記2D材料としてのgC 、前記電子促進剤としてのニュートラルレッド;
(v)前記電気活性微生物としてのシュードモナス・エルギノーザMTCC 1036、前記前駆体金属成分としてのCdCl 、前記2D材料としてのgC 、前記電子促進剤としてのナノTiC;
(vi)前記電気活性微生物としてのオクロバクテリウム・アンスロピMTCC 9026、前記前駆体金属成分としてのCdCl 、前記2D材料としてのグラフェンナノ粒子およびナノTiC、前記電子促進剤としてのルテニウム錯体;
(vii)前記電気活性微生物としてのシュードモナス・アルカリフィラMTCC 6724、前記前駆体金属成分としてのGaCl 、前記2D材料としてのWS 、前記電子促進剤としてのルテニウム錯体;
(viii)前記電気活性微生物としてのオクロバクテリウム・アンスロピATCC 49188、前記前駆体金属成分としてのInCl およびZnCl 、前記2D材料としてのSnS 、前記電子促進剤としてのCu(II)イミダゾール錯体;
(ix)前記電気活性微生物としてのオクロバクテリウム・アンスロピATCC 49188、前記前駆体金属成分としてのSnCl およびFeCl 、前記2D材料としてのボロフェン、前記電子促進剤としての鉄ポルフィリン錯体;
(x)前記電気活性微生物としてのエンテロバクター・アエロゲネスMTCC 25016、前記前駆体金属成分としてのFe 、ZnOおよびCdO、前記2D材料としてのボロフェン、前記電子促進剤としての多層CNT;
(xi)前記電気活性微生物としてのエンテロバクター・アエロゲネスMTCC 25016、前記前駆体金属成分としてのIn 、前記2D材料としてのMoS およびWS 、前記電子促進剤としてのシッフ塩基錯体;
(xii)前記電気活性微生物としてのシュードモナス・エルギノーザMTCC 1036、前記前駆体金属成分としてのZnO、前記2D材料としてのフォスフォレンおよびSnS 、前記電子促進剤としてのシッフ塩基錯体;
(xiii)前記電気活性微生物としてのアルカリゲネス属種MTCC 25022、前記前駆体金属成分としてのZnBr 、前記2D材料としてのMoS 、前記電子促進剤としてのシッフ塩基錯体およびルテニウム錯体;
(xiv)前記電気活性微生物としてのアルカリゲネス属種MTCC 25022、前記前駆体金属成分としてのSnO、前記2D材料としての多孔質グラフェン、前記電子促進剤としてのCd(II)イミダゾール錯体および鉄ポルフィリン錯体;
(xv)前記電気活性微生物としてのセラチア属種MTCC 25017、前記前駆体金属成分としてのCdCl 、前記2D材料としてのグラフェンナノ粒子およびナノTiC、前記電子促進剤としてのルテニウム錯体。
【請求項5】
前記気体材料が、HS含有ガス、工業排煙、およびバイオガスからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記有機硫黄化合物が、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、チオフェノール、エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、チオフェン、2-メルカプトエタノール、3-メルカプトプロパノール、4-メルカプトフェノール、ジチオトレイトール、システイン、ホモシステイン、メチオニン、チオセリン、チオトレオニン、チオチロシン、グルタチオン、2-チオウラシル、6-メチル-2-チオウラシル、4-チオウラシル、2,4-ジチオウラシル、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオシトシン、5-フルオロ-2-チオシトシン、2-チオチミン、4-チオチミン、2,4-ジチオチミン、6-チオグアニン、8-チオアデニン、2-チオキサンチン、6-チオキサンチン、6-チオヒポキサンチン、6-チオプリン、硫化ジメチル、硫化ジエチル、硫化ジフェニル、ビオチン、シスチン、リポ酸、二硫化ジフェニル、二硫化鉄、2-ヒドロキシエチルジスルフィド、チオ酢酸、トリメチルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウムクロリド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、チオケトン、チオアミド、チオシアネート、イソチオシアネート、チオカルバメート、およびジチオカルバメートからなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導電性生体触媒によって媒介される二酸化炭素還元方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油精製所および石炭火力発電所は、主要な人為的CO排出源であり、世界中で毎年90億メートルトンを超えるCOが放出される原因となっている。COを燃料および他の付加価値化学物質へ持続可能に変換することは、現在のエネルギーシナリオにおいて非常に重要である。自然の光合成は、130TWの太陽エネルギーを採取し、COの還元から年間最大1150億メートルトンのバイオマスを生成している。このプロセスの巨大な潜在力によって、研究者は、太陽エネルギーを採取することによってCOを付加価値化学物質に変換することができる生体模倣系を開発しようと駆り立てられている。
【0003】
COを生体触媒によって多炭素化合物に変換するための様々なプロセスが先行技術に開示されている。ある種の微生物学的方法は、電極と微生物との間で電子を往復させることができる電極と電気化学的に相互作用することが示されている。
【0004】
特許文献1は、電流を使用して水および二酸化炭素から多炭素化学物質および燃料を微生物生成するための方法を記載している。半反応は、外部電源からの電流の印加によって駆動される。生成された化合物には、アセテート、ブタノール、2-オキソブチレート、プロパノール、エタノール、およびホルメートが含まれる。この特許は、炭素源として二酸化炭素、およびエネルギー源として電流を使用して有機化合物を生成するための系および方法を開示している。カソード上のバイオフィルムは電子を受容することができ、カソードでの半反応において二酸化炭素を炭素含有化合物および水に変換することができる。しかし、この方法は、その複雑性および外部電力に対する高い要求のために、工業規模ではかなり高価である。
【0005】
特許文献2は、炭素系生成物を生成する、工学操作された数種のCO固定屈化性微生物を開示している。この発明は、(a)該微生物は、気体の二酸化炭素、気体の水素、合成ガス、またはすべての組み合わせで増殖することができること、(b)該微生物は、10重量%の脂質を生成する屈化性細菌であることを示しており、(c)ジェット燃料、ディーゼル燃料、およびバイオディーゼル燃料に有用な化学物質を製造する方法または化学物質の前駆体を生成する方法も開示している。かかる方法で得られる化学物質には、6~30個の間の炭素鎖長を有する、アルカン、アルケン、アルキン、脂肪酸アルコール、脂肪酸アルデヒド、不飽和化された炭化水素、不飽和脂肪酸、ヒドロキシル酸、または二酸が含まれる。この方法の主な不利点は、Hガスおよび合成ガス(これがCOを含有するため)を必要とすることである。これらのガスは両方ともエネルギー分子であることから、大規模ではこれらの取り扱いがかなり問題となる。さらに、この方法はエネルギー集約的である。
【0006】
特許文献3は、二酸化炭素を多段階で生物学的および化学的に捕捉して無機炭素からバイオ燃料または他の有用な工業、化学、医薬、バイオマス製品を含めた有機化学物質に変換するための方法を記載している。この発明における1つまたは複数のプロセスステップは、化学合成を通して無機炭素を有機化合物に固定するために化学的独立栄養微生物を利用する。この発明の追加的特徴は、化学合成による炭素の固定に使用される電子供与体が化学的または電気化学的手段によって生成されるか、または無機もしくは廃棄物源から生成されるプロセスステップであると記載される。報告される方法は、多段階が関与するために非常に複雑である。その上、多段階の化学的および生化学的プロセスの同期化は、工業的適用を考慮すると高価である。
【0007】
特許文献4は、二酸化炭素を捕捉し、捕捉した二酸化炭素を電気化学的に有機生成物に変換するための方法を記載している。方法は、(a)電気化学セルの第1の区画に溶媒を導入し、ここで、二酸化炭素がグアニジン、グアニジン誘導体、ピリミジン、またはピリミジン誘導体で捕捉されてカルバミン酸両性イオンが形成されること、(b)アノードとカソードの間の電位は、カソードがカルバミン酸両性イオンを生成物混合物に還元するのに十分であることを含むことができる。この方法は、運用に外部電気バイアスを必要とする。これは、該方法の大規模適用を考慮すると高価になり得る。カソードおよびアノードに使用される材料によって、運用プロセスにさらなる経費が追加される。
【0008】
特許文献5は、生体ハイブリッド触媒を含む遺伝子改変非光合成微生物を記載している。この生体ハイブリッド触媒は、電気活性微生物の表面に結合した半導体ナノ粒子からなり、光を使用して二酸化炭素から有機化合物を光合成することができる。しかし、これは、該半導電性材料と組み合わせた電子促進分子の使用を何も開示していない。
【0009】
特許文献6は、廃水中の有機化合物の化学燃料への変換を記載している。より具体的には、該発明は、2つの半導体光電極を従来の微生物燃料電池(MFC)デバイスに統合することによる、太陽光アシスト微生物電気水素生成に関する。
【0010】
COを化学物質に変換するための微生物電気合成が、様々な論文によって報告されている。例えば、非特許文献1、非特許文献2は、最適化された設計系によるCOからのアセテートの微生物電気合成(MES)の強化を表している。著者らは、(a)プロトンの可用性が高くなるとアセテートの生成速度が大幅に増加し(pH5.2が最適であることが見出された)、それによって阻害剤を添加しなくてもメタン生成活性が抑制されると思われること、(b)SHEに対して-1.1Vという低い電位をカソードに印加しても、アセテートの形態で99%の電子の回収を-200Am-2前後の電流密度で実現したことを主張している。これらの電流密度によって、アセテートの生成速度は、pH6.7で最大1330gm-2-1となる。(c)直径約0.6mmのマクロ孔径を有する高度に開口したマクロポーラス網状ガラス質炭素電極を使用することが、バイオフィルム形成に利用可能な総表面積と;バルク液体と電極とバイオフィルム表面との間の有効な物質移動との良好なバランスを実現するのに最適であることが見出され、(c)著者らは、合成バイオガス混合物を二酸化炭素源として使用すると、純粋なCOと同様の高MES性能が得られることを実証した。幾つかの利点にもかかわらず、この方法は、運用に外部からの電源供給を要求する。工業規模での適用を考慮すると、プロセス全体は高価であり得る。カソードおよびアノードに使用される合成材料は面倒であり、運用プロセスにさらなる経費が追加される。
【0011】
さらに、CO捕捉に光合成微生物を使用することには幾つかの制限がある。光の強度および波長が生産性に影響を及ぼすこと、大量の水、肥料としての多量のリン、厳密なpHおよび温度条件が要求されること、窒素(例えば、硝酸塩、尿素、およびアンモニア)がバイオマス生産を最も制限する栄養素であること、撹拌(例えば、エアレーション、ポンピング、および機械的撹拌)が必要であることから、細胞培養の運用費が増加する。したがって、生産性を向上させるために遺伝子改変手段は高度に不可欠である。さらに、藻類などの光合成微生物を増殖させるために使用されるバイオリアクターまたは池は、各細胞が炭素固定および細胞増殖のために十分な光を受け取ることができるように、高い表面積対体積比を有していなければならない。さもなければ、表面上の細胞による光の遮断によって、細胞は容積の中心方向の暗闇の中に位置するままとなり、これによって細胞は正味のCO放出物となる。藻類および藍色細菌技術を効率的に実践するためのこのような高い表面積対体積比の要求は、一般に、大きい土地占有面積(池)または高い材料費(バイオリアクター)のいずれかをもたらす。藻類のバイオリアクターの建設に使用することができる材料の種類は、光源と藻類の生育環境との間にある壁が透明である必要があるという要求によって制限される。この要求により、コンクリート、鋼鉄、および土工などの、通常、大規模なプロジェクトにおける使用に好ましいと思われる建設材料の使用が制約される。一方、アセチルコエンザイム経路を有する従属栄養細菌は、極めて速く増殖し、強靭な性質である。これらの増殖要求もはるかに緩い。幾人かの研究者は、無機半導電性ナノ粒子が細菌の表面上に合成されると、これらの光合成能力を向上させることができることを示している。例えば、原理の証明として、非特許文献3は、(a)ハイブリッド半導体ナノワイヤ-細菌系は、太陽エネルギーの入力のみを使用して、COを、燃料、ポリマー、および錯体医薬前駆体などの多様な目標化学物質に中性のpHで還元することができること、(b)高表面積のシリコンナノワイヤアレイは、光エネルギーを採取して、嫌気性細菌、スポロミュサ・オバータ(Sporomusa ovata)に還元当量を供給して、好気条件下(21% O)で、低過電圧(η<200mV)、高ファラデー効率(最大90%)で長期間安定に(最大200時間)酢酸を光電気化学的に生成すること、(c)遺伝子操作された大腸菌(Escherichia coli)を使用して、n-ブタノール、ポリヒドロキシブチレート(PHB)ポリマー、および3種の異なるイソプレノイド天然物などの付加価値化学物質を得ることができることを実証している。
【0012】
別の手法では、非特許文献4は、無機半導体の効率的な集光と高特異性生体触媒との組み合わせについて実証している。非光合成細菌、Moorella thermoaceticaは、硫化カドミウムナノ粒子で自己光増感させると、二酸化炭素から酢酸を光合成する。硫化カドミウムナノ粒子は、細胞代謝を持続させるための集光剤として機能した。同グループは、COから酢酸を酸素発生型光合成することができるハイブリッドタンデム無機-生物学的ハイブリッド系も設計した。光還元触媒は、チオールアミノ酸のシステイン(Cys)を消費してジスルフィド型のシスチン(CySS)に酸化するCdSナノ粒子で光増感される、細菌モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)からなる。CySS/Cysレドックスシャトルを再生するために、共触媒Mn(II)フタロシアニン(MnPc)に担持された光酸化触媒TiOが、水の酸化をCySSの還元と共役させる。混合系M.thermoacetica-CdS+TiO-MnPcは、完全な酸素発生型人工光合成への有望な生体模倣アプローチを実証している。
【0013】
さらに別の文献において、非特許文献5は、半導体の広帯域の光吸収を活用して太陽エネルギーを捕捉し、続いて生体内の代謝経路を利用してこの太陽エネルギーをCOに由来する有価化学物質に変換することによって、無機材料と生物学的触媒との強みを合わせる光合成バイオハイブリッド系(PBS)に関する研究を提供している。この研究から、かかる系が該文献において実証されていることが開示され、PBSの概念への幾つかのアプローチが提案された。
【0014】
さらなる文献において、非特許文献6は、可視光をエネルギー源として使用する水分解によってH2を生成することができる、酵素修飾されたハイブリッドナノ粒子に関する研究を記載している。ここでは、電気活性デスルホミクロビウム・バキュラツム(Desulfomicrobium baculatum)由来の[NiFeSe]-ヒドロゲナーゼがRu色素増感TiO2に結合され、上記の目的に使用される。
【0015】
微生物半導電性ハイブリッドの顕著な欠点の1つは、半導電性ナノ粒子からの細胞外電子が、直接電子移動を介して細胞内構造体に有効に移動できないことである。これによって、COから燃料へ変換における微生物の効率が妨げられる。この方法では、商業的価値のある高級炭素化合物が得られていない。その上、この方法は連続的ではない。さらに、COの可溶化は、生物学的CO変換の間の顕著な問題である。特に、ほとんどの科学者は、MFCを様々な生成物にCOを変換する方法として考えていることは明らかである。しかし、この方法に関連する2つの主な制限は、(1)外部電気刺激を大規模に適用して使用することはコスト集約的であること、(b)電極および関連材料が高コストであることである。
【0016】
遺伝子操作されたシアノバクター(cynobactor)のような光合成細菌がCO変換に関して研究されているが、かかる事例に関する野生株は報告されていない。ナノワイヤ細菌系を使用する、PECに基づく系が使用されるが、この方法はスケールアップが面倒であり、電極の合成はかなりコスト集約的である。COを変換するために半導電性材料に直接統合された微生物に関する報告がある。しかし、細菌表面と集光剤との間に有効な接触がないために、容易に電子移動することができず、結果的に低収率でアセテートを生成するに過ぎない。
【0017】
したがって、当技術分野には、工業規模でC1以上の炭素化合物を容易な方式で連続的に生成するための微生物的方法に対する必要性がある。また、多くの困難を伴わずに運用することができる独立型の方法に対する必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】米国特許第9,175,408号明細書
【文献】米国特許出願公開第2015/0017694号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/0120104号明細書
【文献】米国特許第8,658,016号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0179512号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0230028号明細書
【非特許文献】
【0019】
【文献】K.P.Nevin et al.MBio,1(2),103-110(2010)
【文献】Jourdin et al.Environ.Sci.Technol.2016,50(4),pp 1982-1989
【文献】Liu et al.“Nanowire bacterium hybrids for unassisted solar carbon dioxide fixation to value-added chemicals” Nano Lett.,2015,15,3634-3639
【文献】Sakimoto et al.“Self-photosensitization of nonphotosynthetic bacteria for solar-to-chemical production” Science,351,2016,74-77
【文献】Sakimoto et al.“Cyborgian Material Design for Solar Fuel Production:The Emerging Photosynthetic Biohybrid Systems” Acc.Chem.Res.,2017,50(3),pp476-481
【文献】Reisner et al.“Visible Light-Driven H2 Production by Hydrogenases Attached to Dye-Sensitized TiO2 Nanoparticles” J.Am.Chem.Soc.,2009,131(51),pp18457-18466
【発明の概要】
【0020】
本開示は、COを還元して燃料前駆体にすることができる半導電性生体ハイブリッド触媒であって、
(a)エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)MTCC 25016、セラチア(Serratia)属種MTCC 25017、シェワネラ(Shewanella)属種MTCC 25020、アルカリゲネス(Alcaligenes)属種MTCC 25022、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)MTCC 1036、オクロバクテリウム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)ATCC 49188、オクロバクテリウム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)MTCC 9026、およびシュードモナス・アルカリフィラ(Pseudomonas alcaliphila)MTCC 6724からなる群から選択される電気活性微生物と、
(b)前駆体金属成分、電子促進剤(electron facilitator)、および染料分子を含む半導電性粒子と、からなり、
半導電性粒子が、電気活性微生物の細胞表面上に位置する、半導電性生体ハイブリッド触媒に関する。
【0021】
本開示の一実施形態によれば、半導体生体ハイブリッド触媒を合成するための方法であって、
(a)エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)MTCC 25016、セラチア(Serratia)属種MTCC 25017、シェワネラ(Shewanella)属種MTCC 25020、アルカリゲネス(Alcaligenes)属種MTCC 25022、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)MTCC 1036、オクロバクテリウム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)ATCC 49188、オクロバクテリウム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)MTCC 9026、および、シュードモナス・アルカリフィラ(Pseudomonas alcaliphila)MTCC 6724からなる群から選択される電気活性微生物を選択的に培養するステップと、
(b)少なくとも1種の塩、少なくとも1種の2D材料、および電子促進剤を表面指向剤(surface directing agent)の存在下で混合して、半導電性ハイブリッド溶液を得るステップと、
(c)ステップ(b)の半導電性ハイブリッド溶液をステップ(a)の電気活性微生物培養物に添加して、イニシエーター培養物(initiator culture)を得るステップと、
(d)対イオン前駆体をステップ(c)のイニシエーター培養物に供給するステップと、
(e)半導体生体ハイブリッド触媒を培養物から分離するステップと、を含み、
塩が、CuCl、CdCl、ZnCl、ZnBr、GaCl、InCl、FeCl、FeCl、SnCl、SnCl、Cd(NO、Ga(NO、Ln(NO、Zn(NO、Fe(NO、CdCO、CdSO、FeSO、ZnSO、Fe、CdO、Ga、Ln、ZnO、SnO、SnO、Fe(OH)、Zn(OH)、FeOOH、FeO(OH)、Cd(CHCOO)、過塩素酸鉄、過塩素酸銅、銅EDTA錯体、ニッケルアルキルアミン錯体、鉄ピペリジン錯体、カドミウムピリジン錯体、鉄ビピリジン塩、および鉄acac錯体からなる群から選択され、
2D材料が、グラフェン、多孔質グラフェン、gC、単層CNT、MoS、WS、SnS、フォスフォレン、グラフェンナノ粒子(Gr-Np)、TiC、およびボロフェンからなる群から選択され、
電子促進剤が、ニュートラルレッド、アゾ染料、鉄ポルフィリン錯体、シッフ塩基錯体、多層CNT、Cd(II)またはCu(II)イミダゾール錯体、およびルテニウム錯体からなる群から選択され、
表面指向剤が、Tween、ラウリル硫酸ナトリウム、p-172、ラウリルジメチルアミンオキシド、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ポリエトキシル化アルコール、ポリオキシエチレンソルビタン、オクトキシノール(Triton X100)、N,N-ジメチルドデシルアミン-N-オキシド、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ポリオキシル10ラウリルエーテル、Brij 721、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ポリオキシルヒマシ油(Cremophor)、ノニルフェノールエトキシレート(Tergitol)、シクロデキストリン、レシチン、および塩化メチルベンゼトニウム(Hyamine)からなる群から選択され、
対イオン前駆体が、気体材料または有機硫黄化合物である、方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】遊離細胞状態での微生物によるCO還元のための連続系の概念図である。
図2】バイオフィルム状態での微生物によるCO還元のための連続系の概念図である。
図3】連続光照射下でのZnS/g-C3N4/ニュートラルレッド エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)による燃料および化学物質へのCO変換のグラフ図である。ここでは、EA-1は、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)を指す。
図4】間欠光照射下でのZnS/g-C3N4/ニュートラルレッド エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)による燃料および化学物質へのCO変換のグラフ図である。ここでは、EA-1は、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)を指す。
図5】間欠光照射条件での連続的CO還元系についての生成物プロファイルの線グラフである。
図6】間欠光照射条件での連続CO還元系についての生成物プロファイルの線グラフである。ここでは、EA-2は、シェワネラ(Shewanella)属種を指す。
図7】様々な微生物、半導電性、2D材料、および電子促進剤条件で得られた生成物プロファイルのグラフ図である。ここでは、EA-1およびEA-2はそれぞれ、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)およびシェワネラ(Shewanella)属種を指す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、半導電性生体ハイブリッド触媒を使用してCOを燃料前駆体に変換するための、光アシスト方法を開示する。本発明はまた、生体ハイブリッド触媒として使用するために半導電性粒子を微生物細胞表面上に合成する方法を開示する。
【0024】
本出願において提供される燃料前駆体の生成方法は、単純で自己持続的である。本発明の半導電性で生体のハイブリッド触媒は、ワンポットのバイオリアクター内でCOを化学物質に有効に変換することができる。特に、本発明の方法は、外部供給源からの追加の電気を要求せず、要求される電子は、細胞表面上に結合した半導電性材料によって生体ハイブリッド触媒の微生物に供給することができる。さらに、半導電性イオンおよびCO/HSガスを供給することによって、連続法を実現することができる。
【0025】
バイオガスは、有機性廃棄物の嫌気性発酵から生じる。粗バイオガスは、典型的には、硫化水素(0.005~3%)、酸素(0~1%)、アンモニア(<1%)、微量のシロキサン(0~0.02%)、および水分を伴う、メタン(70~80%)と二酸化炭素(20~30%)との混合物を有する。バイオガスを精製するためには、その主な気体不純物、例えばCOおよびHSの濃度を除去する必要がある。上で考察したように、本出願に開示するプロセスは、COとHSの両方が微生物によって利用されるものである。したがって、本出願は、バイオガスのアップグレードに極めて有用であることが見出されている。
【0026】
本発明によれば、半導電性粒子は、以下のステップに従って電気活性微生物の細胞の表面上に合成された:
a.アセチル-CoA経路を有する電気活性微生物を選択し、該微生物を培養培地中で増殖させるステップと、
b.少なくとも1種の塩および少なくとも1種の2D材料および電子促進剤を使用して、表面指向剤の存在下で、半導電性ハイブリッド溶液をin vitroで調製するステップと、
c.半導電性ハイブリッド溶液を増殖中の微生物培養物に添加するステップと、
d.CO/HSガスまたは任意の有機供給源から対イオンを供給することによって、微生物の表面上に半導電性生体ハイブリッド触媒を確立するステップと、
e.半導電性生体ハイブリッド触媒を分離して、これを透明なリアクター内の培養培地に添加するステップと、
f.ステップ‘e’でのインキュベーション中にCOを吹き込み、指定の温度および光強度/継続時間でリアクターに光を供給するステップと、
g.細胞を分離し、培養ブロスから少なくとも1種の多炭素分子を有するブロスを得るステップと、
h.細胞を再循環させるステップ。
【0027】
本発明は、半導体、2D材料、および電子促進剤の間の界面組成物の最適化をさらに開示する。本発明は、微生物との間の界面を横切る光生成電荷キャリアの寿命および転送効率を引き上げるための概念的に新しい戦略を提供できると思われる。結果的に、電子密度が増加し、それによって高分子量生成物が形成される。さらに、制御された光の照射(本発明に利用されるような)によって、最終生成物の収率が増加する。
【0028】
本発明の1つまたは複数のプロセスステップに使用することができる電気活性微生物の属として、以下のうちの1種または複数が挙げられるが、これらに限定されない:エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)、セラチア(Serratia)属種、アルカリゲネス(Alcaligenes)属種、オクロバクテリウム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)、アシディフィリウム・クリプツム(Acidiphilium cryptum)、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)、ロドフェラックス・フェリレデューセンス(Rhodoferax ferrireducens)、キュープリアビダス・ネカター(Cupriavidus necator)、シェワネラ・オネイデンシス(Shewanella oneidensis)、シェワネラ・プトレファシエンス(Shewanella putrefaciens)、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・アルカリフィラ(Pseudomonas alcaliphila)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、アゾトバクター・ビネランディイ(Azotobacter vinelandii)、大腸菌(Escherichia coli)、アエロモナス・ハイドロフィラ(Aeromonas hydrophila)、アクチノバチルス・サクシノゲネス(Actinobacillus succinogenes)、肺炎桿菌(Klebsiella pneumonia)、クレブシエラ(Klebsiella)属種ME17、クレブシエラ・テリジェナ(Klebsiella terrigena)、エンテロバクター・クロアカエ(Enterobacter cloacae)、サイトロバクター(Citrobacter)属種SX-1、ゲオサイクロバクター・エレクトロディフィルス(Geopsychrobacter・electrodiphilus)、ゲオバクター・スルフレデュセンス(Geobacter sulfurreducens)、ゲオバクター・メタリレデュセンス(Geobacter metallireducens)、ゲオバクター・lovleyi(Geobacter lovleyi)、デスルフロモナス・アセトキシダンス(Desulfuromonas acetoxidans)、デスルホビブリオ・デスルフリカンス(Desulfovibrio desulfuricans)、デスルホビブリオ・パクエシイ(Desulfovibrio paquesii)、デスルホブルブス・プロピオニカス(Desulfobulbus propionicus)、アルコバクター・ブツレリ(Arcobacter butzleri)、アシディチオバチルス・フェロオキシダンス(Acidithiobacillus ferrooxidans)、スポロミュサ・オバータ(Sporomusa ovata)、スポロミュサ・スフェロイデス(Sporomusa sphaeroides)、スポロミュサ・シルバセティカ(Sporomusa silvacetica)、サーミンコーラ(Thermincola)属種JR、ゲオトリックス・フェルメンタンス(Geothrix fermentans)、クロストリジウム・リュングダリイ(Clostridium ljungdahlii)、クロストリジウム・アセティクム(Clostridium aceticum)、クロストリジウム(Clostridium)属種EG3、モーレラ・サーモアセティカ(Moorella thermoacetica)、サーミンコーラ・フェリアセティカ(Thermincola ferriacetica)、バチルス・サブティリス(Bacillus subtilis)、ラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)、ラクトバチルス・ペントーサス(Lactobacillus pentosus)、エンテロコッカス・フェシウム(Enterococcus faecium)、ブレビバチルス(Brevibacillus)属種PTH1、コリネバクテリウム・グルタニカム(Corynebacterium glutamicum)。
【0029】
本発明の一実施形態では、電気活性微生物として、オクロバクテリウム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)(ATCC 49188)、(ATCC 29243)、(ATCC 21909)、(ATCC 49237)、(ATCC 49187)、DSM-14396、DSM-20150、MTCC-9026、MTCC-8748、アシディフィリウム・クリプツム(Acidiphilium cryptum)(ATCC 33463)、DSM-2389、DSM-2390、DSM-2613、DSM-9467、ロドシュードモナス・パルストリス(Rhodopseudomonas palustris)(ATCC 33872)、(ATCC 17001)、(ATCC 17010)、(ATCC 17007)、DSM-127、DSM-131、DSM-8283、ロドフェラックス・フェリレデューセンス(Rhodoferax ferrireducens)(ATCC BAA-621)、DSM-15236(ATCC BAA-1852)、キュープリアビダス・ネカター(Cupriavidus necator)(ATCC 17697)、(ATCC 43291)、(ATCC 17699)、MTCC-1472、DSM-11098、DSM-13439、DSM-15443、シェワネラ・オネイデンシス(Shewanella oneidensis)(ATCC 700550)、(ATCC BAA-1096)、(ATCC 700550D)、シェワネラ・プトレファシエンス(Shewanella putrefaciens)MTCC-8104、(ATCC 8071)、(ATCC 8072)、DSM-9439、DSM-1818、DSM-50426、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)、(ATCC 10145)、(ATCC 15442-MINI-PACK)、(ATCC 9027-MINI-PACK)、DSM-100465、DSM-102273、DSM-102275、MTCC-1036、MTCC-1688、シュードモナス・アルカリフィラ(Pseudomonas alcaliphila)MTCC-6724、DSM-17744、DSM-26533が挙げられる。
【0030】
微生物の寄託
本発明の電気活性微生物のうち、エンテロバクター・アエロゲネスMTCC 25016、セラチア属種MTCC 25017、シェワネラ属種MTCC 25020、アルカリゲネス属種MTCC 25022、シュードモナス・エルギノーザMTCC 1036、オクロバクテリウム・アンスロピMTCC 9026、およびシュードモナス・アルカリフィラMTCC 6724は、ブダペスト条約の規則に則り、インド共和国、チャンディーガル-160 036、セクター39-Aに住所を有するInstitute of Microbial TechnologyのMTCC(Microbial Type Culture Collection and Gene Bank)に国際寄託された菌株である。
エンテロバクター・アエロゲネスは、2015年4月9日に、受領番号IOC-EA-6が付与されている。
セラチア属種は、2015年4月9日に、受託番号MTCC 25017として、MTCCに寄託された菌株であり、受領番号IOC-EA-9が付与されている。
シェワネラ属種は、2015年4月9日に、受託番号MTCC 25020として、MTCCに寄託された菌株であり、受領番号IOC-EA-109が付与されている。
アルカリゲネス属種は、2015年4月10日に、受託番号MTCC 25022として、MTCCに寄託された菌株であり、受領番号IOC-MA-2が付与されている。
また、オクロバクテリウム・アンスロピATCC 49188は、ブダペスト条約の規則に則り、アメリカ合衆国の10801 University Blvd., Manassas, VA 10110に住所を有するATCC Patent DepositoryのATCC(American Type Culture Collection)に国際寄託された菌株である。
本発明の別の実施形態では、電気活性微生物は、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)MTCC 25016、セラチア(Serratia)属種MTCC 25017、シェワネラ(Shewanella)属種MTCC 25020、アルカリゲネス(Alcaligenes)属種MTCC 25022、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)MTCC 1036、オクロバクテリウム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)ATCC 49188、オクロバクテリウム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)MTCC 9026、およびシュードモナス・アルカリフィラ(Pseudomonas alcaliphila)MTCC 6724からなる群から選択される。
【0031】
別の態様では、本発明は、バイオアシスト方法によって生成される半導体組成物を対象とする。一実施形態では、半導電性粒子は、CdS、ZnS、SnS、CdSe、ZnSe、CdTe、ZnTe、またはCdS-ZnSなどの組成物を有する。前駆体金属成分は、イオン形態の1種類または複数種類の金属を含有する。ここに適用可能な前駆体金属化合物の幾つかの例として、金属ハロゲン化物(例えば、CuCl、CdCl、ZnCl、ZnBr、GaCl、InCl、FeCl、FeCl、SnCl、およびSnCl)、金属硝酸塩(例えば、Cd(NO、Ga(NO、In(NO、Zn(NO、およびFe(NO)、金属過塩素酸塩(過塩素酸銅)、金属炭酸塩(例えば、CdCO)、金属硫酸塩(例えば、CdSO、FeSO、およびZnSO)、金属酸化物(例えば、Fe、CdO、Ga、Ln、ZnO、SnO、SnO)、金属水酸化物(例えば、Fe(OH)およびZn(OH))、金属オキシ水酸化物(例えば、FeOOH、またはFeO(OH)、およびこれらの代替形態)、鉄および銅EDTA錯体、金属アミン(例えば、金属アルキルアミン、鉄、亜鉛、およびニッケルのピペリジン、ピリジン、またはビピリジン塩錯体)、金属カルボン酸塩(例えば、酢酸カドミウム)、ならびに鉄、銅、カドミウム、およびニッケルの金属アセチルアセトネート(すなわち、金属-acac)錯体が挙げられる。
【0032】
本発明の別の実施形態では、2D材料は、グラフェン、多孔質グラフェン、グラフェンナノ粒子、gC、単層CNT、MoS、TiC、WS、SnS、フォスフォレン、およびボロフェンからなる群から選択される。
【0033】
本発明のさらなる実施形態では、電子促進剤は、ニュートラルレッド、アゾ染料、ポルフィリン錯体、シッフ塩基錯体、多層CNT、Cd(II)イミダゾール錯体、Cu(II)イミダゾール錯体、およびルテニウム錯体からなる群から選択される。
【0034】
本発明のさらに別の実施形態は、表面指向剤が、ポリソルベート(Tween)、ドデシル硫酸ナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)、ラウリルジメチルアミンオキシド、臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)、ポリエトキシル化アルコール、ポリオキシエチレンソルビタン、オクトキシノール(Triton X100)、N,N-ジメチルドデシルアミン-N-オキシド、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム(HTAB)、ポリオキシル10ラウリルエーテル、Brij 721、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ポリオキシルヒマシ油(Cremophor)、ノニルフェノールエトキシレート(Tergitol)、シクロデキストリン、レシチン、および塩化メチルベンゼトニウム(Hyamine)からなる群から選択されることを提供する。
【0035】
本発明のさらに別の実施形態では、対イオン前駆体が、HS含有ガス、工業排煙、バイオガスからなる群から選択される気体供給源であることが提供される。別の実施形態では、対イオン前駆体は適切な有機硫黄化合物であり、これらとして、炭化水素メルカプタン(例えば、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、チオフェノール、エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、チオフェン)、アルコール含有メルカプタン(例えば、2-メルカプトエタノール、3-メルカプトプロパノール、4-メルカプトフェノール、およびジチオトレイトール)、メルカプトアミノ酸(例えば、システイン、ホモシステイン、メチオニン、チオセリン、チオトレオニン、およびチオチロシン)、メルカプトペプチド(例えば、グルタチオン)、メルカプトピリミジン(例えば、2-チオウラシル、6-メチル-2-チオウラシル、4-チオウラシル、2,4-ジチオウラシル、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオシトシン、5-フルオロ-2-チオシトシン、2-チオチミン、4-チオチミン、2,4-ジチオチミン、ならびにこれらのヌクレオシドおよびヌクレオチド類似体)、メルカプトプリン(例えば、6-チオグアニン、8-チオアデニン、2-チオキサンチン、6-チオキサンチン、6-チオヒポキサンチン、6-チオプリン、ならびにこれらのヌクレオシドおよびヌクレオチド類似体)、チオエーテル(例えば、硫化ジメチル、硫化ジエチル、硫化ジフェニル、ビオチン)、ジスルフィド(例えば、シスチン、リポ酸、二硫化ジフェニル、二硫化鉄、および2-ヒドロキシエチルジスルフィド)、チオカルボン酸(例えば、チオ酢酸)、チオエステル、スルホニウム塩(例えば、トリメチルスルホニウム、またはジフェニルメチルスルホニウムクロリド)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド)、スルホン(例えば、ジメチルスルホン)、チオケトン、チオアミド、チオシアネート、イソチオシアネート、チオカルバメート、ジチオカルバメートが挙げられる。
【0036】
本発明の一実施形態は、COを還元して燃料前駆体にすることができる半導電性生体ハイブリッド触媒
(c)エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)MTCC 25016、セラチア(Serratia)属種MTCC 25017、シェワネラ(Shewanella)属種MTCC 25020、アルカリゲネス(Alcaligenes)属種MTCC 25022、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)MTCC 1036、オクロバクテリウム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)ATCC 49188、オクロバクテリウム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)MTCC 9026、およびシュードモナス・アルカリフィラ(Pseudomonas alcaliphila)MTCC 6724からなる群から選択される電気活性微生物と、
(d)前駆体金属成分、電子促進剤、および染料分子を含む半導電性粒子と、からなり、
半導電性粒子が、電気活性微生物の細胞表面上に位置する、半導電性生体ハイブリッド触媒を提供する。
【0037】
本発明のさらなる実施形態は、半導電性生体ハイブリッド触媒を用いてCOを燃料前駆体にバイオアシスト変換するための方法であって、
(a)本発明の半導電性生体ハイブリッド触媒を透明なリアクター内の培養培地に添加するステップと、
(b)培養培地中にCOを吹き込み、透明なリアクターを>400nmの波長を有する光源で照射するステップと、
(c)培養培地から燃料前駆体を回収するステップと、を含む、方法を提供する。
【0038】
本発明のさらに別の実施形態は、燃料前駆体が、メタノール、エタノール、酢酸、ブタノール、イソプロパノール、酪酸、およびカプロン酸からなる群から選択されることを提供する。
【0039】
本発明の別の実施形態では、半導電性生体ハイブリッド触媒を用いてCOを燃料前駆体にバイオアシスト変換するための方法であって、
(a)本発明の半導電性生体ハイブリッド触媒を透明なリアクター内の培養培地に添加するステップと、
(b)培養培地中にCOを吹き込み、透明なリアクターを>400nmの波長を有する光源で照射するステップと、
(c)培養培地から燃料前駆体を回収するステップと、を含み、
燃料前駆体が、メタノール、エタノール、酢酸、ブタノール、イソプロパノール、酪酸、およびカプロン酸からなる群から選択される、方法が提供される。
【0040】
本発明のさらなる実施形態は、半導電性ハイブリッド触媒を用いてバイオガスを燃料前駆体にバイオアシスト変換するための方法であって、
(a)本発明の半導電性生体ハイブリッド触媒をガラスカラム内の培養培地に添加するステップと、
(b)培養培地中にバイオガスを吹き込み、ガラスカラムを>400nmの波長を有する光源で照射するステップと、
(c)培養培地から燃料前駆体を回収するステップと、を含み、
燃料前駆体がメタノール、エタノール、および酢酸の混合物を含む、方法を提供する。
【0041】
本発明のさらに別の実施形態は、半導体生体ハイブリッド触媒を合成するための方法であって、
(a)エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes) MTCC 25016、セラチア(Serratia)属種MTCC 25017、シェワネラ(Shewanella)属種MTCC 25020、アルカリゲネス(Alcaligenes)属種MTCC 25022、シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)MTCC 1036、オクロバクテリウム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)ATCC 49188、オクロバクテリウム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)MTCC 9026、およびシュードモナス・アルカリフィラ(Pseudomonas alcaliphila)MTCC 6724からなる群から選択される電気活性微生物を選択的に培養するステップと、
(b)少なくとも1種の塩、少なくとも1種の2D材料、および電子促進剤を表面指向剤の存在下で混合して、半導電性ハイブリッド溶液を得るステップと、
(c)ステップ(b)の半導電性ハイブリッド溶液をステップ(a)の電気活性微生物培養物に添加して、イニシエーター培養物を得るステップと、
(d)対イオン前駆体をステップ(c)のイニシエーター培養物に供給するステップと、
(e)半導体生体ハイブリッド触媒を培養物から分離するステップと、を含み、
塩が、CuCl、CdCl、ZnCl、ZnBr、GaCl、InCl、FeCl、FeCl、SnCl、SnCl、Cd(NO、Ga(NO、Ln(NO、Zn(NO、Fe(NO、CdCO、CdSO、FeSO、ZnSO、Fe、CdO、Ga、Ln、ZnO、SnO、SnO、Fe(OH)、Zn(OH)、FeOOH、FeO(OH)、Cd(CHCOO)、過塩素酸鉄、過塩素酸銅、銅EDTA錯体、ニッケルアルキルアミン錯体、鉄ピペリジン錯体、カドミウムピリジン錯体、鉄ビピリジン塩、および鉄acac錯体からなる群から選択され、
2D材料が、グラフェン、多孔質グラフェン、gC、単層CNT、MoS、WS、SnS、フォスフォレン、グラフェンナノ粒子(Gr-Np)、TiC、およびボロフェンからなる群から選択され、
電子促進剤が、ニュートラルレッド、アゾ染料、鉄ポルフィリン錯体、シッフ塩基錯体、多層CNT、Cd(II)またはCu(II)イミダゾール錯体、およびルテニウム錯体からなる群から選択され、
表面指向剤が、Tween、ラウリル硫酸ナトリウム、p-172、ラウリルジメチルアミンオキシド、臭化セチルトリメチルアンモニウム、ポリエトキシル化アルコール、ポリオキシエチレンソルビタン、オクトキシノール(Triton X100)、N,N-ジメチルドデシルアミン-N-オキシド、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ポリオキシル10ラウリルエーテル、Brij 721、デオキシコール酸ナトリウム、コール酸ナトリウム、ポリオキシルヒマシ油(Cremophor)、ノニルフェノールエトキシレート(Tergitol)、シクロデキストリン、レシチン、および塩化メチルベンゼトニウム(Hyamine)からなる群から選択され、
対イオン前駆体が、気体材料または有機硫黄化合物である、方法を提供する。
【0042】
本発明の別の実施形態は、気体材料がHS含有ガス、工業排煙、およびバイオガスからなる群から選択されることを提供する。
【0043】
本発明のさらなる実施形態は、有機硫黄化合物が、メタンチオール、エタンチオール、プロパンチオール、ブタンチオール、チオフェノール、エタンジチオール、1,3-プロパンジチオール、1,4-ブタンジチオール、チオフェン、2-メルカプトエタノール、3-メルカプトプロパノール、4-メルカプトフェノール、ジチオトレイトール、システイン、ホモシステイン、メチオニン、チオセリン、チオトレオニン、チオチロシン、グルタチオン、2-チオウラシル、6-メチル-2-チオウラシル、4-チオウラシル、2,4-ジチオウラシル、2-チオシトシン、5-メチル-2-チオシトシン、5-フルオロ-2-チオシトシン、2-チオチミン、4-チオチミン、2,4-ジチオチミン、6-チオグアニン、8-チオアデニン、2-チオキサンチン、6-チオキサンチン、6-チオヒポキサンチン、6-チオプリン、硫化ジメチル、硫化ジエチル、硫化ジフェニル、ビオチン、シスチン、リポ酸、二硫化ジフェニル、二硫化鉄、2-ヒドロキシエチルジスルフィド、チオ酢酸、トリメチルスルホニウム、ジフェニルメチルスルホニウムクロリド、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、チオケトン、チオアミド、チオシアネート、イソチオシアネート、チオカルバメート、およびジチオカルバメートからなる群から選択されることを提供する。
【0044】
微生物に使用される培地組成物は、微量栄養素、ビタミン、例えば、0.40g/LのNaCl、0.40g/LのNHCl、0.33g/LのMgSO・7HO、0.05g/LのCaCl、0.25g/LのKCl、0.64g/LのKHPO、2.50g/LのNaHCO、微量ミネラル(1000.0mg/LのMnSO・HO、200.0mg/LのCoCl・6HO、0.2mg/LのZnSO・7HO、20.0mg/LのCuCl・2HO、2000.0mg/Lのニトリロ酢酸)、およびビタミン(ピリドキシン・HCl 10.0mg/L、チアミン・HCl 5.0mg/L、リボフラビン5.0mg/L、ニコチン酸5.0mg/L、ビオチン2.0mg/L、葉酸2.0mg/L、ビタミンB12 0.1mg/L)から構成することができる。
【0045】
培地の適正な運転pHは、リン酸塩緩衝液を使用して培地のpHを変動させることによって評価した。系のpHは3から11まで変動し得ることが見出された。微生物は、このpHの範囲内で生成物の形成に何も影響を及ぼすことなく適切に増殖することが見出された。
【0046】
一実施形態では、反応培地の温度を25から55まで変動させ、微生物集団および炭化水素形成に及ぼす影響を観察すると、温度の変動には本質的に影響を受けなかった。別の実施形態では、特許請求する方法における発酵ステップは、適切な炭素源が供給されるならば暗所でも機能することができる。
【0047】
別の実施形態では、本発明は、混合栄養モードで実行することができる。
【0048】
別の実施形態では、本発明は、従属栄養モードで実行することができる。
【0049】
別の実施形態では、様々なCO供給源を生物変換に使用した。二酸化炭素含有ガスの供給源は、有機化合物中へのストリーム、大気、もしくは水、および/または溶存もしくは固体形態の無機炭素を含んでもよい。これらのプロセスステップでは、二酸化炭素を含有する排煙、もしくはプロセスガス、もしくは空気、または溶解した二酸化炭素、炭酸イオン、もしくは炭酸水素イオンとしての溶液中の無機炭素(海水などの水溶液が含まれる)、または固相中の無機炭素、例えば、これらに限定されないが、炭酸塩および炭酸水素塩が、栄養培地および微生物を含有する容器または密閉箱にポンプで送り込まれるか、さもなければ添加される。
【0050】
光は、微生物培養物の光栄養性能に必須の基質である。光のスペクトル品質と強度の両方が微生物の性能に重要である。光源は、直射日光、LED光、400nmより高い波長を有する光源であり得る。幾つかの実施形態では、連続光およびせん光を培養培地に供給した。せん光は、1:5秒の暗期と明期の比率で与えた。間欠性の光源を用いると全収率が有意に強化されたことが見出された。したがって、連続光は、恐らく微生物中での電子閉じ込めを飽和させ、それによって生成物の形成が減少すると思われる。その一方で、間欠光は、微生物細胞によって電子が完全に使用されるのに必須な暗周期の部分があるために適切である。
【0051】
半導体光触媒は、太陽光によって照射され、半導体のバンドギャップ以上のエネルギーを有する光子を吸収する。次いで、光生成された電子-正孔対が生成される。光生成された正孔は酸化性であるのに対し、光生成された電子は還元性である。還元性電子は、続いて電子キャリアを介して微生物細胞内に入り、CO還元プロセスを支援する。
【0052】
本発明によれば、半導電性生体触媒によって媒介される二酸化炭素還元プロセスの運転プロセスは、バッチモードまたは連続的であり得る。
【0053】
バッチモードでは、活性培養物(5ml)を遠心分離し、リン酸塩緩衝液(pH=7.5)で洗浄し、半導電性生体触媒合成用に1mlの緩衝液中に希釈した。半導電性生体触媒ハイブリッドは、金属対種を変えることによって別の経路によって調製した。20mlの新鮮な培地および1mlの微生物培養物(リン酸塩緩衝液で希釈したもの)を含有する血清ビンに、0.2重量%の金属対種および2mMの金属イオン(5ml)を入れた。24時間の接種後に、半導電性生体触媒が形成したために、培養培地は色を変える。同様に、HSに媒介される合成の場合は、50ppmのHS(残部はN)ガスを、フィルターを通して2mMの金属イオンを含有する20mlの培地に2mL/分の速度で10秒間送り、培養物を30℃で24(時間)接種した。
【0054】
すべての光合成測定は、COを炭素源として使用して、72時間の接合期間の間実施した。ある一組の実験では、CO(99.99%)を連続モードで24時間/日、フィルターを通して20ml/時でパージした。連続的または間欠的に光子束を供給するために可視光を用いた。半導電性生体ハイブリッド触媒を含有する血清ビンを光源に曝露した。血清ビンから1mlの培養物を抜き出して、15,000rpmで5分間遠心分離し、水素炎イオン化検出器(FID)、DB-FFAPキャピラリーカラム(フィルム厚0.25mm)、および自動注入装置を備えたAgilentモデル6850ガスクロマトグラフ(GC)システムを使用して、上清を定量化した。
【0055】
微生物への電子の移動は、電極から直接または電子メディエーターを通して間接的に発生し得る主たる推進力である。本発明の生体ハイブリッド触媒(例えば、実施例1のZnS/g-C/ニュートラルレッド エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)微生物ハイブリッドなど)を合成したとき、全生成物収率は、g-C3N4およびNRの電子検出特性のために有意に増加する。系は、システム的に何も要求せずに独立して機能することができるので、本発明の系の利点は、プロセスが容易なことである。ZnS/g-C3N4/ニュートラルレッド エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)微生物ハイブリッドの場合、ZnSは潜在的な電子受容体として作用し、g-C3N4の独特な2D構造および優れた電子特性は、光照射時に半導体のバンドギャップ光励起から光生成された電子を受容/輸送する能力の助けとなる。ニュートラルレッドは、ZnSとg-C3N4の間の界面を横切る光生成電荷キャリアの経路または効率を最適化する助けとなる。言い換えれば、可視光照射下で、半導体ZnSから、そのバンドギャップ光励起に起因する電子正孔対が生成される。g-C3N4シートの優れた電子導電性のために、g-C3N4プラットフォームは、ZnSから光生成された電子を受容し、往復させることができる。ZnSとGRの間の中間層マトリックスにNRが存在すると、半導体ZnSから電子導電性g-C3N4、微生物表面への光生成電子の移動経路を最適化することができると思われ、それによって電荷キャリア(電子-正孔対)の寿命が延長される。これが、ひいては半導電性生体ハイブリッド触媒の光活性の向上に貢献すると思われる。
【0056】
連続モード運転の場合、図2に示すように3つ以上の異なるリアクターを並行して運転しなければならない。
a.リアクターR内で、微生物培養物を栄養培地中で調製した。培地に、0.2mMの塩溶液および0.2重量%の金属対種またはHSガスを連続法で供給した(0.1mL/分)。半導電性生体ハイブリッド触媒の形成が、30℃での24時間の接種後に起こる。微生物培養物の増殖を、OD分析によってモニタリングした。
b.リアクターR内で、磁性発泡体上に固定化された炭酸脱水酵素の存在によってCOの水和が起きる。CO溶解液をR2に連続的に供給する。
c.リアクターRからの細胞を遠心分離し、ODがRに達するまでリアクターRに移送した。その後、リアクターR2からの可溶性COを1mL/分の流量で放出した。
d.リアクターRに、光源を連続または間欠法によってすべての側面から供給した。間欠光は、1秒:5秒の暗期と明期の比率で供給した。反応を24時間継続し、細胞を遠心分離によって生成物から分離し、再計算してリアクターR1に送った。
【0057】
本発明の基本的態様について記載してきたが、以下の非限定的な実施例は、その特定の実施形態を例示する。
【実施例
【0058】
実施例1
ZnS/g-C/ニュートラルレッド エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)(EA-1)(MTCC 25016)によるCO変換
a.電気活性微生物の選択および培養
電気活性エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)(EA-1)(MTCC 25016)微生物を単離し、最適化培地中で培養した。すべてのガラス器具および試料は、121℃で15分間の加圧滅菌によって滅菌した。培地組成物は以下の通りであった:(0.40g/LのNaCl、0.40g/LのNHCl、0.33g/LのMgSO・7HO、0.05g/LのCaCl、0.25g/LのKCl、0.64g/LのKHPO、2.50g/LのNaHCO、微量ミネラル(1000.0mg/LのMnSO・HO、200.0mg/LのCoCl・6HO、0.2mg/LのZnSO.7HO、20.0mg/LのCuCl・2HO、2000.0mg/Lのニトリロ酢酸)、およびビタミン(ピリドキシン・HCl 10.0mg/L、チアミン・HCl 5.0mg/L、リボフラビン5.0mg/L、ニコチン酸5.0mg/L、ビオチン2.0mg/L、葉酸2.0mg/L、ビタミンB12 0.1mg/L、0.5%グルコース)。培養物を30℃で増殖させた。660nmでのODをUV可視分光光度計で測定することによって細胞増殖をモニタリングした。
【0059】
b.半導電性ハイブリッド溶液の調製
10:0.1の流量でHSを通すことによって、ZnS半導電性粒子を微生物の表面上に合成した。典型的には、100mlの脱イオン水中に0.1mgのg-Cを超音波処理によって分散させ、これに0.2mMのZn(NOを添加した。分散させた材料に、500μLのTween20を表面指向剤として添加した。1時間の超音波処理の後、0.01mMのニュートラルレッドを添加した。この材料をAと名付けた。加圧滅菌したチューブ内で活性微生物培養物(5ml)(CFU=2.3×10)を遠心分離し、リン酸塩緩衝液(pH=7.5)中で洗浄し、微生物-ZnSハイブリッド合成用に1mlの緩衝液中に希釈した。HSに媒介される生体ハイブリッド合成では、50ppmのHS(残部はN)ガスを、フィルターを通して4mlのAを含有する20mlの培地に0.1mL/分の速度で30秒間送り、得られた明るい白濁した溶液を30℃で24(時間)接種した。
【0060】
c.生体ハイブリッド触媒の分析
すべての光合成測定は、COを炭素源として使用して、5日間の接合期間の間実施した。ある一組の実験では、CO(99.99%)を連続モードで5時間/日、フィルターを通して20ml/時でパージした。光子束を供給するために波長t(λ>400nm)の可視光を用いた。供給は、生体ハイブリッド触媒がそれらの代謝活性でCOを利用するような様々な条件下で光が供給されるように為された。ある一組の実験では、一定の太陽光を24時間与え、別の組では、明期:暗期の比率が1:3秒である間欠光源を与えた。その時々に血清ビンから1mlの培養物を抜き出し、15,000rpmで5分間遠心分離し、水素炎イオン化検出器(FID)、DB-FFAPキャピラリーカラム(フィルム厚0.25mm)、および自動注入装置を備えたAgilentモデル6850ガスクロマトグラフ(GC)システムを使用して上清を定量化した。
【0061】
まず第一に、5日間のコロニー形成単位(CFU)アッセイによって決定された生存率(初期の5.9±0.4×10CFUml-1から1.7±0.4×10細胞ml-1まで)から、ZnS/g-C/ニュートラルレッド エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)微生物ハイブリッド系が実験条件で持続可能に増殖する潜在能力を有することが示される。
【0062】
d.生体ハイブリッド触媒による炭化水素変換の分析
ZnS/g-C/ニュートラルレッド エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)微生物ハイブリッドによる太陽光線から燃料および炭化水素への変換を確認するために、微生物ZnSおよび光をシステム的に取り除いた一連の対照実験を実施した。光の非存在下では、生成物の形成は起こらない。しかし、光が与えられると(一定光および間欠光的の両方で)、一連の単一および複数の炭素生成物、すなわち、メタノール、エタノール、酢酸が得られる。エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)だけを使用する対照実験を実施したときに、連続光および間欠光の両方で生成物の形成が観察されなかったことから、微生物は非光合成的であることが示される。図5に示すように、異なる組み合わせの幾つかの厳密な制御を試みた。制御条件で極めて低い濃度のメタノール、酢酸が、一定光および間欠光条件の両方で得られることが見出された。しかし、生成物の形成は、エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)+ZnS+g-C+NRからなる半導電性生体ハイブリッド触媒を使用したときに驚くほど強化された。0.89g/Lのメタノール、0.087g/Lのエタノール、および0.213g/Lの酢酸が一定光源下で得られた(図3)。間欠光源では、1.080g/Lのメタノール、0.061g/Lのエタノール、および0.098g/Lの酢酸となり、生成の有意な強化が存在する(図5)。詳細な実験条件を表1に示す。
【0063】
【表1】
【0064】
実施例2
SnS/MoS/CNT シェワネラ(Shewanella)属種(EA-2)(MTCC 25020)によるCO変換
連続モードの運転の場合、図2および3に示すような3つのリアクターシステムを使用した。
【0065】
a.電気活性微生物の選択および培養
実施例-1に示したように、シェワネラ(Shewanella)属種(EA-2)(MTCC 25020)微生物は、0.40g/LのNaCl、0.40g/LのNHCl、0.33g/LのMgSO・7HO、0.05g/LのCaCl、0.25g/LのKCl、0.64g/LのKHPO、2.50g/LのNaHCO、微量ミネラル(1000.0mg/LのMnSO・HO、200.0mg/LのCoCl・6HO、0.2mg/LのZnSO.7HO、20.0mg/LのCuCl・2HO、2000.0mg/Lのニトリロ酢酸)、およびビタミン(ピリドキシン・HCl 10.0mg/L、チアミン・HCl 5.0mg/L、リボフラビン5.0mg/L、ニコチン酸5.0mg/L、ビオチン2.0mg/L、葉酸2.0mg/L、ビタミンB12 0.1mg/Lの培地からなるリアクターR1内で増殖させた。
【0066】
b.半導電性ハイブリッド溶液の調製
別の容器に、0.2mMのSnCl、0.1gのMoS、および500μLの単層CNT溶液(2mg/ml)を100mlの脱イオン水中に添加することによって、半導電性ハイブリッドを調製した。この溶液に、0.1mlのTween20を表面指向剤として添加した。溶液全体を1時間超音波処理して、均一に分散した溶液を得た。この溶液を100℃で15分間加圧滅菌し、Aと名付けた。
【0067】
微生物培養物を含有するリアクターRに、溶液Aを0.1mL/分の流量で供給した。同時に、HSガスを連続法で供給した(0.1mL/分)。半導電性生体ハイブリッド触媒の形成が、30℃での24時間の接種後に生じる。SnS/MoS/CNT シェワネラ(Shewanella)属種微生物ハイブリッドの微生物培養物の増殖は、OD分析によってモニタリングした。
【0068】
c.生体ハイブリッド触媒の分析
SnS/MoS/CNT シェワネラ(Shewanella)属種の微生物ハイブリッドは、電子顕微鏡的研究を使用して特徴付けた。SnSは、太陽光を採取する生体適合性半導体として作用する。効率的な2D材料としてのMoSは電子移動に有用であり、よって電子-正孔再結合を低減させる。ここではCNT(複層)は、電子を半導体ハイブリッドから微生物の細胞に移送する促進剤として作用する。
【0069】
リアクターR内で、磁性発泡体上に固定化された炭酸脱水酵素の存在によってCOの水和が起きる。CO(99.999%)を1mL/分の流量で下からリアクターに供給し、リアクターは固定化されたCAを含有する。CO溶解液を0.5mL/分の流量でR2に連続的に供給する。
【0070】
リアクターRからの細胞を遠心分離し、RにおけるODが2の値に達するまでリアクターRに移送した。このリアクターを300rpmで連続して撹拌した。その後、リアクターRからの可溶性COを1mL/分の流量でリアクターR3に放出した。
【0071】
リアクターRに、光源を連続または間欠法によってすべての側面から供給した。間欠光は、1秒:5秒の暗期と明期の比率で与えた。反応を15日間連続して継続し、24時間毎に細胞を遠心分離によって生成物から分離し、再計算してリアクターR1に送った。
【0072】
d.生体ハイブリッド触媒による炭化水素変換の分析
生成物プロファイル(図5および6)から、生成物の形成が、使用する微生物に応じて変動することが見出された。ZnS/g-C/ニュートラルレッド エンテロバクター・アエロゲネス(Enterobacter aerogenes)(EA-1)を含有する半導電性生体ハイブリッド触媒の場合、間欠光条件においてメタノールが顕著な生成物として得られた(約1.05g/L/日)。それと同時に、より低い状態の酢酸(約0.095g/L/日)およびエタノール(約0.06g/L/日)の形成も観察された。しかし、異なる半導電性生体ハイブリッド触媒、SnS/MoS/CNT シェワネラ(Shewanella)属種(EA-2)を使用すると(同じ条件)、エタノールが顕著な生成物(約1.00g/L/日)であり、それに加えて低濃度のメタノール(0.048g/L/日)および酢酸(0.12g/L/日)が生成した。さらに、生成物の濃度が、使用する電気活性微生物、半導電性材料、2D材料、電子促進剤に応じて変動することが観察された。生成物形成の比較表は、図7に含まれる。
【0073】
【表2】
【0074】
実施例3
ZnS/MoS/CNT セラチア(Serratia)sp(EA-2)(MTCC 25017)によるCO変換
a.電気活性微生物の選択および培養
電気活性セラチア(Serratia)属種(EA-2)(MTCC 25017)微生物を単離し、最適化培地中で培養した。すべてのガラス器具および試料は、121℃で15分間の加圧滅菌によって滅菌した。培地組成物は以下の通りであった:(0.40g/LのNaCl、0.40g/LのNHCl、0.33g/LのMgSO・7HO、0.05g/LのCaCl、0.25g/LのKCl、0.64g/LのKHPO、2.50g/LのNaHCO、微量ミネラル(1000.0mg/LのMnSO・HO、200.0mg/LのCoCl・6HO、0.2mg/LのZnSO.7HO、20.0mg/LのCuCl・2HO、2000.0mg/Lのニトリロ酢酸)、およびビタミン(ピリドキシン・HCl 10.0mg/L、チアミン・HCl 5.0mg/L、リボフラビン5.0mg/L、ニコチン酸5.0mg/L、ビオチン2.0mg/L、葉酸2.0mg/L、ビタミンB12 0.1mg/L、0.5%グルコース)。培養物を30℃で増殖させた。660nmでのODをUV可視分光光度計で測定することによって細胞増殖をモニタリングした。
【0075】
b.半導電性ハイブリッド溶液の調製
別の容器に、0.2mMのZnCl、0.1gのMoS、および0.1mgの多層CNTを100mlの脱イオン水中に添加することによって、半導電性ハイブリッドを調製した。この溶液に、0.2mgのp-172界面活性剤を添加した。溶液全体を30分間超音波処理して、均一に分散した溶液を得た。この溶液を121℃で15分間加圧滅菌した。
【0076】
十分に増殖したセラチア(Serratia)sp培養物(CFU=2.3*10)1mlに、加圧滅菌した導電性ハイブリッド溶液4mlを添加し、35℃で24時間インキュベートした。それと同時に、COおよびHSを10:0.1の流量で、実施例1に示した手順の通りに培地にパージした。培地の色がゆっくりと(48時間後)薄い白色に変化したことから、ZnS/MoS/CNT セラチア(Serratia)属種のハイブリッドの形成が示された。微生物ハイブリッドの増殖は、OD分析によってもモニタリングした。
【0077】
c.生体ハイブリッド触媒の分析
次いでZnS/MoS/CNT セラチア(Serratia)属種のハイブリッドを一定光源と間欠光源(5秒間の明期および2秒間の暗期)の両方に曝露した(λ>420nm)。生成物を、3時間経つ毎にGCによって分析した。生成物のプロファイルを表3に示す。
【0078】
実施例4
CdS/ZnS/g-C アルカリゲネス(Alcaligenes)属種(MTCC 25022)によるCO変換
a.電気活性微生物の選択および培養
電気活性アルカリゲネス(Alcaligenes)属種(MTCC 25022)微生物を単離し、最適化培地中で培養した。すべてのガラス器具および試料は、121℃で15分間の加圧滅菌によって滅菌した。培地組成物は以下の通りであった:(0.40g/LのNaCl、0.40g/LのNHCl、0.33g/LのMgSO・7HO、0.05g/LのCaCl、0.25g/LのKCl、0.64g/LのKHPO、2.50g/LのNaHCO、微量ミネラル(1000.0mg/LのMnSO・HO、200.0mg/LのCoCl・6HO、0.2mg/LのZnSO.7HO、20.0mg/LのCuCl・2HO、2000.0mg/Lのニトリロ酢酸)、およびビタミン(ピリドキシン・HCl 10.0mg/L、チアミン・HCl 5.0mg/L、リボフラビン5.0mg/L、ニコチン酸5.0mg/L、ビオチン2.0mg/L、葉酸2.0mg/L、ビタミンB12 0.1mg/L、0.5%グルコース)。培養物を30℃で増殖させた。660nmでのODをUV可視分光光度計で測定することによって細胞増殖をモニタリングした。
【0079】
b.半導電性ハイブリッド溶液の調製
別の容器に、0.2mMのCdCl、0.2mMのZnCl、0.1gのg-C、および0.1gのニュートラルレッドを100mlの脱イオン水中に添加することによって、半導電性ハイブリッドを調製した。この溶液に、表面指向剤として作用させるためにラウリルジメチルアミンオキシド(0.2mg)を添加した。溶液全体を30分間超音波処理して、均一に分散した溶液を得た。この溶液を121℃で15分間加圧滅菌した。
【0080】
1mlのアルカリゲネス(Alcaligenes)属種培養物(CFU=2.3*10)に、加圧滅菌したg-C/Zn/Cd2+100mlを添加し、35℃で24時間インキュベートした。それと同時に、COおよびHSを10:0.1の流量で、実施例1に示した手順の通りに培地にパージした。培地の色がゆっくりと(48時間後)薄い白色に変化したことから、gC/CdS/ZnS アルカリゲネス(Alcaligenes)属種のハイブリッドの形成が示された。微生物ハイブリッドの増殖は、OD分析によってもモニタリングした。
【0081】
c.生体ハイブリッド触媒の分析
次いでgC/CdS/ZnS アルカリゲネス(Alcaligenes)属種のハイブリッドを間欠光源(5秒間の明期および2秒間の暗期)に曝露した。生成物を、3時間経つ毎にGCによって分析した。生成物のプロファイルを表3に示す。
【0082】
実施例5
CdS/TiC/g-C シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)(MTCC-1036)によるCO変換
a.電気活性微生物の選択および培養
電気活性シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)(MTCC-1036)微生物を単離し、最適化培地中で培養した。すべてのガラス器具および試料は、121℃で15分間の加圧滅菌によって滅菌した。培地組成物は以下の通りであった:(0.40g/LのNaCl、0.40g/LのNHCl、0.33g/LのMgSO・7HO、0.05g/LのCaCl、0.25g/LのKCl、0.64g/LのKHPO、2.50g/LのNaHCO、微量ミネラル(1000.0mg/LのMnSO・HO、200.0mg/LのCoCl・6HO、0.2mg/LのZnSO.7HO、20.0mg/LのCuCl・2HO、2000.0mg/Lのニトリロ酢酸)、およびビタミン(ピリドキシン・HCl 10.0mg/L、チアミン・HCl 5.0mg/L、リボフラビン5.0mg/L、ニコチン酸5.0mg/L、ビオチン2.0mg/L、葉酸2.0mg/L、ビタミンB12 0.1mg/L、0.5%グルコース)。培養物を30℃で増殖させた。660nmでのODをUV可視分光光度計で測定することによって細胞増殖をモニタリングした。
【0083】
b.半導電性ハイブリッド溶液の調製
別の容器に、0.1mgのg-Cおよび0.1mgのナノTiCを100mlの脱イオン水中に添加し、続いて超音波処理によって1時間分散させることによって、半導電性ハイブリッドを調製した。続いて、この溶液に0.2mMのCdClも添加し、さらに30分間分散させた。この溶液に、表面指向剤として作用させるために0.2mgのポリエトキシル化アルコールを添加した。溶液全体を30分間超音波処理して、均一に分散した溶液を得た。この溶液を121℃で15分間加圧滅菌した。
【0084】
1mlのシュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)培養物(CFU=2.3*10)に、加圧滅菌したg-C/TiC/Cd2+100mlを添加し、35℃で24時間インキュベートした。それと同時に、COおよびHSを10:0.1の流量で、実施例1に示した手順の通りに培地にパージした。培地の色がゆっくりと(48時間後)薄い白色に変化したことから、gC3N4/CdS/TiC シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)ハイブリッドの形成が示された。微生物ハイブリッドの増殖は、OD分析によってもモニタリングした。
【0085】
c.生体ハイブリッド触媒の分析
次いでgC3N4/CdS/TiC シュードモナス・エルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)ハイブリッドを間欠光源(5秒間の明期および2秒間の暗期)に曝露した。培地のpHは、リン酸塩緩衝液を使用して7.0に維持した。生成物を、3時間経つ毎にGCによって分析した。生成物のプロファイルを表3に示す。
【0086】
実施例6
CdS/TiC/Gr-Np オクロバクテリウム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)微生物(MTCC-9026)によるCO変換
a.電気活性微生物の選択および培養
電気活性オクロバクテリウム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)微生物(MTCC 9026)を単離し、最適化培地中で培養した。すべてのガラス器具および試料は、121℃で15分間の加圧滅菌によって滅菌した。培地組成物は以下の通りであった:(0.40g/LのNaCl、0.40g/LのNHCl、0.33g/LのMgSO・7HO、0.05g/LのCaCl、0.25g/LのKCl、0.64g/LのKHPO、2.50g/LのNaHCO、微量ミネラル(1000.0mg/LのMnSO・HO、200.0mg/LのCoCl・6HO、0.2mg/LのZnSO.7HO、20.0mg/LのCuCl・2HO、2000.0mg/Lのニトリロ酢酸)、およびビタミン(ピリドキシン・HCl 10.0mg/L、チアミン・HCl 5.0mg/L、リボフラビン5.0mg/L、ニコチン酸5.0mg/L、ビオチン2.0mg/L、葉酸2.0mg/L、ビタミンB12 0.1mg/L、0.5%グルコース)。培養物を30℃で増殖させた。660nmでのODをUV可視分光光度計で測定することによって細胞増殖をモニタリングした。
【0087】
b.半導電性ハイブリッド溶液の調製
別の容器に、0.1mgのグラフェンナノ粒子(Gr-Np)および0.1mgのナノTiCを100mlの脱イオン水中に添加し、続いて超音波処理によって1時間分散させることによって、半導電性ハイブリッドを調製した。続いて、この溶液に0.2mMのCdClも添加し、さらに30分間分散させた。この溶液に、電子促進剤としての0.1mgのルテニウム錯体、および表面指向剤として作用させるために0.2mgのラウリル硫酸ナトリウムを添加した。溶液全体を30分間超音波処理して、均一に分散した溶液を得た。この溶液を121℃で15分間加圧滅菌した。
【0088】
1mlのオクロバクテリウム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)培養物(CFU=2.3*10)に、加圧滅菌したGr-Np/TiC/Cd2+100mlを添加し、35℃で24時間インキュベートした。それと同時に、COおよびHSを10:0.1の流量で、実施例1に示した手順の通りに培地にパージした。培地の色がゆっくりと(48時間後)薄い白色に変化したことから、Gr-Np/CdS/TiC オクロバクテリウム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)ハイブリッドの形成が示された。微生物ハイブリッドの増殖は、OD分析によってもモニタリングした。
【0089】
c.生体ハイブリッド触媒の分析
次いでGr-Np/CdS/TiC オクロバクテリウム・アンスロピ(Ochrobactrum anthropi)ハイブリッドを間欠光源(5秒間の明期および2秒間の暗期)に曝露した。培地のpHは、リン酸塩緩衝液を使用して7.0に維持した。生成物を、3時間経つ毎にGCによって分析した。生成物のプロファイルを表3に示す。
【0090】
【表3】
【0091】
実施例7
微生物と塩と1種の2D材料との組み合わせを使用するCO変換
a.実施例-1の記載と同様の方法を使用することによって、様々な組み合わせの半導電性生体ハイブリッド触媒を合成し、最終生成物を分析した。
b.半導電性生体ハイブリッド触媒を合成する間に、2種以上の塩、2D材料、および電子促進剤を、最終濃度が実施例-1の記載と同じになるように、必要とされる度に等モル量で添加した。
c.すべての実験について、温度を30℃にCO流量を1mL/分に固定した。
d.間欠光源(波長>400nm)を使用してすべての実験を実施した。
e.生成物濃度を表4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】
実施例8
粗バイオガスの供給材料としての使用
以下の実施例は、供給材料としてのバイオガスの使用について記載しており、これは、本発明を使用する有価生成物へのCO変換と共に、バイオガスのアップグレードのための方法として使用することができる。
【0094】
a.電気活性微生物の選択および培養
電気活性セラチア(Serratia)sp(EA-2)(MTCC 25017)を単離し、最適化培地中で培養した。すべてのガラス器具および試料は、121℃で15分間の加圧滅菌によって滅菌した。培地組成物は以下の通りであった:(0.60g/LのNaCl、0.20g/LのNHCl、0.35g/LのMgSO・7HO、0.09g/LのCaCl、微量ミネラル(1000.0mg/LのMnSO・HO、200.0mg/LのCoCl・6HO、0.2mg/LのZnSO.7HO、20.0mg/LのCuCl・2HO、2000.0mg/Lのニトリロ酢酸)、およびビタミン(ピリドキシン・HCl 10.0mg/L、チアミン・HCl 5.0mg/L、リボフラビン5.0mg/L、ニコチン酸5.0mg/L、ビオチン2.0mg/L、葉酸2.0mg/L、ビタミンB12 0.1mg/L、0.5%グルコース)。培養物を30℃で増殖させた。660nmでのODをUV可視分光光度計で測定することによって細胞増殖をモニタリングした。
【0095】
b.半導電性ハイブリッド溶液の調製
別の容器に、0.1mgのグラフェンナノ粒子(Gr-Np)および0.1mgのナノTiCを100mlの脱イオン水中に添加し、続いて超音波処理によって1時間分散させることによって、半導電性ハイブリッドを調製した。続いて、この溶液に0.2mMのCdClも添加し、さらに30分間分散させた。この溶液に、電子促進剤としての0.1mgのルテニウム錯体、および表面指向剤として作用させるために0.2mgのラウリル硫酸ナトリウムを添加した。溶液全体を30分間超音波処理して、均一に分散した溶液を得た。この溶液を121℃で15分間加圧滅菌した。1mlのセラチア(Serratia)sp(EA-2)(MTCC 25017)(CFU=2.2×10)に、加圧滅菌したGr-Np/TiC/Cd2+250mlを添加し、35℃で24時間インキュベートした。
【0096】
c.COおよびHSの供給源としての粗バイオガスの使用
250mlのGr-Np/CdS/TiC セラチア(Serratia)sp(EA-2)をガラスカラム(0.5メートル)内に入れた。60%のCH、40%のCO、および300ppmのHSの組成を有する粗バイオガスを、1mL/分の流量、650秒の滞留時間で培地にパージした。カラムを間欠光源(5秒間の明期および2秒間の暗期)に曝露した。培地のpHは、リン酸塩緩衝液を使用して7.0に維持した。
【0097】
d.生成物の分析
出口ガスをテドラーバッグ中に収集し、GCによって分析した。その結果から、出口ガスの濃度は98%のCHおよび2%のCOであったことが示される。
【0098】
24時間後にカラムリアクターから5mlの生成物を収集し、遠心分離し、GCによって分析した。間欠光では、1.87g/Lのメタノール、0.61g/Lのエタノール、および0.95g/Lの酢酸が得られたことが見出された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7