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特許7033099熱伝導性シリコーンシート及びこれを用いた実装方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-03-01
(45)【発行日】2022-03-09
(54)【発明の名称】熱伝導性シリコーンシート及びこれを用いた実装方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20220302BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20220302BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20220302BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20220302BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20220302BHJP
   C08K 3/40 20060101ALI20220302BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20220302BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20220302BHJP
   H05K 13/04 20060101ALI20220302BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20220302BHJP
【FI】
H01L23/36 D
C08L83/04
C08K3/00
C08K3/013
C08L101/00
C08K3/40
H01L23/36 M
H05K7/20 F
H05K13/04 B
C09K5/14 E
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019054372
(22)【出願日】2019-03-22
(65)【公開番号】P2020155682
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2021-03-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000237422
【氏名又は名称】富士高分子工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】片石 拓海
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 進悟
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-201573(JP,A)
【文献】特開2010-021407(JP,A)
【文献】特開2011-231242(JP,A)
【文献】特開2011-056618(JP,A)
【文献】特開2010-024371(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
C08L 83/04
C08K 3/00
C08K 3/013
C08L 101/00
C08K 3/40
H01L 23/373
H05K 7/20
H05K 13/04
C09K 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコーンポリマーと熱伝導性粒子を含む熱伝導性シリコーンシートであって、
平均粒子径60~100μmの大粒径球状フィラーを、前記シリコーンポリマー100質量部当たり50質量部以上含み、
前記熱伝導性シリコーンシートは厚さ方向に切断されており、切断面同士は隙間なく隣接しており、
前記切断面は前記大粒径球状フィラーの存在により非粘着性であり、前記切断面で分離可能であることを特徴とする熱伝導性シリコーンシート。
【請求項2】
前記切断面を非粘着性にする大粒径球状フィラーは、熱伝導性無機フィラー、樹脂フィラー及びガラスフィラーから選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の熱伝導性シリコーンシート。
【請求項3】
前記切断面は、さらに剥離剤が付与されている請求項1又は2に記載の熱伝導性シリコーンシート。
【請求項4】
前記熱伝導性シリコーンシートは、熱伝導率が0.5W/mK以上である請求項1~3のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンシート。
【請求項5】
前記熱伝導性シリコーンシートの上下面にはカバーフィルムが配置されている請求項1~4のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンシート。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の熱伝導性シリコーンシートを、自動実装機を用いてピックアンドプレース実装する実装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断面が非粘着面であるシリコーンシート及びこれを用いた実装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のCPU等の半導体の性能向上はめざましくそれに伴い発熱量も膨大になっている。そのため発熱するような電子部品には放熱体が取り付けられ、半導体と放熱部との密着性を改善する為に熱伝導性シリコーンゲルシートが使われている。しかし近年、機器の小型化、高性能化に伴い熱伝導性シリコーンゲルシートには柔らかさ、高熱伝導性能、薄型化を求められている。また低製造コスト実現の為に自動実装化の要求も求められている。従来、熱伝導性シリコーンゲルシートは柔らかさを追求する為に粘着力が強く、また多くの実装作業者は手作業で実装しておりその作業性の悪さについて改善が要求されていた。特許文献1~4には、切断面を有するシリコーンゴムシートが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-041953号公報
【文献】特開2012-023335号公報
【文献】特開2010-021407号公報
【文献】特開2002-084083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の熱伝導性シリコーンシートは、製品をカットした際にその粘着性のためカット端面同士がくっついてしまい、製品の個片化が難しい、という問題があった。
本発明は前記従来の問題を解決するため、オイルブリードが少なく、かつ製品をカットした際のカット端面同士のくっつきが弱いことにより、製品の個片化が容易な熱伝導性シリコーンシート及びこれを用いた実装方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の熱伝導性シリコーンシートは、シリコーンポリマーと熱伝導性粒子を含む熱伝導性シリコーンシートであって、平均粒子径60~100μmの大粒径球状フィラーを、前記シリコーンポリマー100質量部当たり50質量部以上含み、前記熱伝導性シリコーンシートは厚さ方向に切断されており、切断面同士は隙間なく隣接しており、前記切断面は前記大粒径球状フィラーの存在により非粘着性であり、前記切断面で分離可能であることを特徴とする。
【0006】
本発明の実装方法は、前記の熱伝導性シリコーンシートを、自動実装機を用いてピックアンドプレース実装することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の熱伝導性シリコーンシートは、オイルブリードが少なく、かつ前記シートをカットした際のカット端面同士のくっつきが弱いことにより、カット品の個片化が容易な熱伝導性シリコーンゲルシートとすることができる。切断面の非粘着性は、大粒径球状フィラーの添加によることから、コストも安価な切断面の非粘着性処理となる。さらに自動実装機によるピックアップ作業も可能となり大幅な作業改善が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は本発明の一実施形態におけるシリコーンシートの斜視図である。
図2図2Aは同、シリコーンシートの平面図、図2Bは同、断面図である。
図3A図3Aは本発明の一実施形態の自動実装機を用いたピックアンドプレース実装における自動実装機先端部を、シリコーンシートの表面まで移動した状態を示す説明図である。
図3B図3Bは同、自動実装機先端部のエアーを吸引し、シリコーンシートを吸着した状態を示す説明図である。
図3C図3Cは同、シリコーンシートを吸着した状態で自動実装機先端部を上に移動したピックアップ工程を示す説明図である。
図3D図3Dは同、シリコーンシートを吸着した状態でCPUを搭載する電子部品の上方まで移動した状態を示す説明図である。
図3E図3Eは同、シリコーンシートを前記電子部品上に設置し、エアーを開放し、前記電子部品上にシリコーンシートを実装した状態を示す説明図である。
図3F図3Fは同、自動実装機先端部を上に移動し、1サイクルを終了した状態を示す説明図である。
図4図1A-Bは本発明の一実施例で使用する熱伝導率の測定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、シリコーンポリマーと熱伝導性粒子を含む熱伝導性シリコーンシートである。熱伝導性シリコーンシートは、シリコーンゲルシート又はシリコーンパテシートであることが好ましい。本発明は未反応オイルを添加しないことから、オイルブリードの問題は少ない。熱伝導性シリコーンシートは、平均粒子径50μm以上の大粒径球状フィラーを、シリコーンポリマー100質量部当たり50質量部以上含む。好ましい平均粒子径は50~150μmであり、より好ましくは60 ~100μmである。好ましい配合量は、シリコーンポリマー100質量部に対して50~500質量部であり、より好ましくは100~500質量部である。
【0010】
熱伝導性シリコーンシートは厚さ方向に切断されており、切断面同士は隙間なく隣接しており、切断面は前記大粒径球状フィラーの存在により非粘着性であり、切断面で分離可能である。カットは、刃物によるカットを使用できる。これによりコストを下げることができる。前記切断面を非粘着性にする大粒径球状フィラーは、熱伝導性無機フィラー、樹脂フィラー及びガラスフィラーから選ばれる少なくとも一つであるのが好ましい。これらのフィラーにより、切断面は非粘着性となり、切断面で分離可能である。
【0011】
前記切断面には、さらに剥離剤を付与してもよい。これにより、シリコーンシートの切断面はさらに非粘着性となり、分離しやすくなる。剥離剤としては、アルコキシシラン、フッ素含有化合物等がある。アルコキシシランとしては、炭素数6~20のアルキル基を有するアルコキシシランが挙げられ、一例としてヘキシルトリメトキシラン,ヘキシルトリエトキシシラン,オクチルトリメトキシシラン,オクチルトリエトキシラン,デシルトリメトキシシラン,デシルトリエトキシシラン,ドデシルトリメトキシシラン,ドデシルトリエトキシシラン,ヘキサデシルトリメトキシシラン,ヘキサデシルトリエトキシシシラン,オクタデシルトリメトキシシラン,オクタデシルトリエトキシシシランなどがある。前記シラン化合物は、一種あるいは二種以上混合して使用することができる。フッ素含有化合物としては、例えば市販品の“アサヒガードGS10”(商品名)(旭硝子社製)、“NKガードFGN700T”(商品名)、“NKガードNDN7000”(商品名)(いずれも日華化学社製)等がある。前記切断面を剥離剤処理すると、表面ハードコート層となる。表面ハードコート層の塗布量は、乾燥重量で100cm2当たり0.05~20gが好ましい。また、塗布厚さは乾燥状態で0.1~20μmが望ましい。
【0012】
切断面の粘着性は、熱伝導性シリコーンシートをカットした際に、カット端面同士はくっつくが、手で容易にはがせる程度が好ましい。これにより、シリコーンゲルシートまたはシリコーンパテシートのカット品の個片化が容易となる。
【0013】
前記熱伝導性シリコーンシートは、熱伝導率が0.5W/mK以上であるのが好ましい。これにより、電子部品などの加熱体部から放熱体への熱移動を良好にできる。さらに、切断面が粘着する問題は熱伝導性シリコーンシートに多かったが、これも解決できる。
【0014】
前記熱伝導性シリコーンシートの上下面にはカバーフィルムが配置されているのが好ましい。上下面にカバーフィルムが配置されていると、シリコーンシートは切断面で分離されていても全体を一体的に取り扱うことができるうえ、シリコーンシートの保護としての機能もある。このシリコーンシートを、自動実装機を用いてピックアンドプレース実装する際には、下面のカバーフィルムを剥離し、キャリアテープの上に配列し自動実装機に供給される。
【0015】
シリコーンゲルシートやシリコーンパテシートは、目的の厚さを有する大きな原反シートを製造し、しかる後に、必要とされる大きさに切断する工程を経て、アセンブリー産業で使用される形態となる。原反シートの切断は、たとえば長方形シートを製造する場合には、縦・横にカッターの刃を入れて行うのが一般的である。カッターで切断された長方形シートは切り離されることなく、互いが接する状態のままで市場に出荷されるのが一般的である。十分な硬さを有するゴムなどの場合には、切断されたシートどうしを接触させておいても粘着することはない。しかし、ゲルやパテのシートは接触したままだと互いに粘着し、一方をつかみ上げると隣のシートも一緒に持ちあげられることになる。本発明のシリコーンゲルシート、シリコーンパテシートは、切断した断面の粘着性が十分に低いので、たとえ切断されたシートどうしを接触させたまま長時間おいても粘着することがなく、容易に実装作業が行える。
【0016】
本発明の実装方法は、前記のようにして得られたシリコーンシートを、自動実装機を用いてピックアンドプレース実装する。この装置は、例えばエアー圧力吸脱着式ピックアンドプレースが使用できる。
【0017】
熱伝導性シリコーンシートは、下記組成のコンパウンドを架橋して得るのが好ましい。
(A)ベースポリマー成分:1分子中に平均2個以上かつ分子鎖両末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有する直鎖状オルガノポリシロキサン:100Vol%
(B)架橋成分:1分子中に平均2個以上のケイ素原子に結合した水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが、前記A成分中のケイ素原子結合アルケニル基1モルに対して、1モル未満の量
(C)白金系金属触媒:A成分に対して質量単位で0.01~1000ppm
(D)熱伝導性粒子:A成分100Vol%に対して25~625vol%(A成分100質量部に対して好ましくは100~2500質量部)
(E)平均粒子径50μm以上の大粒径球状フィラー:A成分100質量部に対して50質量部以上
【0018】
以下、各成分について説明する。
(1)ベースポリマー成分(A成分)
ベースポリマー成分は、一分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を2個以上含有するオルガノポリシロキサンであり、アルケニル基を2個含有するオルガノポリシロキサンは本発明のシリコーンゴム組成物における主剤(ベースポリマー成分)である。このオルガノポリシロキサンは、アルケニル基として、ビニル基、アリル基等の炭素原子数2~8、特に2~6の、ケイ素原子に結合したアルケニル基を一分子中に 2個以上有する。粘度は25℃で10~100,000mPa.s、特に100~10,000mPa.sであることが作業性、硬化性などから望ましい。
【0019】
具体的には、下記一般式(化1)で表される1分子中に平均2個以上かつ分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基を含有するオルガノポリシロキサンを使用する。側鎖はアルキル基で封鎖された直鎖状オルガノポリシロキサンである。25℃における粘度は10~100,000mPa・sのものが作業性、硬化性などから望ましい。なお、この直鎖状オルガノポリシロキサンは少量の分岐状構造(三官能性シロキサン単位)を分子鎖中に含有するものであってもよい。
【0020】
【化1】
【0021】
式中、R1は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基であり、R2はアルケニル基であり、kは0又は正の整数である。ここで、R1の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換の一価炭化水素基としては、例えば、炭素原子数1~10、特に1~6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、並びに、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基、シアノエチル基等が挙げられる。R2のアルケニル基としては、例えば炭素原子数2~6、特に2~3のものが好ましく、具体的にはビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等が挙げられ、好ましくはビニル基である。一般式(1)において、kは、一般的には0≦k≦10000を満足する0又は正の整数であり、好ましくは5≦k≦2000、より好ましくは10≦k≦1200を満足する整数である。
【0022】
A成分のオルガノポリシロキサンとしては一分子中に例えばビニル基、アリル基等の炭素原子数2~8、特に2~6のケイ素原子に結合したアルケニル基を3個以上、通常、3~30個、好ましくは、3~20個程度有するオルガノポリシロキサンを併用しても良い。分子構造は直鎖状、環状、分岐状、三次元網状のいずれの分子構造のものであってもよい。好ましくは、主鎖がジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなり、分子鎖両末端がトリオルガノシロキシ基で封鎖された、25℃での粘度が10~1000000mPa・s、特に100~100000mPa・sの直鎖状オルガノポリシロキサンである。
【0023】
アルケニル基は分子のいずれかの部分に結合していればよい。例えば、分子鎖末端、あるいは分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子に結合しているものを含んでも良い。なかでも下記一般式(化2)で表される分子鎖両末端のケイ素原子上にそれぞれ 2~3個のアルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンであって、この分子鎖末端のケイ素原子に結合したアルケニル基が両末端合計で2個である場合には、分子鎖非末端(分子鎖途中)のケイ素原子上に少なくとも1個以上のアルケニル基を有する直鎖状オルガノポリシロキサンが望ましい。上記でも述べた通り25℃における粘度が10~1,000,000mPa・sのものが作業性、硬化性などから望ましい。なお、この直鎖状オルガノポリシロキサンは少量の分岐状構造(三官能性シロキサン単位)を分子鎖中に含有するものであってもよい。
【0024】
【化2】
【0025】
式中、R3は互いに同一又は異種の非置換又は置換一価炭化水素基であって、少なくとも1個がアルケニル基である。R4は互いに同一又は異種の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基であり、R5はアルケニル基であり、l,mは0又は正の整数である。ここで、R3の一価炭化水素基としては、炭素原子数1~10、特に1~6のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基等のアラルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、オクテニル基等のアルケニル基や、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素、臭素、塩素等のハロゲン原子、シアノ基等で置換したもの、例えばクロロメチル基、クロロプロピル基、ブロモエチル基、トリフロロプロピル基等のハロゲン置換アルキル基やシアノエチル基等が挙げられる。
【0026】
また、R4の一価炭化水素基としても、炭素原子数1~10、特に1~6のものが好ましく、上記R1の具体例と同様のものが例示できるが、但しアルケニル基は含まない。R5のアルケニル基としては、例えば炭素数2~6、特に炭素数2~3のものが好ましく、具体的には前記式(化1)のR2と同じものが例示され、好ましくはビニル基である。
l,mは、一般的には0<l+m≦10000を満足する0又は正の整数であり、好ましくは5≦l+m≦2000、より好ましくは10≦l+m≦1200で、かつ0<l/(l+m)≦0.2、好ましくは、0.0011≦l/(l+m)≦0.1を満足する整数である。
【0027】
(2)架橋成分(B成分)
本発明のB成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは架橋剤として作用するものであり、この成分中のSiH基とA成分中のアルケニル基とが付加反応(ヒドロシリル化)することにより硬化物を形成するものである。かかるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中にケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)を2個以上有するものであればいずれのものでもよく、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状構造のいずれであってもよいが、一分子中のケイ素原子の数(即ち、重合度)は2~1000、特に2~300程度のものを使用することができる。
【0028】
水素原子が結合するケイ素原子の位置は特に制約はなく、分子鎖の末端でも非末端(途中)でもよい。また、水素原子以外のケイ素原子に結合した有機基としては、前記一般式(化1)のR1と同様の脂肪族不飽和結合を有さない非置換又は置換一価炭化水素基が挙げられる。
【0029】
B成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては下記構造のものが例示できる。
【化3】
【0030】
上記の式中、R6は互いに同一又は異種の水素、アルキル基、フェニル基、エポキシ基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アルコキシ基であり、少なくとも2つは水素である。Lは0~1,000の整数、特には0~300の整数であり、Mは1~200の整数である。
【0031】
(3)触媒成分(C成分)
C成分の触媒成分は、本組成物の一段階目の硬化を促進させる成分である。C成分としては、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒を用いることができる。例えば白金黒、塩化第2白金、塩化白金酸、塩化白金酸と一価アルコールとの反応物、塩化白金酸とオレフィン類やビニルシロキサンとの錯体、白金ビスアセトアセテート等の白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などの白金族金属触媒が挙げられる。C成分の配合量は、硬化に必要な量であればよく、所望の硬化速度などに応じて適宜調整することができる。A成分に対して金属原子重量として0.01~1000ppm添加するのが好ましい。
【0032】
(4)熱伝導性粒子(D成分)
D成分の熱伝導性粒子は、マトリックス成分であるA成分100体積部に対して25~625体積部(A成分100質量部に対して好ましくは100~2500質量部)添加するのが好ましい。これにより熱伝導率を高く保つことができる。熱伝導粒子としては、アルミナ,酸化亜鉛,酸化マグネシウム、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、水酸化アルミニウム及びシリカから選ばれる少なくとも一つであることが好ましい。形状は球状,鱗片状,多面体状等様々なものを使用できる。アルミナを使用する場合は、純度99.5質量%以上のα-アルミナが好ましい。熱伝導性粒子の比表面積は0.06~10m2/gの範囲が好ましい。比表面積はBET比表面積であり、測定方法はJIS R1626にしたがう。平均粒子径を用いる場合は、0.1~100μmの範囲が好ましい。粒子径の測定はレーザー回折光散乱法により、体積基準による累積粒度分布のD50(メジアン径)を測定する。この測定器としては、例えば堀場製作所製社製のレーザー回折/散乱式粒子分布測定装置LA-950S2がある。D成分として平均粒径50μm以上の大粒系球状フィラーを使用する場合は、E成分を兼ねて使用することができる。
【0033】
熱伝導性粒子は平均粒子径が異なる少なくとも2つの粒子を併用してもよい。このようにすると大きな粒子径の間に小さな粒子径の熱伝導性粒子が埋まり、最密充填に近い状態で充填でき、熱伝導性が高くなるからである。
【0034】
無機粒子は、RaSi(OR’)3-a(Rは炭素数1~20の非置換または置換有機基、R’は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるシラン化合物、もしくはその部分加水分解物で表面処理するのが好ましい。RaSi(OR’)3-a(Rは炭素数1~20の非置換または置換有機基、R’は炭素数1~4のアルキル基、aは0もしくは1)で示されるアルコキシシラン化合物(以下単に「シラン」という。)は、一例としてメチルトリメトキシラン,エチルトリメトキシラン,プロピルトリメトキシラン,ブチルトリメトキシラン,ペンチルトリメトキシラン,ヘキシルトリメトキシラン,ヘキシルトリエトキシシラン,オクチルトリメトキシシラン,オクチルトリエトキシラン,デシルトリメトキシシラン,デシルトリエトキシシラン,ドデシルトリメトキシシラン,ドデシルトリエトキシシラン,ヘキサドデシルトリメトキシシラン,ヘキサドデシルトリエトキシシシラン,オクタデシルトリメトキシシラン,オクタデシルトリエトキシシシラン等のシラン化合物がある。前記シラン化合物は、一種又は二種以上混合して使用することができる。表面処理剤として、アルコキシシランと片末端シラノールシロキサンを併用してもよい。ここでいう表面処理とは共有結合のほか吸着なども含む。
【0035】
(5)平均粒子径50μm以上の大粒径球状フィラー(E成分)
E成分の平均粒子径50μm以上の大粒径球状フィラーは熱伝導性無機フィラー、樹脂フィラー及びガラスフィラーから選ばれる少なくとも一つであるのが好ましい。これらのフィラーにより、切断面は非粘着性となり、切断面で分離可能である。E成分として熱伝導性無機フィラーを使用する場合は、D成分を兼ねて使用することができる。
【0036】
(6)その他の成分
本発明の組成物には、必要に応じて前記以外の成分を配合することができる。例えばベンガラなどの無機顔料、フィラーの表面処理等の目的でアルキルトリアルコキシシランなどを添加してもよい。フィラー表面処理などの目的で添加する材料として、アルコキシ基含有シリコーンを添加しても良い。
【0037】
以下図面を用いて説明する。以下の図面において、同一符号は同一物を示す。図1は本発明の一実施形態におけるシリコーンシート1の斜視図、図2Aは同、シリコーンシートの平面図、図2Bは同、断面図である。このシリコーンシート1は、例えばタテ140mm、ヨコ140mm、厚さ5.0mmの大きさであり、シリコーンシート層2の両表面にポリエステル(PET)フィルム3,4が積層されており、CO2ガスレーザーでタテ20mm、ヨコ10mmの大きさに切断されている。3は表面のポリエステル(PET)フィルム、5a,5b・・・5mはCO2ガスレーザーによるタテ切断線、6a,6b・・・6fは同ヨコ切断線である。前記タテとヨコの切断面は非粘着性である。
【0038】
図3A図3Fは本発明の一実施形態の自動実装機を用いたピックアンドプレース実装の工程図である。
(1)図3Aは同、自動実装機先端部10を、シリコーンシート11aの表面まで移動した状態を示す説明図である。シリコーンシート11a~11gはキャリアテープ12の上に配列され、1枚ずつ先端(左側)に送られる。右側の離れた位置には、配線基板14の上にCPUが搭載された電子部品13が配置されている。
(2)図3Bは同、自動実装機先端部10のエアーを矢印15の方向に吸引し、シリコーンシート11aを吸着した状態を示す説明図である。
(3)図3Cは同、シリコーンシート11aを吸着した状態で自動実装機先端部10を上に移動したピックアップ工程を示す説明図である。
(4)図3Dは同、シリコーンシート11aを吸着した状態でCPUを搭載する電子部品13の上方まで移動した状態を示す説明図である。
(5)図3Eは同、シリコーンシート11aを電子部品13上に設置し、エアーを矢印16に示すように開放し、電子部品13上にシリコーンシート11aを実装した状態を示す説明図である。
(6)図3Fは同、自動実装機先端部10を上に移動し、1サイクルを終了した状態を示す説明図である。
【実施例
【0039】
以下実施例を用いて説明する。本発明は実施例に限定されるものではない。
<カット面の粘着性>
カット後の製品を手作業で個片化し、粘着の強弱を下記の評価により判定した。
A:製品同士がくっつかずに個片化できる。
B:個片化する際に製品同士がくっつくが、手で容易に剥がせる。
C:個片化する際に製品同士がくっついて手では容易に剥がれない。
<熱伝導率>
熱伝導性シートの熱伝導率は、ホットディスク(ISO/CD 22007-2準拠)により測定した。この熱伝導率測定装置21は図4Aに示すように、ポリイミドフィルム製センサ22を2個の熱伝導性シート試料23a,23bで挟み、センサ22に定電力をかけ、一定発熱させてセンサ22の温度上昇値から熱特性を解析する。センサ22は先端24が直径7mmであり、図4Bに示すように、電極の2重スパイラル構造となっており、下部に印加電流用電極25と抵抗値用電極(温度測定用電極)26が配置されている。熱伝導率は以下の式(数1)で算出した。
【0040】
【数1】
<オイルブリード率>
厚さ3mmの試料を25mm×25mmにカットし、PTFEろ紙(ADVANTEC製PF60)6枚で挟み、圧縮ジグで1.8mmまで圧縮し、80℃のオーブンに24時間放置した。PTFEろ紙6枚はサンプルの上側3枚、下側3枚となるように重ねて使用した。オーブンから取り出し後、速やかに圧縮から開放し、PTFEろ紙をサンプルから引き剥がした。試験前後のPTFEろ紙の重量差よりオイルブリード量を算出し、初期のサンプル重量とオイルブリード量からオイルブリード率を算出した。
【0041】
(実施例1)
次のようにして熱伝導性シリコーン組成物を調製した。付加反応によって硬化する旭化成ワッカーシリコーン株式会社製、商品名"SilGel612A&B"の各50gに平均粒子径2μmのアルミナ150g、平均粒子径35μmのアルミナ400g、および平均粒子径60μmのポリメタクレート樹脂(PMMA)150gを混合の後、脱泡することにより、シリコーン熱伝導性組成物のA液とB液を得た。なお、"SilGel612 “A液にはSiH基を含有する架橋剤が含まれており、B液には白金触媒が含まれている。作製したA液とB液を重量比1:1で混合して減圧にして脱泡した。脱泡後、厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム2枚で挟み、ロール圧延して厚さ3mmのシートを得た。シートを120℃のオーブンで10分間硬化させ、シリコーンシートを作製した。作製したシリコーンシートの片面のPETフィルムを剥がし、カッター刃を用いて10mm×10mmにカットし、カット後の製品を手で個片化すると、容易に個片化できた。
切断加工されたシリコーンゴムシートを、図3A図3Fに概略を示す自動実装機(安川電機製6軸ロボット)を用いてエアー圧力吸脱着式ピックアンドプレースを行ったところ、個別に吸着でき、作業性に問題がなかった。
【0042】
(実施例2-5、比較例1)
表1に示すとおりの条件で、実施例1と同様に実験した。条件および結果を表1にまとめて示す。表1中、フィラーの数値は平均粒子径、BNは窒化ホウ素、表面ハードコートは東レダウコーニング株式会社製RD-1を1重量部とモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ合同会社製 FKF1133(B)を35重量部、均一に混合した溶液を乾燥重量で100cm2当たり10g塗布して乾燥処理した剥離膜を示し、実施例1-5、比較例1の欄の数値は重量gを示す。
【0043】
【表1】
【0044】
表1から明らかなとおり、実施例1-5は、平均粒子径50μm以上の大粒径球状フィラーを、シリコーンポリマー100質量部当たり50質量部以上含むことにより、カット断面の粘着性が低く、くっつきにくいことが確認できた。これに対して比較例1は、球状大粒系フィラーを添加しなかったので、カット断面のくっつきが強かった。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の熱伝導性シートは、LED、家電などの電子部品、光通信機器を含む情報通信モジュール、車載用途などの発熱部と放熱部との間の放熱体として有用である。半導体を含む電子部品の放熱体として有用である。
【符号の説明】
【0046】
1 シリコーンシート
2 シリコーンシート層
3,4 ポリエステル(PET)フィルム
5a,5b・・・5m タテ切断線
6a,6b・・・6f ヨコ切断線
10 自動実装機先端部
11a~11g シリコーンシート
12 キャリアテープ
13 CPUが搭載された電子部品
14 配線基板
15,16 自動実装機先端部のエアー方向
21 熱伝導率測定装置
22 ポリイミドフィルム製センサ
23a,23b 熱伝導性シート試料
24 センサ先端
25 印加電流用電極
26 抵抗値用電極(温度測定用電極)
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図3F
図4